UA21000、お気に入り140を超えた…毎度作品を読んでくれてありがとうございます。
暴走機関車アルトアイゼンを撃破した夏油たちは、AZXの運転車両に戻りディーゼルたちインフィニティーレール分隊に、戦闘終了したことを報告する為に向かって到着した。ラピが報告を終えると同時に、運転車両に合った物資から弾丸を補給に移り、アニスとネオンもラピに続いて空になったマガジンと交換する。
ラピ「状況終了!」
ディーゼル「お疲れ様でした。AZXを守ってくれて、ありがとうございます。」
ソリン「ありがと! そこに置いてるのは貴方たち宛の補給物資よ。」
ラピが報告を終えると、ディーゼルが正面窓からラピたちに向き直り深々と頭を下げ、ソリンも守ってくれたことに感謝して、運転車両の隅に固定されている箱に指を指す。箱の中身は、万が一に弾丸が無くなった時に補給できるように用意した物資であり、ラピたちは物資から弾丸を補給に移り、空になったマガジンと交換する。
ネオン「そうなんですか!? ではありがたく使わせて頂きます!」
アニス「さっきの戦闘でかなり弾を消耗したから丁度良かったわ!」
補給しながらアニスとネオンは自然と笑みがこぼれて、手早くも笑顔をディーゼルたちに向けて感謝を伝える。
ディーゼルは夏油たちの帰還に労いの言葉をかけるが、交戦前より違和感があることに気付く。ラプチャーを轢いているにしては、AZX全体の振動が上下以外に左右の振動が感じられるのだ。
ディーゼルはブリットに、AZXに異常が無いかを状況説明するように指示を送る。
ディーゼル「ブリット、揺れ過ぎのような気がしますが、状況はどうですか?」
ブリッド「メインのスタビライザーが大破! 方向の制御が不安定です!
先ほどの攻撃によって、何らかのトラブルでスタビライザーの機能が暴走しつつあります!」
ソリン「何?」
ブリッドの報告によると、AZXの制御において重要となるスタビライザーが、アルトアイゼンの攻撃によってほぼ壊滅し、機体の制御が不安定になったという。
スタビライザーとは、車体の横揺れを抑えて走行を安定させる部品であり、不規則な揺れによる振動を軽減して走行する為に搭載されている。しかし、今回の場合は大破して機能が不完全となる状況であり、加えてラプチャーを轢いて進んでいることにより、走行性能の低下と姿勢制御の安定性が低下する。
その上、交戦中の攻撃で物理的異常の他に問題を抱えてしまったことにより、AZXの姿勢制御は更に困難になる。これによって、制御の安定化と不具合によるふらつきの周期が発生し、この場合全壊より質が悪い。
ブリッドは直ぐにその対応策として、スタビライザーの機能を停止して完全手動運転に変更、そしてラプチャーを轢きながらの進行は不可能だと報告する。
ブリッド「スタビライザーの機能を停止、手動運転に切り替えましたが、スタビライザーの機能無しにラプチャーの大軍を突破するのは不可能です!
このまま進行する場合、目標地点のヘレティックから遠ざかってしまいます!」
ブリッドの対応は早かったが、それでもスタビライザーの機能無しでは、インフィニティーレールでさえもこの状況からの踏破は不可能に等しい。ヘレティックに近づくにつれて、ラプチャーの数も比例して増加していき、それはAZXの振動が更に苛烈になることでもある。
ブリッドの報告を聞いた上で、その対処法を早急に思案したディーゼルは、夏油たちの方に向き直り、名残惜しさを嚙み締めながらもはっきり伝える。
ディーゼル「カウンターズの皆さん、降りてもらえますか?
目的地までご案内したいところですが、難しくなりました。」
ラピ「貴方たちは?」
ディーゼルの指示を聞いて、ヘレティックの方向に向かうにはそれしか無いと判断したディーゼルの指示に同意するように頷く夏油たち。しかし、この列車に乗って送り届けてくれた、インフィニティーレール分隊はこれからどうするのか尋ねるラピ。
ディーゼルはラピの質問に対して、表情を変えずに答える。
ディーゼル「走りながら修理してみます。このままだと大惨事になりかねません。」
ソリン「うん、間違ってニケを轢いちゃったら大変だから。」
AZXの運行を停止して破損したスタビライザーの修理を取り掛かる場合、ラプチャーの軍勢の中心で集中攻撃を食らうことになり、AZXは巨大な鉄の棺桶となってしまう。かと言ってこのまま強行してモダニアの元まで向かうにも距離が離れてしまう上に、ラプチャーを轢いている中、制御出来ない状況で味方に危害が及ぶ可能性があると考えられる。
この状況下での最適解は、ラプチャーに囲まれる前にカウンターズを降ろした後、直ぐに戦場を一時離脱して早急な修理を行うこと。修理が手早く済むと戦線に復帰できる可能性もあると考えたディーゼルは、これ以上目的地から離さない為にも、カウンターズに飛び降りるように伝える。
ディーゼル「さあ、早く。」
夏油「ここまで乗せてくれてありがとう。」
ディーゼル「ふふ、どういたしまして。最後まで案内できなくて、ごめんなさい。」
夏油「いいや、十分に距離を縮めることができた。」
乗車する前、夏油たちにモダニアの交戦地前まで送り届ける予定だったが、健闘虚しく道中までしか送れなかった事に謝罪するディーゼル。しかし、長い道のりをラプチャーの軍勢を超えて高速かつ長距離移動できたことは事実、ここまで距離を縮めてこれたことに夏油は感謝する。
感謝の言葉を聞いて微笑むディーゼル、そして運転席となりの操作盤から一つのボタンを押し、AZXの扉が開かれる。扉からは砂に交じった突風が夏油たちの体にぶつかり、再び外の環境を体感する。
扉に近づく夏油たちに、ディーゼル、ソリン、正面窓を向いたままのブリッドは、敬礼して外に送り出す。
ディーゼル「では、健闘を祈ります。」
夏油たちも習い敬礼して、ラピは夏油に手を伸ばす。
ラピ「指揮官。手を。」
夏油は躊躇わずラピの手を握った瞬間、ラピは夏油を引き寄せて抱きしめる。緊急脱出の注意を伝え、アニスとネオンに声をかけながら扉から顔を出す。
ラピ「緊急脱出します。絶対に私の体を離さないで下さい。」
夏油「分かった。」
ラピ「行くわよ。アニス、ネオン。」
アニス「うん。」
ネオン「超特急の列車から緊急脱出...スパイにピッタリのシチュエーションですね!」
アニス「ネオンもオッケーって。」(≖ࡇ≖)
緊張感をもって身構えているアニスと、走っている列車の扉から緊急脱出するこの状況にウキウキしているネオン。アニスは緊張感が解けたのか、呆れ顔でネオンの代わりにラピに伝える。
確認できたラピは、早速扉から緊急脱出し続いてアニスとネオンも脱出する。
ラピ「行きます。」
アニス「とぅ!」
ネオン「ジャーンプ!」
脱出後、ラピはしっかりと夏油を抱きしめながら、地面が自分の背中に当たるよう調整し、夏油に加わる着地の衝撃を最大限に軽減する。地面に接触した後は体全体を転がして、AZXの速度と衝撃を少しずつ分散させていく。
アニスとネオンもラピと同じように着地して、体を丸めながら回転し脱出に成功する。ラピは両腕を解いて夏油の安否を目視と問いかけて確認し、アニスとネオンにも体の異常が無いかを呼びかけるように確認する。
ラピ「指揮官。体は大丈夫ですか?」
夏油「ラピのおかげで問題ないよ。」
ラピ「みんなは?」
アニス「異常なし。」
ネオン「大丈夫です。」
アニスはラピに向けてグッドサインを送り、ネオンはメガネをクイッと上げて答える。全員の異常が無いことから、直ぐにモダニアに向けての移動する為、ラピはシフティーに声をかけて目的地までの残りの距離を尋ねる。
ラピ「シフティー、マリアンとの距離は?」
シフティー「残り2kmです。」
シフティーの返答を聞いて、まだ少し距離が開いていることに、少しの間沈黙してしまうラピ。2kmのランニングは、成人男性を基準とすると未経験や初心者で約10分から8分、経験者で早くとも6分となる。
モダニアが現れた直後、地上を移動しながら走っていた夏油を見たラピたちは、ある程度余力を残している雰囲気と、それなりに速いペースで走っていたことから、全力疾走で早くとも5分になるだろうと考察する。
ニケである3人にとってはあまり遠くない距離だが、夏油は人間の為守るためにペースを落として走る必要があり、到着直後モダニアの戦闘に入ることから、余力を残しながら走ることを想定すると、大体6分から7分になる。
ラピ「...近くは無いわね。」
アニス「でも汽車のおかげで凄く速く来れたわ。」
アニスの言葉に深くうなずくネオン、地下基地の規模で考えると残り10分の1まで縮められたのだ。このまま速く移動できた調子のまま、早急に移動を開始すると夏油は全員に呼び掛ける。
夏油「この勢いで一気に行こう。」
ラピ「ラジャー。」
ラピの応答を皮切りに疾走する、それぞれ夏油に合わせて走るが、夏油のペース...というよりその速度はニケに匹敵するスピードだった。あまりのスピードの高さに、必死に追い付こうと走るアニスとネオンは、慌てながら夏油に声をかける。
アニス「ちょ! 指揮官様!?」
ネオン「師匠! ペースが速過ぎます!!」
ラピは一足早く夏油に近づき、並走しながらある程度余力を残すように伝える。
ラピ「指揮官、時間が無く全力で走るのは間違っていません。
しかし、到着後すぐにマリアンを奪還する戦闘に入ります。余力は残して下さい。」
夏油が息も絶え絶えで、冷静な指揮ができなくなると分隊の機能は完全に停止してしまう。そうなると戦闘どころではなく、壊滅してしまうのが関の山で、温存するようにラピは伝える。ラピの提案を聞いた上で夏油は顔を見て答える。
夏油「大丈夫、このペースでもモダニアとの戦いで十分指揮は取れる。私たちの周りにラプチャーが集まる前に目的地に到着しよう。」
ラピは耳を疑う、まるでこのスピードでもまだ余力を残していると思えるその表情からは、余裕すら感じられた。ラピは狼狽えながらも、ペースを落としてラプチャーとの戦いにも意識を向けるよう説得する。
ラピ「しかし...目的地に到着する道中でもラプチャーが...」
夏油「ラピ」
ラピの説得は夏油の一言で止まる、ハッとした表情で何故名前を呼んだのか疑問を浮かべるラピだが、夏油は続けて語りかけるように伝える。
夏油「問題ない」
夏油の表情と言葉から、ラピたちを信頼した上での発言であると気付く。彼女たちが気付くことは無いが、真っ直ぐと3人の顔を見つめて、はっきり聞き取れるその声は、ラピたちが夏油を信頼した上で任務に赴いた顔を全く同じだった。
ラピたちは夏油の指示を聞いて、頷きながら承諾する。夏油は再び前を向きながら、戦地を駆け抜ける指令を伝える。
夏油「このまま目的地まで走り抜ける、攻撃態勢、または進行上にいるラプチャーを優先的に攻撃。」
ラピ「ラジャー。」
アニス「了解!」
ネオン「合点承知です!」
ラプチャーという鉄の障害物を搔い潜り、またはその体に風穴を作りながら駆け抜ける。砂埃と硝煙が立ちこむ戦場の中心に向かう中、シフティーが目的地までの距離を伝える。
シフティー「残り、1.5km...!? この反応は...!」
任務中常に緊張感のあるシフティーだが、ホログラム越しに移るその表情は緊張と驚愕が混ざり合い、狼狽えているように見えていた。直ぐにシフティーはその脅威の接近について伝令する。
シフティー「トーカティブが来ます!」
ラピ「!!」
アニス「お出ましか! あいつ、指揮官様の事好きすぎでしょう!?」
計三回目の遭遇に、ラピは目を見開き無意識にライフルを握り、しつこさに嫌気を感じるアニスは冗談交じりに心情を吐露する。アニスと同じ気持ちなのか、夏油も反応し、アニスに向けて冗談を伝える。
夏油「奴にはもう用事も興味も無いのだけれど、好き嫌い以前に奴は好かれる努力をした方がだろう。
できるとは思えないが。」
アニス「はは! そうだよね?」
ネオン「私たちに対して暴力を振るうような方ですからね!」
夏油の冗談を聞いたアニスは噴き出しながら笑い、ネオンは以前の出来事で自分たちと夏油が受けたことを想起してその言い分に同意する。軽いやり取りの中、巨大な影が一瞬頭上を通り過ぎ、砂埃を巻き起こしながら落下、夏油たちの前に立ち塞がる。
機械や金属だが筋肉質とも感じられる隆起した筋肉と、大きく開かれた口は常に開かれており、生え揃っている鋭利な歯と、赤く光を放つ瞳は夏油たちに向けられる。トーカティブは夏油たちを目視で確認して、不気味な程に開かれた口が引きあがり笑みを浮かべる。
トーカティブ「久しぶりだな。さあ、お前たちの言葉を真似してみようか。」
「エンカウンター。」
トーカティブの登場に完全に足が止まる夏油たち、トーカティブは見下ろしながら不気味に微笑み続ける。その状況でラピは、モダニアまでもうすぐというタイミングで現れたことから、こちらがここまで来ることを予測していた事だと察する。
ラピ「...やはりそう上手くはいかないようね。」
ラピの発言から、潜伏していたと察した様子を見てトーカティブは更に口角を引き上げて、笑い出す。そしてこの状況も全て、ラプチャー側が計画されていることを意気揚々と話し始める。
トーカティブ「ふはは、愚かな奴らだ。全ての作戦がお前たちの思い通りに進んでいると思っているだろう。
しかし、違う。引っかかってやったんだ。お前ら精鋭共を一気に片づける為に。」
気分が高揚しているのか、トーカティブはここまで夏油たちが来れるよう誘導し、戦闘力の高い分隊を殲滅する目的だったことを明かす。トーカティブの計画を聞いたアニスは、不敵な笑みを浮かべてトーカティブに銃口を向ける。
アニス「さ~あ。片づけられるのはどっちかしら?」
トーカティブ「当然お前たちの方だ、人間もどきが。」
アニスの挑発にトーカティブは絶対的な有利が揺るがないと言いたげに、笑みを崩さずくつくつと再び笑う。ラピとネオンも自然と銃を握る力が強まり、何時でも戦闘できるように準備を済ませて、トートバッグの全体を見る。
夏油「片づけられる前に教えて欲しいのだが、エニックとどんなやり取りをしたんだ?」
トーカティブの前でようやく口を開いた夏油が話したのは、エニックとの協力関係を構築した際に、エニックとトーカティブの間に何があったのか。以前北部で質問する機会を与えられた夏油だが、結果内通者はエニックまで聞き、その後の取引の内容まで聞くことが出来なかった。
この瞬間再び質問できるチャンスだと思ったのか、夏油はトーカティブに思い切って質問した。
トーカティブ「アークを離れるお前と、皆殺しになる人間もどきには、関係ない事だ。」
夏油「そうか、残念だよ。」
質問の回答を拒否したトーカティブに対して、思わず目を閉じて心底残念そうな表情を浮かべる夏油。トーカティブが上機嫌になっているこのタイミングで、ベラベラと話して貰えると考えていたが、その予想は大きく外れてしまった。
質問を断ったトーカティブは更に口角が吊り上がり、ゲラゲラと笑い声を上げながらも、視線を夏油たちに向けている。トーカティブは上機嫌で、この圧倒的優位な状況下を心の底から楽しんでいるように見えた。
トーカティブ「言いたいことはこれで終わりか?」
夏油たちに問いかけながら、巨大な拳を天へとゆっくり振り上げていく。その影は次第に4人の体は包まれていき、目的地方面に浮かんでいる太陽が覆われる。
今まさに振り降ろさんとする巨大な拳は、上体をのけぞりながら真っ直ぐ天へと掲げるトーカティブ。
夏油「それなら先に進ませて貰う。行こうか? 皆。」
トーカティブは耳を疑った、『現在圧倒的に有利かつ、戦闘力でも高く乖離しているのはこちら側だ。最早負ける事が確定しているような物だというのに、用は無いから先に進む?』自惚れか、それともこの戦況を逆転させる手でもあるのかと疑う。
しかし、この戦場から一瞥したトーカティブは、手強そうな分隊は夏油たちを除いて二つ、かたやモダニアと戦闘し、かたや夏油たちの後方におり徒歩では絶対に間に合わない。トーカティブの優勢は絶対に揺るがないと結論付ける。
その間に夏油はトーカティブを通り過ぎ、夏油の発言に呆然としたのか出遅れて続くラピたち。トーカティブが反応するまで、4人が完全に通り過ぎ、コケにされた屈辱感に怒りを乗せた拳を、夏油たちに向けて振り下ろす。
トーカティブ「この雑魚共がぁあっ!!!」
巨木のような剛腕が勢い良く振り下ろされる、直撃すれば一撃でゲル状になっても可笑しくないだろう。凄まじい剣幕で迫る必殺に対して、夏油たちは目もくれず走り続ける。突風が体から伝わったのか、アニスとネオンは冷や汗が滴り落ち、不安が募り続ける。
『ドオオン!!』
その不安は、通り過ぎた烈風と共に、戦場中に轟く銃声によってかき消される。轟音はトーカティブの体に巨大な風穴がぽっかりと開いていた。穴から黒い体液が滴り始め、次第に噴水のように噴き出し始める。
先ほどの音、この場にいる全員聞き覚えがある。雪のように白く、でたらめのような大きさの対艦ライフルを、涼しい表情で発射して攻撃できる存在に。
スノーホワイト「お前たちが急に動き出すから、軌道修正が必要になった。」
夏油「君にとってはなんてこと無いだろう?」
スノーホワイト「無論だ。」
スノーホワイト、アーク
ラピ「ピルグリム...」
ネオン「師匠...まさか来ることを知っていたのですか...?」
夏油「ああ、トーカティブと交戦する為にこの戦いに参加する事は聞いていた。
私たちを追跡しているとは思わなかったが。」
アニス「ええっ!? 何時から付いて来てたの??」
スノーホワイト「最初からだ。」
ネオン「わぁ、全然気付かなかったです!」
あっけらかんとした表情で答える夏油と、変わらない表情で答えるスノーホワイト。ネオンは追跡していたことに全く気づかず、アニスは戦闘中に手助けして欲しかった心情を吐露する。
アニス「ちょっとは助けてくれてもよかったのに~」
スノーホワイト「今助けている。」
アニス「......指揮官様は何で言わなかったの?」
夏油「彼女の奇襲を成功させる為、奴に悟られる訳にもいかなかったのさ。」
アニス「......」
相変わらず無愛想な表情で答えるスノーホワイト、夏油は親指をトーカティブに向けてアニスに伝える。質問に対する答えは納得できるものであり、あまり消耗せずモダニアを抜いて戦力の高いトーカティブに、奇襲で大きな一撃を与える作戦はかなり有効である。
実際にこうして話している中でも、トーカティブの自己修復は完了しておらず再生中だ。スノーホワイトは再び対艦ライフルの銃口をトーカティブに向ける。
スノーホワイト「行け、夏油傑。こいつは私に任せろ。」
夏油「ああ、頼むよ。」
夏油の返答にスノーホワイトは静かに頷いた。夏油たちはモダニアの交戦地に体を向ける。しかし、項垂れているトーカティブの赤い瞳が、より一層輝きをまして咆哮をあげる。
トーカティブ「ふざけるなぁあ!!!」
トーカティブの中心から、咆哮交じりに衝撃波が広がっていき、地面を震わせると錯覚する勢いに、シフティーがホログラム越しから状況説明する。
シフティー「トーカティブ! 出力上昇! これまで感知されたことのない数値です!」
やがてトーカティブの体から赤い稲妻が帯電し、地面を走って全身から威圧感を全方位に発する。怒り、憎しみ、恨み、負の感情が爆発したのような姿を、威圧と共に夏油たちに向ける。
スノーホワイト「...それはまずい。」
夏油「援護した方がいいかい?」
スノーホワイト「ああ、アイツを撒いてから行くのは難しそうだ。」
トーカティブの異常な変化に、スノーホワイトの表情が少し強張り、対艦ライフルを向け、ラピたちも視線をトーカティブに戻して戦闘準備を整える。
拮抗状態の中、トーカティブの背後から風を切りながらも音を響かせる音が聞こえてくる。音は少しずつ大きく...いや近づき高くなっていき、この音に聞き覚えがあるのか、アニスとネオンはふと声が出る。
アニス「...排気音?」
ネオン「あ、これ...聞いたことがある気がします。」
アニス「私も。」
アニスの発言から、何らかの車両の排気音だと分かり、トーカティブは振り向いて近づいてくる車両を確認しようとする。
トーカティブ「!!」
後ろから来たバイクが、ウィリーの状態でトーカティブを乗り上げるように轢き飛ばし、その勢いのまま夏油たちの頭上を飛び上がる。通り過ぎた後着地し、地面に足を付けながら車体を横にスライドしながら
頭上を通り過ぎたバイクを見ると、黒いボディを基調とし金色のフロントサスペンションが一際目立つデザインだ。視線が釘付けにされているアニスとネオンは、そのバイクに近づき目を輝かせる。
ネオン「わあ! バイクです!」
アニス「うわぁ! バイク!」
????「間に合ったみたいだね。」
バイクの持ち主が夏油たちを一瞥して、無事を確認する。アニスとネオンの背後から、更にスノーホワイトまでも、トーカティブに向けていた対艦ライフルを降ろして、颯爽と現れたバイクに視線を向けていた。
辺りを見渡している際に、アニスとネオン以上にスノーホワイトの視線が強かったのか、バイクをじっと見ているスノーホワイトに顔を向ける。
スノーホワイト「......」
????「......」
夏油(バイク...確かブリーフィングに配られた資料にあった...カフェ・スウィーティー分隊のシュガー...)
夏油はバイクの持ち主である彼女の顔から、ヘリコプター内で受けたブリーフィングの資料に、地下施設の爆破の分隊資料に載っていた顔から名前を思い出す。名前はシュガー、テトララインに所属するニケであり、便利屋として活動しバイクの扱いに長けている。
彼女の愛車であるバイクの名前はブラックタイフーン、使用武器はレバーが取り付けられたショットガン。グリップ部分に指が入る楕円形のレバーがあり、発砲後手動で奥に倒すことで装填が素早くなる他に、レバーを持って銃を回転させるスピンコックで、馬上やバイクでもショットガンによる射撃を可能としている。
ター
スノーホワイト「バイク、格好いいな。」
????「ありがとう。」
スノーホワイトも本心でシュガーのバイクを褒め、シュガーも純粋に褒めてくれたスノーホワイトに感謝する。スノーホワイトから夏油に向き直るシュガーは、直ぐに出発するよう呼びかける。
シュガー「乗って。」
夏油「えっ?」
シュガー「乗れ。」
シュガーの言っている事が理解出来なかったのか、聞き返す夏油にシュガーは短い言葉をさらに短くして伝える。しかし、4人も同乗して走れるのかと疑問に感じ、シュガーに質問する夏油。
夏油「走れるのかい?...4人も?」
シュガー「ブラックタイフーンは丈夫だから。」
夏油「ああ...分かった。」
自信満々にグッドサインを出すシュガーと、そこまでの重量を耐えられるように設計しているとは思えない夏油は、気持ちを押し殺しブラックタイフーンに跨る。全員乗った後、ラピがスノーホワイトに改めてトーカティブの相手を任せても良いか尋ね、スノーホワイトは疑念を抱いているラピの背中を押す。
ラピ「ピルグリム。...いや、スノーホワイト。
ここを任せてもいい?」
スノーホワイト「信じて任せろ。」
スノーホワイトの返答に信じて頷くラピは、先に進むことを決意してモダニアの交戦地に視線を向ける。シュガーは調子を伺うように、アクセルを捻って何回か吹かし、問題ないと分かったのか頷く。
トーカティブ「ふざけるな! 逃がさない...!」
風穴が空いた腹部の再生が終わったのか、口から黒いヘドロを巻き散らしながらも体を起こし、定員オーバー気味なバイクに殺意を向ける。が、虚しく轟音と共に吹き飛んでいく。
『ドオオン!!』
トーカティブ「ガハッ...!」
トーカティブの胸部が抉れ飛び散っていた、スノーホワイトのライフルから硝煙が立ち昇ることから、今度は至近距離で放ったのだろう。トーカティブのダメージ被害が甚大な規模に広がっている。
スノーホワイト「貴様の相手は私だ。」
トーカティブはエネルギー分配を自己修復に集中させて、スノーホワイトの攻撃から搔い潜る方法を思考する。トーカティブの動きが完全に止まったことを目視したアニスは、直ぐに出発して距離を取れると考え、出発するよう催促する。
アニス「よし、今のうちに早く逃げるわよ。」
ネオン「安全運転をお願いしますね! シュガー!」
シュガー「ええ。」
夏油たちを乗せたブラックタイフーンは、死地に向けて吠えるように排気音を轟かせる。トーカティブは再生に集中している為、見送る事しかできず歯ぎしりしながらスノーホワイトを睨みつける。
トーカティブ「過去の遺物...貴様らさえいなければ...!」
スノーホワイトは夏油を見送り、トーカティブに視線を戻しつつ対艦ライフルを格納して武器を取り替える。バイクの排気音と大地を疾走するブラックタイフーンの走行音の中に紛れ、スノーホワイトの声が耳に届く。
スノーホワイト「セブンスドワーフ...」
書いていたらまた10000文字を超えてしまった...長くなってしまって本当に申し訳ございません。8章の内容の殆どは長文が多くなってしまいました...
花御「? 真人がいないようですが。」
漏瑚「どうやら用事があるのだそうだ、夏油も了承していたぞ。」
陀艮「ぶふぅ~?」(どこいったんだろう~?)
漏瑚「さあな。しかし今回の話、露骨に解説が多かった気がするぞ。」
花御「調べていたら何だか手が止まらなくなったそうですよ。」
漏瑚「区切りを付けて要約しろ、文章が多ければ良いという訳ではないというのに...」
陀艮「ぶふぅ、ぶふぅ~...」(いっぱい書いてあると、どこ読んでたかわかんなくなっちゃう...)
花御「一話と最新話の落差が激しいのはそれが理由では?」
漏瑚「いや、小説の書き方が不出来なのではないか?」
陀艮「ぶふぅ。 ぶふぅ、ぶぅぶふぅ~。」
(次回。
花御「このペースだと第8章が10話分になりそうですね。」
漏瑚「勝手に燃え尽きて完結しないか心配どころだな。」