トーカティブをスノーホワイトに任せて、現在アブソルートが交戦しているモダニアの元まで向かっている夏油たち。ブラックタイフーンは4人追加しても速く走り、順調に目的地までの距離を縮めている中、アニスとネオンはスノーホワイトを心配する様子を見せていた。
アニス「あの状況の流れで、スノーホワイトにトーカティブを任せたけど...大丈夫かしら。」
ネオン「自己修復機能が備わっていますからね、条件さえ揃えばイタチごっこですよね?」
いくらピルグリムの戦闘力が優れているとは言え、自己修復機能が備わっているタイラント級特殊個体のトーカティブが相手だとかなり分が悪いと考え始めていた。不安が募っていくアニスとネオンに、待ったをかけたのは夏油でもラピでも無く、バイクを運手しているシュガーだった。
シュガー「あの人なら大丈夫。」
アニス「何でさっき会ったばかりなのに断言できるのよ。」
ネオン「何か確信でもあるんですか?」
自信があるシュガーに対して、何故確信めいたことを言えるのか疑問に思うアニスとネオンは、問いかけてみるが、彼女たちの想像した答えとは全く違う答えを告げる。
シュガー「あの人は、ブラックタイフーンを恰好いいと言ってくれたから。」
アニス「そ、それだけ...?」
ネオン「それ以外に何か...」
シュガー「? それ以外に何か必要??」
アニスはシュガーに対して、まともな返答をしてくれる考えをした自分に頭を抱え、ネオンは通ずるところがあるのか、一定の理解を示していた。その話をする中で、ラピは過去の出来事を踏まえてスノーホワイトは果たしてくれると信頼を寄せる。
ラピ「過去に彼女は、一人だけでも離脱できた状況だったのに、アンリミテッドに救援を要請してくれた。
彼女ならきっと果たしてくれるわ。」
アニス「ラピ...」
ネオン「そうですね...北部で助かったのも、あの人のおかげでした...」
ラピの発言に納得を示すアニスとネオン、ヘレティックとの戦闘後に動けない状態のラピたちがたすかったのは、合流したスノーホワイトがアンリミテッド分隊を案内出来たからである。その気になれば、スノーホワイト一人でも立ち去ることができる状況だったにも関わらず救助に向かった。
北部での出来事を思い返したアニスとネオンは、スノーホワイトの安否を止めてトーカティブを倒してくれると信じ、モダニアの戦闘区域に目を向けて自分たちの目的に集中する。気構えをしていたラピたちだが、バイクの出力が心なしかみるみる落ちていき、排気音も徐々に弱まってブラックタイフーンが完全に停止する。
シュガーは、ブラックタイフーンの燃料の残量を示すフューエルメーターを確認し、夏油たちもシュガーの視線の先を覗き込むように見ると、メーターの表記が燃料が空になり、赤く点滅していた。
シュガー「燃料が切れたか。」
アニス「......」
ネオン「......」
ラピ「......」
先程まで咆哮を上げていたブラックタイフーンは、全く声を出さなくなってしまった。燃料切れになって固まるラピたち、原因が分かったシュガーは直ぐに降りて歩きで行くように伝える。
シュガー「ここからは歩いて。」
アニス「何やってるのよ、もう~!」
夏油(まあ、5人も乗ったらその分燃費も悪くなるよね。)
こうなることは何となく察していた夏油は、頭を抱えているアニスと表情が変わらないシュガーを遠い目で見ていた。夏油たちはシュガーの指示を聞いて降りた後、現在距離がどのぐらいかを伝える。
シュガー「ほぼ着いてると思うよ。」
ネオン「ほぼってどれくらいですか?」
シュガー「本当にほぼ。」
ネオン「わぁ、目の前ですね!」
アニス「はあ、うざい。」
詳細な距離を尋ねたつもりが、シュガーの目分量で返されてしまった。ネオンは向かっていた方向に目を向けて、アニスは肩に重荷を背負っているかのようにげんなりしている様子を見せる。
シュガーの伝えた情報に補足するように、ホログラム越しにシフティーが伝える。
シフティー「目標地点まで残り300mくらいです。」
シフティーの通達に間違っていないと食い込むように言うシュガーも、ブラックタイフーンから降りて、バイクに取り付けられていたホルスターからショットガンを取り出す。
シュガー「ほら。ほぼ着いたって言ったでしょ? じゃあ、行って。
他の奴らが追い付けないように、食い止めててあげるから。」
スノーホワイトと同様に、余計な邪魔が入らないようにここでラプチャーの相手をするとシュガーは言う。げんなりした雰囲気から一変して、アニスはここに押し寄せるラプチャー大軍を捌き切れるのか不安な様子を見せる。
アニス「大丈夫?」
シュガー「問題ないよ。燃料よりも弾丸を多く積んできたから!」
アニス「燃料を積んできなさいよ~!」
アニスが心配しているラプチャーの相手の対策として、ブラックタイフーンのリアボックスからギッシリ敷き詰められた弾丸を決め顔で見せるシュガー。アニスはその収納スペースを燃料に回せば、縮められなかった移動分を補えたと分かって再び頭を抱えながら叫ぶ。
ラピはシュガーにラプチャーの相手を任せ、シュガーも答えてショットガンを構える。
ラピ「よろしく頼むわ、シュガー。」
シュガー「そう。」
アニス「でも
ラピとのやり取りを終えた後に、改めてシュガーに問うアニス、シュガーはアニスが何に心配しているのか分からず聞き返す。
シュガー「何が。」
アニス「私たちの道を開けさせる為に、大勢のニケが動員されているでしょう。
言わば賭けみたいなものじゃない? 私たち、マリアンに何の影響も与えられないかもしれないのよ。」
夏油「......」
アニスが気掛かりだったのは、この作戦に参加する意義について、アンチェインドという不確定要素が齎す効果によって結末が決まる。あながち間違いではなく、初弾撃ってみなければ分らない物に頼って、傷つき倒れていく中、成果が無いかもしれない可能性がある。
夏油も葬る覚悟はしているが、出来る事ならマリアンを救いたいという気持ちは変わらない。無意識に拳を握る中、シュガーはアニスの問いに答える。
シュガー「私ね、勝率の低い賭けは嫌いじゃないかな。」
アニス「あなたはそうかもしれないけど、他の奴らは...
あ、命令だから別にそうでも無いか...」
この総力戦は、指揮を執っている人間に命令されて参加していると考えると、辞退出来ないと察したアニス。しかし、その考えをシュガーは真っ向から切り伏せる。
シュガー「皆この作戦に同意してるわ。異を唱えた人は1人も居なかった。」
アニス「......何?」
シュガーの返答に理解できなかった、この作戦の参加に拒否した者が居なかった事に驚愕する。分の悪い賭けじみた戦いに進んで参加するなど、正直見込みなど無いと考えていた。
シュガー「皆期待してるのよ。もしかしたら...本当に、もしかしたら...」
シュガーの言葉は、この作戦に参加して戦っている人々全員の大弁だった。地上を奪われ、地下に逃げて暮らしてその日暮らしを繰り返している中、元ニケだったヘレティックがまたニケとして戻ってくるという可能性。
余りにも現実から逸脱し、それでも手を伸ばしたくなる奇跡だ。ニケとなってから、仲間を失う苦しみや悲しみを知っているからこそ、成し遂げてでも少しでも前に進む。
今まで倒れた仲間や、受けてきた苦しみには、きっと意味があったのだと。それは今後も意味があり、次の奇跡を叶えられる希望なのだ。
シュガー「こんな時代でしょう? こんな私たちだし。
希望とは道標であり、道を示すには道を進む存在が不可欠だ。今夏油たちは、この戦場で奇跡を望んでいる全ての希望であり、奇跡を齎してくれることを望んでいる。
シュガーの代弁を聞き入れ、ラピは肩にかけていたライフルを両手で持ち、アニスはシュガーの話を真剣に聞いたうえで肩にかけているスリングを握り、ネオンは眼鏡を掛け直しながらも静かに聞いていた。
夏油「約束する、希望になると。」
そして改めて、葬る覚悟ではなく、救い出し導く覚悟を抱く夏油は、シュガーの願いに答える。夏油の言葉を聞いて、綻んだ笑顔を見せたシュガーは頷き、夏油たちを送り出す。
シュガー「そう。
じゃあ、早く行って。
歩いて。」
アニス「一言多いんだから~!」
再び叫ぶアニスだが、その表情は決意めいたものを感じさせ、ラピたちも同じ表情でモダニアの元に向かう。歩いていく夏油たちを見送ったシュガーは、ショットガンのレバーを持って回転させ、点々と輝く赤い光に銃口を向ける。
同時刻、廃墟となった建造物の間を縫うように駆け出す巨体、片足に風穴が開いて勢いのまま転げ回る。
トーカティブ「グガァッ!?」
スノーホワイト「次弾装填。」
スノーホワイトは全ての武装を総動員し、トーカティブを追い詰めていた。確実に止めを刺すように、照準を頭部に固定してゆっくりと引き金に指をかけていく。
トーカティブ「ガァアッ!!」
巨大な右拳を振り上げて地面に叩きつけたトーカティブは、自身の体を容易に隠せる砂埃を周囲に散らす。スノーホワイトはゴーグルからホログラムを投影する。
スノーホワイト(目眩しか、サーモグラフィーを起動。ターゲットパターントーカティブに該当する対象に照準を固定。)
次の瞬間、スノーホワイトの視界はグラデーションがかった三原色になり、熱源が一番高い物体を隈なく探し、高速で動く熱源を発見する。
スノーホワイト(早い、そしてモダニアの交戦地に向かっている...)
迷う暇もなくスノーホワイトは、高速で移動する熱源を狙い撃ち、風穴から熱が広がり残骸を巻き込んで爆ぜる。
スノーホワイト(爆発が小さい...!?
再び周囲を確認しようとスコープを覗き込むが、背後から機械音が響き耳に届く。反射的に振り向きざまに引き金を引いて、ラプチャーの雑踏を吹き飛ばす。
スノーホワイト(...あそこか!)
トーカティブを視界に捉え、瞬く間も無く引き金を引く。弾道は風を切り裂き、音の壁を突き破ってトーカティブに向かっていく。
しかし、弾は当たる事なくトーカティブの肉体から逸れる、立ち塞がったロード級ラプチャーの壁によって。トーカティブは更に距離を話していき、廃墟街から出ていくように駆け出していく。
スノーホワイト「逃すか!」
対艦ライフルを背負って、トーカティブを追いかけるスノーホワイト。前方には群がっているラプチャーの大軍、小型から大型までバラバラだが、共通してトーカティブまでの道のりを塞ぐように集まっている。
スノーホワイト(廃墟街を逃げ回っていたのは、仲間を集めるための時間稼ぎか!)
スノーホワイトの接近に気づいたラプチャーの軍勢が、赤く光るコアをスノーホワイトに向けて攻撃を開始する。弾道を搔い潜るように避けていき、進路上にいるラプチャーを殲滅していくが、トーカティブに追いつけず、ラプチャーの妨害が苛烈化していく。
スノーホワイト「邪魔をするな!!」
格納されていた武装が展開されてラプチャーの壁を叩いて砕く、それでも迎撃している間にトーカティブは更に引き離し、廃墟街の出口に向かっていく。
スノーホワイト「トーカティブ!!」
トーカティブ(これで巡礼者は追いつけない、このまま
全速力で夏油のいるモダニアの元まで必死に駆け出すトーカティブ、視線の先にある目的地に集中してスノーホワイトはラプチャーに任せて向かう。そして、この廃墟街を離脱したトーカティブの周りに、再び砂埃が立ち昇る。
トーカティブ(一体...何が...)
トーカティブはうつ伏せのような状態で、廃墟街の出口の前に倒れている。全く理解できない状況から、何があったのかを思い出すように振り返る。
廃墟街の出口の目の前で、頭部に衝撃が伝わって地面に倒れたトーカティブ、力の加わった方向は横ではなく明らかに上からだった。
トーカティブ(まさか巡礼者!?...いや、あの数を相手にしたにしては早すぎる。
私の知らない武装...あの大軍に攻撃を受けている中でこちらを止めるなど...)
トーカティブの脳内から様々な可能性を見つけ出して思考するが、スノーホワイトの攻撃ではないことは確かだと分かる。しかし、その攻撃は威力は弱いがそこらのニケが出せるパワーではないことも分かった。
しかし、この総力戦の中でも最も強い分隊は、モダニア周辺の戦闘区域に集中していることから、ニケでも無いと考える。全く理解出来ない状況に混乱するトーカティブを、更に追い詰める声が耳に届く。
スノーホワイト「お前は...」
スノーホワイトの声が間近に聞こえたトーカティブは、足止めに集結したラプチャーが全滅したと悟り、再びモダニアを目指して前に駆け出す。
顔を上げた瞬間目に入ったのは人間の足だった、普通の、何てことはないどこにでもいる人間の足がトーカティブの顔に向かい、後方の廃墟に深くめり込むほど叩きつけられる。
トーカティブ「ウゴァア!?」
壁面に叩き付けられたトーカティブだったが、一瞬聞こえてきた声は男のもの。しかし、目標である夏油ではないことは確かだと分かる。
ダメージを受けすぎた影響か、素早く動けない状況の為に修復がてらゆっくりと顔を上げ、攻撃してきた存在に目を向ける。
トーカティブ「なっ!?」
驚愕に値する人物、いや存在がトーカティブの目に入ってきた。その存在は気さくな雰囲気でスノーホワイトに声をかけている。
「久しぶり~♪」
スノーホワイト「アイツのことはいいのか?」
「大丈夫大丈夫、本気出せば簡単に勝てるだろうし。」
その存在は黒いローブで体を覆い、体の各所に継ぎ接ぎが施され、長い髪でハイトーンのペールブルーで、異なる色の両目の......人間だった。
スノーホワイト「じゃあ何故ここに来たんだ。」
真人「俺も遊びたかったから、ちょうど
真人の指の先には叩きつけられて立ち上がろうとするトーカティブに向けられ、トーカティブ自身も真人の指差しに気付き外に出る。
トーカティブ「遊びに来た...だと?」
真人「そうそう、ずっと暇だったから相手して貰いたくってね。」
トーカティブ「貴様らと遊ぶ時間など無い...!!」
両腕、両足に力を込めて高く跳躍するトーカティブは、スノーホワイトと真人を飛び越えて廃墟街から出ようとする。およそ100mほど跳躍しただろうか、スノーホワイトの攻撃も限定されるが、最悪自ら部位を引きちぎって弾丸の勢いは殺せると踏んで、トーカティブは跳躍した。
真人「釣れないね?」
しかし、真後ろから声が聞こえて振り返ると、同じ高さまで飛び上がった真人がトーカティブを見ていた。驚愕しているトーカティブを他所に、真人は腕を巨大化させてトーカティブをボールのように握り込んで投げ飛ばす。
地面に叩きつけられたトーカティブを中心にクレーターが形成され、その威力がどれほど高いかを物語っている。地面にめり込んだ体を起こすように立ち上がり、2人に目を向けるトーカティブはモダニアの元に向かう方法を模索する。
トーカティブ「貴様...人間では無いな。」
真人「半分正解で、半分不正解。」
トーカティブ「何者だ。」
真人「俺に勝てたら教えるよ。」
トーカティブの質問に対して、どっち付かずで不鮮明な返答とニヤついてる真人の表情から、有益な情報は手に入らないと判断したトーカティブは質問を変える。
トーカティブ「貴様の目的は何だ。」
真人「いつまで時間稼ぎするつもりなのさ?」
質問を続けようとしたトーカティブだが、真人が逆に質問する形で止められ、ナノマシンで肉体の修復の時間稼ぎすら看破された。
トーカティブ「......」
真人「大体、行ったところで相手にされないと思うけど。」
トーカティブ「何...?」
ふと真人が言い放った一言に、トーカティブは疑問を抱き無意識に声が溢れる。何を言っているのか分からない様子のトーカティブを見て、信じられない表情で見つめる。
真人「えっ?...まさかマジに分からないわけ??」
トーカティブ「......」
真人の質問に対して沈黙で返すトーカティブ、唖然とした表情から先ほど以上に口角を上げて笑みを浮かべる真人は、意気揚々とトーカティブに説明し始める。
真人「じゃあ、君みたいな
お前夏油と会った時に、接敵した合図出したよね?」
夏油とこの廃墟街で出会った時、トーカティブは挑発でニケの真似をして、接敵時の合図『エンカウンター』と言い放った。これはラプチャーと出会ったときに言い放つ合図であり、トーカティブもそれを理解して夏油たちに向けて言った。
トーカティブ「...何が言いたい?」
真人「まあ、簡単に言うとね、トーカティブ...」
真人はトーカティブに近づきながら両手を頭の上まで掲げ、両手の位置を視点と合わせるように調整した後、左手の肉が不規則に蠢きながら色と形が変わる。色は灰色と黒が基調となり、瞳は赤く歯は鋭く生え揃っており、鋼鉄のような質感が感じられる。
トーカティブ「助け...て...くだ...さい...女...王...s...」
顔に変わった真人の左手が、鋭利に尖った刃物に変化した右手がに勢い良くこめかみに突き刺さり、赤黒い血液を滴らせながらトーカティブに対して満面の笑みで伝える。
真人「
トーカティブ「貴様...!」
真人の言いたいことが理解できたトーカティブは、怒りの感情を剝き出しにし赤色のオーラが体から漏れ出す。自身の感情を曝け出したトーカティブに、更に口角を吊り上げる真人はトーカティブに対して嘲るつもりなんて無かったと答える。
真人「ごめんね~俺も酷いこと言うつもりなんて無かったけど...あまりにも可哀想だったから!」
勿論噓であり、トーカティブを貶してその反応を楽しむために、わざと怒りを搔き立てるような発言を態々目の前で言ったのだ。真人の様子を遠くから見ていたスノーホワイトは、戦闘の準備を済ませてトーカティブに近づく。
スノーホワイト「無駄話は終わったか?」
真人「無駄話じゃないよ~ちゃんと有益な時間だったとも! ねっ!」
トーカティブ「黙れ...!」
真人の表情や声、仕草がトーカティブの神経を逆なでするように、怒りが無限に湧き続けている。トーカティブの様子を見て、残念そうな表情を浮かべる真人だったが、両腕を伸ばすストレッチを取って両腕に呪力を込める。
スノーホワイト「さっさと片付けるぞ。」
真人「簡単に終わらせたら可哀そうでしょ? コイツいいとこ無しだし。」
トーカティブ「貴様ラカラ殺スッ!!」
怒髪天となったトーカティブは、スノーホワイトと真人に向かって巨大な腕を振り下ろし、真人はトーカティブ以上に右腕を大きくして殴り飛ばそうとし、スノーホワイトはトーカティブの腹部に向けて対艦ライフルを構えて引き金を引く。
モダニア「......」
空を漂う機械仕掛けの巨神は、アブソルートを見下ろしていた。攻撃手段が悉く防がれ、若しくは避けられ、対してアブソルートも、ナノマシンの自己修復によって手ごたえが無かった。
しかし、アブソルートの瞳は曇っていない、それも想定され余力があるという顔を浮かべている。拮抗状態が続く中、シフティーからアブソルートに通達が届く。
シフティー「モダニア及びアブソルートと接触。」
シフティーの連絡を聞いたウンファは振り返り、夏油たちを一瞥する。ラピに顔を向けて短いやり取りを取る。
ウンファ「来たか。」
ラピ「うん。」
ウンファ「アブソルートは退却する。近くのラプチャーは相手してやる。」
ウンファはすれ違いざまに指示を送り、エマとベスティーも物質や武器を携行しながら、ラピに声援を送る。
エマ「ラピ、絶対成功してね~」
ベスティー「し、信じてるね。」
ラピ「そう。」
ラピも短く答え、エマとベスティーは頷く。
ウンファ「行こう。」
ウンファが2人を呼び、エマとベスティーは駆け出していく。
ウンファ「...」
精一杯の後押しを送るウンファ、その言葉を送った後、後ろに駆け出していき、モダニアの戦闘を離脱する。敵の増援が来たと身構えていたモダニアは、アブソルートが離れていったことから交代だと察して、頭部のアーマーから顔を出す。
モダニア「あ、選手交代ですか?
あの方たちの相手に思ったよりも時間がかかって私も少しストレスが溜まっていました。
皆さん相手にストレス解消して、早く他の方たちを相手しに行きますね。」
アブソルートの戦いでは、自身の攻撃が通らなかったのか憤りを感じており、夏油たちに対して怒りをぶつけることで沈めようとしている。夏油は構わず、体の持ち主に声をかける。
夏油「マリアン。」
モダニア「...?」
夏油が自分に対して身に覚えのない名前を言ってきて困惑するモダニア、思わず首を傾げて誰なのか尋ねる。夏油は疑問符が浮ているモダニアに、指を指して答える。
モダニア「誰ですか、それは?」
夏油「君の名前だ。」
夏油の返答に更に困惑するモダニア、忘れたのかと考えて改めて丁寧に自己紹介する。
モダニア「私はモダニア。クイーンの精鋭。
そんな変な名前ではありません。」
自己紹介に加えてマリアンであることをしっかりと否定したモダニアに対して、夏油は自分を忘れているのかと疑う。
夏油「私を忘れたとは言わせない。」
モダニア「当然覚えています。
前に私を邪魔した
モダニアに対しての認識は、あくまでスノーホワイトと共に動いていた人間程度であり、特段印象に残った場面は無いと告げている。夏油は更に切り込んで、マリアンに語りかける。
夏油「私は君の指揮官だ。」
モダニア「?? 何を言っているのか分かりませんね。」
モダニアは変わらずどこ吹く風のように、夏油の話は分からないといった様子を見せている。続けて、北部での出来事を話し始めて思い出すきっかけを与える。
夏油「君は以前、マリアンという名前を聞いて、酷く苦しんでいた様子を見せていたが、本当に覚えていないのか??」
モダニア「覚えてません。というか、時間を稼ごうとするのが丸見えですので相手したくありません。
さあ、戦ってみましょうか?」
アーマーから両翼が展開されて、超高速で発射されるミサイルが顔を出す。ラピたちも戦闘態勢に入った様子を見て、シフティーはこれ以上の説得は不可能と判断し、作戦段階を変更して進める。
シフティー「...ファイナルフェーズ、パターンBへ移行します。
指揮官。アンチェインドをヘレティックに。」
夏油「......」
シフティーの指示を聞いても、夏油の手はホルスターに向かわない。あくまでも夏油の銃は自決用、至近距離でなければ傷さえ付かない。
使うのはモダニアに一時的な戦闘力が喪失した時、もしくは確実に当たる至近距離。それまでモダニアに切り札を見せる訳にはいかない。
動きを見せない夏油たちに苛立ちを感じたのか、モダニアから先動き始める。
モダニア「あら、ここまで宣戦布告をしたのに、まだ動く気はありませんか?
じゃあ、私から行きます。」
シフティー「来ます!」
モダニアの両翼から放たれたミサイルは、少しの間その場に留まり一瞬で距離を詰めるが、ラピの銃撃で撃ち落とされる。攻撃を仕掛けてきたモダニアに対して、夏油はラピたちに指示を送る。
夏油「説得は失敗、どうやら戦闘は免れないらしい。」
アニス「そうみたいね。」
ネオン「なら、少し強引に叩き起こすまでです!」
ラピ「指揮官、改めて命令を。」
夏油「ああ...」
再びミサイルが射出されるが、向かって来る事無く瞬時に破壊される。ラピたちの銃口に硝煙が昇っていないことから、攻撃してきた存在が分からないモダニアは、アーマーの画面から生体反応を検知するがいない。
気掛かりなことを、頭の隅に追いやって再び夏油たちに視線を戻すモダニア。救い出す戦いの火蓋が切って落とされる。
次回いよいよモダニアとの決戦です...書き終わっているのに緊張してきました...
漏瑚「ようやくここまで来たな。」
陀艮「ぶふぅ~。」(かれこれ半年だね~)
花御「想像以上に時間がかかりましたね。」
漏瑚「だからこそ文章力足らずでも良い物が作れたと言っておったな。」
陀艮「ぶふぅ~。」(あとは健康になったまま書き切れるといいね~)
漏瑚「ここまで来たからには気持ちよく終わらせて欲しいものだな。」
花御「他には読者のプレッシャーに気圧されなければ良いのですが。」
陀艮「ぶふぅ?」(プレッシャー?)
漏瑚「何故プレッシャーを感じる??」
花御「どうも勝手に強迫観念に囚われるようです。」
漏瑚「勝手に追い込んでいるだけではないか...」
花御「次回。 虚言、
陀艮「ぶふぅ~。」(ところでさ~)
漏瑚「どうした?」
陀艮「ぶふぅ~、ぶふぅ~?」(この作品って第8章で終わるって噂だけど、ホントなの~?)
花御「さあ、どうでしょうね。」
漏瑚「それは今後分かることだ。」