特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

55 / 70
 前は一週間でUA1000だったのに、最近は一週間で2000ずつ上がってる!? 調整平均の数値も少しずつ上がって嬉しいです。

 SIN EDITORのストーリー見たんですが、キャラクターのビジュアルから想定以上に重いストーリーでした...それはそれとしてラプンツェルと同じ気配を感じたのは私だけではないはず。

 そして改めてベルベットを見たけど、あの人スタイルと服装の際どさが破壊力Aなんですが。月までぶっ飛ぶこの衝撃(パワー)、加えて COIN RUSH のイベント衣装まで...買えと自分の本能が言っている。


裁定(さいてい)

 ある部屋の一室、女性は手元にある束ねられた紙を見つめていた。その内容の一部には、こう記述されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調査指令書

文書番号:暗殺指令 19320 - 09 号

 

 

対象:夏油 傑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――議論された主な内容は以下の通りの疑いがある。

 

● 地上奪還に積極的ではない。

 

● 違法サイトを通じて麻薬や違法チップを取引している。

 

● 偏った思想でニケを扇動している。

 

● ヘレティックを自身の分隊に引き入れ、個人には有り余る戦力を保持している。

 

 

 上記のような疑いにより、アークに大きな危険(テロやデモなど)をもたらす恐れのある主要人物として、ターゲットの身辺調査を命じる。上記の疑いに一致する言動や証拠を発見した場合、またはアークに対して敵意や反逆の意図を確認した場合は―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターゲットを暗殺せよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女性は指令書を見て、記述されている内容を確認して課せられた任務を頭に入れている中、スマホからバイブレーション音が小さく鳴りだし、1コールの内に画面を確認する。表示されたのは、通話アプリの画面だった。

 

 

 

 

  D

 


 

 X

 (指令書は確認したか。)

 

 

 D

 (ああ。)

 

 

 X

 (そうか。)

 

 (Ⅳが提起し)

 

 (ジャッジス全員が賛成した。)

 

 (理由は指令書に書かれている通りだ。)

 

 (Ⅳの言葉を借りて

  もう少しの説明を付け加えるなら)

 

 (彼が地上へ向かう目的は

  奪還ではないらしい。)

 

 

 D

 (じゃあ何だ?)

 

 

 X

 (自分の利益のためだそうだ。)

 

 (アークに持ち込んではならない

  地上のものを運び、)

 

 (違法サイトで取引している。)

 

 (そしてアウターリムにも

  流しているようだ。)

 

 (他にも副司令官からの資金を

  横領しようとした動きもあった。)

 

 (同行しているニケは

  事情を知らないらしい。)

 

 

 D

 (そこまで分かっているなら、

  何故暗殺ではなく調査なんだ?)

 

 

 X

 (あくまでその疑いがある

  ジャッジスも調べたが、)

 

 (隠蔽工作が上手いのか、

  確証となる証拠は掴めなかった。)

 

 

 D

 (疑いを確証にするための

  身辺調査という訳か。)

 

 

 X

 (そうだ、

  ジャッジスを欺く程の工作技術に加え、)

 

 (ヘレティックの撃破によって、

  彼の知名度は飛躍的に上がった。)

 

 (時期としては最適。)

 

 (ジャッジスは彼が近いうちに

  大規模なテロやデモを起こす可能性があると判断し)

 

 (君に暗殺指令を下した。)

 

 (Ⅳがこう言っていたよ。)

 

 (時限爆弾だ、と。)

 

 

 D

 (いつどこで爆発するか分からない...)

 

 

 X

 (そう、それだけ危険人物なんだ。)

 

 (Ⅳの言葉も間違っていない。)

 

 (彼には多くの特権が与えられているが)

 

 (悪用するなら話は変わる。)

 

 (大事件が起きる前に

  対策が必要ということだ。)

 

 (説明はこれくらいでいいだろう。)

 

 (指令書の通り証拠が見つかり次第、

  その場で暗殺して構わない。)

 

 (準備は一任する。)

 

 

――――――――――END――――――――――

 

 

 通話が終了してスマホの画面が暗転する。Dと呼ばれた女性はスマホを机に置き、持ち帰るように再び指令書を手に取る。

 

 

D「夏油 傑...噂と違うな。」

 

 

 再び手に取った指令書を、ゴミ箱に向かって投げ捨てるように手を放して、失望したような眼差しを向けていた。

 

 

D「結局、他の人間と変わらないのか.........」

 

 

 しばらくくしゃくしゃになった資料を見ていたが、気持ちが切り替わるように表情が戻り、足早に玄関に向かっていく。

 

 

D「実際に会った方が早いだろう。確認しに向かうか。」

 

 

 リビングの片隅にある道具が入っているカバンを肩にかけながら廊下に入り、通りすがりにリビングの電源を切る。

 

 

D「死んで当然の人間ならば、容赦なく手に掛け、彼が無実ならば......」

 

 

 廊下から玄関が目の前まで移動しドアノブに手をかけようとしたと同時に、カバンから斧を取り出し柄をしっかりと握りしめる。瞼を細めるDだが、軽く頭を横に振って斧を仕舞う。

 

 

D「...ひとまず出発だ。」

 

 

 雑念や疑念、私情を振り払いDはホテルを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿所で読書していた夏油は、読んでいた本にしおりを挟んで本棚に戻す。

 

 

夏油「そろそろトレーニングセンターに行こうかな。」

 

 

 ロッカーを開いてスポーツウェアなどが入っているバッグを背負い、宿所から総合体育館に向かっていく。

 

 

D「......。」

 

 

 宿所から出ていく夏油を目視したDは、宿所の扉をそっと開いて部屋に監視カメラが無いか調べる。

 

 

D(カメラは四隅...死角が小さすぎる...)

 

 

 Dはスマホを開き、アプリケーションを開いてコマンドコードを入力後に実行する。四隅にあった監視カメラが。起動している信号を示している赤い光が消灯する。

 

 

D(よし...)

 

 

 監視カメラの機能が停止したことを確認して、指揮官室の捜索を開始するD。ロッカーの中や庭、あらゆる所から疑惑に関する証拠が無いかを探すが成果は無い。

 

 そしてモニターがある机の下を注視して、パソコンを見つけたDはパソコンを起動してパソコンに保存されているファイルを確認する。

 

 

D(...作戦報告書、前哨基地にある施設の点検、作戦行動を共にしたニケに関する資料と戦果...可笑しいところは無いな。)

 

 

 パソコンのエクスプローラーから資料を探し出そうとするが、足すら掴めずに操作を続けていた時、あるフォルダを開こうとしてダブルクリックしてウィンドウが表示される。

 

 

D(...パスワード、フォルダ名は『㊙』...これか。)

 

 

 それらしきファイルを見つけたDは、パソコンにUSB経由でスマートフォンと接続する。監視カメラと同じアプリケーションを起動し、別のコマンドコードを入力し黒い画面に白い英数字が高速で書き込まれていく。

 

 コマンドコードを実行して最後に表示された4桁の数字を入力して、フォルダを開くとExcelファイルが一つあった。

 

 

D(エクセルのファイル名は...HAB、計画の資料か、それとも暗号か。)

 

 

 Dは早速Excelファイルを開き、マウスをスクロールしながらその内容を確認する。

 

 

D「......」

 

D「......」

 

D「......?」

 

 

 疑惑に関する手掛かりがあると思っていたExcelファイルには、特にそんな情報が一欠けらも無く、書かれた文字を小声で呟く。

 

 

D「食費...光熱費...庭の維持費...任務の報酬...」

 

 

 そこには支出と収入の金額と、その内訳や内容について詳しく書かれ、一番下の行には合計金額と残高が明記されていた。

 

 

D「...家計簿(H()ousehold A()ccount B()ook)...?」

 

 

 ファイルに記述されていた内容から、ファイル名のHABは家計簿の H()ousehold A()ccount B()ook の略だと気付き、思わず頭を抱える。それでも内容を一通り確認するために、画面をスクロールしていくD。

 

 

D(...? ショッパホリックからの収入...。)

 

 

 その中でもテトラTVで、個人配信しているルピーのオンラインショッピングモールのチャンネルショッパホリックから、これまでの任務で得られた任務の平均金額を上回る多額の資金を受け取っていると分かった。

 

 

D(任務によっては報酬より高い...洗う必要があるな。)

 

 

 DはExcelファイルをスマホにダウンロードして、ジャッジスに調査してもらう為に通話アプリで送信する。

 

 

 

  D

 


 

 X

 (なんだこのファイルは。)

 

 

 D

 (ターゲットのパソコンから入手した

  Excelのファイルだ。)

 

 (パスワードが設定されたフォルダにあった。)

 

 (ファイルの下にある

  ショッパホリックから金が流れている。)

 

 

 X

 (......)

 

 (確認した、不自然だな。)

 

 (ショッパホリックとの接点は

  見られなかったが...)

 

 

 D

 (このファイル以外に

  疑いに関連する証拠が無い。)

 

 (私はターゲットの尾行を開始する。)

 

 

 X

 (了解した、その間に

  金の流れを洗ってみよう。)

 

 

――――――――――END――――――――――

 

 

 通話を終えたDは、パソコンを閉じスマホにコマンドコードを打ち込みながら部屋を退室し、停止していた監視カメラから赤い光が発行する。その後、夏油が向かった総合体育館を目的地に移動を開始する。

 

 

 

 総合体育館に到着すると同時に、運動を終えた夏油が外にいた仲間と合流する。

 

 

D(あれは...カウンターズのアニスか。)

 

アニス「やっほー指揮官様! 今時間ある??」

 

夏油「あぁ、今日は暇だよ。」

 

アニス「じゃあ、ちょっと付き合っ(デートし)てくれる?」

 

夏油「いいよ、何処に行くんだい?」

 

 

 アニスと共に夏油は一緒に歩き出していく中、Dは十分な人目につかない建物の陰に隠れながら、指向性マイクを向けて二人の会話を聞く。

 

 

アニス「ロイヤルのモールよ、アクセサリーを見ようと思って。」

 

夏油「それじゃあ、私が荷物持とう。アニスはショッピングを楽しむといい。」

 

アニス「ありがとう指揮官様♪...そういえば、指揮官様っていつも体育館に行くの?」

 

夏油「1時間くらいの暇があったら通っているけど...?」

 

アニス「ルマニがいるのに、よく耐えられるわね...。」

 

夏油「君たちの足手まといにならないように鍛える必要があるからね。」

 

 

 二人は会話を続けながら、アークの市街地の一角ロイヤルにあるアクセサリーショップに入る。あるブランドの商品があるショーケースから、アニスは見て回っていた。

 

 

夏油「新作は見つかった?」

 

アニス「うん、あったわ。指揮官様は特に無い?」

 

夏油「無いね、気にせず自由に回ってくれ。」

 

アニス「は~い♪」

 

 

 見終わったのか店員に声をかけて、目当てのアクセサリーを指差して会計を済ませる。その後アークで解散して夏油は一人になっていたが、別の人物が夏油に声をかける。

 

 

D(今度はラピか...)

 

ラピ「こんにちは、指揮官。」

 

夏油「やあ、ラピ。」

 

ラピ「指揮官、今お暇ですか?」

 

夏油「ああ、どうかしたのかい?」

 

ラピ「現在宿所にある日用品がそろそろ底を付きそうなので、連絡して調達しようと思っていたのですが...」

 

夏油「それじゃ、一緒に行こうか。食料品も確認しないとだしね。」

 

ラピ「了解しました。」

 

 

 そうして夏油とラピは、アークのショッピングモールで日用品と食料品の購入を調達した。Dはその様子を死角から見続けている中、目の前にいた男性が微笑みながら夏油に近づき声をかけてくる。

 

 

??????「やあ、久しぶり!」

 

夏油「ああ、久しぶりだね。」

 

ラピ「...?」

 

D「...?」

 

??????「最近見かけないから心配したよ。」

 

夏油「最近忙しかったんだが、ようやく休みを貰えたんだ。」

 

 

 声をかけられた後、親しげに話す夏油と怪しげな開発者らしき男に困惑するラピとD。男は嬉々とした様子で夏油に感謝を伝える。

 

 

怪しい開発者「あ、麻薬チップを新しく作ったんだ。君がアイデアをくれたおかげだよ!」

 

D(麻薬チップ...住民の証明である認識チップか違法に作成した違法チップに麻薬があるのか?...体内に入れることで体中に広がって...)

 

怪しい開発者「時間があったらお店に寄ってよ。色々サービスするからさ。せっかくだから今行かないか?」

 

 

 麻薬という単語を聞いて、Dとラピは眉間にしわを寄せて、男と夏油に対して警戒した様子が伺える。興奮している男とは対照的に、夏油ははしゃいでいる男に呆れていた。

 

 

夏油「はぁ...今は無理だ、連れがいるんだよ。」

 

怪しい開発者「おっ、誰? もしかして彼女?」

 

ラピ「違うわ。それより、その麻薬チップについて詳しく聞いてもいいかしら...?」

 

 

 男はラピにも興味が沸いたと笑顔を見せていたが、分かりやすく怒気を含んでいる声にしどろもどろになってしまう。

 

 

怪しい開発者「えっ? ど、どうして怒っているんだい??」

 

夏油「だから言っただろう? こういった誤解を避ける為に、お菓子の名前はやみつきチップの方がいいと言ったんだ。」

 

ラピ「お菓子の...」

 

D(名前...?)

 

 

 男の言ったチップが、認識チップだと思っていたDとラピは、お菓子の名前と聞いて思わず首を傾げる。そんな二人を置き去りにするように、夏油と男は話し続ける。

 

 

怪しい開発者「でっ、でも、クセになってやめられずやみつきになるインパクトは"麻薬"の方がいいし...それに怪しいものじゃなくてちゃんとしたお菓子だし...」

 

夏油「商品を知らない人からしたら、そのお菓子っていう単語も本物(麻薬)の隠語にしか聞こえないんだよ。それに、名前にインパクトが無くとも有名になれるポテンシャルは十分にある。

 

 今からでも名前を変更する事をオススメするよ。」

 

怪しい開発者「うぅ...」

 

 

 話を続けている夏油と男の話が一区切りついたところで、ラピは夏油に男の言った麻薬チップについて質問する。

 

 

ラピ「指揮官、その...麻薬チップとは...」

 

夏油「あぁ...彼が作ったサツマイモチップというお菓子の事だ、ポテトチップスの原料をサツマイモにしたようなお菓子だよ。ここのスーパーで試食会が開かれてアンケート調査するイベントがあったから回答したら仲良くなったんだ。」

 

怪しい開発者「確かに、それでお客が減ったら本末転倒か...ありがとう! 今からでも名前を変更するよ!!」

 

 

 男は駆け出してスーパーマーケットを出て行き、夏油は手を振って見送りラピはその後ろ姿を見続けていた。

 

 

ラピ「...彼の仕事を見る機会があれば同行してもよろしいですか? 本当にお菓子なのか気になるので。」

 

夏油「分かった、また連絡するよ。」

 

 

 体が固まっていたDは、走り去っていった男の写真を撮って、通話アプリに写真を添付して身元を確認する為に連絡する。

 

 

 

  D

 


 

 X

 (この写真の男は何者だ?)

 

 

 D

 (ターゲットと関わりがある人物だ、)

 

 (麻薬チップというお菓子と言っていたが、

  彼らの会話で正否を判断できない。)

 

 (身元を調査して麻薬を生産しているか

  明確にして欲しい。)

 

 

 X

 (分かった、こちらで調査してみよう。)

 

 (判明次第こちらから連絡する。)

 

 

――――――――――END――――――――――

 

 

 スマホの画面を暗転させて、再び夏油の尾行を続行して日用品と食料品の買い物を終え、前哨基地の宿所に戻り特に変な動きは無く、身辺調査の一日目は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日目、マリアンと共に地上から発せられている信号を調査すべく、探索を開始していた。Dは別のエレベーターを使用して、マリアンの警戒度を最高にまで上げて尾行していた。

 

 

D(あれが元ヘレティック、マリアンか...)

 

夏油「せっかくの休暇中に任務で呼び出してごめん、ただえさえ試験や調整で忙しいのに。」

 

マリアン「いいんです、私も地上で活動する時の勘を取り戻す必要がありますから。」

 

D(マリアンの戦闘力に関してはまだ未知数...動向を探って攻撃する必要があるなら解散した時だな。)

 

 

 下手にマリアンを刺激しない選択を取ったDは、攻撃するタイミングを夏油が孤立した時と決めて、尾行に徹する。地上を歩き続けて数分、ある廃墟になった小屋の中から信号の座標であることを確認して入っていき、二手に分かれて小屋の探索を始める夏油とマリアン。

 

 

夏油「...この部屋には無いか。そっちに何かあったかい?」

 

マリアン「ありました~! 多分これが信号を発していたと思います。」

 

 

 そう言って両手で抱えて持ってきたのは、アンテナが伸縮できるタイプのラジオだった。夏油はラジオを受け取り、その場でダイヤルやボタンを押して砂嵐の音が出ている事を確認し、帰る準備を始める。

 

 

夏油「まだ動くな...修理すれば使えるだろう。」

 

マリアン「工房に行きますか?」

 

夏油「ああ。前哨基地に戻って、道具を借りて修理しよう。」

 

マリアン「了解しました。」

 

 

 そうして来た道を引き返すように、前哨基地に向かって帰投を始める二人。夏油はスマホから信号の発信源はラジオだったと報告し、マリアンと会話しながら戻った。

 

 前哨基地に到着して直ぐに工房に入り、ラジオを修理して丁度よく真昼になった為、レストランによってマリアンと昼食を済ませた。

 

 

 

 昼食後、マリアンとはその場で解散して、入れ替わるように別の人物が接触する。

 

 

D(今度はエリシオンのスパイか...)

 

ネオン「師匠、こんちには。」

 

夏油「ああ、こんにちは。何か用事でも?」

 

ネオン「ええ、実はここだけの話にして欲しいのです...詳しい話は場所に着いた後で...」

 

夏油「分かった、じゃあ行こうか。」

 

 

 ネオンが先頭に立って夏油はその後ろをついていき、その背後から悟られないように距離を取って尾行するD。その行き先を予測し答えが出るより先に、目的地に到着する。

 

 

ネオン「到着です!」

 

夏油「ここは...前哨基地の武器庫...」

 

 

 夏油は察したような表情で武器庫に入っていく、Dは地下に続く階段を降り切ったタイミングを移動した時の歩幅や間隔から逆算して、数秒間を置いて自動ドアを潜り進んでいく。階段を降り切った後、スマホの外カメラを起動し設定画面からサーモグラフィーに変更、カメラに表示された夏油たちの影から射撃場にいると確認し、ダクトを通っていく。

 

 壁のダクトから、夏油とネオンの会話が聞こえてくる。

 

 

夏油「それで、君が私をここに連れて来た理由について聞こうか?」

 

ネオン「ふっふっふ...今更隠さなくてもお見通しですよ、師匠。もう気付いているのでしょう?」

 

D(デモやテロで使用する武装を、ここで収集していたのか...?)

 

 

 察している様子だが敢えて訪ねる夏油と、不敵に肩を揺らして笑いながらメガネの位置を整えるネオン。そして、武器庫にデモやテロで使用する武器が集まっているかという疑念を抱くD。スマホを取り出して連絡する前に、ネオンの大きな声が武器庫に響く。

 

 

ネオン「私の火力には...まだ先があることを!!

 

D(???)

 

夏油「つまり、ここに来たのは武装の強化に来たというわけだね。」

 

ネオン「その通りです! 正直どれが私に合うのか分からなくなってしまって、アドバイスを頂けますか?」

 

D(????)

 

 

 ダクトの中で会話に取り残されたDをよそに、夏油とネオンは武器庫から互換性のある追加パーツと弾丸を机に並べて話始める。

 

 

ネオン「使用する弾丸はこれなんですけど...今使っている弾丸の威力から単純計算で1.5倍になるんです。でも、使用し続けると腕のフレーム(骨の役割があるパーツ)に負荷がかかってしまいそうで怖いんですよね。」

 

夏油「そうなると体を強くするように一新するのが手っ取り早いけど...」

 

ネオン「体を仕上げるのにはかなり時間がかかるので...

 

夏油「限界を感じたら体を鍛えようか、まあそれはそれとして...ストックも付いているし、これから反動を抑えるとなると使ってみて確かめるしかないだろうね。この射撃場で試し打ちして、シミュレーションルームで仕上げに入ってもいいかも。」

 

ネオン「シミュレーションルームはマリアンが使っていませんでした?」

 

夏油「丸一日毎日というわけではない筈、また使える日程を連絡しようか?」

 

ネオン「ありがとうございます師匠、助かります!」

 

 

 一連のやり取りを終えたネオンと夏油は、早速ストックや他のパーツを付け替えて試し打ちを始める。Dは武器庫の武器の配備量に異常が無いか連絡して調査してもらい、その後もネオンの試し打ちは夜まで続き2日目が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日目、これまで異常な行動が見られない事から、尾行で動向を探るのは限界だと感じ、指揮官室にて夏油と接触する。

 

 

D「失礼します、本日急遽指揮官の警護と任務に同行します、Dと申します。本日はよろしくお願いします。」

 

夏油「ああ、よろしく。急な申し出を受けてくれて感謝するよ、今日は全員都合が合わなくてね。」

 

D「いえ、それより本日のご予定は?」

 

夏油「私の準備がてら説明するよ、といっても一つしか無いんだけどね。」

 

 

 そう言って水の入ったペットボトルにパーフェクトなどの食料品や電化製品、日用品や娯楽品など、どの家庭でも購入できるようなものをカバンに入れている。入れている物から、任務の内容が全く読めないDは夏油に尋ねる。

 

 

D「あの、一体何処に...?」

 

夏油「地上でもアークでも無い所。アウターリムに向かう。」

 

D「...アウターリム?」

 

 

 行き先を聞いたが、それでも目的や意図が一切読めないDは続けて質問し、夏油はアウターリムに行けるゲートに向けて歩を進めていく。

 

 

D「一体何の目的で向かうのですか?」

 

夏油「今鞄にいれたものを置きに行く、それだけだ。」

 

D(...あの鞄の中に違法物があるのか。)

 

 

 その他にこの行動に週に何回行っているのか、この行動を同じ分隊は知っているのかを質問し、夏油はそれぞれ週に一回、マリアン以外は知っていると答える。違法物を入れいている場合、そして日用品や食料品などを入れている所を見せて信用を得ているケースがあると推測する。

 

 その間にゲート前に到着した。

 

 

D(やはり...人の本性は悪なのか。)

 

 

 早計な考えを隅に置いて、2人はアウターリムに入っていく。中には光が差し込まれず、妙な悪臭が全身を包み込む。夏油はカバンを開けて、地面に中身を丁寧に置いていく。

 

 袋詰めされた食料品、開けられていない日用品、所々傷があるが使用感の薄い電化製品やセキュリティー・シールの張られたトランプや、折りたたまれたチェスといった娯楽品に建材として利用できそうな廃材が置かれていく。

 

 Dは面食らっていた、全部出したのか夏油は鞄を逆さにしたり開けたファスナーの中を確認している事から、違法物など何処にも無い。改めてDはここに来た理由を聞く。

 

 

D「ここに置かれたのは、まだ開けていない物や使える物ばかりだ。お前は何故このような善行を施す?」

 

夏油「それが君の素かい? 随分イメージが変わるね。」

 

 

 斧の刃先を夏油に向けるD、その目は夏油を見極めるように真っ直ぐ見つめていた。

 

 

D「質問に答えろ。」

 

夏油「...善行というより、私がしたくてしているだけだ。言わば自己満足だね。」

 

D「...ここにはその必要が無い事を一番よく分かっている筈だ。中央政府でも見放した場所だ、そしてお前の行動は一歩間違えば、違法行為に見える。

 

 ...後悔しないか?」

 

 

 Dの忠告、助言とも聞こえる問いに対して、大きな溜息をひとつ零して話始める。

 

 

夏油「昔の話なんだが、ある居住区に檻に閉じ込められ虐待されていた双子が居たんだ。その双子は、周囲に災いや不幸をもたらすと言われて閉じ込められていた。

 

 ここも同じさ、あの檻の中と同じ...人として間違えているにも関わらず、邪魔や不気味という理由で押し込まれた。」

 

D「......」

 

 

 夏油の内に秘める悪感情の一端が露わになる、自然と握り拳を作りこの環境を作った人物に対して嫌悪感も抱いている。

 

 

夏油「その後双子は助けたけど、今でもその行動に後悔していない。そしてもし、この世界(アウターリム)から目を背けたら、彼女たちが生きていた事を私が否定することになる。

 

 だから私は、自分にできる()を精一杯続ける。それだけさ。」

 

 

 指を指し示す方向には、先ほど並べた品々。感情が沈んでいた夏油の表情が戻り、Dに前哨基地に戻る事を伝える。

 

 

夏油「今日の予定は終わりだ、早く戻ろう。」

 

D「...了解した。」

 

 

 そうして、Dの3日目の身辺調査はこの時間に切り上げられる事になった。

 

 3日にわたる調査から、指令書に記入されている内容と全く異なると判明し、DはⅣが提起した疑惑に対して違和感を感じていた。

 

 

D「結局指令書と一致する事実は影も形も無かった。......」

 

 

 Dが尾行して記録した調査資料を送信しようとスマホを取り出した瞬間、通話アプリから通知が来ており早速画面を開く。

 

 

 

  D

 


 

 K

 (順調か?D)

 

 

 D

 (何故お前が出てくる。)

 

 

 K

 (ひでぇな、仲間が心配してんのに。)

 

 

 D

 (この任務にお前は参加していない筈だ。)

 

 

 K

 (私はニケからアイツ(夏油)の事を

  聴衆してたんだよ。)

 

 (結局影すら掴めず、

  Xから調査して欲しい事があるって)

 

 (仕事を回されたんだ。

  少しは労ってもバチは当たらないぞ?)

 

 

 D

 (調査の結果は?)

 

 

 K

 (ったく。)

 

 (結論から言うと、

  アイツはシロだ。)

 

 (それもびっくりするぐらいに真っさら。)

 

 (ショッパホリックから流れていた資金は、

  キャラクターの著作権で受け取っていた。)

 

 (社長本人から映像も込みで確認したから間違いない。)

 

 (お次に麻薬チップの男は、

  老舗の駄菓子メーカー社長の息子でな。)

 

 (ちょっと()()させて貰ったが、

  マジに野菜だけだった。)

 

 (麻薬の"ま"の字すらない、

  紛らわしい。)

 

 (そして武器庫だが、

  試射用の銃が一つずつ設置されて、

  必要な物があるなら申請する仕組みに変更されている。)

 

 (その申請書はアイツには行かず、

  中央政府に送られる。)

 

 (武器の仕入れや独占も

  ほぼ不可能と言っていい。)

 

 

 D

 (変更したのは夏油か?)

 

 

 K

 (いや、中央政府だ。)

 

 (マリアンが特殊別働隊に入ってから

  変わったそうだ。)

 

 (とまあ、報告はこんなところだ。

  そっちはどうだった?)

 

 D

 (指令書に記述された疑いや

  行動は見られなかった。)

 

 

 K

 (だってよ。)

 

 

 X

 (添付資料と報告を確認した。)

 

 (確かにⅣが送った書類と

  異なる部分が多いな。)

 

 (ジャッジス内部でも調査中らしい。)

 

 

 D

 (指令と異なり、齟齬がある。

  ターゲットを処理することはできない。)

 

 (だからもう一度確認を頼む。)

 

 

 X

 (ジャッジスも不正確な情報で

  対応することは望んでいない。)

 

 (異議申請を受け入れよう。)

 

 (これが事実であれば)

 

 (再投票になる筈だ。)

 

 (Ⅳが我々を騙そうとしたのか。)

 

 (君が我々を騙そうとしたのか。)

 

 (どちらかだろう。)

 

 (嘘の代償は死で。)

 

 (分かっているな?)

 

 

 D

 (勿論だ。)

 

 

 K

 (ハイハイ。)

 

 

 X

 (では確認ができ次第、連絡する。)

 

 

――――――――――END――――――――――

 

 

 スマホを閉じて通話アプリでのやり取りから、この件の情報を提示したⅣに対する疑念が更に募っていく。Dはカバンを背負い、出かける準備を進める。

 

 

D「......発起人のⅣ。...念のため確認しておこう。」

 

 

 ホテルの玄関を開けると、メリケンサックのような形状のサブマシンガンを持っている女性が、Dを待っているように立っていた。

 

 

D「K...。」

 

K「行き先はⅣか?」

 

D「ああ。」

 

K「それじゃあ行くか、こっちも休日潰されてイラついてたんだよ。」

 

D「私情を挟むな。」

 

K「分かってる、分かってますって...じゃあ、確かめに行くか。」

 

 

 そう言って二人は、同じ目的に向かって踏み出す。

 

 

「王冠を戴くに能うか。」

 

「地位を持つに相応しいか。」




 通話アプリの描写を作りまくっていたら12000文字を超えちゃった...それとKの出番が終盤だけだったのが、もうちょっと何とか出来なかったのかと思ってしまいました。



にけ さんぽ




 Dとアウターリムに向かった後、夏油たちは食卓を囲って鍋を食べていた。


アニス「最近冷えてきたわね...」

ネオン「こっちにも雪は降るんですね~。」

ラピ「今日みたいに降るのは凄い稀だけど。」

マリアン「でも、今日みたいな日は鍋がとっても美味しいですね。」

アニス「全く、マリアンの食欲は凄いわね~。」

マリアン「そっ!? そんなことありません!」

ネオン「いっぱい食べられるのは悪いことだと思わないんですけどね。」

マリアン「そうですよね...!」

アニス「へぇ? 例えば?」

ネオン「いっぱい食べられるということは、それだけエネルギーを蓄えられるということですから。」

ラピ「今日みたいに、地上では食事できない場合もあるから。食べられる時に食べる事は必要よ。」

マリアン「ラピ、ネオン...」

アニス「確かに一理あるわ...そういえば指揮官様、今日アウターリムに行く日じゃなかった?」

夏油「そうだね、今日行ってきたよ。」

アニス「あれ? 私の他に行ける人がいたの??」

ラピ「私は別に予定があったわ。」

マリアン「私も今日はシミュレーションルームで試験をしていました。」

ネオン「私はアークで雑誌を見ていました。誰と一緒に行ったんですか?」

夏油「Dだよ。」

アニス「ディー? ディーゼルじゃなくて??」

ネオン「Dだけですか? 英語の...??」

夏油「そう、Dと一緒に行ったんだ。」

マリアン「一体誰なんでしょう...?」

ラピ「D...指揮官、そのDはフードを被っていましたか?」

夏油「ああ、灰色のフードを被っていたよ。」

ネオン「? 心当たりがあるのですかラピ?」

ラピ「多分、シージペリラス分隊よ。」

アニス「...マジ?」

マリアン「シージペリラス...分隊??」

ネオン「確か、人間の暗殺を専門とする分隊ですよね?」

ラピ「ええ、その通りよ。NIMPHには”人間を殺してはいけない”というリミッターがあるのだけど、シージペリラスは法で裁かれない犯罪者や、その疑いがある人間を暗殺する為にリミッターが解除されてるの。」

アニス「そのメンバーの一人と一緒に行ったって事は...」

夏油「...? どうしたんだいみんな?」


 話を聞き流しているように鍋のおかずを食べている夏油を、ラピたちは食べる手を止めて見ていた。


アニス「指揮官様...一体何をしたの...?」

夏油「特に、いつも通り過ごしていたけど。」

ネオン「師匠、普通に過ごしていたらそんな人にマークされないんですよ。」

夏油「私だって聞きたいよ、特に犯罪に関わる事はしていないのに。」

マリアン「本当に違うとなると、何かの手違いでしょうか?」

アニス「暗殺分隊がそんなミスすれば解雇どころの騒ぎじゃ無いと思うけど。」

ラピ「...まさか、マリアンなのでしょうか。」

夏油「分からないけど、その可能性が強いかな。」

アニス「マリアンはアークの中でもトップクラスの戦力だもんね...」

ネオン「まさか師匠がテロを引き起こすと考えたんでしょうか...」

アニス「だとしたら失礼よね、マリアンと指揮官様がそんな事しないのに!」

夏油「それだけ怖いのかもね。」

マリアン「ごめんなさい、私のせいで...」

ネオン「何言ってるんですか! マリアンは悪く無いですよ!!」

アニス「そうよ! そうよ!」

ラピ「とは言っても、警戒する必要がありますね。」

夏油「そうだね、まだ動いていないとはいえマリアンを狙う連中は多いだろう。各自警戒を怠らないように気をつけよう。」

アニス「その為にも、まずはご飯を食べてスタミナ付けなきゃ!」

ネオン「そうですね! 火力アップの為にも!」

マリアン「みんな...」

ラピ「みんな、貴方を責めたりしないわ。一緒に何とかしましょう。」

マリアン「はい!」

夏油「あっ、雑炊食べる?」

マリアン「はい! いただきます!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。