特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 というわけで、3回連続のエリアH探索になります! 主にここではマリアンを中心とした会話が多くなります。


追憶

 マリアンを強制連行を止める条件として、トーカティブを差し出す為にエリアHに赴いた夏油たち。緊張感を抱きながら、かつての戦地に戻ってきたが...

 

 

アニス「な~んであんた達も来てるのよ。」

 

プリバティ「本当にトーカティブを持って帰れるのか確かめるだけです。」

 

 

 エレベーター前で待っている時、急遽この作戦にトライアングル分隊も加わって同行することになったのだ。詭弁を話すプリバティに、アドミとユルハが続く。

 

 

アドミ「本当は申し訳なさと後ろめたさがあったから参加したんです。」

 

プリバティ「ちょっと!?」

 

ユルハ「正直に言った方が楽よ。」

 

プリバティ「うぅ...」

 

 

 図星を突かれて思わず顔を逸らす、思うところがあったのかマリアンに向けて、改めて謝罪するプリバティ。

 

 

プリバティ「確かに...命令とはいえ、怖い思いをさせてしまいました。

 すみません、マリアン。」

 

アドミ「指揮官も、ごめんなさい。」

 

 

 2人に続いてユルハも頭を下げて謝罪し、3人の行動にマリアンは笑みを向けて返答する。

 

 

マリアン「皆さんも不本意だったんですよね? もう終わったことですし、私は気にしていませんよ。」

 

 

 マリアンの返答を聞いて、パァッと晴れ上がるような笑顔で顔を上げるプリバティ。気を取り直し、今回の作戦についてシフティーから連絡が入る。

 

 

シフティー「仲直りできて良かったです。チームの悩みがほつれた所で、今回の作戦について説明します。

 皆さんもご存知でしょうが、総力戦に現れたトーカティブの回収が目的となります。まずはヘレティック モダニアの交戦地に向かい、トーカティブを発見次第こちらに連絡して回収用の支援を要請して下さい。」

 

 

 作戦の流れは、モダニアの交戦地に向かって、トーカティブがいるであろう場所を捜索する。発見した場合、シフティーに連絡してヘリコプターを要請して、回収後に帰還して終了。

 

 質問は無いかと促し、ユルハが挙手して質問する。しかしその相手は、シフティーではなく夏油に向けられて。

 

 

ユルハ「トーカティブがいる予測地点の見当はあるの?」

 

夏油「吹き飛んだとしたら、山岳地帯あたりだと考えている。」

 

 

 エリアHにはヘレティック モダニアがアブソルート分隊と戦闘している際に、背にしていた山岳地帯にトーカティブはいると答える。

 

 その近辺は調査していないことを思い出したユルハは、その答えに納得して質問を終える。本格的に作戦が始まり、まずはモダニア交戦地を目指して歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その道中、ラプチャーがあまりいない状況に、少し違和感を感じていた面々。シフティーも観測している限り、ラプチャーの反応がない事を確認する。

 

 

ネオン「こうして出てこないと、逆に不安になりますね。」

 

プリバティ「同感です。一時間辺りで遭遇率は100%だったのに。」

 

ラピ「それだけ総力戦の際に、大量のラプチャーが集結していたことになりますね。」

 

 

 面々は戦場の跡地となっている地を、ひたすら歩き続けているがラプチャーの残骸ところか、部品一つ見当たらない。

 

 他のラプチャーが戦場で残った部品を取り込む事が無いように、総力戦後にラプチャーやニケの体は全て回収された。

 

 それでも苛烈さを感じさせる戦闘跡は、根深く残ったままだ。

 

 

マリアン「指揮官たちはここを駆け抜けてきたんですね。」

 

ラピ「そうね、目の前に立ちふさがるラプチャーを撃破して突き進んできた。」

 

アニス「あなたを助けられるなら、何てことないけどね。」

 

ネオン「火力を思いのままに開放したかいがありました。」

 

 

 改めて自分が救い出された事実に、夏油たちの強い意志を体感している中、プリバティたちは夏油から当時の状況について聞いていた。

 

 

プリバティ「指揮官は、怖くなかったんですか?」

 

夏油「何が?」

 

プリバティ「よく考えたら、乱戦状態の戦闘区域を突破するなんて正気の沙汰とは思えません。」

 

アドミ「指揮官は基本、混戦になると距離を取って通信で指揮を執ります。

 指揮官はどうして、ラピたちと一緒に行ったのですか?」

 

 

 傍から見ればおかしな事、地雷原の中を走り抜けろと言っているようなものだ。実際、総力戦の夏油の行動に対して、同じ指揮官は虚偽だと言っていた。

 

 シフティーの記録から、事実と証明されたが実際に死にかけてでも、共に歩んだ理由を聞きたくなった。

 

 

夏油「信じてたから。」

 

プリバティ「それだけ?」

 

夏油「それだけ。背中を預けられると思ったから、一緒に行ったんだ。」

 

 

 信頼だけで片付けた夏油に、プリバティとアドミはあんぐりと口を開けたまま聞いていた。

 

 

夏油「それに、大切な仲間を迎えに行くんだ。私が行かないと始まらないし、終われない。」

 

 

 その他の理由としては、任務には必ずという訳ではないが、自分にとっては絶対に必要な事だと感じて直接指揮を執ったと明かす。言わば命より、意地を優先して突き進んだ。

 

 判断に対して否定はしないが、その選択が危い事をハッキリ伝える。

 

 

ユルハ「別に貴方の考えが間違っていると、無粋な事を言うつもりは無いわ。

 でも、貴方が無理をして身を滅ぼすのは絶対やめなさい。」

 

夏油「ああ、取り残された気持ちはよく知っている。」

 

 

 ユルハの警告に、夏油は最後の青い春を思い出しながら答える。自分の意地を他者に押し付ける事はしないと、心の中で固く誓う。

 

 勇み足をして、親友との縁を一方的に打ち切ったあの日のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面に力強く残っていた車輪跡を辿って、所々崩壊している廃墟街に入る夏油たち。立ち並ぶ建造物に、大きく、丸く、きれいな空洞が各所に見られる。

 

 

プリバティ「一体何があったんですか...」

 

マリアン「多分、ピルグリム(スノーホワイト)さんが戦っていたんだと思います。」

 

ユルハ「それって、北部に出たピルグリムのこと?」

 

ラピ「そうです。」

 

アドミ「私も資料は拝見しましたが、いまいち想像できません。」

 

 

 人の5倍以上の直径の大きな穴を見て、スノーホワイトの持っていた武装の威力が規格外と思い知るトライアングル。

 

 

夏油「というかここの戦闘跡、殆どが彼女によるものだと思うよ。」

 

プリバティ「あれって爆破跡ですよね...ロケットランチャーでも携帯しているのですか?」

 

ラピ「していました。」

 

プリバティ「冗談でしょう!? 資料に対艦ライフルを持っていると書かれていましたが!?」

 

アニス「対艦ライフルを持ちながら、ミサイルポッドも持っていたのよ。」

 

ネオン「それでもまだ一部らしいですよ!」

 

 

 プリバティだけでなく、アドミとユルハもラピたちの説明に啞然としていた。自分たちが持っているメインウェポンを、サブウェポンのように携帯していることに信じられないようだ。

 

 確かに、スノーホワイトの武装力を簡単に言えば、戦える人間武器庫。加えて戦闘技術も高度で、モダニアが展開している電磁波兵器を一回の攻撃で看破する知識、弱点があれば補給を簡単に受けられないことだろう。

 

 もっとも、スノーホワイト自身その弱点を十分に理解して立ち回るだろう。

 

 

ユルハ「本当に規格外ね、一時期注目されるわけだわ。」

 

マリアン「でも、とっても優しい人なんです。」

 

 

 マリアンから見て、スノーホワイトの第一印象は、ぶっきらぼうで無口な人だった。しかし、別れ際にかけられた言葉は、仲間を大切に思っている人しか出てこない激励だった。

 

 命を狙われた時でも、その言葉を思い出し、勇気を抱いて夏油たちと行動した。マリアンの発言に、実際にスノーホワイトと会話したという体験についてアドミは尋ねる。

 

 

アドミ「マリアンはピルグリムと会話したのですか?」

 

マリアン「えっ?...ええ、戻った時にサポートしてくれました!」

 

アドミ「浸食から解放された直後ですか?」

 

マリアン「そ、そうですね! はい!」

 

プリバティ「対艦ライフルとミサイル以外にどんな武装がありましたか?」

 

マリアン「えっと...その...」

 

 

 思わず口が滑って、慌てながらも何とか答えるが、対艦ライフルとミサイル以外の武装が無かったか必死に思い出す。

 

 間髪掛けずに追及するプリバティとアドミを、ユルハが止める。

 

 

ユルハ「そんな連続して質問されても詰まるでしょ、彼女にも時間をあげなさい。」

 

マリアン「お気遣いありがとうございます。...確か、アサルトライフルを持っていたと思います。」

 

プリバティ「本当にどうなっているんですか...」

 

 

 落ち着く時間を与えてくれたユルハに感謝し、合流する際に持っていた銃の形状から種類の名前を答える。プリバティたちは、その姿を見たくなったのか映像は無いのか聞いてみるが、軒並み通信状況が悪化している時だけだった事で無いと答えた。

 

 スノーホワイトについて聞いている間に、ラピたちは夏油にこの場所に起きていたことを質問していた。

 

 

アニス「指揮官様...もしかしてここであの真人が...」

 

夏油「そうトーカティブと戦っていた場所だ。」

 

ネオン「あの時は心底驚いてましたけど、今考えるとトーカティブに勝機は無かったんですよね。」

 

ラピ「確かにそうね、魂を干渉しないとダメージが入らないから。」

 

 

 総力戦を終えてマリアンの帰還祝いしていた時、真人について聞いていたことを思い出していた。

 

 そして、今回の任務の目的であるトーカティブについて、最初に言っていた考えから夏油に尋ねていた。

 

 

ラピ「指揮官、最初に言っていた通りにトーカティブは山岳に置いたのですか?」

 

夏油「そうだね、目印になる所に置いてくるように言ってある。」

 

 

 トーカティブが配置している場所について、ラピと夏油が話しているところを見て、アニスとネオンは休暇中にトーカティブを隠したのか質問する。

 

 

アニス「何時置いたの? 休暇中に??」

 

夏油「いや、アンダーソンさんたちが割り込んできた時だ。」

 

ネオン「あの時にですか!?」

 

 

 トライアングル分隊と一触即発の状況の中、夏油がトーカティブを配置したと言ったが、全くその気配を感じなかったアニスとネオン。あの状況で配置した理由について説明する。

 

 

夏油「あの状況下、呪霊で制圧しようとしていたが、シフティーたちが止めてくれた。

 いつでも呪霊を呼び出せる態勢だったから、ついでに取引が上手く通った事を考慮して、呪霊を使って配置させたんだ。」

 

 

 トーカティブの亡骸を既に持っていると聞かされていた為、夏油から明かされた新たな情報に驚く。それぞれ会話を膨らませながら、廃墟街を超えて先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして目的地、モダニアとの交戦地に到着した一行は、目線に広がっていた光景に口が塞がらなかった。

 

 

プリバティ「これは一体...」

 

ユルハ「何があったのよ...」

 

アドミ「まさかモダニアの攻撃で...?」

 

 

 驚愕するも当然、交戦地の中心には巨大なクレーターが広がっていた。モダニアの攻撃によってクレーターが作られたと考えていたが、その事実を知っているラピたちは心の中で呟いていた。

 

 

(そのクレーター...指揮官が作ったのよ...)

 

(そのクレーター...指揮官様が作ったのよね...)

 

(そのクレーター...師匠が作ったんですよね...)

 

(そのクレーター...指揮官が作ったんですよね...)

 

 

 各自クレーターによって固まっていたが、製作者である夏油は知らぬ顔でシフティーに、モダニアの交戦地に到着したと連絡する。

 

 

夏油「シフティー、目的地に到着した。」

 

シフティー「確認しました、この付近を中心にスキャンを開始します。」

 

 

 そう言ってホログラム越しに、キーボードを叩き端末を操作するシフティー。付近の地形を参照して、トーカティブの反応を対象にスキャンを開始する。

 

 シフティーの声で気づいた面々が、続々と夏油のもとに集まる。少し経過した後に、シフティーから再び報告が届く。

 

 

シフティー「トーカティブと思わしき反応を確認、指揮官の予測通り山岳地帯の谷から発せられています。」

 

ラピ「ラジャー。山岳地帯は足元が不安定ですので、私の手を握って動きましょう。」

 

アニス「いやいや、指揮官様、私の手を。」

 

ネオン「いやいやいや、師匠、私の手を。」

 

ユルハ「何してんのよ...」

 

アドミ「皆さん必死ですね。」

 

 

 ラピはいつもの調子で夏油に声をかけて、アニスとネオンも続いて声を掛ける。アニスとネオンにユルハは呆れ、アドミの顔は難色を示し、プリバティは出遅れたような表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山岳地帯の谷に向かっている夏油たち、足元を注視して足場に出来る場所を手探りする。

 

 

ネオン「......。」(まあ...決めたのは師匠ですし...)

 

アニス「......。」(理由も...納得できるし...)

 

マリアン「指揮官、大丈夫ですか?」

 

 

 夏油を心配した様子で山を下りているマリアン、気にかけているマリアンを安心させるように、夏油は答える。

 

 後々アニスはこっそり、夏油が何故、谷にトーカティブを配置したのか質問して、『私たちが来るまで、ラプチャーが簡単にやって来れない場所を選んだ。』と答えた。

 

 確かに簡単にやって来れる場所においておけば、ラプチャーが集まって回収してしまうか、解体されて取り込まれる可能性がある。

 

 加えて夏油が選択したとあれば、必要な物を準備するのも当然の事。

 

 

夏油「大丈夫、マリアンも気をつけてね。」

 

 

 手にはストック、先端にカラビナが付けられた丈夫なロープを腰に巻き付けられ、頂上にあった大きな岩に巻き付けられたロープを手繰って降りていく。

 

 分隊ごとに分けて、ロープを固定して谷を目指して降りている。

 

 

ラピ「指揮官が用具を持って来たおかげで、スムーズに行きそうですね。」

 

マリアン「ええ、これなら帰りも問題なさそうですね。」

 

ユルハ「確かに。ありがとう、新人。」

 

 

 順調に降りていく夏油たち、ロープの先に到達して足が地面に接する距離までになり、何事も無く谷に到着する。

 

 到着した事を確認したシフティーは、スキャンした地図からトーカティブまでのルートを案内する。

 

 

シフティー「ここから皆さんから見て、右に100m先に反応があります。」

 

プリバティ「本当にあと少しですね...」

 

アニス「でもアイツバカでかいわよ? ヘリで運搬できるのかしら?」

 

ネオン「そもそも、この谷からどうやって引き上げるのでしょう?」

 

 

 トーカティブの回収方法について不安を持っていたアニスとネオンに、シフティーは今回の回収する手順を伝える。

 

 

シフティー「飛行区域が限られるこの場所では、ヘリを降下させることはできません。

 なので、発見したトーカティブにフルトン回収装置を使います。」

 

アドミ「ヘリウムで膨らませた風船の浮力を使い、対象物を空中に上げてヘリで回収する方法ですね。」

 

 

 夏油に説明するように、フルトンによる回収方法についての詳細を伝える。アニスとネオンも『そんな方法あったな』と思い出した様子で頷く。

 

 目標値に向けて真っ直ぐ進んで行き、するとプリバティが何かを見かけた素振りを見せた。

 

 

プリバティ「?...今何か光ったような...。」

 

ユルハ「どうしたの?」

 

プリバティ「あそこに光が見えた気がして...」

 

 

 プリバティが視界に入り込んだ方向に、指を向けて足を運んでいく。そして夏油は、光の道を案内した彼女に伝える。

 

 

夏油「アタリだプリバティ、見つけたよ。」

 

プリバティ「あれが...」

 

 

 そこにあったのは、半身が融解してもなお肉体の全長が4倍以上ある巨体が転がっていた。頭部が破裂したように飛散し、肉体に不釣り合いな装甲が生成されていても所々焼け爛れていた。

 

 

ユルハ「...確か右腕に粒子砲を生成したのよね。」

 

アドミ「報告書を参照するならそうです。」

 

プリバティ「ワードレスと北部の報告とは姿が違いますが、特徴は該当しますね。」

 

 

 ユルハたちは融解しているような箇所を見て、報告書との事象と一致するかを再確認して、プリバティは以前の発見報告から変化している箇所をピックアップする。

 

 短い時間でトーカティブと確定し、シフティーに連絡して支援を要請する。それまで待機している間に、プリバティはトーカティブの行動理念について考えていた。

 

 

プリバティ「この怪物は自我を持っていると言いましたね。

 だとしたら、何の目的を持って行動しているのでしょうか...。」

 

ラピ「それは分かりません。ただ、女王様と言っていたと指揮官から聞きました。」

 

ユルハ「女王様??」

 

 

 ラピが発した聞きなれない単語を聞いて、ユルハとアドミも反応を示し会話に参加する。視線は夏油に集中し、自身の考えを共有する。

 

 

夏油「これはまだ推測だけど、ラプチャーを操っている存在...

 言わば親玉やボスといった類が存在すると考えられる。」

 

アニス「そういえば、モダニアもクイーンの精鋭とか言っていたわね。」

 

ネオン「この地上の何処かに、そのクイーンが存在するのでしょうか?」

 

 

 各々が考えを巡らせている中、アドミはマリアンに心当たりがある記憶が無いか尋ねてみる。

 

 

アドミ「もし気分を害してしまうなら申し訳ありませんが、モダニアに乗っ取られている間にクイーンに関する記憶はありませんか?」

 

プリバティ「強制ではありません、できればでいいんです。」

 

マリアン「......。」

 

 

 プリバティが付け加えてお願いし、マリアンはモダニアとしての記憶を思い出す。最早映っている景色(トラウマ)は朧気、声も淀んで聞こえないほどに霞んでいた。

 

 喜ばしいことではあるが、役に立てないという無力感に思わず顔を沈める。

 

 

マリアン「ごめんなさい。モダニアの時の記憶は、目を閉じたり耳を塞いでいたりしていたので...」

 

ユルハ「貴方が悪いわけじゃないわ。それに、コイツがそのクイーンの情報を握っているわけだしね。」

 

 

 ユルハの指の先にはトーカティブがあり、ニケのように脳スキャンができれば情報を抜き出す事ができる。

 

 凹んでいたマリアンの隣に座り、その背中をさする。

 

 

ユルハ「誰かの役に立てない事が悪いわけじゃないわ。でも、急ぐ状況でも無いし、貴方が無理する理由にもならないのよ。」

 

マリアン「はい...。」

 

 

 励ますような言葉をかけるが、それでも凹んでいる様子のマリアンに、頭を掻いて溜息交じりにまた声をかける。

 

 

ユルハ「貴方、お酒は飲める?」

 

マリアン「えっ...?」

 

ユルハ「どうなの?」

 

マリアン「飲めると思いますけど...。」

 

ユルハ「それじゃあ、この任務が終わったら飲みに行きましょう。

 前の仕事の分だけ奢らせて。」

 

 

 突然お酒のお誘いを受けたマリアンは動揺しつつ、お代は払うと言うが『いいから、奢らせなさい。』という勢いに負けて、半ば強引に了承する事になった。

 

 

ユルハ「辛いこととか、嫌なことがあったね...

 頭の中をスッキリさせるといいの、だから押し込まれたものを、その時に全部吐き出してしまいなさい。」

 

マリアン「...ありがとうございます。」

 

 

 マリアンの表情に笑顔が戻る、ユルハもその顔を見れて満足したのか笑顔で返し、夏油も誘う。

 

 

ユルハ「新人も来るのよね?」

 

夏油「私は好んで飲むタイプではないのだが...」

 

ユルハ「貴方もマリアンと一緒に仕事したでしょ?

 だから奢らせなさい。」

 

夏油「新手のアルハラですか...?」

 

 

 強引すぎるユルハの誘いに、夏油は困惑しながらも断るが、マリアンが引き留めて誘おうとする。

 

 

マリアン「あの...私も指揮官と一緒に飲みたいです......

 ダメですか...?」

 

夏油「......。」

 

 

 マリアンの顔を見て、思わず呆気に取られた表情になるが、クスリと笑いをこぼして了承する。

 

 

夏油「分かったよ。私はあまり飲めないけど、終わったら飲みに行こうか。」

 

マリアン「はい!」

 

 

 満面の笑顔で元気よく答えるマリアン、傍から見たらいいムードなのだが、良しとしない人が食って掛かる。

 

 

アニス「ちょっと!? 何勝手に話を進めてるのよ!!」

 

プリバティ「そうですよユルハ! 抜け駆けなんて...卑怯ですよ!!」

 

ネオン「私も同席させていただきますね!」

 

ユルハ「いいけど、貴方たちは自腹ね。」

 

プリバティ「何でですか!」

 

アニス「そーよ!そーよ! 不当な扱いよ!」

 

ネオン「ブー!ブー!」

 

 

 夏油とマリアンとの待遇の違いに、異議を申し立てる3人。『プリバティは仕事を今より消化できるようになったら、後2人は奢る理由が無いわね。』と答える。

 

 プリバティはユルハの評価に納得できず、アニスとネオンは納得しているが歯軋りしている。

 

 その様子を、ラピとアドミは溜息をこぼして見ている。和気あいあいと話に花を咲かせている間に、支援要請した4機のヘリが到着した。

 

 

シフティー「皆さん、支援ヘリが到着しました。

 今から支援物資を投下します。」

 

 

 1機のヘリから正方形の箱がこちらに落下し、谷に入ってきた所でパラシュートを展開、重力落下の勢いが弱まりゆっくりとこちらに落ちていく。

 

 物資が到着して、トライアングルがフルトン回収装置を手に取り、トーカティブの各所に取り付けていく。

 

 

プリバティ「設置完了しました。」

 

シフティー「確認しました。バルーンを展開するので、皆さん離れてください。」

 

 

 トーカティブから遠巻きになり、安全を確認したシフティーは、遠隔操作で白いバルーンが展開される。

 

 トーカティブがバルーンの浮力によって少し浮き上がり、その後勢い良く空中に飛んでいき、3機のヘリコプターのフックがワイヤーをキャッチそのままアークに向かっていく。

 

 夏油たちも撤退するために、頂上に固定されているロープを伝って登り、麓の交戦地まで移動した。

 

 このまま何事もなく、降下したヘリコプターに乗る準備を済ませた夏油たち、ゆっくりと周囲の土埃を巻き上げながら地上に近づいていく。

 

 

『ドシュッ...』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉が切断されたような生々しい音が周囲に響く、音が発せられた方向に振り向くと、ラピの首から上が切断されたように無くなっていた。足元に視線を落とすと、首だけになったラピの頭が転がっていた。

 

 そして、ラピの足元からか細いレーザーのような光が、地面から伸びていた。

 

 

プリバティ「ラピ!?」

 

夏油「シフティー!!」

 

 

 夏油は直ぐにラピの頭を抱えて、シフティーは再び端末を操作して周囲の状況を確認した。すると地図に、大きなラプチャーの反応が一つ発見された。

 

 

シフティー「地中にラプチャー! タイラント級になります!!」

 

 

 全員が散開したと同時に、地面を震わせながら巨大なドリルが姿を現す。地上から現れたドリルに、覚えがあったアニスとネオンは声を上げる。

 

 

アニス「アイツ...発電所の時に出てきた!」

 

ネオン「逃げながら戦ったラプチャーですね!」

 

 

 その直感は当たっており、発電所の任務の際に現れたタイラント級ラプチャー、グレイブディガーが再び現れた。

 

 散開していた夏油たちは再び集結して、グレイブディガーに銃の照準を向ける。シフティーは現れたラプチャーの対処について説明する。

 

 

シフティー「グレイブディガーの出現によって、ヘリコプターを降下できません。

 タイラント級ラプチャー、グレイブディガーを撃破して下さい!」

 

マリアン「了解!!」

 

夏油「総員集合!」

 

 

 シフティーの説明を聞いて、夏油の呼びかけに反応して集結し、ユルハ、アドミ、プリバティを後衛、アニス、ネオン、マリアンを前衛に陣形を形成して指揮を執る。

 

 

夏油「後衛はトライアングル、相手の攻撃の除去を頼む。

 前衛はカウンターズで、コアや武装を中心に攻撃する。」

 

『了解!!』

 

 

 焦りが解消されて落ち着きを取り戻した面々は、夏油の指揮通りそれぞれの役目を徹しられるように銃を構え戦闘を始める。

 

 

『エンカウンター!!!』




 最近温かくなって、春が近づいてきましたね。花粉によるものなのか、かなり鼻がムズムズしてきました...



にけ さんぽ




 イングリッドに『エリシオンタワーに来るように』と、呼び出された夏油は職員に案内してもらい、射撃場に辿り着く。


ラピ「ここに着いたという事は、指揮官の銃が完成したのでしょうか?」

ネオン「おおっ! 師匠も火力アップですね!」

夏油「アップかどうかは分からないけど...」


 射撃場の自動ドアが開き、銀色に煌めくアタッシュケースを持ったイングリッドがやって来た。


イングリッド「待たせたな、お前の専用銃のモデルが今日完成する。」


 机に置いてゆっくりとケースを開くと、原型となったデザートイーグルより、深みのある寒色の黒で統一された銃が露わになる。

 一見何も変わった点が無いように見えるが、ラピとネオンはいち早く変化に気付いていた。


ラピ「...大きくなってますね。」

ネオン「確かに、ハンドキャノンの部類ではほんの少し大きくなったぐらいですが...」

イングリッド「パワーの底上げ、耐久性、安定性を考慮した結果、銃を大きくすることになってな。
 今日はここで実際に射撃して、細かい調整を終えて完成させる。」

夏油「分かりました。」


 夏油は手渡された黒が強いネイビーブラックの拳銃を、的に向けてゆっくりとトリガーを引く。

 射撃場に轟く銃声と、遠くから聞こえた重い音が反響する。命中した人型の的を見ると、鋼鉄性だというのに見事に抉り貫かれていた。

 ニケは使えるが、人間が撃てば誇張無しに腕が吹っ飛ぶ代物だ。


ネオン「素晴らしい...火力です。」

ラピ「使用したのはニケ用のライフル弾ですか?」

イングリッド「そうだ。人間用ではパワー不足だと考え、ニケ用のライフル弾も使える規格にした。
 使い心地はどうだ?」


 何発か的に向けて発砲している夏油に向けて、イングリッドは感想を伺う。


夏油「パワーとグリップは申し分ありません。しかし、かなりムラがありますね。
 もう少し命中精度を上げられませんか?」

イングリッド「スライドが長くなるが、問題無いか?」

夏油「ええ、大丈夫です。」


 マガジンに入っている弾丸を撃ち尽くし、空になったマガジンと銃をイングリッドに手渡しする。


イングリッド「他にリクエストは?」

夏油「以上で十分です。」

イングリッド「分かった、今日モデルを仕上げて、もう何度か来てもらい最終調整する。」

夏油「分かりました。」

ラピ「特殊別働隊のみで、指揮官の術式が使えない機会を想像できませんね。」

夏油「念には念を入れてだ、あるに越した事はない。」


 夏油の考えにイングリッドが頷き、銃をアタッシュケースに戻して立ち去ろうとする。


ネオン「そうだ! 師匠、折角ですし名前を付けてはどうです?」

夏油「名前?」

イングリッド「それは助かる、名前が無いと色々と不便なんだ。」

ラピ「これから任務で共にするので、命を預けると思って考えてみて下さい。」


 イングリッドがアタッシュケースを開いて、再び銃を夏油に見せる。元になった銃の名称から、ふと零れ落ちた言葉が名前となった。


夏油「レグール・ノワール...。」


 果て無き砂の海を翔ける鷲は、照らし続ける日輪によってその翼は焼かれ、黒鉄(くろがね)となって生まれ変わる。
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