特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 最近急激に熱くなったり戻ったり異常気象の連続...台風も近づいている予報があるので皆さんもお気を付けて。


第10章
深層


 トーカティブを回収し、マリアンがアーク内に居ても無事を保証され、今後もカウンターズの任務に参加できるようになった。

 

 そして、マリアンの問題が解決したその後、ミシリスの記者会見があった。

 

 

シュエン「みんな~、出てきて~。」

 

 

 登壇席にいたシュエンにフラッシュライトが集中していたが、直ぐに登壇席の前から煙幕が噴き出し、高らかな声と共に三人の影が地面から現れる。

 

 

「ハハハ。ハハハハ!」

 

 

 自信に満ちた声。

 

 

「市民たちよ。」

 

「これまでヒーローの不在で怖がっていたのなら、」

 

「もう安心していい!」

 

 

 正義を重んじ、過剰とも思える自我の強さ、この声に聞き覚えがあるが、その答えは煙幕が晴れて姿が現れる。

 

 

「私の輝く正義は、浸食なんかに負けない!」

 

「地上を奪還するその瞬間まで、永遠不滅なり。」

 

 

「そう、ヒーローは何度も倒しても、」

 

「ゴキブリのように戻ってくるのだからな。」

 

 

「はぁ...2人で言う内容を統一してくれない?」

 

 

 最初の声の主に続いて、1人は含みと不敵に笑いながら、1人は2人の身勝手さに溜息交じりに呆れながら登場した。

 

 集まっていた記者も、その面影に見覚えがあったのだろう、ざわめいていた声がその名を呼んで荒げ始める。

 

 

記者「メティスです! メティスが復活しました!

 

 

 マテリアルHを回収する任務で、ハーヴェスターの触手攻撃で浸食状態になったメティスが、記憶消去したのかと記者が尋ねる。

 

 しかし、浸食と共に消える脳内にあったデータの損失を危惧したシュエンは、記憶消去を使わずとも浸食を無力化する技術を研究チームが発見したと言及。

 

 アンチェインドという、ミシリスの特許技術とし、浸食に対する完全な克服を可能にしたと大々的に発表する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネオン「......。」

 

アニス「......。」

 

ラピ「......。」

 

 

 地上で移動していたラピたちは、このシュエンの発表に表情が固まっていた。表情が全く変わっていないラピたちを気にかけて、マリアンが顔を覗く。

 

 

マリアン「? 皆さん、どうしたんですか??」

 

アニス「取り敢えず、この記事を見てみて。」

 

 

 アニスが持っていたスマホから、ネットに掲載されていた記事に目を通す。中でも少女の不敵な微笑の写真と、見出しの歌い文句が目立っていた。

 

【メティス、墜落したヒーローの目眩しい飛翔】

 

【ミシリスの独自技術、アンチェインドとは?】

 

 

 そのまま、記事の内容を流れるようにスクロールして見ていくマリアン。

 

 ニケの浸食治療で、根本的な解決ができる方法が無かったのだが、ミシリス研究チームが発見したアンチェインドは脳の浸食箇所のみを安全に除去して、正常化する新技術。

 

 アンチェインドの解説を終えると、今回の会見で暴落していた株価が噓のように暴騰し、三大企業で1位に返り咲いた事、会見にやって来た記者がシュエンに向けた称賛のコメントが記述されている内容だった。

 

 

マリアン「アンチェインドって...確か...」

 

ラピ「そう、既存技術...というよりロストテクノロジーよ。」

 

ネオン「誰もその出所(でどころ)を知らないのをいいことに、独自の技術って言ったのですよ。」

 

アニス「というか、何であのクソガキがアンチェインドを持ってるのよ。」

 

 

 マリアンを救出した時、宿所で話した内容と食い違う点を、ラピたちが代わって指摘していく。

 

 この事実に対して、信じられない様子だったが、動じていない夏油に話を振る。

 

 

アニス「指揮官様、もしかしてだけど、モダニアがアンチェインドをキャッチして捨てた所を、あのクソガキが持って行ったのかしら。」

 

夏油「そうだね、確かに誰かが持って行ったんだろう。」

 

ラピ「気付いていたんですか?」

 

夏油「まあね。薬莢にもう一度入れられる知識も技術も無いけど、治癒して念のために探したが、何処にも無かった。」

 

 

 発砲した後のアンチェインドの行方について話している時に、夏油一人が真実を知っていた事に理由を聞く。

 

 

アニス「何で言わなかったのよ!?」

 

ネオン「そうですよ! 私たちが死ぬほど苦労して手に入れたのに!!」

 

夏油「顔を合わせたくなかったのと...まあ、アンチェインドを公表した際にアークの反応を見たかったから。」

 

マリアン「アークの反応??」

 

 

 提示した理由の一つはともかく、もう一つの点に関してマリアンと同じように、ラピたちも疑問を浮かべている。

 

 4人の様子を見て、敢えて質問する。

 

 

夏油「ネオン、アンチェインドの効果は覚えているかい?」

 

ネオン「えっ?...確か、ナノマシンの無力化?...破壊?...どっちでしたっけ?」

 

夏油「ナノマシンの破壊が、アンチェインドの効力だ。

 この効力によって、ナノマシンの自己修復とNIMPHに刻まれた浸食コードを抹消できる。」

 

 

 アンチェインドの効力について振り返りながら、ラピたちに再確認させた上で、シュエンの行動を野放しにした理由について説明する。

 

 

夏油「NIMPHにある浸食コードを抹消すると聞こえはいいが、NIMPHはニケを守る機能であり、人間を守るためのリミッターでもある。」

 

マリアン「...NIMPHが無くなったニケは、人も殺せる...?」

 

アニス「あっ。」

 

ネオン「...!」

 

 

 NIMPHが無くなった時のリスクに、マリアンが気付く。アニスとネオンは、そのケースをNIMPHが無いラピがシュエンを蹴り飛ばした時を思い出す。

 

 

夏油「そうだ、今のアークはニケを下に見る価値観が蔓延している。

 その環境で、制御できないニケがいると言われたら、どうすると思う?」

 

ラピ「直ぐに処分するでしょうね、何時そんな暴挙を始めるか分からないから。」

 

 

 言い放った考えに、マリアンの体は凍りつく。例外は認められないアークの思想に、アンチェインドを曝露したニケは反する存在である。

 

 

アニス「で、でも...NIMPHはナノマシンって知らない人の方が多いと思うし...」

 

夏油「メティスが浸食になったばかりで、浸食についての知識もインターネット上で拡散されている。

 浸食と一緒にNIMPHを破壊すると分かったら、直ぐにでも情報は拡散されるだろう。」

 

ネオン「で、ですが...総力戦から立ち直ったばかりで、アークを巻き込んで混乱させようと思うのでしょうか?」

 

夏油「シュエンはあの性格だ、敵も多い。

 情報主に確証があろうと無かろうと、直ぐに記者にリークしてそこら中で袋叩きにするだろうね。」

 

 

 考えられない事態に、アニスとネオンは自身の考えを伝えるが、夏油の見解を伝えられ納得する余地がある事に、嫌悪し呆れている。

 

 

ネオン「不思議ですね、現実で起こっていない出来事なのに、容易に想像できますよ。」

 

アニス「やっとマリアンを助けたのに、はぁ...」

 

夏油「ひっそりと...いや、浸食を破壊し、NIMPHを再び搭載できると宣伝していればこの事態は防げたかもしれないが...

 こうなると、こちらへの飛び火が怖くなってくる。」

 

 

 報告書でアンチェインドを使用し、浸食から解放したマリアンにも、NIMPHが無くなった事で火の粉が降りかかる状況を危惧した。

 

 マリアンは再び不安が募っている中、今後どのように対処するべきなのか、自分の考えを提示して共有する。

 

 

マリアン「NIMPHの無いニケが糾弾されるようになるなら、しばらく動かない方がいいのでしょうか?」

 

夏油「...起きていない事について考えても仕方ないね、ごめん。

 今は受けている任務に集中しよう。」

 

 

 溜息をこぼして気分を切り替えて、受けている任務に意識を向けるように、謝罪しながら皆に伝える。

 

 

アニス「...まぁ、確かにそうね。」

 

夏油「最悪、元凶でもある私が呪霊を使って何とかするよ。」

 

マリアン「アーク市民に使うのではないのですよね?」

 

ネオン「流石に私たちを守るのに使うと思いますよ。

 記憶を変えるにしても、ネット記事も手をつけないといけませんし。」

 

 

 各々気持ちを切り替えて、実行している任務に集中する。地上に出る前にブリーフィングをしたが、改めて任務内容を聞いたマリアン。

 

 

マリアン「今回の任務は、アンチェインドを提供してくれたスノーホワイトさんと合流するんですよね?」

 

夏油「ああ、アンリミテッドから受け取った地図情報を元に、スノーホワイトが活動している区域を捜索する。」

 

 

 初めて遭遇したピルグリム、スノーホワイトの動向をルドミラは調査し、数か月前から現在までの目撃情報から遭遇する区域を絞ったデータを受け取り、目標地点として設定する。

 

 その目標地点は、エブラ粒子濃度が低い北部で、平均値100%を叩き出す環境の"魔の地帯"と呼ばれる。

 

 地上に出発する前に、コンタクトを取ろうとしたが、何度も通信出来ないと表示された理由に納得し、実際に端末を開いて通信出来ないことを確認する。

 

 

アニス「どおりで通信が取れないわけね。」

 

ネオン「近距離通信も無理ですね。」

 

マリアン「大変ですけど、目視で探せるように頑張りましょう!」

 

 

 張り切っているマリアンを見て、端末をしまい気合を入れて任務に望む姿勢を見せる。力強く踏み出したアニスたちだが、夏油が立ち止まったまま動かない。

 

 

マリアン「指揮官?」

 

ネオン「どうしました? 忘れものですか?」

 

アニス「ラピも早く行きましょう、置いていくわよ~?」

 

 

 動かないラピと夏油に声を掛けるが、その場で立ち止まり体で隠しながらハンドシグナルでやり取りする。

 

 二人のやり取りに、アニスたちもハンドシグナルの意味を読み取る。

 

 

ラピ(指揮官...気付いていますか?)

 

夏油(ああ、地上から出てから後を付けられている。)

 

 

 全く気付かなかったアニスたちは、動揺して首を回して周囲を探るが、その気配を感じられない。

 

 アニスたちを気にせずに、ラピは追跡者について詳細な情報を共有する。

 

 

ラピ(人数は?)

 

夏油(3人。恐らくニケだが、面識はない。)

 

ラピ(こちらから攻撃しましょうか?)

 

夏油(明確な敵意があるなら、私たちを攻撃してもおかしくない。

 あえてこちらが接触して、追跡している理由を聞こう。)

 

 

 身を潜めている追跡者の対処について議論している中、アニスたちも参加してどうやって接触するのか説明を尋ねる。

 

 

アニス(そう簡単に出てくるかしら?)

 

夏油(スパイだとしても、間近で確実な情報を入手したいはずだ。

 ただし、こちらは極力任務については伏せて行動しよう。)

 

ネオン(その考えには、スパイの一介でもある私も賛成です。

 距離と情報の量は比例するというデータがあります。)

 

マリアン(それは、もしかしてスパイの文献のデータですか?)

 

ネオン(いえ、私の経験則です。)

 

アニス(逆に文献があったらそれはそれで怖いわね。)(≖ࡇ≖)

 

 

 部隊として参加するように接触する利点について、ラピたちに共有し納得したと確認した夏油は、後方から追跡している3人に向けて声をかける。

 

 

夏油「そこにいる3人、いつまでそうやって私たちの後ろを付けるつもりだい?

 君たちが良ければ部隊に加わってくれると助かるのだが。」

 

?????「バレてる!」

 

????「何時から気付いたんだろう?」

 

 

 分かりやすく反応してくれた事で、大凡(おおよそ)の位置を把握したアニスたちは、声がした方向に顔を向け警戒する。

 

 

???「気配は消していたんだがな。」

 

????「どうするの~? リーダー?」

 

???「これ以上隠れても埒が明かない。

 合流するぞ。」

 

????「は~い。」

 

?????「分かった!」

 

 

 追跡者も位置も人数も気取られていることから、これ以上の追跡は不可能と判断して、姿を現した。

 

 現れた3人は銃をしまい両手を上げながら夏油たちと合流、警戒しているラピは銃を向けて3人に対して尋問を始める。

 

 

ラピ「所属部隊は?」

 

???「そっちが合流しようと言って、いきなり尋問か。

 随分と物騒じゃないか。」

 

ラピ「ずっと後ろに付けられていたら、誰だって警戒するわ。」

 

?????「あっ! 私も分かる!

 鬼ごっこは好きだけど、コソコソ背中を見られるのは嫌い!」

 

 

 銃を向けてきたラピに対して、嘲笑するような表情で不満を伝えるが、地上に出てから視線を感じていたラピは警戒を毛ほども緩めない。

 

 話が平行線になると思ったのか、1人がラピの質問に答える。

 

 

????「そんなに怖い顔しないで~? ちゃんと答えるから。

 私たちはエキゾチック、シュエンから貴方たちを見張るよう言われたの。」

 

アニス「エキゾチック...?」

 

マリアン「知っているのですか?」

 

 

 聞き覚えがあるのか、反響動作するように分隊名が口からこぼれる。アニスの反応を見て、知っていることはあるのか尋ねる。

 

 分隊名エキゾチック、アウターリム出身のニケで構成されている分隊であり、1級犯罪*1に関わった経緯でニケになった。

 

 上半身がはだけて黒髪ショートに、所々赤髪が混じっているのはリーダーのクロウ

 

 白い生地に光沢のあるオーロラカラーのラメ加工されているスカート、ピンク色の上着に袖を通してホワイトベージュのロングヘアーのバイパー

 

 ピンクのショートパンツに、黒いへそ出しタンクトップ、白い上着にホワイトベージュのサイドアップロングヘアー、犬歯のような鋭い歯が特徴のジャッカル

 

 この三名で構成されている分隊であり、クロウはアウターリムのテロリスト エンターヘブンの元リーダーという噂があるらしい。

 

 

ラピ「私たちを追跡した理由は?」

 

クロウ「ミシリスの社長、シュエンからお前たちを監視しろと命令された。」

 

 

 クロウたちの内情に難色を示していたが、追跡していた理由について聞くと、各々エキゾチックに対する先入観から、シュエンの行動に眉をひそめる。

 

 

アニス「まさかもう気付いたの...アイツ...」

 

ネオン「三大企業のCEOとはいえ、会見中に指示を出すなんて、行動が早すぎると思うのですが。」

 

ラピ「私もそう思うわ。浮かれてこっちの事なんて頭に入っていないと思ったけど...」

 

マリアン「でも、一人でも部隊に加わる利点は大きいと思いますよ。」

 

 

 シュエンの対応の速さに違和感を感じながらも、任務の内容からスノーホワイトを見つける為に、少しでも人員は多い方がいいと結論付ける。

 

 

夏油「クロウ、そっちは私たちの監視をすれば任務を果たせる。

 部隊に加われば、こちらの任務が円滑に進む。君たちが良ければ、一緒に行動しないか?」

 

バイパー「いいんじゃない? こっちも隠れながらラプチャー倒すのめんどうだし。」

 

クロウ「こちらにとっても、悪い話ではない。

 しかしいいのか? そっちのニケが言っていたように、私たちはテロリストで構成された分隊だ。

 背中を撃たれるとは思わないのか?」

 

 

 部隊に加わる素振りを見せたリーダー クロウだが、アニスが説明した通りテロリストを信用できるのか、背中を預けられる器量があるのか改めて問いただす。

 

 自らを卑下するような問いかけに、関係無いと言うような姿勢で返す。

 

 

夏油「確かに君たちが私たちに背中を撃たない確証はない。かと言って背中を撃つ確信も無い。

 まあ、私が先入観で判断したくないという理由もあるんだが、私は君たちがシュエンから監視するように言われた事を信用する。」

 

 

 全く知らずとも、先入観で判断するのは些か勝手で、彼の中で避けたい行動だった為か、クロウたちを信用して部隊に加える。

 

 ネオンとマリアンも加わることに賛同し、ラピは銃を降ろして尋問を止める。

 

 

バイパー「噂通り、変わってるね? でも嫌いじゃないよ。寧ろ好き♡」

 

ジャッカル「わーい! もう隠れなくてもいいんだぁ!」

 

 

 承諾した夏油に蠱惑的な視線を向けるバイパー、体を伸ばしながら周辺を走り回るジャッカル、部隊を加える判断に不敵な笑みを浮かべるクロウ。

 

 

クロウ「そうか...短い間だが、よろしくな。」

 

 

 その表情は抱いている感情が分からなかったが、底知れない考えを持っていた事を、彼らはまだ知らない。

*1
アメリカでは一番重い罰で、

殺人、強姦、重度の暴行などの重罪。




 9章も終わり、マリアンの処遇もまとまり、10章が始まりました。今後の展開をお楽しみに。



にけ さんぽ




 エキゾチックと合流する前の出来事...


アリス「みなさんお久しぶりです~♪」

アニス「本当に久しぶりね、研きゅ...城を乗っ取ったラプチャーを倒して以来かしら。」

アリス「あなたもウサギさんのお仲間なのですか?」

マリアン「は、はい。マリアンです、よろしくお願いします。」

アリス「よろしくおねがいします!」

ルドミラ「久しぶりね、しもべ。」

夏油「お久しぶりです、こちら紅茶と紅茶に合う菓子...そして不足分を補う為の牛乳です。」


 夏油が持ってきたお土産に、アリスは目を輝かせて眺めていた。


アリス「わあっ! 女王様っ、早速お茶会を始めましょう!」

ルドミラ「そうね、アリスは準備をお願い。しもべ、牛乳を冷蔵庫に入れに行くわ。」

ネオン「私たちも手伝います!」

ラピ「アリス、食器や椅子、必要な物の場所を教えて貰えるかしら?」

アリス「はい! 食器やあそこで、椅子は向こうの扉の向こうに...」


 お茶会の準備を始めたアリスとラピ、アニス、ネオン、マリアンの5人。分担していく中、夏油とルドミラは並んで廊下を歩いていた。


ルドミラ「彼女、前に言っていた浸食になった子?」

夏油「ええ、今こうして浸食を消して一緒に行動できるようになりました。」

ルドミラ「良かったわね。」

夏油「はい。こうして彼女と過ごせるのも、女王様のご助力あってこそです。」

ルドミラ「相変わらず口が達者なのね、しもべ。」


 冷蔵庫のある場所に辿り着くまで談笑に花を咲かせたが、和やかな雰囲気を冷蔵庫の冷気のように切り替える。


夏油「そういえば、ニケの救助率に変化はありましたか?」

ルドミラ「?...そういえば、まだ短いけど増えてきた気がするわ。
 ここにやって来たり、連絡するケースが増えたの。」

夏油「そうでしたか。...少し前にエリアHというヘレティックとの交戦地に向かいました。
 その区域の地下に、浸食させたニケを集める施設があったんです。」

ルドミラ「......。」

夏油「その施設を破壊して、行方不明になっていたニケとの照合も取れました。
 殆どが浸食によっておびき寄せていたと、裏付けが取れました。」

ルドミラ「そうなのね...本当に良かったわ。
 もう同じような犠牲者が出る事は無いんだもの。」


 冷蔵庫に多くの牛乳パックを入れながら、夏油は地下施設、モダニアの撃破などの出来事を話す。ルドミラはその言葉に、心から安堵した様子で感謝を伝える。


ルドミラ「ありがとう、見つけてくれた子たちも浮かばれるわ。」

夏油「......はい。」

ルドミラ「...まだ何かあるみたいね。」

夏油「秘密にしても、貴方は追及してくるでしょうから。
 ラプチャー...厳密にはトーカティブとコンタクトを取っていた内通者は、エニックでした。」

ルドミラ「エニック...きっとアークの位置が知られていたんでしょうね。」

夏油「その理由は?」

ルドミラ「この区域を担当しているけど、過酷な環境下でもラプチャーの数は尋常じゃないわ。
 それを世界規模で考えると、私たちに勝算が那由多分の一でも十分すぎるぐらいね。」

夏油「お見事です、現在の勝率は完全な0%だそうです。」


 牛乳を入れ終え冷蔵庫を閉める夏油、ルドミラは今後夏油がどう動くのかを尋ねる。


ルドミラ「それで、貴方はマリアンを助けられて、秘密も明かせられた。
 これからどうするの?」

夏油「...何故、私がここにいるのか、どうしてこの世界に来たのか全く分かりません。
 でもしばらくは、ここに来た理由を見つけるか、考える為に戦います。」

ルドミラ「そう、見つけられるといいわね。」

夏油「はい。」


 夏油の返答にルドミラは満足した様子を見せて、アリスたちの待つ部屋に戻るように言う。


ルドミラ「さあ、早く戻りましょしもべ。
 貴方の持って来たお菓子と紅茶を堪能させてもらうわ。」

夏油「分かりました、女王様。」


 この世界に来た要因が全く分からず、その指針もマリアンを救って一先ず達成された。生前では理由や意義を指針として行動していた。

 しかし今は、その行動指針が見つからない状態にある。それでも分からないなりに、その理由を自分で見つけ出すと結論を出した。

 この世界が、彼を大きく変えつつある。
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