というか一年でセイレーンに追従するアイドルアニス...恐ろしい子...!
地上に現れたのは、大きな翼をはためかせ飛翔し、マンタエイのようなフォルムを模ったタイラント級ラプチャー、ケトゥスA.N.M.I.が現れた。口部の両端に搭載された対物ライフルから、カウンターズに向けて遮蔽物越しに攻撃していく。
エキゾチックは、ケトゥスと共に現れたロード級ラプチャーの対処を始めていく。
ジャッカル「あっはは! おっきい奴らがいっぱい来たよ!!」
バイパー「はいは~い、ダーリンの為にも、一肌脱いじゃお♪」
クロウ「ジャッカルは弾をばら撒け、バイパーとあたしは仕留め損なった奴らの始末だ。」
バイパー「は~い♡」
ジャッカル「分かった! 行ってきま~す!!」
後方から爆発音が連鎖しながら発生している事を、爆風を背中で感じながら戦闘に集中するカウンターズ。悠々と翼を翻して浮遊しているケトゥスに、ラピたちは総攻撃を仕掛ける。
アニス「何よアイツ、全く攻撃してこないじゃない!」
ラピ「好都合よ、一気に片付けてロード級ラプチャーを相手にしないといけないから。」
マリアン「いくら戦い慣れていると言っても、あのロード級の数は異常ですからね。」
夏油「さっさと片付けて、残りのゴミ掃除も済ませてしまおう。」
ネオン「こっちは伊達に特殊別働隊に所属していないんですよ!
そうやって余裕そうに飛んでいるのも時間の問題ですね!」
夏油達の猛攻に対抗するように、対物ライフルを連発して反撃するが、遮蔽物に身を隠しながら躱して、残りがそのまま攻撃を続けていく。
クロウ「......。」
クロウは振り返り、ケトゥスと戦闘している夏油たちの背中を見る。全く振り返る素振りは無く、あくまでも前の敵に集中している様子。
その姿があまりにも、輝かしく、雄々しく、頼もしい。この
クロウ(やはり...お前は...)
ケトゥスが瞬間移動で距離を取っている間、リロードを済ませているラピたち。
この戦闘も難無く終わると考えていた。
アニス「!? 何!?今の音!!」
背後...丁度エキゾチックがいるであろう方向を振り返る。その視線の先には、自爆特攻するラプチャー、レムナントとグリッターの大群が待ち構えていた。
夏油「あれは...」
ラピ「自爆するラプチャー!?」
マリアン「まさかっ!?」
振り返ったマリアンは、首を振り回すように周囲を確認すると、エキゾチックが見当たらない事が分かった。
マリアン「エキゾチックがいません!!」
アニス「まさかとは思うけど、さっきの爆発で!?」
ネオン「...っていうことは・・・」
ケトゥスしかいなかった前方に、続々とロード級ラプチャーが集結して、次第に周囲を取り囲まれていく。
大量のラプチャーの銃口が、夏油たちに集中している。コアから放たれている光が、嘲笑うように点滅し、ケトゥスは勝利を確信したのか、優雅に空を舞いながらこちらに体を向けている。
夏油「...エキゾチックの安否は後だ、まずはこの状況を切り抜けよう。」
赤い服を身に着けていた者が率いていた邪魔者の始末し、頭領のケトゥスと戦闘していた分隊を戦力差で一気に撃滅する。
一見最良のように思えたこの戦略
ラピ「ラジャー。」
アニス「本領発揮ね。」
ネオン「後に続きます! 師匠!」
マリアン「ケトゥスは任せてください!」
それは大きな間違いだった。
邪魔者を始末した事によって、力を抑えていた夏油に力を発揮する理由を与えてしまった。
男の周囲に膿が流れ出すように発生した黒い裂け目から、じっとりとし身震いするような瘴気を漂わせる。
黒い裂け目から現れたのは、人の形からかけ離れた異形。
一対は御伽話に現れるような、宙に浮く龍。もう一対は着物を着こんだ、黒長髪の無機質な面の顔の人型。
ロード級ラプチャーの海に、龍が体を唸らせながら突進し、食い散らかすように駆け巡る。
面妖な人型は、人一人分の直径のある黒星を生み出し、周囲に拡散するように散り散りにして解き放つ。
貪られ、抉られ、蹂躙される。
ラピたちも気にする必要が消えて、ケトゥスに攻撃を集中させていく。
エキゾチックがまだ残っていた時と何ら変わらず、簡単に押されなす術なく攻撃を受け続ける。
ネオン「みるみる動きが遅くなってますよ!」
このまま攻撃を受け続けると思われたケトゥスだが、口部を大きく開き内部にあったコアを露出させながら、翼を扇ぎ灯台の裏側に逃げる。
アニス「アイツ、尻尾巻いて逃げるつもり!?」
マリアン「私が追撃します! ラピたちは周辺の警戒を!」
ネオン「了解です!」
逃げたケトゥスを追いかけるように、マリアンは灯台の裏側目指して駆け出す。
ラピ「マリアン!」
ラピは直ぐに、マリアンを呼び止め、一言だけ伝えて送り出す。
ラピ「気をつけて。」
マリアン「はい!」
強い決心を抱きながら、ラピの言葉に笑顔で返し、再び駆け出していく。
大規模な戦闘になったが、夏油がロード級の対処、そしてケトゥスと対面していたラピたちも、比較的軽傷で済んだので移動や戦闘には問題無い。
残った夏油、ラピ、アニス、ネオンの4人も、戦闘中に行方不明になったエキゾチックの捜索に移る。
夏油「私たちはエキゾチックの捜索に移ろう。
爆破後どこに行ったのか分からないから、四方に散って探してみよう。」
ラピ「分かりました。
指揮官は北を、私は南、アニスは西、ネオンは東をお願い。」
ネオン「指揮官は見つけたら大きな声で呼んでくださいね、私たちが飛んで駆けつけるので!」
それぞれ背中を向けている方角を捜索する事になり、4人は振り返って散らばるように探し始める。
背後から聞こえた声に反応して、咄嗟に夏油は振り返るその刹那、目の前の視界が爆発音が合図のように耳に響き、視界が白く染まる。
灯台に逃げていったケトゥスを追いかけたマリアン、灯台の裏側には所々煙を上げスパークが走り、力無く倒れていたケトゥスがいた。
周囲にラプチャーがいない事を確認した後、コアに直接弾丸を打ち込んで完全に停止させる。
追撃を終えたマリアンは、夏油たちに合流するために氷海と浜の境界に向かって駆け出す。
咄嗟に声が聞こえた背後を振り返ると、全身を黒いローブに包まれたニケが立っていた。
身長も180cmぐらいだと分かるほどで、マリアンの背後にピタリと付いていた。
振り返ると同時に半歩下がって、マシンガンの銃口を黒いニケに向ける。
いまだに血の気が引いた冷たさが肌に残っている、冷や汗が温かく感じる程に目の前のニケが不気味だった。
おそらく氷海での戦いを見ていたのだろう、それでも全く気配と視線を感じられなかった。
マリアンは得体の知れないニケに警戒を緩めず、何者なのかを聞いてみる。
マリアン「貴方は誰ですか...」
マリアンの質問に困った様子を見せたニケは、数分間考え込む仕草を取って答える。
マリアン「ミール...?」
ローブの下から微笑むように口角を上げ、手を差し伸べてくる。向けられたその手に応じず、銃口を向け続けている。
ミール「まあ初対面で警戒するのも無理はありませんね。」
握手に応じてくれなかった事に、残念がりながらも納得した様子を見せてローブの下に隠すように戻す。
隠された両手両足に武装があっても、対応できるよう警戒しながら、次の質問を投げる。
マリアン「先ほどの、戦闘を見ていたんですか...?」
ミール「ええ、じっくり拝見させて頂きました。」
マリアン「その目的は何ですか...」
ミールと名乗るニケが、北部という環境下かつ通信ができない地域に来てまで、ここに来たのか分からなかった。
その意図を知るために、目的を聞き出そうとした。名乗る時と打って変わって、悩む様子を見せることなくミールは答える。
ミール「目的はラプチャーから解放されたニケである貴方ですよ。
こうして実際に対面して、仲良くなろうと思っただけです。」
ローブの下から笑みが見える、顔が見えず声色から本心か噓か分からない。
加えて、自分を目的に見に来た事で、警戒したことを察したミールはある提案をマリアンに出す。
ミール「ではこうしましょう。貴方の知らない情報をこちらが無条件で教えます。
私が知っている事は何でもお答えしますよ。」
無条件に加えて対価無しの情報提供、こちらに好都合しかない提案に息を吞むマリアンだが、どうしてもこの条件を断る事が出来なかった。
マリアン(この人が知っているとは限らない...けど、私自身も分からず浸食を受けた経緯を...)
会ってばかりのこのニケが、自分が浸食を受けてラプチャーになった経緯など知る筈がない。
それでも、希望を抱かずにはいられなかった。
マリアン「私が...浸食を...」
ミール「フフフッ...」
再び笑みを浮かべるミール。この時マリアンは、その質問を待っていたとばかりの笑みを浮かべていたと分かった。
ミール「あれは、アークを管理するエニックがランダムに選んでいたのですよ。」
マリアン「エニックが...?」
信じられなかった。アークの守護者であり、管理者であるエニックが、ニケを売るような事をしていた事に。
マリアン「そんな! 第一その理由は」
ミール「トーカティブとエニックの間で、ある取引によって浸食を誘発していたんですよ。」
マリアン「その取引は...」
ミール「それは私にも分かりませんね。」
浸食を受けた核心となる理由を聞けず、必死になっているマリアンとは対照的に、ミールはどこ吹く風といったように気にしていない様子。
思わず顔をしかめるマリアンだが、ミールの言葉で再び驚愕で塗りつぶされる。
ミール「詳しくは貴方の指揮官に聞いて見てください。
彼は直接エニックから聞いていますから。」
マリアン「指揮官が...?」
この事実を夏油が知っている事を聞いたマリアンは表情が強張るが、それでもより多くの情報を引き出そうとする。
マリアン「何故エニックはランダムに...」
ミール「それは公平性を設ける為だったのでは?
もしこれが事実なら、貴方は運悪く浸食を受けたことになるのですが。」
アークから不要、害を与えるニケを選ぶよりも公平に感じるが、それでも納得できない。
マリアン(私はただ...運が悪くて...
マリアンはモダニアから解放されてから、それまでの記憶を封印するように、夏油とラピ、アニスとネオンの思い出で塗り替えていった。
それでも、その記憶は朧気ながらも度々フラッシュバックする。彼女の魂に撃ち込まれた、何本もの楔が錆びついてもなお蝕んでいる。
深く落ち込んでいるマリアンを見て、ミールが慰めるようにマリアンに声を掛ける。
ミール「ですがエニックから選ばれた事で、貴方はニケとヘレティックのハイブリットという素晴らしい力を手に入れたではありませんか。」
マリアン「素晴らしい...力...?」
ミール「ええ、とても素晴らしい力です。」
―――何を言っているんだ。
自分の体に入り込んだ存在が、どれだけの苦しみを
悲しみを
絶望を残したのかも知らずに。
ミール「私も貴方のように、ヘレティックのような存在に焦がれました、でも私にその力も資格も機会も無かった...
しかし貴方は違う。ニケからラプチャーとなり、ヘレティックとなりながらも、ニケとして戻ってきた...
――――――――――――。
絶句。
ミールの言っている事が理解できない。
何と言っていたのか、言っていたことを思い出しても、到底理解できない。特別?ヘレティックになることが?...この人はヘレティックに...ラプチャーになりたいのか...?
ミールから発せられているローブの下からでも伝わる強い視線、
熱気の籠った白い吐息交じりに吐き出される言葉、
冷たく突き刺さるような空気を吸っても何ともなく、寧ろ体を冷やし足りないのか呼吸が荒くなる様子すらも狂気が垣間見える。
底の見えない未曾有の狂気が。
感情の昂ぶりで紅潮していたミールだが、後方から聞こえた発砲音を聞いて、直ぐに色が消えて名残惜しそうな顔をする。
ミール「ここまでですか。今度お会いする時は是非名前を教えて下さいね。」
そう言って体を翻して、完全に停止してケトゥスが倒れている方向に進んでいく。
マリアンはただその背中に銃口を向けていたが、言うことがあったのかミールが振り返ってマリアンに伝える。
ミール「そうそう、言い忘れるところでした。
貴方はニケとして戻る事はできた。しかし、その体にはまだラプチャーが残っています。」
マリアン「ラプチャー...が...?」
頭に
嘘か真実か、考えれば考えるほど堂々巡りになり、終わらない思考が始まる。
ミール「それでは、またお会いしましょう。」
その思考から解放したのはミールの言葉。正気に戻ったマリアンは引き留める為に、ミールに向けて威嚇射撃を行う。
マリアン「っ!?」
その射撃を止めたのは、ケトゥスの爆発。黒煙が上りミールの姿を隠し、完全に見失う。
浸食を引き起こしたエニック、トーカティブとの間で交わした条件、自分の中にラプチャーが残っている...
新たに生まれた疑念の数々、マリアンは夏油たちのもとにトボトボと戻る。
ふと見上げた空には、暗い夜空を彩る綺麗なオーロラが残っていた。
浮かない顔で戻ってきたマリアン、心配している夏油たちに申し訳なさを感じながら歩いている。
アニス「マリアン!!」
アニスがマリアンの両肩を掴んできたことに、啞然としながらもマリアンは謝る。
マリアン「ご、ごめんなさい。遅くなってしまって...」
ネオン「何で謝るんです?...いえ、あのデカいラプチャーの事はもういいんです!」
マリアン「えっ?」
困惑して取り残されているマリアンに呼びかけるように、ラピは要点を伝える。
マリアン「一体...」
ラピ「帰って来て悪いけど、直ぐに移動する準備をして...。」
ここもマリアンがいるだけでも、原作から乖離しているのに、更にストーリーの方向が逸れていくの書いてて新鮮ですね。
暗い意識の中を、ただ漂っている。
燃えるような痛みも、切り裂かれた傷も感じない。
ただ何もない暗がりを、意識だけが彷徨い続ける。
??????「あ......は......ま...か......ん......に?」
意識だけだった空間に、音と感触が伝わってきた。
まともに聞こえなかったが、今体に触れられている事は分かる。
やけに両手で必要以上に触っているが気のせいだろう。
??????「お...ひ......で...ね。とても.........った......よ?......んは。」
聞きなれない声だ、少なくとも知り合いではない。
掠れて聞き取れない声の主を確かめる為に、暗い世界に光を照らす。
視界に広がったのは、一面雪景色になっている廃村で、雪の上で寝ていたようだ。
??????「目覚めて本当に良かったです、皆も喜びます。」
その雪景色に割り込むように顔を覗かせた女性は、意識を取り戻した事に喜んでいるようだ。
その瞳に一筋の涙が零れ、両手を握り何度も「よかった...本当に...」感謝を伝えてくる。
―――なぜ泣いているのか、見たところ目の前の女性は、教会で祈りを捧げているような聖女の模範のような姿だ。
それでも、見ず知らずの人間に対して泣きながら感謝するのは、些か不自然でもある。
こちらが困惑している事を察したのか、直ぐに今の状況を説明する。
??????「ごっ、ごめんなさい。何が何だか分かりませんよね?」
そう言って、現状の説明を始めた。
どうやら意識を取り戻す前、この廃村の地下のベッドで寝ている所を発見したらしい。
その後、外傷が無いことと脈拍がある事を確認して、起こしたのだという。
どうやらこの女性は、この後合流する地理に詳しい仲間のもとに案内するようだ。
都合がいい。正直右も左も分からない状況だから、合流してこれからの事をゆっくり考える事にしよう。
??????「あっ、まだ起き上がっちゃダメですよ。」
外傷が無いとは言え、先程まで意識が無かったんですから。
さあ、私が立たせてあげます...
......この聖女、急に呼吸が盛りのついた猿みたいに呼吸が荒くなった。
紅潮して、こちらに欲情に近い眼差しを向けてくる。
............聖女が??
??????「た、
..............................前言撤回、
両手を地に付けながら、スクッと立ち上がり体に異常が無いか確かめる。
問題なく立ち上がった事に対して、心底残念そうな顔をするも、気持ちを切り替えたのか案内を始める。
??????「さあ、行きましょう。私のことは案内がてらしますね。」
先導するように前を歩く性女、その後ろについて行きながら、荒廃した世界を見渡し続ける。