思惑と未開
アンダーソンから補給物資を受け取り、アンチェインドの情報がある研究所に向かっている夏油たち。
メティスの騒動を終え、加えて五条の就職先が見つかり、目先の問題を全て解決した後に地上へと赴いたのだ。
クロウの事が気掛かりではあるが、今の夏油に出来ることは限られており、アウターリムを調査する方法を実践中で呪霊たちに情報収集を頼んだ。
アウターリムの調査に抜擢された呪霊は3体、中でも夏油の主戦力である特級呪霊の玉藻前と真人に任せた。
夏油(戦力は激減するが、いい加減玉藻前に呪力操作を頼むのも止めないと。
私自身が強くなれない。)
北部での模擬戦闘で五条から課せられた課題は、緻密な呪力操作と消費量の減少、加えて最大呪力量の増加。
呪霊を顕現させて戦うだけなら、呪力消費量は無いに等しいものだが、肉体の呪力強化やうずまきなどの技を使うとなると話が変わる。
そしてこの世界に来てから、夏油の呪力で呪霊を強化できると知り、五条に追いつくなら夏油自身の強化も必要になる。
それが呪力操作が長けた玉藻前と、命に干渉できなければ無敵の真人を、アウターリム調査に抜擢した理由でもある。
夏油(それだけでは駄目だ、悟に追いつくなら...まだ何か必要だ...。)
五条が来る前に、暇な時間帯に呪霊たちから指南を受けており、その過程で漏瑚ら自然呪霊から
領域展開、領域展延などの呪力技術について学んだ。
これらも同様に、五条に並ぶために必要な要素として習得しようとし、結界術の基礎力を鍛えた。
そして五条との戦いで見た簡易領域、領域対策として取り入れるべく習得し、現在精度と練度を上げている途中。
順調に進んでいるように見えていたが、夏油自身はまだ気掛かりな点が残っている。
夏油(領域展開が使えなければ、展延は使えない...)
まだ夏油は領域展開を使えない、この事実が密かに彼を焦らせていた。
こうして戦える時間も限られて、いつこの世界での命が尽きるか分からない中、不安と焦燥が夏油を急かしていた。
五条「何をそんなに焦ってんだよ、言ったろ?
そう簡単に覚えられるものじゃないって。」
夏油「しかし...強くなるにはこれが...」
五条「焦るのは勝手だけどさ、領域展開って沢山の条件を術師自身がブレンドしてできたものなの。
自分が『コレだ!』って納得した物じゃないと、不完全止まりになるぜ?」
夏油「......。」
五条「大丈夫、言ったろ?
俺たちは最強だって。」
五条の言っていることは正しい、それでもずっと待たせ続けるのは忍びないし、何より夏油自身が遠くでくすぶっている状況に我慢ならなかった。
その為地上に出ている間、花御と陀艮が領域展開を展開して、領域内から少しずつ知識を取り入れるようにしている。
己に課した課題は、領域展開の習得以外にもう一つ存在する。
アニス「ちょっと指揮官様!」
夏油「...? 何だい??」
アニス「それはこっちの台詞よ! ずっと考えて。」
マリアン「先程から声をかけていたのに、全く反応が無かったのですよ?」
声をかけられて動揺する夏油だが、アニスたちはずっと声を掛けても上の空だったと答える。
声を掛けている途中で集中していることから、気を散らすのはやめようかと話になったが、その考えはある出来事によって無くなった。
????「ハニーったら、私が居ながら上の空なんて...
随分薄情なのね。」
その出来事とは、バーニンガム副司令直属のニケであるパピヨンが、こちらを尾行していたことだった。
パピヨンは表立って戦闘するニケではなく、その任務は主に尾行や捜査などの諜報活動が殆どである。
空高く飛んでいる呪霊で、地上に出る前に存在は検知していたが、脅威は無いと判断して無視していたが、ラピたちが気が散るという事で炙り出し、部隊に急遽加わったことになった。
パピヨンに直接の関わりは無いが、上司であるバーニンガムはマリアン復帰での騒動で面識があり、その前にトライアングルの仕事を手伝った際に、ユルハにちょっかいを出していたのでマリアンと夏油は知っている。
トーカティブ確保した後のバーでも、酒で口が緩くなった影響か、ユルハに対してかなりイラついている事を、小一時間程夏油は聞いていた。
パピヨン「私も貴方たちが何をするのか、それを調べて持ち帰らなきゃならないの。
その為なら、情報の行き来だって必要になるの。」
ネオン「どういうことですか?」
パピヨンが言い渡された任務は、夏油たちを尾行しその目的と情報を回収すること。
しかし相手は、地上を闊歩する特殊別働隊。正面切って倒せるなど考慮にも入らない。
ならばどうするか、彼女の選択は
夏油「つまり、情報交換したいということか。」
パピヨン「正解、流石ハニーね。
貴方たちが情報を渡してくれるなら、それに見合う対価として情報を渡すわ。」
情報を得るためなら、その対価を支払うこともできる。
彼女の持つ対価、それはバーニンガム副司令官とその階級で得られる情報。
夏油たちが逆立ちしても手に入れることができないものであり、中央政府の内情や状況について確かな実情を知り得ることができる。
呪霊を使って調べることもできるが、マリアンの騒動以降動きが無いことから、相手の出方を待っている状態になっている。
得られるなら手に入れておきたいが、その情報がどれほど希少かつ重要なのか、今はまだ分からい。
パピヨンは積極的に交渉に応じるように、サンプルとして情報を提供する。
パピヨン「例えば...地上に生存者が一人も居ないって話、あれウソよ。
真っ赤なウソ。」
アニス(そうね、その生存者に最近会ったもの...)
マリアン(生存者というより、転生者ですかね...)
ネオン(二人も会ったんですよね、感覚が麻痺してきましたよ...)
パピヨンが提示した情報は、地上に人間の生存者はいないことと、アークの他に地上で人間が集まって活動している拠点が存在すること。
上層部の間でその拠点の名は失楽園と呼ばれており、かなり昔から知られていたと言及する。
地上で人間が活動している事、そして拠点を持ち活動している事は、全員が知らない情報だった。
パピヨン「私なら詳しい内容を伝えられるわ。」
夏油「教えてもらう為には、私たちが何をするのか答える必要があるのか。」
パピヨン「そう、だから私に
夏油の前に出て人差し指で胸部をなぞるパピヨン、それを見てしかめっ面するアニスが食って掛かろうとする。
夏油「私たちはアンチェインドに関する情報がある研究所に向かっている。」
ネオン「師匠!?」
アニス「駆け引きすらないじゃない!!」
自分たちの目的地をあっさりと明かす夏油、その行動に対してパピヨンだけでなく、ネオンとアニスまでも驚きを隠せない。
ラピとマリアンも大胆な行動に驚きはしたものの、その行動に何か理由があると踏んで静観していた。
パピヨン「その研究所でアンチェインドに関する情報を手に入れるのね...」
夏油「その通りだ。」
長期任務と言って地上に出てきた目的について知ることができ、一応任務の目的を達成できたパピヨン。
しかし、バーニンガムが求めているのはその情報を持って何をするのか、慎重に聞くべきか深入りして一気に引き出すべきか悩み、長考した。
決まったのか顔を上げて、夏油に尋ねる。
パピヨン「その情報を手に入れて、ハニーは何をするのかしら?」
答えは一気に引き出す、夏油が懐まで飛び込んできたなら、こちらも踏み込まなければ
アニスとネオンは心配した様子で夏油を見つめ、パピヨンも夏油の出方を待ち構えるように、静かに見つめている。
夏油「悪いけど、ここから先の情報を渡すには対価が必要になるよ。」
予想通りの反応で溜息を零すパピヨン、情報を要求するということはまだこちらの対応次第で幾らでも引き出すことができるということ。
主導権はまだ離れていない実感を持って、追加の情報を提供する。
パピヨン「分かったわ。大盤振る舞いしてくれたし、ハニーの欲しい情報をあげる。
何がいい? 拠点の規模? どれくらいの人数? それとも拠点の座標?」
選んでもらおうとパピヨンは持っている商品を、客の前に並べていき食いつきそうな距離感まで近づく。
敢えて自分から並べその中から選ぶことで、選択肢の中から夏油の動きを誘導しようとする。
長年諜報活動で培われた話術で、夏油の情報を骨抜きにするつもりで、全力で情報戦を仕掛けに来た。
夏油「全部だ。」
夏油は選ばず、全てを対価として要求してきた。
予想から外れたが、考慮していなかった訳ではなく、陳列した商品はあくまで一欠けらで、この程度のリソースは痛くも痒くも無かった。
パピヨン「驚いたわ、意外と強欲なのね。
いいわ、今言った失楽園に関する情報を「何を勘違いしている?」」
客先に止められるパピヨン、今まさに欲していた情報を提供しようとしたのに、自らが止めに入って動揺して目が少し揺らぐ。
夏油「私が要求したのは、君が今持っている正真正銘全ての情報だ。
今まで生きてきて手に入れた全ての情報を対価として要求する。」
対価を聞いて表面上動揺を見せなかったパピヨンの表情が、この瞬間崩れて驚きを隠せなかった。
滅茶苦茶な要求をして動揺したのはパピヨンのみならず、アニスとネオンは勿論、無表情だったラピとマリアンも目を見開いていた。
パピヨン「ハニー...それ冗談のつもり?」
夏油「冗談なんてとんでもない、本気さ。」
諜報員にとって情報とは命。任務遂行の鍵でありつつ、自分の身を守る物。
大小関わらず身銭を切ってようやく手に入れ、より多く持っている程、勲章のように光り輝く。
その実感をパピヨンは分かっており、夏油が言わんとしている意味も察した。
パピヨン「もっと聞きたいなら、命を賭けろって言うの?」
夏油は頷いて返答する。
夏油「君には悪いが、びた一文まけるつもりは無い。
私たちも命を賭けて、地上を出て戦って、目的を目指している。
この法外な価値は、私たち全員の命と考えて欲しい。」
情報の価値と希少性は、バーニンガムの一件で痛感しているし、自分が無茶を言っている事も重々承知している。
しかしパピヨンだけで無く、夏油も戦いに繰り出し、トーカティブなどの手札を隠す程に命を賭けている。
そしてラピたちも同様に、命を
これ以上引き出せないと分かったパピヨンは、見切りをつけたように深いため息をこぼして情報の譲渡を諦める。
パピヨン「悪いけど、全部吐いちゃったら裏切りになっちゃうわ。
まだ死にたくしないし、情報が吊り合うか分からないし。」
夏油「私も話してしまえば、止められるどころか最悪アークに居られなくなる。
君も破滅しないくらいじゃ無いと成立しないだろ?」
結局この時繰り広げられた情報戦は、捨て身の危険性を感じたパピヨンが離れて終了した。
実際どんな内容か分からない物に、手持ちを全て賭けろと言われても無理な話。
だが彼女の実力は話術のみでは無い。
直接情報聞き出すプランから、現地で情報収集し目的を推理するプランに移行する。
目的地の研究所に到着し、正面扉は問題無く起動して開かれる。
ラピたちカウンターズが警戒しながら先行、セキュリティーによる迎撃システムの起動は無く、ラプチャーの反応も無い事を確認した。
セキュリティーが無かった事に、気が楽になったアニスとネオンだが、システムが解除されている事から、自分たち以外に誰かいると再び気を引き締める。
警戒しながら研究所内を探索し、部屋の中心に人1人入れる大きさの円柱のガラスケースが一本、しかも半壊して空っぽになっている。
その部屋の中に、パピヨンは資料を見つけて夏油に手渡す。
パピヨン「これ、読んでみて。」
パピヨンが意味ありげな表情を浮かべ、夏油は手渡された資料に目を落して読み上げる。
手渡された資料は何年もの歳月が経過していたのか、最初の資料はインクがかすれて読めなくなっていたが、運よく後半の文字は読める状態になっており、茶色に風化してほぼ古紙のような質感が手のひらから感じる。
実験対象:Rh X(仮称)血液型
所有者1人
要約及び結論:被験者からの血液から、特殊物質が抽出された。
該当の物質をヘレティック・アナキオールに注入した結果、
ヘレティック体内のナノ物質が破壊されることを確認した。
これに該当する物質をアンチェインドと命名。
サンプル採取:10ml 計12個。
保管場所:本研究所9棟503号室
そこから先は更に風化して解読が不可能だったが、アンチェインドの製法と保管場所が判明した。
大収穫に一同は思わず口元が綻ぶ。
夏油とラピを除いて。
夏油(ヘレティック...アナキオール...
確か最初のヘレティックとデータベースに記述されていたな...名前だけで画像も外見も無し、詳細な情報は一切無いな。)
ラピ(アナキオール...その名前は...)
正体の分からない存在と、そのヘレティックを捕縛した形跡が会ったこと、そしてここで何らかの実験があったことを知った夏油。
アナキオールという単語に対して、自然と頭が下がり胸の奥で脈動している鼓動が早くなる事を、固めている拳から伝わってくるラピ。
マリアン「? ラピ、大丈夫ですか?」
ラピ「ええ......大丈夫よ。」
浮かない表情のまま、ラピは心配しているマリアンに返答し、先程通り過ぎたマップを思い出して、保管場所の研究所9棟503号室は、この部屋の近くにあると伝える。
アニスとネオン、そしてパピヨンは目的とされるアンチェインドが保管されている部屋へ、意気揚々と歩き出す。
表情は変わらず気分が沈んでいるような表情のラピと、急に様子が変わったラピを心配するマリアン。
そして、
夏油(...妙だ......気配が二つに分かれている...?)
この研究所にいる気配を察知し、その分布に違和感を感じていた。
警戒した様子で廊下を移動しつつも、どこか喜びを隠せないアニスとネオン。
夏油は二つの気配が近くにいる、または近づいていると気付き、視覚共有できる呪霊を二体放つ。
どちらも見られずらい暗がりの通風孔を通り、他に点在する気配の正体を探りに行く。
同時にアンチェインドが保管されているであろう、研究所9棟503号室の自動扉の前まで辿り着く。
夏油(...一つはここか...。)
そして気配の一つの居場所を、目の前の9棟503号室にいると気取る。
夏油は全員にハンドサインを送り、中に誰かがいると伝える。カウンターズ独自のハンドサインの影響で、パピヨンだけが何をやり取りしているのか分からず見つめている。
ラピとネオン、アニスとマリアンに分かれて、ドアの側面に身を隠しながら、互いにカウントダウンの合図を送り、ゼロになったと同時に蹴破って突入する。
ラピ「動かないで!!」
????「!?」
パピヨン「既に先客が居たの!?」
部屋の中にいたのは、黒いローブに全身を包みつつフードを顔深く被っている黒ずくめのニケ。
すぐさま二手に分かれたラピとネオン、アニスとマリアンは奥の壁に追い込むように銃口を向けて追い詰める。
一瞬その姿を見て、夏油たちはマリアンが出会ったピルグリムを想起する。
アニス(アイツって...まさか...。)
ネオン(マリアンが前に出会った...)
小声で会話するアニスとネオンは、対面したピルグリム ミールと考え、警戒レベルを引き上げながらマリアンに尋ねる。
マリアン(背丈と様相は似ているけど...
何か違うような...)
姿と身につけているローブは同じように見えるが、マリアンが対面した時にミールとの差異を感じていた。
それは姿形が絡む話では無く、もっと直感的な感覚に近い。
マリアン(ミールは、近づけないオーラを感じたのに...
でも、今目の前にいる人からは...)
気品や気迫で近づけないのでは無く、狂気や悪意が全面に溢れているような感覚を、マリアンはミールと出会って味わった。
今対面している人物からは、それらの気配は全く感じず、寧ろ警戒され反撃する意志が全面に現れている。
全員に黒いローブで身を隠した人物の印象を、すぐに共有しようとする。
マリアンの行動を遮るように、入ってきた扉ごと壁が完全に吹き飛ぶ。
体の向きを背後の壁に注視する夏油たち、爆煙を振り払いながら目を見開く。
アニス「今度は何よ!?」
ラピ「敵よ!!」
部屋に充満した爆煙に、咳込みながらも爆破した人物に目を向けて、その戦力を確認するラピ。
数は4人、小柄1人、長身3人という構成で、パピヨン含めて黒いローブの人物と同じ数になるが、この狭い空間の中で十分に戦えるか分からない状況。
ラピの考えがまとまる前に、壁を壊した4人のうちの1人が仲間に指示を送る。
???「...イサベル、指揮官の方を確...」
長身の男からの指令を伝えきる前に、甲高い金属音が部屋の中で響く。
その音は黒いローブを纏っている人物から放たれ、左手にはピンのような物が握られてこちらに円柱の長い棒状の物を投擲する。
その形状から瞬時に判別して発声、小柄な人影は長身三人の前に、ラピとマリアンも夏油を守るように前に出る。
アニスとネオン、パピヨンはその場で頭を屈めながら伏せ、グレネードが地面に跳ねた刹那。
部屋中を影すら無くす凄まじい光が包み込み、鼓膜を突き破るような破裂音が反響する。
爆破だと身構えていたラピとマリアン、そして4人組の面々も思わず目を塞ぐ。
???「フラッシュバンか...!」
アニス「目がぁあ! 耳がぁあ!!」
???「そんな物を...!!」
ネオン「何も見えません! キーンって音以外聞こえません!!」
??「何よ! 私の盾に怖じ気づくのは分かるけどムカつく!!」
マリアン「っ...指揮官...!!」
敵も味方も阿鼻叫喚の嵐となっている部屋の中、何も見えず聞こえない状態でそれぞれ慌てては声を出す。
それぞれ何とか対処しようと動いている間に、視覚と聴覚が正常に戻り始めて朧げな景色と濁っている音が聞こえ始める。
中でも真っ先に戻り始めたのは、壁を破壊した長身の男性。
すぐさま状況を把握する為に、両手で覆っていた瞳を少しずつ開いていき、部屋の中を確認する。
???「逃げたか...!」
爆風が止んでいるというのに、正面から風が当たってくるほど風通しが良かったのは、部屋の奥側の壁に穴が開けられていたからである。
そして部屋の中をもう一度確認すると...
イサベル「どうしますか、
???「命令は変わらない、追跡しろ。」
イサベル「承知しました。」
先程までいた人物の内2名が、この部屋から忽然と消えていた。
休日で小説書く気になるまでかなり時間がかかる...僕はナマケモノかな?
砂粒混じりの風に揺られて
今にも崩落しそうな地中の道を歩き続け、顔を見上げると曇天の空が視界に映り、地中の出口から外に出る。
出口の目の前には、天高く聳え立つ研究所。
風化しつつも衰えを見せず、数十年以上の経過を感じさせない。
ゆっくりと扉の前に歩み寄り、コンソール画面に近づいて作業に移ろうとすると自動で開かれる。
セキュリティー欠陥に罠だと確信を持つも、それでも対処できる自信があるのか、それとも退けない理由があるのか...
その真意は定かでは無いが、研究所に足を踏み込み堂々と入る。
研究所全体を制御、管理しているデータベースに入ると、埃が溜まっていた形跡があるが、何台も連なっているスーパーコンピュータは稼働している。
デバイスを保護している扉を開き、懐に入れていた端末の端子と接続、端末経由でコマンドプロンプトを操作し、あるアプリをダウンロードさせる。
ダウンロード完了後、研究所全体の監視カメラのジャミングに成功、内部を隈なく確認したところ、ラプチャーの影も形もなく人影も無い。
安全を確保したのち、端末のカメラ情報を参照し、研究所の探索へと乗り出す。
最初に足を運んだのは、円柱のガラスが破られ荒れている部屋へ足を運ぶ。
机の上に乱雑にばら撒かれている資料に目を落とし、手にとって確認していく。
資料に記述されていた部屋の番号を、端末に表示されているカメラの名前と照合して、この部屋の隣だと分かった。
読み終わった資料を元に戻しながら、他の資料にも目を通していく。
その後、アンチェインドが保管されいている部屋の隣にある検査室という所で、首飾りのように大切に持っていた一発の弾丸と土くれが混入している血液の入った瓶を、アンチェインドか判定。
弾丸はかなり経年による劣化が進行しているが、現在の状態でも十分使えると表示。
どちらもアンチェインドと断定され、弾丸は再び首にかけて瓶に入った血液は土くれを除去し、あるラプチャーの素材を使って作ったサバイバルトマホークに吸着させる。
ふと視界に入ったのは、研究記録を記したプリントの裏にあった一冊の手帳。
トマホークの加工が終わるまでの暇つぶしに、手に取った手帳をパラパラと捲っていく。
ほとんどの文字は掠れてまともに読めないでいたが、手帳の最後のページ辺りは何とか読める状態だった。
静...にし...てくれ......
お願......だ。...む...。
こ......上、俺......を.........でくれ...
何......前は...
人類を裏切ったんだ。
そこから先は文字が乾燥した血液で塗りつぶされており、読むことが出来なくなっていた。
読み終わったと同時に、加工が終わったことを知らせるアラーム音が耳に入る。
加工が終わったトマホークは、黒一色の状態から血液を吸着したことで赤黒い光が鈍く輝く。
ルビーのような輝きを放つ弾丸はローブに隠し、赤黒いトマホークを腰に戻してアンチェインドが保管されている部屋に足を運んでいく...