......喰うぜッ!!(偽物勇次郎)
というか勇次郎のハンガー面白すぎて一生笑ってました、東方不敗のハンディ扇風機みたいに完全に大人がふざけているのが笑いに拍車をかけている。
視界と聴覚が奪われて体勢を立て直せず、統率が取れず混乱している事を黒いローブの人物は目視で確認する。
次に予め用意しておいたのか、部屋の奥に駆け出してアンチェインドが保管されていた冷蔵庫を踏み台にし、壁を爆破して穴を作り脱出する。
夏油(逃げるつもりか...!)
降伏した呪霊の中で視覚共有できる呪霊を側に置き、塞がった視覚を一時的に取り戻し黒いローブの動向を確認した。
夏油(マリアンの反応から微妙だったが...完全に関係していないとは限らない。
ミールの手先なら猶更だ...!)
夏油は保険を残しておき、この研究所から脱出した黒いローブの人物を追跡する為に、同じように身を投げ出し研究所を後にする。
夏油が追跡する理由は一つ、マリアンの肉体に残っているラプチャーの正体について。
彼女の不安を全て取り除くべく、体内に内包した呪いを巡らせ、全力をもって追跡を開始する。
黒いローブの人物は、何階にも聳え立っている研究所から飛び降りて、何ともない様子で受け身をとって逃げるように駆け出す。
フードで隠れていた頭頂部から、機械のゴーグルを下ろして視界を確保。
次に足側面に格納されていたホイールのような物を展開、ローラースケートのような足だが、自動車のようなスピードで地面を滑るように高速移動を始める。
飛行用の翼があるニケを見て、地上での退避は不可能と断定、地中での撤退を選択する。
ゴーグルの中央に取り付けられている顕微鏡のレボルバーのような部品が回転し、暗い地中に入っても見える暗視モードに切り替える。
光が一寸無い闇の中を縦横無尽に駆け回る中、戻りはじめた聴覚から聞きなれない音が耳に入る。
大地を蹴って、腕が風を切る音。自分は姿勢を変えずに保っている事から、追跡されていると気づき後ろを振り返る。
????「.........。」
夏油「......。」
男だ。しかもニケを5人引き連れていた人間だ。
しかも両目を閉じているというのに、足を取られそうな程に荒れている地面の状態を熟知しているかの如く、五体を使い追いかけてくる。
現在2人の速度は時速約50km、両名地上に出れば更に速力を上げられるが、それでも十分過ぎるスピードで走り続ける。
埒が開かないと踏んだのか、ローブで隠れていた腰から一丁のライフルを取り出し、外付けされているグレネードを天井に向かって放つ。
夏油「っ...!」
爆風から身を隠し突き進もうとするも、地中の天井が崩落。
崩落箇所から距離を取るも、ドミノ倒しのように次々と天井が崩れ、無理矢理天井を破壊しながら地上に出る。
夏油(...さっきの振動でラプチャーが集まってくるかもしれないが、まだ追跡出来ないわけでは無い。)
見失ったが完全に目星がないわけでも無く、呪霊を顕現させて追跡を続行しようと飛行できる呪霊を繰り出そうとする。
夏油(......ここまでか。)
追跡を止めて、振り返りながら空を見上げる。
見上げている視線の先には、紫色のボディに黄色く輝く両翼をはためかせたイサベルがこちらを見つめていた。
ゆっくりと高度を落としながら夏油に近づき、親しげに話しかける。
イサベル「随分遠くまで来たのですね、あなた様。
奴はどうしました?」
夏油「逃げられた。
視界と聴覚が戻っていれば、まだ終えたかもしれないが...」
地中にて撤退していた黒いローブの人物を逃し、崩落から避ける為に地上に出てきた事を伝える。
本来だったら追跡を続けて情報を聞き出したかったが。
夏油(イサベルのスピードを振り切れるとは思えない。
加えて皆と離れてしまっている、これ以上迂闊な行動は出来ないな。)
(五条 悟を除く)空中最速のイサベルから、呪霊を使って逃げようとするとかなり骨が折れる。
そして自分の意思でラピたちと離れてしまった状況、イサベルたちを率いていた人物は全く知らないが、ラピたちを人質にする可能性が無いとは言い切れない。
夏油「やむを得ない...か。」
イサベル「すみません、あなた様。
少々手荒になってしまいますが...。」
夏油「君と一緒なら、私の安全は最低限保証されている。
相手が君で本当に良かったよ。」
イサベル「まぁ...♡」
夏油の信頼を寄せる言葉を聞いて、イサベルは思わず手を頬に添えて顔が赤らめる。
並んで歩きながらイサベルの拠点である、楽園へと足を踏み出していく。
イサベル「よろしかったら私が
夏油「...ありがとう、遠慮しておくよ...。」
イサベル「ふふっ、意外と恥ずかしがり屋なのですね。」
夏油(そういう次元の話じゃないんだが...。)
イサベルと共に行動して数十分が経過し、接敵したラプチャーを2人がかりで撃破していく。
全滅を確認した後、再び拠点に向けての移動を再開する。戦いの中でイサベルは、自分の指揮官以外の人物に指揮を受けるこの体験が、未体験故か不思議な感覚を感じていた。
イサベル「何だか、不思議な気持ちです。」
夏油「こうして一緒に戦う事がかい?」
イサベル「いいえ、あなた様の指揮に従う事がです。
こうして指示を従っていると、指揮官とあなた様の違いがよく分かります。」
イサベルは普段から指揮官の指示に、揺るぎない信頼を持って行動に移す。その指示はとても合理的で、重傷を負っても倒せる戦略の下で成立している。
つまり必ず勝つ戦い方と感じていた。
対して夏油の指示は、イサベルの指揮官程の才覚は無いが、それでも仲間の負傷を最小限にして勝つという考えを沿っての戦略だった。
その心情は必ず生き残るだろう。
故に二人の指示は対照的で、それぞれの特色があるのが分かる。仲間を信頼している戦いと、仲間を傷つけない優しさ。
どちらもイサベルにとっては、二人の気持ちの温かさを感じているのだ。
夏油「君の指揮官は、一体どんな人物なんだい?」
イサベル「大望を目指す現実主義者...でしょうか。」
夏油が気になって投げかけた質問を、イサベルは快く返答する。その表情は心なしか嬉しそうな表情だった。
かつて彼も生身の人間であったこと、負傷した体を金属と機械で補修し、対面でもラプチャーに対処できる肉体になった事。
そしてずっと目指している地上奪還の為に、地上で戦い続けている事を夏油に話す。
自分に課せられた使命のように、戦い続けている事を。
イサベル「私からも聞いていいですか?」
夏油「構わないよ。」
イサベル「あなた様は何故、アンチェインドを求めてやって来たのですか?」
イサベルが問うた事は、この地上、しいては研究所に来た理由だった。
地上奪還なら最悪アンチェインドが無くとも進行は可能、それでもアンチェインドを求めてやってきた理由について、イサベルはどうしても気になって聞いておきたかった。
イサベルの質問に、夏油も快く答える。
夏油「ニケの開放...というより、その機会を与えたいから。」
イサベル「NIMPHからの開放...ですか。」
察しのいいイサベルは直ぐに夏油の考えを読み解き、抽象的な言葉から排除する対象の名前を上げる。
その回答に夏油は正解というように頷き、詳細な自分の考えを伝える。
夏油「彼女たちも元は人間だ、戦いが終わったのにそのままというのはあんまりだと感じてね。」
イサベル「それでもNIMPHを残したい人がいると考えて、機会を与えるのですね。」
夏油「そう、私は彼女たちに選択肢を与えたい。
その為にも、彼女たちの立場を改善しないといけない。」
夏油が目指すのはニケの復権、その先に彼女たちに選択の自由を与える事。
彼がその行動を行うに至る理由は、ニケとかつての自分の境遇を重ねてしまったことにある。
強者が弱者に適応するという事象に対して不快感はあったが、それ以上に敵と戦い続ける彼女たちが糾弾され続ける現状が見るに堪えなかった。
イサベルは微笑みながら夏油の話を聞いていたが、直ぐに真剣な表情に戻りもう一つの質問を投げかける。
イサベル「素晴らしい大望だと思います。しかし、恐らく私の指揮官と考えが衝突します。
その時はどうするのですか?」
人類の住処である地上の奪還を第一として戦うイサベルの指揮官にとって、夏油のような考えを持つ人間は認識し難い存在でもある。
どちらも間違い正しい考えは無いが、それでも考えの衝突は避けられない。
夏油「その時は、私が
彼女たちの自由を得られたとしても、頭上の問題を片付けないと話は始まらない。
私としても、地上奪還したい。出来る事なら私も協力したいんだ。
それまではニケの立場を少しずつ改善する事に従事するよ。」
衝突すると警告したイサベルの質問に対して、夏油は自分が下がって協力すると答えた。
ただ理想を見ているだけではない、目的を完遂する為の優先事項を客観的に考えることができる冷静さを感じられる。
そしてそれ以上にイサベルの瞳には
イサベル(あぁ...この姿に私は...///)
決意を秘めた真っ直ぐな瞳に、ブレない姿勢に心を射抜かれたのだ。と改めて実感した。
荒れ果てた大地を抜けて、地面と情景に緑や青空と彩りが強くなっていく。
気が付けば草が生い茂り、花がそよ風に揺らめき、曇天だった曇は晴れて太陽が顔を出している。
まるで地獄を彷徨い続けた先に天国へ続く道を見つけたようだった。
夏油「あれが...楽園...?」
イサベル「ええ、あともう少しで来ますよ。」
彩る世界に不釣り合いな建造物が、楽園と呼ばれる聖域に存在感を放ち、奇妙な空間を作り出している。
イサベルが晴れている雲の無い空を見上げ、夏油も空を見上げると、雲よりも白く純白の翼を大きく広げている人物が一人、こちらに向かってゆっくりと降りてくる。
その様相はさながら、楽園という天国からやって来た天使のよう。
????「ようこそいらっしゃいました。生き残った者たちの楽園へ。」
大地を強く照らす太陽を背に、天使は降り立ち来訪者である夏油を歓迎する。
その美しさに、普通の人間は見とれてしまうだろうが、現在の夏油の表情は
これだった。
????「...なんですかその顔は。」
夏油「いや別に。」
夏油の表情に対して、天使もなんだと言いたげな表情で反射的に変わった顔に目を細める。
イサベルも横からその表情を見て、ドロシーになびく事は無いと盛大な勘違いをして、夏油は自分に気があるとニタニタと笑みを浮かべる。
????「イサベルも、何ですかその勝ち誇ったような顔は。」
イサベル「いえ別に......クスクス。」
イサベルにも同様の視線を向けるが、気持ちを切り替えるように溜息を吐いて目前に見えている建造物に手を向けて説明する。
????「コホン...ここは楽園。
公の名称は、地上基地『エデン』。
そして私は、この基地のガイドです。」
夏油「ガイド...?」
????「ええ、この美しい世界を伝えるガイド。
気楽にドロシーと呼んでくださいね。夏油 傑 様。」
夏油「私のことも知っているのか。」
夏油の名前を知っている様子を見せており、名前以外にも地上で活動している事も知っているような様子を見せている。
素性を知っているような発言から、身構えて警戒している状態を解消するように、口頭で緊張を解くように語りかける。
その後、夏油に手を差し伸べ、夏油にこの基地を案内しようとする。
ドロシー「さあ、こちらへ。
天気も良いので、まずは楽園の庭園に行きませんか?」
夏油に近づき手を差し伸べてきたドロシーに、露骨に嫌そうな顔をして立ちふさがるイサベル。
夏油の右腕に抱きつき、怒りを宿した鋭い視線を向ける。
イサベル「私が案内しますので。」
ドロシー「おやおや。」
ドロシーではなく自分がエデンを案内すると宣言し、絶対に離さないという力で右腕に抱きつく力を強める。
夏油は呪力強化でイサベルの抱きつきに耐え、ドロシーは意外そうな表情を向けた後、含みのある表情に変わり言い放つ。
ドロシー「ですが、貴方は指揮官に報告しなければならないのではないですか?
前科がありますし、『二度は無い』と言われた筈ですが?」
イサベル「っ...。」
前科というのは、スノーホワイトと合流する前の事、一日中通信を拒否して夏油と二人っきりで過ごしたこと。
そのまま報告するわけにもいかず、通信できない空域に入ったと誤魔化すが、エブラ粒子が晴れた影響でエデンのレーダーに引っかかり呆気なくバレた。
同じ身勝手な方法で夏油に接触することが難しくなり、この一件でかなり信用が落ちると追加でドロシーは伝える。
ドロシー「別に構いませんよ、このまま案内しても。
ただし、今後しばらくは単独での行動は出来なくなるでしょうけど。」
もうこれ以上、会う為にエデンを離れる事が出来なくなるかもしれない恐れがある。
イサベルは歯を食いしばり、血のにじむような眼力で睨みつけるが、夏油が仲裁に入る。
夏油「私は大丈夫だ。」
イサベル「しかし...!」
夏油「では頼まれてくれないか? 君の指揮官の下に向かって報告した後、私の仲間の安否を確認してきて欲しい。」
夏油はお願いという形式で、イサベルに報告を終えた後に仲間の安全を確認してきて欲しいと頼んだ。
自分に頼み事するというのは悪い気がしないが、それでも仲間と聞いて難色をするイサベルに、夏油は両肩に手を添えて更に踏み込み至近距離で頼む。
夏油「頼めるのは君だけなんだ。」
イサベル「えっ...そんな...急に...///」
距離を縮めてきた夏油に、イサベルは躊躇いながら口ごもり距離を取ろうと押し返す。
押し返された夏油は、露骨に凹む顔を見せて気分が沈む。
夏油「...やはり...ダメか...」
イサベル「!...いえ、数分お待ちください。
早急に向かって確認してきます。」
夏油「そうか、ありがとう。
このお礼は後で。」
イサベル「はい。」
夏油の悲しんでいる表情を見ていられなくなったイサベルは、願いを聞き入れて飛び上がる。
そしてお返しの約束をしてくれた途端、やる気が湧いてきて思わずガッツポーズして飛び立った。
夕焼けで空が橙色に染まっているにも関わらず、黄色い閃光が軌道を残して空を駆ける
その光景を眺めていたドロシーが、イサベルの反応が珍しいと声を出す。
ドロシー「普段からあんな調子じゃないんですが、あなたが関わると必死になるんですね。」
夏油「どうかな?」
ドロシー「??」
夏油「表に出していないだけで、彼女は君や君たちの仲間に対しても必死なんじゃないかな?」
普段から平静を保ち任務に従事しているイサベルが、自分の意志を押し通すほどの行動を見せなかったのは珍しかった。
しかし見せないだけで、本来の性格なのではないかと夏油はドロシーに伝えた。
その発言に思い当たる節があるのか、意味深な表情を浮かべたドロシーはエデンの庭を案内する。
そうしてドロシーはエデンの周辺を歩きながら、夏油に周辺施設と環境について説明していた。
アークとは違い生きている大地を踏み歩き、綺麗に実っている果実には人口調味料などの不純物は無く雑味を感じられない。
エデン内部ではアークには見られない機器が並び立ち、技術力の高さが伺え研究所で対面したイサベルを含む三体のニケが製造されたと聞く。
実現させる設備に目を見張る物があるが、それ以上にその機器を取り扱う技術者が凄腕だとドロシーが太鼓判を押す。
最後にロビーでは基地全体を見渡せるテラスになっており、幾何学的な内装に室内でも植育できる緑が彩り、雰囲気を生き生きとさせて居心地が良い。
そしてアークのシミュレーションルームと同じ戦闘訓練場があり、エデンに所属している者全員が利用してラプチャーと戦う術を身につけていると言及する。
それはイサベルの指揮官や、生み出した技術者も同様に。
ドロシー「生きていける力を身に着ければ、多数の弱者が少数の強者を搾取する事は起きませんから。」
夏油「......。」
エデンの在り方を象徴する生き残る術、それは例え人間であろうとニケと真に対等である為には、自分たちが同じ土俵に上がるしかない。
何気なく発言したドロシーの言い回しに、かつての自分の面影を無意識に重ねてしまう。
反応が無い夏油に対して、気を遣うように声を掛ける。
ドロシー「どうしましたか?」
夏油「いや、何でもない。君の言う弱者が強者を搾取するというのは、人間とニケの関係なんだろう。」
ドロシー「ふふっ、その通りです。」
返答として帰ってきた考えに、満足しているドロシーは笑みを浮かべながら、エデンの在り方について自分の考えを共有する。
ドロシー「私が考える人間とニケが共に暮らす楽園というのは、力のバランスが取れた世界のことです。」
全員が同じ考えではないと付け加え、それでも対等な関係として戦っていくならこの在り方が条件として絡んでくると伝える。
弱者は所詮表面上でしか物事を測れず、どうしても強者間との差異が生まれてしまう。
差異を取り除くためには、弱者が強者に適応するべきと言及し、同じ視点を持つことが重要だと話す。
この考えに対して、夏油は素直に同意した。
内心強制していない自分よりかは遥かにマシな考え方で、生き残る術を身につけると言及している辺りから、弱者に対しての嫌悪感からも見られない。
そして同時に関心が微塵もない。彼女はあくまでも強者、もしくは強者に足りえる者を受け入れている。
必要な者を残し、不必要は切り捨てる。楽園という名前でありながら、合理的な原理の下で運営されているのだと知る。
そして実際に見回ってみて、エデンの感想を直々に聞きたいのか、理想と近いのか尋ねる。
ドロシー「いかがでしたか? 私がお見せした楽園は、想像されていた楽園とどのぐらい近かったのか。」
夏油「私が想像していた光景と同じだったね。」
エデンの印象を夏油から聞いたドロシーは、満足したような表情を浮かべて本題の話に移る。
イサベルから聞いていないが、エデンの危機を解決する為に、ドロシーは夏油をずっと待っていた。
エデンに降りかかっている危機とは、ラプチャーでも単体で最上級の戦闘力の戦闘力を有するヘレティックだった。
夏油を待ってエデンに招待した理由は、ヘレティックと交戦して勝利を収めているうえ、侵食を解除して正気に戻した事から。
ヘレティックのコードネームはニヒリスター、現在もエデンを落とす為に周辺を巡回している。
これまで5回の戦闘を繰り広げたが、全て引き分けで膠着状態が続いたままになっている。
ドロシー「勿論、アンチェインドを確保した今、少しは有利になりましたが...」
夏油「一回限りのチャンスでは勝率が低い。
確実な勝利を目指すには別の物が必要と?」
ドロシー「ええ...私の友人から聞いた話だと、貴方は絶望的な状況でも、何度も奇跡を起こしてきたそうですね。」
一瞬顔を逸らした後、すぐに向き帰り聞いた功績を思い出すように話すドロシー。
顔を逸らした瞬間を見逃さず、ドロシーという名前と友人という単語から、かつての出来事を振り返りつつある会話を思い出す。
ラプンツェル「ドロシーはもう、こんな事には興味ないだろうし。...」
夏油(そうか、彼女がゴッデスの...)
ラプンツェルの口から出てきたある名前、そしてピルグリムで知り合いの関係であり夏油の行動を知っている。
二つの条件からラプンツェルが言っていた、ドロシー本人だと確信を持ってどのぐらい素性を知っているのかこれまで以上に警戒を強める。
ドロシーは夏油の変化を少なからず感じ取りながらも、不自然な動きを見せないようにそのまま交渉する。
ドロシー「どうか私たちに、貴方のその奇跡を分けて頂きたいのです。」
ドロシーは作戦成功の対価として、エデンが支払える物を提供しアンチェインドも可能と提示。
しかし現在弾丸は一発だけ、ヘレティックを倒す為に消費するか、それとも使わずに持ち帰るかを夏油に委ねられる。
夏油(今エデンには私とドロシーを除いて1人、
ある部屋で私たち、
指揮官と呼ばれる男と小柄な少女、
そして長身の女性1人とラピたちをドローンで監視している...
部屋の内装から通信も可能と見ていい、行動を起こせば早急に対応できる。
この状況で断れば、彼女は二度とこの提案をして来ないだろう。
アンチェインドを保有している事から優勢である事には変わり無い。
ラピたち...特にマリアンを開く場合は強行手段として術式を発動、ついでにアンチェインドを強奪もできる。
だがドロシーや指揮官、イサベル以外のピルグリムの戦力把握が不十分、この手段は使いたく無い。)
今分かっている情報を整理して、想定できる事態を提示して対処法と、行動に移した時のリスクを考える。
考えた結果、強行手段に移さないように交渉に応じ、相手の懐を探るのが最適解と判断。
無論承諾した時のリスクも考慮に入れる。
夏油(承諾した場合、対価としてアンチェインドを入手できるが、対面するヘレティック次第。
文書の内容は写真で撮れた、アンチェインドが無くとも量産方法を手に入れただけでも十分。
ならアンチェインドはヘレティックに使う方向とし、アークに降りかかる脅威を避ける。)
自身の拠点であるアークにやって来る脅威を未然に防ぎつつ、エデンと協力関係を構築できる。
利点が多いと考えられる提案だったが、返答する前に引っかかる気がかりな点が一つ存在した。
夏油(ドロシー...たかだか戦績だけで迎え入れるとは思えない。
あり得るなら、私たちの戦力と合わせて倒せるヘレティックなのか、あるいは私たちを捨石にして疲弊させるつもりなのか...
可能性が強いのは後者だな、私の術式を知っていたなら前者だが...)
ドロシーの心中が全く分からず疑念が深まる夏油だが、どちらもあり得ることから水掛け論のように思考が止まらない。
更に突発的にこの提案をしてきたことから、夏油とドロシーしかこの話は知らないと考えられて、何をしでかすか分からず身勝手な性格から真意が全く分からない。
それでも一緒に行動した方が、全員が生還する可能性が高いと判断して、ドロシーの提案を承諾する。
夏油「いいだろう、受けよう。
だがこの話は君の指揮官に話していないだろう?」
ドロシー「ご心配無く、彼は私が説得しますので。
勇気あるご決断ありがとうございます。」
この話を通していない事を明かしたドロシーだが、表情を崩さず話を通すと自信を持って答える。
指揮官が戻ってくる前にエデンで待機しようと提案し、エデン内部に向かって歩き出す。
それと同時に、ドロシーの端末から着信音がこだまする。
ドロシー「何ですか? ヨハン。彼? ええ、今私の隣に。
先ほどエデンを見学させていたのです。何か問題でも?
はい、はい、...はい。分かりました、一先ず先にそちらに。それでは。」
端末を介しての会話を終えて通話を切る、会話の中で聞いたことのない名前が上がり、連絡をしてくる人物がいるとすれば、イサベルが連絡しに向かった指揮官の可能性が高い。
対面せずにエデンのメンバーネームを知っていく傍ら、並んでいた2人だがドロシーが前に出て振り返り夏油に報告する。
ドロシー「申し訳ございません、夏油 傑 様。
こちらの都合で行き先を少し変えることになりました。」
夏油「別に構わないが、何処になるんだ?」
ドロシー「それが...」
夏油が尋ねて来たが、ドロシーの表情は苦笑いしつつ引きつっており、少し申し訳無さを感じるがそれでも意を決したのか伝える。
改めてストーリー見返すように見ながら執筆しているんですけど、最初のドロシーってかなり
アンチェインドの研究所に向かう日の朝、夏油は前哨基地のコマンドセンターの庭に来ていた。
早朝の静けさ、羽を休めている鳥、顔を出す太陽。
体をほぐすにはうってつけの日和だった。
????「......。」(モグモグ)
庭で栽培しているオレンジを我が物顔で食べる謎の存在がいなければ。
夏油の脳内に現れた感情は怒りでもなければ、恐怖や恐れでも無かった。
????「ゲップ。」(お腹をさする)
困惑。
夏油(何だこの生き物(?)いや、呪霊(?)...
だが呪霊にしては...間の抜けた顔のような...。)
夏油の思考が止まらない。
分からない筈なのに、正体は何なのか探ろうという謎の力が辞めさせず、いつまでも情報が完結しない。
一種の
????「ニャーン。」
夏油「!?」
聞き覚えのある鳴き声を聞いて、得体の知れない存在に新しい情報が追加される。
この思考を止める為に、新しく入ってきた情報を無理やり紐づけさせて納得させようとする。
夏油(さっきの鳴き声、猫だ。髪があったり、体が真っ白だがきっと猫だ。
だって今四足歩行してるし、口元もなんか猫っぽい。)
自分に言い聞かせるようにして、思考を止めようとする。
次第に落ち着きを取り戻してきたのか、冷静さが戻り庭を出ようと振り返る。
????「めっちゃ暑いです。」
夏油「!?!?!?」
人語を話した。何なら四足歩行から二足歩行になり、太陽を背にしてこちらに向かって言ってきた。
おかげで先程までの冷静さは無くなり、再び何なのか考え始める。
もうコイツ呪霊で、無量空所みたいな術式なんじゃないかと考え始める。
...考えてたら踊り始めた、奇怪だ。
ラピ「どうしましたか? 指揮官。」
アニス「指揮官様ぁ...アイス買わない~?」
ネオン「冷房も付けましょう...暑すぎてしんどいです...」
マリアン「庭にスイカってありましたか?」
聞き覚えのある声が、自室から聞こえてくる。
ラピたちの声を聞いて、注意を逸らせて振り返る事ができた。
無間地獄から抜け出せたと、疲労と感動でため息をこぼしながらラピたちを見つめる。
夏油「よ...よかった、実は困ったことが」
ラピ?「......。」(ジー)
アニス?「......。」(炭酸水ゴクッ、ゴクッ。)
ネオン?「......。」(メガネキラーン☆)
マリアン?「......。」(スイカムシャムシャ。)
仲間たちも四足歩行になっていた。
完全に意識を手放し、気が遠くなる視界の中。
四足歩行の奴らは、顔面に近づき口にオレンジをねじ込んでくる。
抵抗しようにも体が動かず、息も苦しくなってきたのか暗くなっていく。
完全な闇の中でも謎の四足歩行する存在は、
何を考えているのか分からない、
もしくは何も考えていない目でこちらを見続けていた。
夏油「っ!?」
夏油は飛び出すような勢いで起き、夢から目を覚ます。
視界に入るのはまだ日が登っていない指揮官室、しっかりと記憶に残っている夏油は、夢に出て来た生物についてまた考えていた。
夏油「......。」(何だったんだ、あの夢は...)
「......寝よう。」
夏油は再び眠りにつき、疲労していた身体と心を休ませる。
????「ジー...」
そんな中、白い四足歩行の生物は夏油をジッと見ていた。