ドロシーやイサベルたちの地上拠点エデンに到着した夏油、周辺を巡回しているニヒリスターの戦闘を協力し、詳しい作戦内容を共有する筈だったが。
???「死にたくなければ答えろ、お前は何者だ。」
夏油「アークの指揮官で、彼女たちと行動を共にしている。」
尋問されていた。
椅子に備え付けられた枷が、手足に付けられてまともに動けず質問に答える。
夏油の正面にいる長身の男は、ドロシーたちの指揮官でありエデンのリーダーを務めているヨハン。
碧眼は鋭く顔を見つめ、心中まで射抜く眼力が感じられる。
ヨハン「そうか。では次の質問だ。」
そう言って胸ポケットから、アンチェインド弾が入っているフラスコを取り出す。
ルビーのような鮮やかさが、取調室の照明の光を屈折させて部屋に彩りを与える。
緋色に輝く弾丸を夏油の目の前に持って来て、二つ目の質問を投げかける。
ヨハン「これはヘレティックを殺す為の物だ。
戦いを避けて地下に隠れればいいだけのアークの指揮官が、これを欲しがる理由は何だ?」
夏油「ニケの開放、NIMPHの解除に使う。」
ヨハン「......。」
返答を聞いたヨハンの表情は、極僅かだが目を見開いている。
予想外の返答に驚愕しているのか、それとも呆れかえっているのか。
その答えは帰ってくることは無いが、絶えずにやって来る。
ヨハン「次の質問だ。
ニケの解放と地上奪還、どちらが重要だと考えている?」
これまで以上に凄みを増した眼光が、夏油を睨みつけるように見つめ続ける。
これほどの眼力、もはや塵すら見つけ出し粗一つ見逃さない。
『この質問は噓も隠蔽も通用しない。』そう言っているようにも見える。
この質問の答えを、濁しも滞る事無く答える。
夏油「地上奪還。」
ヨハン「...その理由は?」
数刻の間、ヨハンは動けない夏油の体を目まぐるしく見つめ続けたが、噓や隠蔽を示す体の動きや癖が見つからなかった。
本心か確かめる為に、答えた理由について尋ね、同様に答えていく。
夏油「混乱を避けるため。」
短い返答の後に、そう結論付けるに至った詳細を伝える。
アークは言わば、破裂寸前までに膨らんだ風船のように不安定。風船という器には、狭い世界に増え続ける人口と不満、出生の違いによる格差など。
あらゆる欲望と悪意が見えないところでひしめき合っている中、ニケの権利を復権してしまえば更なる混乱がもたらされると言及。
一度 破裂すれば何とか保っていた外郭は容易く崩れ、散り散りになった瞬間に全人類がラプチャーの的になってしまう。
最悪の事態を避けるためにも、まずは元凶とされるラプチャーを倒し地上を奪還後にニケの復権を目指すと、ゆっくりとだが決意を秘めた重みのある言葉を紡ぐ。
取調室にはヨハンと夏油の二人だけだが、外からはマジックミラーのように部屋が見え、マイクで話している内容を聞けるようになり、ヨハンを除くエデンのメンバーが全員耳を傾ける。
中でもイサベルは、夏油の返答に対してゆっくりと頷いていた。
??「本気で言ってんの? アレ。」
疑り深く懐疑的な視線を夏油に向けながら、他の考えを聞いてみたくなったのか指を指しながら尋ねる両側に浮いている盾のある小柄な少女はノア。
自他ともに認める『地上最強の盾』というのが彼女の象徴で、エデンの防御壁とも言える。
勝気かつ生意気で言動も辛辣なのが、イサベルが動揺を隠せなかった程にエデンという環境で変わった。
ノアの疑心暗鬼に対して、肩にカラスを止めている長身の女性が答える。
???「さあね。でもヨハンが質問を止めなかったあたり、多分本心かもしれないわね。」
アークから来た指揮官の男を、興味半分で見に来た傍ら機械カラスの面倒を見るのは、大鎌と
機械カラスを使役し群れを自在に操る力があり、エッセンスは自己増殖型の散布機能と、スナイパーライフルへ可変可能の死神の大鎌。
因みに機械カラスはドローンの役割があり、夏油たちを映像監視出来たのも彼女のカラスによるもの。
会話の流れから噓をついていないと答えるハランに、彼女たちの前で椅子に座りキーボードを叩いている白髪の女性が付け足すように割り込む。
???「彼のバイタルサインに変動なし、噓をついているとは考えられないかと。」
会話の内容を記録しながら、表情や血圧に発汗量などの情報を追加で保存していく女性は、エデン唯一の技術者であり、イサベル、ハラン、ノアの三人をピルグリムにしたセシル。
冷静沈着で思慮深く落ち着いた話し方をし、現在の会話に対しても納得できるデータを提示して補足している。
その様子を何も言わず見つめている(というより見とれている)イサベルと、微笑むだけで何も言わないドロシーは彼らの話をただ見守っている。
ノア「ねぇハラン、イサベルが黙ってあの男を見つめ続けてて怖いんだけど。」
ハラン「もうすぐ終わるだろうかもう少しだけ待ちなさい。」
セシル「動向は見ていましたが、こうして見ると信じざるを得ませんね。」
エデンの中で密かに広がっていたある噂、イサベルが地上にいた指揮官に対して恋に落ちたこと。
この地上の拠点という小さな社会の中、表面下でその噂は広がってはあらゆる情報が入飛び交っていた。
この時をもってイサベルの噂は本当だったと目の当たりにしている間、夏油への尋問が終わり取調室を退出する。
取調室に夏油を拘束し続けている間にドロシーとセシル、それぞれニヒリスターの戦闘に加えるか話し合い。
ニヒリスターに接触前までに、指揮能力があるか戦闘を通して確認する事になった。
セシル「只今より、作戦を開始します。
作戦目標はヘレティックのニヒリスター討伐。」
改めて作戦の大まかな流れを、移動がてらブリーフィングで再確認する。
ニヒリスターはエデン周辺を巡回飛行しているヘレティック、主力兵装はミサイル弾と一帯を焼け野原にする高出力の火炎放射器。
熱を発し続ける事から作戦周辺区域は平均を遥かに超える温度が予想され、その破壊力と制圧力、空中という圧倒的なアドバンテージを持つ事から異名は火竜。
作戦内容を説明しながら、周辺区域のエブラ粒子の浄化シーケンスを終えて、ニヒリスターの現在地を特定し追跡を開始する。
アニス「竜の姿で空飛んで、おまけに焦土するってファンタジーね...」
ネオン「というかサラマンダーじゃ無いんですね。」
アニス「そこじゃ無いでしょ気にするところ...」(≖ࡇ≖)
パピヨン「そうよ、そんな熱苦しい奴に近づけば服が台無しになるじゃ無い。」
アニス「随分と余裕ね、服の心配なんて。」(≖ࡇ≖)
いつでも戦闘に入れるように武装を手にしているが、それでもヘレティック交戦前の雰囲気とは思えず、エデンの面々は戦えるのか懐疑的な視線を向ける。
ラピとマリアンは周囲の警戒を怠らず、夏油はセシルから貰った過去の戦闘記録からニヒリスターの戦闘力を測っていた。
各々がマイペースというか、一体感の無いチームにヨハンはこめかみを摘んで頭痛を紛らわす。
同時に頭の中で過ったのは、出撃前にセシルから伝えられた言葉を思い返す。
ヨハン『......。』
セシル『どうします? ヨハン。私は結果さえ保証できるなら、何でもいいですよ。
...もし貴方がドロシーと違うやり方で目標を貫くというなら、それも一つの結果として認めましょう。』
セシルがヨハンに対して言及したのは、夏油たちを連れてきた事に対して。
ドロシーは夏油を連れていくようセシルに推薦、その目的や役割はセシルは知っているが伝えられていない。
もっとも、ドロシーのやり方を知らない夏油たちは、密かに与えられた自分たちの役割を知らない。
ヨハン「...各自、単独作戦だと思って動け。」
ヨハンが下した判断は、あくまでも自分たちのみで動くことを想定してヘレティックに望むこと。
彼らのペースに飲まれず、自分たちのリズムを保って勝利を目指す選択に、ハランとイサベルは静かに頷きノアはヨハンの判断に安堵する。
ノア「おっ。じゃあこの弱虫たちにわざわざ合わせる必要ないんだね?
危うくこいつらを守るための、防御壁になる所だったよ~」
ネオン「...どういうことですか??」
ノアの発言に対してピンと来ていない様子で、その言葉の意味についてノアに尋ねる。
その反応に対してネオンのみではなく、夏油たち全員に向けてノアは挑発する表情が一変して鋭い目つきに変わる。
ノア「あなたたち、ニヒリスターと戦ったことないでしょ?
あいつ、怒り出すとこっちの地平線からあっちの地平線まで、ぜーんぶ焼け野原にしちゃうんだよね。
そこで今みたいにぼさーっとしてたら、助けになるどころか、このノア様の盾の耐久度を減らすことしかできないってワケ。アンダースタン?」
真面目な口調で話していたが、最後の最後で小馬鹿にする口調に戻り口いっぱいに膨らんだ空気を含んで笑いを堪えている。
その言葉に対してネオンとアニスは『カチン』とスイッチが入り、マリアンはニヒリスターが齎す被害に対して驚愕。
ラピは聞きながら周囲の警戒を緩めず見渡し、夏油は端末に送られたデータベースで被害規模のデータを見ながらノアの話を聞いていた。
移動を続けて夏油はラプチャーとの戦闘を避けるように移動するのに対して、ヨハンは気にせず対面するラプチャーを全滅させる勢いで戦っている。
その戦い方はとてもスピーディーで、ドロシーの銃声で引き寄せたラプチャーを、ノアのシールドで行動範囲を制限し、ハランの爆発性の高いウィルスを散布して爆破。
大半のラプチャーを破壊した後、上空に滞空しているイサベルの誘導兵器で残りを殲滅。
始まりから終わりまで片手で数えるほどぐらいまでしかなく、最早流れ作業のように手慣れた様子で終わらせていく。
セシル「......ラプチャー全機、沈黙確認。」
マリアン「凄い...息の合ったコンビネーションで呆気なく。」
ハラン「貴方たちよりも行動長く行動を共にしているから、これくらいはね。
貴方もそのうち出来るようになるんじゃないかしら?」
マリアンは目の当たりにしたコンビネーションの高さに対して、素直に尊敬と羨望を向けていた。
その視線に対して悪い気がしないハランは得意げに微笑みながら、マリアンに期待を寄せるような言葉を残す。
アニス「...いやでも、キャリーして貰ってもな~んにもやる事無いわ。」
ネオン「私たちはニヒリスターと戦う本命だから、力を温存しておけってことじゃないですか?」
戦闘を回避する夏油の考えもあるが、それ以上にヨハンが片っ端から向かっていくように戦うことで、殆ど戦うことのないアニスたち。
ネオンは同じヘレティックが相手という事から、モダニア戦と同じく接敵時まで力を抑える作戦なのかと考える。
ノア「プッ、違いますけど~?」
ネオンの考えを両断するように、ノアが今にも噴き出しそうな表情で否定する。
ノア「今まで見てきて分かったと思うけど。
このチームでは、あなたたちの出番はないってこと。まあ、そこの貴方は少し違うみたいだけど。
そう言って指を指した先にいたのはマリアン。
ラピたちが戦闘を始める時も数回あったが、一際戦闘力が高かったのが彼女だったため。
その理由は基礎能力の高さ、瞬発力、思考力、反応速度、機動力、そして単純な
マシンガンは中距離に真価を発揮するが、急接近してきたラプチャーのコアを抜き手で引きちぎり、残ったボディを粉々にしながらショットガンのように残骸を吹き飛ばす。
銃器に頼る事無く、体術を駆使して赤子の手をひねるより容易く殲滅していた。
マリアンと一騎打ちになった場合、勝敗を分けるのは基礎能力の高さが左右する為、空中というアドバンテージを持っているイサベルとドロシーは有利。
だがハランは前線向きではなく、ノアは前線だが有効打がないことから不利と、これらの仮想シミュレーションの結果を、ヨハンの心中で結論付けされた。
因みに、マリアンの近接戦闘能力の高さの要因は
夏油(...少し熱を入れ過ぎたかな...思ったより見られている...)
夏油である。
アニス「マリアンを仲間にしたのは分かるけど。
それなら何の為にわざわざ私たちを仲間にしたのよ?」
アニスの疑問にうんうんと頷くネオン、戦力確保ならばシミュレーションで選定すればすぐに終わる。
それなのに単独作戦と想定して行動するのは矛盾であり、余計的が大きくなったと考えられる。
ドロシー「......指揮官、彼女たちの言う通りです。結局、ニヒリスター戦ではあの方たちの力が必要となるのに。
今からでも協力したほうがいいのでは?」
この状況を好ましくなかったのかドロシーが同意する。
今から協力してニヒリスターに備え、道中のラプチャーで連携やフォーメーションを構築して勝利をより強固にすべきと提案する。
そこまで仲間を残そうとするドロシーの行動に夏油は疑念を抱く中、ヨハンはドロシーの提案を蹴り自分の方法を貫く。
ヨハン「...いや、お前やセシルが何を考えているのかは知らないが。
この作戦におけるあいつらの役割はアンチェインドを撃つ事だけだ。」
戦闘全般をヨハン率いるインヘルトが担当し、夏油はニヒリスターが弱ったタイミングを見計らってアンチェインドを撃ち込み弱体化させる。
最低限の人材を連れて行くなら夏油のみだけでもいいが、ラピたちは夏油の護衛と援護を全うすればニヒリスター討伐の成功率は上がる。
そしてアンチェインドを使えるかという選択権は夏油の手中にあり、温存するか使用してニヒリスターを倒すか。
夏油が選んだ答えは
夏油「私も、ここでアンチェインドを使うべきだと考えている。」
アンチェインドを使うことを選択する。
無理を言えばアンチェインドを確保したい気持ちはあるが、ニヒリスターの戦力が不明確な事から確実に撃破する場合は術式の使用を余儀無くされる。
夏油たちのみならその選択が生まれるが、イサベルはともかくヨハンの尋問いや、
夏油に対して初手を排除ではなく尋問を選択した事から、インヘルトには素性を知られていないと考えられる。
その状況で術式を行使しようものなら警戒、最悪の場合で敵対する事になる。
これから地上の戦闘を続ける事を考えると、活動に支障が出る可能性がある為避けたい。
ラピたちは夏油の返答に対して表情が強張るが、夏油も様々なリスクを考慮した上で選択し成果として製法を手に入れた事だけでも良しとした。
移動を継続して廃墟街を抜けて、地平線の先まで不毛の地が広がる荒野に変わる。
移動している最中、ヨハンの瞳は何かを捉えて全員を制止させる。
ヨハン「...止まれ。ニヒリスターの痕跡だ。」
眼前の地面には、局所的に高熱で焼け解けた地面が半分マグマのようになっており、夏油たちと垂直に線引きされていた。
その焼け焦げた線引き跡は、追跡しているこちらに対しての警告と捉え、戦闘に備えて協力関係を構築している夏油らは具体的な作戦を思案するべきとドロシーは考案。
ドロシーの考案に対してヨハンは、ドロシーに向けて伝えるのではなくセシルに対して顔を向ける。
ヨハン「...セシル。」
セシル「はい。聞いていますよ。」
ヨハン「ちょっと失礼。」
一言だけ残してオペレーター通信の電源ボタンを押して消す。
セシルの姿を映していたホログラムは電子音と共に消え、エデンからの情報支援を完全に断ち切る。
このヨハンの行動に対してラピたちは動揺を隠せず表情に出るが、彼は気にせずに夏油に伝える。
ヨハン「...夏油 傑。お前はここで帰れ。」
告げたのは戦力外通告と同義の撤退。
突然言い出した言葉に対して、何となくだが察しているが敢えて尋ねる。
夏油「...理由を聞いても?」
ヨハン「理由はお前が一番分かっているだろう?
製法を知っただけでもかなりの収穫だと考えていたが、研究資料らしき物に目を通したあたり血液を使うことからその再現性はかなり低い。
病院の受診記録から自分の血液型を確認したが、その記録がまるで最初から無いように空白になっていた。
そうなると自分の血液で生産できることは出来ないと想定して行動するべきと判断、そうなると同じ血液型を探す必要がある。
だが同じ血液型を知持っている人間がこの世界の何人なのか、そして研究所が占拠されながらも研究資料が残っている事から、
ラプチャー側がアンチェインドを作れる血液型の人間を一人残らず抹殺したと考えられる。
シュエンが一つ在庫を抱えている物を複製する手もあるが、あの警戒心の強さからメティス復活時に使い切ったか、それとも厳重に保管されているか。
おまけにミシリスが発見した独自技術という事から、恐らく中央政府も手が出せない状況。
そうなると、今手に握っている一丁の拳銃にある一発のアンチェインド弾を確保しておきたい。
無論作戦の支障になる要因を僅か1%であろうとも取り除きたいヨハンは、この夏油の考えに対して障害と判断して作戦から抜けるように言ったのだ。
ヨハン「お前は一度で仕留められるはずの敵を仕留めず、敵が自己修復しているのをただ黙って見ているつもりか?
その間に味方が
作戦が失敗する可能性は?」
夏油に歩を近づけながら絶え間なく質問攻めしていくヨハン、その距離は目と鼻の先まで縮まる。
一触即発の雰囲気の中、双方引くことなく至近距離で目を離さない。
ヨハン「それとも、お前にはこの全ての状況を覆す力でもあるのか?」
夏油「......。」
夏油の口は開かれない。
ヨハンの問いに対して正直に答えるのであれば、状況を覆す程の力を持っている。
しかし、その手札を明かすには些かリスクが大きすぎる。あくまでも敵対関係を作らないためにも術式を露見することは避ける。
故に沈黙をもって答えを返す。
ヨハン「もう一度言おう。お前には、この作戦に参加する資格はない。」
改めて明確に答えるヨハン、轡を返しニヒリスターが付けた焼け跡を飛び越えて先に進んでいく。
後に続くようにインヘルトの面々も飛び越え、ドロシーは線の直前で立ち止まってヨハンを引き戻そうとする。
夏油「確かに貴方の言った通り、アンチェインドを温存したいという考えはある。
その考えによって、この戦闘が苛烈になることも重々承知している。」
ヨハン「...それで?」
夏油の声を聞いて歩いていたヨハンが立ち止まり振り返る。
ドロシーが呼びかけるまでもなく、夏油はアンチェインドを温存しようとする理由をヨハンに伝える。
それは彼が彼女たちと戦う理由であり、贖罪でもある。
夏油「だが厳しい戦闘を通して、より多くの命を救うことができる。だから私はここにいて戦っている。
自分だけが生き延びる為に行動しているわけでもないし、この行いに価値がないとは言わせはしない。」
ヨハン「...!!」
夏油から放たれた言葉にヨハンは、ハッとした表情で目を見開きこちらを見ていた。
自分にも同じ心情を持っていたのか分からないが、それでも彼の心を少しでも動かしたのは確かだ。
ドロシー「...指揮官、時間がありません。いつニヒリスターと遭遇するか分かりません。
オペレーター通信の速やかな復旧をお勧めします。」
差し迫る時間の中、ヨハンはその場に止まり熟考し始める。
このまま夏油を連れていけば、おそらくだがアンチェインドを使用するのは確実ではない。
こちらが優勢でニヒリスターを追い詰めた時、使い渋る可能性が万が一にもあり得る事で余計な被害を齎す可能性がある。
しかし、基本的な指揮力の他に瞬発力と決断力などが必要になるが、道中のラプチャーで比較できると言ったら無理がある。
だが映像でしかニヒリスターを知らない不安定な夏油を、戦地に赴けば無駄に命を散らすようなもの。
そうなればアンチェインドの回収、陣形の再構築にニヒリスターへの攻撃を回避するといった指揮を執り行いドロシーたちへの負担が大きくなる。
作戦上アンチェインドの所有権は公平を期す為、夏油が所持し今更所有権を譲渡してもらうように説得しようにも時間が無く水掛け論になる。
熟考を止めて決断を下したヨハンは
ヨハン「いいだろう。
こうなったら、私がお前を直々に試すとしよう。
もしお前が特別な実力も無く、我を通すというのなら。
その時は、お前をニヒリスターの炎の中に投げ入れてやる。」
夏油を連れて行くに値するか、己の方法で確かめる事にした。
自分のデータだとハランをお迎えできていなかったので、wikiを見て始めて武装とか詳しい情報を見ました。
カラスってドローンだったのか...
テトララインの社長マスタングに案内された先は、アークの中でも一際光を放つコインラッシュ。
この日五条は、特急でルピーが見繕った服装で、内側空色外側黒のリバーシブルジャケットに群青色のシャツ、白いネクタイ丸いサングラスを身につけていた。
五条「いやぁ、悪いね。服まで用意してくれて。」
マスタング「No problem! それは私からのPresentとして受け取ってくだSAI!」
五条「そこまで言うなら予備も有り難く頂くね♪」
予備のスーツ一式も今日中に、新たにアークの住居に送られる予定。
至れり尽くせりではあるが、それほどまでに五条に期待しての手当てだと考え気を引き締めて行く。
マスタング「Meは一足先に
そう言い残し足早にマスタングはコインラッシュの裏口に向かって、機敏かつ謎のダンスを交えて駆け出して行った。
その後ろ姿に五条は、冷め切った視線を向けていた。
????「初めまして五条様、オーナーから話は伺っております。」
マスタングと入れ替わるように、コインラッシュの正面扉で受付の業務を勤めていた、赤いディーラースーツを身につけた女性が声を掛けてきた。
カツカツと革靴を鳴らしながら近づき、正面に立っていた五条を案内する。
????「本日のイベントの進行役を務めるルージュと申します。」
五条「うん、よろしく~。」
ルージュに案内されてコインラッシュ店内に入る五条、店内には五条以外に大勢の人が集まっており、全員煌びやかなスーツを身に着けているが男女問わず集まっていた。
ルージュ「間もなく開催されますので、少々お待ちください。」
五条「ありがと~。」
準備に戻るべく室内のステージのある方向に歩いていくルージュに、五条は手を振りながら気さくに別れを告げる。
少しした後コインラッシュ全ての照明がステージに照らされ、店内にいる全員の視線が集中する。
ステージに人影があるが、象徴的なフォルムから誰か直ぐに察することができる。
マスタング「Ladies!! Andッ!! Gentleme~~n!!
よくぞ集まりましTA!!」
会場内に轟くマスタングの声に呼応して会場中にいる全員が沸き上がり、店内の熱気が更に高まっていく。
場内の熱気と勢いに乗らず、五条は両手にポケットを入れて静観していた。
マスタング「これより、Coin Rush誕生以来のBig! なEvent!! を開催しMASU!!
その名も...」
照らしていた照明が頭上一つのみとなり、場内に設置されているスピーカーからドラムロールが鳴る。
溜めに溜めて場内にいる人々のボルテージも頂点に達したと同時に、今回行われる祭りの名前を高らかに宣言する。
場内にいる全員が声を張り上げるように盛り上がり、このイベントを待ち望んでいたような様子を見せていた。
ただ一人を除いて。