セシル「......」
ホログラムで表示されている画面を見ながら、キーボードを叩き文字を打ち込んでいく。
表情は変わらずただただ無言で打ち続け、作業のように書き記していく。
アンチェインドを廃墟と化した研究所から入手。
同日、アークの指揮官とカウンターズと合流し、ニヒリスター攻略戦を実行。
そして作戦中にニヒリスターの区域である火口が、
過去に類を見ない、
ニヒリスター(クソっ...クソっ!!)
炎のように熱い火口の中心で、火竜は憤りを募り爆発させいていた。
マリアンにトドメを刺そうとした前に、火口内部の壁面に蹴り飛ばされた後、夏油が相手となった。
最初こそは正気を失ったかに思い、夏油の肉体が目当てのニヒリスターは手加減して攻撃していた。
ニヒリスター(なのに何で、何でこんなに重いんだよ!?
アイツの話だと、普通の人間だと言っていた筈だ!!)
しかし今では巨大化し、全力を持って攻撃を浴びせていく。
それでも掠りもせず、まるで視えているように悉く避けられている。
ニヒリスター(何より分からねぇのは...何でアイツは殆ど目を閉じて避けられるんだよ!?)
大半の攻撃を夏油は両目を閉じて避けており、それも熱波による負傷や肉体の異常も無しに見切られていた。
挑発なのか、それとも神経を研ぎ澄ませているのか、どちらか全く分からないがマリアンより重くて鋭い攻撃を浴びせられ疲弊してきている。
その戦況が続くと思われていたが、夏油は閉じていた瞳を開く。
夏油「5分か、まあ試運転にしては十分かな?」
そう言って攻撃の構えを解いて戦意が消える。
攻撃の手を止めた夏油に、火口付近で待機しているラピたちは不思議に思う。
マリアン「構えを解いた...?」
アニス「何で!? あのまま倒せる勢いだったのに!」
ラピ「何か、狙いがあるのかしら...?」
各々が夏油の行動に考えている中、4人以外にニヒリスターの熱波を防いでいたモノがいた。
方や人外ではあるが人畜無害な姿をし、方や人の形をしているが何処か人外れた印象を感じさせる。
??「彼にも、この戦いを通して得られる物がある。
戦いへの歩みを止めず、一歩と踏み出す...」
人の形をしているモノは白い和服に身を包み、白い肌と黒い長髪の女性。
その周りには雪が漂い、熱で溶けた液体が再び氷となって固まっている。
美しい姿と裏腹に近づき難い気配、各所で様々な伝承によって誕生した妖怪 雪女その人である。
陀艮「......??」
ネオン「えっと...つまり??」
ラピ「指揮官にも地上奪還以外に、ニヒリスターと戦う目的がある。
思いつくのは、五条さんに追いつく為だと思うわ。」
雪女に頭を傾げている陀艮とネオンに、ラピが分かるように説明を加える。
もう一体の人外は自然呪霊の一体である陀艮であり、ニヒリスターの炎から守る為に術式で水を生成して気温を下げている。
五条に追いつくために実戦で確かめるという理由は分かるが、これから何をするのか雪女も陀艮も全く分からない為見守っている。
夏油(短い間でしか見られないのは不便だが、これから少しずつ伸ばしていける筈だ。)
夏油の術式は呪霊操術だが、ニヒリスターと戦闘している間は少し先の未来を視れる術式を使用していた。
その効力に少し不便と感じているが、回数を重ねつつ練度と術式の解釈を広げていけば、ゆくゆくは更に先の未来も視られるようになると思考する。
同様にその術式を使用できる時間も延びるだろうと考える中、次の段階に足を踏み入れる。
??(終わったか?)
夏油(ああ、お待たせ。)
念話を介して夏油と会話する存在は胡座をかいて待っていたようであり、重い腰を上げて踏み出していく。
対して全く攻撃してこなくなった夏油に罠かと勘繰るニヒリスターだが、無視されているだけと知り声を上げる。
ニヒリスター「いつまでそうしているつもりだ!!
来ねぇなら、こっちから...」
全身の毛が逆立ちよだつおぞましい気配に当てられて、ニヒリスターは直ぐに攻撃の予備動作を止めて警戒状態に移行。
その正体は先程まで夏油の背後に居なかった筈の
その視線は、まるで品定めでもしているようだった。
??「まだ戦えるだろうな?」
夏油「仮に部位が欠損しても、瞬時に自己修復してくる。
仮に君の攻撃で半身が消えても、何秒かしたら直ぐに治るだろう。」
夏油の背後から現れた存在は身長180cmで、大きな目でニヒリスターを見つめながら顔の付いた煙管を茶を啜って嗜むように吸い込んでいる。
満足したのか鉄の箱に煙管をしまい、ゆっくりとニヒリスターの方へ歩み寄る。夏油の説明を聞いて闘志がマグマのように沸々と湧いてきているようだ。
漏瑚「では、都合の良いサンドバッグと考えれば良いか?」
夏油「ああ、それで構わないよ。」
夏油の背後から現れたのは自然呪霊の一角であり、単眼で頭頂部と側頭部が火山になっている呪霊、漏瑚だった。
北部での戦闘から五条への対抗意識が燃え上がり、夏油と地上に出ては呪術戦の戦闘訓練を度々行っている。
現在の実力差では夏油と拮抗している状態であり、領域を使えない夏油の成長速度に危機感を持った漏瑚はニヒリスターとの戦闘を所望した。
あくまで強くなる為の戦闘ではなく、自身の戦闘力の把握と夏油の目的が絡んでいる。
漏瑚「それでは、始めるとしようか。」
両手にグツグツと湧き出るマグマの上に火球を生成し、ゆっくりとニヒリスターの方へ歩を進めていく。
ニヒリスターの目には、人外がこちらに近づいているのは分かる。しかし、体の輪郭に靄がかかっているようだ。
姿形は辛うじて見える、背丈は凡そ180cm、猫背になっていることで小さく見える。
存在を構成している
ニヒリスター(何か分からねぇ...分からねぇが、マズい!!!)
先に動いたのは焦燥感を募らせたニヒリスター、知らない存在に対する恐怖が巨大化した肉体を動かした。
両側頭部のマシンガン、口部から発射される火炎放射で面による攻撃を徹底する。
瞬時に漏瑚の姿は火炎と煙幕によって見えなくなり、ニヒリスターの炎に包まれる漏瑚、その様子を見守り続けるラピたちは動揺することなく見つめる。
火口の入り口に戦いを見ているラピたちの隣に、夏油が空を飛ぶエイから降りて合流する。
夏油「ふぅ~...こっちは涼しいね。」
ネオン「お帰りなさい師匠!」
夏油の声を聞いて直ぐに漏瑚から視線を移し声を掛ける。
ニヒリスターの攻撃を喰らうことなく回避し続けた戦いを見て、中身は人間じゃないと認識を改めるラピたち。
中でも、雪女の発言が気になるマリアンはその事情について尋ね、夏油は別に隠すことでもない様子で答える。
マリアン「指揮官、ニヒリスターとの戦いは何が目的なんですか?」
夏油「今私...いや私たちが身につけた技を実戦で使ってみようとしただけだ。」
ラピの推測通り五条との戦いを経て、夏油は自分に不足している物を自分なりに考え、最終的に基礎力と術式の解釈と判断した。
基本的な呪力操作と体術に関しては、一朝一夕で身に着くようなものではなく日々呪霊と模擬戦闘を通して修練している。
問題の術式の解釈についてだが、以前反転術式を習得した後に黒閃を発現させた夏油だが、その日手にしたのは技。
極の番 うずまきを火力を下げて近接・遠距離戦闘で使用できる技を2つ編み出した。
だがこれはうずまきという元からある技の派生に過ぎない、夏油が求めるのは呪霊操術の更なる進化だ。
五条のように術式を反転させる技を開発しようとも考えたが、呪霊を操るのに対してその対となると呪霊を生み出すか呪霊を式神に変化させるのどちらかだと考察。
呪霊を生み出すのは夏油がこの世界で行動する上で心情に反し、式神に変化させると反転術式を使える式神を作れるなど手札が多くなるが呪霊との配分が難しくなる。
加えて呪術や呪力操作などの技術を一から身に着けようとする場合、個体差によるだろうがどれ程時間が掛かるか分からない。
これらの観点から術式反転の習得は優先度が低く、呪霊操術の解釈を広げて術式の戦闘力を向上させる事にした。
今日に至るまでに新たに習得した技は二つ、一つは夏油自身に付与するものであり、一つは真人から聞いた話で身に着けられた。
アニス「それじゃあ、その技を使えるかどうか判断する為に...?」
夏油「正解、一つはまだ未完成だがそれなりに可能性がある。」
ニヒリスターの攻撃を避け続けてその効果を実感できた夏油は、まだまだ伸びしろがあると可能性を見出した。
呪霊を顕現させずにどう運用するのか聞く前に、これから実践しようとしているもう一つの技についての説明を始める。
夏油「そしてもう一つの技は、顕現している呪霊に対して行うもの。
所謂、私の呪力でパワーアップさせる。」
ラピ「呪力でパワーアップ...?」
夏油自身の呪力を使って呪霊を強化すると言ったが、詳細が掴めないラピたちは一同首を傾げている。
説明すると思っていたが、『また後で説明する』と言っているように視線を漏瑚に向け、ラピたちも同じように火口の中心に視線を向ける。
ニヒリスター「ハァ...ハァ...。」
周囲に聞こえないように大気の酸素を体内に吸引するニヒリスター、ラピたちと戦った時よりも苛烈な攻撃を集中させた。
ニケであれば肉片一つ残っていない筈だ。
ニヒリスター「ッ!?」
右前足に目を落とすと、マグマで焼け溶けたように融解し風穴が空いていた。
煙を貫いた先には右腕をこちらに向けた漏瑚が無傷で佇み、周りには明々と煌めいているつぶてが転がっていた。
漏瑚「鉛玉と火炎の攻撃を集中させるのは悪くない、並みの有象無象ならば容易く屠れる。
だが、儂に火炎は効かん、鉛玉は触れる前に溶かせば威力を殺せる。」
漏瑚は大地に対する負の感情によって誕生した呪霊、術式はマグマや火炎を扱うもの。
ニヒリスターの火炎は寧ろ、漏瑚のポテンシャルを引き出すものに過ぎない。
そして向かってきたマシンガンの弾丸は、漏瑚の体に届く前に体から発した熱波によって、周りの地面に転がっているつぶてとなった。
生前戦った宿儺の炎は漏瑚の身を焼き尽くす程に洗練され、呪いという薪をくべる篝火の如く揺らめき燃えていた。
そう、漏瑚にとってはニヒリスターなど眼中になく、大きな瞳が映しているのは鬼神と神童のみ。
故に鬼神の如き炎を携え神童を打ち破る為、己を燃やし尽くす修練を始めた。
漏瑚「今度はこちらの番だ、容易く消えてくれるなよ?」
左手に残っている火球をニヒリスターに向け、レーザーのようなマグマが肉体を貫かんと迫りくる。
ニヒリスターは回避が間に合わないと判断し、被弾覚悟で漏瑚に向かって特攻する。
ニヒリスターが取った行動に思惑通りというような表情を浮かべ、漏瑚は右手人差し指と中指を空へ向ける。
空に飛び上がったニヒリスターの直下に盛り上がった地面が火山となり、栓を開けられたスパークリングワインのように溶岩が噴き出す。
漏瑚「まだまだァ!!」
二人を囲う様に火口の壁面も火山を形成、噴火を引き起こして貫くように高圧力の溶岩を浴びせていく。
業火を超える溶岩の濁流の中、肉体だけでなく精神すらも溶かし尽くす。
ニヒリスター(何だこれはッ!?
地殻の内側にある源泉の中に漂い、打ち上げられて、体を蝕むように溶かしていく。
新たな痛みが彼女を襲う。
ニヒリスター(今度は...爆発か!?)
関節や可動部を重点的に狙っている爆発に似た衝撃が襲っている。
この橙色に輝く海の中で、恐ろしいくらいにピンポイントに当てている事に恐怖しつつも、これ以上のダメージを受けることへの危機感が身を支配する。
飛び出すように火山の包囲網を脱し、地面に伏すニヒリスター。
顔を見上げると仁王立ちしている靄がかかった存在...いや、輪郭が見えていなかったが鮮明になっている。
全身には先ほどの溶岩が残っているのか、急激な温度の変化によって垂れ流れながら固まっていく。
ニヒリスター「テメェをぶっ殺す前に、
そう言って凝固した溶岩ごと体に亀裂を走らせて体内に残っていた熱を排気する。
排気された空気は熱を宿しながら突風のような熱波を四方に発する。
普通の人間なら簡単に攫われて空を漂える勢いで、凝固しひび割れた溶岩を弾丸のように吹き飛ばす。
ニヒリスターの肉体からは煙が漂って、熱くなった肉体を冷ますように空から雫がこぼれ始める。
大気に噴出した火山によって、大気の温度が急激に温まり人工的に乱層雲を生成。
雷鳴を響かせながらバケツをひっくり返したような大洪水が身を包む。
ニヒリスター「こりゃあいい、体を冷やす手段が無かったからな。」
普段なら湿気て火炎の威力が半減する雨だが、今回ばかりは熱くなり過ぎた体を冷やす事に感謝する。
漏瑚の手のひらに小さい火球を作り出し放つが、
攻撃手段が封じられた漏瑚を見て、高温によって停止していたナノマシンも活動を再開して、損傷した肉体を修復していく。
大雨は地中に染み込んでいくが、次第に満杯になったのか火口の地面に水の膜を作り出す。
ニヒリスター「体は冷えて、傷も治った。
随分とやってくれたよな? たっぷりお返ししてやるよ。」
両頬に搭載されているマシンガンで漏瑚に向かって射撃を開始。
雨天の中で大した火力が出せないのか、先ほどのように火山を作っての攻撃をせずに回避に専念する。
抵抗しなかったわけではない、頭部から野球ボールほどの紫色の塊が飛び出したと思ったら翼が生えて針が鋭い虫のような異形が現れる。
残像を作り出すほどの速度で急接近してニヒリスターが迎撃した瞬間、異形の肉体が爆ぜて塵になる。
ニヒリスター「そうか、爆弾の正体はこれか。
化け物は化け物をペットにする趣味があるんだな?」
次々と撃ち落されていく火礫蟲、数十体特攻していったが当たる事無く爆散していった。
この戦況からニヒリスターは雨天の中で有利なのは自分だと考える。
代名詞である火炎放射は使えないが、それは相手も同じでマグマを噴き出せない。
そして実弾のマシンガンに対して特攻してくる虫の化け物と、物量と速度がこちらに分がある。
だがこれは雨の中での話、止んでしまったり勢いが無くなってしまえば噴火攻撃が復活する。
ニヒリスター(なら...このままぶっ殺す!!!)
地面の岩盤を砕き漏瑚に向けて放射、同時にマシンガンで面攻撃を再開。
岩盤で逃げる所を塞いでいき、漏瑚が反撃しないようにマシンガンで攻撃。
漏瑚はニヒリスターの攻撃を当たる事無く回避していくが、次第に追い詰められて遂には火口の岸壁に追い詰められる。
ニヒリスター「正直ビックリしたぜ、マジで負けると思った。
だが、今回ばかりは俺に運が回ってきたようだな?」
懐に入られないように距離を取っているニヒリスター、前両足には岩盤が置かれておりマシンガンはいつでも攻撃できるように照準が向けられている。
壁面に背を付けて逃げ場が無く力量差があったが、運を味方につけて敵の命を奪う銃口が喉元に迫る。
ニヒリスターは勝利を目前とし、漏瑚は思わず笑みが綻んでいる火竜とは対照的に無言で見続けていた。
トドメを刺すためにマシンガンを回転させて発砲する。
ニヒリスター「!?」
視点は急に空へと移る、遅れて顎から衝撃が伝わってくる。
両前足で地面を掴みながら頭を戻すと、先程まで岩壁にいた漏瑚が消えている。
再び頭上に顔を見上げると、火口の淵に立って見下ろしている漏瑚がいる。マシンガンを発砲する前に、ニヒリスターの顎を蹴り上げて照準を逸らして脱出した。
ニヒリスターは仕留め損なった事に歯ぎしりするが、今度は漏瑚がニヒリスターを見つめて笑みを浮かべている。
漏瑚「火竜よ...」
刹那、ニヒリスターが踏み締めている地面が眩い光を発し、一切合切視界が白く染まる。
水蒸気爆発とは高温を帯びている物体と水が接触することで、一瞬で大量の水蒸気へと気化して爆発を引き起こす現象。
漏瑚の術式によって天候が荒れて、大洪水のような大雨が火口に降り続けた事で、岩盤の隙間を流れて巨大な貯水槽のような空間が形成。
それでも溜め込めず地面に水の膜を張っていた状態になった事から、水は十分に溜まったと判断。
術式を使ってこの火山のマグマを操作し、地震で悟られないようにゆっくりと地表を上げ、油断しきったタイミングで誘爆させた。
ニヒリスターが修復する前に放った火球は、敢えて大きさは同じで威力の低い火球を作り出して攻撃できないと錯覚させるため。
術式を使わなかったのは雨天という天候で威力が減衰する環境下、雨すらも攻撃に転用する為にマグマを地表に昇ってくるように操作していたから。
そして雨の中で戦いで、ニヒリスターは火炎放射を使わない事から、この環境下で本領発揮できないと分かった。
漏瑚「ならば、もう策を弄する必要は無いな?」
口角を釣り上げて両手に火球を生成し、自身の周囲の水分を蒸発させる。
まるで土砂降りの雨をものともしない全身を覆う傘のよう、地面は渇いて雨粒は触れることなく気化する。
ニヒリスター「
ボロボロに崩壊した体が再構成を開始、両翼と両頭を象徴するニヒリスターの真の姿へと変わる。
今まで手を抜かれて戦っていたこと、それは好戦的な彼女にとって最大の屈辱に等しい。
故に激昂する感情の高ぶりを、業火と岩石に込めて放出する。
漏瑚「フン...火力勝負か?」
火球を握締めて岩石を五体で打ち砕き、火炎は両腕を合わせて押し合う。
互いに拮抗する業火とマグマのレーザー、少しずつじりじりとニヒリスターが押され始めるが、もう一頭も加わり火炎を放射。
それでも押し返せず拮抗が崩れる、次第にニヒリスターに迫るマグマは完全に押し切られて、火炎を止めて回避する。
夏油(漏瑚。)
次の攻撃に移ろうとする漏瑚を呼び止めるように、夏油が念話を介して割り込んでくる。
漏瑚は攻撃の手を止めて念話に耳を傾ける、その表情は遊びを止められて不機嫌になっているように見える。
漏瑚(何だ、くだらん用なら焼き殺すぞ。)
夏油(ウォーミングアップは十分だろう?
そろそろ始めないか?)
観戦していた夏油の体を巡る呪力が、ニヒリスターと戦闘していた時以上に濃くなっていく。
戦闘描写を入れるとどうしても1万文字を超えたので分けました、国語力の無さが露呈しました。
何だかんだ最終ステージまで進んできた五条、集まっていた最初のフロアに戻ってくると大勢の参加者にバニーガール、ボーイたちが盛大な拍手で迎える。
五条の他に3名の参加者がステージに続く道を歩き、Jokerを持った4人が集う。
マスタング「Wellcome!! LuckとPluckを持つPlayers!!
遂にLast GameになりMASU!!」
舞台が湧き上がり熱狂の渦の中、4人の勝ち残った者は男3人と女性1人。
内3名の内心も欲望と野心で渦巻き、犇めき合っている。
恰幅のいい男(全く、楽なゲームだ。金さえあれば簡単にクリアできるというのに、それを知らん奴らばかり...
おっと、できるのはワシだけか。)
血気盛んな青年(どうせここに残ってるのは、技術とか金とか狡い真似してる奴ら。
俺は違う、俺は運の太さだけでここまでのし上がって来た、コイツらも俺に食われる運命なんだよ。)
美麗なドレスを着た女性(豚は買収、餓鬼は身の程知らず、そこの男は分からないが脅威ではないわね。
軽く捻り潰してやるわ。)
五条(腹減ったな、晩飯何にしよう?)
その証明たるJokerをマスタングに見せ、最終ステージの参加資格があると確認。
大勢の脱落者が最終ゲームの内容に期待高まる中、マスタングはゆっくりとステージの中心に立って宣言する。
マスタング「OK、Last Challengers!!
Final Stageの発表に移りMASU!!」
フロア中の電気が消灯し、ステージ中心のライトがマスタングに集まる。
静かになったステージには、ドラムロールのみが反響して期待が高まる。
マスタング「Final StageのGameはぁ...
これまでのゲームと同じように、横からルージュが現れてゲームの解説を始める。
これより参加者はグー、チョキ、パーの三択から一手を選択
五条「じゃんけんだろ、もういいよ。」
参加者はルールを理解していると判断して、説明を終了。
五条以外は他の参加者の顔色を伺っているが、一人だけ汗を流して動揺している人物がいた。
恰幅のいい男(どどどどどd、どういうことだ!?
確か最終ゲームは...フロアから指定された物を探す筈...)
この男、コインラッシュの店員を買収するも最終ゲームの内容まで分からず、スパイを雇ってゲームを開催する一週間前に宝探しだという情報を掴んでいた。
しかし聞いていた事前知識とは全く異なるゲームが開催されて狼狽えていたが、直ぐに平静を取り戻してこの状況を打開する策を考えていた。
恰幅のいい男(...大丈夫だ、最悪ここにいる奴ら全員を買収すればいい。
説明している今がチャンスだな...)
ルージュが説明して全員の視線が彼女に集中している間に、3人の参加者に交渉しに向かおうとする男。
それとは別に美麗なドレスを着た女性は、じゃんけんという運が絡みつつも表情に出やすいゲームに勝利を確信し、血気盛んな青年は自分の幸運に絶対的な自信を持っているようだ。
ルージュが説明を終えて、再びマスタングがステージの中心に現れて4人の参加者に向けて声をかける。
マスタング「Challenger!! 準備はよろしいDESUKA!?
Youたちの
マスタングがステージ両端に手のひらを向け、遅れてライトが向けた地点に照明を照らす。
白と黒の光沢で煌めく服を身につけている女性が、ライトに照らされる。
ブラン「こんにちは~!」
ノワール「こ...こんにちは...///」
コインラッシュに勤める777部隊のメンバーであり、二つ名で幸運のウサギと言われている2人の女性。
快活で元気が溢れている妹のブランと妹とは対照的に観客の視線に緊張してオドオドしている姉のノワール。
最後のゲームで1・1・1・1vs ブラン&ノワールという事になった。
この発表に買収が使えなくなった恰幅のいい男と、相手の動作から心情を読み取る美麗なドレスを着た女性のポーカーフェイスが崩れる。
ただ五条は「ふーん」と淡白な反応で、血気盛んな青年はより食べ応えのある標的を見つけた動物のような獰猛さを見せる。
ルージュ「これよりブランとノワールを相手に、じゃんけんで勝利してもらいます。
なお、あいこや負けは脱落して勝利した方が出るまで繰り返し、店長として迎え入れます。
それでは皆さん、店長の座を賭けて、
幸運というステータスがあるというなら、恐らく最も高いブランとノワールとの真っ向勝負が始まる。
双子ウサギは4人の参加者に聞こえないように小声かつ口元を隠して話し合う中、恰幅のいい男は観念して純粋にじゃんけんに参加。
美麗なドレスを着た女性は初戦を捨てて、次のじゃんけんでブランとノワールのパターンを元に心理戦として戦う。
血気盛んな青年は初戦で決着をつけるつもりであり、もう繰り出す手を決めている様子。
五条は欠伸をかきながらブランとノワールを待っている。
ブラン「お待たせしましたぁ~!」
ノワール「じゃんけんの用意が...できました...。」
ブランとノワールもじゃんけんで出す手を決めて、参加者の様子を伺うとじゃんけんの用意が出来ているようで観客が張り上げた声でカウントダウンを始める。
4人の参加者は拳を掲げ、一世一代の大勝負の大海に望む。
マスタング「Hey!! Everybody say!!!」
静寂に包まれる会場内、観客の視線は生き残った4人の突き上げた拳に集中する。
五条「案外、終わりは呆気ねぇな。」
ブランとノワールに打ち勝った者は、五条 悟ただ一人だった。