特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

87 / 87
 最近忙しくて新規バニーとか見れてねぇ...

 小説の執筆も遅ぇ...どうしよ。


大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)

 この戦いの目的でもある技の実戦試験を、漏瑚に始めないかと促す夏油。

 

 漏瑚は溜息を一つこぼして呆れたような表情に変わって伝える。

 

 

 

 

 

 

漏瑚(断る、姿を変えようとも十分に屠れる。

 わざわざ無駄な体力を使う必要もなかろう。)

 

 

 

 

 

 

 ここまでの戦いでニヒリスターの力量を完全に把握した漏瑚は、このままニヒリスターを余裕で倒せると断言。

 

 攻撃力の高さから射程に弱点、様子見を十分と判断して一気に片付けるつもりのようだ。

 

 

 

 

 

夏油(私たち()()、ならね。

 だが今回はエデンもといインヘルトがこちらに向かっている。)

 

 

 

 

 

 

 普段なら時間をかけても対して勘ぐられないだろうが、今回はインヘルトもこの区域にいてこちらに向かってきている。

 

 監視している呪霊の座標からこちらに着くまで、然程時間は必要ないと分かった。

 

 

 

 このまま戦えばインヘルトと合流して、確実に今後の活動に影響を及ぼすと考えられる。

 

 今以上に行動が制限されるのは、漏瑚も望むところではない。

 

 

 

 

 

 

夏油(このまま君が戦い続ければ、インヘルトが合流してしまうけど。)

 

漏瑚「...チッ、仕方あるまい。

 だが儂の好きにさせてもらうぞ。」

 

夏油「その点は漏瑚に任せるよ。」

 

 

 

 

 

 

 ニィと笑いをこぼす漏瑚、戦いを任せた夏油は編み出した技の準備を始める。

 

 胡座から座り直し禅になり右手を漏瑚に向け、肉体を巡る呪力を右手に集中させる。

 

 何をするつもりなのか、アニスは夏油に尋ねる。

 

 

 

 

 

アニス「何をするつもりなの?」

 

夏油「もう一つの技を試すんだ。」

 

ネオン「さっき言っていた奴ですね!」

 

 

 夏油のこれから始めようとすることに興味津々なラピたちは、夏油の周りに集まる。

 

 右手を漏瑚に向けながら左手でポケットに入れていたボールペンを取り出し、地面に六角形の頂点にそれぞれ文字を書き込んでいく。

 

 

夏油「生前...いや、私が死んだあと、肉体は別の人間が手に入れて暗躍したっていう話は聞いているよね?

 その時のことで真人からヒントを貰ったんだ。」

 

ラピ「ヒント...ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 夏油の言及している時というのは、発電所の任務を終えてアークを散策した後の事。

 

 取り込んだ覚えのない呪霊の中でも意思疎通ができる漏瑚ら自然呪霊を顕現し、死後何があったのかを聞いた。

 

 

 

 その過程で真人は渋谷の大災害の中、偽夏油こと羂索が呪霊操術の術師の呪力によって呪霊の強化が可能だということを話した。

 

 その助言を聞いてから呪力による強化を直ぐに実践した所、全くできる兆候が無かったがモダニア総力戦後に感覚を掴むことができた。

 

 

 

 それから五条と合流して強化の効果増強に力を入れ、効果の大凡を掴めてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夏油「術者である私の呪力を対価に、一時的に呪霊の強化ができるものだと分かったんだ。

 そして強化できる項目はこの6つ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 六角形の頂点に書き込まれたのは、

 

 

 ・呪力総量(蓄えられる呪力の上限)

 

 ・最大呪力出力(一度に放出できる呪力の上限)

 

 ・呪力操作(呪力放出などで発生する無駄な消費(ロス)を減らす)

 

 ・呪体強化(攻撃力、防御力、俊敏性などの呪霊の肉体面での強化)

 

 ・呪術強化(術式の威力や拡張などの強化)

 

 ・結界術強化(複雑な条件を付与した結界や強固な外郭を形成できる)

 

 

の6つ。

 

 

 

 この6つの項目に沿って呪霊を段階的に強化を可能としているが、全ての強化の恩恵を受けられる呪霊は限られている。

 

 

 例えば準一級未満の呪霊は術式は無く、結界術も複雑故に習得できる者も限られている。

 

 

 それでも取り込んでいる特級呪霊を中心に強化すれば、劇的なパワーアップを望める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリアン「一時的な強化...」

 

アニス「つまりブーストをかけるみたいな感じ?」

 

夏油「そう捉えて構わない。

 そして今やろうとしているのは、この六つの項目全てを最大まで強化するつもりだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この強化の利点は、瞬間的に戦力を向上できることだがリスクはある。

 

 

 

 それは対象の呪霊が多い、もしくは等級が高いことで必要とする呪力量が増えること。

 

 もう一つは術師側と呪霊側で呪力の配分が難しいこと。

 

 

 相手によっては顕現する呪霊の数や種類に、強化する項目と配分を考える必要がある。

 

 

 

 だが今回そのコストを度外視して、漏瑚のステータスを全て解放させて戦うと言った。

 

 

 上限まで上げてどれぐらい戦えるのか知るには打って付けだが、強化に関して理解を深めるなら不向きな方法だと感じる。

 

 

 

 

 

 

マリアン「強化に段階があるんですよね、なら少しずつ上げていく方がいいんじゃあ...?」

 

アニス「確かに...上げていくごとに倍化だったら余計訳分からなくならない??」

 

夏油「その点は大丈夫、段階ごとの強化の変化はもう確認済みだ。」

 

 

 

 

 

 

 呪霊の強化には6項目、6段階の強化が可能になっており、強化の倍率と強化に必要な呪力量は等級によって変動する。

 

 

 特級呪霊一体は全項目一段階上げる場合、夏油の総呪力量の1割を必要になるが、六項目全てに1.2倍とステータスが強化される。

 

 

 この倍率は2段階や3段階も変わらず、1.2から1.4、1.4から1.6倍と倍率が0.2ずつ加算されていく事を、六角形の内側に小さい六角形を作って説明を追加。

 

 

 最終的に6段階まで強化すると、全ステータス2.2倍まで上昇する。

 

 

 

 

 

 

夏油「単純に言えば漏瑚は、今より2.2倍の強さを手に入れられる。

 だが私の目的は強化した後の強さを見る事では無いんだ。」

 

 

 

 

 

 

 あくまで全段階強化は目的を達成する為の手段、本当の目的は呪霊の中でもトップクラスを誇る漏瑚の可能性を見つける為。

 

 

 同じ自然呪霊で頭目の真人は、渋谷で五条の教え子の虎杖と東堂との戦闘によって成長し、魂の本質を理解した事で遍殺即霊体へと進化した。

 

 

 

 

 呪霊操術で取り込んだ呪霊は取り込んだ時点で成長を止めてしまうが、今回の強化で不足分の成長分を補うつもりなのだ。

 

 

 

 

 

夏油「さて、どうなるかな?」

 

 

 

 

 

 夏油の総呪力量の6割を使って、漏瑚の全ステータスを強化する。

 

 

 夏油から送られている呪力の軌跡は、本来呪力が見えない筈のラピたちでも認識できる程ハッキリ見えている。

 

 

 送られてきた呪力から強化を受けた漏瑚の体は、今までかつて無いほどに呪力と力が迸る。

 

 

 

 

 

 この力を手にしても決して叶わないと確信できる存在が、閉じた瞳で暗闇の中に映る。

 

 

 

 

漏瑚「まだだ、追いつくにはまだ足りん...」

 

 

 

 

 その人物とは鬼神 両面宿儺、15本の状態で触れる事すら叶わず完敗を期した。

 

 

 それでも以前よりも格差が縮んでいると確信しており、巡る呪力を術式に通して体を燃え上がらせる。

 

 

 漏瑚の体から発せられている熱波と形容できない威圧感に、ニヒリスターは後退りし、ラピたちは体が強張る。

 

 

 

 

 

五条「へぇ...?」

 

 

 

 

 

 アークでは唯一感知できた五条は、漏瑚の呪力が格段に上がった事に面白そうに微笑む。

 

 

 漏瑚から炎が自然に発火し、自身の体を発火剤のように全身が燃え上がり橙色に輝く。

 

 

 明らかに以前とは全く違う雰囲気に、未曾有の恐怖が周囲を支配していく。

 

 

 

 

 

 全身が橙色となり、眼球は黒く瞳は紅く輝く。

 

 

 明らかに別の存在と見違う姿と威圧、大地の負の感情によって誕生した呪霊は更なる段階へ足を掛ける。

 

 

 

 

 「呪霊操術・載」 

 

 

 「大黒天」 

 

 

 

 

 

 空中から見下ろしているニヒリスターだが、一瞬飛行を忘れるほどの威圧を感じ自然と距離を取る。

 

 

 が、

 

 

 

 

ゴオッ

 

 

 

 

 

 気づいた頃には腹部に穴が空いており、背中まで貫いている穴の先には漏瑚が跳躍したようにこちらを見下ろしていた。

 

 

 先程までの攻撃動作を見られず、攻撃を受けた箇所と動線上にいることからただの移動でニヒリスターを容易く貫いたと理解する。

 

 

 

 

 体が凍てつくような錯覚を感じながらも、ニヒリスターは以前とは別物と判断し攻撃の手を緩めない。

 

 

 鉛と岩石の弾幕が空を埋め尽くし、漏瑚の逃げ道を狭める。

 

 

 

 

ゴオッ

 

 

 

 

 大した障害になることなく漏瑚は通過、触れる前に融解して液体となる鉛と岩石。

 

 

 両足に橙色に光る火山を生成し、噴火の勢いを推進力に変えてニヒリスターに向かっていく。

 

 

 並大抵の攻撃に効果が無いと分かって、マシンガンをパージし大きく翼をはためかせて両頭から火炎を吐き出す。

 

 

 

 

 高圧力で放たれた火炎は、向かってくる漏瑚の速度に付随して体を貫き風穴を作る。

 

 

 

 

ニヒリスター「!? 止まらなねぇ!?」

 

 

 

 

 傷を治す為に距離を取ると思っていたらが、目の前の怪物はこちらの攻撃に対して意に介さない。

 

 

 放たれた弾丸のように苛烈な攻撃を繰り出してくる。

 

 

 

 

ニヒリスター「......クソっ...。」

 

 

 

 

 漏瑚の背後で生成された橙色の球体から、4本の光柱が放たれて翼と足を貫く。

 

 

 今度はこちらに風穴が開かれ、一瞬で懐に近づかれ肉体に触れた直後、全身が漏瑚同様に橙色に煌めく。

 

 

 肉体の内側までも融解を始め、いとも容易く全身が溶け落ちる。

 

 

 

 

 NIMPHも限度を超えた温度になり活動を止めて溶け落ち、ニヒリスターは巨大化した体を捨てて再び巨大化。

 

 

 一段階目の巨大化を省き、二段階目となって漏瑚に攻撃を同じ攻撃を浴びせていく。

 

 

 ニヒリスターも絶えず攻撃を続けて気づいた事があり、そこから化け物を倒す手段を思考していく。

 

 

 

 

ニヒリスター(コイツ、あの姿になってからこっちの攻撃を避けようとしねぇ...

 

 火山を使った波状攻撃から、突進とレーザーの攻撃だけになった...

 

 見えねぇのは厄介だが、動きは直線的で単純になってやがる。)

 

 

 

 

 漏瑚の行動パターンから、変化前と比較して弱点を炙り出していくニヒリスター。

 

 

 急激にスピードが上がり、触れただけで致命傷になる事以外は攻撃が単純化し分かりやすくなったと判断。

 

 

 そしてこちらが攻撃し被弾した箇所は、傷は塞がらずに橙色に煌めいている体に穴が空いたまま。

 

 

 

 

 治癒できないという希望的観測を切り捨て、意に治癒しない理由としてはエネルギーを攻撃に全て費やしていると考えに帰結する。

 

 

 以上の考察からニヒリスターは戦略を変更、こちらが相手の顔や体の向きから攻撃と移動方向を予測。

 

 

 命中すれば治癒でき無い為、四肢を奪ってしまえば勝算が見えてくる。

 

 

 

 

ニヒリスター「逝けェァ!!!」

 

 

 

 

 確実に漏瑚に命中させる為に、回避行動をとりながらカウンター気味に火炎を高圧力にしたレーザーを命中させていく。

 

 

 漏瑚の攻撃を掠って体の各所がどろりと溶けて姿勢が崩れそうになるが、己の中のプライドを胸に立ち続けて負けじと攻撃をやめない。

 

 

 互いの攻撃は火口の岩壁を突き破り地平線の果てに消える。

 

 

 

 

 速度は速いが動きが直線的な漏瑚と、漏瑚に劣る機動性だがフェイントを混ぜて柔軟に避けられるニヒリスター。

 

 

 互いに致死とも見れる攻撃を打ち合い山の釜の中、灼熱すらそよ風とも思える地獄の底とも思える煉獄。

 

 

 

 

ニヒリスター「視えたぜ!!」

 

 

 

 

 ニヒリスターの片方の口を開き、レーザーのような火炎が漏瑚の軌道を先読みして攻撃。

 

 

 見事命中して煌めいていた右腕が千切れ落ち動きが止まる。

 

 

 

 

 この攻撃を皮切りに次第に攻撃が当たり始め、気づけば四肢がもがれて欠損している。

 

 

 自身の体に火山を生成して推進力にし、移動することは出来るが戦い始めた時より姿勢制御が難しくなっている。

 

 

 まともに動けない状態であろうとも、ニヒリスターに向かって特攻していく。

 

 

 

 

ニヒリスター「チェック(詰み)だ、化け物め。」

 

 

 

 

 こちらに真っ直ぐ向かってくると踏んで、頭部に向けて岩石を射出して吹き飛ばした。

 

 

 特攻した勢いが弱まり地に落ち、後を追うようにニヒリスターもゆっくり降下していく。

 

 

 くびり殺した姿を確認してトドメを刺すつもりだったが、間近で煌めきを失った死体を見つめて異常に気付く。

 

 

 

 

虫を継ぎはぎにした体が不気味に蠢いている。

 

 

ニヒリスター「コイツっ!?」

 

 

 

 

 これが直ぐに囮であり、今まで戦っていたのは偽物だと気付く。

 

 

 遅れて夕刻だというのに昼のような明るさに天を仰ぎ見る。

 

 

 

光を明々と放つ太陽が頭上にあった。

 

 

 

 この異常に気付いたと同時に、囮の死体から蟲が溢れ出しニヒリスターの巨体を拘束し地面に磔にする。

 

 

ニヒリスター「クソっ!! 離せよ!!!」

 

 

 身動きが取れないまま地面の形状が、ニヒリスターを包み込む火山のように変化する。

 

 

 外から完全に閉じ切る瞬間、頭上に浮かび照りつける太陽にただ一点。

 

 ただ一つ黒い点がこちらを覗き込み、見ているように感じた。

 

 

 

 

 

漏瑚「囮の出来は及第点か。」

 

 

 体を変容させた直後、直ぐに複数体の火礫蟲を結合させて漏瑚の囮を作った。

 

 単純な動作や命令は理解できるものの、先読み攻撃や回避などの難しい動作はこちらで操作する必要がありかなりピーキー。

 

 それでもあまりある破壊力とスピードを獲得したのは収穫だったよう。

 

 

 

 囮を戦わせている間、漏瑚は強化されて試したいことを実践。

 

 極の番 隕とは違う、あたりの瓦礫や建造物を使わない術式で生成した火球を形成した。

 

 結果太陽のような明るさを放ち、周囲一帯を不毛焼土に変える大きさになった。

 

 

 

 このままぶつけようとしたが、自分たちも巻き込まれると夏油にストップをかけられて断念。

 

 仕方なく別の手段で攻撃を実行する。

 

 

 浮かんでいる太陽の光が漏瑚を中心に集まり、少しずつ(しぼ)んで小さくなっていく。

 

 

 

漏瑚「ふむ、悪くない。

 

 

実に...()いッ!!

 

 

 

 

 周囲の熱や炎をかき集め、自身の呪力から溶炎を生成して作られた太陽。

 

 

 半分は己の呪力で、半分はこれまでの戦闘で撒き散らされた火炎で、燃え滾る肉体が吸い込んでいく。

 

 かつて無い躍動が、鼓動が、熱量が肉体を駆け巡る。

 

 

 下手すれば身に余り自身を滅ぼしかねない絶大な力を、小さな肉体に内包し熱で熱を圧縮していく。

 

 

 

 火山を覆うほど巨大だった太陽は、直径が漏瑚の体と等しくなる。

 

 

 ニヒリスターが拘束されて隠された火山を仰ぎ見て、両足に力を入れ、片手を太陽に添える。

 

 

 その姿勢は火口を閉じた火山に飛び込まんとしている。

 

 

 

漏瑚「簡単に消えるなよ。」

 

 

 

 添えていた片手か光線と見違う火炎を放射、橙色の小さな太陽が炸裂して世界を白く染め上げ、

 

 

 

 

 

 

 同時に炸裂した太陽から打ち出された漏瑚は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音を置き去りに火山を消滅させた。




 今思い返すとやっぱ漏瑚だけ規模がおかしい。



 夏油の強化で漏瑚が新たな姿、大黒天へと変身した強さから大規模な被害になると想定し、火口から離れて山の麓に移動していた夏油たち。


 呪霊での視覚共有でも戦いの熱で消える為、崩壊を始めている岩壁を見ながら戦いの苛烈さを感じていた。



ネオン「うぅ、この目で見れないのが残念過ぎます...」

アニス「体溶けるって...」(≖ࡇ≖)

ラピ「そんなこと言ってないで、落石に気をつけて。」



 戦闘によって瓦礫が落下しており、漏瑚の戦いが終わるまで待機しながら避けたり弾丸で砕いていた。


 マリアンはラピ達の会話に苦笑いしながら、マグマ噴き出る火山の頂上に目を向けていた。



マリアン(凄い...漏瑚さんも生前は、主要都市を壊滅する程の力を持っているとは聞いていたけれど...
 それより更に強くなるなんて...)



 マリアンの目には、肌には、気配には、漏瑚が己の意志で力を振るっていると分かっていた。

 自分の力を試す私欲があるが、それでも己を律することができる強い意志が絶大な力を制御している。



マリアン(それに比べて私は...ずっと怯えて...)



 己の不甲斐無さに落胆している中、悪寒が背筋を逆撫でするような嫌な気配を感じ取る。


 この感覚を知っているマリアンは直ぐに振り返り銃を向ける。



???(おやおや、相変わらずご挨拶ですね。)


ラピ・アニス・ネオン「「「!?」」」



 振り返った先には傷だらけのローブで身を包み、不気味な雰囲気と笑みを漂わせている人物、


 マリアンと対面した謎の人物、ミールが背後に立っていた。


 マリアンは知っている雰囲気にいち早く気付き、夏油も悍ましい雰囲気を気取ってマリアンと共に銃口を向けていた。



ミール「初めましてカウンターズの皆々様、私はミールと申します。」


夏油「自己紹介は不要だ、何が目的でここに来たんだ。」



 彼の口から聞いたことの無い低い声で、ミールに向かって目的を聞き出す夏油。


 コミュニケーションが挫かれて溜息をこぼしながらも、ここに来た目的を話し始める。



ミール「そうですね...まあ観戦した時の感想を。」


ラピ「感想...?」


ミール「えぇ、とても素晴らしい()()を見せて貰ったので。」



 心底楽しそうな表情を浮かべて、こちらを覗き込んでくる。

 同じ(かたち)をしているのにも関わらず、相容れない、受け入れられない未曾有の狂気を、ラピ、アニス、ネオンは直に感じる。



ミール「ナノマシンの自己修復、そして一部巨大化によるレーザー砲の生成。
 とても...とても素晴らしい...やはりその素体(からだ)には、まだ()()()()()のですね。」


夏油「その()()()()()というのは、ヘレティックの因子か?」



 ミールが嬉々として話していた単語から、マリアンの体を改造された時に埋め込まれたヘレティックの力だと察する。

 彼の考察に対してミールは拍手で答え、マリアンを値踏みするような視線を向ける。



ミール「そう、その通りです。彼女のヘレティックの力が、また開花したと実感したのです。

 ...しかしどうしましょうか、このまま戦えば再び彼女(モダニア)が出てくるのでは?」



 ミールが狙い澄ましたタイミングで、マリアンの中に眠るモダニアが復活すると仄めかす。

 その発言にマリアンは青ざめて凍りつき、夏油は躊躇無く握っている銃を発砲する。



 放たれた弾丸をひらりと容易く避けて、降伏を示すように小さく両手を上げる。



ミール「怖い怖い、私は貴方たちと争う為にここに来たのでは無いのですよ?」


アニス「じゃあ何が目的よ、明らかに混乱させる気満々じゃない!」



 アニスの張った声でラピたちは更に警戒を強め、銃口を近づけ引き金に指をかける。


 話が進まなくなると悟ったのか、ミールは手を上げたままここに来た本当の目的を話す。



ミール「単刀直入に言いましょう、私に預けてみませんか?
 私に彼女を預け、ヘレティック...モダニアを取り除いてあげましょう。」



 口にしたのはマリアンを預けるという、羨望している人物の口から出てくるとは思えなかった文言。

 マリアンから因子を取り除き、自身の体に移植したいと補足で説明するミール。


 この発言に到底信じられない夏油たちは、これ以上聞く必要も無いと言うように攻撃する直前。





 火山に小さな太陽が落ちて、周囲の地形を溶かし破壊し尽くす。


 視界が白く染まる前、夏油はいち早く全員を抱えて退避すると、先程までいた筈のミールは姿を消していたが虚空に声が反響する。




「返事はすぐでなくとも構いません。」


「決心がついたら、いつでもお気軽に。」



「それでは皆さま、ご機嫌よう。」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。