特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 私生活が忙しくて...執筆していたストックが...


錯綜複雑(さくそうふくざつ)

 ニヒリスターとの戦いを終えてエデンに戻った夏油、自身の肉体の秘密を知るために、セシルの検査を受けて結果を聞いた。

 

 セシルから告げられた結果を聞いた上で夏油はある提案を伝え、少し硬直するも返答した。

 

 

 

セシル「理論上は可能です。

 しかし、言いましたよね。

 

 貴方がそれを手に入れた瞬間、

 

 その力を手に入れた瞬間、

 

 多くの人々から狙われる事になる、と。」

 

 

 

 セシルの言っている力とはアンチェインドを指し、そして夏油の血液は生成するのに不可欠なRh Xを持っていたと判明。

 

 そしてアークのデータベースに自分に関する情報の中で何も無い項目の一つ、血液型が秘匿されていた。

 

 

 

 この情報秘匿は、明らかに夏油を守る為のものであり、裏を返せば知られた瞬間、中央政府がラプチャーを殲滅する大義名分で、一生血液を抜かれ続ける生活になる恐れがある。

 

 そういった事態を予見してからなのか、それとも同じような経験が自分にもあるからなのか、セシルは夏油の考えを止めるように警告する。

 

 

 

セシル「貴方だって、カブトガニのような一生を送りたく無いでしょう?」

 

 

 

 例え秘匿しようにもアークでも注目されている夏油が使ってしまえば、何処からか情報は溢れて放射線上に広がっていく。

 

 

 妄想や噂が横行し仮初の出来事を助長し

、自分の都合のいい真実を持って夏油を捕縛、その先は自分の身を滅ぼす破滅でもある。

 

 

 そうなると分かっていても、伝えてもなお、夏油の瞳からは一分の恐怖も同様も無い。

 

 

 なりふり構っていられないのか、それとも先ほどまで言った警告に対して全く恐怖を抱いていないのか。

 

 

 

セシル「その様子じゃ、意見を曲げる気はなさそうですね。

 いいでしょう。貴方が茨の道を歩むというなら、止めはしません。」

 

 

 

 夏油の表情を見た上で、セシルはこれ以上の警告は無意味と判断した。

 

 実行に否定的だったセシルだが、アンチェインドを製造できる機会が巡ってきた事は素直に喜んでいた。

 

 

 早々に製造の準備を始めるセシルは、背中越しに必要な材料を口にする。

 

 

 

セシル「貴方の血液の他に、コードネーム・マザーホエールを捕獲してください。」

 

夏油「...一次侵攻時のラプチャーを?」

 

 

 

 セシルが必要と言ったラプチャーは、等級の中でヘレティックを除いた最上級のタイラント級に位置する。

 

 そしてタイラント級の中でも破格の巨体を誇る飛行輸送型ラプチャーであり、第一次ラプチャー侵攻に誕生した。

 

 何故材料として必要なのかという理由は、検査で採取した血液を使用して兵器転用できるか様々な実験を行った。

 

 

 結果は全て失敗し金属と合成する過程で、アンチェインドの効力は失われた。

 

 

 

セシル「金属と相性が悪いようですが...正確な理由はよく分かりません。

 何せサンプルが少ないので。」

 

 

 

 実験に使用した金属は鉄や鋼、金に銅といった金属に、電流で硬度を変えるニケのボディに使用されるガッデシアム、

 

 果てにはラプチャーの部品も合成に失敗した。

 

 

 

夏油「ラプチャーの部品で合成が出来ないが、マザーホエールなら出来る理由があるのか?」

 

 

 

 夏油の考えにセシルは頷く。

 

 

 曰くアンチェインド弾の核となる物質は人間の細胞であり、人間の細胞と合成を試みた結果成功した。

 

 最も弾丸という分類に含まれる「何か」が誕生した。

 

 

 

セシル「この方法を用いて作られた『アンチェインド弾』では弾丸としての機能を果たすことは出来ませんでした。

 金属のような硬度が無い為、発射時の爆発にすら耐えられなかったのです。」

 

 

 

 放射した瞬間に爆散する事から、ニケやヘレティックの肉体を貫くことも出来ない。

 

 

 素材を変える手段もあるが、それでも有効打にならない事実は変わらない。

 

 

 

セシル「そこで必要なのが、マザーホエールです。」

 

 

 

 続けて必要な理由について話し始めるセシル。

 

 

 一次侵攻時のラプチャーには現在のように半永久動力源は無く、人間と動物を取り込む事で動力源を補っていた。

 

 その為、ラプチャーが出現した当初は手当たり次第に殺戮を展開するも、人間の捕獲に変わり、長期間の活動に備えて動力を確保するようになった。

 

 

 

セシル「捕獲された彼らの顛末は言わなくても分かりますよね?」

 

夏油(エネルギーとして分解されたか...)

 

 

 

 ラプチャーに取り込まれた人間の末路は想像に難く無い。

 

 

 映画マトリックスにも、人間を生体電気としてエネルギーを供給している設定がある。

 

 生き殺しして虚構を見せる世界と、激痛を伴い体がバラバラになる、一体どちらが幸せだろうか。

 

 

 

 だが人類が地上からアークに移転してからは、ラプチャーは捕獲を行わなくなった。

 

 それは手軽に得られる燃料が無くなった為なのか、それとも非効率と判断したからなのか。

 

 真実は定かでは無いが、ラプチャーは動力源を自己で完結できるように進化し、半永久動力源を獲得したのだ。

 

 

 

セシル「短いものです。『材料の確保』が行われた期間はたった10年程、その短い間に半永久機関を作るんですから。」

 

 

 

 人類が発明した半永久機関は、置き時計のジャガー・ルクルト アトモスが有名だ。

 

 空気時計とも言われており、文字盤の後ろのガスボンベが温度変化により収縮膨張が発生。

 

 その変化によって時計を駆動させる動力源*1となる。

 

 その時計も1928年に誕生したが、更に上回る効率の良い動力を生成する機関を、10年という短い歳月で作り上げて様々なラプチャーに転用した。

 

 

 

セシル「勿論一次侵攻時のラプチャーはまだ残っていますが、間も無く動力の限界を迎えるでしょう。

 これが、マザーホエールを捕獲しなければならない理由です。」

 

 

 

 一次侵攻時に誕生したマザーホエールも、経年劣化と生成してきたエネルギーが尽きる可能性がある。

 

 初代モデルのラプチャーの為、現代のラプチャーのように半永久機関を持っていない影響で、完全に停止しないようにニケの素体を確保してコアを補強していると言及。

 

 一次侵攻時の時に人間を蓄えてはエネルギーに変え、現代では地上に取り残されたニケの素体をエネルギーに変えた事からセシルはある仮説を提唱した。

 

 

 

セシル「マザーホエールのコアは、人間の細胞を含んでいるでしょう。

 そのコアとアンチェインドを合成し、アンチェインド弾を作るのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラピ「コードネーム・マザーホエール。

 第一次ラプチャー侵攻の時からずっと使われてる超大型輸送機よ。」

 

マリアン「一体どれだけ大きいんでしょうか...?」

 

 

 

 荒廃した大空を漂う鯨を見上げながら、ラピはラプチャーの名前を説明しマリアンは固まっている雲よりも大きいマザーホエールを見て大きさのイメージが想像できないでいた。

 

 大量のラプチャーや資材を運搬できる事から、現在でも現役とされる理由をラピが解説し、今度はネオンが夏油にこれからマザーホエールに対してどうするのか尋ねる。

 

 

 

ネオン「では師匠、もう一度聞きますね。

 あれをどうするんですか?」

 

夏油「引きずり下ろして撃墜する。以上だ。」

 

 

 

 簡潔かつ短すぎる説明に思わずしかめっ面するアニス、ラピは無表情だが無理難題なのか固まり、ネオンは明後日の方向を見つめている。

 

 マリアンは戦闘が控えていると判断し気を引き締めている。

 

 

 

 しかめっ面していたアニスは、夏油の無理難題に事細かにどうするのか聞いた後、何故マザーホエールを捕獲することになったのかという経緯を聞く。

 

 

 

アニス「どうやってあの鯨を、というかどうして鯨を引き釣り下ろすの?

 私たちにはもっと大事な事があるでしょ?」

 

 

 

 アニスの疑問に、ネオンやラピ、マリアンも同じように気になるような視線を向けている。

 

 夏油は少し考えた後、問題ないと判断した上でこの作戦を行う事になった理由を移動しながら話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニス「...マジなの...?」

 

夏油「ああ、マジだ。」

 

ネオン「マジですか...?」

 

夏油「本気と書いて、本気(マジ)だ。」

 

 

 

 夏油がアンチェインドを製造できる材料の一つ、Rh Xの血液型を持つ人間であること。

 

 そして、アンチェインドを作るのに必要な材料が、夏油の血液の他に人間の細胞が含まれた金属、人間を取り込んできたマザーホエールのコアが必要だと明かした。

 

 あっさりと話した夏油に、思わずアニスとネオンは顎が外れたように大きく口を開けて、ラピも珍しく歩く足を止めて固まっており、隣でマリアンは両手で口を隠している。

 

 

 

夏油「これがマザーホエールを捕獲しなければならない理由だ。

 他に何か質問はあるかい?」

 

 

 

 いつもの調子で会話している夏油に、思わずついていけないラピたちはその場で立ち止まったままだ。

 

 内一人は足は動かずとも、マリアンが口を開いて夏油がこの行動に出たのかを問う。

 

 

 

マリアン「何故...。」

 

夏油「ん?」

 

マリアン「何故私たちに話したんですか?

 この事を話せば、アークは必ず指揮官を...。」

 

 

 

 それ以上は話せなかった。

 

 マリアンが夏油の悲惨な末路を想像したく無かったからなのか、それとも夏油の覚悟や決意を不意にしてしまうと思ったのか。

 

 ともかくマリアンは口を閉じてしまうが、夏油は間を置かずにマリアンの疑問に答える。

 

 

 

夏油「君たちを信頼しているからだ。」

 

 

 

 その言葉が彼女達の硬直を解きほぐす。

 

 最初から固まっていなかったように。

 

 

 短く簡潔だが、その言葉では測れない程、彼女達への全幅の信頼が込められている。

 

 

 

 夏油は確かに超人だ。

 

 それも一人で世界を変えられる程の。

 

 それでも彼は人と関わる事を捨てられなかった。

 

 

 彼は呪いを知らないこの世界で、ラピたちに背中を預けながら戦場を駆けて、次第に自分の成すべきことを探す道を見出した。

 

 気付かせてくれたことへの感謝と、一度決めた責任を全うする為、なにより彼女たちを守り抜く決意が命運を託す程の信頼を預けた。

 

 

 

 ラピたちは夏油がかけてくれた言葉が、これまで一緒に戦ってきた戦友としてこれ以上に無い最高の賛辞だった。

 

 

 

アニス「指揮官様...。」

 

ネオン「私はスパイですが、尊敬する師匠を売るならその場で死にます!」

 

マリアン「私は事前に書面で送ります!!」

 

 

 

 夏油への信頼をネオンとマリアンも、裏切る事はしないと宣言。

 

 ラピも珍しく表情が明るくなったが、直ぐに無表情に戻りヨハンと合流する為に移動を再開しようと提案。

 

 

 

ラピ「行きましょう、ヨハンたちがこの先で待機しています。」

 

アニス「それじゃあ、私たちも指揮官様の信頼に応えよっか?」

 

 

 

 戦地へと足を踏み出す者たちは、新たな戦いに確固たる決意を持って歩き出していく。

 

 

1人を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークの中で偽りの空が照らさない暗い街、人間の飽くなき負の感情が詰め込まれた世界アウターリム。

 

 欲望と犯罪、そしてアークへの劣等感が横行し、渦巻き続けている。

 

 

 その世界の中で生きる人々は、今日も命を賭して生きている。

 

 

 

??「今日も変わりなくクソッタレ。

 そっちはどう?」

 

 

 

 携帯電話を耳にあて、建物の屋上からアウターリム全体を見下ろしている男が、電話で通話している人物に連絡する。

 

 定例報告を終えた男の声を聞いて、電話相手も素っ気なく返答する。

 

 

 

?????「この街の勢力図は大体把握できました。

 主に5つの勢力がこのアウターリムを構成しています。」

 

 

 

 アウターリムには、犯罪と大量の金が横行している中、それでも大規模なテロや殺人は発生せず治安を守っている勢力が3つ。

 

 そしてテロや違法な薬物の売買などの犯罪に着手している勢力が2つ存在する。

 

 

 

 前者は清明会、牡丹会、ヘッドニアと呼ばれる組織で、アンダーワールドクイーン部隊に所属するサクラ、モラン、ロザンナがそれぞれ敷地を所持して治安維持している。

 

 なおこの裏社会を牛耳るアンダーワールドクイーンは、テトララインのCEOマスタングが無秩序のアウターリムに秩序を齎す為に依頼した。

 

 賛同した三名はニケとなり、アウターリムの秩序となる契約を結んだ。

 

 

 

 後者とされる犯罪に手を染める組織と人物は、エンターヘブンとシックスオーと大きく2つに分かれている。

 

 

 エンターヘブンはアウターリムを拠点として活動するテロリスト集団であり、自治確立と人権保護を掲げて行動している。

 

 その手段は爆破テロや襲撃と過激であり、ディーゼルの弟が命を落としディーゼル、ブリッド、ソリンが犠牲となったAFX爆破テロも彼らの仕業。

 

 現在エンターヘブンを統率しているリーダーはE.H.と呼ばれる人間であり、無差別な人命被害を良しとせず、建造物を標的とする威嚇に留めている。

 

 しかし、中央政府が声を聞かない事から、構成員も気が立っているようで警戒が必要。

 

 

 

?????「そして唯一、アウターリム内で力を持ち、個人で活動している存在...

 名前はシックスオー。」

 

??「その名前なら、俺も街中でラリってる奴から聞いた。」

 

 

 

 シックスオー。

 

 

 アウターリムのみに限られず、アークの裏社会で暗躍する正体不明の存在。

 

 アークの広大なネットワーク内のみで活動しており、履歴や移動した痕跡すら残さない程極めて慎重かつ、相手の欲望や弱みに漬け込み利用する狡猾な人物。

 

 ネットで活動している事から、その姿を直接見た人物は1人も居らず、他者を操り人形にして目的を遂行する事から『ネットの影の支配者』と称される。

 

 

 現状シックスオーが関係していると思われる事件が何度かあったが、ミシリスの通信部門、果ては中央政府が管理しているデータベースにも居場所どころか尻尾すら掴めず正体を暗ませている。

 

 

 

??「結局何も分からず仕舞いか。」

 

?????「そういう訳でもありませんよ。

 私も調査をしている段階で、アウターリムに出回っているミ(・)ス(・)ト(・)にシックスオーが関わっていると分かりました。」

 

 

 

 アウターリム内で流通している違法薬物がミスト。

 

 違法成分を含む中毒性の高いキャンディであり、現代でいう麻薬や覚醒剤に分類される違法薬物。

 

 服用すると強烈な多幸感、摂取量に比例して痛覚の麻痺や幻覚、攻撃的な性格への変性が発生する。

 

 

 そして非常に高い中毒性からミストを強く渇望するようになり、ミストの服用効果によって攻撃的性格、幻覚、痛覚麻痺、これによりミストを得る為ならば殺人も容易く行ってしまう。

 

 

 

??「へぇ、街中でラリってる奴らが一時期出回ったのはそれが原因か。」

 

 

 

 シックスオーはミストを開発した事で、瞬く間に流通して莫大な資金と広大なネットワークを獲得した。

 

 その犠牲として数え切れない程の人間がミスト中毒者となり、現在の治療方法が見つからずミストに囚われ縛られた。

 

 

 

?????「ミスト中毒者はどうしましたか?」

 

??「あの様子じゃ当分治りそうに無いから保(・)護(・)したよ、ヤク欲しさに事件を広げられても面倒だし。」

 

 

 

 そう言って電話を持っていない手から、人の顔をした薄気味悪い色の種のような物を3つ取り出した。

 

 その表情は狂気に歪んでおり、小声で何かを囁いているように見える。

 

 

 

??「でも凄いよなぁ、今月だけでヤク中が300超えたんだから。

 ったく、どんだけ増やしてんだよ。」

 

 

 

 電話越しに腹を苦しそうに抱えて、ミスト中毒者の遭遇数に呆れているようであり、電話相手は男の方法に鼻根を摘んでいるようだ。

 

 

 

?????「はぁ、貴方は少し加減というものを知った方がいいですよ?」

 

??「アホか、俺じゃなくてシックスオーに言えよ。」

 

?????「あまり目立たないようにして下さいよ、その役割(ロール)は私なんですから。」

 

??「だったら目立てよ、ちまちまやっても意味無いだろ。」

 

 

 

 男は電話相手のやり方に不満があるようで大胆に動くように言うが、微笑みながら男の発言を否定する。

 

 

 

?????「十分目立っているでしょう?

 暗がりしかない世界で、唯一驚くほど清廉潔白なんですから。」

 

??「今に至るまでのやり方がグレーなんだよ女狐が。」

 

?????「真っ黒な貴方に言われたくありませんね。」

 

 

 

 互いに自分たちの行いに小言を言い合った後、元の活動に戻る為に電話を切る。

 

 男は建物の屋上から街を一瞥して階段に向かい、電話相手は電話を仕舞って机に置かれているキーボードを叩こうとした。

 

 

 

?????「...?」

 

 

 

 突如画面に砂嵐が表示されキーボードやマウスを使っても反応しない。

 

 

 電源を切ろうとした矢先、砂嵐から文字が表示される。

 

 

 

初めまして、フォクシーさん。

 

いえ、妲(・)己(・)さんと読んだ方がいいですか?

 

 

 

 電話相手の女性、フォクシーは表示された文字に表情が変わる。

 

 警戒を高めて相手の動向を伺う。

 

 

 

フォクシー「人様の端末に土足で踏み入り、挙句に源氏名で呼ぶとは...

 随分デリカシーが乏しいのですね。」

 

 

 

 階段に向かっていた男の前に、タバコの紫炎を漂わせながら、鋭い瞳で見定めている女性が1人立っている。

 

 初対面とは思えない立ち振る舞いで、女性は男に話しかける。

 

 

 

「長いお喋りだったな?」

 

「私も混ぜてくれよ。」

 

 

??「盗み聞きなんて良い趣味してんな。

 だからボッチなんだろ?」

 

 

 

 友好的にに話しかけてきた女性に対して、男は相手の神経を逆撫でするような口調で煽る。

 

 

 

フォクシー「それで、私に何か御用でしょうか?」

 

??「俺になんか用でもあんの?」

 

 

 

 目の前の相手に対して心底どうでも良い感情を募らせ、フォクシーは毅然とした態度を、男は気怠そうな表情をして質問する。

 

 

 

私と手を組みませんか?

 

「私と手を組まないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陰っているアウターリムとは打って変わり、光が差し込み新学期のような華やかさが感じられる。

 

 そんな雰囲気では隠し切れない程の違和感が、肉体を通して感じさせる。

 

 

 

五条「まさか、また教鞭を取るなんてね。」

 

 

 

 五条は校門に踏み入り、新たな学び舎をくぐる。

 

 くぐった校門に刻まれていた名前は

 

 

 

 

 

M.M.R.附属高校

*1:
なお1度の温度変化で2日稼働させるエネルギーが供給される




 休日はゴロゴロしたいけど、出来ない苦悩。

 だからこそ今日もゴロゴロする為に頑張る。



にけ さんぽ




 アークに用があって移動する為に、地下に続くエレベーターに乗り降りている時の事。



アニス「思ったより凄く広いね、このエレベーター。」

ネオン「はい。貨物用エレベーターっぽいですね。」

ラピ「でも、まだ調整中なのかも。
 4人しか乗っていないのに定員オーバーね。」

アニス「ダイエットでもしたら?」

ネオン「私ですか?」

マリアン「アニスより体重は少ないですよ。」
(ムスッ。)



 アニスの発言に頬袋を膨らませ、詳しい体重の数値を言おうとするマリアン。

 咄嗟にマリアンの口を塞ぐ中、ラピは心配した様子を見せる。



ラピ「指揮官、大丈夫ですか?」

夏油「問題無いよ。」

アニス「試運転はいいけど、ちょっと危ないんじゃない?
 さっきの明らかにおかしかったけど。」

ラピ「別に問題無いわ。定員オーバーのランプが光ってるだけだし。」



 問題無く可動しているエレベーターに乗って、定員オーバーを知らせる赤いランプが内部を照らしている。

 しかし、赤いランプがアニスの危機感を逆撫でする。



アニス「ふん、普通はここで必ず事故が起きるんだよね。」

ネオン「事故で思い出しました。
 70年前にあったアークのエレベーター事故、知ってますか?」

アニス「あ、それね。
 ...あまり話したくないな、話す度になんか気持ちが...」



 言い始めた事故と聞いて、アニスの表情は陰りを見せて顔を俯いている。


 アニス反応を見て追求する。



ネオン「あっ、まさか気持ちが悪いって事ですか?」

マリアン「...?」

アニス「何言ってるの。
 ちょっと...悲しすぎるから。」

ラピ「...私も。」



 ラピたちの話題としている事故とは、70年前におよそ200機以上のニケが、地上へのエレベーターに乗ったことがある。

 長引くラプチャーとの戦いに疲弊したアークは日に日に疲弊し、ラプチャーとの闘争で勝利出来なかった原因をニケの責任と糾弾した。


 アーク内でニケの人権は文字通り底の底まで叩き落とされた。

 その境遇に耐えられず当時のモデルZXと呼ばれる量産型ニケを始めとする多くのニケが連合を結成し、アークを捨てて地上を選ぶ事にした。



 一切の害を与えていないニケが、新たな生きる場所である地上を求めて上がった結果、中央政府は大量脱走と見なしてエレベーターを墜落。

 墜落したエレベーターはアークに落下した際に甚大な被害を被る所を、乗っていた200機のニケが自爆した事で免れた。




 最小限の被害に抑え、最後まで人間を守ろうとした高潔さからニケの待遇が復権するきっかけとなり、以降ゴッデスフォール事件と呼ばれるようになった。



アニス「まあ、先はまだ長いけど...

 あの人たちのお陰で、今こんな生活ができてるのよね。

 ありがたい事だと思う。」




ネオン「どうですか? この話。」



 一連の出来事を聞いていた夏油に、どう感じたのか、どう思ったのか尋ねる。

 夏油は自身(術師)とはかけ離れている待遇の中、気高さを見せて散っていった彼女たちに深い尊敬の念を抱いていた。


 だが、それ以上に



夏油「とても悲しい話だ。」



 今ラピたちが過ごせているこの日常を、戦いと隣り合わせだが感謝される日々を体感出来なかった彼女たちに対して、ただただ哀しさが込み上げていた。

 嘘偽りの無い、正直な表情の夏油を見て、エレベーターの扉に向かって歩き出す。



ネオン「この話の続きを知っていますか?」

アニス「続きがあるの?」

ネオン「爆発したエレベーターは修理され、あらゆる政治的話題に利用されたんです。

 何て言うか、ニケ人権の象徴とも言えますから。

 でもそのエレベーターは、それから複数の事故を起こしたそうなんです。

 1回も正常に作動した事が無いそうです。」



アニス「...呪いとかなの?」

マリアン「......。」



 アニスの口から出た単語に微笑みながら、事故が起きたエレベーターの型式番号を呟く。

 マリアンがエレベーターの隅を見るとエレベーターの型式番号があり、事故が起きたエレベーターと同じだと知る。



マリアン「ネオンじゃ無いですよね。」

???「はい。」

アニス「へぇっ!?
 ま、まさか...! ゆ...ゆゆゆゆ...!」



 マリアンの言葉を聞いて動揺が隠せず、慌てているアニスを落ち着かせるように、朧げになりながらも優しく声をかける。



???「大丈夫。貴方たちの考えは分かったから。
 私たちに気付いてくれた、指揮官の考えも。」

夏油「......。」


心配しないで。


貴方たちが私たちを忘れない限り、


貴方たちが私たちを誇りに思ってくれる限り、


私たちを思い出して悲しんでくれる限り、


このエレベーターは絶対故障しない。



200人のニケが、貴方たちを守ってあげる。




 エレベーターが止まり駆動音と共にドアが開いた。

 開かれたと同時に蜃気楼のように消えた先に、頬を膨らませたネオンが立っていた。



ネオン「もうっ! 私がまだ乗ってないのに行ってしまうなんて! 酷いです!」



 ネオンが怒っている姿が見えていないように、アニスは放心状態になっている。

 何の反応もないアニスにネオンは頭を傾げている。



ネオン「...アニス? どうしたんですか?」

アニス「......。」

ネオン「ラピ、アニスはどうしちゃったんですか?」



 返答しないアニスに本気で心配しているネオンはラピに尋ねる。



ラピ「アニス、大丈夫?」

アニス「...うん、大丈夫。
 私たちにも、死んだら行く所があるんだなって。」

マリアン「...はい。」

ラピ「...そうね。」

ネオン「...?」



 道半ばで命を落とした彼女たちの魂は、今もなおこのエレベーターの中で留まり続けている。

 そして同じように地上を取り戻さんとする気高き魂を守る為に今日も動き続ける。



夏油(......この世界の魂ではない私たちは、一体何処へ行くんだろうね。)






...悟。
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