試験官として就任する事になった五条、教室内での講義はマルチャーナが担当している為、体育館で体育の授業を担当する事になった。
講義といっても簡単な内容で、予め渡されたプリントに沿って体力測定を担当することとなった。
五条「それじゃあ早速行ってみよ〜!」
アイン「はぁ〜ぃ...」
ツバイ「......。」
五条はテンションを上げて体力測定を実施しようとするも、生徒たちの雰囲気は自己紹介から変わっておらず暗いまま。
それ程まで夏油に期待していたと考えると、その分罪悪感が込み上げてくる。
しかしその気持ちが霞む程に、
五条(この
五条 悟に溜め息とはねぇ...?)
対抗心を剥き出しにしていた。
五条「まずは柔軟の項目から!
長座体前屈から始めようか。」
壁の近くに段ボールの厚紙とA4のコピー用紙で作られた箱の計測装置を指差す。
ぞろぞろと生徒が集まる中からツバイを指名して計測するようにお願いする。
ライ「大丈夫なの?あの先生。」
トリセラ「さあ...?」
長身でスタイルが良いが体が柔らかいとは思えないライと同じクラスメイトのトリセラは心配そうな視線を向けていた。
運動靴を脱いだジャージ姿の五条が壁に背と尻をつけ、手のひらを測定器置いてゆっくり両肘と背筋を伸ばす。
トリセラ「案外体が柔らかいんですね......」
ライ「結構体が倒...れ...て......。」
みるみる体が近づいていき胸筋が完全に地面に接する。
あまりの柔らかさに驚愕どころか若干引き気味になっている生徒たち。
ツバイ「......102cmです。」
アイン「めちゃくちゃ柔らかいじゃん!?」
ツバイが計測した値から生徒たちが改めて驚愕。
鼻を伸ばしている五条はドヤ顔で上体を起こし生徒たちに呼びかける。
五条「さあ、皆もやってみようか?」
手をこまねいて五条が生徒たちを呼んでいき、次々と長座体前屈を実践する。
ニケの所属を考えている生徒たちは体が柔らかい方だが、それでも五条に遠く及ばない。
研究者になる生徒は更に体が固く、背中を押されて悲鳴を上げる者が何人かいた。
アイン「先生は何でそんなに柔らかいんですか...?」
五条「体が柔らかいと疲れにくいんだよね。
何より怪我しにくいし。」
体の柔軟性が高い事で血行が向上し疲労が貯まりにくく、関節の可動範囲が広がる事で加わる力の逃げ道が広い事で負傷しにくい。
何より五条は戦闘する肉体を持つ為、無駄な力を消耗しない理由で体を鍛えつつ柔軟性も上げていた。
その重要性を生徒たちに説いていたおかげか...
五条「ツバイ...だっけ? 首周りとか肩、背中が硬いね。
学生の仕事は勉強というけど、し過ぎは毒だよ?」
ツバイ「分かりました。」
五条「アインはもも裏が硬いね、足を伸ばすストレッチをしたら足が気怠くならないよ。」
アイン「よく分かるね...」
五条「これでも前職は先生だからね」(キラリ)
生徒たちの取り組んでいる姿から生徒たちの体の硬い箇所を見抜き、その対処法を伝えた五条に舌を巻いていた。
生徒たちの認識が凄い先生と変わり次の体力測定に移る。
腕立て伏せに反復横跳びと続けていき最後の測定に入る。
五条「いよいよ最後の測定、シャトルランだ!
ルールは簡単、テンポが上がってくBGMが終わる前に白線を超える、以上!」
生徒たちが軽い準備運動をしている間に簡潔な説明をして、説明を終えた後は早速測定の準備に取り掛かり直ぐにでも始められるように整える。
それぞれスタートラインに立った生徒たちを見て、五条は手元にあるスイッチを天井に向けて高く上げる。
五条「それじゃあ...よーい...スタート!!」
チャイムの音と同時に一斉に足を踏み出していく生徒たち。
反復横跳びや腕立て伏せなど、柔軟以外の項目は人間の数値よりも基準が高く設定されており、高校生でも全て満点であろうとニケの基準となると全て最低点となる。
加えて測定時間もかなり長い為、各項目10分から20分を立て続けに取り組んでも活動できる持久力も見られる事からも、言葉通り全ての項目を総合しての体力測定。
最後の項目のシャトルランも人間の基準で最も早いペースから始める。
ライ「これが終わったら、体力測定終わり...!」
トリセラ「はぁっ、はぁっ、頑張ろう...!」
多くの項目を終えてきたライとトリセラは流石に疲労が出て来たのか息が上がり始めている。
ライは戦闘訓練で高い成績を記録しているが、それでも連続して長時間の体力測定は応えるようであり、トリセラに関してはあまり戦闘訓練は得意ではない。
アイン「これが終わったら放課後どうする?」
ツバイ「別に、帰って復習します。」
アイン「えぇ~、カラオケ行こうよ~。」
対してアインとツバイは戦闘訓練成績が優秀であることから、長時間の体力測定であろうと荒息一つ吐いていない。
それどこかこの講義を終えた放課後のことを話し合っている。
五条「カラオケねぇ、どのアーティストが好みなの?」
アイン「私はボリュームさんの曲が最近ハマって...」
ツバイ「だから私は帰ったら復習を...」
アインはカラオケの話をされて思わず乗り気になって話を応じて返答しながら声のする方向に、ツバイはカラオケは行かない断固とした心構えで答えながら声のする方向を向く。
声のする方向を向いた先には、
五条「ん? 何??」
ニケでもない五条がアインとツバイに並走しながら話をして、走りながら顔が固まり引きつるアインとツバイ。
アイン「ニケ用のシャトルランだけど...」
五条「そだね~、マルちゃんから聞いてるけど?」
ツバイ「何で並走できるんですか?」
五条「僕はNiceなGuyだからね、これくらい訳ないさ。」
ツバイ「理由になっていません。」
五条「理由がいるの?」
ツバイの言葉に五条はいつも通りの調子で返答し、呼吸を乱さず走り続けている光景に今日何度目の驚愕か分からずにいた。
五条「まあ、君たちは気にせず頑張ってよ。」
アイン「気にしないという方が無理なんですけど。」
アインとツバイに並走しながら話しかけている五条、しかし後ろを振り向いて徐々にスピードを下げていく。
その行き先はライと遅れているトリセラに向かっている。
五条「大丈夫? だいぶテンポが速くなってきてるけど。」
トリセラ「はい...大丈夫...です。」
遅れ気味になっているトリセラを気遣って、五条がスピードを落として並走する。
荒息を吐いているトリセラと、全く疲れを見せない五条。
本来全く逆の筈だという光景だった。
五条「口じゃ無くて、鼻で呼吸してみて。」
トリセラ「はぁっ、分かりました...」
五条「吸うのは2回、吐くのは2回と交互に続けてみて。」
トリセラ「はい...ふぅ...。」
五条の助言通りトリセラは呼吸方法を変え、変える直後少し辛そうに呼吸を乱す。
しかし、乱れていた呼吸が少しずつ規則的になっていく。
それでも会話する余裕が無く、視線の先はシャトルランの白線に向けられている。
五条「良い調子良い調子!
その調子であと50往復行こうか!」
トリセラ「ごじゅっ...!?」
シャトルランで向けていた視線が思わず五条に向けて、安定していた呼吸が再び乱れる。
最後の測定を終えた生徒たちは体を伸ばしながら話に華を咲かせ、帰りの
五条「お疲れ〜、はいスポドリ。」
トリセラ「あり...がとうございます。」
中でもシャトルランでかなり走り続けたトリセラは文字通り限界を超えて、机に項垂れ突っ伏していた。
五条の
終わった直後は達成感によって分泌されたアドレナリンが多幸感に満ちていたが、体育館を出た後は倦怠感と疲労感で体が崩れた。
マルチャーナ「お疲れ様でした。
帰りのHRを始めます。」
HRを始めたマルチャーナは今回の体力測定の結果から、これから控えている試験に備えて必要な点や伸ばす必要のある項目をそれぞれ理解するようにと伝える。
翌日の講義の予定は今回とは打って変わって、体力測定から試験範囲となる座学が中心となると連絡した後HRを終わらせる。
マルチャーナ「筋肉痛が和らぐせるには、風呂に入って解し寝ると効果的です。
それではHRを終わります。」
日にちごとに担当を決めている日直に声を掛けて、日直であろう生徒が立ち上がる姿に続き他の生徒も立ち上がり点呼を取る。
マルチャーナの前に体を引き締めて気を付けながら会釈し、今回の講義に感謝を伝える。
挨拶を終えた後、椅子に深く座り込みながら天井を遠く見つめるように見上げてポツリと聞こえない声で呟く。
アイン「はぁぁぁ〜今日も退屈だったなぁ...」
M.M.R.附属高校に所属する生徒の1人アインは、日々の授業に対して理解できて刺激を感じられない物足りない学園生活を送っていた。
授業の内容も予習も不要で分かり、戦闘訓練は苦手ではなく戦績は高い。
彼女にも不得意があれば、苦しい顔をしながらも全力で取り組む事ができたのだろう。
加えて夏油ではなく五条とかいう一般人の赴任に、全員が緊張して混沌と化すテストも控えている。
直近で色々気が重くなるような出来事が沢山ある事を思い出して、アインはため息を一つ吐き出す。
ため息混じりに扉を開ける音がふと耳に届く。
アイン「あれ? 2人とも、もう行っちゃうんですか?」
ツバイ「うん。
今日の授業、分からなかった部分がおおいから復習しないと。」
ライ「私はナルが疲れてる気がするから。
帰ってちょっと寝ようかなって。」
ツバイは講義の復習の時間を確保する為に足早に学寮に戻り、ライは周りにいる可愛らしいペンギンのロボットのナルたちが眠そうにしている。
2人は教室の扉を潜って学寮に向かって戻っていこうとする2人を呼び止めるように、アインはカラオケに誘おうと声をかけるが止まらず出て行く。
残されたアインはゆっくりと教室を見回し、楽しそうに雑談する者、仲良く教室から出て行く者、勉強を教え合っている者...
アインはその中で孤立していると感じ取る。
アイン「...あれ? 私...こんなに友達居なかったっけ?」
アインは学校生活で初めて教室という小さい空間の中で、強烈な孤独を感じていた。
トボトボと1人寂しく廊下を歩いているアインは、教室の中で感じた直感を確かめる為に職員室に向かっていた。
マルチャーナは講義を終えて翌日の準備をしていると、職員室に歩を進めながら自身の心中は曇っている。
五条「どったの〜?」
不意に声をかけられ、びっくりしたアインは体中で飛び跳ねる。
振り向いた先には赴任したばかりの長身の教師、五条 悟が後ろに立っていた。
アイン「えっと...マルチャーナ先生に用が...」
五条「マルちゃんに?
取り敢えず向こうで話を聞くよ。」
五条のニックネームに吹き出しそうになりつつも堪え、職員室に一緒に移動しマルチャーナに自身が孤立している事と五条に伝える。
教室内で孤立している故に、自分がいじめを受けているのかと疑問を抱いている事を2人に明かす。
その理由として周りの生徒には、気軽に遊びに行こうと誘う友達がいるものの、自分には親友がいないと悟った。
アイン「昨日、急にそう思ったんですよね。友達って何だろう。
お互いにどこまでしてあげる関係が友達って呼べるんだろう、って。」
自分にとって友達とは何なのか、孤独感に苛まれたと同時にふと思ったのは、自分にとっての友達の条件。
マルチャーナはアインの疑問に対して困ったような表情を見せて、指導要録をタブレットで確認し、以前回収したプリントの記入欄に仲の良い友人を記入しなかった理由だと察する。
アイン「これだ!って思う相手が居なくて。
それに...」
マルチャーナ「それに?」
アイン「私は仲が良いと思ってたのに、相手が違ったら...
木っ端ずかしいじゃないですか。」
アインの意見を聞いてマルチャーナは納得しながらもタブレットを操作し、学園生活の状況からいじめられていないと判明し、加えて親友という交友関係を持つ人物がいないと明かす。
マルチャーナから伝えられた事実にアインは項垂れて落ち込む様子を見せ、その様子を見てマルチャーナは気が沈んでいるアインを励まそうと考える。
マルチャーナ「友人関係が広い方を知っていますが、その人は今不在中...」
五条「僕で良ければ紹介しようか?」
アイン「へっ?」
五条の提案にアインとマルチャーナは思わず揃って声を出してしまい、意外と思っている2人に対し心外だと顔を顰める。
しかし、夏油との交友関係を持っている事から知り合いも多いと考察、友達の作り方や考え方が変わりアインに良い変化を与えてくれると判断する。
アイン「う~~ん...ゴジョ先と友達かぁ...」
五条「何よ? 僕に何か不満があるの??」
アイン「夏油指揮官の方が良い...」
五条「ムッキィィーー!!」
個人的に夏油の方がいいと考えつつ五条に期待していないアインと、あからさまに演技のような憤慨を見せる五条。
五条の面倒くさい反応にひらひらと返すアインは、五条についていくように職員室を出ていく。
その後ろ姿を真っ直ぐ見守っているマルチャーナ。
マルチャーナ「...学校の皮を被った場所に過ぎないとはいえ...こういう相談は、いつ受けても悪い気分ではありませんね。
ほんの少しでも、子供たちが青春を満喫できているように見えますから。」
学校の外に出て真っ直ぐ歩き続ける五条と後に続くアイン。
甘い物を食べたいという事でスイーツ店に案内し、五条の発言にアインは先ほどまで塞ぎ込んでいた事が嘘のようにはしゃぐ。
チリンと可愛らしいドアベルが2人を迎え、女性スタッフがゆっくりと近づき確認を取る。
女性スタッフ「二名様ですか?」
五条「いや、先に2人来てるよ。」
返答に察しがついたのかハッとした様子で席に向かうスタッフ。
アインは返答から自分たち以外にも席にいるのかと身構えながら尋ね、五条は口を開けずテーブルに指をさす。
指をさした先にはテーブルに2人の人影が見え、1人はテーブルに置かれているパフェを堪能しているようで、もう1人はその様子を楽しそうに見つめていた。
既に座っているテーブル2人に見覚えがあったのか、アインは近づきながら目を細めると見開きながら駆け出す。
アイン「先輩たち!?」
反応した2人はアインの方を向いて、手を振って声をかける。
???「アイン〜こんにちはぁ〜」
??「奇遇だね、一緒に食べよ?」
アインは目をこすりながら五条は後ろから着いていくように2人の座っているテーブルに到着し、促されるまま席に座る。
五条「あれ? 知り合いだったんだ。」
アイン「当たり前じゃないですか! 同じ学校の先輩ですよ!?
先生こそどうやって知り合ったんですか!?」
同じM.M.R.附属高校に所属するアインの先輩 ティアとナガ、学校故に知り合う事は多いのだが五条が知り合えた理由が分からず思わず尋ねた。
五条がティアとナガと知り合った理由はスイーツ店にたまたま遭遇して、そこで限定スイーツを食べる為にたまたま意気投合したことで知り合いになった。
五条とアインはナガとティアの前に座り、2人は事前に注文していたスイーツを食べ始めた。
アイン「うう、甘い。ティア先輩、こんな甘いのを5皿も食べてるんですか?」
ティア「う~ん、もっと頼もうと思ったんだけどぉ~」
五条「そんなにしつこいかな?」
ティアと五条の前に並んでいるスイーツの量を見て圧巻し、アインはナガもバイキングのようにも思えるスイーツを食べに来たのかと尋ねる。
ナガはわざわざ食べるほどでもないと返答し、ここに来た理由としてティアが好きと答えた。
ナガの返答に対してティアは照れながらも好きと答える。
アイン「...先生、友達ってそういうものなんですか?」
五条「2人がそうならそうなんじゃない?
僕にとっては仲良し過ぎると思うけど。」
アイン「そうですよね?」
アインは五条に同じ認識なのか質問して、五条は2人の在り方もあると答えながら自分の認識を答える。
ティアとナガはアインを連れて来た理由を五条を尋ね、その理由を答える前にアインが説明して友達がいないと答え意外そうな反応を見せる。
ティア「ふ~ん...」
アイン「それで、先輩たちはどうやって友達になったんですか?」
ティア「私たち~? う~ん...詳しく話すと長くなるけどぉ~
詳しく話すと長くなるけどぉ~私たちは明日も、明後日も会うって約束したの~それで友達になったんだよぉ~」
アインが求めていた答えとは異なる内容に、アインは思わず呆気に取られる。
ティアとナガは同じ学校で同じクラスメイトという点から休日じゃなくとも会えると言及するアイン。
ティア「そう~それ~!
明日も明後日も会うから、友達になるんだよぉ~」
アイン「それなら、先生たちだって友達ってことになりませんか?」
ナガ「学生と先生は『役割』が違うから。
明日も会える、変わらない友達っていうのは...人生を、ずっとフツーのものにしてくれるの。」
ナガの言葉にアインは感嘆するような声を自然と出ながらも、その意味についてよく分からない様子を見せているもののナガはその内分かると答える。
アインの疑問に答えている間でティアが思わず持っていたフォークを落とし、ティアのそそっかしさに楽しそうに会話しているようだ。
アイン「......先生。」
五条「何?」
アイン「私にもし友達ができても、あそこまでの関係は無理そうです。」
五条「僕も無理だね。」
親し気な2人の様子を見て五条とアインはその仲の良さを見て、2人は友達ではなく親友...下手したらそれ以上の関係のように思えた。
楽しそうに青春を謳歌しているティアとナガを見て、アインは羨ましそうに眺めている。
五条「ちょっと極端すぎたかなぁ~?」
偽りの夕暮れの空を見上げながらポツリと呟いた五条は、ティアとナガの友達という価値観は乖離しすぎていたのかと反省していた。
五条に続いてアインはトボトボとゆっくりと歩き続けており、その足取りは疑問を抱えているようであった。
その様子に気付いた五条は見上げながら後ろに目を向け声を掛ける。
五条「まだ何か思うところがあるの?」
アイン「はい...友達ってなんなのか分からなくなって...」
アインの返答を聞いた五条はティアとナガを合わせたのはミスだったかと、自分の行動に頭を抱えていた。
五条の様子を見たアインはふと、何を思ったのかどんな友達という価値観を持っているのか気になった。
アイン「先生も、友達がいるんですか...?」
五条「いるよ。」
アイン「いたんですか!?」
五条「何その反応。」
キレ気味に反応する五条をスルーして、アインはどんな友達が居てどのような関係性を持っているのか改めて尋ねる。
アイン「どんな友達がいるんですか?」
五条「......。」
アインの質問に五条は少し押し黙ってしまう。
同時にゆっくりと進めていた歩を止めて、再び仮初の夕暮れに目を向ける。
五条の横を陽気な風が横切り、続いて清廉ながら温かな風が後を追う様に続く。
その風を見守るように振り返ると、自分の両側から若葉を乗せた青くも生き生きとした風がゆっくりと続く。
自分の横を通り過ぎた風が運んだ若葉の一枚を、五条にゆらゆらと落ちて手のひらに落ちる。
五条「僕と同じ悪ふざけが好きだけど、変なところで真面目な奴さ。
だけど頭が良いキャラ被ってる癖に、何でもかんでも一人で抱え込むバカ。」
アイン「バカ...?」
陽気な風と温かな風が消えて、若葉を乗せた風は五条の元から離れていくが、やがて勢いが無くなって地面にゆっくりと落ちる。
五条「そうさ、バカだけど。それでも居なくなった時に気付くんだ。」
五条の手のひらに乗った若葉も、風になびかれて空を舞いながら地面に落ちる。
孤独を感じながらもその元凶、類稀なる才を持って生まれ落ちたものの、ただ一人の親友の心すら理解できなかった。
優れた眼を持っていながら、ただ一人の親友の心すら視られなかった。
今でもその後悔は消えず、己を戒める罪を背負い、呪いという鎖で縛っている。
五条「『寂しかったんだ』って。」
アイン「......。」
アインはそれ以上聞かなかった。
告げられた言葉はとても短く、どんな生を歩んできたのか全く分からない。
それでも長い間、眼前にいるひょうきんな男は孤独に苦しんでいたのだろう。
何日か、何か月か、何年か...そんな事は分からないが、彼も彼で自分とは違う悩みを抱えていると分かる。
五条「結局、友達って他人とかの価値観で決まるものじゃないんだよ。
相手が友達のつもりじゃなくても、自分は友達かもしれない。」
アイン「でも...それってとっても恥ずかし」
五条「それこそ、ちゃんと伝えないとダメじゃないかな?」
離れている2人の間に風が横切り、服と髪が揺れ動く。夕暮れを照らす暖かい空気を乗せた風が体に当たり心地よさを感じる。
アインから見て、五条は言いよどむ事なく口を開く。
五条「ライちゃんとツバイちゃんたち、一緒に居て楽しいんでしょ?
恥ずかしくて、それで言い出せなかったらずっと辛いよ。」
その言葉に、アインはこれまでの学園生活を振り返る。
マルチャーナの講義の間、よだれを垂らしながらお菓子の名前を口にする可愛い先輩のライ。
真面目で殆ど勉強しているけど、こちらの話題に乗ってきたり遊びに付き合ってくれる同級生のツバイ。
面倒見が良くて服のデザインについて真剣に聞いてくれるライと同じ先輩のトリセラ。
確かに、自分の身の回りにいる人が居なくなるのは寂しい。
それに比べて、ずっと殻の中に閉じこもっている方が窮屈で仕方ないと感じ、迷っていた事がバカバカしくなったのか。
アインの顔からは吹っ切れた様子を見せ、瞳には光が宿っていた。
アイン「ありがとうゴジョ先、私吹っ切れました。
試験が終わったら、皆に友達になってくださいっていいます!」
アインの表情を一瞥した五条は、立ち止まっていた足を再び動かして新たな目的地にアインを連れて向かう。
アインはただ首を傾げながらも、淀みのない軽い足取りでついて行く。
次の話全くできてない...どうしよ...
すみません、次回の執筆の為に今話のにけさんぽはお休みにしますorz