今度は200あった
混迷
なんてことない、いつもより楽なパトロールの筈だった。
防衛のイベントで人が集中していたおかげか、市街地にはあまり人は見られずこのまま帰ると思っていた。
「緊急事態! 緊急事態! アークにラプチャー襲撃!!」
自分の頭上にあった空に穴が開いて、そこから雪崩のようにラプチャーが入ってきた。
かつてアークにラプチャーが進行してきた事など、一度もなかったのに。
その脅威が、自分の背丈を3倍も上回る存在が眼前に聳え立ちスパークを走らせている。
両対の青い光が収束して、市街のビルに向けられ放たれるその刹那
アークの中でも一際目を引くビルの最上階に建てられていた看板が、ラプチャーに突き刺さり火花を散らして爆散する。
ミランダ「これは...!?」
「大丈夫ですか!?」
看板が飛来した方向と同じ方向から、自分たちに向けた声が耳に届く。
脊髄反射で振り返ると総力戦で救助されたニケ、マリアンがこちらに駆け寄っていた。
ポリ「貴方は...確か...。」
マリアン「こちら、特殊別働隊 カウンターズ所属のマリアンです。
非常事態につき援護します。」
後から続いてラピ、アニス、ネオン、そして彼女たちを束ねる夏油も到着した。
彼女たちはラプチャーが上空から飛来してくる光景に、ただただ信じられず戸惑いを隠せない様子で、夏油は早急に対処するように行動を起こす。
アニス「取り敢えず、会社に行きましょう!
三大企業には非常時でも連絡できるよう、緊急回線があるから。」
夏油「いや、エニックに会いに行く。
アークを管理しているA.I.ならば、この事態を解決できる案がある筈だ。」
エニックの元に向かい、アークに侵入してきたラプチャーを殲滅及び、撃退する方法があると考えての提案に、ラピたちは意義は無く市街地を横切る形で負傷者を救助しながらエニックに合流すると決定。
ミランダ「まっ、待って下さい!!」
ポリ「私たちも同行しますよん!」
歩き出そうとしている彼らの足を、声を大にしてポリとミランダが引き留める。
ポリ「私たちは普段からパトロールしているんです。
ですから、エニックがいる道まで案内できますよん!
長年アークの治安を守ってきた彼女たちの誇りだろうか、否、絶対の自信を持ってポリは夏油たちをエニックの元まで導くという。
エニックまでのルートはラピも知っているが、それでもポリの方が抜け道や回り道などのルートの正確さが上。
夏油「悪いが、君たちは市街地の周りの道を回ってほしい。」
ミランダ「どうしてですか!?」
夏油「アークを知っている君たちに連れてもらえば、エニックの元まで直ぐに移動できるだろう。」
ミランダ「だったら!」
夏油「だがその間にも命が危機にさらされている。
君たちは少しでも多くの人々を、ラプチャーから守って欲しいんだ。」
市街地中心に人が密集していることは分かる、しかし市街地の周りに人がいないという証明にはならない。
夏油はアークの道を知っているからこそ、人が居そうな場所を探して取り残されている人々を救助して欲しいと頼む。
ミランダ「しかし!」
夏油「戦闘なら心配ない、伊達に何度も地上から生きて帰って来たんだ。
市街にいるラプチャーの相手は我々がしよう。」
再び夏油は市街を横切るルートに体を向けて歩き出していく。
この状況の打破も重要だが、
ポリ「分かりました、それではラプチャーの戦闘お願いしますよん!」
ミランダ「皆さん、どうか死なないで下さいね!」
背中越しに並んで敬礼したあと、武装を構えて市街地を二手に分かれて捜索を開始する。
そして市街地に向かっている夏油にネオンは尋ねる。
ネオン「よろしかったのですか? A.C.P.U.の言っていた事も一理あったと思うのですが...」
夏油「穴の起点は市街地の中心、ラプチャーが集中する以上侵攻をせき止めるにはどの道市街地を横切るしかない。
それでも彼女たちは救える命を一人でも多く救って欲しいんだ。」
マリアン「そうですね。」
夏油「それに...」
本来であれば少しでも戦力を補強した上で、ラプチャーの侵攻に対抗して部隊を集結させる。
それでも夏油がポリたちを行動を分けた理由は
夏油「もう出し惜しみしている場合じゃないからね。」
自身の術式を問題なく行使できる環境が欲しかった事。
この極限状態、この世界でも死の淵に立てば呪霊を目視できるのであれば条件が既に整ってしまっている。
その為にもポリたちに救助がてら、呪霊目視のリスクを減らすように務めた。
アニス「そういうことね。」
ラピ「指揮官、指示を。」
夏油「これより市街地を通過し、ラプチャーを殲滅してエニックに合流する。
その道中に負傷者を確認した場合は救助する。
皆は救助をメインに行動してくれ、戦闘は私がする。」
夏油の背後から数十体の呪霊を解き放ち、アーク上空から状況を把握しラプチャーを殲滅しながら人命救助に取り掛かる。
確認するとアーク市街にそれぞれニケの部隊が展開しており、それぞれラプチャーと交戦し人命救助に務めていた。
他部隊を援護しながら目的地に向かっていく夏油たち、その姿を目の当たりにした他部隊のニケには総力戦をも大勝を飾った彼らの闘志から士気が向上していった。
混乱は、市街地のみならず校内にも際限なく広がっていた。
絶叫、嗚咽、恐怖、
負の感情がひしめき合い、互いを潰してでも生き残ろうともがく雑踏が高校を渦巻き包む。
ただ彼一人という
五条(あの穴、方向は市街地の方か。
恐らくど真ん中に穴が開いてそこから入ってきてるな。
戦力は補強したって話は聞いたことあるけど、アッチは際限無いから量の差が広い、分が悪すぎる。
加えてこっちは中に入った奴らと外の奴らを対処しながら、穴を塞ぐ必要がある。)
現状分かる分の戦況を頭の中で思考して、まとめて圧倒的不利下の中で勝つ方法をリストアップする。
まずこちらの被害を最小限に抑える為、外にいるラプチャーの侵攻を止めるため穴を中心に防衛。
これで数の限りは制限がつく。
次に内部に残っているラプチャーを排除しつつ、爆破で空いた穴を完全に塞ぐ。
この間に地上で防衛している部隊が倒れる前に達成する必要がある。
術式が使えない以上、地上に出て防衛するのは最終手段。
現在自分ができることはあるにはあるが、それには一人だけの力では必ず実現しない。
多くの人手が必要になる。
五条「マルチャーナ、実際に生徒を指揮した経験はある?」
マルチャーナ「いえ...ありませんが...
一体何を?」
五条「ここにいる参加できる生徒全員でアークに来たラプチャーを迎撃する。」
その返答を聞いたマルチャーナは目を見開き、全身が膠着するような錯覚を覚える。
生徒と言えど無断で指揮した上戦闘させる、私欲で軍部に匹敵する戦力を扇動し戦闘に介入する行為は重罪に課せられる。
禁固刑など生温いものではなく、最悪反逆やテロリズムの弾圧を理由に極刑や死刑もあり得る。
そんな考えを簡単に口にしてしまう五条に、マルチャーナは必死に制止する。
マルチャーナ「そんなことしたら...っ! 一体どんな罪に問われるか分かりません!!
私たちが今すべきことは、生徒と来場している方々の命を保証することです!」
五条「でもさ、結局このたちはラプチャーと戦わなきゃならないんでしょ?
それに戦うことが全てじゃない、防衛したメティスのイベントがあるからいつも以上に人が密集している所にラプチャーが攻め込んだらどうするの。」
マルチャーナ「それは...っ。」
命に優劣など存在しない。
それでも優先するべき事を見失うのは愚の骨頂。
五条の考えに全て賛同する訳ではないが、一人でも多くの人を救いたいという気持ちはある。
五条「強制はさせないし、誰も死なせない。
絶対だ、約束する。」
初めてだろうか。
サングラス無しにこの教師の目を見るのは。
青空か、澄んだ水晶のような綺麗な瞳には、真っ直ぐな光が宿っている。
咄嗟に市街に向かって人々を救うなどと、普通の神経なら思いつきもしない。
それどころか彼の内に秘めている考えからは、誰も死なせないという確固たる決意が滲んでいる。
私はこの人がどのような人生を歩んだのか、どんな経験をして教師になったのか全く知らない。
それでも何故だろうか、彼は張りつめてくる戦いの空気に慣れている印象を与えた。
マルチャーナ「......分かりました。
ただし、約束を絶対に守ってください。」
五条は頷き承諾し、緊急停止してシェルターになっているトレーニングルームに集まった生徒に向けて宣言する。
五条「現在、アークの空を投影するエターナルスカイが崩壊して、市街地上空に出来た穴からラプチャーが侵攻を開始している。
今から話すのは、僕の勝手な行動だ。君たちは僕の行動に対して同行と拒否の選択ができる。」
トレーニングルームで段差がある台に立って、生徒たちに呼びかけてきた五条に生徒全員は困惑の表情が隠せず互いに顔を見合う。
五条「僕はこれから、侵攻してきたラプチャーを殲滅する為に市街地に向かう。」
五条の呼びかけで静まっていたトレーニングルームに、ざわつきで騒がしくなり動揺と困惑が混ざり合う。
そしてそれは、彼と共に市街地に向かうということを意味をしていると気付いてからは、拒否する生徒が大半だった。
蹲る者、尻もちをついて後退りする者、
閉鎖空間は更に混沌と化す中、指揮官服を身につけた人物が五条に向かって話す。
「全くこれだから、妙な正義感を持つ人は余計事態を混乱させようとする。
指揮経験も無い貴方如きが、彼女たちを適切に指揮できるのですか?
それとも貴方は、この場にいる生徒全員に死んで来いと言っているのですか?」
この一言で更に雑踏が広がり、やがては五条に対して罵詈雑言が飛び交ってはその声が秒刻みで倍加していく。
数の濁流、普通ならば逃げ出さねば潰れてしまうような巨大な人と負の感情の波。
この男はそんな物とうに飲まされている。
五条「僕はあくまで一人で行くと言っただけだ。
彼女たちがついて行くかは自由とも言った。
それに侵攻が続けば、いつこっちも被害が及ぶか分からない。」
「ラプチャーは市街地上空から現れたのでしょう?
ならばニケ搬入口が至る所にあり、補充されたニケ全軍を送り出せる。
貴方のような素人が行かずとも、事態は直ぐに沈静化するでしょう。」
五条「素人質問で悪いけど、生存者がいるかもしれないビル群で大軍でドンパチすんの?
しかも地上での訓練しか受けてないんじゃ、アークで戦闘しながら救助なんて尚更厳しいでしょ。」
物量で制圧すれば確かに早期決着に繋がる、その代償として生き残れる筈だった人命は失われ、アークの建造物が破損し周辺の建造物も崩壊する危険性がある。
アークの存続で考えても、市街地となれば大勢の死傷者の発生と行き場と住処を失った人々が居所を失い失業者が発生するリスクが大きすぎる。
この指摘に対して、軍服を身につけた男は苦悶の表情で口が堅く閉ざされる。
2人の論争を完全に止めたのは、震えながらも前に進みたいという決意を胸に抱いた少女の足音だ。
トリセラ「私...五条先生についていきます...!
私に何ができるか分からないし、足も引っ張るかも知れないけど...
このまま黙って何もしないと、きっと後悔することになるのは分かります!」
彼女は変わりたかった。
弱い自分を、立ち止まっている現状を、いや逃げ続けている今を変えたい。
学校の試験も大切だが、彼女がニケになった理由は人々を守ること。
今のようにくすぶって逃げているのが夢などではない。
そしてトリセラの宣言を起点に、続々と声がが上がる。
ライ「私も! 行きたいスイーツのお店が無くなったら嫌だもん!!」
ツバイ「私も、人を見捨てるなんてしたくありません。」
アイン「私も市街には大切な物があるのに、このまま黙ってられない。」
トリセラ「皆...。」
「私も...行きます。」
「アタシも!!」
「僕も...戦闘は苦手だけど救助なら...!」
ライ、ツバイ、アインにも立ち止まるつもりは毛頭なく、他の生徒たちも続けて手を上げていく。
手を上げられなかった生徒もいたが、それでも半数以上の生徒が市街について行くと集まってくれた。
五条「もう一度確認するけど、これは僕の独断だ。
君たちは負傷するかもしれないけど」
アイン「構いませんよ、というかあんなに焚き付けておいて今更残れなんて言いませんよね?」
ツバイ「五条先生は身勝手ですからね。」
ライ「凄くうるさいし。」
五条「何で僕貶されてんの?」
最初は有名な夏油が来なくて落胆していた生徒たちだが、講義中に横からアドバイスしたり悩み事を相談したりと面倒見は良く手際の良さからその実力は確かにある。
講義中に声をかけたりと喧しかったが、それでも普段の学校では味わえなかった時間を過ごすことができた。
トリセラ「それでも、私たちは五条先生が来てくれてとても楽しかったです。
だから、また私たちの教室に戻って教師して下さいね。」
彼女たちにとっては短く、なんてことないが、とても楽しい日常だった。
だからこそその日をもっと送りたい、一緒に謳歌したいと約束する。
勝手に取り付けた約束に、五条は頭を掻いて微笑むも直ぐに顔つきが真剣となる。
五条「グループは市街と校内で二つに分けて、
市街グループはラプチャーと交戦する戦闘班、負傷者を救助と搬送する救助班。
そして校内グループは負傷者を運搬と治療をする治療班、シェルターから人々を守る警備班に分かれる。」
市街グループは挙手してくれた生徒全員で構成されており、戦闘班を五条、救助班をシェルター行きのエレベーターの位置を把握しているマルチャーナが担当する。
そして校内グループはこのトレーニングに残りつつも、人を助けたいと進んで参加した生徒で構成、彼女たちを導く人物が必要なのだが五条かマルチャーナが残る訳にも行かなかった。
????「私が校内に残り指示を出します。」
マルチャーナ「貴方は...?」
????「中央政府 ニケ戦術課 所属 セルバンと申します。
救助活動なら、以前カリキュラムを作成しました。
戦闘指示は疎いかもしれませんが、救護なら。」
五条「ありがとう、凄く助かる。
戦闘面は各地に配置されている警備ロボをここに集めればどうにかなる。
救護面が心配だったが、何とかなりそうだ。」
ニケの戦術やカリキュラムを作成している一人であるセルバンが今回校内グループを束ねるリーダーとして残り、運び込まれた人々の治療と警備の指示を急遽担当することになった。
五条「よし、行くぞ。」
マルチャーナ「ご武運を。」
五条とマルチャーナ率いる市街グループは、弾丸飛び交い硝煙漂う市街地へ駆け出していく。
その後ろ姿を、生徒たちは勇ましく思うだろうか、それとも死地へ赴く愚か者だと思うだろうか。
人それぞれ感じる思いは異なるだろうが、誰一人その後ろ姿に対して口にすることは無く見守る。
セルバン「......我々校内グループは、シェルター内に集まる負傷者や避難者を受け入れる準備を進める。
先ずは周辺の警備を盤石にするため、警備班は校内に配置されている警備ロボットをここに集結させてほしい。人員はグループの半分を、校内の階それぞれと校庭にそれぞれ分かれて探してくれ。
救護班は治療用具や洗面器、寝かせられる敷物やベッドの準備だ。」
セルバン率いる校内グループも万全の対策をもって受け入れる為、各自準備に取り掛かる。
セルバン自らも救護班と一緒に物を運搬しながら、必要な物を集めていく。
時は夏油、五条が行動を起こす4時間前、場所は変わりアウターリム、犯罪と欲望がひしめき合いながらも人々が今日という日を必死に生きている場所。
その中でも一際目立つ建造物が一つ存在する。
名を フォクシー・コンサルタント 。
最近アウターリムに突如として出現した人材派遣と育成を目的とする企業であり、業務内容は警備や掃除、地図の作成や情報の収集から、機械修理に事務仕事と多種多様。
従業員の情報によると仕事自体は別に危険な物は無く、危険地帯に向かう場合は護衛をつけたり、労災やボーナスなどの福利厚生もある。
どれだけ叩いても埃すら出てこない、真っ白な企業。
設立に至るまでの経緯が誰一人分からない事が唯一の不思議である。
その会社の社長室には、会社から漂う筈の無い硝煙が昇っていた。
フォクシー「これはこれは、随分なご挨拶ですね。
ヘッドニアのリーダー、ロザンナさん。」
ロザンナ「......。」
会社の社長を務めるフォクシーの顔を弾丸が掠めるように発砲し真横に弾痕を残したのは、アンダーワールドクイーンの一人であるロザンナ。
その表情はいつも見せる余裕が消え、瞳には怒涛の炎が渦巻き鬼気迫る。
ロザンナ「無駄話は嫌いなの、本題に移らせてもらうけど。
コインラッシュの警備を寄越したのはアンタ?」
フォクシー「ええ、確かに。我々の従業員を警備に当たらせました。
それが何か。」
ロザンナ「ああそう、ならもうクロね。」
ロザンナの銃口が今度はフォクシーの眉間に向けられる。
迷いなく引き金を引いていくロザンナ、ロザンナの表情を見て嘲笑うような笑みを向けるフォクシー。
???「待ってください、貴重な情報源を殺してどうするというのですか?」
フォクシー「おやおや、今度は清明会のサクラさんですか。」
ロザンナの強行を止めたのは同じアンダーワールドクイーン、清明会を束ねるサクラ。
ロザンナが向けていた銃口を掴んで下ろし、ここに来た目的をもう一度伝える。
サクラ「今はこの会社の素性を探している場合ではありません。
私たちは何故、エンターヘブンの目的や行動をいち早く察知して対応できたか伺うのが先決でしょう?」
アンダーワールドクイーンはそれぞれ独自の情報ルートで、最近エンターヘブンが手段を選ばず資金集めに奔走しているということ知った。
その事で次の目標とされたのがアーク内で最も資金が行き交うコインラッシュであり、その中に入り込んだエンターヘブンのメンバーを洗い出そうと、みかじめ料を理由に潜り込もうとする。
しかし彼女らよりも早くフォクシーがそのことを感づいていたのか、アーク支部のフォクシー・コンサルタントが警備員を過剰なまでの人員を派遣したことを知った。
今回彼女たちは、何故エンターヘブンの目的を知れたのかという理由について聞きに来た。
あわよくば協力を持ち掛けるつもりだったようである。
ロザンナは舌打ちしながら銃口を下げ、サクラはフォクシーの前に立って情報口を伺う。
サクラ「貴方はどうやって、エンターヘブンの動向を探ることができたのですか?」
フォクシー「教えてもいいのですが、我々も情報を取り扱い食い口にしています。
タダ、というわけにはいかないでしょう?」
この時に取引を持ちかけてきたフォクシーに対し、サクラは若干顔を強張らせて難色を示す。
最悪アンダーワールドクイーンの権利を行使して、情報を開示してもらうことは可能だが、今後アウターリムのみならずアークにもその情報収集能力が活かせると考えると、フォクシーの要望に応えておきたい。
サクラ「...分かりました、一体何が」
サクラの言葉を遮るように、社長室の扉を蹴破って来たのは最後のアンダーワールドクイーンのモラン。
牡丹会の頭目であり義理人情を胸とする侠客。
彼女の登場に全員の顔が引き攣り気味になっている。
ロザンナ「アンタさぁ、何でドア蹴破るわけ?」
モラン「そりゃあ、この建物から銃声が聞こえたからだよ!!
そしてこの中にいるチンピラに筋ってもんを叩き込むんだ!!」
サクラとロザンナはフォクシーがエンターヘブンの行動を先読みしているという情報を聞いてここに来たが、モランに関してはフォクシーに関して情報収集している時、通りすがりでやって来たとの事。
モランの説明を聞いて、サクラは眉間を摘み、ロザンナの額には青筋がたっている。
モラン「ところでここで銃を撃ったチンピラは何処にいるんだ!?」
ロザンナ「アンタ、いい加減黙って。」
モラン「何でだよ!?」
静かになった筈の社長室は、モランの介入によって再び騒がしくなる。
主にロザンナとモランが騒がしくなっている中、フォクシーが口喧嘩を遮るように呼びかける。
フォクシー「元気なのは結構ですが、よろしいのですか?」
フォクシーが呟いた言葉の意味を問いただす前に、轟音が答えを示す。
アーク市街地では耐震性が保証されている為、あまり振動しなかった。
だがアウターリムは例外で、振動が全体に響き渡り異常事態だと直ぐに分かるような音が、裏の国の女王を突き動かす。
サクラ「...話はまた今度。」
フォクシー「ええ、お待ちしております。」
ロザンナ、サクラ、サクラは轟音の正体を探る為に、掛け出すように社長室を出ていき、その背中をフォクシーは手を振って送り出す。
机に置かれている固定電話のボタンを押して、部下が仕事している事務室に電話を繋げる。
フォクシー「私の部屋の扉を新しくするように手筈を。」
社長室の扉が壊れたので新調する連絡を終えて、固定電話のボタンを離した。
そして光が差し込まない背の窓を見つめ、誰かと会話をするかのように独り言を呟く。
フォクシー「貴方の予期した状況になりましたよ。」
その発言はまるで話している相手が、この状況になる事を知っていたような口ぶりである。
しかしその顔は優れず、表情には陰りを見せている。
フォクシー「十分にとどめる事は叶いませんでした。
こちらの策をぶつけてでも突破するとは...」
懺悔か、後悔か、顔に映る影はより一層濃くなっていき、目元が見えなくなっていく。
フォクシー「しかし、ここで終わるつもりなど毛頭ありません。
ええそうでしょうとも、ここで終わってなるものか。」
抱いていた念は消えて、瞳は燃えては火花を散らす激しさを見せる。
誰に向けた感情なのか、何がフォクシーを突き動かすのか。
フォクシー「
あの方に刃向かう存在がいるというなら...
じわり、じわりと追い詰めて甚振り...
この手で根切りして差し上げます。」
「失礼します、ドアの取り替えに...?
同時刻、地上、廃墟となったビルの屋上に、黒いローブを身につけた人物が大きな穴から街の輝きが漏れている光景を見て、口角を吊り上げて微笑んでいた。
最近異世界のんびり農家という作品にかなりハマってしまいました、好きすぎて一期のみなら3周してます。
ちょくちょく挟まれるデフォルメ絵がとても可愛いんだ。
就寝中にクエンシーが侵入するも、起きていた夏油に通報されてA.C.P.U.に連行されて行った。
静かになった指揮官室のベッドで再び就寝し、再び眠りについて体と精神を休める。
五条「傑〜起きてる〜?」
今度の来訪者は五条であり、何の断りもなく入り込んで来た。
呼びかけた夏油の返事が無い事から、寝ていると察知して指揮官室を漁り始める。
五条「アレは無いかなぁ〜っと...」
我が物顔のようにあちこち探し、机の上にある物を中心して探し、引き出しを出してペンを一本取り出す。
指揮官はちゃんとベッドで寝ているのでしょうか?
さっき凄い爆発音が聞こえましたが、何とか眠れているのでしょうか?
そんな事を考えている中、指揮官室から絶叫が聞こえて来た。
マリアン「!?」
マリアンは自室を飛び出して指揮官室へ向かっていく。
声は男性、夏油では無いがそれでも声色から苦悶の感情が滲み出しており緊急性がある。
マリアン「指揮官!!一体何が...」
私に続いてラピたちも指揮官室に入って、銃火器を構えながらクリアリングする。
私たちが心配していた指揮官は、傷一つなく問題など何処にもありませんでした。
五条「いででで!!ギブっ!!ギブだって!!!」
指揮官は親友の五条さんに背を向け右手で首を左手で右足を締め上げ又裂きする関節技をしていました。
アニス「プロレスごっこしてんの?」(≖ࡇ≖)
五条「んな訳無いでしょ!? 誰でもいいから止めてって!!」
五条さんは本当に痛いのか涙目で懇願していますが、この状況の中心の指揮官はとても笑顔です。
笑顔なんですけど怖いです、全然笑ってないです。
アニス「指揮官様に何したの」(≖ࡇ≖)
五条「何もしてないって!!!」
ラピ「指揮官。」
夏油「寝ている間に落書きしようとしたから撃退している。」
五条「なら離せって!!!!!」
後から聞くと、寝ている指揮官の顔に落書きをしようとした五条さんを、実は寝れずに起きていた指揮官に止められ、
術式を使う間もなくこの状態になったそうです。
五条「あ゛あ゛あ゛〜、ひどい目にあった...」
確かに高専時代に落書きして喧嘩になった事もあったが、今日みたいに怒らなくてもいいだろ。
たかだか一日中落書きに気づかず、授業や任務に出てただけだし、気づかない傑が面白かったけど。
体の節々が痛む俺は、ベッドに倒れるように飛び込み、そのまま眠った。
俺の第六感が警報を鳴らしている。
本来俺以外にいるはずの無いこの部屋に、なぜだか人の気配を感じる。
3人ほど居るはず、俺はその感が正しいか確かめる為、照明をつけた。
ラプンツェル「あら?」
紅蓮「おや?」
スノーホワイト「ん?」
五条「......。」
居た。
1人は俺のベッドに抜き足差し足、
1人はこれから晩酌をおっ始めようとしてる。
1人は俺の冷蔵庫を勝手に漁って食っている。
五条「何してんの?」
ラプンツェル「最近冷えて来たので...私が温めてあげようと...っ...はあっ、はあっ...♡」
紅蓮「ただ地上での晩酌は退屈だと思ってね。
五条坊ちゃんもお酌ぐらいはできるであろう?」
スノーホワイト「腹が減ったからだが?」
これが
ラプンツェル「そんなに緊張せずとも...はあっ♡大丈夫ですよ...♡
ただ触るだけですから、じっくりねっとり触るだけですからっ!!♡♡♡」
紅蓮「五条坊ちゃん、おちょこはあるかね?
あったら嬉しいのだが...」
スノーホワイト「お菓子が多いな、もう少し食料の量を増やした方がいいぞ。」
五条(A.C.P.U.の番号ってどれだっけ...。)