ついに、この時がきた。
「ふ・・・・・・ふふふ・・・・・・!」
思わず笑い声が漏れる。
だがしかたないだろう。これが笑わずにいられるだろうか。
ニマニマと笑みがこぼれる俺の視線の先にあるのはスマートフォンのようなものの液晶画面。その右上に表示されている虹色に輝く石の数が30と表示されている。
そう、転生してから16年、ガチャをすることはできなかった。
そんな生活も、今日で終わりだ。
「11連召喚・・・・・・!この感覚、久しぶりだぜ・・・・・・!」
前世からガチャ廃人だった俺にとってガチャを封じられるのは何よりも辛かった。ソシャゲをバカにする奴もいたが、そんなのは気にしない。
何を大切にするかなんてのは人それぞれなのだ。ソシャゲのために俺は働いていたまである。
画面に映っているかっこいいドラゴンと共に描かれている少女、リアーナちゃん。ドラゴンテイマーで明るい性格の彼女はとても人気で二次創作でもよく見かけた。かく言う俺も彼女の優しさと笑顔には胸を打ち抜かれたものだ。前世では当てることが出来なかったけど、今迎えにいくから・・・・・・!
「こい・・・・・・来いッ・・・・・・!」
11連召喚のボタンを押し、「11連召喚します。本当によろしいでしょうか?」という確認ボタンも迷わずOKする。
前世と同じ召喚演出が流れていく。キャラを募集する紙が空をくるくると回り―――――虹色に光る。
「確定演出来たぁああああああああああああああ!!」
勝ちを確信する。
その勝利を確かめるべく、キャラが手に入るのを今か今かと画面に釘付けで見つめた――。
「はぁ・・・・・・もうすぐ成年か・・・・・・」
魔法が存在するファンタジーな世界に転生してから約14年が経った。この世界では科学よりも魔法が進歩しており、15歳で成人が認められる。田舎の村で農家の三男として生まれてきた俺は人生の選択を迫られていた。
俺には前世の記憶、すなわち日本で暮らしていた記憶がある。前世の俺は所謂ガチャ廃人というものでソシャゲに三桁万円以上の金をつぎ込んでいたぐらいには廃人だった。ガチャの虹色の確定演出にはパチンコをやってた時以上のドーパミンが溢れ出し、よりガチャにのめり込むようになった。そんな俺にとっては魔法はあってもガチャがない生活を続けていくのはいい加減辛いモノがあった。俺の口からは現実逃避に近い言葉が漏れる。
「ガチャ・・・・・・ガチャがしたい・・・・・・」
農家は長男が継ぎ、次男は地元の料理屋で働いている。俺はというとガチャ以外に特にやりたいことはなかった。親からは「早く独り立ちできるようにしなさい」とせっつかれている。
かわいい子には旅をさせよと言うが可愛い子ではなくても旅をさせるのがこの世界の常識らしく、家を継がない子は独り立ちして仕事を探しに行くらしい。魔法の才能があれば王都なり魔法協会なりの仕事にありつけるそうだが生憎田舎で育ったので魔法をまともに扱える人はいない。せいぜい肉体労働をするために魔力の働きを促して身体能力を多少強化するくらいのものだ。というかそれくらいなら俺にでもできる。畑仕事は散々手伝ってきた。
しかし家の手伝いをしながらギャンブルをしたり悠々自適な生活を送ることができるのもあとちょっとだ。15歳になれば嫌でも家から追い出されてしまうことだろう。
「どうすっかな・・・・・・」
近くの森を散歩しながら考える。この世界には魔物と呼ばれるモンスターが存在するが、魔物の強さは空気に含まれる魔力によって変わるらしく、ここらで魔物が出たとしてもたいした強さではない。まあ、戦ったことないし怖いから出会ったら逃げるけど。
前世で言うところのイノシシとか猿みたいな扱いだな。田舎では出るらしい、知らんけど。
前世の記憶がある俺にしてみれば戦いというものには忌避感があった。アニメや映画では散々見てきているから別にグロいモノを見るのには抵抗がない。この世界でも魔物の死体などは見る機会があった。しかし、自分で殺せるか、という質問にはおそらくノーだ。蚊みたいな虫は全然殺せるがイノシシくらいの大きさの動物は殺したことがない。物語に出てくる、いわゆる異世界系と言われる作品の主人公の中では平凡な生活を送ってきたとか言っておきながらいざ異世界に転生したら簡単に魔物を殺したりしている人がいるが少なくとも俺には無理だ。剣とかまともに握ったことないで・・・・・・。
と、我ながら情けないことを考えながら歩いていると近くの茂みがガサガサと揺れた。
「・・・・・・!」
魔物か・・・・・・?
俺はすぐに逃げられるように腰を落として若干足を後ろに引いた。ガサガサと揺れたところから出てきたのは魔物ではなかった。
「手・・・・・・?」
見た感じ、人の手だった。
そしてその手は地面を掴むとゆっくりとこちらに近づいた。それにより頭と反対の手も茂みから出てきてどうやら人が這ってきているということが分かった。
「・・・・・・」
魔物は確かに恐ろしい。
が、時に魔物よりも恐ろしくなるのが人間だ。簡単に人を信用してはならない。いつでも逃げられる体制は崩さずに出てくる人をゴクリと唾を飲み込み見守る。ヤバい人なら即刻逃げなければ。しかし這って出てきたのは別の意味でヤバい人だった。
「み、水と、ご飯、を・・・・・・」
そう言い残してピクリとも動かなくなった。どうやら遭難していた人らしい。しばらく風呂にも入れていないのかかなり匂う。
「えぇ・・・・・・」
倒れているのは30代くらいの筋肉質な女性だった。まさか行き倒れだとは。
俺は持ってきていたバックから水筒のような役割を持つ魔道具を取り出して水を飲ませるために近づく。
「大丈夫ですか?水は飲めますか?」
「あ、ありがとう・・・・・・」
「ゆっくり飲んでください」
それから行き倒れていた人はゆっくりと俺が持っていた水と食料を得て息を吹き返したかのように起き上がった。
「ぷはーッ!生き返った!助かったぞ、少年!」
「よ、よかったです」
ワハハと笑いながら俺の肩をバ痛いくらいにシバシと叩いてくる。
めちゃくちゃ力つよいなこの人。
「私はエリサという。改めてありがとう。命の恩人くん」
「俺はハジメといいます」
エリサさんは体つきが良く、身長も180くらいあるか?前世だと軍人かなんかと思うくらいにはガッシリとしていた。
まあ魔物が出るこの世界で一人で旅をするならこんな体つきになるのも普通なのかもしれない。
「ところで、なんであんなところで行き倒れていたんです?」
「ん?ああそれはだな・・・・・・リテーネから王都に向かう途中だったんだが道に迷ってしまってだな。そろそろ食料も尽きかけたから高いところに登れば集落が見つかると思ったんだが・・・・・・その途中で限界が来たようだな」
「そ、そうなんですね」
エリサさんの話に若干引いてしまった。食料が尽きかけてから探すのか。
普通は食料に余裕がある内に探すモノだと思うが。
あれ、今の話何か違和感があるな・・・・・・リテーネから王都に向かったって言ったか?
「ん?リテーネから王都に向かったんですよね?」
「あぁ、そうだが?それより、ここはどこら辺なんだ?王都まではどのくらいだ?」
「ここはサコンの村の近くですね。そしてリテーネから王都までの道のりで言うと反対方向なので、むしろリテーネより遠くなってますね」
「・・・・・・」
あ、黙っちゃった。
「・・・・・・くく」
「・・・・・・?」
「・・・・・・ワハハ!またやってしまったようだな!しかしまさか反対方向だとは!」
えぇ・・・・・・。
またってこんなことが何回もやっているのか。
この人方向音痴にもほどがありすぎる・・・・・・。
「その方向音痴でよく一人で行こうと思えますね」
「まあ寄り道も旅の醍醐味だからな!道草は楽しむモノだ!」
「反対方向へ進むのは寄り道って言いますかね・・・・・・」
「ワハハ!小さいことを気にするな少年!強くなれんぞ!」
「痛い、痛いですよ!肩バンバン叩かないでください!」
いってぇなこの人のコミュニケーション方法。
俺はゴリラじゃないからもっと繊細に扱ってほしいものだ。
「―――っと。助けてもらったからには何かお礼をしなければな。しかし今私が渡せるモノなんて何もないな・・・・・・」
「あー・・・・・・いや、構いませんよ。お礼が欲しくて助けたわけじゃないですし」
「そういう訳にもいかないさ。命の恩人ともなればなおさらな。何か願いはないのか?」
「願い、ですか・・・・・・」
シェンロンか?
別に7つも玉を集めてはないんだが。
しかし、願いか・・・・・・。
ガチャがしたい。それが俺の偽りなき願いなのだがそんなことこの人に言ってもしょうがないしな・・・・・・。
「・・・・・・じゃあ、ちょっと話を聞いて貰えますか」
それから俺はエリサさんに自身の現状を語った。
もうすぐ成人して独り立ちせねばならないがやりたいことが特にないこと。強いて言えば世界を見て回ってみたいが弱っちい俺が旅をするのはキツいものがあること。雑談やらを交えながらも自分のことを一通り話し終わった。
「―――って感じです」
「そうか・・・・・・。少年は魔法を学ばないのか?」
「学べるなら学びたいですけど」
せっかくファンタジーな世界に転生した訳だしね。
「教えられる人は周りにはいませんし、魔法を学べる学校へ行くにはお金が全然足りません」
「ふむ・・・・・・確かに魔法学校は金に余裕のある商人の子供や資産家の子供が多いな」
「でしょう?」
話を聞いたエリサさんはうーんと悩み込んだ。
しばらくすると何かを思いついたように「そうだ!」と声を上げながら立ち上がった。
「私が少年に魔法を教えよう!」
「エリサさんが、ですか?」
「む?私に魔法が使えるのか疑っているな?」
「い、いや、そんなことないですよ」
疑っているのは教えられるかの方なんだが。
「ワハハ!いいだろう!私の魔法を見せてやろう!」
そういうとエリサさんの右手に魔力が集まり、手袋のようなものが現れた。その右手に現れた手袋で近くの木を軽く叩くと激しい音を立てて木が内側から弾け飛んだ。
「ええええ!?木が破裂した!?」
「うむ!これが私の魔法。この手袋を通して相手に自分の魔力を送り込むことにより内側から破裂させるのだ」
「す、すげぇ・・・・・・」
こんなの人間相手に使ったら瞬殺だろ。
「私には魔法があるから一人で旅をしていても危険は少ないのだ」
こんなことができるなら魔物相手も大丈夫だろう。
「どうだ少年?知ってもらった通り私は方向音痴でな、一緒に来て貰ったら助かる。その代わりに私は魔法を教えよう。もちろんタダで」
「・・・・・・!」
魔法を教わる機会というのは本当に貴重なものだ。
助けた相手が魔法使いで、さらに魔法を教えて貰えるなんていうチャンスは今後ないかもしれない。
「俺に魔法を教えてください、エリサさん!」
「うむ、良い返事だ!では王都に向かう前に少年の村によって旅支度を調えるとするか」
「あ、少年ではなくてハジメと呼んでください、エリサさん」
「分かった、ハジメ。ハジメも私のことをエリサさんではなく師匠と呼ぶように。一応魔法を教えることになるのだからな」
「分かりました、師匠!」
それからは師匠と共に村に戻り、家族に師匠と旅に出ることを話した。家族からは少し早い成人のプレゼントとお金を貰った。バックにキャンプセットと食料、水と貰ったお金を入れて師匠と合流する。
「ハジメは村の外へ行くのは初めてか?」
「いや、なんどか馬車で王都まで家族と行ったりしたことがあります。あとは出来た作物を他の村まで運ぶのを手伝ったりはしました。でも、こうやって旅をするのは初めてです」
「そうか。では冒険の始まりと行くか!」
そう言って師匠は歩き始めた。
「師匠」
「ん?なんだハジメ」
「そっちは反対方向です。さらに王都から遠ざかっちゃいます」
「・・・・・・ワハハ!危ない危ない」
「えぇ・・・・・・」
本当に大丈夫なのだろうか。
というか本当にこの人はよく今まで生きてこられたな。
まああれだけ強いし食料や水がなんとかなれば大丈夫か。
「改めて出発だ!」
「・・・・・・おー」
師匠の提案で馬車に乗って王都まで行かず歩いて行くらしい。俺に魔法を教えながら王都を目指すのが効率がいいそうだ。数週間一緒に旅をして魔法についての基礎を学んでいた。しかし以外だったのは、師匠は意外と教えるのが上手だったと言うことだ。
「ハジメは魔力を巡らせるのが上手いな」
「そうですか?」
「ああ。日頃から魔力を巡らせることを意識しなければできないな」
「あー、畑仕事とか手伝う時にはいつも意識してましたね。動きが楽になるので」
「普通は始めた頃は魔力の運用が上手く出来ずにやらなくなるものだがな・・・・・・」
そこは、ホラ。
せっかく魔法がある世界に来たからには魔法がどのようなものかは分からなくても出来ることはやっておきたかったし。前世の漫画やアニメでそれっぽい修行は時間がある時にやってはいたからな。
「思った以上に出来ているな。よし、とりあえず基礎はこのぐらいでいいだろう」
「ってことは!?」
「あぁ。ここからは本格的に魔法を教えていく」
「おお!」
ついに、魔法を教わることができる!
「魔法は大きく分けて3つのタイプに分けることが出来る。『杖型』、『道具型』、『肉体型』の3タイプだ。杖型は一般的な魔法使いのイメージで呪文の開発や継承を得意とする。『道具型』は自身の魔力により特殊な効果を持った道具を具現化することを得意とする。私の魔法も道具型に当たる。最後に『肉体型』は自身の肉体に魔力を込めるのが得意で、魔眼使いや髪を武器のように操る人がいる」
「おぉ・・・・・・」
こういう設定的なのワクワクするよな。
ハンター〇ンターの設定とかも好きなんですよ。
「ここで質問だ。道具型の魔法使いがどんなもの切り裂く剣を作り出すことは可能か?」
こ、この質問は・・・・・・!
「不可能だ」
「ほう?理由は?」
「人間の限界を超えているから」
「まあ概ねその通りだ」
ありがとうク〇ピカ・・・・・・!
予習はばっちりだぜ!
「あらゆるモノとは曖昧過ぎるし、具体的なイメージが出来ないモノを作り出すことは出来ない。それに人間には魔力が限られているから、仮にその魔法を作りだすことが出来ても魔力が足りないだろう」
ふむふむ。
「しかし、その魔法を作り出すことは難しくても、限りなくそれに近づけることは出来る」
「・・・・・・!」
制約だとか縛りみたいなやつキタ!
「魔法にデメリットやリスクを設定することにより魔法の威力を底上げしたり範囲を拡大したりすることができる。例えば・・・・・・この魔法は一日に一度しか発動できない、みたいな」
「それって人によってデメリットとかの重さって変わってきたりします?」
「・・・・・・そうだが、よく分かったな」
「へへ」
オタクなら分かりますよ。たくさん作品を読んできているからね!
「しかし師匠、自分の型が分かるものなんですか?」
「もちろん。色々方法はあるが・・・・・・」
コップの水に葉っぱ浮かべたりするやつもあるのかな?
「今回はコレを使う」
「それは・・・・・・板ですか?」
師匠が持っているのは金属で出来た板で魔道具なのか特殊な文字が刻まれている。
「この板は魔道具でな。魔力を注げば注がれた魔力の性質に応じて浮かび上がってくる模様が違ってくる。模様に応じて型を判別できるのだ」
「へぇ・・・・・・」
めっちゃ便利じゃん。
「持って、魔力を注いでみろ」
「はい、師匠」
言われた通り魔力を注ぐと板の中央に鞄のようなマークが浮かび上がってきた。
「これは・・・・・・?」
「私と同じ、道具型だな。ワハハ!師と弟子で型が同じとは運命を感じるな!」
「運命って・・・・・・確率三分の一じゃないですか」
「そうでもないぞ。杖型が一番多くて約6割近くだと言われているな。道具型は2割から3割ないくらいで、残りが肉体型だな。まあ珍しいから強いって訳ではないからな。杖型でも化け物のような人はたくさんいるぞ」
杖型が一番多くて肉体型は少ないのか。
でも話を聞けば聞くほど念能力みたいだな、この世界の魔法。
「道具型ということはなにを具現化するのか、そのモノにどんな効果を付与するのかは大切だぞ」
「道具・・・・・・効果・・・・・・。・・・・・・!!」
そこで俺に電流が走った。
まさか、いけるのか?
ガチャの魔法を作り出すことが、可能・・・・・・?
「うおおおおおおおおおおおおお!」
「うおっ!?急にどうしたハジメ!?」
「いや、なんでもないっす!」
「そ、そうか・・・・・・?具現化するものは具体的なイメージがないとできないからな。魔法の修行とは別に修行する必要があるぞ」
具体的なイメージ、だと?
そんなものはとっくに出来ている!どれだけ夢に出てきたか。どれだけ待ち望んできたのか!
ガチャが出来ない世界に転生したときは絶望しかけたが、それも今日、この日のために俺は生きてきたんだ!
思い出せあの形を。思い描け前世で何千時間と一緒だった相棒を!
「・・・・・・ッ!」
魔力を手に集中させイメージ通りに形作っていく。そして、それは単なる魔力の塊ではなく、実際の物として俺の手には慣れ親しんだスマートフォンが握られていた。
「き、きたあああああああああああああ!うおおおおおおおおおおお!」
「・・・・・・ば、バカな・・・・・・!?こんな短時間で・・・・・・!?」
短期間じゃねえ!こちとら前世では四六時中一緒で転生してからも悪夢のように毎晩夢見たんだい!
「・・・・・・ワハハ!まさかこんな才能がハジメにはあったとはな!師匠としては鼻が高いと言う物だ!」
「デヘヘ、でしょう?」
「まあ戦いの才能は死ぬほどないけどな!」
「うるさいですよ!」
前に一度手合わせして貰ったことがあるがコテンパンにやられてしまった。師匠曰く10歳の子供でも俺より強い人はいるそうだ。
し、しかたないだろう!前世でも全然戦ってこなかったし自分が戦うとなるとどうしても腰が引けてしまうのだ。
師匠は俺の手に握られたスマホをジッと見つめて問いかけた。
「ところで、それはなんなんだ?」
「・・・・・・!」
やべえ、なんて言おう!
作るのに夢中で何も考えてなかった!
「え、えと・・・・・・昔旅の商人に助けたお礼として貰ったもので最近まで持っていたんですけどもう使えなくなってしまった魔道具です」
「ワハハ!まさか私以外にもハジメに助けられた人がいたとはな!偉いぞ、ハジメ!」
「あ、ありがとうございます、師匠・・・・・・」
罪悪感でチクッときました・・・・・・。
でも仕方ないんや。本当のこととか言えないし。
「でもどんな効果を付与するのかは決めてあるのか?」
「はい、大まかには。細かいところはこれから考えて行くつもりです」
「ん、ならよし!」
今日はここまでにするかという師匠の言葉に同意してキャンプの準備を始める。師匠はあまり料理が得意ではなく『食べられればよくないか?』というスタンスがある。切っただけの野菜は料理とは言わない。なので料理は俺が担当している。俺のバックはプレゼントされた魔道具で実際の容量よりも多少多く入れることが出来る。そのマジックバックから食材を取り出して調理していく。その間にも俺の頭にあるのは魔法でガチャを再現することだけだった。
ガールズエデン。俺が再現しようとしている前世のソシャゲだ。
様々なソシャゲをしてきた俺だが一番多く金をつぎ込んだのがこのソシャゲだった。ガールズエデンはソシャゲ黎明期からスタートしており魅力的なキャラやストーリー、そして豪華な声優陣などでプレイしている人が多かった。ソシャゲ黎明期から始まっているためシステム面なども最初は問題が多かったが何周年も経つとファンからネタにされるくらいには愛されていた。
そして何よりガチャが酷い。何しろ天井が10周年まで実装されなかった。それゆえプレイしたユーザーからはガチャに天井がないなんてありえないと離れていくユーザーもいた。しかしそれこそがガチャ廃人達に火を付けた。酷い人は25万課金してもキャラを出せずにSNSで呪詛をまき散らしているのをみて愉悦を感じたり、チケット1枚で退けた日にはSNSに投稿して自慢するのが楽しかったゲームだ。
みんなにとっての神ゲーでなくても俺の中では神ゲーだったし、新しいガチャが来ればセルランで1位にくることが多いくらいには固定の客がいた。
しかしそれをどう能力に落とし込むか、それが問題だ。
ガチャを引くために必要な『霊魔石』および7つ集めると霊魔石に交換できる『霊魔石の欠片』は人助けしたり、ミッションの難易度に応じて獲得できるようにすればいいか。
課金は・・・・・・好きだからこそ無課金を強制すれば良いデメリットになるか。
そうして詳細を決めるのに2週間近く掛かり、ついに魔法を完成させることが出来た。その頃には王都も近くなりそろそろ師匠とはお別れの時が近づいてきた。その前に護衛を召喚しなければ・・・・・・。弱い俺はすぐ金を巻き上げられることだろう。
スマホの画面のロックを解除する。このスマホの認証は魔力によって解除でき、俺以外には開けることが出来ないようになっている。ロックを解除すると前世で見慣れたアプリアイコンが見える。『ガールズエデン』。やっとこの時が来た。アプリをタッチして立ち上げる。スマホの音量を入れると主人公の補佐をしてくれる初期メンバーのサナちゃんの声で「ガールズエデン!」というかけ声と共にスタート画面が現れる。
「う、うぅ・・・・・・!」
懐かしすぎて涙がで、出ますよ・・・・・・!
スタート画面をタップするとメニュー画面に移行する。メニューには『ホーム』『ガチャ』『編成』『クエスト』『ミッション』『強化』などがずらっと並んでいる。プレゼントボックスを触ると今までの行動の報酬として霊魔石を30個手に入れた。
「い、いよいよ、だな・・・・・・」
ガチャへ移行すると霊魔石召喚ピックアップとして『UR、リアーナピックアップ』と大々的に表示されている画面が映し出されている。
「り、リアーナちゃんきたああああああああああああ!!」
画面に表示されているのはかっこいい赤色のドラゴンとともに描かれている少女リアーナちゃんである。彼女は王国でもトップクラスの龍騎士で幼い頃からともに育ったドラゴン『ラドン』と共に活動している。明るく前向きな性格で笑顔が素敵な少女であり、ストーリーでは王国の裏で暗躍していた組織から逃げる際に主人公達を逃がすために孤軍奮闘してくれたり協力的な一面が多い。二次創作でも彼女は人気で相棒のラドンとともに描かれたイラストや曇らせ性癖がある人達からは明るい性格の彼女の泣き顔なども数多く投稿されていた。
俺も例に漏れずリアーナちゃんが好きだ。しかし、周年の直後にピックアップがきて手持ちの5万円じゃリアーナちゃんを引き当てることができずにSNSに呪詛をまき散らすだけのモンスターとなったのも良い思い出だ。
あのときの雪辱はココで晴らす・・・・・・!待っててねリアーナちゃん・・・・・・!
「こい・・・・・・来いッ・・・・・・!」
11連召喚のボタンを押し、「11連召喚します。本当によろしいでしょうか?」という確認ボタンも迷わずOKする。
前世と同じ召喚演出が流れていく。キャラを募集する紙が空をくるくると回り―――――虹色に光る。
「確定演出来たぁああああああああああああああ!!」
勝ちを確信する。
その勝利を確かめるべく、キャラが手に入るのを今か今かと画面に釘付けで見つめた。
URが出る確率は1%。ピックアップは0.8%。
「これは勝っただろ・・・・・・!」
長かった。ここまで来るのに何度くじけそうになったか。
ハズレ枠のサナの激甘カレーとかいうアイテムばかりが流れていく。
フハハ、しかし今の私はそんなことは気にしない!
10連が一瞬で終わっていき、ようやく最後の1枚となった。
ドク、ドク、ドク―――――!
心臓が高鳴る。ドキドキが抑えられない。
キャラの虹色に光った募集の紙がくるくると回転してようやく収まる。
「は・・・・・・?」
描かれたマークは王国ではなく和島・・・・・・?
下からマークが剥がれていき、着物を着た黒髪の刀使いの少女が現れた。そして初召喚のキャラのボイスが流れ始める。
「拙者は最強の剣豪を目指す旅を続ける、サナエって―――ああ!主殿ですか!?これはなんという偶然!主殿、これからよろしくお願いしますね!」
・・・・・・。
「あぁあああああああああああああああああ!すり抜けたぁああああああああ!!」