俺はもう、人間社会に属するのはやめた。人がいない世界で、一人で生きていきたい。

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第1話

「私は輪廻の神だ。貴様の運命は非常に面白い。特別に来世に望むことがあれば叶えてやろう」

 

俺は死んだ。ハンター協会において、あの獣の危険性を正しく認識していたのは俺だけだった。だが愚かな他の協会員は正常性バイアスで対策を怠った。その結果、俺だけが死んだ。なんで。他のやつらがしねよ。だがあの状況では、俺が奴と差し違えなければ子供たちがやられていたかもしれない。ただあの子供たちも守る価値があったのだろうか。

 

「俺はもう、愚かな人間社会に属するのは嫌だ。とにかく人が一人もいない世界で、得意の狩りをして暮らしたい。たった一人でだ。」

 

「ああ、そうだろうとも。その為には赤ん坊で生まれては何かと不便であろう。何から生まれるのかという話もあるしな。死んだときの状態で転生させてやろう。」

 

「ずいぶんと話が早いな。もしかして神は人の心が読めるのか」

 

「そうだ」

 

「心が読めるのなら、俺が話す必要もないし、この会見も意味のないのではないか」

 

「私は物語が好きなのだ。貴様の運命のような、尋常ではない物語が。私が貴様と直接関わることで、貴様の物語がより面白くなる。そして会話のない物語など退屈だ。そこに話すことの価値がある。」

 

「そういうものなのか。では敢えて話すようにしよう。」

 

「次の世界だが、核戦争後に自然が復活した世界でどうだろう。森の中に落としてやるから、そこにいる鹿なんかを狩って生きればよい。人間は絶滅していて、人とかかわることはない。核戦争後に世界がどうなるかはちょっと興味もあるだろう?」

 

「ああ、確かに人間はいなさそうだ。もう愚かな人間と関わるのはうんざりだ。俺は一人で生きていける。」

 

その言葉を聞いた輪廻の神は非常に満足気だった。

 

「便利なものを落としておいた。さあいってこい」

 

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目が覚めると、森の中だった。20メートルほど先に鹿がいた。こちらをじっと見ていた。どうせ逃げられるだろうがと近づくと、半分ほど近づいたあたりで脱兎のごとく逃げ出した。

 

鹿のいた場所には猟銃のようなものが落ちていた。「ほら鹿いるでしょ? あと銃も置いといたよ。 がんばってね」とあの神が言っているようだった。

 

一週間ほど暮らして、銃で二頭の鹿を仕留めた。美味しい。銃は変な形だが使える。肉食獣もいるだろうが、死んだ時に着ていた、熊の一撃も防ぐハンター協会特製アーマーもあるしなんとかなるだろう。

 

毎晩、目をつむるとあの時の光景を思い出す。腹が立ってきてなかなか眠れない。なんて愚かな奴ら。なんて酷い奴ら。

 

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「今回のビックフット探索キャンプツアーはやめるべきです」

 

「お前マジでビックフット信じてるの」

 

「がきじゃねーんだぞ。バカすぎ」

 

「いえ、ですからハンターの目撃情報もありますし、そのハンターの銃も紛失しているんです。今回はツチノコとかネッシーとは違って、知能を持った動物が武装してるかもしれないんです。」

 

「あのさぁ、知能を持った動物ってなに? そんなのが何で今になって出てきたの? そもそもでかいサルをこの山で見たことあるか? 親がいないのにどうやって生まれるんだよ。 犯罪者が山にこもってるとかならまだしも、目撃情報は約2mの大猿っていうじゃないか。 そんな犯罪者いないよ?」

 

「銃が無くなっていたのは」

 

「ビックフット自体が銃の紛失を誤魔化すための真っ赤なウソでしょ? 面白くてメディアが食いついたからゆるしているがね、本来なら警察沙汰だよ。そんなにビックフットが怖いなら、君来なくていいよ」

 

「いえ、自分もついて行って危険に備えます。」

 

「危険って あっはっはっは」

 

その場にいた全員が、俺を笑っていた。

 

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キャンプは一泊二日。問題は二日目におきた。

 

「うわーーーーーー」

 

キャンプ参加者の子供の叫び声。続く銃声。

 

「おい、誰が発砲した、状況を報告しろ」

 

返事はない。

 

「誰か状況がわかるか」

 

「東のほうで銃声がした。俺じゃない」

 

「いったいどうなっているんだ」

 

混乱していると、東側から協会員が

 

「うわああああ ばけものおおお」

 

と言いながら走り去っていった。東に何かいる。俺は銃を構え、警戒しながら東に進んだ。

 

油断は一切なかった。ただ相手が悪かった。一瞬の浮遊感。そして激痛。ビックフットが道具を使うかもしれないと思っていたが、罠まで仕掛けるとは。ハンターが獲物だと思っていた相手の落とし穴にかかるとは。なんとも滑稽だ。

 

腹に刺さった杭をみて、これは助からないと思った。だがまだ時間はある。種族は違えどハンターなら、獲物を早く回収したいはずだ。すぐに来る。仲間に呼びかけるより死んだふりをして油断させ、不意打ちで奴を殺す。

 

思った通り奴が来た。死んだふりで目を閉じているからわからないが、確かに大柄の二足歩行だ。

 

まだすこしだけ息がある程度の動きで、気づかれないよう自然に体を必殺の構えに持っていく。

 

今だ! 奴の体の中心めがけて、ありったけの力で角を差し込む。腹部を狙った右角は固い装甲に阻まれてしまったが、左角はビックフットの首をとらえていた。大量の血が噴き出している。

 

ざまあみろハンター気取りの猿め。瀕死のビックフットを横目に俺は意識を失った。

 

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「○○県×市で、ビックフットと呼ばれる巨大な猿が出現。非常に高い知能を有しており、銃や落とし穴を使って3鹿を殺害しましたが、うち1鹿のハンターによって殺処分されました。市はこの猿の死体を県立大学で解剖し、この危険な猿がどこから侵入したかを調べています。」

 

「続いてのニュースです。中鹿の進める露鹿の同鹿政策に対し、アメリ鹿のロシ・カーター国務長官は…」


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