「……不思議ですね」
遥か遠くの崖から、双眼鏡でベルゼビアとアスミディアの戦いを眺めるマリアが呟く。直ぐ側には護衛のミレーヌ。マリアと違い、視力が並外れているのか、視力に頼らずとも知覚しているのか。
戦闘の余波で森林を破壊している方向を黙って眺めていた……が、視線をマリアに移し、尋ねる。
「不思議、とは」
「アスミディアは、ナンバー1なのですよね?」
「……ああ」
「クレイモア……銀眼の戦士たち、その頂点。その認識で間違い無いですか」
「貴様……何が、言いたい」
ミレーヌの声に怒気が籠る。それはそうだろう。マリアは言外に“ナンバー1は、あの程度なのか?”と侮辱に近しい発言をしている。明確に侮辱の言葉が出る様なら腹に一発拳を見舞う事もするが……明言はしていないのがタチが悪い。
ミレーヌの様子に、見た目は成熟しててもやはり子供か、と認識しつつも、己の命が文字通り崖の淵に立っていることは把握し、慎重に言葉を紡ぐ。
「……私が見る限り、アスミディアの武器は卓越した指揮能力にあると見ました。彼女のカリスマ性……それを以てして緻密で正確な連携を周囲と取っている。故に……剣技は平易で連携の取りやすい、振り下ろしと斬り払いといった基本的なもの……で、合っていますか?」
「……まあ、そうだな。その見立ては正しい。だが」
憮然としたミレーヌの言葉の後を、マリアがそのまま続ける。
「それだけではない、ですよね。幾ら卓越した指揮能力でも、アサラカムに近しい体躯を相手に、それだけで渡り合えるとは思えません。アスミディアには何か……特殊な技能、あるいは……全力を出すのに条件がある」
マリアの推察に、ミレーヌは一瞥し、再び戦闘区域を眺める。
「概ね貴女の推察通りだ。他のクレイモアが居る以上、アスミディアは全力を出せないし、出してはならない」
言い切るミレーヌに対し、マリアは無言で先を促す。小さく溜め息を付いたミレーヌは淡々と話し始めた。
「アスミディアの実力について語る前に……私達クレイモアは大別して二つの属性……妖力解放をした際の特徴がある」
それを聞いたマリアは、この大陸に来る前に目を通した資料の事を思い出す。
「確か……攻撃型と防御型」
「そうだ。だが大別しているだけであって、そう大きく差異は無い。攻撃型は妖力解放で身体を変形、身体能力を向上させ、防御型は身体の再生や妖気の感知や同調が得意、そしてどちらの型もある程度は同じ事ができる」
「成る程……」
「ああ、昔は特殊型と呼ばれた者も居たな。こちらについては名前だけしか知らないので説明はできないが……すまないな」
「いえ、お気になさらず」
特殊型……マリアはその存在を知っていた。
出向する前にしていた情報収集でルヴルと名乗った老人から聞かされた話では、双子を用いた戦士だとか……
マリアは数秒瞑目し、視線を戦闘区域からミレーヌに移し、尋ねる。
「では……アスミディアはどちらなのでしょうか」
「防御型だ」