「私はマリアです。こちらこそよろしくお願いします」
マリアは自分の名前を名乗った後、改めて女性……アスミディアを見る。何故なら先程まで感じていた妖しい雰囲気が消え去っていたからだ。
妖艶な美貌には変わりないが、今はどこか優しい印象を受ける。
まるで別人のようだった。
その変化に少しばかり戸惑いながらも、マリアは口を開く。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なにかしら?」
「ここは一体どこなんでしょうか?」
「ああ、それね。ここはとある国の城下町にある宿屋の一室よ。正確には私たちが宿泊している部屋と言うべきかしら?」
「宿屋の一室……」
アスミディアの説明にマリアは納得すると同時に更なる疑問が生まれる。それは何故こんなところにいるのかという事だ。
先程まで自分は海の上にいた筈だ。
それが何故このような場所にいるのだろうか?
その事を尋ねようと口を開きかけたマリアだったが、それを遮るようにアスミディアが口を開いた。
「どうやら混乱しているみたいね。だけど落ち着いて聞いて頂戴。貴女は砂浜で倒れていたのよ。それを私が助けたというわけ」
その言葉を聞きマリアは状況を理解した。つまり自分は意識を失っており、それを彼女が助けたということになる。だとすれば彼女は恩人である。そう思い至りマリアは改めてアスミディアを見る。やはり綺麗な人だった。
「ありがとうございます。助かりました」
感謝の言葉を述べるとアスミディアは微笑む。その表情を見てマリアは思う。彼女の美しさは見ているだけで癒されるようだ。そう思った矢先、マリアの腹が鳴る。その音にアスミディアは驚くが直ぐに笑顔になる。
「ふふっ。お腹が減ってるのかしら? すぐに食事を用意してあげるからちょっと待っていてくれる?」
「あ、いえ……大丈夫ですので」
慌てて止めようとするもアスミディアは既に部屋から出て行ってしまった後だった。
取り残されたマリアは溜息をつく。
(まあ仕方ないわよね……)
暫くしてからアスミディアが料理を持って戻ってくる。その料理の匂いに食欲が刺激されたのかマリアの腹がまた鳴ってしまう。
それを見たアスミディアはクスクス笑っていたがすぐに皿をテーブルの上に置いて座るように促した。
「さあどうぞ召し上がれ」
言われるままに椅子に座るとナイフとフォークが用意されていたのでそれを使って料理を食べ始める。
「美味しい……」
その料理は絶品だった。
味付けも良くとても美味しかった。
そして食事を終えた頃を見計らいアスミディアが話し掛けてくる。
「どうだったかしら? お口に合った?」
「はい。とても美味しかったです」
正直に感想を述べると嬉しそうにするアスタラ。
それから少しの間会話が途切れ、沈黙が流れた後再びアスミディアが口を開く。
「ところで貴女はこれからどうするつもりなのかしら?」
「これからですか? 特に決まってはいませんが……」
「もし良かったら私と一緒に来てみない? きっと楽しいと思うのだけれど……どうかしら?」
その言葉を聞きマリアは考える。行く宛てもない自分がこれからどうすべきかを考える。アスミディアと共に旅をするのも悪くないかもしれないと思い始めていた。
ただ一つだけ引っ掛かることがあるとすれば……
「あの……つかぬことを伺いますが」
「何かしら?」
「アスミディアさん達は一体どのような仕事をされているのですか?」
「そうね……簡単に言えば傭兵のようなものかしら? 強く頼れる存在を求めている人がいれば依頼を受けて彼らを守ったり危険な場所へ同行したりするのよ」
「なるほど……」
「まあ、何でも屋みたいなものね」
アスミディアの言葉を聞きながらマリアは考える。
このままでは調査が難しいだろう。それにアスミディアは信頼出来る人物だと直感的に感じていた。
ならば……と考えた結果……
「分かりました。私もついて行きます」
「本当? 嬉しいわ」
マリアの言葉に喜ぶアスミディア。そんな彼女を見てマリアも釣られて笑みを浮かべる。
こうして二人の出会いは始まった。