「ねえ、マリア」
「何でしょう」
アスミディアは横目でマリアを一目見て、歩を進める。
「貴女、もしかして“外の大陸”から来たのかしら?」
アスミディアの、その言葉にマリアは息を呑む。
特に隠していたつもりは無いが、見抜かれた形になり気まずくなるも、そこは軍人。平静を装いつつ、最悪の状況を想定しながら返答する。
「……はい。私は外の……戦火の大陸から来た軍人です。階級は少尉。目的は……」
「ああ、いいわよ。そこまでで。“クレイモア”の事でしょう?」
と、そこまで言って、アスミディアが苦笑しながら掌を見せて制止をかける。
呆気にとられるマリアに微笑むアスミディアは、世間話の様な軽さで淡々と語り始める。
「数年に一度の頻度だったかしら。大きな船がこの大陸に来る、っていうのは知ってるのよ。ただ……この大陸の周辺の海ってどうも大変みたいでね。沖の方から私たちの住み家に真っ直ぐ向かって行こうとしてるのは解るんだけど、近くまで来たら滅茶苦茶な海流に捕まって北か南の方に流れされたりしてねぇ」
「……乗員等は?」
「まちまちね。突然大荒れして沖の方で波に呑まれて沈む船もあったし、運良く……なのか操舵の腕が良かったか。すんなり住み家の近くに停まるのもあれば、命からがら、って風に船が半壊しながらも遠くで停まったり……軍人さんだけは生き残ってたわ」
「その軍人たちは?」
マリアの問いに、アスミディアは人差し指を口の中心に立て、目の眩む様な妖しい笑みを浮かべる。
「色々、よ。色々あったのよ」
「そう……ですか」
アスミディアの笑顔に言葉を詰まらせたマリアはどうにか返答する。
そんなマリアの様子を気にすることなく、アスミディアは店の前に立ち止まる。彼女につられて、マリアも歩みを止めて店を眺める。
「ここは……」
「歩き回って疲れたでしょ? 少し休憩しましょう」
そう言ってアスミディアは店の中に入り、マリアも続く。
店内は静かながらも席はそれなりに埋まっており、飲食店としての活気で満ちていた。店員に案内されるアスミディアとマリアが二人掛けのテーブル席へと通される。
店員からメニュー表を受け取ったアスミディアはそのままマリアに渡す。
「私の奢りだから。好きなもの頼んで」
屈託の無い笑顔に若干気圧されつつもマリアは一通り目を通し、表をアスミディアに返す。
その後、店員を呼び、各々注文し、料理が運ばれて来る。
マリアは空腹だったこともあり、それなりの量を頼んだが、反対にアスミディアが注文した料理は極少量であった。