並べられた料理を丁寧に食べつつ、マリアはアスミディアを見る。
グラスに注がれた葡萄酒の香りを楽しみながら飲む姿は優雅そのものだった。
ナプキンで口元を拭ったマリアがアスミディアに訊ねる。
「貴女は空腹では無いのですか?」
「私たちクレイモアはそんなに食べないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、でも貴女は違うみたいね」
「空腹でしたので……」
「ふふ、そうなのね」
アスミディアが微笑む。マリアは彼女の真意を読み取れなかった。しかし、彼女はそれ以上何も言わなかったので、マリアは食事を再開した。
やがて料理を食べ終えた二人は店を出た。店の前には既に迎えの男が待機しており、彼らはアスミディアを後部座席に座らせる。マリアもそれに続くようにして馬車に乗った。
馬車の窓から漏れる月明かりが、二人の横顔を照らす。アスミディアは無言で前方を見据え、時折妖艶な笑みを浮かべている。対照的にマリアは窓の外を流れる景色を静かに観察していた。
「あの酒場はよく使うのですか?」
マリアが静かに尋ねる。
「ええ、情報収集には最適よ。あそこには多くの噂が集まるの。貴女のような軍人が来るのは珍しいけれどね」
馬車は静かに走り続ける。遠くに見える森は不自然に黙り込んでいるようで、まるで何かを隠しているかのようだった。
「もうすぐ着くわ。準備をしておいて」
アスミディアが告げると同時に、馬車は速度を落とした。
大きな門の前で止まった馬車から降りると、目の前に広がるのは巨大な古城だった。月光に照らされたその姿は威厳と神秘を兼ね備えている。
「これが私たちの本拠地。歓迎するわ、マリア」
アスミディアは振り返り、マリアに微笑みかけた。
マリアは改めて目の前の光景を眺めた。石造りの古城は月明かりに照らされ、その姿はどこか儚げであった。長い年月を経て築き上げられたこの場所には、数え切れないほどの物語が刻まれているのだろう。
「こちらへ」
アスミディアが促し、マリアは城内へと足を踏み入れた。冷たい石畳を踏む度に小さな靴音が響く中、二人は薄暗い廊下を進んでいく。壁に掛けられた松明の灯りがゆらめき、時折影を踊らせた。
やがて大きな扉の前でアスミディアは立ち止まり、「ここが会議室よ」と言った。
扉を開けると中には既に十数人のクレイモアたちが集まっていた。それぞれが個性的な鎧と大剣を携えているが、その基本的なデザインは統一されていることにマリアは気づいた。一部の者はアンダースーツの部位の色が微妙に違ったり、細かな差異はあるものの、全体的には同じ型の装備を身につけている。
「紹介しましょう。こちらは軍人の、マリア少尉よ」
アスミディアが紹介すると、集まったクレイモアたちの中からざわめきが起こった。
「
「珍しい」
「何用だ……?」
様々な声が飛び交う中、一人のクレイモアが立ち上がった。背丈こそ低いが、その眼差しには鋭い光が宿っている。
「私はミレーヌだ。ナンバーは
「……48?」
告げられた数字に、マリアは疑問符を浮かべる。
渡航する前に調べた資料では、クレイモアの戦闘人員は47だったはず。
マリアは横目でアスミディアを見、視線に気づいた彼女は、微笑みながら告げる。
「色々あってね。メンバーを増やしたのよ」