「おい、起きろォ!(迫真) 朝だゾ~(棒読み)」
鈍い衝撃と共に、新兵タドは泥と腐臭の悪夢から叩き起こされた。もう気が狂う!瞼をこじ開けると、そこには薄汚れた革鎧に身を包んだムルの、やけにニヤついた顔があった。ケツの穴まで泥に浸かりそうな、最悪の目覚めだった。
「んあ……? ここは……?」
寝ぼけ眼で周囲を見渡すタドに、ムルはカビ臭い乾パンを放り投げた。
「最前線だよ、最・前・線!(強調) 新入りはまず状況を理解しろって、あれほど言ったダルルォ!?」
塹壕の中は、夜来の雨でぬかるみ、肥溜めみてえな有様だった。そこかしこで、タドと同じように叩き起こされた兵士たちが、生気の無い目で虚空を見つめている。配給されたレーションは、犬の餌の方がまだマシなんじゃないかと思える代物だ。これもうわかんねぇな。
タドは乾パンを無理やり喉に押し込みながら、ムルに尋ねた。
「あの……ムル先輩、昨日の夜って……何かありました?(小声)」
「ああ、あったぜ。隣の分隊が敵さんの夜襲で綺麗に掃除されたらしいゾ。お前もああはなるなよ……(小声で忠告) 下手すりゃケツの穴までズタズタにされるからな」
ムルはそう言うと、水筒の怪しい色の液体を呷り、「ぷはー!生き返るわー!」と一人ごちた。それが本当に水なのか、あるいはもっとヤバい何か(意味深)なのか、タドには知る由もなかった。まずいですよ!
その時、塹壕の入り口から、熊のような体躯のヴォル隊長が現れた。その眼光は、獲物を狙う獣のように鋭い。野獣先輩みてえな顔しやがって。
「114514番隊!貴様ら!聞け!」
ヴォル隊長の怒声に、弛緩しきっていた空気が一瞬で張り詰める。
「本日、敵陣奥深くに斥候を出す!指名する!タド!貴様と、ムル!それからケイ!お前ら三名だ!イクゾー!」
「えぇ……(困惑)」
タドの口から、思わず弱音が漏れた。まだ実戦経験もほとんどない新兵に、いきなり敵陣への斥候だと?
「俺、まだ剣の振り方もおぼつかないんですけど……まずいですよ!本当にまずいですよ!ケツの穴がキュンキュンします!」
「言い訳は聞かん!これは命令だ!いいか、この任務をしくじれば……生きては帰さん。ケツの皮まで剥いでやるから、肝に銘じておけ」
ヴォル隊長の言葉は、冗談には聞こえなかった。その目には、冷徹な光が宿っている。逆らえば、本当にここで処断されかねない雰囲気だ。もう許せるぞオイ!
ムルはタドの肩を叩き、「ま、多少はね? 新兵クンにはちと荷が重いかもしれんが、俺がついてるから安心しろよな~(建前)」と嘯いたが、その顔は引きつっていた。もう一人の指名されたケイは、歴戦の古兵らしく、黙って頷くだけだった。その無表情さが、逆にタドの不安を煽った。こいつさてはSだな?
夜。月も星も見えない、漆黒の闇が戦場を覆っていた。雨は止んだが、泥濘はさらに酷くなっている。タド、ムル、そして先行するケイの三人は、息を殺して敵陣へと向かっていた。もう気が狂う!
「ムル先輩……本当に大丈夫なんですかね……? 敵に見つかったら、もう許せるぞオイ!じゃ済まないですよ……ケツの穴がヒリヒリする…」
タドは震える声で囁いた。
「大丈夫だって安心しろよ~。俺に任せとけって言ってんの!(強がり) 俺のビッグマグナムを見せてやるぜ!」
ムルはそう答えるが、その声もわずかに上ずっている。
不意に、先行していたケイがピタリと足を止め、手信号で「伏せろ」と合図した。三人は泥の中に身を隠す。
「どうしたんですかね……?(小声)」
タドが小声で尋ねようとした瞬間だった。
「そこかァ!」
茂みの中から、複数の人影が飛び出してきた。敵国の兵士たちだ。その手には、鈍く光る剣や斧が握られている。明らかに待ち伏せだった。ファッ!?
「まずいですよ!」ケイが叫ぶと同時に、敵兵の一人が鋭い剣先をタドに向けて突き込んできた。
「うわっ、出たな!敵兵め!」ムルが叫び、腰のショートソードを抜こうとするが、恐怖で手が震えてままならない。もうダメだぁ…おしまいだぁ…
ケイは長剣を抜き放ち、タドを庇うように敵兵の攻撃を弾いた。金属同士が擦れる甲高い音と共に、火花が散る。
「ケイさん!アッー!」タドは叫んだ。
ケイは歴戦の勇士らしく、数人の敵兵を相手に互角以上に渡り合っていた。しかし、敵の数は多い。じりじりと押され始める。
「ぐあああああっ!」
一瞬の隙を突かれ、敵兵の斧がケイの肩を深く切り裂いた。鮮血が闇に舞う。もう許せるぞオイ!
ケイは苦悶の声を上げ、泥濘に膝をついた。
「あぁん!? なんだ今の!? やめてくれよ…(絶望)」
ムルは完全に腰が抜けていた。その顔は恐怖で真っ青だ。
タドは、目の前で起こった惨劇に、ただ立ち尽くすことしかできなかった。初めて間近で見る血生臭い戦闘、そして仲間の無惨な姿。恐怖が全身を支配し、金縛りにあったように動けない。これもうわかんねぇな…。
敵兵の一人が、倒れたケイにとどめを刺そうと剣を振り上げた。
ケイは最後の力を振り絞り、タドの方を向いた。その目には、絶望と、そしてわずかな懇願の色が浮かんでいた。
「タド……逃げろ……お前は……生き、ろ……ケツを…守れ…」
それが、ケイの最後の言葉だった。敵兵の剣が、無慈悲にその命を奪い去る。KMRは死んだんだ。いくら呼んでも帰っては来ないんだ。
「ケイィ!しっかりしろォ!」ムルの悲痛な叫びが、闇に木霊した。
タドは、ケイの死を目の当たりにし、全身が激しく震えた。恐怖、怒り、そして圧倒的な無力感。
(こんなのって……ないよ……あんまりだよ……!もう気が狂う!)
その時、ムルがタドの腕を掴んだ。
「逃げるゾ!タド!こいつらはヤバい!(大声) ここにいたら俺たちもケツまでやられて殺されるゾ!」
周囲の闇から、さらに多くの敵兵が、松明の明かりと共に迫ってくるのが見えた。その数は、もはや抵抗できるものではない。まずいですよ!
絶望的な状況。
タドの脳裏に、ヴォル隊長の冷徹な目が蘇る。
「この任務をしくじれば……生きては帰さん」
(ああ……本当に、死ぬ気で逃げなきゃ……殺される……!イクゾー!)
タドは、ムルに引きずられるようにして、闇の中を駆け出した。背後からは、敵兵たちの鬨の声と、剣戟の音が追いかけてくる。
これが、タドの最初の戦場だった。
そして、地獄の始まりだった。もう終わりだよこの国。