オレは本物の宇宙海賊! 作:パイレーツ
「お前らのような海賊を名乗る偽物はここで滅びるがいい!」
オレが高らかに宣言するその先には、宇宙海賊を名乗る強盗団の船が此方の攻撃を受けている光景が展開されている。宇宙海賊を名乗り、略奪の為に船を襲う……その外道な諸行は万死に値する!!
「海賊の定義で言えば、こちらが偽物なんですが」
「何を言う!海賊というものは、広大な宇宙を巡り、未知の惑星を探し、財宝を見つけ、時に命を賭ける激闘を繰り広げ、この本に描かれた存在のように夢を追い続ける存在だ!決してあんな強盗共のような存在ではない!!」
オレは年季が入った一冊の分厚い本―――《レイジャー海賊団の大冒険》を掲げながらそう反論する。オレは幼い頃に偶然手に入れたこの本で、海賊という存在に強く憧れるようになった。
内容は奇想天外の冒険劇。予想外に続く予想外。完全暗記した今でも何度も読み返しており、その度に感動を与え続けてくれる至高の本なのだ。オレもこの本の海賊たちのように、夢と冒険を追い求めたのだが……
「その夢を、あの偽物共のせいで出鼻を挫かれたんだ!!野蛮な略奪者が宇宙海賊だと抜かして蔓延っているせいで、本物の海賊が酷い目にあっているんだ!!」
偽物の宇宙海賊は略奪行為が当たり前。中には惑星を笑いながら滅ぼすクソ偽海賊団までいる始末だ。そのせいで海賊と名乗れば問答無用で襲われるのだから、『海賊』ではなく『船団』としか名乗れないから本当にいい迷惑だ。
それでもお宝や戦艦を手に入れたり、順調に宇宙海賊として成長しているけど。こうして偽海賊を倒すことで、本物の海賊を全宇宙に浸透させようと日々努力している。
「海賊は本来、略奪者の呼称なんですけど……」
「昔流行ったらしい娯楽小説を未だに真に受けてるからな」
「海賊とは名ばかりの冒険者だよな。面白いし楽しいから別にいいけど」
ウチの船員たちの認識も厳しい。オレが何度も熱弁しているのに、無法の強盗共を海賊と認識している。それと、冒険者と海賊は同じだ。断じて別の存在ではない。
「船長!向こうの船から機動騎士が出てきました!」
「ほう。今回は機動騎士を持ってる連中だったか。当然、オレが出る!」
レイジャー海賊団の船長も、同様に人型の搭乗兵器【機動騎士】に乗って大暴れしたんだからな!その無双ぶりは本当に最高で、常に参考としているからな!!
「ホント、ウチの船長は勘違いが酷い馬鹿ですよね」
「海賊に関してだけ、だけどな」
「実際、実力はそこらの惑星国家の騎士より遥かに格上だし。一人で戦艦十隻墜とすとか、普通はあり得ないよな」
「それもカプセルなしで、だぞ?本当に船長は遺伝子レベルでどうなっているのやら」
後にした艦橋の方から団員達が呆れたように何かを呟いていたが、よく聞き取れなかったな。それよりも早く愛機に乗って出撃だ!!
「ん?何でお前も一緒に来てるんだ?」
オレの後ろに付いてきている銀髪少女にそう問いかける。それに対して、銀髪少女はムッスリとした表情だ。
「私も出るに決まっているからです。宇宙海賊は滅ぶべき存在ですので」
「あれは偽物だ。断じて宇宙海賊ではない」
銀髪少女にそう反論しつつ格納庫へと向かう。まあ、彼女もオレの船の主戦力の一人だからな。戦闘訓練なんて周りが引くほど打ち込んでいるし。
「さーて、偽の海賊共の中に手応えのあるやつはいるかな?」
まあ、規模的に見てもいなさそうだけど。
オレの愛機たる機動騎士【ドレイク】で出撃して早々、相手の機動騎士――通称、《強盗騎士》を右手の得物――ダブルセイバーですれ違い様に両断。他の強盗騎士も次々と金属の塊に成り下がらせていく。
『ま、まさか奴は《艦斬の――』
向こうがオレに気付いたようだがもう遅い。潔くここで滅びるがいい。
オレは急いで逃げようと旋回し始めた強盗船に急接近し、ダブルセイバーを振るい真っ二つに両断する。偽の海賊は船すら残す気はないからな。鉄屑になってもそこそこの値で売れるからな。
そんな感じで海賊を名乗る不届き者は殲滅完了。生き残りも捕らえて軍に引き渡した。公の情報では軍の功績になるが別に構わない。海賊の武勇伝は勝手に広まるものだからな!
偽の海賊を引き渡す度、軍の人間が微妙な表情をするのが気にはなるけどな。
「さーて、最近の出来事は…………」
偽宇宙海賊を引き渡した際に得た、最新の情報を仕入れた端末に目を通していると、決して見逃してはいけない情報があった。
『ゴアズ海賊団、壊滅』
「…………」
「船長?急に黙ってどうしたんですか?」
「……ゴアズ海賊団が壊滅したそうだ」
オレのその言葉に、艦橋にいた一同はざわめく。特に銀髪少女は食い付かんばかりに近づいてきた。
「壊滅したですって!?ゴアズはどうなったのです!?」
「落ち着け落ち着け。気持ちは分かるけどな」
「えーっと……ゴアズ海賊団の首領であるゴアズも死亡。それを成したのはアルグランド帝国の辺境貴族、リアム・セラ・バンフィールド伯爵だそうだ」
「そう、ですか……」
彼女は顔を俯けて震えているが、歓喜……じゃないな。自らの手で仇を討てなくて悔しいんだろうな。その為に生きてきたものだし。
……次の行き先は決まったな。
「全船員に告ぐ。次の目的地はアルグランド帝国。バンフィールド伯爵が治める惑星本土だ」
オレがそう告げると銀髪少女は驚いたように顔を上げ、他の船員はやっぱりかと言いたげに肩を竦める。会って話しが聞けるか不明だが、行って損はないだろう。
「海賊は仲間想いが常識だからな!ハッハッハッ!!」
オレは自慢気に告げながら高笑いしつつ、バンフィールド伯爵が治める惑星に向かって船を進ませるのであった。
「ちなみにアルグランド帝国ってどっちだ?」
「「「「そこから!?」」」」
「フハハ!お前たちは俺の財布だ!!」
悪徳領主である俺――リアム・セラ・バンフィールド――は実に幸せな人生を送っている。
俺をこの世界に転生させてくれた案内人のおかげで、海賊共から財を奪い、更なる幸せを掴むことができた。特にゴアズから奪った錬金箱は本当に素晴らしい。望めば幾らでも金を作れるんだからな。
もう一度伝えよう。案内人、本当にありがとう!!
そして、今日も俺の領地に侵入してきた海賊共を狩り尽くし、上機嫌でいると士官から通信が入る。
『リアム様。こちらの宙域に一隻の船が近づいて来ています』
「なんだ?まだ海賊の残党がいたのか?」
『海賊……なのではないかと。いや、本当に海賊なのでしょうか……?』
「なんだその曖昧な返答は。海賊なのかそうじゃないのかハッキリ報告しろ」
俺が苛立ちながら報告を促すと、士官は困惑した表情のまま報告を続けた。
『今近づいている船の側面に……大きくくっきりハッキリとドクロのペイントが施されているのです。それも海賊帽を被ったドクロのペイントが』
「…………」
なんだ、その明らかな海賊アピールは。自分から海賊アピールするなんて、馬鹿なのか?いや、馬鹿なんだろうな。
「そんなに分かりやすければ、海賊で間違いないだろ」
普通なら悩むところだが、俺は悪徳領主だならな。俺が黒と言えば黒、海賊と言えば海賊なのだ。恨むなら、そんな馬鹿丸出しのペイントをしたお前たち自身を恨むがいい。
『一応、向こうの船から通信が来てますが……』
「構わん。通せ」
ここは問答無用でもいいが、向こうがどんな言い訳をするか気になるからな。精々無様な態度を楽しませてもらうとしよう。
通信を許可すると、映し出されたモニターには如何にも海賊らしい格好をした青髪の青年が表示された。
「やあ、海賊諸君。わざわざ通信を寄越すなんてご苦労じゃないか」
『……ほう。一目でオレたちを海賊と見抜いたか。バンフィールド伯爵』
すんなり海賊と認めたな。その潔さだけは称賛してやっても……
『そう!オレこそが!広大な宇宙を巡り!夢と浪漫を追い求め続ける大海賊!クラーク海賊団の船長、《艦斬のクラーク》とはオレのこと!!そんじょそこらの海賊を名乗る偽物共とは訳が違う!!』
…………は?
「お前は何を言っているんだ?海賊に偽物も本物もないだろ」
『否!断じて否!!海賊とは!未知の惑星や財宝を求めて冒険し、仲間と共に苦難と危機を乗り越え、果てなき冒険を続ける者!この《レイジャー大海賊団の大冒険》に出てくる海賊達のように、夢を与え続ける者!断じて略奪を繰り返し、夢を奪い続ける海賊を名乗る強盗共のことではない!!』
クラークと名乗った男は一冊の本を掲げながら熱く語っている。これはあれか。空想と現実の区別がついていない馬鹿か。
俺が呆れていると、クラークの後頭部が割って入った銀髪の娘の持つハリセンで叩かれていた。
『いきなり何をするんだ!?』
『この馬鹿船長!何で海賊と公言しているんですか!』
『いやいや。バンフィールド伯爵は一目で海賊と断言したんだ。絶対に話が通じる――』
『そんな訳ないでしょう!明らかに敵認定していたじゃないですか!!』
『嘘だろ!?』
クラークが信じられないと驚いているが、逆にどう見たら敵認定されていないと思ったんだ?いや、海賊と指摘したから話が通じると勘違いしたのか?この男はどれだけ馬鹿なんだ。俺でも宇宙海賊がどういうものか理解しているというのに。
「……その本物の海賊とやらが、何の目的があって此処に来たんだ?」
あまりにも馬鹿らしくなり、この馬鹿が来た目的について問うことにした。騒ぎながらもこちらにちゃんと意識を向けていたクラークは、軽く咳払いしてから目的を口にした。
『伯爵がゴアズ海賊団を壊滅させたと耳にしてね。ゴアズに囚われていた捕虜たちをどうしたのか、それを聞く為に来たんだ』
ゴアズの捕虜……ああ、あいつらか。全員治療して元の姿に戻して、俺の領地に住まわせることにしたんだよな。そいつらの子供が俺のハーレムに加われば最高だと考えて。
しかし、何でそんな事を聞きに来たんだ?その程度なら教えてやってもいいが……ここは悪徳領主らしく、答えてやるか。
「あいつらは全員、俺の所有物だ。お前の言う偽物の海賊は俺の財布だからな。だから、あいつらも当然俺のものだ」
『所有物、ですって……?』
俺の返答が気に入らなかったのか、銀髪の娘がモニター越しで俺を睨み付けてくる。その反応、実に悪くない。むしろ俺好みだ。
『お前もゴアズと同じか!!今すぐにでも殺してやる!!』
『ちょ!気持ちは分かるが落ち着け!!』
銀髪の娘が殺意を露に叫んできたが、クラークが意を汲みながらも宥めようとしている。しかし、ゴアズと同じとは心外だな。奴の趣味は欠片も理解できないものだったし。
「随分と吠えるな。俺はゴアズのような悪趣味はないぞ」
『……彼女はゴアズの被害者なんだ。故郷は滅ぼされ、身内は囚われの身になった可能性が高かったんだ。奴の悪趣味を考えれば特にな。もし言葉通りだとしたら……オレたちも黙っちゃいられない。海賊は仲間はもちろん、仲間の身内も大事にするからな』
だからそれ、海賊じゃないって。色々と勘違いしている痛いやつだな。見ている分には面白そうだけど。
……そうだ。どうせなら、その勘違いを加速させてやるとしよう。今回の連中は弱すぎて俺は出撃できなかったからな。
「そんなに知りたければ、俺と一騎討ちをしようじゃないか。お前が勝てば、詳しい情報を教えてやる」
『欲しいものは自らの手で掴み取れ、と?』
「そうだ。お前の言う本物の海賊は、タダで欲しいものを手に入れるのか?」
『……いいや。海賊は、欲しいものは自らの手で掴み取る。そして、トップ同士の一騎討ちも海賊らしい行動だ。その一騎討ち、乗った!!』
ククク、本当にあっさりと俺の言葉に乗ったな。本物の海賊というワードを使えば、簡単に騙せそうだ。
「一騎討ちの手段は機動騎士を使う。持っていないなら生身で挑むことになるぞ?」
『心配ご無用。機動騎士は持っているからな』
クラークはそう告げると、通信を切る。機動騎士を持っているのは意外だったが、俺とアヴィドならどんな機動騎士でも問題はない。
『リ、リアム様。本当に一騎討ちをするおつもりなのですか?』
「は?何当たり前なことを聞いてくるんだ?」
『で、ですが――』
士官が何か言おうとしていたが、俺はそれを無視してアヴィドの元へと向かう。俺がアヴィドで出撃すると、視認できるほどに此方に来た戦艦(報告通り、側面にドクロマークが描かれていた)から青色の機動騎士が出てくる。
大きさは……アヴィドより小さいな。背中のブースターは十字を描くかのように四つ。武器は右手に持った両方の柄の先端に刃が取り付けられた剣だけか。
「その剣だけで俺に勝てると思っているのか?」
『今回は一騎討ちだからな』
俺に剣だけで挑む度胸だけは誉めてやろう。その度胸だけだが。
俺はアヴィドを操作してブレードを振るうと――甲高い金属音が響いた。
「ほぉ、俺の一撃を受け止めたか」
これには素直に驚いた。今まで対峙した奴らはその得物ごと斬り裂いていたのだが、目の前の機動騎士はそんな俺の一閃を自身の得物で受け止めたのだ。
『見たことのない、凄まじい剣筋だな。誰から学んだんだ?』
「流派は一閃流。師は安士」
『聞いたことのない流派と名前だな。そんな凄い流派と剣士がいたのか』
こいつも師匠と一閃流のことを知らないのか。師匠を知らないことに腹は立つが、称賛したので特別に流してやる。
「なら、一閃流の凄さをその身に刻んでやる」
俺はそう告げてクラークから距離を取り、ブレードを腰だめに構える。
「一閃」
『一閃』
バンフィールド伯爵が駆る大型の黒い機動騎士がブレードを腰だめに構えるとほぼ同時に、短い言葉が紡がれる。
「!」
オレは直感的に攻撃が放たれたと感じ、直感のままにダブルセイバーを振るっていく。
何度も襲いかかる目に見えない斬撃。一太刀でも捌けなければ、無慈悲に両断されてしまう。
そんな圧倒的な力を見せつけてくるバンフィールド伯爵に……オレの心は奮えていた。
「凄い……凄いぞ!バンフィールド伯爵!!」
オレはバンフィールド伯爵の斬撃を捌き切ると、お返しとばかりに戦艦を両断できる斬撃を放つ。バンフィールド伯爵は機体の周囲に展開したシールドで受け止めたが、すぐに身を翻して斬撃の直撃を防ぐ。
あのまま受け止めていれば、シールドごと機体の左腕を斬り落とせたのだが、バンフィールド伯爵はすぐにそれに気付いて回避を選択した。剣の腕前だけでなく、機体の操縦技術も相当高いと見て間違いない。
『俺に回避を選ばせるとは……お前は誰から学んだ?』
「レイジャー海賊団の船長からだ」
バンフィールド伯爵の質問にオレは正直に答える。レイジャー海賊団の船長の戦い方は本当に素晴らしいからな。圧倒的不利な状況を見事にひっくり返し、大逆転勝利を収めたのだから。
『……そうか』
バンフィールド伯爵の声が何故か呆れたように聞こえたが、気のせいだろう。しかし、宇宙は本当に広いし、知らないことも沢山ある。目の前にいるバンフィールド伯爵のように。
だからこそ――海賊を止められない!!
オレは昂った感情のまま、バンフィールド伯爵の駆る機体に急接近する。それに対しバンフィールド伯爵も急接近し、残像すら残さない速度でブレードを振るう。
オレはそのブレードを上段の刃で受け流しつつ、反対の刃で斬りかかる。だが、十分な威力が乗っていない斬撃は機体に展開されたシールドによって弾かれてしまう。
そこからは一進一退の攻防。互いに決定打を与えられず膠着状態。本来は焦りを覚えるだろうが――今はとてつもなく楽しい。
『いいぞ。実にいいぞ!!お前のような手応えのある奴と戦うのは初めてだ!!さぁ、俺をもっと楽しませろ!!』
それはバンフィールド伯爵も同じようで、拮抗していながらも楽しげに戦っている。
だが、何時までも続けてはいられない。少しの寂しさを覚えつつも決着を――
「『ん?』」
お互いの機体から変な音が響くと同時に、糸が切れたようにピクリとも動かなくなった。操縦レバーを何度か動かすも、機体は微動だにしない。
……どうやら機体の方が先に限界を迎えたようだ。おそらくバンフィールド伯爵の機体も同様だろう。
「これは……引き分けになるのか?」
『もっと楽しみたかったが……アヴィドが動かなくなった以上はここまでだな』
「そうなると……報酬はなしか」
本当にどうしようか。金を出せば教えてくれるだろうか?溜め込んでいる金銀の財宝を少し渡せばいけるか?けど、貴族はミスリルやアダマンタイトを好むからなぁ……
『報酬が欲しいのか?なら、お前たちが知りたいことを特別に教えてやってもいいぞ?』
「え?本当にいいのか?それは勝利の報酬の筈だろ?」
まさかの提案にオレは本当にいいのかと驚きを隠さずに問うも、バンフィールド伯爵は上機嫌のまま答えていく。
『今の俺はとても気分がいいからな。俺を楽しませてくれた礼とでも受け取っておくがいい』
「……じゃあ、ありがたく受け取らせてもらうか」
海賊としては不完全燃焼気味ではあったが、目的が果たせそうなので良しとすることにするのであった。
(まさか師匠に次ぐ強者に出会えるなんて……おかげで俺はもっと強くなれる!案内人、本当にありがとう!!)
「ゴハァッ!またリアムから、感謝の念が……!」