オレは本物の宇宙海賊!   作:パイレーツ

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元王女、改修に携わる

……今日の盗賊は結構な規模だな。

 

「千隻も攻めてくるとか、本当にうんざりするな」

 

本当にハウンドへと買い換えしていて正解だったな。急に十倍以上が攻めてくるとか、少し前までの状態だったらキツかった。もしそうしてなかったら、犠牲者が出ていただろうからな。

船員たちに仕込んだ戦い方は、基本的に粘り勝ちだ。生存を第一に、無理に攻めず、チャンスを待つ。そして、攻める時は一気に決める短期型だ。改善、改良の必要性もあるが、生き残ることが大事だからな。死んだら、そこで終わりなんだし。

 

『旗艦が早々に墜ちて、あちらは逃げ腰になってますね。このまま見逃しますか?』

「いや、こいつらは此処で殲滅する。千隻も壊滅したとなれば、しばらくは襲撃して来なくなる筈だ」

 

ここで半端に逃がしても、これからも数で攻めてくる連中が出てくるかもしれないしな。その種を摘み取るためにも、ここで徹底的に潰す。

オレは巡航形態のドレイクで駆け、絶好の攻撃ポジションへと移動する。ここからなら、一気に戦艦を撃沈させられる。

 

「一突」

 

オレの短い呟きと共に、ドレイクを突きを放つように操作する。全身に凄まじい衝撃が走るとほぼ同時に、大量の戦艦が真っ二つとなって沈んでいく。もちろん、味方は巻き込んでいない。

 

『……え?何、今の?』

『あれは船長の“一突”だよ。相変わらず、常識外れだよね』

『今ので二百近い艦が沈んだかな?残りは大体半数だと思うし』

 

残りが半数なら、もう“一突”を使わなくてもいいかな。相変わらず機体への負荷が大きいし。

ドレイクを人型に戻すと、すぐ近くにいた戦艦をダブルセイバーで両断。完全に逃げ始めた機動騎士達にも、後ろからビーム・マグナムを放って撃墜していく。

 

「艦は艦橋を優先して叩け。頭をやられたら機能不全に陥るし、ハウンドなら難易度はそこまで高くないからな」

 

船員たちに指示を出しつつ、オレは艦橋を潰す。再利用するとしたら修理費が高くなるだろうが、今回は数が数だからな。稼ぐより潰す方が最優先だ。稼ぎを優先して命を落としたら、意味ないし。

 

機動騎士もさすがに艦を沈められるのはマズイようで、餌に群がるように集まってくる。それも薙ぎ払うように両断してすぐに撃墜しているが。

 

『クソッタレがぁああああっ!!』

 

盗賊騎士の一人がビームマシンガンを乱射しているが、オレは難なく躱しつつアンカーガンを発射。ビームマシンガンの銃身に絡めとると、すぐに引っ張って強奪。すぐ様ハッキングして盗賊騎士を撃ち抜く。

 

本来、相手の持つ銃火器はパスコード等から自機以外では使えない。だが、オレには正式名称不明の鍵型の古代遺産、“万能鍵”がある。この万能鍵は、複雑な仕掛けの鍵が掛かった宝箱も翳すだけで勝手に解錠される優れもの。今のように武器の使用制限も突破できるのだ。これをドレイクのコクピットに差し込んでいるから、ドレイク越しでもその効力を発揮しているのだ。

 

自分たちの武器をさも当然のように使ったことに硬直する連中に、ビームマシンガンの弾幕をプレゼントしておく。呆ける方が悪いからな。

その後は消化するように宇宙盗賊団を討伐。戦利品も大量に手に入った。

 

「エリクサーが結構多いですね」

「惑星開発装置があったからな。絶対に悪用していただろ」

「捕らえた人間も、エリクサーの材料にしていたみたいですからね。その時の映像記録を残している辺り、十分に悪趣味な奴でしたね」

 

この大量のエリクサーと惑星開発装置は大将に送るか。大将なら惑星開発装置を本来の使い方で使うだろうし、回収したエリクサーも彼処で使われるなら、エリクサーにされた人々も少しは浮かばれるだろうしな。

 

「これで襲撃が落ち着いてくれたらいいんだけどな。あっちのトラブルもあるし」

 

特に第一兵器工場の人間がかなり好き勝手しているみたいだし。我が物顔で他の工場の人間に理不尽な要求をしているとも聞くし。第一は首都星お抱えの工場のようだが、技術力は他の工場からの横取りとも聞いてるし、利用したいとは思えないんだよな。

 

「それはそれとして……大将、幼年学校でどう過ごしているかな?」

「勤勉に過ごされていると思いますよ。まあ、勤勉過ぎて家臣たちは別の意味で不安でしょうが」

 

不安、か……大将は一度も女性を口説いてないんだよな。大将はどんな女性が好みなんだろうな?

 

「そういえば、ユリーシア中尉の色仕掛けには無反応だったよな。ひょっとしたら、自分から言い寄る女性は対象外かもな」

「それはあり得そうですね。もしそうだったら、反抗的な女性がタイプかもしれませんね」

「嫌いなのに意識してしまう……そんな女性なら、大将も口説くかもな」

 

副長とそんな身も蓋もない雑談から暫くして、大将が女性に興味を抱いたという話が出て激震が走ったのだった。

 

 


 

 

「いやいや無理ですって!これ以上、アヴィドの強化はできませんよ!!」

 

伯爵様のアヴィドの定期メンテナンスをしていると、ニアスさんが声を張り上げてアヴィドの強化改修は無理だと叫んでいる。ちょうど作業が終わったこともあり、ニアスさんの方へと近寄ると、画面に写っていたのはリアム伯爵様だった。

 

「今ですら、リアム様の技量に追いついていないんですよ。ドレイクのように一から作り直すか、この前ご購入いただいたハウンドを強化した方が簡単ですよ」

『嫌だね。俺はアヴィドが気に入っているんだ。金はいくらでもあるからやれ』

 

伯爵様はニアスさんの提案を突っぱね、アヴィドを強化するように言ってきます。ですが、私としても難しいと言わざぬを得ません。

 

「伯爵様。申し訳ないですが、アヴィドの強化はお金だけで済む問題ではないのです。もし、今のまま強化するとなりますと、希少金属が大量に必要となります」

『そうなのか?』

「はい。オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル……それ以外の希少金属も必要になってきます。仮に希少金属なしで強化しようとしても、微々たる変化にしかならないです。ロレイアの技術を使ったとしても、同じ結果になります。ほとんど上限に達しているようなものですから」

 

ロレイアの技術は未解明な部分もありますが、基本的には金属加工技術です。極端な話をしますと、ロレイアの技術はレアメタルを最大限に活用する為と言っても過言ではありません。馬鹿船長の新しいドレイクは、今後の強化も見越して一から作り直されましたが、アヴィドはそうではありませんからね。

 

「それに加えて、大幅な改修となりますからテストパイロットの存在も不可欠となります。中身をゴッソリ入れ替える形となりますので、機体バランスも崩れますし制御システムも一新しないと」

「一応言っておきますが、ロイネちゃんは無理ですよ。彼女がアシストなしで機体を動かせるとはいえ、今はウチで研修中の身ですから。仮に参加できても、技術スタッフとしてです」

『要するに、金と材料、人を用意すればできるんだな?』

「はい……用意できればですけど……一応、資材と予算のリストを作成して送ります。すべての条件をクリアできたら、責任を持ってお引き受けしますよ」

『わかった』

 

ニアスさんから言質を取ったと判断された伯爵様は、それだけ言って通信を終える。

 

「わかったって……いくらリアム様でも、流石に全部は揃えられないでしょ」

「たぶん、伯爵様は全部揃えますよ。今からスタッフを確保した方がよろしいかと」

「イヤイヤ。今の時代、アシスト機能なしで動かせる人は少ないんだよ?あの船団の人たちは、ロレイアの関係で釘つけ同然だし」

 

ニアスさんはテストパイロットから到底無理だと判断してますが、伯爵様は全部揃えると確信しています。あの目は本気でしたから。

それから少しして、ニアスさんがリストアップした全ての素材が届けられた。

 

「ホントに来た……」

「だから言いましたでしょ?伯爵様は全部揃えますと」

「――ええ。ご要望のテストパイロットもここにおりますわよ」

 

私の意見に同意するように、一人の女性が頷く。その女性は紫色のロングヘアーで、紫を基調とした騎士服に身を包んでいる。初めて会う人ですけど、おそらく新しく伯爵様に仕官した人なのでしょう。

 

「初めまして。マリー・セラ・マリアンよ。これからよろしく頼むわね、技術大尉殿?あと、そこのミンチ女の妹も」

 

……ミンチ女の妹?え?もしかして私のことですか?確かに顔は私の方に向いていますけど。

 

「あの……私と貴女は初対面の筈ですよね?何でいきなり罵倒の言葉を……」

「ああ、勘違いしないでね?あたくしの敵は、今はあのミンチ女だけですの」

「……念のために確認しますけど、貴女の言うミンチ女は……クリスティアナお姉様のことでしょうか?」

「たしかそんな名前だったわね。あのミンチ女は」

 

敢えてフルネームで確認すると、マリーさんはあっさりと肯定した。ティアお姉様……このマリーさんに一体何をしたんですか?すごく気になるのですが。

 

「あの……失礼を承知で伺いますが、本当にアヴィドを操縦できるのですか?」

「伯爵様が選んだ以上、操縦できるとは思いますが……強化に伴い、かなり操縦が難しくなると思われます。今以上にじゃじゃ馬となるアヴィドを、満足に動かせる自信があるのですか?」

「問題無いわ。あたくしの時代ではアシスト機能を使う騎士は半人前でしたわよ。何より……リアム様の乗機を任せて頂けるのです。これほど嬉しい事を前に、その程度の困難に尻込みするなど論外ですわ!!」

 

この台詞を聞いて、私は確信しました。マリーさんも、今のティアお姉様と同類であることを。同時に同類だからこそ、毛嫌いしていることにも。ティアお姉様も、絶対にこの人のことを酷い呼び名で呼んでいるんでしょうね。

でも、必要な素材も人員も揃えられました。お金も充分にあるのは間違いないでしょう。でしたら、やることは一つだけです。

 

「そうですね!すぐに取り掛かりましょう!!」

「例のロレイアの技術も駆使して、アヴィドを劇的に強化しましょう!伯爵様の要望は、全部叶える勢いで!!」

「ええ!もちろんでしてよ!!」

 

こうして私達は、アヴィドの大幅な強化改修計画に動き出しました。馬鹿船長のドレイクのデータも利用して、機体の可動性能も向上させます。伯爵様の一閃流を、存分に発揮できるようにするために。

 

 


 

 

俺は公爵令嬢のロゼッタが気に入り、俺の家に迎え入れることを天城とブライアンに伝えた。悪徳領主として実に上機嫌だった俺に、通信が届く。相手は……ティアの妹のロイネか。

彼女もアヴィドの強化に携わっていることも知っているので、その通信に応じてやることにした。

 

『お忙しいところ申し訳ありません、伯爵様。アヴィドの件でご報告とご相談が』

「報告と相談だと?一体どういう事だ?送られた資料を見る限り、滞りなく進んでいる筈だろ」

『実は……伯爵様のご要望のカラーリングについてです。本当に申し訳ないのですが、ご要望の金色の塗装が叶えられそうにないんです』

 

ロイネはそう告げると、申し訳なさそうに頭を下げる。

俺のアヴィドのカラーリングを大好きな金色に出来ないだと?一体どういうことだ?

 

「叶えられないとはどういう意味だ?ちゃんと塗装用の金塊も大量に送っただろ」

『落ち着いて下さい、伯爵様。ちゃんと一から説明しますから』

 

ロイネはそう言って一呼吸置いた後、神妙な面持ちで理由を語り始めた。

 

『反対するニアスさんをテストの名目で何とか抑え、金色に塗装したアヴィドで性能テストをしたのですが……全体の効率が数パーセントとはいえ、下がってしまったのです。普通の騎士なら誤差の範囲内ですが、伯爵様の場合はその数パーセントが大きく響き兼ねないんです。特に一閃流の負荷が凄まじいので』

「それを解決するのが、お前たちの役目だろ」

『もちろん、それだけで結論を出したわけではありません。次に、ロレイアの技術で作った特殊な金属塗料で効率を落とすことなく、金色のカラーリングを施したのですが……今度は少しとはいえ塗装にヒビが入り、剥げてしまったのです。テストパイロットのマリーさんが激しく動かしてこれでしたから、伯爵様の場合ですとかなり剥げてしまう可能性が高いんです』

 

塗装が剥げる……だと!?塗装が剥げたらメッキみたいになってカッコ悪いだろうが!!

 

『他にも色々試したのですが……一番確実な方法である装甲の色そのものを金にするのは、ニアスさんがもの凄く駄々を捏ねて実行に移せないんです。マリーさんが双剣を首に押し付けて脅しても、嫌だの一点張りでして』

 

そう語るロイネの表情は仕事疲れした人物のそれだ。まるで前世の俺を見せつけられている気分だ。

 

「……お前の言い分は分かった。それで、俺に金色を諦めろと言いたいのか?」

『いえ。妥協案としての代案を用意しました』

 

ロイネはそう言って、別のデータを見せてくる。それは、アヴィドの各部に金の垂れ幕が追加された姿だった。

 

「これは何だ?」

『装甲を金色に出来ない代わりに、金色の装飾品の追加を考えました。これはロレイアの技術による特殊な金属布で、余剰エネルギーを分散する効果があります。これを機体各部に使うことで、可動を妨げることなく、アヴィドの負荷を軽減させられます。当初のご要望と違う形となりますが、どうでしょうか?』

 

ロイネはそう締め括り、俺の返答を待っている。本当は効率を犠牲にしてでも金色にしろと言いたいところだが、これはこれでカッコいいと思ったのも事実だからな。それにここで突っぱねたら、今度はニアスが連絡して直接駄々を捏ねてくるのが容易に想像できる。そっちを相手にするのが遥かに面倒だ。

 

「いいだろう。但し、絶対に金色にしておけよ」

『ありがとうございます。伯爵様』

 

ロイネは深々と頭を下げ、通信を切る。アヴィドが全身金色にならないのは残念だが、先に許可を求めたことに免じて受け入れてやる。

そう考えていると、またしても通信が届く。今度はクラークか。

 

『大将。事後承諾になる形で悪いんだが、第一兵器工場の人間をロレイアから追い出した』

 

……何だと?

 

 


 

 

『兵器工場の人間をロレイアから追い出しただと?何の権限があってそんな真似をした?』

 

大将、苛ついているな。そりゃ、勝手に人を追い出したら当然かもしれないが。けど、クリスティアナだって同じことをすると思うぞ。大将を神と崇めるくらいだし。

 

「簡単に言えば契約違反だ。アイツら、コンテナの中に隠して設備を運び出そうとしやがった」

 

彼らが持ち帰ろうとした加工金属が詰まった複数のコンテナに妙な違和感を覚えたオレは、船員たちに指示して抜き打ちチェックを行った。もちろん、他の工場の持ち帰りのコンテナも。

 

そしたら出るわ出るわ、ロレイアの設備機械が。設備の持ち運びは前もって禁止だと通達されていたにも関わらず、第一の連中はその禁止事項を破ってきたのだ。しかも、運び出されようとした設備も資材に埋もれるように隠していたし、簡易なチェックでは見抜けないように徹底されていた。明らかに計画的な行動だ。

 

それでも、オレもこれだけなら関係者全員を拘束し、大将に判断を仰ってから行動しただろう。だが、設備の持ち出しがバレた連中の行動から、すぐに対処すべきだと勝手ながら判断させてもらった。

 

「それがバレたら、今度は賄賂で買収しようとしてきたからな。だから調査員も含めて叩き出すことにした。いつ、大将の資産に手を出すか分かったものじゃないからな」

『俺のモノに手を出そうとしたのか。随分と舐めた真似をしてくれたな』

 

オレから事情を聞いた大将は先程以上に苛ついているが、その矛先はオレに向いていない。自分の財に手を出したから当然の反応だけどな。

 

『経緯は分かった。その工場にはたっぷりとクレームを入れておいてやる。同時に今後は一切取引しないともな』

「それは思い切ったな、大将。てっきり割増で売るか、割引で買うようにするかと思ったんだが」

『いくら優秀だろうが、信用できないのは論外だ。俺の財に手を出したなら尚更な』

 

ま、そりゃそうだよな。大将でなくても普通にキレるわ。それと、この前の件について聞くか。

 

「大将。例のエリクサーの調合データは天城殿に渡したが、本当にエリクサーを作るつもりなのか?大将は金があるから、作るより買う方が早いだろ」

 

先日、ミスティリア組から大将に伝わったのか、エリクサーの調合データを寄越すよう大将から要求されたのだ。手間が掛かる方法の要求かつ、見返りの金も結構な額を提示されたから、素直に天城殿にコピーした資料を渡したけどな。

 

『俺は無駄が大好きだからな。金があれば大量に買えるものを、俺の領民がチマチマと作る……悪徳領主らしい、実に腹立たしい行動だろ?』

 

大将は無駄を敢えてやっていると公言しているが、色々な思惑があるだろうな。こっちのエリクサーは手間が掛かるし、得られる量も多くないが、成功すれば安定的にエリクサーを生産することができるだろう。

 

それに、海賊貴族と名乗る本物の海賊に大喧嘩を売っている帝国貴族――バークリ男爵家の存在もある。あの男爵家はエリクサーを大量に献上しているが、確実に闇製法で得ているだろうからな。聞けばバークリ家と何かトラブルがあったみたいだし、圧力を掛ける意味でも今回の行動に出たんだろうな。あくまで憶測だけど。

 

「大将は本当に物好きだな」

『当然だ。俺は悪徳領主だからな』

 

大将は悪どい笑みで悪徳領主と公言しているけど、あんまり悪徳領主らしくないよな。本人が満足しているなら別にいいけど。

 

『それと追加で更に人を送ってやる。しっかり鍛え上げて使えるようにしろよ?』

「オレら、海賊なんだけどなぁ……今後の為に必要なのは分かるけど」

 

ロレイアの専用ゲートが完成したら、オレらは再び自由に動き回るからな。その前にロレイアの守りを万全にしておきたいのも理解できるからな。

幸い、教育カプセルも送られてきたからスムーズに行えるけど。あれがあれば、効率良く鍛えられるみたいだからな。一度も使ったことないから分からんけど。

 

 

 

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