オレは本物の宇宙海賊!   作:パイレーツ

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研修組、疲弊する

薄暗い路地裏。そこで地べたを這いずっていたのは、全身のあちこちが弾丸で撃たれたようにボロボロとなった案内人であった。

 

「ユリーシア……よくも私を裏切ったな!!」

 

案内人は怒りと共にそう吐き捨てる。案内人はユリーシアを支援し、リアムに復讐の刃を突き立てようとした。しかし、それはあまりに予想外な形で失敗に終わった。

何故なら――ユリーシアのリアムへの復讐が恋愛的な意味だったからだ。惚れさせて捨てるという、リアムの傷になるかすら怪しいものだったからだ。それも、ニアスの介入で頓挫し、泣きながら全部暴露するというオマケ付きで。

ユリーシア本人としては、確実にリアムを誘惑する機会――セールスウーマンより副官の方が勝算が高いと考えての行動であったが、周りからすれば首を傾げる行動だ。

 

その上、リアムのお情けで捨てる機会を与えられたにも関わらず、有望株を失うのは惜しいと復讐心を投げ捨て、あっさりとリアムに尻尾を振ったのだ。これはアスカにも当てはまるが。

それで堪らず案内人はリアムの前に現れてネタばらしをしたのだが……全く伝わらず、逆に物凄く感謝されてしまったのだ。事実、案内人の暗躍が裏目に出たものもあったし。

 

そして、感謝の念が形作ったであろう大量の黄金に輝く火縄銃の弾幕により、案内人は更にズタボロとなって逃げたのである。

そんな悪意の種の二つが望まぬ方向に育った挙げ句、大損する羽目となった案内人は、安士の様子を見に行く。もし裏切っていたら抹殺するつもりで。

その安士は、リアム打倒の為の弟子二人を惜しみ無く鍛えていた。その光景に、案内人は歓喜する。

 

「私は信じていたぞ、安士!」

 

今度こそ自分の望む方向に育っていると肌で感じた案内人は、ふらふらと立ち上がりつつ、その場を後にした。犬の存在に気付くことなく。

 

 


 

 

おかしい。何かがおかしい。

 

「主任さん。ここは軍の部隊ではなく、一個人の船団だよね?」

「?そうですけど?」

 

主任――ロイネさんは首を傾げてながら頷いているけど、その反応はおかしいと思う。

何故なら――

 

「何で整備作業だけじゃなく、トレーニングもあるの?うちら、整備士なのに」

「整備士でも体力トレーニングはやっておかないと駄目ですよ?本来は戦闘訓練もあるのですが、そこは時間の都合で削りましたけど」

「ええ~……」

 

整備士なのに戦闘訓練もあるの?トレーニングの内容も軍隊並みに厳しいものだし、思っていたものと全然違うんだけど。何もかもが緩いメレアとは本当に大違いだよ。

 

「うちは整備作業に没頭したいのに……」

「その整備作業も、体力がなければ長く続けられませんよ。モリーさんも含めた皆さんが、初日で疲れきっていたのは事実でしょう?」

「う、それを言われると……」

 

初日から忙しなく動き回る羽目になり、うちも含めた研修組は全員食堂のテーブルの上に突っ伏すことになったんだよね。辺境部隊からの出向だから周りに馬鹿にされるとか言われたけど、そんな事は全然なかった。むしろ、不思議な連帯感が生まれたくらいだし。

 

体力トレーニングが終わって休憩を挟んだら、機体の整備作業なんだけど……主任さんは勿論のこと、他の整備士さん達の仕事が早い上に丁寧なんだよね。仕事の丁寧さには自信があったんだけど、ここで仕事をしていると自惚れに近かったのだと思い知らされたんだよね。

 

「まずは全体をチェックして、不備のある箇所をリストアップ。それが終わったら、順位を設けてから作業。これだけでも作業効率は上がります。ご自身に適したやり方もあるのでしょうが、不備を見つけたら直ぐに作業は直した方がよろしいかと」

「は、はい!」

 

その主任さんも、うちに指導しながら整備作業も並行しているから凄いんだよね。この専用機――ドレイクの整備を一時間足らずで終わらせているし。それもほぼ一人で。

 

うちも含めて研修員全員、ドレイクの整備に参加したんだけど……専用機だから整備マニュアル片手じゃないと無理なんだよね。すぐに頭に叩き込んだけど。ハウンドやラクーン、持ち込まれたテウメッサとネヴァン、モーヘイブにも整備マニュアルはあるけど……常にマニュアル片手で作業するのは効率が悪いし、仕事も溜まるんだよね。その理由が……

 

『連絡!十時の方向に敵艦隊の艦影を確認!その数、二十!!』

『同時に機動騎士の出撃も確認!パイロットはすぐに出撃の用意をして下さい!』

 

結構な頻度で宇宙海賊と遭遇し、襲撃を受けているからなんだよね。それで暇な時がほとんどないし、解体や回収、仕分けで大忙しだし。これ、絶対に整備士の仕事じゃないよ。他の人たちも手伝ってくれてるけど。

 

「こんなに襲撃が多いと、機体の整備が大変だよ。他の子たちも、ほとんどがカスタムされているし」

「少しでも生き残れるように最善を尽くすのが、馬鹿船長の方針なので。整備班も苦労していますけど、機体を好きに改造できるから構いませんけどね」

 

改造、改造かぁ……確かにここの人たちは機体を楽しそうに改造しているんだよね。武器まで作り出す始末だし、もう整備士じゃなくて技術者だよ。うちらも参加できるし、楽しいからいいんだけど。

 

うちもメレアに戻ったら、モーヘイブを全部改造してみようかな?幸い、手に入れたジャンクパーツは好きにしていいと言われてるし。中古機体の改造のノウハウも、個人的に教えてもらってるし。でも、艦長さんたちが良い顔しそうにないし……その時はその時で考えよう!

 

 


 

 

最新空母のビクトリアになったことで、宇宙盗賊の襲撃頻度は減った……とはならなかったな。

 

「最新の船でも襲撃の頻度が落ちないのは不思議だなぁ」

「最新の船でも空母ですからね。軍属でない上、一隻しか航行していなければ、儲けられそうと考える馬鹿がいても不思議ではないかと」

 

つまり、目先の金欲しさに襲って来ているのか。未開とも呼べる航路だから、お世辞にも治安がいい宙域とも言えないからな。丁度いい実戦相手になってはいるし、戦利品も得られてはいるからいいけど。

 

「というか、オレもドレイクに乗って暴れたいんだけど。アイツなんて、嬉々として暴れてるし」

 

オレがそう呟く視線の先には、ソルジャー・ハウンドに乗って敵機を次々と両断しているアスカがいる。一応、周りとの足並みは揃えているけどさ。

 

「アイツのヤバいスイッチがいつ入るのか、分からないのが恐いんだよな」

「現時点では、船長絡みでしか入りませんけどね。例のシミュレーターでそうでしたし」

 

そうなんだよな。操舵手の言葉通り、オレ関連でしか暴走してないんだよな。シミュレーターの交代時間を無視して、文句を言ったらソイツを壁におもいっきり投げ飛ばしたし。それでオレが赴いて鎮圧する羽目になったし。

 

「ラクーンのカスタム機……バスターとソードも問題なく動いてそうだな」

 

大型武装をマウントした専用バックパックに換装したラクーン……長距離砲撃が主体の【ラクーン・バスター】も、近接向けの【ラクーン・ソード】もしっかり動いてくれている。亜空間の収納機能は高い魔力操作が求められるし、取り回しも慣れないと不便極まりないし。つまり、その亜空間から大量の武器を使い回す大将は凄いということだ。

 

「ヴァジュラの方もしっかり動いてるな。不具合もなさそうだし」

「新型エンジンを融通してくれましたからね。対価としてデータを渡さなければなりませんが」

 

カスタムされたラクーンだけでなく、絹枝と雪枝の専用機【ヴァジュラ】もアスカに負けず劣らずの働きをしている。二人乗りも相まって大型の機体となっているが、その分武装も豊富だ。交換式のミサイルコンテナに、ブースターも兼ねた二門の大型ビーム砲。マルチウェポンのシザーブレードライフルにサブマシンガン、サイドスカートにはアヴィドにも採用されたテイルクローと同系統の武装、テイルダガーが仕込まれている。当然、エネルギータンクも大型で結構な重量になっているが。

 

そんな感じで盗賊退治は終了。人的被害はゼロ。何時も通りの戦果だ。盗賊連中は捕らえて檻の中、保護した囚人は医務室だ。船も残骸も当然回収してワイヤーで括り付けて、牽引状態だ。

そして、肝心の戦利品は……

 

「これ、どこかの商人から奪ったものだろ。コンテナの中にレアメタルがぎっしりだし」

「一応、帝国の法律では海賊の所有物は自身のものに出来るとありますが……」

 

どこの商会のものか分からないけど、連中が溜め込んだにしては妙にきっちりしているんだよな。たぶん、商船を襲撃して帰還している途中でかち合ったパターンだな。

 

「オリハルコン入りのコンテナが二つ、ミスリルとアダマンタイトのコンテナが三つ、それ以外のレアメタルのコンテナは一つずつ……」

「普通に考えれば大儲けだが……面倒事の予感しか感じないぞ」

「レアメタルのコンテナ以外にも、乱雑に保管されていた財宝があるから……レアメタルのコンテナは全部大将に献上するか」

 

正直惜しくはあるが、トラブルの種になりかねないからな。仮に抗議されても大将なら強気な態度でぶった切るだろうし。勿論、財宝の中にある黄金も献上するけど。

 

『事情は分かりました。そのレアメタルが積み込まれたコンテナはすべてこちらで引き受けましょう』

 

天城殿にも話を通したので、ワープでハイドラの宙域へと一時帰投。責任者の立場にある騎士長のクラウスへと引き渡した。

 

「……今回も承った。後はこちらで引き受けよう」

「応。今回もよろしく頼むよ」

「可能であれば、頻度は少ない方が良いのだがな」

 

クラウスは表情一つ変えることなく愚痴のように呟く。まあ、彼らからしたら儲かるとはいえ仕事が増えているから当然かもしれないけど。

 

「悪いが、それは襲撃してくる奴らに言ってくれ。オレの方から探しているわけじゃないし、保護した人たちの治療も必要だからな」

「……そうだな」

 

短い言葉で同意しているけど、視線で何かを訴えているような気がするんだよな。これはたぶん……

 

「心配しなくても着服してないし、取り分も誤魔化してないぞ。そんな真似したら、大将の逆鱗に触れるからな」

 

不正をしたらタダでは済まさないと睨みを効かせているんだろうな。基本的に大将の騎士は忠誠心が高いし、大将第一だからな。

それにオレの勘がこう告げているしな。この人はとてつもない有望株だと。クリスティアナが筆頭騎士を解任させられたから、次の筆頭騎士はこのクラウスかもしれないな。

 

 


 

 

(いやいや!私はそんな事は微塵も考えてないよ!?ただ、仕事に終わりが見えないから勘弁してほしいと思っているんだけど!?)

 

クラークの発言に対し、クラウスは表情一つ変えないながらも、心の中では凄く動揺していた。

確かにクラーク船団は海賊船を拿捕し、所有物もかなりの割合で明け渡しているが……その度に処理すべき仕事が増えている。海賊の引き渡しに捕虜の受け入れ、押収した財産の申告……とにかく仕事が増えているのだ。

 

幸い、優秀な部下たちのおかげで片付けられているのだが……本来の仕事が止まるから勘弁してもらいたいのが本音だ。

勿論領主――リアムのように積極的に海賊を探し出し、退治している訳ではないのは理解している。理解して、いるのだが……

 

(そもそも航路に問題があるんですよ!襲撃を受けた宙域は治安が悪いのに、何でわざわざそんな危険なところを航行するんですか!?)

「襲撃が多いのは、航路に問題があるのでは?」

「あー、確かに未開の宙域を通っているから当然かもしれないな。だが、本物の宇宙海賊は未知を求めるからな。既に航路がはっきりしているところを通るのは、冒険じゃないからな」

(その理屈はおかしいですって!いや、その理屈で新惑星を見つけたんでしょうけど!!)

 

これからも仕事が舞い込みそうな事に、クラウスの胃はキリキリと痛むのであった。

 

 


 

 

「主任。ラクーンとテウメッサの幻影機能、ハウンドにも組み込めませんか?」

「機体のリソースからして、難しいと思いますよ。誰が最初に言い出したのですか?」

「今回は船長じゃなくてアスカですよ。幻影機能に惹かれていたのでそれならとテウメッサ辺りを勧めたら、だったらハウンドに組み込めと無茶ぶりを」

「あの人ですか……」

 

確か、伯爵様が報酬代わりに押し付けたんですよね。それもお姉様の発案で。問い詰めたら視線を泳がせながら言い訳していましたし……本当に何を考えているのでしょうか。

 

「でも、馬鹿船長のこれまでの無茶ぶりに比べたらまだマシですね」

「ですね」

 

一先ず、予備機のハウンドとラクーンを改造用に回しましょうか。トライ&エラーの繰り返しになるでしょうが、改造は大好きですからね。

そんなやり取りをしていると、モリーさんがおずおずといった感じで話しかけてきました。

 

「えっと……今までどんな無茶ぶりをされたんですか?」

「変形機構に内蔵式のワイヤーガン……特に変形機構はフレームそのものを改造しないと無理でしたので。伯爵様との契約前は、型落ちの中古で作ってましたので」

「型落ちの中古……とてもそうには見えないんだけど」

 

モリーさんは半信半疑のようですが、昔と比べたら最新の塊ですからね。今の姿しか知らないのであれば、当然の反応とも言えます。

 

「確かに新型に囲まれているけど、それもしっかり稼いでいるからこそだよ。船と機動騎士の出費はリアム伯爵が負担してくれているけど、好きにしていいわけでもないし」

「そのような真似をすれば、伯爵様は激怒して即首斬りですからね。馬鹿船長さんも、申告して許可を頂いてから購入していますし」

「稼いでいるからかぁ……確かに稼いではいるね。その分、大忙しで戦闘も頻繁だけど」

 

モリーさんも一月の激務を思い出しながら、納得したように頷きました。襲撃の頻度が変わらなかったのは少し意外でしたが、向こうから狩られに来てくれるので、私個人としては満足です。

 

「ロイネ主任。モーヘイブの強化装甲が組み上がりました」

「了解しました。モーヘイブに取り付けた後、軽い動作確認をお願いします」

 

勿論、持ち込まれたモーヘイブの強化改造も並行しています。向こうで問題なく整備、作製できるように外付けくらいですけど。ネヴァンの配備が進んでいるようですが、数の問題もありますからね。現役機を格安で強化できるなら、繋ぎとしてアリでしょうし。

 

装甲の材料に使ったのは、海賊(ゴミ)が使う機動騎士です。現地改造できるよう、既存の道具のみで作った継ぎ接ぎ装甲。サブスラスターも組み込んでいますから、重量増加による機動力の低下もある程度抑えています。馬鹿船長の言葉を借りるなら、これも浪漫ですね。

 

軽い動作確認も終え、馬鹿船長の許可を得てから強化装甲付のモーヘイブ……【モーヘイブ・グランサ】の実戦テストを行いました。名称はアーマードでも良かったのですが、妙に語呂と響きが悪く感じられたので。

 

「何か問題がありませんか?些細なことでもよろしいので、遠慮なく言って下さい」

『少し動作が重く感じられるが、それ以外は概ね良好だ。動作の重さも慣れればスムーズに動かせそうな程度のものだし、アシスト機能も問題なく働いている』

「それは良かったです。機体本体の内部を弄ればもっとスムーズに動かせると思いますが、下手に弄りすぎれば整備が大変になりますので」

『あくまで研修の出向だからな。ここでしか使えないんじゃ、強化の意味がないからな。個人的には凄くありがたいけどな』

 

その後も色々とテストをして、致命的な問題がないことを確認しました。模擬戦でラクーンと戦わせましたが、想定より粘る結果となり、満足のいく成果です。

 

 


 

 

ビクトリアのトレーニングルームは地獄と化していた。

 

「起きてください、皆さん。まだ訓練は終わっていません」

「体力がないと言うなら、根気で立ち上がってください」

 

死屍累々のように床に倒れている者たちに、相手を務めていた絹枝と雪枝が容赦なく発破を掛ける。立ち上がれず、呻き声しか上げられない彼らに、絹枝と雪枝は躊躇いなくショックガンを撃ち込んでいく。まさに鬼の諸行である。

 

「動かなければ、戦場では死にます」

「生きたいなら、死ぬ気で動いてください」

 

何故こんな状況になっているのか。一言で言い表すなら“模擬戦”だ。

生身での戦闘でも、機動騎士での戦闘でも、戦闘技術というものは重要だ。実際、リアムやクラーク、クリスティアナとマリーも生身での戦闘技術が機動騎士においても反映されているのだ。前者は強すぎるあまり、機体が枷になりかねない可能性もあるが。

 

なので、機動騎士で活かす意味合いも兼ねて生身の戦闘訓練も(元からではあるが)取り入れ、絹枝と雪枝を初めとした、上位の実力者が教官代わりとして特訓を施している。その結果がこの屍の山である。

 

「お、鬼だ……双子の鬼だ……」

「可愛い顔して、やることがえげつない……」

「無駄口を吐けるなら、まだやれますね」

「次こそ最後まで立っていてください。もしくは誰か一人でも一撃当てるかです」

 

半ば強引に立たせたにも関わらず、絹枝と雪枝は容赦なく双子ならではの連携で彼らを一方的に攻撃していく。中には自爆特攻する輩もいたが、それも二人のコンビネーションの前では無力だ。

そして、本日もパイロット側の研修組は食堂で突っ伏すこととなった。

 

「訓練だけで体力が全部持っていかれる……」

「ここの人たちは本当におかしい。研修とは別口の派遣された人たちと互角以上だし……」

「なのに、俺たちの訓練は軽い方なんだぞ?一度参加してみたけど、アレは本当におかしい……」

「加重された部屋でなんであんなに動けるの?幾らなんでもおかしいよ……」

「だからってサボろうとか考えるなよ。正論のマシンガンでボコボコにされただろ」

「……わかってるよ」

 

釘を刺された人物――ラリーは気まずそうに顔を逸らしている。初日のまごうことなき正論の説教を思い出して。

 

『偉い?見下す?じゃあ、弱者の立場を利用して偉そうにしている今のお前は何だ?その嫌悪している奴と同じじゃないのか?』

『やる気がないなら帰れ。仕事を放棄して文句だけしか言わない奴より、やる気がある奴を鍛えた方がずっといいからな』

『見下しているのはお前の方だろ。オレは団の長として、やるべきことをやっているだけだ。肩書きだけ見て、相手を決めつけているお前と違ってな』

『今ここで訓練が嫌で帰るか、見返すために残るかを決めろ。惰性じゃなく、お前自身の意思で舵を取れ。通したい意地が残っているならな』

 

あれだけ言われたままなのは本当に悔しかったラリーは、自棄に近い形で今もビクトリアに残っている。後五ヶ月程でモリーと一緒にメレアに帰ることになるが。

 

「…………」

「あれは本当に堪えたよな。俺らもだけど」

「何となくで参加したから、気まずかったんだよな」

「それで気が引き締まったから、悪いことばかりじゃないけど。お前は黒歴史だけど」

「一言余計だよ!」

 

多少は体力が回復して会話の延びが無くなったパイロット側の研修組に、整備士側の研修組が近寄ってくる。お互い、食事の時間のようだ。

 

「おお、今日も死に体だな。初日と比べたら元気な部類だけど」

「お前達の方は余裕そうだな」

「さすがにパイロットと整備士とじゃ内容が違うだろ。体力トレーニングはキツいけど」

「それにやることも多いし。終わったら改造に参加できて楽しいけど」

「「「「「本当に楽しそうだな!」」」」」

 

この差はなんだと思いたいが、単純に内容の違いでしかない。どちらも向上目的ではあるが。

何にせよ、研修の狙いである全体の底上げには貢献していた。

 

 

 

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