オレは本物の宇宙海賊!   作:パイレーツ

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宇宙海賊、護衛に付く

試験機が盗まれた。

それをニアス少佐から聞かされたオレの率直な感想は……何でオレに言うのかだった。

 

「……その盗まれた試験機。ハウンドとはいえ、オレには関係ない筈だよな?」

『愚痴らないとやってられないんですよ!上から盗まれたことをしこたま怒られたんですよ!?それに加えて給料まで減らされて……試験機を盗まれたのは私のせいじゃないのに!!』

 

涙声でニアス少佐はそう叫ぶと、蹲るかのようにワンワンと泣いていく。まあ、気持ちは分からんでもない。

その襲撃した傭兵団の目的は別の新型機だったにも関わらず、オマケか離脱の為に盗まれた機体が第七にとっては一番困るものみたいだし。その新型も大将の指示で製造元の第三兵器工場との共同開発という形で完成させたそうだし。

 

ちなみにその試験機のハウンドは、大将の予備機のゴールド・ハウンドに搭載する予定の機能が搭載されている。それに装甲もロレイアの技術で加工された特殊金属だし、バッテリーも例の新型だ。フレームやエンジンは通常だが、通常の機体と比べたら強力なのには変わりはない。

 

「けど、その新型もよく抵抗できたな」

『ぐすっ。例の新型……アタランテにウチで試作したガンブレードを持たせたからですよ。盗まれた試験機に装備する予定の武器でしたけど』

 

オレの疑問にニアス少佐は涙を拭きながら答えを返す。

そのガンブレード……間違いなくロレイアの技術を使って作ったやつだろうな。武器の性能テストも兵器工場としては当たり前だし。ちなみに、そのガンブレードはそのままアタランテの武装として使われることになったそうだ。データの提出義務が付随されてはいるが。

 

しかし、襲撃した傭兵団の名は《ダリア傭兵団》か。後でイネスに聞いてみるか。元傭兵なら何かしら知っているかもしれないし。アスカ?彼女は論外だ。

 

「ダリア傭兵団?確か、ヴァルチャー所属の幹部クラスの傭兵団だったね。その傭兵団がどうかしたのかい?」

 

ニアス少佐の愚痴が終わって早速、イネスに聞いたらビンゴ。なので、オレは詳しい事情を説明していく。

 

「なるほどね。確かに傭兵なら報酬さえ貰えれば、どんな汚れ仕事でも引き受けるだろうね。でも、今回の襲撃はアタシ的には割に合わないかな」

「そうなのか?」

 

イネスの見解にオレは首を傾げる。イネスも最初に口にした通り、傭兵は報酬で動く存在だ。昨日まで敵対していた相手でも、報酬さえあれば味方になるのも日常茶飯事だとも聞いているんだが。

そんなオレの疑問を察してか、イネスは肩を竦めながら説明していく。

 

「傭兵は戦場で稼ぐ存在だからね。その生命線とも言える兵器を生産、販売している兵器工場の襲撃は、余程でないと敬遠するものなんだよ。そんな真似をしたら、二度と兵器を売ってくれなくなるからね。特に第七は古代技術の提供元と懇意にしているから、尚更ね。少なくともアタシは、違約金を払ってでもその依頼からは手を引くよ」

 

その説明を聞いて確かにと納得する。ロレイアの技術は追い出された兵器工場以外は調査を続けられているが、その進展具合は技術に系統していた第七が進んでいる。アヴィドやグリフィンで色々できたことも大きいだろうが。

それで見た目が不人気で正式採用が何度も見送られている第七であったとしても、将来を見据えれば大損となる可能性が高いと考えるってことか。

 

ちなみに第一兵器工場だけでなく、バークリー家に味方した第二兵器工場も大将の不興を買って叩き出された。第二はかなり抗議したみたいだけど、バークリー家に兵器を大量に売って恩を売ろうとしたことが暗部の調査で露呈していたからな。

 

「それだと、どうしてその傭兵団は襲撃の依頼を引き受けたんだ?それだけ、その依頼の報酬が破格だったのか?もしくは契約破棄の違約金が高かったとか」

「それだけだったら、彼処の団長……シレーナは手を引きそうなんだけどね。彼女、都合よく使われるのを酷く嫌っていたし。正直に言えば、傭兵に全く向いていないね。傭兵は戦場で生きる……基本は依頼主に体よく使われる存在なのにさ」

 

それなら何で傭兵をやっているのか……はヤボだな。そのシレーナも、傭兵として生きるしかない事情とやらがあるのかもしれないし。

 

「どちらにせよ、ダリア傭兵団はバンフィールド家絡みの依頼は少しの間避けるだろうね。かなりの痛手を受けたみたいだし、少なくとも割に合わない依頼だったと考えると思うよ」

 

イネスはそう言って話を締め括る。本当にこれっきりなのかは疑問ではあったが。

 

 


 

 

帝国から遠く離れた惑星。他の星間国家にて。

 

「リアムに関わったのが失敗だった。その失敗で、クラークという余計かつ厄介な存在まで加わってしまった。最早、小細工程度ではどうにもならない」

 

他の惑星で泥水を啜るかのように負の感情をかき集め、回復に専念していた案内人はどう動くべきか考えていた。冷静に慎重に考え抜いた案内人は、ある一つの結論に至っていた。

リアムとクラークを帝国内における暗躍で潰すことは不可能。そして、二人同時に潰そうとすれば、存続が危ういレベルで返り討ちに合う。それどころか、自身の蒔いた種を取り込んでより強大になる始末だ。

 

――故に、原点に戻ってリアムを優先して叩き潰す。そもそも、クラークと案内人の間に直接的な縁はない。リアムを経由しなければ、感謝の念すら届かない。その潰すべきリアムは、帝国を滅ぼせば連鎖的に破滅するだろうという考えに至っている。

 

「帝国の周囲の国家に不和の種を植え付け、火を起こさせる。それが大きな炎となり、帝国をも焼き尽くす!お前たちが何も知らずに過ごす間に、対処が不可能な程の事態に肥大すれば……道連れで消え去るだろうな!」

 

物理的に遠い場所であれば、感謝の念も届きづらい。リアムからの感謝によるダメージを最小限に抑えつつ、帝国の周りを敵だらけにする。国家レベルの災厄となれば、いくらリアムと云えど手が回らない。それはクラークも同様だ。

 

「リアムを不幸のドン底へと叩き落とせば、私の力は増大する。その力を以て、後ろ楯を無くしたクラークを船団諸とも叩き潰す!勿論、直接ではなく周りを煽動する形でな!!」

 

あの忌まわしい杖のせいで直接の干渉は不可能ではあるが、方法がないわけではない。幸い、クラークは複数の古代遺産を所持している。それらを手中に収めようとする連中をけしかけるだけで、簡単に餌に集る獣のように群がるだろう。

 

「この遠い地で、お前たちを不幸の奥底へと蹴落とす準備を整える!準備を終えたその時が、お前たちの破滅の始まりであると同時に最後の時だ!!私に殺されるその時を、知らずに待っているがいい!!」

 

案内人はその決意を下に、殺意を露にする。リアムとクラークの絶望に染まった顔を想像しつつ。

こうして案内人の暗躍により、周辺国家の情勢は不安定となっていく。それが、憎きリアムへの絶妙な支援になっていると気付きもせずに。

 

 


 

 

……今回の要請は部隊と一緒に、ヘンフリー商会の輸送船の護衛か。

 

「商会の護衛なら、軍だけでもいい気がするんだけどな」

 

いや、その軍があちこちで動き回っているからオレらにも声が掛けられたんだけど。

大将が面会を求めた帝国の第三皇子であるクレオ殿下を皇太子、最終的には皇帝にすると後継者争いに参加。それで第二皇子のライナス殿下から経済制裁を受ける事になったんだよな。レアメタルの取引を妨げられて大将は怒り心頭……というわけはなく、これを機に外国と取引しようと動き出したくらいだ。早い話、経済面ではそこまで困っていないということだ。

 

大将の経済力はレアメタルが目立っているが、それ以外の産業にも手を回しているんだよな。この辺りは領主としてのリスク分散と、大将個人の領民から永く搾り取るための下地作りなんだろうな。何も無いところからは搾り取れないし、大将自身の采配以外の原因で民が苦しむのは、絶対に避けたいだろうしな。常日頃から悪徳領主だと公言しているし。

 

後、大将が第三皇子を支援すると決めたのは……そっちの方が“面白い”からだろうな。それと、第一皇子のカルヴァン殿下やライナス殿下の『頭を下げれば自身の派閥に加えてやる』という対応にムカついたから、というのもあるだろうが。そもそも後継者争いに参加しようとすら考えていなかった大将だ。それを向こうから誘っておいて、頭を下げて願い出ろはどうかと思う。単に引き込む気がなくて、クレオ殿下への牽制程度だったのかもしれないが。

 

で、今回の護衛要請が来た理由は……大将の御用達の商人であるトーマス殿と取引している人物から、傭兵団が敵対している連中に雇われたという情報が流れてきたからだ。規模も大きいため、精鋭を護衛に回せないかとトーマス殿が打診したそうだが、その精鋭の一人であるクリスティアナはクレオ殿下の護衛、マリーも別の商人の護衛で大忙しで要望に応えられる余裕がない。軍隊を既に総動員していて追加の部隊すら回せないから、基本は自由行動のオレらに要請が掛かったというわけだ。

 

《ポータル》で輸送船ごとワープすれば、道中の襲撃関係なく物資を短時間かつ安全に運べるのではと提案もされたが、それは土下座して断らせてもらった。それをやってしまうと、物資の輸送に引っ張りだことなって本業に支障が出てしまうからだ。大将もそれは困ると理解してくれて、この案は白紙となった。

 

「オレたちは基本的に遊撃ってことでいいか?」

『ああ。それで問題ない』

 

話が分かる責任者で良かったよ。単にどう組み込めばいいのか分からないという理由もありそうだが。

 

「しかし、最近はオレの服装に対して何も言わないヤツが増えてきたな……」

 

これはもしかして……

 

「本物の宇宙海賊への理解が徐々に浸透し始めているからか……!?」

「いえ。ツッコムだけ無駄だと思い始めているだけでしょう」

 

オレの歓喜の籠った呟きを、副長が呆れと共にバッサリと否定してきた。

 

「いいや、そんな筈はない。出向してきた者たちも、偽の宇宙海賊を宇宙盗賊と呼び始めているんだからな」

「それは船長に気を使っているだけです」

 

副長の意見が厳しい!他の船員も副長に同意するように頷いているし!

そうこう話している内に、ビクトリアのレーダーが敵艦隊を捉える。戦艦の数は五十弱。家紋やシンボルなどのマークはなしか。

 

「総員、戦闘準備!」

「ハッチ展開。機動騎士、何時でも出撃できます!」

「よし。オレも――」

「船長は待機して下さい。まずは様子見なので」

「……分かった」

 

 


 

 

バンフィールド軍の護衛艦隊から機動騎士が次々と出撃していく。その殆どがネヴァンであり、数は少ないがハウンドとラクーンも混ざっている。

 

もちろん、ビクトリアからも機動騎士――ハウンドとラクーン、水色のテウメッサが出撃する。水色にカラーリングされたテウメッサは下腹部に砲口、リアスカートには追加の補助バッテリー、コンテナを乗せたかのような肩部装甲と各部に違いがある。

 

【テウメッサ・アサルト】――攻撃性を高めたテウメッサのカスタム機に乗っているイネスは、微笑と共に敵艦隊を見据えていた。

 

「それじゃあ、先陣を切らせてもらおうかな」

 

イネスはそう呟くと同時に、テウメッサ・アサルトは敵の戦艦に向かって突き進んでいく。戦艦から砲撃が放たれ、小型に分類される機動騎士もビームを乱射していくが、イネスはそれを軽々と躱していく。イネスは躱しながら、二丁のビームピストルで小型の機動騎士を撃ち抜きつつ、下腹部の砲口から高威力のビームを放って更に機動騎士を爆散させて撃墜していく。

 

『色違いのテウメッサか。チェンシーのような腕利きと期待してもいいかな?』

「フフ、期待してくれて構わないさ。錆びも大分落ちてきたからね」

 

横に並んだネヴァン・カスタムからの問い掛けにイネスは笑みを崩さずに言葉を返し、右手のビームピストルを腰のホルスターへと吊り下げる。そして、シールドに内蔵されている超振動剣を展開すると同時に射線を躱して近づいて来ていた小型機を一太刀で斬り裂く。

 

斬られて一呼吸置いてからの大爆発。小型機にしては些か疑問を感じさせる爆発の規模。そこにイネスは違和感を感じていた。

 

(機体の大きさと爆発の規模がチグハグだ。それに小型機の動きも単調だ。この手、どこかで……)

 

イネスが思考に耽りながら小型機を墜としていく中、他の機動騎士たちも互いにフォローしつつ小型機を撃破していく。味方の機動騎士が敵艦に張り付くまでもう少し……そのタイミングで敵艦隊は小型機を残したまま、ワープでその場から立ち去っていった。

 

『味方を置いて逃げた?』

『不利を悟っての離脱?それにしては……』

 

前触れのない撤退に誰もが困惑する中、イネスだけはある予感から直ぐにフルオープンチャンネルで通信を開く。

 

「全機、小型機から急いで距離を取れ!アタシの予想通りなら、この機体たちは爆発する!!」

 

イネスからの突然の警告。その警告に多くの者は困惑しながらも、急いで小型機から距離を取ろうとする。

直後、残された小型機が一斉に大爆発を引き起こした。

 

「くっ……!」

 

イネスは爆発の衝撃に襲われながらも、既に距離は取っていたので直撃は受けていない。だが……

 

『おい!返事をしろ!!』

『早く船に連れていくんだ!急がないと手遅れになるぞ!!』

 

距離が近すぎた者、対応が遅れた者、味方を庇った者など、少なくない人数が小型機の大爆発に巻き込まれてしまっていた。爆発に巻き込まれた機体の中には損傷が酷いものもある。中には命を落とした者もいるだろう。

 

「やってくれたね……《ミスト傭兵団》」

 

イネスは思い出した傭兵団の名を、自身の苛立ちと共に口にする。小型機の大爆発は彼らが最も得意とする戦術であり、十八番。それもリモート操作による無人機だから質が悪い。

 

「すぐに思い出せないなんて、元団長として情けないね。戦場から……戦いから離れていたツケがここで回るなんてね」

 

イネスは自嘲しながらも意識を切り替えると、味方の救護に向かう。この借りは返すと心に決めて。

 

 


 

 

――船員が二人死んだ。

 

「……仲間の死はやっぱ慣れないな」

 

オレは死体袋に包まれた二人の亡骸に、黙祷を捧げる。この仕事が終わったら、しっかり弔うことを誓いながら。

まさか小型機が自爆するとは……いや、あの規模の爆発からして、事前に爆薬を仕込んでいたのだろう。つまり、最初から爆弾として小型機を放っていたのだ。

 

それにすぐに気付けなかったとは……船長としての力不足を感じてしまう。イネスが警告しなければ、死傷者はもっといただろう。それだけ、小型機の自爆は想定の埒外だった。

 

「船長。今は……」

「分かっている。まだ終わっていないからな」

 

オレはそう返しながらその場を後にする。今すべきことは輸送船の護衛だからな。同時に、敵艦隊の正体も知らなければならない。イネスのあの時の警告からして、敵の正体を知っている筈だ。

 

「イネス・フレイザー君。君は敵の正体に心当たりはあるかね?」

「あるよ。あの手はミスト傭兵団の十八番とする戦術だ」

 

今回の責任者【アルバート・バンク】の問い掛けに、イネスはすぐに肯定する。

 

「ミスト傭兵団……それが今回襲撃した連中と見ていいのか?」

「ああ。ミスト傭兵団は元宇宙海賊……コホン、盗賊から鞍替えした連中さ。アイツらは利益優先で依頼人を裏切ることもあれば、盗賊行為もやってのける。それも、相手が目を瞑れる範囲でね」

 

またしても偽の宇宙海賊か!!どこまで本物の宇宙海賊を貶めるんだ!!ミスト傭兵団、許すまじ!!

 

「そして今回の襲撃は……こちらの戦力の測りつつ、少しでも削るのが目的だろうね。奴らは最初に小突いてから戦力を測り、次の襲撃で目的を果たす……それが彼らのやり方さ」

「目的……この場合の目的はヘンフリー商会の輸送船、か」

「だろうね。物資奪取か輸送船の破壊かのどちらかで、護衛の艦隊はマトモに相手しないと思うよ。いや、こちらの目的からして、輸送船を破壊するだろうね。護衛を失敗させて撤退させる……向こうはそのプランを組み上げていると見ていいと思う」

「……厄介だな。元盗賊となれば、奇襲するのも雑作もないだろうからな」

 

二人の話を聞く限り、完全に後手に回っているな。輸送船をワイヤーでビクトリアに繋げて《ダイモン》で守る……は無理があるな。《ダイモン》は強力だけど無敵じゃないし。

ここは……相手の思考の裏を読むべきだな。この場合は――

 

 


 

 

「バンフィールド家の軍は噂通りの実力……そこに加えて、クラーク船団も護衛に付いている、か」

「如何いたしますか?団長」

「今回の依頼は輸送船の物資だ。向こうに物資が渡らなければいいのだから、輸送船を撃墜しても依頼は達成できる」

「依頼を達成した後で、その物資は我々で回収するのですね」

「何を言っている?物資ではなく()()の回収だぞ?ゴミは回収して感謝こそされど、文句を言われる筋合いはない」

「そうでしたね。回収したゴミはどうされますか?」

「あの商人に裏で捌いてもらうさ。海賊貴族という得意先が消えてお困りだろうからな」

「承知しました。それと偵察部隊からの報告に、イネス・フレイザーらしき者がいたと上がっています」

「そうか。もしそうなら我々に気付いているだろう。本命の襲撃は少し捻る必要があるな」

 

 

 

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