オレは本物の宇宙海賊!   作:パイレーツ

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宇宙海賊、デカイ宝を当てる

光学兵器を改造した照明装置が用意でき、オレたちはいよいよ真っ黒な海の中へと潜る。

 

『機動騎士二機、配置に着きました』

「了解。《ダイモン》の障壁を球状展開。これより本艦は潜水を試みる」

 

《ダイモン》の障壁が被膜状から球状へと変更され、船を高度を徐々に下げていく。展開された障壁は海水の侵入を許さず、その存在を保ち続けている。

相変わらず古代の遺産は凄いな。潜水は何度もやっているが、一度も浸水を許してないからな。現代の技術で再現不可能な性能だから当然かもしれないけど。

 

「浸水の確認なし。このまま潜水を継続します」

「機動騎士二機に通達。照明を付け、光源を確保せよ」

『『イエス、キャプテン』』

 

パイロットたちも頷き、照明に改造した光学兵器を振って周囲を照らしていく。戦艦に取り付けられている位置を知らせる為の照明も使って確認していくが、魚らしき存在は一体も確認できない。

 

「魚一匹見当たらないな……本当に汚染された水の可能性が高そうだな」

「もしくは元から、ですね。ここまで真っ暗だと慎重に進まないと危険ですね」

 

副長の言う通りだな。底に何があるかも分からないし。《ダイモン》があるとはいえ、過信するのも危ないからな。

 

「海のある惑星の醍醐味は、海中の景色なのに……真っ黒な上に魚もなしじゃ気分もダダ下がりだな」

「まあ、気落ちするのは確かですね」

 

この真っ黒な海をキレイにできないかな?いや、費用と見返りが全く釣り合いそうにないから無理か。

 

「一応、この惑星の情報を記録しておくか。今後どうなるか分からないにせよ、大将や天城殿に報告しないと駄目だからな」

「これまでは不要でしたが、今は貴族様と契約してますからね。報告を怠ると後の面倒に繋がりますし」

「その辺りは司令官としての経験か?」

「元、が付きますがね。汚職の濡れ衣で追い出され、安酒に溺れた男ですよ」

 

副長はそう言ってハハハ、と渇いた笑みを浮かべる。酒好きは今も昔も変わらずだが。

 

「しかし、船長もよく私に声を掛けましたね。あの時の私は、自棄になった酔っぱらいでしたのに」

「フフ、オレの直感が副長を見てこう告げたんだよ。コイツは誘うべきだと」

 

あの時は廃品を売ったり、襲ってきた奴らの金を巻き上げて資金を貯めていたからな。オンボロの中古船を買える程度には貯まり、今度はクルー探しと考えたところで、副長を見つけたんだよな。

 

「あの時の勧誘の台詞は今でも覚えてますよ。『おっちゃん。オレと一緒に夢と浪漫のある海賊にならないか?』……それを聞いて、コイツは何を言っているんだと思いましたね」

「あの時は成人したばかりの年齢だったからな。若造の言葉なんて、流されるのが大半だからな。それでも誘いに乗ってくれた副長も、感じ入るものがあっただろ?」

「何度も言ってますが、誘いに乗ったのは自棄からですよ。どの道、堕ちるだけだと思っていましたからね。誘いに乗ったら、冒険者の真似事だった時は面食らいましたが」

「あの時はオレも若かったな。まさか、偽物の宇宙海賊が存在してたとは想像すらしていなかったからな」

 

当時、副長は『海賊なんて名乗ったら、撃墜される』と何度も言っていたからな。実際、軍の哨戒部隊に墜とされかけたし。

副長も呆れたように苦笑しているし、概ね同意してくれているだろう。きっと。

 

「船長はまだ若いでしょう」

「確かに。オレの海賊人生はまだまだこれからだな。この全宇宙に、本物の宇宙海賊を広めないといけないからな」

 

拳を握り、強く宣言するも、副長を含めた全船員は呆れたような反応をする。まだ船員たちの宇宙海賊の認識は誤解されたままか。本当に偽物たちのイメージが強すぎる!!

 

「それはそれとして、船長が愛読する小説は本当に変わってますよね。電子ペーパーではなく紙の本ですし」

「分厚く、文字もビッシリだが、それを苦にさせない物語だからな。旅先で出会う登場人物たちも魅力的だし」

 

その代表例は小国の騎士《忠犬のマイリ》だな。マイリは反逆の汚名を着せられた友の無実を証明する為に戦い続け、最後は命を落とすも友の名誉を取り戻せたという悲しくも泣ける章だ。マイリの友への想いの強さがこれでもかと描かれているから、本当に涙なしで読みきることはできない。

 

「確かに読めば読むほどのめり込む内容ですが……物語の端々に現実味を覚えるんですよね」

「それは当たり前だろ。これは事実に基づいて書かれた本だからな」

「その根拠はどこですか」

 

根拠はなくとも、分かるのだよ。何故なら……これほど素晴らしい本が単なる作り物である筈がないからだ!!

その後も談笑しつつ、照明係を交代しながら海中を進むが、怪しいものは一切なし。このままだと外れかな。

 

「ま、外れでも仕方ないか。当たりか外れかは、運任せだし」

「毎回当たりですと、贅沢になりますしね」

 

外れが圧倒的に多いが、その少ない当たりを引き当てるのが海賊の醍醐味だからな。ギャンブル?女遊び?そんなものに興味はない。

 

『船長。海底に舗装されたような地面があります。かなりの年月が経っているのか、ヒビだらけですね』

「そいつは朗報だ。海底神殿の存在が濃厚になったからな。この近辺を入念に調べるぞ!」

 

オレは期待に胸を膨らませ、周辺の調査を命じる。海底神殿は未知の宝物庫だからな。財宝があれば万々歳だ。

 

「……本当にあったな」

「あの大穴から内部に侵入できそうです」

「早速中に入るぞ。突き当たりでも、《ポータル》使えば楽に外へ出られるし」

 

探索を続け、角張った大穴を見つけたのですぐに侵入。道なりに進み、突き当たりで試しに浮上すると、そこでは港のような空間が広がっていた。

 

「……驚きましたよ。基本的に海底神殿は、すべてが水没しているというのに」

「これは期待できるかもしれませんね。船長」

「今からワクワクするよ。大気成分の調査が終了次第、上陸するぞ」

 

いや、この場合は訪問か?どちらにせよ、待ちに待ったお宝探しだ。

大気成分の調査の結果、問題なしと結果が出たので着のみ着なままで上陸。車に乗って手分けして、建物内部を調べ回っていく。

 

「この灯り、どんな原理で維持しているのでしょうか?エネルギーラインが動いている様子がありませんし……」

「元から光る鉱石が使われているのかもな」

「昔の技術は現代で再現不可能なのが殆どだからな。《ダイモン》に《メビウス》、《ポータル》もそうだし」

「後、この拳銃もな」

 

船員たちの談笑に、オレは黒光りする拳銃を取り出して会話に参加する。この拳銃も古代遺産の類だからな。

 

「そういえば、その拳銃もそうでしたね」

「無制限に実弾が撃てる古代拳銃ですね。確か、威力もグリップ近くの歯車で調整できたんすよね?」

「その上で、船長の銃の腕前も相当ですし。本当に遺伝子レベルでおかしいですよね」

 

遺伝子レベルでおかしいとはなんだ、おかしいとは。オレの敬愛するレイジャー船長も剣だけでなく、銃の腕前も高かったんだからな。それに加えて、こっちは携帯しやすいし加減も小回りも利くしな。

 

「それはそれとして、この海底神殿に財宝はあるかな?もしくは太古の遺産か、その両方か」

「本当に気が早いですね、馬鹿船長。まだ見つかってすらいませんのに」

 

調査係として同行しているロイネは呆れているが、その方が夢も浪漫もあるからな。人生は楽しんだもの勝ちとも言うし。

ちなみにロイネについてだが、ニアス中尉改め大尉の影響を受けたのか、本格的に技術者としての道を進むことにしたようだ。船内の設備も不要品を貰ったことでグレードが上がって出来ることが増え、ある程度の金属加工が可能となった。整備士長達も大喜びで、何を作ろうかと和気藹々と賑わっている。それは別に構わないんだが……

 

「整備士長から聞いた話だが、構想している武器がドリルや鋏……敵を仕留めるのに時間が掛かるのが多いみたいだな。まるで(なぶ)り殺すための武器じゃないか」

 

オレが呆れながら指摘した通り、ロイネが提唱する機動騎士の武器は、どれも痛ぶる目的で練られたようなものばかりだからだ。プラズマソーサーや超振動剣とか、使い方次第ではスパッと殺れる武器案もあるにはあるが。

そんなオレの疑問に、ロイネはニッコリと笑みを浮かべて答えた。

 

「え?何を当たり前な事を聞いているのですか?サクッと殺したら、馬鹿船長の言う強盗共が泣き喚けないじゃないですか。殺される恐怖を、ジワジワと与えられないじゃないですか。あの劣悪な犯罪者たちには、生まれてきたことを後悔させるべきですし」

 

こ、コワッ!ニッコリと笑っているが、滅茶苦茶コエェよッ!そこは姉と似なくていいんだよ!!

姉の方も大概だけど、ある意味ロイネの方がヤバい。激情に駆られて殺しにくるのではなく、冷徹に殺ろうとしているから特に。

 

「フフ、半分は冗談ですよ」

 

焦ったー。半分冗談なら……半分?

どの辺りが半分なんだ?強要はしないが、ジワジワと殺せる武器は作るってヤツなのか?背中の冷や汗が止まらないんだが。

 

「ちなみにお姉様も素晴らしいと褒めて下さいました」

「姉ぇッ!!」

 

そこは姉として咎めろよ、クリスティアナ!おもくそヤバい方向への背中を押してんじゃねぇ!!

 

「お姉様に与えられる機動騎士……第三兵器工場製の【ネヴァン】。データを見た限り、安定した万能機のようですから、追加しがいがあります。現時点では複合シールドくらいですが……」

 

機体の情報まで話したんかい。さすがに現物がないから武器の追加くらいなのが幸い?だが。

ロイネの黒い部分に戦慄しつつ、神殿の探索を続行。探索の結果、ここは海底神殿ではなく海底都市だった。

 

「神殿ではなく都市だったのは予想外だったな」

「内部への侵入経路もそうですが、明らかに人工的な作りですからね。どのような技術で建造したかは不明ですがね」

 

太古の技術は再現不能とはいえ、今回見つけた海底都市は建造技術においては群を抜いている。海の底で全体像を把握できない程の大都市……こんな超技術を持った惑星が、一体何が原因で滅んだんだろうな。

 

「取り敢えず、回収できる分は回収しておくか。この黄金の布は大事にしないとな」

「材質は金属なのに、手触りは布そのもの……無駄な超技術だぞ」

 

絹とか綿の繊維なしの金属オンリーの板金布に、整備士長は心底呆れている。

 

「そうか?金属なのに柔軟かつしなやか……普通のワイヤーより使い勝手が良さそうだぞ」

「確かにそうなんだが……強度は金属そのものなのに、衣服のように柔らかいのは本当に頭痛を覚えるぞ」

 

一体どんな理由で金属の布を作ったんだろうな?普通に防具目的か?昔の偉人の発想は本当に凄い。

 

「しばらく、この星の調査で往き来しそうだな」

「当時の施設がそのまま残ってるも同然だからな。移動手段が確立しない限り、《ポータル》頼りになるだろうな」

「今まででしたら放置でしたが、今はバンフィールド家と契約してますからね」

 

契約した故の面倒ごとだな。それでも面倒なあれこれは全部やってくれるけど。

 

 


 

 

……本当に大掛かりとなったな。

 

「専用ゲートの完成に約十年か。本格的に再利用することになるとはな」

「課題は多いが、それに見合う価値があると判断されましたからね。国自体も動いてますし」

 

そりゃ太古の超技術が丸々残ってるようなものだからな。帝国としても調査しがいがあるんだろうな。

ちなみにこの惑星の往来はワープでしか行えない。理由は単純、この惑星の水圧が本当に洒落にならないからだ。オレたちは《ダイモン》のおかげで普通に海底まで辿り着けたが、他の船では半分も行けなかったそうだ。つまり、現行の船では海底にすら到達できないという事だ。

 

その為、港に建造している専用のワープゲートが出来上がるまでは、物資や人員の運搬はオレたちが一手に行うこととなった。それもあって、この惑星の管理権限は大将のもの。往来できるのが、オレらと契約した大将だけだからな。ゲートの建造費用も大将が全部負担しているし。

海賊なのに、やってることが配送か惑星開拓なんだよな。報酬は多めに貰えたけど。

 

「普通に兵器工場の人間もいて、大賑わいだな」

「太古の金属加工技術に群がった結果ですね。私達が一つ先に回収したのもあるでしょうが」

「大型の設備は持ち運び出来なかったからな。工場の設備がまだ使えることには驚きだったが」

 

そう。ここまで大掛かりとなったのは、この海底都市の施設や設備が普通に使えたからだ。あの金属の布を作れる設備は勿論、特殊な合金を作り上げられる施設まであった。その特殊な合金の製造資料は所々欠損していたが、修復可能な域だった為、問題にはならなかった。

加えて設備そのものも大きな損傷がなかったから、エネルギーさえ解決すれば再使用可能だった。今は外部の稼働機関を持ち込んで、一部の施設の再起動に成功している状態だ。

 

今回のお宝は惑星単位だから、もて余すレベルでデカかった。それでもいくつか回収はできたけど。

これは余談だが、ニアス大尉が通信越しでオレに泣きついてきていた。今回見つけた惑星の調査員から真っ先に外されたから、加えて貰えるように交渉してほしいと。そんな権限はないから断ったけど。

 

ちなみに修行先のレーゼル家にいる大将は、その報告と黄金の布で上機嫌だったそうだ。安定した収入も見込めることからか、実にいい笑顔だったと天城殿から聞いている。オレたちもお宝が手に入って満足だしな。

そのお宝の一つ――御利益が有りそうな長杖はブリッジの壁に飾り付けた。大将は杖はいらんと言ってたし、オレの勘がこれが一番の宝だと告げていたからありがたく頂いた。

 

「使わない杖なら、倉庫に寝かせるか適当な場所で売れば良いと思うんですがね」

「適当な扱いはバチが当たると聞くし、艦橋で大事にしとけば福をもたらすかもしれないだろ?」

「まあ、別に構いませんがね」

 

これを機に、本物の宇宙海賊の名誉が回復するといいな。宇宙海賊は、夢と浪漫に溢れているからな。

 

 


 

 

――ある場所にて。

 

「ぐぁああああああっ!胸が焼けるように熱い!まだリアムから、感謝の念が飛んできているのかっ!!」

 

案内人は内側から焼かれるかのような痛みに、ゴロゴロと転がって悶えている。口元には血のようなものも垂らして。

リアムは現在、案内人の暗躍によってある没落貴族と情報が入れ替えられ、レーゼル子爵家で冷たい待遇を受けている。不遇な扱いを受けてストレスを覚える、もしくは不快感や怒りを感じている筈のリアムから、どういうわけかその真逆の念が送り続けられているのだ。

 

「一体、リアムの周りで何が……!?」

 

案内人は痛みに耐えながら、リアムの近辺の情報を探る。そこで、リアムの心の内の独り言を拾った。

 

『まさか、アイツらが太古の都市が丸々残っている惑星を見つけるとはな。謎の技術で作られた黄金の布が手に入っただけでなく、それらを生産できる工場の施設、設備も手に入った。しかも、調査に来た工場と工厰からも使用料が取れて、俺の収入源が更に増えた。それに例の建造中のゲートも俺のものだから、強引に取り上げられる心配もない。アイツらとの契約は本当に大正解だった。これも案内人のおかげか?もしそうなら……案内人、本当にありがとう!!』

「……アイツらかぁあああああああああああああああああッ!!」

 

リアムのその長い独り言で、案内人はすべてを理解した。本物の宇宙海賊とやらを自称する、あの頭のおかしい連中がやらかしたのだと。リアムを苦しめる為に繋げた縁が、案内人自身を苦しめる縁になったのは皮肉なことこの上ない。

 

「このままではマズイ!アイツらを何としてでも排除しなければ……!」

 

案内人は連中がこれ以上余計な真似をしないよう、欲望の暴走や面倒な連中との縁を無理矢理繋げて潰すことを決める。

案内人は干渉用の窓を開いて連中――クラーク船団へ干渉しようとして、目を疑った。

 

「へ?」

 

間抜けな声が案内人の口から洩れる。それも当然だろう。何せ――クラーク船団の船の艦橋から、常人には見えない、黄金の輝きが放たれていたのだから。しかもその発生源は、艦橋の壁に飾られたあの長杖からだった。

 

「――ぎぃいいいやぁあああああああああああああッ!!!」

 

それを理解した瞬間、案内人の視界が焼かれた。まるで眼球が一瞬で蒸発したかのような痛みに、案内人は顔を抑えて転げ回る。それだけに留まらず、案内人の全身が火炙りに曝されたかのように、その光に容赦なく焼かれていく。

 

「な、何であんな物があそこにぃ!?」

 

案内人は信じられないと叫ぶ。それは本当に予想外であり、最悪極まりないものだった。

何せ()()は、案内人のような存在にとっては猛毒そのものだ。下手をすれば自身が消滅しかねない、そんな危険極まりない品物だった。

 

どうしてあんな物が彼処にあるのか、いつ手に入れたのか、そんな疑問を解消するより早く、案内人は慌てて窓を閉じ、その光から逃れる。その光から逃れた案内人の全身からは、燻ったような黒い煙が立ち上っている。心無しか身体も薄くなっている。

 

想像すらしていなかった危険物により、予想外の大ダメージを受けた案内人。未だリアムからの感謝のダメージを受けている案内人は、悔しさからか地面を拳で叩いていた。

 

「クソッ。何で私がこんな目に……これではアイツらを潰せないじゃないか」

 

案内人は悔しさから声を洩らす。アレが彼処にある限り、クラーク船団への干渉は不可能に近い。本当に案内人とっては踏んだり蹴ったりの結果だ。きっと、どこぞの光る存在もご満悦だっただろう。

 

「さっきので力をかなり削られた……とにかく今は回復に専念しよう。そして、リアムを不幸のどん底へと叩き落としたら、次はアイツらだ」

 

案内人は逆恨みの念を募らせながら、リアムだけでなくクラーク船団も不幸に陥れると誓うのだった。

 

 

 

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