オレは本物の宇宙海賊! 作:パイレーツ
こうも一方的だと、向こうが不憫かな?海賊を名乗る偽物たちに、同情する気は欠片もないけど。
「いくら二万隻の艦隊でも、大将の一万五千隻の艦隊相手じゃ重荷だな」
「最新の戦艦の上、練度も高いですからね。数を揃えただけでしかない、張り子の虎の艦隊では対抗しきれませんよ」
実質、挟み撃ちにしているようなものだし。待ち構えていたら、背後から襲われたら堪ったものじゃないだろうな。それに加えて、大将の艦隊は士気も高いしな。向こうは半数以上が伐たれ、既に逃げ腰だ。
「やはり、バンフィールド家の艦隊は突撃思考が強いですね。今は戦艦の質と勢いで押せてますが、ずっとこのままでしたら危険ですね。突撃のみですと、対策が取られやすいですし」
「そうなのか?単体での突撃しかしてないから、その辺りは分からないんだが」
「ええ。一方的に殴れる相手だけを襲う彼らと違い、正規軍のような一定の覚悟も持っている者ですとすぐに対応されるでしょう。突撃しかできない艦隊ですと、対応次第で窮地に陥る可能性があります。特に防衛戦においては致命的ですし」
副長のその説明で、オレはそういうものかと納得する。対象を守る戦いにおいて、相手に積極的に攻めていく突撃思考の戦術・戦略は確かに危険だ。防衛対象そっちのけで攻撃に集中して、対象を守れませんでしたじゃ無意味だしな。
「大将はその辺をどう考えているかね?」
「伯爵様はまだ若いですのでこれからかと。勤勉でしょうから、改善される余地は十分にありますよ」
どっちにしろ、様子見だな。オレらはあくまで外様だし。本格的にヤバいと感じたら、世間話の中で然り気無く伝えたらいいし。
「船長。向こうの貴族の船が降伏宣言しているようです」
強盗共と手を組んでいた貴族が降伏してきたか。大将はどう判断するのかね?大抵の貴族は手打ちにするみたいだが。
『ピータック家ねぇ?アイツらがピータック家の者のように見えるか?俺には欠片も見えないね』
……通信をオープンにして伝える辺り、大将もエグいな。まあ、大将は売られた喧嘩は徹底的に買い叩くタイプだから、この対応も不思議じゃない。偽物の宇宙海賊は俺の財布だと公言するくらいだし。
『そもそもピータック家は善良なる貴族様だろ?そんな貴族様がこんな酷い真似をすると思うか?つまり、奴らはピータック家を騙る犯罪者だ』
『わ、我々を海賊だとでも言い張るのか!?貴君だって、そこの海賊らしき船と共に行動しているだろう!?』
……コイツ、今すぐ殺してやろうか?オレたち本物の宇宙海賊を、お前たちのような強盗と同じにするとか、苛立たしいことこの上ないんだが。
『ああ、そう言えば一つ言い忘れていたな。本物の宇宙海賊は略奪を一切しない、夢と浪漫を求めて宇宙を旅する存在だ。俺と共にいるコイツらは、その本物の宇宙海賊だ。つまり、お前たちは宇宙海賊を騙る、悪質な盗賊共ということだ』
……本当に大将は良いことを言ってくれた!ここで本物の宇宙海賊の名誉を守ってくれるとは!!感激の余り、目から汗が出てきそうだ!大将と契約して、本当に良かった!!
『わ、我々を海賊だとでも言い張るのか!?貴君だって、そこの海賊らしき船と共に行動しているだろう!?』
ピータック家の旗艦――ペーターII世の司令官らしき男の指摘に、僕は痛いところを付かれたと思った。
ヴァールのすぐ近くを航行している中古の戦艦には、堂々と言っていいほどのドクロのペイントが描かれている。少なくとも、宇宙海賊と指摘されても不思議ではないし、完全に否定し切れない。何より、その戦艦の責任者らしき青年は海賊だと名乗っていた。間違った認識からだと簡単に分かったが。
そんなペーターII世の司令官の指摘に対し、リアムの態度に一切の変化はなかった。
「ああ、そう言えば一つ言い忘れていたな。本物の宇宙海賊は略奪を一切しない、夢と浪漫を求めて宇宙を旅する存在だ。俺と共にいるコイツらは、その本物の宇宙海賊だ。つまり、お前たちは宇宙海賊を騙る、悪質な盗賊共ということだ」
リアムのその切り返しに僕はもちろん、画面の向こうの司令官も言葉を失っている。それに対し、周りの人たちはリアムのその発言に同意するように頷いた。
「全くもってその通りですな。クラーク船団……いえ、クラーク海賊団は、今目の前にいる偽物の海賊共とは大違いですね。最近では未知の惑星を発見し、バンフィールド家に大きな利益をもたらしました。そんな本物の宇宙海賊と、アレを一緒にするのは失礼というものですな」
「では改めて、“盗賊”の退治を続行します」
そんなやり取りを経て、再び戦闘が行われる。降伏を拒否された艦隊は次々と伐たれ、我先にと逃げ始める。
それよりも、一つだけ気になることがあった。
「クラーク船団って言ってたけど……まさか、あのクラーク船団!?」
「?そんなに驚くことなのか?クルト」
僕の反応にリアムが首を傾げているけど、何でそんなに平然としているの!?
「クラーク船団って言えば、結構有名な冒険団なんだよ!未知の惑星と古代遺産を幾つも発見し、実力も並の騎士よりも高い、あちこちで注目されている凄い船団なんだよ!?特に最近は、ロレイアという惑星を見つけて話題になっていたし!!」
その船団が海賊を自称していたことにも驚きだけど、リアムが以前話していた、契約した相手がクラーク船団だった事にも驚きだ。
「ロレイア?ああ、アイツらが見つけた古代の海底都市がある惑星か。アレのおかげで俺の収入源が更に増えたんだよな」
まさかの事実に僕は再度、言葉を失ってしまう。リアムの発言を信じるなら、ロレイアの管理はリアムの手の中にあるということだ。ペーターも新たな惑星を見つけたと話題になっていたけど、リアムの方が明らかに将来性が高い。
「……リアム。クラーク船団とはどんな内容で契約したの?」
「どんな内容かって?船と機動騎士に関する費用は俺が持ち、定期的に顔を出して報告するなら自由に動いて良いという内容だ。アイツらは、本物の宇宙海賊としての活動を大事にしているからな」
リアムはさも当然のように契約の内容を語ってくれたが、それはあまりにリアムにとって不利な内容だ。
先ず、船と機動騎士に関する費用を全部負担するなんて、普通はしない。維持費に修理費、改修費……様々なことにお金が掛かるのだ。むしろ、それを利用して搾り取られる危険性もある。
それに報告の義務を明記しても、行動を縛らないなんて勇気ある真似もできない。少なくとも、問題を起こされた時のリスクが高すぎる。
けど、リアムはそれらを契約内容に含んだ。それが古代遺産のある惑星の発見という、大きな利益を得ることに繋がった。
それはピータック家への対応も同じだ。自分だったら悩んだ挙げ句、ペーターを許していた。けど、リアムは一切迷うことなく決断を下した。貴族としても、領主としても、それら以外でも何もかもが違う。
本当にリアムの背中は遠いのだと、僕は改めて思うのだった。
ヴァールの格納庫。そこでロイネはクリスティアナが乗る機動騎士【ネヴァン】の調整を行っていた。
「やはり、祖国で採用していた機動騎士とは操作系統が違いますね。ですが、システムを調整すれば何とかいけそうです」
ロイネはそう呟きつつ、幾つも表示された端末を素早く操作し、ネヴァンのコクピット内でシステムを書き換えていく。かつて姉が乗っていた機動騎士と近い感覚で動かせるようにする為に。
次々とシステムが書き換えられ、元々のネヴァンのシステムの原型が消えていく。普通であればマトモに動かせなくなるのだが、ロイネは細かなエラーさえも直ぐに修正し、構築していた。
そんなロイネの圧倒的な速度と技量に、同じく調整をしていた女性整備士は驚きを隠せなかった。
「す、凄いですねロイネ様。こんな短時間で、ティア様に合わせた調整を施せるなんて」
「ネヴァンは万能機ですからね。クセが少なく、特化した性能がない分、調整の難易度もそこまで高くありませんから」
少なくとも馬鹿船長のドレイクよりは、と内心で呟く。そんなロイネの下へ、様子を見に来たクリスティアナが覗き込む。
「どう、ロイネ?調整は上手くいってる?」
「はい。ティアお姉様。ある程度形になっていますので、試してみますか?」
ロイネのその言葉にクリスティアナは頷き、入れ替わる形でコクピットに座る。手を握り締めするだけの簡単な操作だが、クリスティアナの顔は驚いていた。
「……操作感覚があの時と同じね。これなら直ぐに乗りこなせるわ」
「では、今の状態をベースに調整を続けますね」
「ええ、お願い」
再び入れ替わり、ロイネは再度ネヴァンのシステムを書き換えていく。妹が手掛けた機体で戦場に出る……あの時では想像すら出来なかったことだ。それを悪いことだと、クリスティアナは思っていない。むしろ、逆に嬉しくさえ思えているのだ。
……憎き海賊を自称する馬鹿が関わっていなければ、だが。
「それにしてもあのエセ海賊共……リアム様に庇われるなんて、羨ま万死に値するわ」
「お姉様、本音が洩れてますよ」
ロイネは作業しながら呆れているが、クリスティアナにとっては結構深刻な問題だった。
様々な準備をしている間に、海賊を自称するクラーク船団はリアムに多大な利益を上げている。特に古代の設備が当時のまま残っていると過言ではない海底都市のある惑星の発見が、凄く恨めしいのだ。
アレによって間違いなくリアムの評価は爆上がりしていると、クリスティアナは確信している。アレが自分だったら、直接褒められて、寵愛を受けて……と何度も妄想する程に。
そんな姉の思惑を感じ取ってか、ロイネの視線はジトッとしていた。それも作業の手を止め、残念なものを見るかのように。
そんな妹の視線に気付いたのか、クリスティアナは慌てたように取り繕う。
「と、とにかく!ネヴァンの調整はお願いね!」
「……分かりました、ティアお姉様。それと、例の複合シールドも用意しています。ロレイアの技術を使った特殊なシールドですので、詳しい内容は後で確認してくださいね」
「分かったわ」
……これは渡りに船というやつか?
「まさか逃げた連中が、エクスナー領の盗賊団と繋がりがあったなんてな」
「エクスナー家は貴族としては成り立てですからね。色々と手が回っていないのでしょう」
手が回っていないのは的を得ているかな。領民の生活はかなり厳しいみたいだし、元手となる資金、経営のノウハウ、徴収の匙加減等、様々な点が不足しているせいで手探り感が滲み出てるし。
「昔を思い出すなぁ。オレも手探りだったし」
中古船に食料、その他諸々の費用で本当に大変だったし。襲ってきた強盗を返り討ちにして、持ち物を回収しての繰り返しだったからな。中には傭兵団もいたけど。
「……あれ?そういう意味ではアイツらと同じことをしていないか?」
「しっかり法に基づいているので問題ないかと。向こうは完全に無法ですし」
だ、だよな!オレが強盗共と同じだなんて、あり得ないよな!オレは夢と浪漫を求める宇宙海賊だよな!!
エクスナー領で補給を終わらせ、オレたちは盗賊退治へと向かう。場所は資源衛星を改造した要塞だ。
「さーて、ドレイクの凄さを……本物の宇宙海賊の恐ろしさを教えてやるとするか」
ネイビーブルーのカラーリングが施された機体――ドレイクのコクピット内で、オレは笑みと共に呟く。指揮権は副長に預けているし、前線に出ても問題はない。大将もアヴィドで出撃するしな。
「それじゃ、派手に行くとするか!」
カタパルトから射出されてすぐ、オレはドレイクを巡航形態へと変形させて大将たちと合流する。単純な移動ならこっちの方が楽だし、速いからな。大将にお披露目したかったのもあるが。
そんなオレのドレイクを視界に収めた大将はというと、通信越しでも分かるほど、驚愕したように息を呑んでいた。
『変形機構……だと!?なんて浪漫のある機体なんだ!ニアス!今度、俺のアヴィドも変形できるように改修しろ!!』
『いやいや!さすがに無理ですって!アヴィドとドレイクとじゃ、根本的な作りが違うんですから!!』
大将、凄い興奮してニアス大尉に改修依頼をしてきたな。当の本人は、構造上の問題から却下してきたが。
クリスティアナが乗っているネヴァンには、ロイネが作った複合シールドが左腕に搭載されている。データを見て性能は知っているが、アレは少し……とうか結構ヤバい。性能云々より、コンセプトが。
そうして盗賊団の要塞に近づいていると、無数のデブリと光線がオレたちを迎え入れた。
「デブリや衛星を利用した物理攻撃と、回避先を狙い撃ちする光学兵器……発想は悪くないが……」
相手が悪すぎたな。
オレはそう内心で呟き、一気にドレイクを加速させ、デブリと光線の雨を掻い潜るように通り抜ける。この程度なら、切り飛ばすまでもないからな。
進行先に敵の機動騎士が待ち構えていたが、それも機首のブレードを利用して両断。背後の爆発を無視しつつ、十分に近づけたのでドレイクを人型へと変形させる。
亜空間からダブルセイバーを取り出すと、要塞の迎撃装置の一部を斬り裂いて黙らせる。
「やはり以前よりも動かし易い。本当にドレイクは最高の機体だな」
オレが感心している間も、近くの迎撃装置の砲身がオレの方へと向けられている。オレは慌てることなく左腕に内蔵されたアンカーガンを発射。アンカー部分を引っ掛けて撓みもなく張らせると、ブースターによる加速で楕円運動を取らせて迎撃装置の射線から逃れる。そのまま背後を取り、ダブルセイバーで斬り裂いて周辺諸ともすぐに黙らせる。
そうして次々と要塞の迎撃装置を破壊していき、半分ほど黙らせてから盗賊の戦艦と機動騎士を相手にしていく。
『貰ったぁああああっ!!』
そんな雄叫びと共に二機の機動騎士が後ろから鉈のような剣を振りかぶって迫るが、オレは下部ブースターを噴かせ、バク転するように二機の背後へと移動。亜空間から取り出した光学兵器――ビーム・マグナムで二機同時に爆散させる。
このビーム・マグナムは威力と射程が戦艦の主砲並だが、エネルギーの消費量から一、二発撃てばエネルギー切れとなる。なので、エネルギーカートリッジを撃つ度にその場で交換する必要がある。
オレは亜空間の出し入れを利用してビーム・マグナムのエネルギーカートリッジを交換すると、今度は近くの戦艦に向けて放つ。近くにいた機動騎士を巻き込みながら戦艦が沈む中、ビーム・マグナムをしまったオレはダブルセイバーで周囲を薙ぎ払い、周りにいた五十機以上の機動騎士を斬り裂いて破壊する。
その爆発を隠れ蓑に、数機の機動騎士が仕掛けて来る。だが、オレはドレイクの胸部中央のドクロのエンブレムから強烈なフラッシュをたき、強烈な目眩ましを喰らわせる。
白い光を不意討ちで喰らい動きが止まった隙に、時限式の大型グレネードを置いて離脱。爆発を最後まで見届けずに巡航形態に変形し、機首のブレードを使って戦艦を真っ二つにして撃沈させる。
『や……止めてくれ!死にたくない!何でもするから助けてくれ!!』
次々と機動騎士と戦艦を墜とす中、無差別通信なのか、命乞いする声が聞こえてきた。少し気になったので周囲を確認してみると、一機の機動騎士がネヴァンの左腕に携えたシールドの餌食となっているところであった。
そのネヴァンのシールドの縁の部分が鉤爪のように展開されており、腕ごと挟むように機動騎士を捕らえている。あれは間違いなくクリスティアナが乗るネヴァンと、ロイネが作った複合シールドだ。
あの複合シールドには、魔力を流し込むことで伸縮する加工が施された金属が使われている。それもシールドの縁と、シールドの内部に仕込んだ超振動の剣にもだ。
つまり、今捕らえられている機動騎士のコクピットには、仕込みの超振動剣が徐々に迫っているという事だ。ロイネの開発目的……ジワジワと恐怖を与えて殺すという、相手側したら堪ったものではないコンセプトの憐れな犠牲者として。
『あ、ああ……ぁああ……!』
しっかりとホールドされ、逃げることもできない機動騎士のパイロットは、ゆっくりと、だが確実に迫ってくる死の刃に恐怖するかのように声を洩らす。やがて恐怖が決壊したのか、喚き散らすように命乞いを始める。
『お願いします!!助けて下さい!何でもしますから、許して下さい!!どうか、どうか命だけは!!死にたくない!死にたくないぃいいい!!!』
『アハハ!そのまま泣き喚いて、不様に死んでちょうだい!!お前たちのその声が、私たちの心の癒しなのだから!!』
……めっちゃ嬉しそうだな、クリスティアナ。心なしか、もっとやれ!とか、さすがティア様!とか聞こえてきてるし。
けど、伸び縮みする金属は本当に便利だな。質量以上の伸長はできないとしても、武器としてかなり応用が利くからな。伸縮のスピードも込める魔力量によって上げられるようだし。
ま、それより外の連中を黙らせるか。要塞の方は、大将がノリノリで突入したからすぐに制圧されるだろうし。
――要塞を保有する宇宙海賊の団長は、激昂していた。
「何て奴らを呼び込みやがった!!海賊狩りのリアムだけでもヤベェのに、艦斬のクラークまでいやがるんだぞ!?本当にふざけんな!!」
拳銃を乱射して、助けを求めた男を撃ち続けているが、焦燥に駆られる彼にはそんな余裕はない。
何せ、あのゴアズ海賊団を壊滅させたリアムと、艦隊を中古の機動騎士一機で黙らせたという噂もあるクラークが攻めてきたのだ。もはや地獄に片足どころか、真下へ一直線でしかない。
事実、要塞の迎撃装置はほとんどが沈黙。外の艦隊も半数以上が撃沈している。そこに加え、要塞内部も荒らされている状況だ。
どう足掻いても破滅の未来しか見えない現実に、団長は半ば自棄となって要塞の自爆で一矢報いることにしたのだった。
――その自爆もリアムによってすんなりと防がれ、完膚なき敗北を叩き込まれて終わったのであった。