聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回は聖龍隊と反する異常者(ヒール)組織、スコーピオン同盟の物語です。
 粋な悪党ガイア・スコーピオンとその仲間達の波乱万丈な冒険の物語です。



スコーピオン同盟の生き様

[サソリの同盟]

 

 時と場所は、とある裏社会の一角を牛耳る闇組織の集会から始まる。

 この場に集った闇組織の重鎮達と、その重鎮達を警護する戦闘員に取り囲まれながらも、静かに鎮座して闇組織のトップからの言葉を黙って聞き入る三人の人外の姿があった。

「……と、いう訳だ。同じ裏社会に、スコーピオンという組織がいくつもあっては混乱が起きやすい上に、組織の名目にも関わる」

「………………」

 闇組織のトップからの言葉に、紅き人外の男は黙って聞いていた。

「それでだ! お前たちには、我々の下に降ってもらい、組織を統合したいと思っている! もちろんスコーピオン兄弟、お前たち三人にはそれなりの席を用意してやる。どうじゃ? 悪い話じゃないだろ?」

 組織のトップからの提案を聞き、此処で今まで黙々と話に耳を傾けていた紅い人外の男が立ち上がり、組織のトップに眼光を睨ませながら言った。

「……悪いが、オレ様も、そしてオレ様の大事な仲間も、お前さん達に命を預けるような真似はしねえよ」

「ほほう、それはつまり……我々、スコーピオンキングに歯向かうという意味でいいんじゃな?」

「バーーカ、テメェら全員、ここで叩き潰すって事だよッ!」

 紅き人外の男がそう言い放った瞬間、三人の人外の周りに突如として三人組の配下の面々が出現する。

「ッ! テレポートか……!」

 超能力である瞬間移動を駆使して、この場にはいなかった三人組の配下が次々に現れるのを目の当たりにし、組織のトップは愕然とする。

 目の前に続々と瞬間移動で現れる三人組の配下たちに、組織の戦闘員は銃撃を開始する。

「撃て撃て!」

 一斉に射撃される銃弾の雨。だが、人外の三人組に銃弾は歯が立たず、簡単に銃弾は強固な外殻に弾かれてしまう。

「さあ、お前ら! オレ様たちスコーピオン同盟の恐ろしさを見せ付けてやれッ!」

 紅き人外の男、いや紅のサソリの獣人ガイア・スコーピオンが仲間達に指示を飛ばす。

「久々に暴れてやるぜッ!」

 すると一斉射撃してきた戦闘員たちに怯む事無く、スコーピオン同盟の柊潤がマシンガンが内蔵されたギターを連射する。

 その傍らでは、潤の兄である恵一が刃物の様に加工されたバイオリンの弓で、戦闘員の動脈を切りつけて応戦。

「僕たちP.A.N.D.R.Aも行くよ!」

 今やスコーピオン同盟の傘下に降っているエスパー組織P.A.N.D.R.Aの首領である兵部京介の指示で、多くのエスパー達も戦闘に乱入する。

 そして首領ガイアの命令で、自分たちに群がってくる戦闘員を返り討ちにして始末していくスコーピオン同盟。

「よーーし……歯向かう奴らは容赦するなよ」

「了解」

 悠然と戦場と化す現場を歩くガイアに、側に就くスコーピオン同盟配下のホワイト・ヘアーズリーダーにまで成り上がった元悪徳記者の蛭川光彦が同意する。

 と、現場を制圧するスコーピオン同盟の前に、今度は組織の幹部達が、自分らと同様に武装している新手を引き連れて反撃に出てきた。

「死にやがれッ!」

 幹部の一人がガトリング砲を連射して、目の前に立っているホワイト・ヘアーズの一人に銃撃を浴びせる。

 が、銃撃を浴びたホワイト・ヘアーズだったが、銃弾が貫通した痕が瞬く間に塞がって再生してしまう。

「ば、バケモノが……!」

 銃撃を仕掛けた幹部は、弾痕が瞬く間に消えたホワイト・ヘアーズの不死性の肉体を前に睨みを利かせるが、その瞬間。

「ウ……ッ!」

 なんと銃弾を浴びても死なないホワイト・ヘアーズの女は、長髪の毛先を針の様に鋭く硬化させて、その髪を操って目の前の幹部を瞬殺しまった。

「バケモノで結構よ」

 そう死んでいく幹部に吐き捨てるのは、ホワイト・ヘアーズの一員である梓川雪乃。

 

 自分たちスコーピオン同盟を配下に加えようとした闇組織を壊滅させたガイア達は、倒した闇組織の死体と生き残りを引き連れて、とある場所へと置いていった。

 其処はなんと………………国連軍本部の目の前。

「何事だ!」

 戦慄する兵士達に、本部からモモンガ中将が出てきて事態を訊ねる。

 そして兵士達が群がる中をかき分けて、モモンガ中将が本部前の広場へと出ると其処に広がる惨状に目を丸くして驚愕する。

 なんと国連軍本部の前に、裏組織キングスコーピオンの幹部や戦闘員達の死体が山積みにされた上で炎上しており、その側にはキングスコーピオンの残党である生き残りが拘束されて傷だらけの状態で鎮座していた。

 目を凝らして見ると、生き残り達の一人に何かしらの紙が貼り付けられており、モモンガ中将はその一人に駆け寄り、紙をはぎ取って紙面を読んでみると。

【死体と残党の処理は任せた スコーピオン同盟】

 と、ガイア・スコーピオンからの伝言が記されていた。

「クソっ!」

 スコーピオン同盟の横暴に、モモンガ中将は苛立ちを隠せない。

 

 一方、自分達を引き入れようとしたキングスコーピオンの組織を潰したガイア・スコーピオンたちスコーピオン同盟は、悠々とサソリ型超巨大万能移動船スコーピオン・シップで海上を航行していた。

 陸・海・空はもちろん異次元空間や宇宙までも航行できる万能船スコーピオン・シップの船首で、スコーピオン同盟首領のガイア・スコーピオンは高らかに宣言するのだった。

 

「悪党王に……オレ様はなる!!」

 

 

[異常者の定義]

 

 時は西暦201X年。

 漫画やアニメといった思想概念で構成された二次元界と、現実の三次元界が融合を果たし、思想概念生命体である二次元人と人間である三次元人が共存の道を探る時代。

 そんな混沌とする時代に終止符を打つべく、政府は根本から今までとは違う二次元人の生誕を開始。その二次元人こそ、鬼神と畏怖される小田原修司のクローンに近い生命体の新世代型二次元人。

 最初は新世代型二次元人の反乱、その後の国連総長に就任した足正義輝と彼と共謀して暴走した小田原修司といった混乱を乗り切り、どうにか新世代型二次元人は今の時代に適応しつつ共存を可能としていた。

 だが、突如サイレンヘッドやスレンダーマンなどのUMAに変異してしまう二次元人や、肉体が変異しなくともサイコパスなどの異常性犯罪者に変異してしまう新世代型二次元人による混乱が世情を乱す現状が続いていた。

 そんな混乱を抑制しようと、国連は自軍である国連軍を強化・発展させ、世界中に問答無用で出撃できる権限を展開し、アジアの英雄集団といわれる聖龍隊は新たに暴力的な自警団ジャッジ・ザ・デーモンを隊士に引き入れた。

 しかし、そんな情勢の中でも、政権に反発し、遂には人権はく奪などにも晒される異常者(ヒール)と呼ばれる悪党達の凶事や悪事は蔓延るばかり。

 そんな多種多様な異常者(ヒール)が蔓延る世情の中でも、群を抜いて名を挙げる悪役同盟があった。それこそスコーピオン同盟。そのスコーピオン同盟の首領こそサソリの獣人ガイア・スコーピオン。

 ガイア率いるスコーピオン同盟は、名立たる悪役達や異常者(ヒール)を引き連れて世界中を冒険し、時には悪事に手を染めながら面白おかしく自由を謳歌する。

 無論、そんなスコーピオン同盟を政府は快く思わず、国連軍及び聖龍隊はスコーピオン同盟を捕縛しようと日夜戦いに明け暮れていた。

 

 スコーピオン同盟首領のガイア・スコーピオンは自らが掲げる信条「仁義ある悪党道」を布教し、多くの悪役や突然変異した理性ある二次元人を仲間に引き入れて冒険を楽しむお気楽なダイオウサソリの獣人。

 そんなガイアの側近では、ガイアの双子の弟にして暗殺組織に教育されたキラー・ウォーター・クリスタル・スコーピオン、そしてガイアとクリスタルによって造られたサソリ獣人型ロボットのメガロ・スコーピオンがいる。

 その他にも大勢の悪役達が、ガイアの下で自由奔放な生き様を謳歌しつつ、混沌とする世情を生き抜いていた。

 

 

 

 そしてある晩も、スコーピオン同盟はとある国の美術館に総動員で忍び込んでいた。

「よっしゃッ! 此処の美術館にあるお宝、全部頂いちまおう!」

「兄者ッ、真夜中の美術館に忍び込んでいるんですから、もっと静かに!」

 大声で仲間達に呼び掛けるガイアに対し、クリスタルは静かにガイアに注意する。

 そんな中でも、スコーピオン同盟の一味は次々と美術館に展示されている金品を強奪し、外に運んでいく。

 すると、其処に二人組の少年が通気口から出てきた。

「怪盗ジョーカー、今宵も華麗に……って、あれ? ど、どうなってんだ!?」

 通気口から出現した怪盗ジョーカーと相棒の忍者ハチは、目の前で気絶している警備員そして美術品を堂々と外に運び出すスコーピオン同盟と鉢合わせする。

「ん? なんだ、この少年……」

「ボク、何処から来たの?」

「って、子ども扱いするな! オレは怪盗ジョーカー! 奇跡を起こすミラクルメイカーだ!」

 スコーピオン同盟のワルドとフーケに子供扱いされて腹を立てるジョーカーを前に、別のスコーピオン同盟が気付く。

「あ、この子! 確か今、話題になっている怪盗ジョーカーって名乗ってる子供だよ」

「だーーかーーらッ! 子供扱いするなっての!」

 梓川水乃からも子供扱いされて、更に立腹するジョーカー。

「あら、誰かと思ったら私たちの後輩ともいえる若い子供の怪盗ね。私たち怪盗帝国の存在がありながら、怪盗を名乗るなんて生意気ですわ」

「ッ、怪盗帝国か……!」

 怪盗ジョーカーを下に見るアルセーヌたち怪盗帝国の面々を前に、顔を歪ませるジョーカー。

「おい、ボウズ。此処には、もうお宝はないぜ。オレ様たちが全部、頂いたからな」

「フザケルな! オレ達は前々から予告状を出した上で、美術館の見取り図も頭に入れて侵入したんだ! お前らみたいに集団で強盗する輩が邪魔すんじゃねえ!」

 ガイアからの言葉に、ジョーカーは怒りを吐き散らすが、そんなジョーカーにクリスタルが冷静に言葉をかける。

「なるほど、自分達だけで館内に潜入したんですね。その努力は評価しますが……道理で館内の警備員が普通よりも厳重だった筈です」

「だから! オレ達のお宝まで横取りすんな!」

 ジョーカーが文句を怒鳴ると、ガイアが呆れながら話し返した。

「おいおい、ボウズ。この世は弱肉強食、早いもん勝ちなんだよ。悪いが今夜はもう家に帰って寝んねしな」

「ガキ扱いすんなっての!! ……こうなったら。ハチ! こいつらが盗み出そうとするお宝を奪うぞ!」

「は、はい!?」

 突然のジョーカーの提案に相棒のハチは唖然と混乱してしまう。

 すると、突然臨戦態勢に入るジョーカーを前に、スコーピオン同盟は多少ながら困惑。

「おいおい、どうする。あの小僧、オレ様たちと一戦やるつもりだぜ」

「若気の至りという奴ですかね」

 半ば呆れながらもジョーカー達を直視するガイアとクリスタル。

 と、ガイアが呆れている所に。

「ガイアさんは出なくて大丈夫です……子供への教育ぐらい、俺たちだけで充分です」

 そうガイア達に言って、前に出ていくのは蛭川光彦率いるホワイト・ヘアーズの一団。

 前線に横一列で並ぶホワイト・ヘアーズの面々に、ジョーカーは躍起になって攻撃を仕掛ける。

「喰らえッ」「ほほう、カードが武器って訳か」

 トランプカードを手裏剣の様に投げてきたジョーカーに対し、蛭川光彦が呟きながら自身の髪の毛を操ってジョーカーが投げてきたカードを弾き落す。

「ッ、能力者か……!」

 攻撃を防がれて悔しがるジョーカーに、ホワイト・ヘアーズは集団で襲い掛かる。

 ホワイト・ヘアーズの一団は、全員が自在に操れる白髪の頭髪の先端を尖らせてジョーカーを攻撃する。

「わ! わわッ!」

「ひぃ! このままじゃ俺たち串刺しになっちゃいますよ、ジョーカーさん!」

 間一髪でかわし続けるジョーカーと涙目のハチ。

 しかしジョーカーは攻撃を避けながらも、トランプを用いてホワイト・ヘアーズが伸ばしてくる髪の毛を切断して攻撃力を緩和させようとする。

「やったか!? ……へっ?」

 しかし咄嗟に髪の毛を切って着地したジョーカーが振り返ると、なんと断髪されたホワイト・ヘアーズの髪の毛が瞬く間に元の長さにまで伸びて、全員の髪型が通常通りに戻っていた。

「く、くそッ。ハチ! こうなったら戦うよりもアイツらが運び出そうとしているお宝を手に入れるぞ!」

「は、はい!」

 ジョーカーとハチは、此処で戦い合っているホワイト・ヘアーズの頭上を跳び越えてガイア達が運び出そうとしているお宝を横取りしようとするが。

 そんな頭上を跳び越えるジョーカーの足を、ホワイト・ヘアーズの東山薫子が頭髪を伸ばして捕まえては、そのまま床にジョーカーを叩き付けてしまう。

「ジョーカーさん!」「ッ!」

 床に叩き付けられて悶絶するジョーカーを見て、相棒のハチが慌ててジョーカーに駆け寄る。

 唖然とするジョーカーとハチに、ホワイト・ヘアーズの北川が歩み寄って説き出す。

「解っただろ? この世界は、子供が面白おかしく犯罪行為をするほど生半可なものでもなければ、容易でもない事が。君たちは早く平穏な日常に戻って、犯罪の世界から足を洗いなさい」

 だが、北川の説得に対してジョーカーは立腹しながら反論した。

「た、確かに今の時代、怪盗も含めて全ての犯罪行為は簡単じゃないのは重々解ってる……」

「それなら……」

「だけどな!」

「!?」

「オレ達だって本気で……本気で、奇跡を作り出せる怪盗に……芸術的センスでお宝を盗めるミラクルメイカーになってみせるんだ! いくら経歴が長いからって、そんなオレの夢をこんなところで終らせてなるもんか!」

「夢、か……」

 ジョーカーの反論に、北川は呆れながら溜息を衝く。

 すると此処でジョーカーが目の前のホワイト・ヘアーズに向かって暴言を吐き散らした。

「し……知ってんだぞ! テメェらホワイト・ヘアーズは過去に下種な悪行ばかりして、最終的には出生記録も抹消された正真正銘の外道だって事はよッ!」

 このジョーカーの発言に、ホワイト・ヘアーズの面々は全員目を見開いた。

 すると、このジョーカーの発言に対してリーダーの蛭川光彦が睨みを利かせながら冷たく言い返した。

「それなら、解ってる筈だ。俺達はその気になれば、人命すらも奪い取る正真正銘のゲス野郎って事を……当然、子供であるジョーカー、お前であろうともな」

 そう言い返した蛭川光彦が伸ばした髪の毛を鋭利な先端に変えるのを見て、他のホワイト・ヘアーズの面々も同様に髪の毛を鋭くさせて再びジョーカーと戦闘を始める。

 これにジョーカーも諦めまいとトランプの束を片手に構えて、戦闘態勢に突入する。

「お前ら外道な異常者(ヒール)が蔓延っているから、オレみたいな善良な怪盗までクズ呼ばわりされるんだ!」

「怪盗に善人も悪人もいる訳か?」

 乱戦に発展する中、ジョーカーの言い分に蛭川光彦が事実を突き返す。

 

 と、ホワイト・ヘアーズと怪盗ジョーカーコンビが劇戦を繰り広げてた、その時だった。

「動くな異常者(ヒール)共! 警察だ!」

 なんと美術館内に、あの鬼山毒三郎率いる警察隊が突入してきた。

「ゲッ、鬼山警部! こんな時に……ッ!」

 現場に突入してきた鬼山毒三郎に、ジョーカーとハチは困惑する。

「おいおい、警察が来たぞ。これは今夜はこの辺にしておいて、さっさとズラかろうぜ」

『アラホラサッサーー!』

 ガイア・スコーピオンからの指示に、スコーピオン同盟の面々はガイアが師事しているあのタイムボカンシリーズの極悪トリオの名台詞で返事して、早々に美術館内から逃げ去っていく。

「あ、待て! ジョーカー達とスコーピオン同盟を逃がすな!!」

 鬼山毒三郎の指示で、警察隊はそれぞれジョーカー達とスコーピオン同盟を確保しようと追撃する。

「じょ、ジョーカーさん、逃げないと!」

「解ってる! だが、その前に……」

 ハチに言われて焦燥するジョーカーは、此処で館内を照らせるほど強い光をカードから発して目を晦ませた。

「ストレートフラッシュ!」『うわっ!』

 館内を照らせるほどの強い光を発したジョーカーは、その光で警察隊はもちろんスコーピオン同盟も目を覆っている最中に行動に移った。

 そして眩い光が落ち着いた時には、既にジョーカー達は姿を消していた。

「ん? ん!? ジョーカーは? ジョーカー達は何処に行った!?」

 酷く困惑する鬼山毒三郎の手前、スコーピオン同盟も何とか逃げ出そうと全員が駆け足で走り出した。

「逃げろッ!!」「あ、待て!」

 鬼山毒三郎が制止するのも聞かず、スコーピオン同盟は早々にその場から逃亡を果たしてしまう。

 

 そして何とか警察隊から逃げ果せたスコーピオン同盟が、今宵盗み出した美術品を調べてみると……。

「あれ? おかしいな……一つだけ、あの美術館で一番高価な品が消えてるぞ」

「そんな事ない筈よ。館内に忍び込んだ際、一番最初に盗み出した品なんだから」

 盗品のチェックをするマミーモンとアルケニモンが、消えている品がないか隅々まで調べていると、盗み出した盗品の山の中から一枚のカードを発見する。

「ちょっ、が、ガイア! こ、これ……!」「ん?」

 アルケニモンとマミーモンが慌ててガイアに見つけたカードを見せると、そのカードには以下の内容が記されていた。

【予告状に記した通り、美術館で最も高価なお宝は頂戴したぜ 怪盗ジョーカー】

 このメッセージカードを読んで、ガイアたちサソリ兄弟三人は一瞬目を丸くさせた直後、高らかに大笑いした。

「「「はははははッ」」」

「ははっ……今回は引き分けって事だな、怪盗ジョーカー」

 ガイア・スコーピオンは夜空に浮かぶ明月を見上げながら、怪盗ジョーカーの健闘を静かに称えるのだった。

 

 

[動き出す国連軍]

 

 美術館での騒動から少し経ったある日。

 国連軍本部で、一人の軍人が上官である国連軍元帥に意見を申し立てていた。

 

「元帥殿! ガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟の悪行は目に余ります! このままでは私たち国連軍の威信にも関わります……!」

「………………」

「ガイア・スコーピオンだけではありません! 今やガイアを始め、多くの異常者(ヒール)達には覇王色の覇気が備わっているのが現状……どうかガイア・スコーピオンたち異常者(ヒール)の覇王色の覇気をも無力化できる新世代型二次元人を正規の国連軍兵士に抜擢するべきです!」

 モモンガ中将の要望に対し、赤犬元帥は眼光鋭く返した。

「新世代型二次元人……確かに、アイツ等には始祖たる小田原修司の血を色濃く受け継いでいるからか、覇王色の覇気に抗力を持つ。故に、新世代型二次元人を正規の国連軍兵士に抜擢せよという声が多いのも、また事実……」

「そ、それでしたら……」

「じゃが……!」

「!」

「新世代型二次元人は、いつ如何なる時に危険極まりない異常者(ヒール)に変異するか分からん不穏分子……そんな輩を正義の国連軍に抜擢するのは、些か賛成できん……!!」

「………………」

 赤犬元帥の主張に、モモンガ中将は反論できずに退室した。

 

 

 

「元帥殿は、新世代型二次元人が目の敵にしている小田原修司のクローンだから正規兵に抜擢するのを躊躇しているんだろうな……」

 退室したモモンガ中将は、廊下を歩きながら赤犬の思考に一人思い悩むのだった。

 そんなモモンガ中将に、ふと声をかける人物が。

「モモンガ中将」「! おお、ペトロフ補佐官ではないですか」

 モモンガ中将に声をかけたのは、赤犬元帥の側近である元帥補佐官のユーリ・ペトロフだった。

「モモンガ中将、話は聞きました。またガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟に手こずっているみたいですね」

「え、ええ……ガイアは今多くいる覇王色の覇気を持つ異常者(ヒール)の一人。多くの兵士が覇王色の覇気で気絶させられては、今後もスコーピオン同盟に太刀打ちできないのですが、元帥殿は覇王色の覇気を無力化できる新世代型二次元人を正規兵に抜擢するのを拒んでいるみたいで……」

「まあ、新世代型二次元人は一応、あの小田原修司のクローンですからね。複雑なんでしょう、元帥殿は」

「そうでしょうが……ですが、このままでは覇王色の覇気を持つ犯罪者相手に国連軍は何もできない現状が続きます」

「確かに……名立たる異常者(ヒール)の多くは、既に覇王色の覇気を会得している者も大勢いますからね」

 話し合うモモンガ中将の相談を受けて、ユーリ・ペトロフは一枚の書類をモモンガ中将に差し出した。

「モモンガ中将、これを」

「なんですか、これは?」

「これは国連軍に、正式に新世代型二次元人の兵士を起用するという署名です。既に国連の議員はもちろん、多くの軍人達からも署名をもらってます」

「おおっ、それは有難い! では、さっそく私も……」

 と、モモンガ中将がユーリ・ペトロフが差し出した署名に自身もサインしようと紙面を読んでみたが。

「……ペトロフ補佐官、この紙面の内容だと、もし新世代型二次元人を正規兵に起用した場合、その新世代型二次元人の部隊の総指揮権は貴方が持つみたいですが……」

「ええ、最初は基本的に試験運用も兼ねて、私の勅命で動く部隊として新世代型二次元人を起用しようと思っているんです。名前も考えているんですよ。ずばり、TIGER」

「タイガー? まさか、あのワイルドタイガーから引用しているのですか?」

「まあ、聖龍隊に降ったNEXTヒーロー達の正義は認められませんが……能力が衰えても戦い続けるワイルドタイガーには多少の敬意も示しているんですよ、私は。だから私が管轄する新世代型二次元人の特殊部隊の名をTIGERにしたんですよ」

「なるほど……まあ、覇王色の覇気を持つ犯罪者や異常者(ヒール)相手には、その覇気を無力化できる新世代型二次元人の兵士が必要なのは変わりませんから別に良いですけど」

 そうユーリ・ペトロフに言うと、モモンガ中将は複雑そうな面持ちで紙面に署名するのだった。

「はい、ありがとうございます、モモンガ中将。約束いたします、必ずこの世の悪全てを排除できる世界にとって有益な新世代型二次元人による軍隊を設立して見せます! では」

 モモンガ中将から署名をもらったユーリ・ペトロフは、そのまま去って行ってしまった。

「……(ユーリ・ペトロフ、赤犬元帥殿と正義の価値観が一致した事で徴兵制度にて一気に元帥補佐官へと成り上がったとはいえ……元々は、あのジャッジ・ザ・デーモン同様の連続殺人鬼でもあった男。その男が自分直轄の、自分専用の軍隊を設けるとは。何か悪い予感しかしない……)」

 自分直轄の専用の軍隊であるTIGERを設立する運動を起こしているユーリ・ペトロフに対して、モモンガ中将は一抹の不安を覚えるのだった。

 

 

 

[終わる事なき正義と悪の戦い]

 

 場所はアニメタウン、月下の月明かりが照らす都市部の屋根伝いを、今宵も一仕事終えたスコーピオン同盟が駆け抜けては暗躍していた。

 が、そんなスコーピオン同盟を追走する警察と同じく、追っている異形の者の存在が紅い目を光らせていた。

「其処までだ」「! まだテメェか……ジャッジ・ザ・デーモン!」

 ガイア・スコーピオンたちスコーピオン同盟の前に立ちはだかるのは、平等の制裁鬼ジャッジ・ザ・デーモン。

「スコーピオン同盟、お前達の悪運も此処までだ。大人しく捕まるんだ」

「相変わらず恐怖の制裁鬼ってのは変わらないんだな。まったく、しつこいんだからなぁ……」

 目の前に立ちはだかるジャッジ・ザ・デーモンの台詞に、ガイア・スコーピオンは頭をかいて呆れ返っていた。

「小田……じゃ、なかった。ジャッジ・ザ・デーモン! お前の相手は俺たち柊ブラザーズだ!」

 そう危うく本名を言いそうになりながらも、ジャッジ・ザ・デーモン相手に前へと出る柊潤と柊恵一の兄弟。

 まずは弟の潤がマシンガン内蔵のギターを構えて、無数の銃弾をジャッジ・ザ・デーモンへと連射する。しかしジャッジ・ザ・デーモンは華麗に銃撃を回避し、火薬入りのジャッジラングを潤の顔面へと投げ付け、潤の顔へと直撃したジャッジラングは爆発し、潤は後ろへと倒れてしまう。

 ジャッジ・ザ・デーモンが潤を戦闘不能に至らしめた直後、今度は兄である恵一が刃の様に鋭いバイオリンの弓でジャッジ・ザ・デーモンに切りかかる。しかしジャッジ・ザ・デーモンは恵一の斬撃を右に左にとかわしていき、最後は真剣白刃取りの要領で恵一の振るう弓を受け止めてしまう。

「ッ!」自身が振るう弓を受け止められ、動揺する恵一。

 そして恵一の弓を真剣白刃取りで受け止めたジャッジ・ザ・デーモンは一瞬の隙をついて、恵一の頭部に頭突きして怯ませる。

「ッ……!」

 突然の頭突きに怯んだ恵一に、ジャッジ・ザ・デーモンが連続で打撃を与えていき、最後には恵一を気絶させた。

「お前ら! 柊兄弟を救護しろッ! オレ様がジャッジ・ザ・デーモンの相手をする!」

 と、ここでガイアが仲間に指示して柊兄弟を救出させると、その直後に今度は自らジャッジ・ザ・デーモンの前へと出て対峙する。

「ジャッジ・ザ・デーモン、今や聖龍隊の一員としてでも変わらず悪人を裁いているのはご苦労なこった。だがな……そうやってお前は、オレ様たちスコーピオン同盟以外にも大勢の罪人の業を独り背負い続ける気かよ」

 ガイアの問い掛けに対し、ジャッジ・ザ・デーモンは寡黙を貫き通す。

「お前は大勢の人々の運命を狂わせた事への贖罪として、今なお恐怖の制裁の体現者として闘い続ける……オレ様にとっちゃ、そんな酷な生き方してほしくないんだがな」

「これは俺が選んだ……いや、俺が果たすべき罪滅ぼしでもある。何が何でも、人々の未来を守る為に俺は闘い続けるだけだ」

 向き合いながら返答するジャッジ・ザ・デーモンの言葉に、ガイアは半ば呆然としながらも言い切って見せた。

「この世に絶対の正義がないように、誰かが誰かを裁くなんて無粋だと思わないか」

「……それでも俺は、異形の鬼として……罪人を裁く。そう、お前達もな!」

 ガイアの言い分に対して明言を返したジャッジ・ザ・デーモンは、ガイアへと襲い掛かる。

「おっと、やるか!」

 襲い掛かるジャッジ・ザ・デーモンに対してガイアも腕を振るって反撃する。

 ジャッジ・ザ・デーモンとガイアの武術が交互に絡み合いながらも、双方ともに相手に一撃を与えられない状況が続く。

 すると此処でジャッジ・ザ・デーモンが取り出した装備品を、ガイアへと投げ付けた。

「うおッ!?」

 驚いたガイアは咄嗟に腕でジャッジ・ザ・デーモンが投げてきた物を防いだが、ガイアの腕に直撃した瞬間それは粘り気のある物質となり、ガイアの身体にこびり付いた。

「な、なんだ、コイツは……!? トリモチなんて古臭い手を使いやがって!」

 藻掻けば藻掻くほど身体に絡み付く粘り気に悪戦苦闘するガイアに、ジャッジ・ザ・デーモンが言う。

「それは熱を吸収して、より粘り気を出す粘着性の物質で出来ている。言うなれば…………グルーボムだ」

「ぐ、グルーボム!?」

 ジャッジ・ザ・デーモンが対ガイア用に使った「グルーボム」に困惑するガイア本人。

 ガイアが身体とくに上半身に絡み付く粘り気に困り果てている所に、ジャッジ・ザ・デーモンの慈悲なき追撃が襲い掛かる。

「ウッ、グッ」

 ガイアに打撃を浴びせ続けるジャッジ・ザ・デーモン。ガイアは反撃したくとも、上半身に絡み付く粘り気で思う様に動けず戸惑うばかり。

 そもそもガイアは体内に熱を吸収・保温できる体質なので、常時熱を持っている状態。故に寝で粘り気を増すグルーボムに熱が吸収されて、余計粘り気が強まってしまうのだった。

 と、ジャッジ・ザ・デーモンのグルーボムに困惑してるガイアの許に、クリスタルとメガロの弟達が駆け付ける。

「兄者、大丈夫ですか!」「ピ、ピポ」

 クリスタルとメガロは何とかグルーボムに囚われているガイアを助けようとしている所を、ジャッジ・ザ・デーモンが容赦ない追撃を仕掛ける。

 だが、そんなジャッジ・ザ・デーモンの前にスコーピオン同盟配下の武闘家シルクァッド・ジュナザードが立ちはだかり、ジャッジ・ザ・デーモンの蹴りを自身の蹴りで受け止める。

「ガイアを倒す前に……!」

 と、シルクァッド・ジュナザードが言うとジャッジ・ザ・デーモンの背後から。

「オレ達を倒してみな!」

 マミーモンがアルケニモンと共にジャッジ・ザ・デーモンを攻撃。

 マミーモンがジャッジ・ザ・デーモンにガトリング砲を連射するが、ジャッジ・ザ・デーモンはそれを瞬時に回避。だが其処にアルケニモンが自身の糸でジャッジ・ザ・デーモンを拘束して動けなくさせる。

「ッ……!」

 一瞬戸惑うジャッジ・ザ・デーモンだったが、瞬時にジャッジラングを刃物の様に持って、ジャッジラングの刃で自分に絡み付く糸を断ち切った。

 

 と、ジャッジ・ザ・デーモンが糸を断ち切った所に、地上の裏通りに蛭川光彦率いるホワイト・ヘアーズが先導して、ガイア達を乗せる為のジープを持ってきた。

「ガイアさーーん、今の内に早く!」「ウゴウゴッ」

 蛭川光彦に続き、ジープに取り付いて操縦するインクコンビのブロッドンが、相方のザ・インクと共にガイア達を待ち侘びる。

 その頃、ガイアはようやくクリスタルとメガロのお陰もあってグルーボムから解放されてた。

「よしッ、今は兎に角逃げるが勝ちだ! ジャッジ・ザ・デーモン、またな!」

「待てッ! スコーピオン同盟!!」

 ジャッジ・ザ・デーモンの制止も聞かず、ガイア達は屋根から地上に着地すると急いでジープに搭乗。その瞬間、ジープに取り付くインクコンビが発進させ、ホワイト・ヘアーズの警護と共に逃走してしまった。

(スコーピオン同盟、俺の影響で運命が著しく狂ってしまった存在……お前らの大罪を止めるのもまた、俺の贖罪であり、務めだ)

 闇夜に消えていくスコーピオン同盟を見て、ジャッジ・ザ・デーモンは人知れず思うのであった。

 

 

 ジャッジ・ザ・デーモンとスコーピオン同盟の確執は、まだまだ続く。

 

 

 

[動き出す元帥補佐官]

 

 

 

 ガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟が世界中で自由奔放に暴れ回り、暴挙を重ね続ける現状の中。

 国連軍元帥であるマグマード・岩田は、このスコーピオン同盟の活動に苛立ちを覚えていた。

「はよォ……はよォ、スコーピオン同盟の悪党共を叩き潰すんじゃきィ! あの悪党共を野放しにしておけば、それこそ国連軍の正義が揺らいちょる……!!」

 そう怒号を放つマグマード・岩田こと赤犬元帥に、真正面から意見を述べるのは元帥補佐官であるユーリ・ペトロフだった。

「元帥殿、そう興奮しなくとも……貴方のお気持ちは痛いほど解ります。世界中の人々に真なる安寧を齎すべき国連軍の正義という威厳を保つ為にも、スコーピオン同盟を全員捕縛しなければならないという現状、痛感します」

「ならば……! ユーリ・ペトロフ! おまはんは何か策でもあるんっちゅうんかい……!!」

「無論、私もこのまま手を拱いているつもりはありません。大恩ある元帥殿の為にも、そして己の正義を果たす為にも、スコーピオン同盟の悪党達は全員、正義の名の下、厳罰に処さなければなりません」

「なら……!!」

「なので……此処は一つ、私に任せてくれませんか?」

「!?」

「私に一つ、この混沌とした時代を終わらせる……そう、正義を果たせる時代を訪れさせる策があるんです」

「なんじゃと……!?」

「良いですか……」

 すると此処でユーリ・ペトロフは赤犬に囁いて密談を聞かせた。

「……ホンに。ホンに、そんな事が可能っちゅうんか」

「はい、私は既にバックに世界中の政財界を動かせるほどの実力者と協力関係を築いています。その方の力も借りれば、我々の大いなる正義が実行できるのですよ」

「………………」

「此処は私に任せてくれませんか、元帥殿。必ず私たち国連軍の正義が、世界中を平和に導く結果を招きますので。なので、その前に………………小田原修司、いえ、ジャッジ・ザ・デーモンを私が指揮するアンチ・ジャスティスに組み込まなければ。その為には、ジャッジ・ザ・デーモンを国連軍の管轄内に納めないといけませんがね」

 

 こうして国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフの計画が始まった。

 これは後に聖龍隊とアメリカの英雄達の戦争に繋がり、更に後々多くの災いを齎す計画となる事を、国連軍元帥マグマード・岩田こと赤犬は知らなかった。

 

 

 

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