聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回は遂に新シリーズ「タナトス・アサイラム」の前日譚に繋がるストーリーを執筆します!
 聖龍HEADがアッコちゃんを除いて新世代型二次元人に変化したり、アニメタウンの新政策、更にシュテルンビルトでの聖龍隊と国連軍との会合、竹島に建造された州立刑務所での火災など、後々に繋がる展開が目白押し!
 どうか今回も、楽しんでください!



タナトス・アサイラムの前日譚

[日常の聖龍HEAD]

 

 遂に国連より資金を提供された事で、アニメタウン沖の三つの島々に囲まれた小島に在った収容施設が改装されて触法精神障碍者病棟タナトス・アサイラムが建設された。

 タナトス・アサイラムの所長には、国連より派遣された人材であるハワード・ラグラフト氏が務める事に。

 こうしてアニメタウン及び、その同盟国である各異世界で異常者(ヒール)と認定された犯罪者達は、このタナトス・アサイラムに収容される様になった。

 

 触法精神障碍者病棟タナトス・アサイラムが平常通りに働き出してきたある日、とあるスタジオにて。

「それじゃカメラマン♪ 聖龍HEADのヒロイン達が着る新作の水着を、ちゃちゃっと撮って撮影してちょうだいな♪」

 陽気にカメラマンたち撮影スタッフに、聖龍HEADの女性達の水着姿を撮るよう指示を出す聖龍隊総長のバーンズ。

 そんなバーンズ同様、明るい様子で笑顔の女性達は撮影に対して気張っていた。

 が、そんなところに。

「おいッ、バーンズ! 今回の水着だが、露出が多いんじゃねえのか!?」

「ゲッ、修司……!」

 撮影現場に乗り込んできた修司を見て、バーンズが慄く。

「俺が総長の時は、水着とか破廉恥な格好の写真は全面NGだったのに……お前の代に変わってからは、露骨にスケベな写真が多くなっているぞ!」

「す、スケベだなんて。ちょっと肌の露出が多いだけだろ……もう聖龍隊の総長じゃなくなってるんだから、口喧しく言わないでくれよ……」

 聖龍HEADの女性達の破廉恥な写真を全面的に禁止にしてた修司の反感に対し、バーンズは呆然と喧しく思う。

 すると、そんな修司の文句に対してHEADの女性達が言った。

「修司くん、良いじゃないの。私達だって、新作の水着のモデルにさせてもらえてウハウハなんだしさ」

「お前は黙ってろ、うさぎ!」

 笑顔で楽天的に言う月野うさぎに対して修司は怒声を返す。

「修司くん、相変わらず固いよ。もっと楽しまないとさっ」

「俺はお前達のイメージを大事にしたいんだよ! 聖龍隊を束ねるヒロインが、そんな肌を曝け出しちゃいけませんッ!!」

 獅堂光の訴えに対しても、修司は怒り散らす。

「なんだか、修司くんって総長の頃から変わらないというか……」

「風紀委員というか、頑固な父親というか……風紀とかを乱す行為には、口を酸っぱくするんだからな」

 火野レイも愛野美奈子も修司の言動に呆れ果てていた。

「と、いうよりも……修司くんって、私達を実の娘というか、家族の様に思ってるところがあるから肌の露出とか、うるさくなっちゃうんじゃないのかな?」

 ちせが首を傾げて言うと、修司は目を潤わせて呟いた。

「家族の様に思っちゃ、いけない……?」

「だからって、義兄さんは口喧しすぎるよ」

「そうだそうだ。ちゃんと本人の了解も得てるし、何より女ってのはオシャレしたい生き物なんだし、少しは楽しませろよな」

 修司の呟きに対して、撮影現場に居合わせているジュニアも、バーンズも呆れて言う。

「だってだって……やっぱり、聖龍隊の、アジアの英雄たるもの、イメージは大切にしたいし、オシャレ心と言えど少し露出は控えてほしいんだよな」

 すっかりいじけてしまう修司を見てその場の一同は唖然としてしまう。

 と、ここで修司はある人物の水着姿に気付いて叫んだ。

「誰だ!! 妊娠中のハニーまで撮影現場に呼んだのは!!」

 修司の怒号が響く中、皆の視線がマタニティ用の水着を着た早見ハニーに集まる。

「修司くん、これは私の様な妊婦さんでもオシャレを楽しめるようにと、スタッフさんが用意してくれたマタニティ用の水着よ。多くの妊婦さんにも海やプールを楽しんでもらえるよう、水着もバリエーションが豊富でないと」

「だーーーーからって!! そんなお腹が冷えそうな水着、かえって妊婦さんの体に悪いとは思わないのか!?」

 修司からの度を過ぎた指摘に、再び現場の聖龍HEADは呆れてしまう。

「そもそも! 男共はなんで容認したんだ、許可したんだ!! 自分の女がイヤらしい水着を着て、撮影されるってのに抵抗はないのか!?」

 この修司の発言を聞いて、バーンズが修司に指摘する。

「それじゃ修司、お前はアッコの水着姿、見たくないのか?」

「!? たかが水着だろ。別に格段、見たいもんでもないだろ」

 この発言に、アッコが起こり出してしまった。

「えーーっ!? ちょっと修司! 私がカワイイ水着を着てるの、見たくないの?」

「ああ、別に」

 アッコの文句に素っ気なく返す修司の言動に、アッコが膨れっ面になっていると、バーンズが澄ました顔で言った。

「修司の場合、アッコがどんな姿だろうと、普段の平常通りのアッコに勝る容姿はないと思ってるんだろ?」

 と、バーンズが真意をついた瞬間、修司はバーンズの首を右手で捕まえると、そのまま右手に力を込めて首を絞め始めた。

「ダマレ」「ッ、ッ……!」

 真意をつかれてバーンズの首を絞め付ける修司を前に、皆は唖然とする。

 その後、なんとかジュニアやアッコ、そして聖龍HEADの女性達の説得を受けて、修司も渋々水着の撮影を容認するのだった。

 

 だが、修司は未だに聖龍HEADのヒロイン達の水着撮影に納得していなかった。

「修司、そんなにカッカするなよ……たかが水着の写真撮影じゃないか」

 必死に修司を宥めるバーンズ。しかし修司の心情は簡単には変わらない。

「HEAD、いや聖龍隊ってのはな……人々の希望の象徴であって、誰に対しても手本にならなきゃならない存在であってだな……」

「はいはい、解ってる解ってるよ。でもな、時には人望や人気取りをするために、こういったお色気要素も必要な訳であってだな……」

 文句を言い続ける修司に、バーンズも実情を話し返す。

「俺はお前らに、清らかで正しい存在として認識されてほしい訳なんだよ。特に、俺のを……遺伝子を組み込んで、新世代型二次元人に変化した以上、余計に安全で正しい存在と世間に認知してほしい訳で……」

「解ってるよ。でも、僕らが新世代型二次元人として世間から危険視されかねない現実と、人々の要望に応える為にも、こういった撮影をするのとは関係ないと思うんだけどな」

 修司の定説にジュニアが説き返すと、アッコを除いて新世代型二次元人に変化した聖龍HEADの女性達をジロジロと注視していたバーンズが口を開く。

「それなんだけどな……確かに新世代型二次元人に変化した事で、オレ達も新時代に適応できる存在に変われたのは良い事だぜ。でもな……」

「どうしたんだい? バーンズ」

 考え込むバーンズに天王はるか訊ねると、新世代型二次元人に変化したセーラー戦士やミュウミュウ達を見てバーンズが考え込みながら言う。

「でも、なんか勿体ないな、お前ら。言っちゃあ何だか………………露出が減って、目の保養がなくなっちまったぜ」

 このバーンズの発言に、修司は素早くバーンズの背後に移動すると、バーンズの首を容易くへし折ってしまった。

 容易く首を折られたバーンズは、思わずその場に倒れ込む。

『………………』

 相変わらずのバーンズの破廉恥発言に、他の聖龍HEADは呆れて黙り込んでしまう。

 そして倒れ込んだバーンズは立ち上がると、同時に折られた首を再生して修司に文句を言う。

「おいおい、オレは事実を言ったまでだぜ、事実を」

「もう一片、首をへし折られたいか」

 睨む修司を眼前に、バーンズは不満を零す。

「だってよ、顔付きや声が変わったキャラも居るのに、服装の露出が減ったのは男として不満だぜ、ホントに」

「容姿や体型で全てを決め付けるな……! 見た目での差別や偏見も、俺の嫌いなモノの部類だ」

「いやいや、女はみんな胸や尻の形状・大きさで判断しちゃうじゃん。なあ、絶壁まな板のアッコ……ッ!」

 と、調子に乗ったバーンズが思わず零してしまった禁句を聞いて、アッコがバーンズの頭を右手で鷲掴みにして、強靭な握力で握り潰さんとばかりに末恐ろしい形相を浮かべる。

「オンナハミンナ、オッパイ………………ナノネ」

『ヒィっ!!』

 物凄い恐ろしい形相でバーンズの頭蓋を握り潰そうとするアッコの言動を前に、聖龍HEADの面々は一斉に顔を蒼褪める。

 

 そんな修司やアッコそしてバーンズのやり取りを目の前にして、冷静さを取り戻した藤原さくろ、そして彼女に続いて碧川れたすが真顔で言った。

「それにしても……修司さんとバーンズは、ホントにこういった面でも目立つけど、何かと正反対なのは昔とちっとも変わらないわね」

「そうですわね。修司さんは真面目過ぎて、バーンズさんは不真面目な点が多いですし……」

 そう言われて、バーンズはアッコの手から解放されると修司に言った。

「そうだぜ修司。真面目なのは良い事かもしれないが、真面目過ぎるのもかえって心身に悪いもんだぞ。ほれ、お前だって昔、真面目過ぎてウツを発症しちまったじゃないか」

「それとこれとは別問題だ、バーンズ」

 バーンズの台詞に、修司は腕を組んで不服そうな顔を浮かべる。

 

 そんなこんなで修司と聖龍HEADは何とか無事に聖龍隊本部に着いた。

「はぁーー……今日は女どもの淫らな点を怒ったからか、疲れたぜ。補給補給……スーー、ハーー……スーー、ハーー……」

 と、聖龍隊本部で修司は、月野うさぎと愛野美奈子の相棒ともいえるルナとアルテミスを顔に抱き寄せては匂いを思いっきり吸い込んでいく。

「だ、誰か……」「吸われる……」

 修司に思いっきり猫吸いされるルナとアルテミスは助けを乞うかのように呟くと、アッコが近付いてきて修司に言った。

「ねえ、修司………………次、私にも吸わせて」

「「ちょっ!?」」

 まさかのアッコの猫吸い要望に、ルナとアルテミスは唖然とする。

「ちょっと待ってろ。まだ猫成分が足りない……スーー、ハーー」

 それでも相変わらず吸引し続ける修司を見て、ローゼンメイデンの真紅が呆れた様子で言った。

「修司、ルナとアルテミスが猫だから良いものの、人間だったらセクハラで訴えられるわよ」

「猫だからOK!」

 と、真紅に対して親指を立てる修司に呆れる皆だが、今度はジュニアが修司に言った。

「義兄さん、それだと言っちゃなんだけど、まるでシンナーか脱法ハーブ吸ってるみたいだよ」

「合法だからOK!」

 ジュニアに対しても親指を立てて宣言する修司の言動に皆が呆れ返っていると、アッコが更に修司に懇願する。

「ねえ、修司。私にもルナとアルテミスを吸わせてぇ」

「「アッコちゃんまで!?」」

 アッコまでも猫吸いしたい欲求を示す現状に、ルナとアルテミスは唖然とする。

 そんな修司とアッコに、二匹のパートナーであるうさぎと美奈子が言った。

「ねえ、修司くん、アッコちゃん……」「どっちも私たちのパートナーなんだから……」

「「私達が先に猫吸いする権利があるのよ」」

「って、お前らもかいッ!!」

 うさぎと美奈子の主張を聞いて、バーンズが思わずツッコむ。

 そんなバーンズは続け様に修司を問い詰めた。

「修司! お前はアッコと猫、どっちが大切なんだ!?」

 すると修司はさも当たり前のように言い放った。

「ニャンニャンに決まってるだろうがッ!」

 この修司の台詞に、一瞬硬直するバーンズは思わずアッコの方へと顔を向けると、彼女も平然と言い放つ。

「そうよ、ニャンニャンの方が大切に決まってるじゃない!」

「もう嫌だ、この猫バカップル……」

 もはや完全に猫の方が大事だと主張する修司とアッコに、バーンズは泣き出しそうになる。

「猫だったら、私だって可愛いし、萌え萌えじゃないのかニャ?」

 と、そんな猫バカの修司に桃宮いちごが問い掛けた瞬間、修司は目付きを鋭くさせて言い返した。

「ネコミミ萌えとネコ萌えを一緒にしてんじゃねえぞ! ぶっ殺すぞテメエ!!」

「あの、その、なんだか、その………………ごめんなさい」

 ネコミミコスプレとネコ萌えは決して同じではないと怒声で主張する修司の反論に、いちごは小さくなりながら小声で謝罪する。

 

 

 

 それから聖龍HEADは修司と別れた後に、アニメタウンを納める為の話し合いを始めた。

「それにしても……修司も少しは変わってくれたな」

「ああ、やっぱりポイズン・アイビーの一件でミラーガール達の言葉が響いたんだろうな」

 ヒーロー・ウォーの一件以降、聖龍HEADと距離を置いていた修司がポイズン・アイビーの一件でミラーガールたち聖龍HEADの女性達からの優しい助言で心を開いてくれたかなと、キング・エンディミオンとバーンズが語り合う。

「そういえば、ポイズン・アイビーはちゃんと大人しく投獄されているのかしら……」

「ああ、彼女なら今でも厳重にタナトス・アサイラムに収監されてるよ。アメリカ、ゴッサムシティのアーカムアサイラムに移送されるまでは、タナトス・アサイラムで投獄される事が決まったからね」

 アプリコットとジュニアが語り合っている中、セーラーウラヌスとセーラーネプチューンが話し出す。

「議題を戻すけど……アニメタウン区域の全学校に、警察官を駐在させるスクールポリス制度の施行は順調だろうね?」

「小中高と、学校にも問題ある生徒や教師、更には突然変異同然で異常者(ヒール)に変異した二次元人に対応すべく、警察官を学校に駐在させて柔軟に問題を解決に導かないと……」

 アニメタウンでは少年法が完全に撤廃された事で、少年少女の犯罪に対応すべくスクールポリス制度の施行が実施されていた。

「だが、俺たちが市民によりよい生活を安定させる為の法案施行を未だに毛嫌いしている役場の人間が、よくもまあ自分達の身内をも摘発させかねないスクールポリス制度を施行させたもんだぜ」

「それに関しては修司……いや、ジャッジ・ザ・デーモンが政策を快く思ってない役人の罪状を明るみにさせて、失脚させているから問題なく施行できるんだ。修司が言ってたぜ、「人々が平等に平穏に暮らせる為の法整備なら、俺は快く手助けしてやる」ってな」

「おーー、怖い怖い」

 キング・エンディミオンの愚痴に答えるバーンズの説明を聞いて、エンディミオンは呆れた様子ながら感謝するのだった。

「さあっ、議題を早々に終わらせましょう! この後、さやかちゃんと女子会の予定が入っているんだから」

「今じゃ、すっかり失恋女子同士で仲良くなってるな、美奈子」

 セーラーヴィーナスの気合の入りように、彼女と親しくなっている聖龍隊の美樹さやかとの親交にバーンズは呆れながらも笑みを浮かべる。

「みんな! もうすぐ私たち聖龍HEADと国連軍元帥の会合が、シュテルンビルトで行われる事になるけど……大丈夫?」

 と、ここでミラーガールが聖龍HEADの皆にシュテルンビルトで行われる会合について問い掛けると。

「ええ、平気よ!」

「あの赤犬も、まさか公式な会合中に猛威を振るうなんて事はないでしょう」

 龍咲海と鳳凰寺風が力強く返答すると、聖龍隊総長バーンズは真剣な顔で言うのだった。

「よし! 当日はシュテルンビルトを訪れるのは、赤犬だけじゃない。今や元帥補佐官にまで上り詰めたユーリ・ペトロフも来訪するみたいだ。虎徹たちNEXTヒーロー達は不満があるだろうが、最後まで平穏に会合が終わるのを祈ろう」

 

 

 

[国連軍と聖龍隊の公式会合]

 

 そして遂にその日が来た。

 アニメタウンとは別世界にある大都市シュテルンビルト。此処で聖龍隊と国連軍の公式会合が開かれる事と相成る。

 お互いに厳しい正義の価値観の違いはあれど、同じ世界の平和を願って日々戦い続ける屈指の最強戦力。故に、双方は互いの意見の食い違いも含めて、公式に会合する事が決定した。

 既に聖龍HEADを始めとする聖龍隊の軍隊がシュテルンビルトで待機する中、そんなシュテルンビルトに国連軍が来訪する。

 しかも国連軍は自分達の力の誇示をするかのように大規模で華やかな大行進を国連軍の部隊で構成して、シュテルンビルトの都市部を縦断した。

「あ~~あ、アレ見てみろよ。ペトロフの奴、元帥赤犬を引き立てる様に後ろからパレードに着いていっているけど、結局は赤犬と自分を主役にパレードしているのが見え見えだぜ」

「かつて僕らの理解者だった元シュテルンビルト司法局のヒーロー管理官であり、裁判官であったユーリ・ペトロフも……今や、赤犬元帥が施行した徴兵制度で抜擢されて、赤犬の補佐官にまで上り詰めた青き炎の使い手である断罪人ルナティック……まさか、また此処シュテルンビルトで対面するとは」

 かつては自分たちNEXTヒーローの理解者であったヒーロー管理官兼裁判官であったユーリ・ペトロフが、処刑人でもある断罪人ルナティックであっただけでなく、今や聖龍隊とは思想が相容れない国連軍の元帥補佐官にまで出世した経緯に、かつてのユーリ・ペトロフを知る鏑木・T虎徹とバーナビー・ブルックスJrは複雑な心境で国連軍の行進を遠視していた。

国連軍の大行進は実に壮大で、かつ豪華絢爛な装飾や催しでシュテルンビルトを進行していた。

 この大行進に、前々からユーリ・ペトロフことルナティックの処刑人としての一部の人気も含め、彼が国連軍に抜擢されて元帥補佐官に任命された経緯から、ユーリ・ペトロフのシュテルンビルト再来を熱望してたファン達が、国連軍の大行進を一目見ようと押し掛ける。

「国連軍、万歳!」「赤犬元帥、万歳!」「ユーリ・ペトロフ、お帰りなさい!」

 数多の声援にユーリ・ペトロフは愛想よく手を振りまくが、派手に自分達を着飾り、脚光を浴びるのを余り快く思わない赤犬ことマグマード・岩田は、腕を組みながら一人不愛想な強面で行進するオープンカーに搭乗していた。

 豪華絢爛な国連軍の大行進は、自分たち国連軍の正義を熱唱する歌を派手に合唱しながら街中を行進する。

『千人の悪党を ばっさりと薙ぎ倒し 地獄に葬った、偉大な方々~♪』

 そう熱唱しながらパレードをする国連軍の行進に、狙いを定めて狙撃しようとするテロリストを警備に当たるユーリ・ペトロフ直下の私設部隊TIGERの隊員が素早く殺害して処理をする。

「ユーリ様! こっち向いて~っ」「きゃ~、素敵~っ」

 行進する国連軍のユーリ・ペトロフに向かって笑顔で手を振るシュテルンビルトの女性達に、ユーリ・ペトロフも笑顔で愛想を振りまく。

『タナトスの、声を聴け』「………………」

 そんな行進するユーリ・ペトロフに、彼のお決まりの台詞をルナティックのコスプレに扮するマッチョな男たちが唱えるのを見て、当のユーリ・ペトロフ本人は照れたのか顔をそむけてしまう。

 

 こうしてマグマード・岩田こと赤犬元帥と、その補佐官であるユーリ・ペトロフは、ペトロフ私設のTIGERの護衛の中、国連軍の大行進に混ざって都市部を進行し、聖龍HEADとの会合を開く会場へと足を運ぶのだった。

 

 そして聖龍隊と国連軍の会合が開かれる会場。

 会場では、既にシュテルンビルトに到着していた聖龍HEADが待機していた。

 そんなHEADと会合をするべく、会場に入るのは国連軍元帥である赤犬ことマグマード・岩田。

「やあ、久しいのォ……軟弱な正義を掲げる聖龍隊」

「そんなこと此処で言うのは此処ではやめようぜ、赤犬。今回オレ達は話し合う為に会合を開いているんだろ?」

 第一声に聖龍隊の正義を非難する赤犬の発言に、バーンズが呆れながらも険しい顔で言い返すと。

「ふんっ、見栄えや売名行為しか取り柄の無い聖龍隊が、わしら国連軍と同様に正義を掲げとるせいで……わしら国連軍の高等な正義まで同列に見られて歯がゆいわい」

「まあまあ、マグマード・岩田。今日は取りあえず、いさかい無しで話し合おうじゃないの。あなた達、国連軍もその為に此処に来ているんでしょ」

「フンッ、まあ……こげな会合、すぐに終わらせちゃるけん」

 聖龍隊の正義を嫌悪する赤犬の言動にミラーガールが宥めるが、赤犬は未だに不服のご様子。

 こうして何とか聖龍HEADとマグマード・岩田との会合がシュテルンビルトで始められた訳だったが。

「……未だに聖龍隊と国連軍の溝は埋まらない様だな」

「! お前……! 何しに此処に居る……!! 修司……ッ!!」

 そんな始められた会合の場に突如として現れる小田原修司に、修司とは犬猿の仲である赤犬が怒号を吐き散らすと、修司は平然と赤犬に言った。

「なに、気にするな。俺はあくまで傍観希望者として、会合の行く末を見守るだけだ。特別、口を挟む事はしない」

「ッ……!!」

 会合を見守るだけと述べる修司だが、そんな修司の言動に赤犬は未だ睨みを利かせる。

「まっ、赤犬。これでも食って、会合を進めろや」

 そう言って修司が赤犬の前に差し出しだのは、山盛りのミカンだった。

「ミカンか……わしの親父の故郷の特産物である事を知ってか?」

「ああ、まあな。でも俺も食わせてもらうぜ。俺が柑橘系の果物が好きなのは知っているだろ?」

 そうして赤犬は修司と共に、テーブルの上に置かれた山盛りに積まれたミカンを手に取り、皮をむいて食べ始めた。

「おい、修司……! このミカン、ちぃっと酸っぱくないか?」

「甘味4、酸味が6の割合が俺は好きなんだよ」

 ミカンの味に不満を零す赤犬に、修司は自分の好みを述べる。

「お前ら……ミカンばっか食ってないで、ちゃんと会合進めようぜ」

 そんな修司と赤犬を前に、バーンズは呆れてしまうのだった。

 

 そして何とか無事に聖龍隊と国連軍の会合は終了し、会議室から聖龍HEADと赤犬そして傍観希望者の修司が退室してきた。

「岩田元帥、会合お疲れ様です。話し合いはどうでしたか?」

「ペトロフか……別に、どうもせんよ」

 話し掛けてくる元帥補佐官のユーリ・ペトロフに対して、赤犬は不愛想な顔で答える。

 と、其処に退室してきた聖龍HEADと赤犬元帥を報道陣が取り囲む。

「聖龍HEAD! 今回、どの様な議題で赤犬元帥と会合したのですか!?」

「赤犬元帥! 今後も貴方は聖龍隊とは距離を置いた状態で、国連軍の正義を実行していくのですか?」

 押し掛ける報道陣に取り囲まれる聖龍HEADと赤犬を前に、そんな報道陣の群集に対応する赤犬を陰ながら離れた場所で見守るユーリ・ペトロフ。

 と、ユーリ・ペトロフが赤犬元帥が報道陣に如何なる対応をとるのか見守っていると、そんな彼に歩み寄る二人の人物が。

「ペトロフ」「ペトロフさん」「おや、あなた達……」

 ユーリ・ペトロフに声をかけたのは、かつては同職だった鏑木・T・虎徹とバーナビー・ブルックスJrの二人だった。

 虎徹とバーナビーは、険しい面持ちでユーリ・ペトロフと会話する。

「ペトロフ、調子はどうだ?」

「ワイルドタイガー……ええ、昔と変わらず職務は順調ですよ」

「相変わらず、国連軍は悪人を容赦なく断罪しているみたいですね。そう、人権なんて無視して……」

「ふふっ、あなた達、無粋な正義を掲げる聖龍隊を最初に統率してた小田原修司には負けますよ。なんせ彼は過去に……自分が所属してたJフォースの軍人達までも手に掛けた、おぞましい鬼なんですものね」

「ッ……!」「あなたは……!」

 ユーリ・ペトロフの失言に表情を強張らせる虎徹とバーナビーに、ユーリ・ペトロフは余裕ある表情で返した。

「いえいえ、誤解しないでほしいです。私たち国連軍は、そんな非情にも冷徹にもなれる小田原修司に多少ながら尊敬している面もあるんですよ……あなた達NEXTヒーローと違って、罪人をしっかり裁ける素晴らしい精神を持っているんですから」

「ッ……!」

「なあ、ペトロフ。お前さんが未だに俺たちNEXTヒーローの正義の行為を、軟弱な正義と見下しているのは、もうどうでもいい。だけどな、あの修司くんはそんな国連軍に在籍してた頃と違って今を懸命に生きているんだ。そんな修司くんの生き様までも悪く言わないでくれるか」

「ふふっ、三つ子の魂百まで……人という生き物は、そう簡単に変われませんよ。殺人などを犯した大罪人は、死をもって償いをさせるように……小田原修司もまた、人間兵器だった頃の様に冷徹な制裁を得意分野にしてるじゃないですか」

 平行線を辿る虎徹とバーナビーとユーリ・ペトロフの話し合い。

 すると其処に、虎徹とバーナビーと会話しているユーリ・ペトロフに赤犬元帥が声をかけてきた。

「おい、ペトロフ……!」「はっ! なんでしょうか、元帥閣下」

 自分の正義を認めてくれた赤犬元帥に絶対の忠誠心を持つユーリ・ペトロフが敬礼すると、赤犬はユーリ・ペトロフを睨みながら文句を言った。

「ペトロフ、お前さんは見栄えや売名行為をするシュテルンビルトのNEXTヒーロー達を毛嫌いしているっちゅうのに、今回シュテルンビルトの街中を行進した、あのパレードはなんじゃ……! あんな派手な格好で行進させるなんて、見栄えや世間を気にする聖龍隊と同列じゃぞ……!!」

 国連軍の行進に対して不満を告げる赤犬の言動に、ユーリ・ペトロフは穏やかな表情で答え返した。

「申し訳ありません、元帥殿。ですが、国連軍がただ恐れられるだけの軍隊だと世間に認知されてしまっては、この先より多くの正義を遂行する国連軍の責務に影響が出ると思いまして。それで、民衆受けに適した、あのような豪華絢爛なパレードで街中を行進させた訳です」

「………………ッ!」

「確かに国連軍の正義は、聖龍隊の様に見栄えや道化同然の建前だけの偽善であってはならない事です。ですが、より正義を遂行する為には多少ながら民衆に受け入れられる様にならない限り、難しいものなのです。不快にさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 丁寧に赤犬に対して説明と謝罪を述べたユーリ・ペトロフだったが、彼は次の瞬間、嘲笑する様な目付きで側にいた虎徹とバーナビーに視線を送ると平然と言った。

「まあ……売名や道化師といった、正義を見世物にしている低俗な偽善のヒーローには負けますけどね」

「ッ……!」「あ、あんたは!」

 NEXTヒーロー達はもちろん聖龍隊の隊士までも低俗で偽善と罵るユーリ・ペトロフの言動に、バーナビーが愕然とする一方で虎徹は怒りに任せてユーリ・ペトロフの胸倉を掴んでしまう。

「こ、虎徹さん、落ち着いて」

 そんな虎徹を慌ててバーナビーが宥めながら止めに入る。

 すると、そんな騒動を面白おかしくカメラを向けてくる存在が。

「いいよ、いいよ」「「!?」」

 その声に虎徹とバーナビーが顔を向けると、その視線の先に居たのは。

「これは……国連軍と聖龍HEADの会合よりも、NEXT同士のいざこざの方がビッグニュースになって、いい記事になる」

「ッ……!」「鳥人モルガンズ……!」

 そう、国連報道局の局長であるモルガンズだった。モルガンズの言動に、虎徹とバーナビーはモルガンズを睨み付けながら、虎徹は掴んでたユーリ・ペトロフの胸倉を離す。

「おいおい、まだ写真は撮ってないぞ。虎徹、いやワイルドタイガー、もう少しユーリ・ペトロフ補佐官の胸倉を掴んでくれよ。あ、でも可能ならハンドレッドパワーでユーリ・ペトロフを殴り飛ばしてくれても構わないぞ。その方が更にビッグニュースになる」

「ッ……お前……!」

「やめましょう、虎徹さん! モルガンズと言い合うだけ、時間の無駄です!」

 モルガンズに詰め寄ろうとする虎徹を、バーナビーが必死に宥めて制止する。

 

 と、そんな虎徹とバーナビーをおちょくるモルガンズに、小田原修司が歩み寄っては声をかける。

「おいおい、モルガンズ。そんなに聖龍隊の隊士である二人を、おちょくるなよ。写真やスクープがほしいなら、俺が出してやろうか?」

「ふん、どこぞの上級国民の弱みとかだろ。そんなネタ、既に古臭い上にあんたのネタなんか、それこそ自分自身の……小田原修司の売名行為だって、今じゃ誰もが周知している事だ。そんな売名行為で貰ったネタじゃ、新聞記事は売れんよ」

 昔から修司が報道関係者に根回ししている情報の多くは、小田原修司本人の売名行為に繋がる情報が多く、モルガンズはそんなネタでは新聞は売れないと断言する。

 が、そんな断言するモルガンズに、修司は平然と言ってしまう。

「でもよ、今の時代誰もが簡単にパソコンやスマホなんかでネットを通して最新のニュース情報を知れるんだし、新聞なんか時代遅れなんじゃないのか?」

「【ガァーーン】………………!!」

 この修司からの指摘に、モルガンズは途轍もなく衝撃を受けて精神を深く抉られてしまう。

「そうだよな……今の時代、新聞なんかよりもネットニュースの方が早く情報が出回るよな……もう新聞なんか時代遅れだよな……」

「わーーーーッ! 局長ッ!」

 完全に落ち込むモルガンズを目の当たりにし、同行してた報道局の記者が慌てふためく。

「あんた! なんて事を局長に言うんだ! 鬼! 悪魔! 人でなしーーッ!」

「ふーーんだ、俺どうせ鬼神だもん、悪魔の様な人でなしだもん」

 記者からの言葉に、修司は鼻をほじりながら訂正もせず受け入れる。

 すると、そんな落ち込むモルガンズにミラーガールが優しく話し掛ける。

「も、モルガンズさん。一部の人たちは、まだ新聞で情報を知りたがってるわ、きっと。私だって、刷りたての新聞はインクの香りがして好きよ」

 そうミラーガールから励まされたモルガンズは、目に涙を浮かべてミラーガールに感謝を述べる。

「おお……ッ! そう言ってくれるとは、嬉しい限りだ。流石は聖龍隊屈指の聖女。胸は無くとも、慈愛の精神は満ち溢れてる……」

 と、モルガンズが熱弁してるとミラーガールは彼の失言を聞き逃さず、モルガンズの発言を聞いて首を掴んで言い放った。

「今なんて言った……! オイ……!」「ヒィッ」

 ドスの利いた声で問い詰めてくるミラーガールに、モルガンズは顔を真っ青にする。

『………………………………』

 そんな修司やミラーガールの様子を傍観して、言葉を失う聖龍HEADの面々だった。

 

 

 

[変わる世界情勢と炎上するアジア州立刑務所]

 

異世界の大都市シュテルンビルトで、どうにか無事に聖龍隊と国連軍の会合が終わったのち、世界情勢は更に激動激変に及んでいた。

 今や国連軍元帥補佐官にまで上り詰めたユーリ・ペトロフは、自らが創設した私設部隊TIGERを元帥マグマード・岩田の許可を得た状態で、なんと世界中の国々に配置させるよう演説で促していた。

 このユーリ・ペトロフの私設部隊TIGERは、先のシュテルンビルトでの聖龍隊と国連軍会合の際、国連軍の行進中にユーリ・ペトロフや赤犬を狙撃して暗殺しようとしたテロリストや犯罪者達を阻止した功績もあって、元帥マグマード・岩田はユーリ・ペトロフの私設部隊TIGERを高く評価した。

 しかし時には逮捕・起訴・そして裁判をも省略してテロリストや犯罪者を断罪した上で捕縛も行えるという特権を持ったTIGERの各国への配置は少なからず反発があった。

 だが、このTIGERの各国への配置を義務付ける国際法が通ってしまい、世界各国へTIGERが配置され、犯罪者達は容赦なく断罪され、捕縛される動きへと移行された。

 ユーリ・ペトロフの私設部隊TIGERの各国への配置が義務付けられた背景には、未だに多くの二次元人の異常者(ヒール)化現象や、凶悪犯罪が横行するという現状の他に、ユーリ・ペトロフが何らかの形で国連の議員達に圧力をかけて半ば強引にTIGERの各国への配置が国際法で義務付けられる様になったのではないかと噂された。

 そんな現状の中、私設部隊TIGERを直接命令を下して動かせる権限を与えられたユーリ・ペトロフは、各国の報道機関の前で暑く演説を行った。

 

「皆さん! 今までの歴史を、悲劇を忘れないでください……! かつて私たちの世界、いや地球は……幾度となく滅亡の危機を迎えてきました。今は滅んだ革命軍士の総司令官メカルスによるイレブンズ・プロジェクトを始めとした大戦、その前は当時の二次元人による軍隊Jフォースと聖龍隊の戦争……私達はいつ、死滅しても可笑しくなかった歴史が過去にあるのです! そこで私は考えました……この様な人類の破滅に繋がる大戦を乗り切る……いいえ! 防ぐ為の、最も正攻法で有効な手段を……それこそが、私が指揮する新世代型二次元人による特殊部隊TIGERの運用です! 今や多くの犯罪者やテロリズムが各地で勃発している以上、それらの人災から人々を護れる崇高なる意志と力を持った新世代型二次元人による特殊部隊TIGERこそが、人類の未来を勝ち取ってくれる事でしょう……! 既に、多くの国連議員や国連軍の軍人達から署名と許可を集め終わっています。私は此処に宣言します! 早々にこの世から理不尽かつ不条理な争いを、そして数多の悪事を払拭する最強の正義の軍隊TIGERを設立し、多くの人民達の未来と希望を守り抜くと!!」

 

 このユーリ・ペトロフの熱弁を受けて、世界各国はようやくユーリ・ペトロフの私設部隊TIGERに厚い信頼をする様に至った。

 ユーリ・ペトロフの演説中継をテレビで視聴してた聖龍HEADは、テレビの電源をリモコンで切って話し出す。

「ペトロフの奴、ほぼ自分専用の私設部隊を創ったかと思えば、その部隊を世界中に配置させるなんて……何を企んでいるんだ?」

「最近のユーリ・ペトロフの行動は予測不可能だ。本当に何の意図で動いているのか……理解し切れない」

 ユーリ・ペトロフの演説中継を観て、聖龍隊総長のバーンズと参謀総長のジュニアが難しい顔で話す。

「これを機に、国連の命令に逆らえないでいるアニメタウンの有力者達までも、アニメタウン国内にユーリ・ペトロフの私設部隊TIGERを配置させようと動いているみたいだし……」

「そもそも、あのタナトス・アサイラムもアニメタウンだけでなく世界中に建造するよう国連を通して命じたユーリ・ペトロフが、なんで此処までの権限を与えられているのか不思議だわ」

 バーンズとジュニア同様、ユーリ・ペトロフの演説中継を視聴したセーラージュピターと真紅は、ユーリ・ペトロフに何ゆえ多くの権限が与えられているのか疑問視した。

「アニメタウン国内にまで、TIGERが配置されるのは避けられないわ。アニメタウンの有力者たちは、国連にしっぽを振って媚を売りながら命令を聞くしか能がないもの」

「海さん、それはちょっと言い過ぎでは……」

 不満を零す龍咲海に、鳳凰寺風が唖然としながら言葉をかける。

「ユーリ・ペトロフ……今や、彼の動向や思考は謎に包まれているわ。そのユーリ・ペトロフが、何を目的として世界中にタナトス・アサイラムやTIGERを置いたのか……ふう、悩みどころがまた増えたわ」

「そうね。ユーリ・ペトロフ、彼も悲しい過去を背負った二次元人……彼の思想は何を思い、何を目標として今後も動いていくか。私たち聖龍隊で逐一注視していかないとね」

 ユーリ・ペトロフの思考や言動が謎に包まれている現状に頭を痛めるウォーターフェアリーに、ミラーガールが聖龍隊全体でユーリ・ペトロフの動向に注意していかなければとHEADの皆に忠告する。

 

 と、聖龍HEADがユーリ・ペトロフの演説中継を観て各々苦悩している所に通信が入った。

「HEAD、大変です! 竹島のアジア州立刑務所から突如として火災が発生! 混乱に乗じて囚人達が次々と脱走しています!」

「なんだと!?」

 通信士キャサリン・ルースことキャシーからの連絡に、バーンズたち聖龍HEADは目の色を変えた。

 と、聖龍HEADが騒然とする中、ある一人がそんな聖龍HEADに言った。

「俺が行く」

 そう聖龍HEADに言ったのは、他でもないジャッジ・ザ・デーモンだった。

「修司……!」

 単身、炎上する州立刑務所に向かうと言い出すジャッジ・ザ・デーモンにバーンズ達が愕然とする中、ジャッジ・ザ・デーモンは更に告げた。

「大丈夫だ」

 そう告げると、ジャッジ・ザ・デーモンは足早に高性能ステルス戦闘機ジャッジウィングに搭乗すると、そのまま竹島へと飛び立った。

 

 過去に日韓でそれぞれ自分達の領土と争ってた原因である竹島などの尖閣諸島は、今や国連が管轄する領土となっており、竹島にはアジア州立刑務所が建造されていた。

 竹島に建造されたアジア州立刑務所には、文字通りアジア各地で犯罪やテロ行為を行った凶悪犯が収監されていた。

 そんな竹島に建造されたアジア州立刑務所から謎の出火が発生し、この火災の混乱に乗じて囚人達が脱走を図っていた。

 高性能ステルス戦闘機ジャッジウィングで竹島に接近するジャッジ・ザ・デーモンは、既に海上へと脱獄していた、あのイーグルこと三枝鷲雄に、今や悪名高い元アイドルのクラウディ本名:流水霧也(はやみ きりや)ことブラックホワイトが、各々部下を引き連れて脱獄していた。

「ガハハッ、いや、運が良かった! 刑務所が火事になってくれたお陰で早々と牢獄から出られた」

「よし、お前ら! 俺がオセロの駒を使う暇もないほど、さっさと日本本土へと戻るぞ!」

 イーグルとブラックホワイトは、それぞれ刑務所を脱獄する際に奪い取った監視艇であるボートに乗って、海上を悠々と移動して日本に寄港しようとしていた。

 が、そんな二隻の船に狙いを定めたジャッジ・ザ・デーモンは、ジャッジウィングから二発のミサイルを発射してイーグルとブラックホワイトそれぞれが乗船するボートを撃沈させた。

「うわっ!」「く、クソ……ジャッジ・ザ・デーモンだな!」

 海に放り出されたイーグルとブラックホワイトは危うく溺れかけるが、其処に韓国から派遣された軍隊の船が接近して二人とその一味たちを引き上げる。

「おい! 大人しくしろ、このキチガイの二次元人め!」

 引き上げられたイーグルとブラックホワイトは、船員から汚い言葉を浴びせられながらも救出された。

 そしてイーグルとブラックホワイトの二人が無事に韓国の船に引き上げられたのを視認したジャッジ・ザ・デーモンは、再び炎上する州立刑務所に向かうのだった。

 

 そして竹島に建造されたアジア州立刑務所の上空に到着したジャッジ・ザ・デーモン。

 既に刑務所の各所から出火し、至る所で看守や囚人達が倒れているのが目に入る惨状の中、ジャッジ・ザ・デーモンはジャッジウィングから飛び出て州立刑務所の屋上へと急降下する。

 急降下するジャッジ・ザ・デーモンの目に飛び込んできたのは、迫る火の手から命辛々逃げ果せ、刑務所の屋上で助けを求めている囚人達だった。

(アイツらは……!)

 急降下しながら屋上で助けを求める囚人達の顔を識別するジャッジ・ザ・デーモン。

 屋上に逃避していたのは、アジア州立刑務所に収監されていた元教師である竹内/川井みき/島田一旗/植野直花/広瀬啓祐の五人と、西宮硝子の実父と父方の祖父母だった。

(………………)

 過去に問題行動ばかり起こしたために刑務所に投獄された、この八人を視認してジャッジ・ザ・デーモンは彼らに容赦ない対応をしようと決意する。

 そして屋上に急接近すると、ジャッジ・ザ・デーモンは手始めに西宮硝子の父方の祖母へと急速飛行で接近して体当たり、そのまま彼女を屋上の床に叩き付けて痛め付けた。

「じゃ、ジャッジ・ザ・デーモン!」

 速攻で上空から飛来したジャッジ・ザ・デーモンを認識して、竹内元教師たちは震え上がり、戦慄する。

「か、母さん!」

 一方で西宮硝子の父は、実母が体当たりされた上に、床へと叩き付けられて痛め付けられた惨状に愕然とする。その実母の方は、体当たりと床に叩き付けられた衝撃で全身の骨を粉砕されてた。

 そして何事もなく立ち上がったジャッジ・ザ・デーモンは、姿勢を竹内元教師たちに向けるや否や、ジャッジラングを取り出して西宮硝子の父方の祖父へと投げ付ける。そのジャッジラングは老人の顔面に直撃するや否や、大爆発して老人は大火傷を負った状態で倒れ込む。

「父さん!」

 目の前で実母に続いて実父までも痛め付けられたのを目の当たりにして、西宮硝子の父が泣き叫んでいると、そんな父親にもジャッジ・ザ・デーモンは容赦なかった。

 西宮硝子の父親をグラップネルガンで捕らえると、そのまま彼を引き寄せてラリアットを打ち込むと、その直後に今度はシュミット流バックブリーカーで背骨をへし折って痛め付ける。

 西宮硝子の父親は、背骨をへし折られて脊髄を損傷させられて気絶した。

「こ、殺すんだ! 殺さなきゃ、こっちが殺される!」

 ジャッジ・ザ・デーモンの襲来に恐れをなした島田一旗が叫ぶと、残された五人は各々屋上に転がってた鉄パイプなどを手に取ってジャッジ・ザ・デーモンに襲い掛かる

 だがジャッジ・ザ・デーモンはこの急襲にも怯む事無く、平然と五人の攻撃を回避しながら的確に拳や蹴りなどの打撃を浴びせて反撃。五人はジャッジ・ザ・デーモンの反撃を浴びて朦朧とする中、ジャッジ・ザ・デーモンに攻撃を続ける。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは鉄パイプで殴りにかかった広瀬啓祐が振り翳した鉄パイプを奪い取り、逆に鉄パイプで広瀬啓祐を殴り飛ばして気絶させる。

 広瀬啓祐に続き、ジャッジ・ザ・デーモンの攻撃で朦朧とし、屋上に寝そべる川井みきと島田一旗と植野直花に、ジャッジ・ザ・デーモンは素早くジャッジラングを同時に三つ投げ付けて三人の顔面に直撃させる。顔面にジャッジラングが直撃して爆発した事で、三人は同時に気絶した。

「わっ、わ……っ!」

 残った竹内元教師は、その場から逃げようと試みるが、ジャッジ・ザ・デーモンに捕まってしまい顔面が変形するまで殴り続けられて気絶してしまう。

 

 こうして八人の極悪人を痛め付けて気絶させたジャッジ・ザ・デーモンは、燃え盛る刑務所の玄関へと急いで駆け付けた。

 ジャッジ・ザ・デーモンが玄関に駆け付けると、其処では既に集団脱走を図る囚人達を韓国から駆け付けた軍人達が看守と共に制圧に取り掛かっていた

「無言・即殺! 悪と無駄口、削除なり! このサイ・チョウセイが来たからには、悪である囚人共の思い通りにはさせんぞ!」

 現場の軍人達を指揮するのは、今や小田原修司の義弟である韓国の国将軍のサイ・チョウセイ本人だった。

 サイ・チョウセイは暴れ回り抵抗する囚人達に容赦なく斬りかかり、現場を制圧していく。

 と、そんなサイ・チョウセイに向けて囚人の一人が看守から奪った銃口を向けて、サイ・チョウセイに狙いを定める。が、その囚人にジャッジ・ザ・デーモンが火薬入りのジャッジラングを直撃させて、囚人を気絶させて銃撃を防いだ。

「おおッ、其方は我が兄者が創設した聖龍隊に新たに加わった正義の執行人ジャッジ・ザ・デーモンだな! 助けてくれて感謝する! 同じ正義を守る者同士、共に囚人達の暴挙を止めようではないか!」

「いや、俺は正義の味方とかじゃないんだがな……」

「何を申す! 貴殿は我が兄者が創設した聖龍隊が認めた、正真正銘の正義の英雄ではないか! 同じ正義を守る英雄同士、力を合わせようぞ!」

(コイツの正義漢は、相変わらず極端というか、なんというか……)

 ジャッジ・ザ・デーモンは内心サイ・チョウセイの「悪は正義によって削除されるべきだ」という極端な正義感に対して色々と考えさせられてた。

 そんなこんなでジャッジ・ザ・デーモンは、サイ・チョウセイ率いる韓国軍の軍人達と共に火事で炎上する刑務所を制圧していくのだった。

 

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは、やっとサイ・チョウセイ達と共に刑務所を鎮圧化させ、更にその後刑務所での火事も消化された。

 だが、それによって竹島のアジア州立刑務所は完全に機能停止してしまい、投獄されてた数多の囚人達を受け入れる巨大な施設も皆無に等しかった。

 これに日本政府を始めとするアジア各国の政府の重役達は、囚人達の受け入れ先をアニメタウンのタナトス・アサイラムへと強引に決めてしまう。

 この決定にやや不満を抱いていた聖龍HEADだったが、今回の火災での集団脱走騒動の渦中に聖龍隊が組織的に擁護している新世代型二次元人も多数含まれていた為、聖龍隊は反論できず州立刑務所の囚人達を全てアニメタウンのタナトス・アサイラムに収監する事を容認した。

 こうしてアニメタウン政府に身柄を引き渡されたブラックホワイトやイーグルなどの凶悪な異常者(ヒール)の護送に当たるジャッジ・ザ・デーモンや聖龍HEADの面々に向かって、収監される悪人達は挙って罵声を浴びせる。

「聖龍隊! 俺たちだって同じ二次元人、新世代型だぞ! なんで守るどころか俺たちの人生を壊しやがる!」

「このままで済むと思うなよ!」

 汚い罵声ばかりで、反省の色を全く示さない異常者(ヒール)達を前に呆れ果てる聖龍HEAD。

 そんな現状の中、護送される悪人達を監視するジャッジ・ザ・デーモンと聖龍HEADに向かって、あのブラックホワイトとイーグルが睨みを利かせて言い放つ。

「ジャッジ・ザ・デーモン、聖龍隊……! 貴様らに俺たちの不遇な気持ちが解ってたまるか!」

「必ずいつか、お前達にも苦渋を感じるほどの屈辱を味合わせてやる!」

 そう吐き捨てて、ブラックホワイトとイーグルの二人は、他の囚人達と共にアニメタウンのタナトス・アサイラムへと移送されるのであった。

 

 

 

[タナトス・アサイラムの現状]

 

 後日、タナトス・アサイラムに新たな囚人が護送された。

 囚人を護送する聖龍隊の新人達は緊張感に満ちた張り詰めた空気の中、護送車に同乗して二人の囚人をタナトス・アサイラムに移送する。

 そして聖龍隊の隊士から、タナトス・アサイラムの警備員へと二人の囚人の身柄は譲渡される。

「いやはや、聖龍隊の若者達よ。よく今日も気のふれた精神異常者のクズ共を連れてきてくれた」

「あ、あの……一応、彼らは囚人であっても、此処では患者の扱いなので、その言い方はマズくないですか?」

 タナトス・アサイラムの所長を務める国連から派遣されたハワード・ラグラフトに、聖龍隊の新人隊士である緑谷出久が不安そうな顔で訊ねると。

「そ、そうだ! 私はいづれ、新世界を創造して神となる者なのだぞ! 頭のイカれたキチガイ共と一緒にするな……ッ」

 そう所長の発言に反論する囚人の一人【マジンボーン】のレボルトに、突如として警棒で頭を殴り付ける警備員が怒鳴る。

「誰が神だって? このタナトス・アサイラムに運び込まれる囚人は、皆揃って狂人が普通なんだよ。特に、自分を神様だと名乗るキチガイ野郎は格段に狂ってやがるぜ」

「こ、この……ぐッ!」

 タナトス・アサイラムに勤務する警備員のフランク・ボールズに再び警棒で殴られて黙らせられてしまうレボルト。

「ら、乱暴はやめろ! 私に何かあれば、弁護士を通じて訴えるぞ……うッ!」

 レボルトに続き、自分にも乱暴を働くのをやめるよう唱える二人目の囚人、政府の機関である電脳庁の長官であった【ヒーローバンク】の八神飛鳥も同様にフランクに警棒で殴られてしまう。

「良いか、よく聞けキチガイ共! 此処では俺や所長、そして医師が絶対なんだ! 特に最強の警備員である俺さまの言う事は、文字通りこのアサイラムでは神の言葉に匹敵する……そんな俺に逆らったら、失明あるいは半身不随に陥るのが末路だから口の利き方には気を付けろよ」

「「ッ……!」

「おいおい、なんだ? その反抗的な目は……! おい、お前ら! ちょっと、この新入り達を教育してやろうぜ」

『おうッ!』

 反抗的な眼差しを向けてくるレボルトと八神飛鳥の目付きを不快に思ったフランクの合図で、周囲で警備に当たってた武装警備員達が挙って二人に群がり、殴る蹴るなどの暴力でレボルトと八神飛鳥を痛め付け始めた。

「や、やめろ!」「うわっ!」

 レボルトと八神飛鳥は完全に痛め付けられる一方で、我が身を守るので精一杯。しかも、それをハワード所長は不敵に嘲笑しながら傍観するばかり。

 思わず聖龍隊の隊士である緑谷出久が止めに入ろうとすると、そんな彼の前に警備員が割り込んで言った。

「聖龍隊、君たちの任務は囚人をアサイラムに護送するだけの筈。アサイラムに収容された囚人の指導や更生は我々の職務だ。すまないが、我々の職務を妨害するならそれこそ公務執行妨害で聖龍隊を訴える事になるが、いいのかい?」

「そ、そんな……!」

 緑谷出久達は、止めに入れば逆に自分達が訴えられてしまう現状に困惑する。

 と、聖龍隊が困惑している所に、一人の警備員が駆け付けてきた。

「やめろ、やめろ、お前達! 暴力を振るう暇があるなら、さっさとコイツらを独房に放り込むんだ!」

 そう言ってレボルトと八神飛鳥に暴力を振るう警備員達を止めに入ったのは、長年警備の仕事を務めてきたベテランで、周囲からも尊敬されている、左手が金属製の鉤爪状の義手になっているアーロン・キャッシュだった。

「おい、アーロン。俺たちは新入りに、このアサイラムでどう過ごせばいいかを指導してやってるだけだぞ。いくら俺達より年期の入った大先輩とはいえ、同じ警備員なのに出しゃばるな」

「良いから、この二人も既に解った事だろう。とにかく、早く独房に隔離するんだ。いいな」

 そうアーロン・キャッシュから促され、フランク・ボールズは舌打ちしつつ満身創痍に至った二人を他の警備員達と共にタナトス・アサイラムの奥地へと移送していく。

「はははっ、かつてのドレフ将校の様に新世界の神となろうとしたレボルト、世界中の金を独占しようとした八神飛鳥……この二人が揃って、このタナトス・アサイラムで更生してくれれば、国連議長に立候補される大きな一歩へとなるだろう」

 一方、レボルトと八神飛鳥の暴力現場を傍観してたハワード・ラグラフトは、二人が更生すれば自分の国連議長への道のりが近くなると思い上がってた。ハワード・ラグラフトは、タナトス・アサイラムの囚人達を心の底から軽蔑しているのだ。

 そしてタナトス・アサイラムの玄関から、まるで追い出される様に退出する聖龍隊士たちは、所長や警備員達の囚人への扱いに対して、かなり不満そうな面持ちで本部へと帰還する。

 

 

 それから数日後、聖龍隊本部では。

「いやあ、ホント……新世代型二次元人の犯罪率が増加の一途で、ホントに参ったぜ」

「僕たちHEADも、今では新世代型二次元人に変化したとはいえ、まだまだ新世代型二次元人への風評被害は増える一方だね」

 日夜発生する新世代型二次元人の犯罪や事件の処理を務めているバーンズとジュニアが草臥れた様子で会話する。

「ホントだよ~~、この前なんか、レボルトと八神飛鳥って異常者(ヒール)も捕まえて、タナトス・アサイラムに投獄したっていうのにさぁ」

「まだまだ、二次元人……特に新世代型二次元人が異常者(ヒール)に変異する傾向は増加していますよね」

「新世代型二次元人にも、いい人はいっぱい居るんだけどな……」

 草臥れた様子で愚痴るセーラームーンに続き、新世代型二次元人の犯罪傾向を悲観するナースエンジェルと木之元桜。

「新世代型二次元人の犯罪増加傾向も問題だけど……昔から発生している、突然二次元人がスレンダーマンやサイレンヘッドなんかのUMAに変異して暴れ回る事件も問題だわ……」

「アニメタウンはもちろん、今じゃ三次元界や別世界でも二次元人がUMAに突然変異しちゃうから困っちゃうよね」

 コレクターユイも獅堂光も、新世代型二次元人の犯罪以外にも、一般の二次元人が危険なUMAなどに突然変異して猛威を振るう事態に頭を悩ませていた。

「未だに何故、二次元人がUMAなんかに突然変異してしまうのか詳しいメカニズムは解明されてないし……悩みの種ね」

 ちせも二次元人のUMA突然変異に対して苦悩している様子。

「でも、今一番世間で問題視されているのが……やっぱり、新世代型二次元人の凶悪犯罪ばかりよね」

「UMAなんかの異形には変異しない代わりに、サイコパスなんかの異常性犯罪者に変貌しやすいって言われているからね……」

 顔を見合わせて七海るちあとミュウイチゴも世情を零す。

 と、其処に。ミラーガールとウォーターフェアリーが、ジャッジ・ザ・デーモンと共にやって来た。

「あっ、アッコちゃん」「アプリちゃんも。お疲れ様」

「みんなこそ、こんな夜遅くまで事件の処理ご苦労様」

「私とアッコさんも手伝いますよ」

 セーラーマーキュリーとセーラーマーズに、ミラーガールとウォーターフェアリーは労いの言葉をかけつつ、犯罪や事件の処理を手伝い始める。

「ジャッジ・ザ・デーモン、例の一件は片付きそうか?」

「バーンズか……いや、タナトス・アサイラムを集団脱走した囚人達の大半は捕まえられたが……悪名高い異常者(ヒール)だけは、未だに居場所すら掴めない」

「それは問題だね。もしかすると、イーグルやブラックホワイトなんかは、国境を越えて日本に逃げた可能性もあるよ」

「ふむ、それは非常に大問題だ。また日本領内で二次元人の異常者(ヒール)が悪事なんか起こせば、アニメタウンに苦情が来るのは明白……」

 バーンズやジュニアの問い掛けに、ジャッジ・ザ・デーモンは考え込んでしまう。

 

 実は数日前、タナトス・アサイラムで囚人達の集団脱走が発生してしまうのだった。

 これによりイーグルにブラックホワイト、そしてサングリエントが脱獄したと情報が入ったのだが。

 しかし何より、どんな犯罪者よりも危険と思われる人物のMrフェイクまでも脱走したというのだ。

 ジャッジ・ザ・デーモンを中心とした聖龍隊の追跡チームは、タナトス・アサイラムから集団脱走した凶悪犯を捕縛する為、日夜奮闘しているのだが、無名の犯罪者は簡単に捕まる一方で悪名高い異常者(ヒール)達は居場所すら特定できない現状だった。

 

 そんな状況で毎夜、脱走した犯罪者達を追い続けるジャッジ・ザ・デーモンにミラーガールが声をかける。

「修司、貴方も疲れているでしょ? 少し休んだら?」

「ありがとう……だが、逃げ出した犯罪者が、また罪なき弱き人々を苦しめると思うとジッとしては居られない」

 ミラーガールの好意を素直に受け止めつつも、ジャッジ・ザ・デーモンは己の責務を果たさなければならないと強い信念と意志を示し返した。

 と、その時だった。

【非常事態発生 非常事態発生 逃亡中だったMrフェイクが、市長宅を襲撃して、ウッズ市長を人質に籠城 繰り返す Mrフェイクが市長宅を襲撃して……】

『!!』

 突然の警報と報せに驚愕する聖龍HEADとジャッジ・ザ・デーモン。

「と、父さんが!?」「Mrフェイクめ、今度は何を企んでいやがるんだ……!?」

 実父であるウッズの身を案じるジュニアに、Mrフェイクの企みを懸念するバーンズ。

 一方のジャッジ・ザ・デーモンは、毅然と襲撃された市長宅へと出動しようと足早に立ち去ろうとする。

「あ、修司!」

 そんなジャッジ・ザ・デーモンに、ミラーガールが声をかけて呼び止める。

「修司、忘れちゃダメよ。ジャッジ・ザ・デーモンも今や、聖龍隊の大切な仲間の一人。自分一人で背負い込まないで、私たちも協力する事を覚えてちょうだい」

 ミラーガールの激励を後押しする様に、他の聖龍HEADもジャッジ・ザ・デーモンに笑顔を向ける。

 が、ジャッジ・ザ・デーモンは冷淡な口調で聖龍HEADに言った。

「……残念だが、俺はお前達とは違う」『?』

 突然のジャッジ・ザ・デーモンの発言に戸惑う聖龍HEADだったが、そんなHEADにジャッジ・ザ・デーモンは更に告げた。

「お前達はあくまで人々の愛や希望の象徴、平和を実現する為の勇姿たる存在。だが俺は………………冷酷無慈悲な暴力で悪人を抑制する恐怖の象徴。お前達とは根本的に違う」

『………………』「修司……」

 ジャッジ・ザ・デーモンの発言に聖龍HEADやミラーガールが心痛な面持ちを浮かべる中、ジャッジ・ザ・デーモンは話を続けた。

「俺は………………お前達とは違う。希望の象徴たる聖龍HEADと、恐怖という制裁の象徴たる俺は、全く異なる立場でなければいけないんだ」

『………………』

「俺は残酷で、冷酷で非情で……邪悪で、どんな存在からだろうと恐れられる恐怖を具現化した異質なる存在。それが……ジャッジ・ザ・デーモンという絶対的な恐怖なんだ」

 未だに自分は恐怖を象徴した存在として、希望を象徴する聖龍HEADとの間に壁を作り、距離を置くジャッジ・ザ・デーモンの信念に、ミラーガール達は悲しい表情を浮かべた。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは話し終わると、足早にその場から去り、ウッズ市長の邸宅へと出動するのだった。

 

 希望と恐怖、それらは決して相いれる事はあってはならない。そう断言するジャッジ・ザ・デーモンこと小田原修司の強き意志と信念に、聖龍HEADは何も反論できなかった。

 

 一方、ウッズ市長を人質に籠城したMrフェイクは、ジャッジ・ザ・デーモンはいつ来るのかと興奮しっ放しで待ち望んでいた。

「ウフフ、ウフフ……! ジャッジ・ザ・デーモン、君はいつになったら来てくれるんだい? 今宵はウッズ市長宅の籠城なんか、まだまだ序の口……! タナトス・アサイラムも巻き込んだビッグパーティを開催しちゃうんだからね……!!」

 Mrフェイクは陽気な笑みを浮かべながら、ジャッジ・ザ・デーモンの到来を待ち続けるのであった。

 

 

 

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