聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド 作:セイントドラゴン・レジェンド
[アメリカの英雄達と……]
アメリカ、ニューヨーク。
スターク社の前に人だかりができていた。
そんな乱雑する人混みを中継しながらリポーターがカメラに向かって報道する。
「さて、皆さん。今日は既に朝早くからスターク社の前に人だかりができています。以前より国連報道局も報道してる様に、本日あの日本を中心に活動する聖龍隊と、アメリカを中心に活動する二大ヒーロー集団のジャスティス・リーグとアベンジャーズの会談が行われるという事で、その会談場所として設けられたアイアンマンことトニー・スタークの会社の周りには既に大勢の群衆で混雑しています! 以前よりアジアの英雄集団・聖龍隊とアメリカの英雄集団ジャスティス・リーグやアベンジャーズの会談は何度か開かれましたが、今回の会談の中心には、あの世界中で猛威を振るってた怪人ジャッジ・ザ・デーモンを聖龍隊が正式に隊士として引き入れた件についてアメリカのヒーロー達と会談する予定との事。ジャッジ・ザ・デーモンは言わずと知れた多くの凶悪犯罪者を殺傷してきた殺人鬼でもあり、以前聖龍隊からの報せではジャッジ・ザ・デーモンは今後は殺人は行わないと断言しているとの事です。しかし、以前より問題行動が目立ってたジャッジ・ザ・デーモンを聖龍隊に加盟させる事について本日スターク社で会談が行われるというのですが……」
と、リポーターがカメラに向かって報道していると、其処にスターク社から目の前という道路の中央に、聖龍隊総長のメタルバードが操縦するシルバー・ウィングが垂直着陸した。
「あっ、いま聖龍隊が着いたようです! 機体からメタルバード、ジュピターキッド、そしてミラーガールの聖龍隊のビッグ3が降りてきたとこ、ろ……!?」
すると銀色の光沢を輝かせる機体から出てきた総長メタルバードに参謀総長ジュピターキッド、そして副長のミラーガールの三人と共に出てきた存在に、報道陣も群衆も言葉を失った。
なんとメタルバードたち三人に囲まれる様に、拘束器具で拘束されたジャッジ・ザ・デーモンの姿が異様なまでに大勢の目に映ったからだ。
メタルバードたち三人に囲まれた状態で拘束器具で拘束されてるジャッジ・ザ・デーモンは、無言のまま。
そして大勢の注目を浴びながら、メタルバードたち三人はジャッジ・ザ・デーモンを拘束したままスターク社まで赴いた。
「やっとお互い、こうして会えたな」
「ああ、お互いに多忙で中々時間が合わないからね」
メタルバードと第一声を交えたのは、一足先にスターク社に赴いて聖龍隊を出迎えてくれたジャスティス・リーグのスーパーマンだった。
「久しぶりね、ミラーガール。現政奉還では大変だったでしょう」
「ありがとう、ワンダーウーマン」
ワンダーウーマンとミラーガールも言葉を交わす。
「よっ、ジュピターキッド! 今回はヤケにデカい大物を……いや鬼を連れてきたな!」
「まあ、今回の議題の中心ですからね」
雷神ソーの明るい振舞いに、ジュピターキッドは苦笑しながら返事する。
と、そんな久方ぶりの対面に話が弾みそうになろうとしてた矢先。
「ごっほん……それじゃみんな、もういいかな? 貴重な我が社の会議室を開いての会談なんだ。早々に、この鬼の処遇について議論しようじゃないか」
トニー・スタークが皆に問い掛けると、その傍らのキャプテンアメリカも語り出す。
「ああ、トニーの言うとおりだ。マスコミも騒いでいる以上、早々にジャッジ・ザ・デーモンの処遇について決めないと」
トニー・スタークやキャプテンアメリカの正論に、他の英雄達も納得した上で、ジャッジ・ザ・デーモンを拘束したまま全員スターク社へと入っていった。
当然ながら、記者を含む関係者以外の立ち入りは禁じられた。
こうしてジャッジ・ザ・デーモンの処遇について、アメリカの英雄達も交えた会談が始まった。
[鬼の正体と処遇]
聖龍隊のビッグ3によって拘束された状態で連れて来られたジャッジ・ザ・デーモン。
そんな連行されてきたジャッジ・ザ・デーモンを、アメリカのジャスティス・リーグのビッグ3スーパーマン/バットマン/ワンダーウーマン、そしてアベンジャーズのビッグ3キャプテンアメリカ/アイアンマン/雷神ソーの六人が合流。
こうして聖龍隊のビッグ3を含めた九人はジャッジ・ザ・デーモンの処遇について議論を交わすのだった。
会談の場所であるスターク社の最上階会議室。窓一つもなく、盗聴器などもないと確認された時点で会談が開始された。
「それじゃ、始めようか……連続殺人鬼であるジャッジ・ザ・デーモンの今後の処遇について」
キャプテンアメリカがそう言うと、メタルバードがすかさず論じる。
「ジャッジ・ザ・デーモンは今後、オレたち聖龍隊が全面的に監視下に置く。それ故にオレ達はジャッジ・ザ・デーモンを聖龍隊の一員に据え置いたんだ」
メタルバードの発言に続き、今度はスーパーマンが険しい顔色で話し出す。
「……それで本当にジャッジ・ザ・デーモンが今後、殺人を犯さないと保証できるのかい? 確かにジャッジ・ザ・デーモンの活躍は我々アメリカのヒーロー達も一目置いてるよ。現に、少し前まで全米が注目してたCCムーアの誘拐・拉致監禁及び殺人未遂事件を解決してくれたんだからね」
するとスーパーマンの話を聞いてジュピターキッドも口を開く。
「確かに。僕らの監視や管理だけでジャッジ・ザ・デーモンの行動を全て抑制できるかどうかは自信が無いのが正直なところだ。だけど僕らはジャッジ・ザ・デーモンの今後人は殺めないという決断を信じて、今後とも聖龍隊で可能な限りバックアップをしていくつもりだ」
このジュピターキッドの発言に、アイアンマンが愚痴をこぼす。
「おいおい、なんで其処までジャッジ・ザ・デーモンを信じられる訳? 仮にもコイツは連続殺人鬼なんだぞ。それなのに簡単に信用しちゃうだなんて……君たち聖龍隊は現政奉還の大戦以降なにか可笑しくなってないかい?」
アイアンマンに続き、ワンダーウーマンもミラーガールに問い掛ける。
「ねえ、ミラーガール。アイアンマンの言う通り、あなた達現政奉還の大戦以降なんだか少し変よ。あの問題視されてる新世代型二次元人を聖龍隊に加盟させるだけでなく、事もあろうに連続殺人鬼のジャッジ・ザ・デーモンを仲間に加えるなんて異常だわ」
「ワンダーウーマン……これは聖龍隊が新たな時代を突き進むための英断だと私は信じてるわ。新世代型二次元人もジャッジ・ザ・デーモンも、この先聖龍隊だけでなく多くの二次元人や三次元人たちと共存できるようにする為の決断なんです」
「決断ねえ……まあ、小田原修司のクローンである新世代型二次元人はともかく、ジャッジ・ザ・デーモンを仲間にするってのはいただけないね」
ミラーガールの返答を聞いてアイアンマンは半ば呆れてしまってた。
すると此処で聖龍隊がジャッジ・ザ・デーモンを連行してきた時から黙然と口を閉ざしていたバットマンが口を開いた。
「ジャッジ・ザ・デーモン……彼は私を始めとする多くのアメリカのヒーロー達の教示や戦術を独学で会得し、今日まで戦い抜いてきたんだろ?」
「ああ、そうだ」
メタルバードが返事すると、バットマンは睨みを利かせて言った。
「確かに多くの者たちが殺人までは認可できないとはいえ……その闇夜からの戦い方には私も評価するよ」
「ハッ、出ましたよ! 流石はアメリカヒーロー屈指のアウトローなバットマンらしい発言だ!」
普段からバットマンの行いをアウトロー(無法者)同然に見ているアイアンマンは、このバットマンのジャッジ・ザ・デーモンを評価する発言に皮肉を込めて言い放つ。
しかしそんな皮肉にも動じることなく、バットマンはジャッジ・ザ・デーモンの事を説き出す。
「ジャッジ・ザ・デーモン、制裁の鬼……私同様に、いや私以上に過激な私刑や制裁を犯罪者に下す鬼が果たして今後、自分の理性を保ちながら殺人は犯さないのか……そこが今回の議題の焦点だ」
バットマンの意見に、その場の誰もが黙り込む。
「バットマン、そしてアメリカのヒーロー達……ジャッジ・ザ・デーモンが理性を保持できなくなる不安は大丈夫です。なぜなら……ジャッジ・ザ・デーモンは昔から、どんな悪質で鬼畜な犯罪を前にしても感情的にはならない。いえ、なれないのが事実なの」
「それってつまり……精神的にジャッジ・ザ・デーモンが常時冷静でいられてるという事か!?」
ミラーガールの説明にアイアンマンたちが驚く中、ミラーガールは話し続けた。
「ええ、そうよ。これは悲しい事だけど、ジャッジ・ザ・デーモンは本来は感情を感じにくいという性質を持っているの。だからどんなに挑発されようと、どんな異常な犯罪を目の当たりにしても、感情が昂る事なく常に冷静でいられるの」
「感情を感じないから、常に冷静って……なんだか異常だわ」
「感情を感じない、まるで彼の様だ……そう、君たちを結成させた初代聖龍隊総長の様に」
ミラーガールの話を聞いて、ワンダーウーマンやキャプテンアメリカはジャッジ・ザ・デーモンの異常性を感じずにはいられなかった。
すると話を聞いて雷神ソーが思わず発する。
「感情を感じないって……まるで都市伝説の一説にある様に、ジャッジ・ザ・デーモンが小田原修司って感じだな」
この雷神ソーの発言に、その場の誰もが愕然とした。
「ソー、それは単なる民衆が作り出した都市伝説でタダの噂だよ」
「そうだとも。今じゃ更に尾ひれがついて、既に諜報機関などの各国の政府までもがジャッジ・ザ・デーモンの正体を把握しながらも黙認してるって話だ」
雷神ソーの発言にキャプテンアメリカもスーパーマンも口を濁すが、これを聞いてバットマンが口を開いた。
「果たして……単なる噂や都市伝説で終らせて良いのか」
『!?』
バットマンの発言にジャスティス・リーグやアベンジャーズの面々は戸惑ってしまう。
「ば、バットマン。それは、どういう……」
思わずバットマンに訊ねるスーパーマンに、バットマンは語り始めた。
「ジャッジ・ザ・デーモンが世間に出没する様になったのは、小田原修司がアメリカの外人部隊で色々と学習した後、アニメタウンに帰国してからの時期と合致する。それからも小田原修司が鬱に発症してから、しばらくの間はジャッジ・ザ・デーモンが出現しなくなった時期とも重なっている。そして現政奉還の戦乱の間にもジャッジ・ザ・デーモンは出現していない事を取り上げると……」
「ま、まさかバットマン。君は例の都市伝説が正しい事実だと思ってるのかい? ジャッジ・ザ・デーモンの正体が、小田原修司って……」
バットマンの唱える説にキャプテンアメリカも動揺が隠し切れずに問い掛けていると。
今までの皆の話を黙って聴いてた拘束されてるジャッジ・ザ・デーモンが喋り出した。
「流石はダークナイトだ。俺の事は既に調査済みという訳だな」
ジャスティス・リーグにアベンジャーズの六人が突然喋り出したジャッジ・ザ・デーモンに驚くと、ジャッジ・ザ・デーモンを拘束してる器具が瞬く間に開錠され、ジャッジ・ザ・デーモンが自由に。
そして驚いているアメリカのヒーロー達を前に、ジャッジ・ザ・デーモンも空席である席に着席すると、顔全体を覆うマスクをパワードスーツから外して素顔を晒した。
「今から、俺も会談に少しばかり参加させてもらうぞ」
『お、小田原修司!!』
ジャッジ・ザ・デーモンの素顔を見て、バットマン以外のアメコミヒーロー達は驚愕してしまう。
すると前もってジャッジ・ザ・デーモンの素顔を既知してるメタルバードが平然と皆に語った。
「見ての通りだ。オレたち聖龍隊は兼ねてよりジャッジ・ザ・デーモンの素顔を、正体を知っていた。そして今後は小田原修司のジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を陰ながら支援していくつもりだ」
メタルバードの説明にアメコミヒーロー達は唖然としていたが、そんな静寂を掻っ切ってキャプテンアメリカとスーパーマンが狼狽える。
「お、小田原修司がジャッジ・ザ・デーモン!? まさか、都市伝説は本当だったというのか」
「まさか……! 聖龍隊、君らは今までジャッジ・ザ・デーモンが小田原修司だと知っていながら彼の暴挙を止めなかったのか!」
スーパーマンからの質問に、ミラーガールが神妙な面持ちで返答した。
「私たち聖龍隊の正義では、ジャッジ・ザ・デーモンの制裁を止める権限はなかったのよ。所詮、正義は価値観。異なる価値観で決まってしまう正義を掲げる聖龍隊が、本当の意味で平等に人を裁くジャッジ・ザ・デーモンの活動を制止する権限なんて持ち合わせていないわ」
「だ、だからって……」
ミラーガールの説明にワンダーウーマンが狼狽えるのだが、ここで素顔を晒した小田原修司が唱える。
「俺は自分の行為を正義とは名乗らない。いや、正義と自称するような野暮な真似はしない。俺は本当に弱者を救済し、その為に平等に裁きを下す制裁の象徴たる異形の存在へと成り代わってただけだ……バットマン、あんたの闇の正義よりも平等かつ真正な制裁でな」
「………………」
小田原修司の力説に、バットマンは黙々と耳を傾けるのみ。
ジャッジ・ザ・デーモン本人が自らマスクを外して素顔である小田原修司だと晒したことで、会談は更に加熱した。
「要するに聖龍隊は今までジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を黙認、すなわち殺人行為を黙って見逃してたって事か!? いやはや、怒りを通り越して呆れるね」
ジャッジ・ザ・デーモンの正体を知ってた聖龍隊の行為に対して皮肉たっぷりに語るアイアンマン。
そんなアメコミヒーロー達にミラーガールが申し立てる。
「確かに私たち聖龍隊はジャッジ・ザ・デーモンの制裁を止めなかったのは事実です。でも、それだけでなく私たち聖龍隊はジャッジ・ザ・デーモン……いいえ、小田原修司に今まで様々なものを背負わせて重荷を課せてきました。私たち聖龍隊は今後は、そんな重荷をジャッジ・ザ・デーモン一人に背負わせないよう全面的に助け合おうとしたいだけなんです!」
「で、でもねミラーガール……小田原修司はあなた達をも虐殺した現政奉還の混乱での戦犯でもあるのよ。なんで其処までジャッジ・ザ・デーモンを支援したい訳?」
ワンダーウーマンが訊ねると、ジュピターキッドが弁論する。
「義兄さん、いや小田原修司が現政奉還で暴走してしまったのは世界が勝って無造作に小田原修司のクローンである新世代型二次元人を生み出したのが切っ掛けなんです。でも現政奉還の乱世を乗り切った小田原修司は、今では新世代型二次元人と共に生きる為に努力しようとしてるんです。その活動の一環がジャッジ・ザ・デーモンなんですよ」
「なるほど。だから現政奉還前のジャッジ・ザ・デーモンとしての殺人行為を許しちゃう訳ってことですか」
ジュピターキッドの弁論を聞いて、アイアンマンがまたも皮肉交じりに零す。
すると此処で再び小田原修司が語り出した。
「確かに俺はつい近年までジャッジ・ザ・デーモンとして多くの罪人を殺害してた。だがこれからは違う。今後はバットマンを見習い、精々骨をへし折る程度までに痛め付ける程度に終わらせる」
「なにが君を、そんな思考に至らしめたんだい? なぜ急に殺人はやめると決意した」
キャプテンアメリカからの質問に、小田原修司は答えた。
「もう……子供たちに恥ずべき姿は見せられない。子供達の為に考えを改める必要があると悟ったからだ」
「子供、というと……君のクローンである新世代型二次元人の事か」
バットマンが問うと、小田原修司は静かに頷いて応える。
「ふ~ん、その子供と呼ぶべき新世代型二次元人というクローンを生み出された事で、現政奉還では黒武士やら純粋なる破滅やらに変わって虐殺の限りを尽くして、今では改心したから新世代型という子供たちの為にジャッジ・ザ・デーモンとしても殺しはしないって訳か。なんだか都合が良すぎるね、ホント」
小田原修司の真意を知ったアイアンマンは不貞腐れた様子で聞こえる様に愚痴を零した。
すると修司の真意を知って、スーパーマンが挙手した。
「まあ、みんな待ってくれ。私も彼の、Mr修司の悩みは理解できる。私も以前、アメリカ政府に勝手に自分のクローンを作り出された経緯がある。だから小田原修司の苦悩も少しは理解できる」
「スーパーボーイの事か」
スーパーマンの話に小田原修司が付け足すと、ワンダーウーマンも挙手して意見を述べる。
「ミラーガール達がジャッジ・ザ・デーモン、小田原修司を信じて活動を支援していくというのは理解したわ。小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンとして今後は殺害しないと決断したのも理解した。けれど、それでもまだ不安だわ……前々より問題視されてる小田原修司やジャッジ・ザ・デーモンを簡単に信用できない」
と、このワンダーウーマンの意見にアイアンマンが口を挟んだ。
「はははっ。おいおい、バットマンみたいなダークヒーローをビッグ3に据えているお宅らが言えた義理かい? 正直、僕らから見てもバットマンもジャッジ・ザ・デーモンも似た者同士だよ」
「トニー、今はそういう事を言ってるのではなく……」
キャプテンアメリカがアイアンマンを制止しようとするが。
「おいおい、まさかスティーブ。君までもジャッジ・ザ・デーモンを容認しようと思ってる訳じゃないよな? いくら過去に勝手に自分のクローンを生み出されたからって、それで世界を破滅させようとした男を……まして、殺人まで平然と行えたジャッジ・ザ・デーモンの活動を認可できる訳ないだろ」
誰もがアイアンマンの正論に返す言葉が無い状況で、更にアイアンマンは不満を述べる。
「正直、制裁だの私刑だので相手を徹底的に暴力で痛め付けるダークヒーローのやり方は容認できないんだよね。まあ、バットマンを容認してるジャスティス・リーグはジャッジ・ザ・デーモンの様な冷酷な殺人鬼を容認しちゃうかもしれないけど」
「トニー! それは言い過ぎだ」
アイアンマンの不満にキャプテンアメリカが制止する。
するとジャスティス・リーグとアベンジャーズのビッグ3の意見が衝突しそうな空気の中、小田原修司が重い口を開いた。
「争いはやめてほしい……! 俺は不毛な争いを無くす為にもジャッジ・ザ・デーモンとしての活躍に専念してきた。もし俺が原因でジャスティス・リーグとアベンジャーズが争うのであれば……俺はもう、ジャッジ・ザ・デーモンを辞める」
突然の小田原修司の訴えに、ジャスティス・リーグもアベンジャーズも黙り込んでしまう。
そんな静寂の中、ミラーガールが二つのヒーロー組織のビッグ3を前に語り始めた。
「皆さん……いえ、ビッグ3であるあなた方の言いたい事や思う所は理解できます。しかし! 小田原修司の、ジャッジ・ザ・デーモンとしての決意と今までの努力も考慮してください」
二つのビッグ3はミラーガールの熱弁に言葉を失っていると、ミラーガールは続けて訴え続ける。
「人は誰でも間違いを犯します。大事なのは、その間違いや過ちから大切な事を学び、そしてその過ちを二度と犯さないという信条ではないですか」
『………………』
「例えばアイアンマン、いえトニー・スタークさん。貴方がアイアンマンとして活動する前まで、貴方は武器や兵器を製造して多くのテロリストの破壊行為を手助けしまった行いに対する贖罪の意味も込められて、アイアンマンとして活動してるんじゃないですか」
「そ、それは……」
ミラーガールから真理を衝かれて軽く動揺してしまうアイアンマン。
「ヒーローだって絶対の存在じゃありません。大切なのは過去の行いから如何に学び、そして未来へと繋げる為の意思なんじゃないですか? 私は過去の行いで苦しみながらも、未来のために懸命に戦い続けるジャッジ・ザ・デーモンをこれからも応援したいんです!」
ミラーガールの力説を耳にし、アメコミヒーロー達は考え込んでしまう。
すると黙り込むアメコミヒーロー達の中からスーパーマンが発言した。
「……確かに。ミラーガールの言う通り、ヒーローも人間も絶対ではない。この先の未来でどう生き、そして悔い改めるかが大事だ」
スーパーマンに続き、キャプテンアメリカも述べた。
「……そうだね。今後は僕たちアメコミヒーローもジャッジ・ザ・デーモンの活動を監視しつつ、見守っていくという方針でいいかな?」
キャプテンアメリカが他のアメコミヒーロー達に問い掛けると、皆口々に答えていった。
「そうだな。小田原修司が如何にジャッジ・ザ・デーモンとして、これから犯罪者達を抑制していくのか見張ってるのが妥当かもしれないな」
雷神ソーに続き、ワンダーウーマンも答える。
「そうね。今、判断を急ぐこともないわ。少なくとも、ジャッジ・ザ・デーモンの正体が知れたのと、ジャッジ・ザ・デーモンが今後は殺人だけは行わないと決意してくれただけでも良かったかも」
ワンダーウーマンに続き、バットマンも述べる。
「今後は此処に居る全員で……いや、世界のヒーロー達と共にジャッジ・ザ・デーモンを監視するのが妥当という決議でいいな」
そして最後にジャッジ・ザ・デーモンを含むダークヒーローに不満を感じるアイアンマンも渋々了承した。
「ふぅ、やれやれ。まあ、確かに人とは過ちを犯して繰り返してしまう生き物だからな。今後ジャッジ・ザ・デーモンの動向をみんなで監視するという方向で結構だよ」
アイアンマンの返答に、ミラーガールたち聖龍隊のビッグ3は思わず微笑んだ。
そして小田原修司は再びマスクを装着し、素顔を隠してジャッジ・ザ・デーモンとして会談を見届けた。
こうして聖龍隊のビッグ3は、アメコミヒーローのビッグ3達にジャッジ・ザ・デーモンの聖龍隊加盟と活動を容認してもらえた。
[国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフ]
聖龍隊のビッグ3に連行されて来訪したジャッジ・ザ・デーモンの処遇が無事に決まり、アメリカの二組のビッグ3は聖龍隊の四人を招いてパーティーを開いた。
パーティーにはアメコミのヒーロー達が多く参加していた。
「いや、それにしてもジャッジ・ザ・デーモンの聖龍隊加盟をよく承認してくれたな。感謝してるぜホント」
「いや、なに。ミラーガールの嘆願とジャッジ・ザ・デーモンの今後を考えての事さ」
「但し、少しでも気を抜いて殺害しない信条を破れば、その時は容赦しない事を胸に刻んでおいてくれよ」
メタルバードの感謝にスーパーマンとキャプテンアメリカが述べ返す。
「ミラーガール、あなたも大変だったわね。小田原修司の活動を見守り、小田原修司に殺されるなんて……」
「いいんですよ、ワンダーウーマン。今となっては修司の成長に繋がったかなって思えますので」
現政奉還の前後から小田原修司との付き合いに苦労が絶えなかったのだと述べるワンダーウーマンに、ミラーガールは笑顔で答える。
「大自然の申し子ジュピターキッドよ! ジャパンのヒロインでは最強クラスだと言われるセーラー戦士達を凌駕したんだってな! 今度、手合わせしてくれないか?」
「ソー、それは言わないでくださいよ……黒歴史なんだから」
小田原修司が過去に公表した「聖龍伝説」を読んで、ジュピターキッドがセーラー戦士達を凌駕した経緯を知った雷神ソーが手合わせを求めるが、当のジュピターキッドは黒歴史だと苦笑いする。
一方でジャッジ・ザ・デーモンはバットマンやアイアンマンたちアメコミヒーロー達に囲まれて談話していた。
「君の戦術、完全に私のを参考にしているようだな」
「ああ、バットマン。あんたの恐怖の体現者に近づけるよう、努力してきた」
「そのパワードスーツ、中々の技術力で作られてるね。異世界の技術も用いられてるのか?」
「アイアンマン、このデーモンスーツはそうだな。今はアニメタウン市長に就任したウッズが作ってくれた品だ。現在でも、新世代型二次元人を含んだ聖龍隊の仲間達が色々と試行錯誤を繰り返しつつ新しいスーツの開発を考案してくれているよ」
バットマンやアイアンマンの質問にも可能な限り答えていくジャッジ・ザ・デーモン。
「やあ、ジャッジ・ザ・デーモン! 君が手首に装着してる機械から麻酔針を発射するの時のポーズって、ボクがウェブ・シューターを発射する時の構えと同じだけど、ひょっとしてボクを意識したのかな?」
「ああ、スパイダーマン。親愛なる隣人のあんたを敬って、手首のポージングを真似てる」
「俺さまのかぎ爪での殺傷能力も真似たのか?」
「ウルヴァリン、ああそうだ。だが今後はその鋭利な爪は使わなくなる……我が子たちに申し訳ないからな」
更にジャッジ・ザ・デーモンはスパイダーマンやウルヴァリンとも会話する。
「いったい君はどんなヒーロー達に影響されて、ジャッジ・ザ・デーモンを想像したんだい?」
「うむ。バットマンの闇での戦術と恐怖、スパイダーマンの責任感、パニッシャーの殺戮性、ウルヴァリンの鋭利な爪での攻撃性、アイアンマンの頑丈なスーツ……これらを総合して考案したんだよドクター」
ドクターストレンジからの質問にも素直に答えるジャッジ・ザ・デーモン。
すると多くのアメコミヒーロー達と会話してるジャッジ・ザ・デーモンの許に、一人の少女が歩み寄る。
「……ジャッジ・ザ・デーモン……」「! ……レイヴンか」
ジャッジ・ザ・デーモンに声をかけたのは、DCコミックのレイヴンだった。
「なんだ?」
ジャッジ・ザ・デーモンはレイヴンに問い掛けると、彼女は落ち着いた様子でジャッジ・ザ・デーモンを導く。
「ちょっと良いかしら……」「? ちょっと済まない」
レイヴンの様子に何かしら思うところがあるジャッジ・ザ・デーモンは、他のヒーロー達に一言伝えるとレイヴンに付いていった。
ジャッジ・ザ・デーモンがレイヴンに付いていくと、付いた先にはパワーガールにシャドウキャット達が待ち構えていた。
「お前達か……」
ジャッジ・ザ・デーモンはレイヴンも含めた三人と顔馴染みだった。
実はレイヴン達はジャッジ・ザ・デーモンの正体が明らかになる前から、ジャッジ・ザ・デーモンに恋焦がれてた時期があったのだ。
「ジャッジ・ザ・デーモン、あなた……」「………………」
見つめるレイヴンにジャッジ・ザ・デーモンは寡黙だった。
「まさか、あなたが小田原修司だったなんて……」
「その、なんて言うか……」
パワーガールもシャドウキャットもどう言いたい事を伝えようか戸惑っていると、ジャッジ・ザ・デーモンは平然と言い返した。
「驚いただろ。俺が……愛というものを感じないバケモノだったなんてな」
「そ、そんな!」
「私たち、そんなつもりじゃ……!」
「ただ、その……ちょっと驚いちゃっただけなの! ジャッジ・ザ・デーモンの正体だけでなく、小田原修司本人が発達障害者である事に……」
レイヴンやパワーガール、シャドウキャットの返答を聞いて、ジャッジ・ザ・デーモンは平然と返事する。
「……正直、最初はみんなからの愛情にどう応えていいか分からなかった。産まれ付き、人の愛情や優しさ、そういった感情を感じない異端児として生まれた俺にとって、お前達からの愛は嬉しくも思ったが同時に……不思議に思ったのが本音だ」
「「「………………」」」
ジャッジ・ザ・デーモンからの返答に言葉を失い悲しそうな表情を浮かべる三人。
「……それでも、あなたはミラーガールを……加賀美あつこという女性の愛に応えられたじゃない」
レイヴンが告げると、ジャッジ・ザ・デーモンは平然とした様子で言いにくそうに返事した。
「まあ、確かに……アッコのお節介な優しさが奇遇にも俺に微かな愛情や優しさを感じさせてくれた。アッコからの愛が嬉しくて、俺は自然とアッコに惹かれたのかもしれない」
「どうか幸せになってね」「これから、あなたは一人じゃないから」
「……ありがとう、みんな」
パワーガールやシャドウキャットからの励ましに、ジャッジ・ザ・デーモンは素直に礼を述べる。
と、聖龍隊のメタルバードにジュピターキッド、ミラーガールにジャッジ・ザ・デーモンを招いたアメコミヒーロー達の宴会の場に、突如として四人の乱入者が扉を蹴破って進入してきた。
「き、君たちは!!」
乱入してきた四人を見て、キャプテンアメリカは驚愕した。
そのまま四人は突然の乱入に困惑して立ち尽くすアメコミヒーロー達を掻き分けて、群衆の中にいるジャッジ・ザ・デーモンの許へと歩み寄る。
「あんた達は……」
「お久しぶりですね、ジャッジ・ザ・デーモン。この度は聖龍隊加盟に続いて、ジャスティス・リーグやアベンジャーズからの認可おめでとうございます」
そうジャッジ・ザ・デーモンに述べるのは、国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフであった。
「ペトロフ、お前なんのつもりだ?」
ジャッジ・ザ・デーモンがペトロフに問い掛けると、ペトロフは真顔でジャッジ・ザ・デーモンに言った。
「いえいえ、どうもこうもないですよ。今回は素直にあなた、ジャッジ・ザ・デーモンの聖龍隊加盟と二大アメリカヒーローチームからの認可を祝いたくて、同胞の部隊と共に馳せ参じた訳です」
そう話すペトロフの背後には、パニッシャーを筆頭にデッドプールそしてレッド・フードの三人が並んでた。レッド・フードと親密な間柄のバットマンは黙って彼を見詰めていた。
「まさかと思うが……まだ俺を勧誘しようと思ってるのか?」
「そうですね……可能であれば、そうしたいですよ。聖龍隊の様に生半可で生易しい偽りの正義の下で働くよりも、絶対の正義を掲げる国連軍に在籍した方があなた自身の為になると思うんですけどね」
「……残念だが、俺は色々と聖龍隊にカリがある。だがそれ以上に……国連軍の時には罪もない市民にまで被る攻撃を俺は認可できない。ゆえにペトロフ、俺はお前が指揮するアンチ・ジャスティスに降るつもりはない」
「そうですか……それは非常に残念です。所詮はあなたも聖龍隊と同じく、偽善の正義を掲げるおつもりなんですね」
「いや、俺は自分の行いを正義とは捉えない。自分を正義の味方でもなければ、英雄とも名乗らない。俺はただ、自分が信じる信念の下で戦い続けるだけだ。だから俺は、如何なる権力にも屈しない……!」
「……なるほど、自分の信念は曲げないというのですね。それはそれで立派ですが……ですが、そんなあなたも既に危機的状況に置かれていると気付いているのですか?」
「と、いうと」
ジャッジ・ザ・デーモンがペトロフに訊き返すと、ペトロフは真顔で言い切った。
「……既に我々、国連軍だけでなく各国の諜報機関や国家政府はジャッジ・ザ・デーモンの正体を把握しているのですよ」
『!!』「………………」
ペトロフの発言に、ジャッジ・ザ・デーモン以外の一同は愕然とする。
そんな場が唖然とする中、ペトロフは話し続けた。
「ジャッジ・ザ・デーモン、既に多くの国家機関があなたの正体を把握しているのです。それなのに、なぜ連続殺人鬼でもあったあなたを放置しているか分かりますか」
「大抵は分かる。俺を……この俺を国家の防衛力、いや軍事力に組み込むために世界はジャッジ・ザ・デーモンという存在を放置して合法的に俺を取り入れようとしてるんだろ?」
「分かっているのに、なぜあなたはそんなに冷静なのですか? どの国も、自分達の国益の為にジャッジ・ザ・デーモンを放置しており、チャンスが来たらジャッジ・ザ・デーモンを軍事力に取り込もうとしているんですよ。我々国連軍は、そんな事態を防ぐ為にもあなたをアンチ・ジャスティスに加盟させたいのです」
ユーリ・ペトロフの説明を聞いても尚、ジャッジ・ザ・デーモンは冷静を保って返答する。
「覚悟はできてる……俺という、かつての最強戦力だった人間兵器を自分の国の所有物にしたい連中が、敢えてジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を放置して証拠集めに奔走しているのはな」
「それなら、なぜ……」
「俺は、聖龍隊を信じたい。俺という欠けた心を持つバケモノを受け入れ、そして許してくれた聖龍隊の力に最後までなりたいんだ」
ジャッジ・ザ・デーモンの返答を聞いて、ペトロフはやや呆れた様子で口にした。
「やれやれ、信念は曲げないというか、頑固というか……あなたという人は……」
するとペトロフは振り返ってジャッジ・ザ・デーモンに告げた。
「後悔しても知りませんよ………………小田原修司」
そう告げると、ペトロフは自分が指揮しているアンチ・ジャスティスを引き連れて会場から出ようとした。
が、その前にジャッジ・ザ・デーモンがペトロフに言った。
「虎徹は! ……ワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達はお前を信じていたんだぞ」
ジャッジ・ザ・デーモンの言葉にペトロフの足が止まる。
ユーリ・ペトロフは国連軍に当初、ルナティックとして連行されたのだが鏑木・T・虎徹たちNEXTヒーロー達は最後までペトロフの無実を信じてた。だが、国連軍に連行されたペトロフは自分のルナティックとしての私刑行為を認めてくれた国連軍元帥赤犬に忠誠を誓い、逮捕されて数日後、公私ともに国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフとして着任。虎徹達の信頼を裏切った事でNEXTヒーロー達と仲たがいしたのだった。
そして当のユーリ・ペトロフはジャッジ・ザ・デーモンの訴えを聞き入れつつも、何も返事しないまま、そのままアンチ・ジャスティスと共に会場を去っていった。
「ユーリ・ペトロフ、今後は彼の……いや国連軍の動向にも目を向けないと」
「ああ、確かにそうだ。過激な正義で時には民間人も巻き込みかねない攻撃をする国連軍の正義も見張っておかないと……」
「だが、それは容易な事ではない。知っての通り、国連軍の権威は年々増す一方だ。国連軍が暴走しない事を祈ろう」
スーパーマンにキャプテンアメリカ、そしてバットマンたちも国連軍の動向に注視するしかできなかった。
「ジャッジ・ザ・デーモン、これからが本当の正念場だ」
「色々と気を付けないとね……」
メタルバードとミラーガールからの問い掛けに、ジャッジ・ザ・デーモンは静かに思慮に耽るのだった。