聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド 作:セイントドラゴン・レジェンド
その他にも【聲の形】のキャラ登場や、異常者(ヒール)発生の現象解説もあります。
[衝突する学者]
そこは新世代型二次元人の人権と利権を保持する、新世代型委員会が管理する研究機関。
その研究機関で今、ある学者と委員会を取り仕切る女性が激しく言い争っていた。
「博士! 何を考えてるんだ、あなたは!」
「し、しかし、皐月様。あなた方の遺伝子を用いれば、これから先の人類には多大なる恩恵が……」
「だからと言って! 私たち新世代型二次元人の遺伝子を、普通の人間に投与すれば如何なる問題が……障害が残るか分からないんだぞ!」
「で、ですが……新世代型二次元人の遺伝子を用いた実験では、あなた方の遺伝子が身体障害者の障害を完治させられる可能性が非常に高いのです! 何とぞ、研究の続行を……」
「フザケルな! タダでさえ危険を孕んでいるというのに、私たち新世代型二次元人の遺伝子で勝手に研究を行ってただけでも許し難い! 悪いが博士、あなたには此処から出てってもらう」
「そ、そんな! 皐月様、あなたは……っ!」
「……そなたの身体障害に関する研究と、その熱意は評価していたが……だが、私を始めとする多くの新世代型二次元人を勝手に研究対象にしてた事は許容できないのだ。悪いな……」
「ッ……! 所詮、所詮……あなたも健常者と同じだ。私の様な身体障害者の……障害者の苦しみが解らないんだッ!!」
これが、新たな悲劇の始まりだと、研究者を断裁した鬼龍院皐月は知る由もなかった。
それから数か月後。
研究機関を追放された学者は、自宅で限られた環境の中で研究を続けてた。
「ハァ、ハァ……た、足りない。決定的に足りない……! アレを摂取しない限り、障害は……私の膝は完治できない……!」
学者は目を血走らせて、目の下には大きなクマをこしらえて息を荒くしていた。
「足りない、足りない……! 新世代型二次元人の遺伝子が、足りない……!!」
興奮していく内に、その研究者からは人間の理性が欠落していき、まるでケダモノの様な感情が芽生え始めていた。
[高速道路のカーチェイス]
時は201X年。
かつて世界によって量産された小田原修司を始祖とする新世代型二次元人は、最初は激動の時代に翻弄されながらも、次第にアニメタウンを始めとする世界各地に浸透していった。
だが、その陰では今まで以上に残忍かつ冷酷な新世代型二次元人の犯罪が増加の一途を辿り、世界はもちろんアニメタウンすらも混迷に喘いでいた。
そんな状況を打破する為、アニメタウンを統治および治安を維持する軍事警察組織である聖龍隊は、世界的に指名手配だったジャッジ・ザ・デーモンを仲間に引き入れると同時に、数多の革新的な制度を取り入れた。
しかし、そんな聖龍隊の努力を嘲笑うかのように、今日もまた新世代型二次元人の犯罪が横行していた。
「そこの暴走車、停まりなさい! 繰り返す、停まりなさい!」
日本の高速道路で規定の速度を遥かに超えて暴走する、現金輸送車にパトカーが警告する。
そしてパトカーは、なんとか速度を速めて、暴走する現金輸送車の横に並んで、再度警告をした。
「停まりなさい! 逃げても無駄だ、停まりなさ……」
と、パトカーの助手席から、現金輸送車の運転手に停止するよう呼びかけた、その瞬間。
なんと現金輸送車の窓からショットガンの銃口を突き出して、パトカーの助手席へと散弾を撃ち込んできた。
「う、うわっ!」
ショットガンの散弾を浴びて血塗れで死亡する助手席の同伴者を前に激しく動揺したパトカーの運転手は、そのまま動揺した末にハンドルを切りそこない、高速道路の壁に激突して横転し、パトカーは炎上してしまう。
「へっ、さっきから喧しかったが、これで少しは静かになるかね」
そうショットガンをパトカーに撃ち込んだ【聲の形】の元教師である竹内。彼と共に現金輸送車を乗っ取って、車内の大量の現金を牛耳っているのは、同じ作品の川井みき、島田一旗、植野直花、広瀬啓祐の計5人。彼らは度重なる罪状から、三次元政府によって人権を剥奪されたのを逆上し、腹いせに日本政府が厳重に管理・護送してた2020年の東京オリンピックの運営資金を強奪して逃亡してる真っ最中だった。
と、そこに奪われた現金輸送車を追跡する無数のパトカーが、後ろを追尾。
「クソっ、しつこいぜ! おい、アレを出せ」
車内に籠城してる島田一旗が、犯行グループの川井みきから所持してるダイナマイトを手渡されると、島田一旗は現金輸送車の後方扉を少し開けて手にしてるダイナマイトに着火する。
「マトめて吹き飛べ!」
着火したダイナマイトを後方から追尾してくるパトカーの群れに放り投げる島田一旗。すると着火してるダイナマイトはパトカーの車体下に転がり込んで、そのまま爆発。爆発に巻き込まれたパトカーは炎上し、先頭のパトカーに続いて周辺のパトカーも巻き込まれて横転し炎上した。
全ての追尾してくるパトカーを、ダイナマイトで一掃した島田一旗たち犯行グループが車内に顔を引っ込めようとした、その時だった。
なんと炎上する多数のパトカーの真横を高速で通過して、新たに現金輸送車を追尾する車体が。
「な、なに? あの車……」
護送車並みに強固な車体ではあるが、それにしては速度の速い高性能車両に植野直花たちが驚いていると、広瀬啓祐が声を荒げた。
「ゲッ、あ、あれは……聖龍隊、マン・ヒールズの装甲車だ!」
『!!』
ここで犯行グループは、新たに追尾してくる装甲車が聖龍隊に所属するマン・ヒールズが搭乗・利用する装甲車である事に気付き、蒼然とする。
そして一方のマン・ヒールズの装甲車の中では。
「まったく……寄りにもよって、日本政府が厳重に貯蓄している東京オリンピックの運営資金を強奪するなんて……新世代型二次元人にも、本当にキチガイな奴らが出没するようになったな」
「ガイト、そう言わないの。新世代型二次元人全員が、異常な思考の持ち主ってのは偏見よ」
そう装甲車の車内で話し合うのは、マン・ヒールズの一員であるガイトに、リーダーのミスティーハニー。
と、車内で話してたその時。なんと前方の現金輸送車から、またしても着火されたダイナマイトが投げ込まれ、マン・ヒールズが搭乗する装甲車は攻撃を受ける。
「おおっと……しっかし、まあ、ダイナマイトなんて物騒なものまで用意してるとはね」
「でも大丈夫よ! この装甲車はロケットランチャーでも破壊できない装甲だし」
「油断は禁物よ! 全員、現金輸送車の緊急停止に意識して!」
装甲車を運転するジェラール・フェルナンデスとハルカ・ヘップバーンの雑談にミスティーハニーが注意をすると、マン・ヒールズ総員暴走する現金輸送車の制圧に乗り出す。
そしてマン・ヒールズの装甲車は、現金輸送車からのダイナマイト攻撃を難なく堪え、現金輸送車の真横に移動して隣接する。
隣接すれば、あとは現金輸送車を強引に停止させるために、高速道路の壁に現金輸送車を押し付け始める装甲車。
すると此処で装甲車に常備されている無線から通信が入る。
「マン・ヒールズの皆さん、大丈夫? 現金輸送車は停められますか!?」
「キャシーね、今は現金輸送車を高速道路の壁に押し付けて、強引に停車させようとしているところよ」
「み、ミスティーハニーさん、皆さん……! 今、皆さんが走ってる高速道路の先は、急なカーブです! 急がないと、現金輸送車共々、壁に激突してしまいます!」
「了解! 早急に片を付けるわ!」
聖龍隊本部で通信士を担ってる新世代型二次元人のキャサリン・ルースに、ミスティーハニーが応答すると、装甲車は更に現金輸送車を高速道路の壁に押し付ける。
だが現金輸送車を操縦してる竹内は、聖龍隊に反抗して更にアクセルを踏んで加速する。それによって現金輸送車はマン・ヒールズの装甲車を追い抜こうとする。
「こっちも加速だ!」
一方のマン・ヒールズも現金輸送車を取り逃さないよう、しっかり加速して現金輸送車と隣接を維持する。
だが、それによって事もあろうに二つの車体は高速で道路の壁際を、火花を散らしながら走行した為に、急カーブの壁に激突。そのまま壁を突き破って、二つの車体は高速道路から飛び出してしまう。
「み、みんな! その先は……!」
衛星からの画像で、二つの車体が高速道路を飛び出したのを理解したキャサリンが、目を丸くして叫ぶ。
「その先……天然ガスの貯蔵施設よッ!!」
なんと二つの車体が落下していく先は、大量の可燃性天然ガスが貯蔵されている施設の真上だった。
しかし引力に逆らえず、二つの車体は真っ逆さまにガス貯蔵施設に落下。
そして案の定、二つの車体は施設に激突。施設の一部を破壊してしまう。
「うう……」
そして奇跡的にも、双方ともに死者はなし。朦朧する現金輸送車を運転してた竹内が、車内から千鳥足で出てくると、すかさずミスティーハニーが捕えて拘束する。
「観念なさい!」
するとミスティーハニーに続き、他のマン・ヒールズの面々も大破した装甲車から出て、現金輸送車に乗り込んでた犯行グループを一網打尽に捕えて拘束に成功。
ミスティーハニーたちマン・ヒールズが皆揃って事件解決に笑んで安堵していると、そこにパトカーや内閣府調査室の人間が搭乗する車両が多数駆け付けてきた。
「動くな!」
警官に調査室の人間達は、一斉に拳銃を向けた。
「安心して、オリンピックの運営資金も無事よ」
と、ミスティーハニーが言うのだが、彼女たちマン・ヒールズの言い分に調査室の人間は聞く耳を持たず、強引に竹内たち犯行グループの身柄を奪っていく。
「お、おい……!」
思わずマン・ヒールズのプラスが文句を言おうとするが、その前に調査室の人間が言った。
「このテロリスト共の身柄は、我々内閣府調査室と日本政府が引き取る! 元凶悪犯のお前らは出しゃばるな! これはアニメタウン市長のウッズ氏にも伝えてある」
そう言い残すと内閣府調査の人間は、有無も言わさず竹内たち犯行グループを車に乗せて連行していってしまった。
唖然とするマン・ヒールズの面々に、駆け付けた警察官が書類を差し出す。
「では……あなた方が壊した天然ガスの貯蔵施設の損害について、事情聴取しますね」
しばらくの間、マン・ヒールズの面々は解放されなかったという。
[アニメタウンを取り巻く情勢]
後日、アニメタウン本庁にて。
「マン・ヒールズが出した損害のせいで、天然ガスの貯蔵施設は危うく爆発して被害は更に拡大するところだったんだ!! しかもガスの貯蔵施設だけでなく、2020年の東京オリンピックの運営資金までも危うく炎上して全て灰になる可能性もあったんだぞ!! いいか、オリンピックの運営資金だぞ!!」
そう激しく怒声で怒鳴り散らす日本政府の高官に怒鳴り散らされ、現アニメタウン市長のウッズは顔に浴びせられた唾をハンカチで拭き取りながら返答する。
「はぁ……まあ、犯行グループも無事に確保できた上に、オリンピックの運営資金も無事だった訳ですし、結果オーライって事でいいじゃないですか」
「何が結果オーライだ!! 国が管理するガス貯蔵施設の一部を壊されたんだぞ!! 危うく近隣住民が死亡するかもしれなかったし、それ以前にオリンピックの運営資金が爆発で焼失するかもしれなかったんだ!! 死んでも誰も迷惑が掛からない犯行グループなんかより、重要なんだぞ!!」
「は、はい……」
またも怒鳴り返されて、ウッズは程ほど困り果てて冷や汗を拭った。
「わ、分かりました。マン・ヒールズの皆さんには、私の方からも厳重注意しておきます。ガス貯蔵施設の修繕費もアニメタウンが出しましょう」
「当然だ」
ウッズの返答に、高官は当たり前だ、という感じで胸を張る。
「そ、それで………………内閣府調査に身柄を預けられた犯行グループの、身柄譲渡についてなんですが……」
と、ウッズは二次元人である犯行グループの身柄を譲渡してほしいと懇願しようとした、その時。
「何を言ってるんですか? ウッズ市長。凶悪犯に成り下がった
「み、皆さん……」
ウッズが困り顔を向ける先にはアニメタウンの役員達が着席しており、ウッズに反論する。
「あいつら、サイコパス同然の
「しかもアニメタウン国内に留まらず、隣国である日本にまでも実害を出して、余計アニメタウンを困窮させている。そんな外道共の世話など、無意味じゃ」
「し、しかし……」
役員達の反発にウッズが弁明しようとするが。
「お忘れではないですよね? アニメタウンは、あくまで貴方や聖龍HEADの統率だけで統治されてる訳ではなく、アニメタウンとその同盟国に住まう一般国民の意見を代弁する私たち役員がいる事を。何もかも、市長である貴方や聖龍HEADに決定権があるとは思わないでください」
「………………」
正論を述べられ、ウッズは何も言い返す事ができなくなってしまう。
「では、マン・ヒールズが出した損害は仕方なくアニメタウンの国費から出費しますが、資金強奪を図った凶悪な
「そうだそうだ。頭のオカシイ
役員達の意見を聞いて、日本政府の高官は問うた。
「それでは……オリンピックの運営資金強奪を図った凶悪犯の身柄は、我々日本政府が預かるという事で宜しいですね」
高官からの問い掛けに、役員達は頷いて賛同した。
こうして本庁にて開かれた会議は終幕し、日本政府高官はアニメタウンの日本領事館に帰還し、部屋から役員達も退出した。
「ふぅ……」
国民の声と主張して、利益を優先する役員達との話にウッズは疲れてしまう。
そんな程ほど疲れ果ててしまうウッズに歩み寄り、声をかけてきたのは。
「お疲れさん、ウッズ」
「バーンズさん……また透明化して盗み聞きしてたんですか?」
ウッズに声をかけるのは、先ほどまで同室では体を透明化させて会話を盗み聞きしてた聖龍隊総長のバーンズ。
「それにしても……日本政府の高官もだが、アニメタウンの役員たちも相変わらずだな」
「ええ、まったく……」
「罪を犯した【聲の形】の悪役共、このままじゃ竹島のアジア州立刑務所に投獄されるぞ。あそこはDQNはもちろん毛嫌いされているが、同時に二次元人に対しての偏見や差別も酷いと聞く……」
「このままでは、連行された二次元人の方々が、刑務所内で理不尽な暴力を振るわれ……最悪、事故や病気に見せかけられて殺されてしまうかもしれません」
「と、いっても……下種な悪党を、役員は高い保釈金や面倒な手続きを踏んでまで、アニメタウン国内に引き取ろうとは思わないだろうしな」
「はぁ……修司様の現政奉還での一件以降、アニメタウンの政策を私や聖龍HEADの方々に独占させない為に、役員の意見も政策に取り込む決定が投票で決まったとはいえ……困ってしまいますよ」
「でも無茶言うなよ。そもそも聖龍隊やアニメタウン市長の独裁政権になるのを防ぐ為に、国民の声を代弁する役員も政界に君臨する事が多数決で決まった以上それに従わないと、それこそオレ達の独裁政権になっちまうんだから」
「最近、役員の皆さんは、悪役への処遇や処罰を厳格化する以上に、突然変異した二次元人の
アニメタウンを取り巻く政治や政策に対して、市長であるウッズや聖龍隊の総長であるバーンズは、頭を悩ませるのだった。
所は変わって、此処はアニメタウンに在る聖龍隊本部。
本部の屋内では、日本政府から散々文句と罵声を浴びせられたミスティーハニー率いるマン・ヒールズが帰還してた。
「ただいま……」「お帰りなさい」
よほど日本政府から山ほど愚痴を聞かされたのか、ミスティーハニーたちは疲れ切った様子で、声掛けしてくれる隊士に返答する気力もなかった。
そんなミスティーハニーたちに、聖龍隊の新人で後輩でもある【僕のヒーローアカデミア】の緑谷出久が声をかける。
「お疲れ様です! マン・ヒールズの皆さん」
「ああ、出久くん達……お疲れ」
疲れ切った表情でミスティーハニーは出久に返事する。
「聞きましたよ。日本で、また二次元人による犯罪が発生したから、国外出動したって」
「まあね。それにしたって、日本政府も相変わらず私たちマン・ヒールズを目の敵にするわ。……まあ、元罪人だから仕方ないけど」
麗日お茶子にハルカ・ヘップバーンが草臥れた様子で語る。
「それにしても胸糞悪いな。また俺らと同じ新世代型二次元人が、それもテロ紛いの犯罪を起こしたとは。これでまた、俺ら新世代型二次元人への悪評が積み重なるって訳だ」
「かっちゃん、それを言ったらキリがないよ」
爆豪勝己の言動に、緑谷出久が言う。
「にーー……に、しても。私たちと同じ、新世代型二次元人の犯罪が増える一方なんて複雑ぅ」
「まあな。新世代型二次元人の犯罪は増加の一途だよ」
蛙吹梅雨の心境に、マン・ヒールズのガイトが答える。
と、ここで緑谷出久が思わず呟いた。
「
「出久くん、忘れちゃったの?」
出久の呟きに、麗日お茶子が反応すると、爆豪勝己が代弁した。
「二次元人の感情の情状不安定さや、三次元人からの憎悪やマイナスな思想に対する感化での肉体の突然変異。それらの要素が重なって、
「わ、分かってはいるんだけど……それでも同じ二次元人が、スレンダーマンやサイレンヘッドみたいなUMAはもちろん、サイコパスの様な危険な犯罪者に変化してしまうのが複雑で……」
勝己の話を聞いた出久の心持に、同期達も胸が締め付けられる。
そんな心優しい出久の心情に、ミスティーハニーが笑顔で話し掛けた。
「ありがとう、出久君。相変わらず、あなたは優しいのね」
「えっ? え、ええ……あ、ありがとうございます」
笑顔のミスティーハニーに、出久は思わず顔を真っ赤にして照れる。
そんな出久を見て、他の三人も思わず微笑むが、ここでマン・ヒールズのガイトがある事に気付く。
「ん? そういえば……ニュージェネレーションズの連中が見えねえな」
ガイトが発するニュージェネレーションズとは、主に現政奉還の乱世に巻き込まれた新世代型二次元人による特別部隊の総称。
そのニュージェネレーションズを見かけないと訊ねるガイトに、出久が答える。
「ああ、ニュージェネレーションズのみんななら、今日はなんだか集まりがあるとか何とか……」
「集まり?」
デューイが首を傾げると、麗日お茶子が話した。
「現政奉還に巻き込まれた、同期の新世代型二次元人だけで、久々に懇談会を開くとか何とかで、今日は鬼龍院皐月さんを主催にパーティーを開催して参加しているみたいです」
「そっか。まあ、あの子たちも現政奉還では大変だったし、久々に同じ苦労を体験した者同士で寛ぐのも悪くないかな」
お茶子の説明に本郷唯が納得してると、同じマン・ヒールズのエリルが明るい笑顔で訊いた。
「あ! それじゃ、そのパーティーに修司さんも参加してるの?」
「いえ、修司さん……特別教官は……」
エリルの問い掛けに出久が答えるには……。
「かつてアイツらを……我が子である新世代型二次元人を惨殺しようとした俺が、奴らと馴れ馴れしくするのはお門違いだ」
そう修司は述べて、鬼龍院皐月主催のパーティーに参加するのを遠慮しているという。
これを聞いたマン・ヒールズは複雑な心境だった。
「……確かに。修司は現政奉還で新世代型二次元人に酷い事をしたとはいえ……」
「だからって、子供同然の新世代型二次元人と触れ合うのを避けるっていうのは……」
ガイトと沙羅の恋人組に続き、修司に恋してたエリルも悲しそうに言う。
「修司さんは、もう十分反省したのに……まだ気にしてるのかな」
皆の心中を察して、ミスティーハニーが神妙な面持ちで述べた。
「修司は元々、実の家族からの愛情も感じにくい人間。だからこそクローンという自分の子供に、どう接していいか、まだ迷っているのよ」
このミスティーハニーの説明に、その場の誰もが沈黙した。
[REVOCS本社のパーティー]
その頃、生前は新世党というテロ組織に参入してジャッジ・ザ・シティで無差別大量殺人を起こした新世代型二次元人の鬼龍院羅暁がCEOを務めてたREVOCS社の本社では。
現会社を取り締まってる鬼龍院皐月が主催の、現政奉還に巻き込まれた新世代型二次元人を中心としたパーティーが開かれていた。
「いやあ、まさかこの前の食事会に続いて、こんな豪勢なパーティーに呼んでくれるとは嬉しいね!」
「ぎゅ、ギュービッド様。はしゃぎ過ぎですよ……」
現政奉還に新世代型二次元人と共に巻き込まれたプロト世代のギュービッドに、黒鳥千代子も桃花・ブロッサムも苦笑いを浮かべる。
「皆の者! 今日は心行くまで楽しんでくれ! REVOCS本社は今日だけは、みんなの為に借り切っているのだからな!」
「姉さん、死んだ母さんの会社を継いだのはいいけど、いくらなんでもパーティーだけで会社丸ごと借り切って仕事を中断させてるのは、どうなんだ?」
「流子、たまにはこうして現政奉還の苦難を共に乗り越えた友と一緒に同じ時間を共有するのもいいではないか」
主催者である鬼龍院皐月に妹の纏流子が問い掛けると、皐月は笑顔で言い切るのだった。
「そうだそうだ。カタいこと言うなよ流子。しかも皐月はアタイらプロト世代までも招いてくれているだ、こんな太っ腹な祝い事に参加しない方が無粋だよ」
「ハハッ、ギュービッドは相変わらずだな。でも、我らと同じで現政奉還の混乱を共に乗り越えた友には変わりない。其方たちも心行くまで堪能してくれ!」
出された食事を頬張るギュービッドに、皐月は満面の笑みで返事する。
「キャサリン、どうなの? 聖龍隊で通信士として務めてみて」
「うん、色々と覚える事が多くて大変だけど、何とか指導してもらっているから大丈夫かな」
現政奉還の後に、聖龍隊で正式に通信士として現場のサポートを務めるキャサリン・ルースに鹿島ユノ達が訊ねていた。
「アラタ。聖龍隊のニュージェネレーションズに試験的に参加してたって聞いたけど、どうだった?」
「ああ、それが大変だよ。サイレンヘッドとかに変異した二次元人の捕獲とか討伐だけでも目まぐるしいほど忙しいのに、この前なんかパラレルワールドにまで出動しちゃって……」
「ぱ、パラレルワールド?」
パーティーの最中、聖龍隊のニュージェネレーションズに試験参加してた瀬名アラタと談笑する出雲ハルキと星原ヒカル。
「久々に、みんなで、こうして会って一緒に食事するのも良いもんだな、斉木」
「ああ、燃堂。ニュージェネレーションズで活動しながら、時にはこうして顔を合わせるのも楽しいね」
ニュージェネレーションズで活動してる燃堂力と斉木楠雄もパーティーを楽しんでた。
そんな多くの新世代型二次元人達がパーティーを楽しんでいる一方、パーティー会場の片隅では真鍋義久が一人、黙々とノートと向き合って呟いてた。
「……真鍋くん……真鍋くん……」
「……ブツブツ……ブツブツ……」
琴浦春香が名を呼ぶが、真鍋義久は呟きながらノートと向き合うばかり。
「っ……真鍋くん!」
「ッ! こ、琴浦……すまない、つい没頭して……」
声をかけても無反応の真鍋義久に、顔を膨らませて強めに名を呼ぶ琴浦春香。彼女の声にようやく気付く真鍋義久に琴浦春香は問い掛ける。
「どうしたの? なんか最近、真鍋くん変だよ」
琴浦春香が不安そうに訊ねると、彼女に続いて御舟百合子と室戸大智も真鍋義久に訊ねた。
「真鍋くん、最近は私と遊んだりせず、勉強ばっかだよ」
「どうしちゃったんですか? 言っちゃなんですけど、勉強に励むなんて真鍋くんらしくないですよ」
皆からの質問攻めに、真鍋義久は思い詰めた面差しで答えた。
「……俺、現政奉還を体験して、あのSパルにも言われて思ったんだけど……俺たち新世代型二次元人に限らず、二次元人には現実を変えられる力がある。って」
「真鍋くん……」
「あの日、Sパルに言われて俺なりに決意したんだ。この世界を正しい世界に……修司さんが掲げた理想が実現できる世界へと導いた上で、築いてみせるって。でも、俺はみんなと違って、能力はもちろん才能もない。そんな俺でも出来る事といえば、勉強ぐらいしかないかなって……」
『………………』
真鍋義久の真剣な顔付きに、琴浦春香も周りの皆も黙り込んでしまう。
「でも、偉いよ。俺なんか勉強もできないバカだっていうのに、自分から勉強するなんて……」
「燃堂の言うとおりだ。真鍋義久、君も現政奉還で色々と変わったんだね」
燃堂力と斉木楠雄の発言に、周りの皆も思わず頷いた。
「そうだよっ、真鍋くんもいい方向に変わったよ! あの修司さんの様に……」
「……ありがとう、琴浦」
琴浦春香からの言葉に、真鍋義久は微笑み返した。
そして彼女である琴浦春香に手を引かれ、パーティーに加わる真鍋義久。
だが、皆の集いに加わった真鍋義久は、不服そうな顔付きで鬼龍院皐月に話し掛ける。
「……ところで、皐月さんよ」「なんだ? 真鍋」
不満そうな顔で話し掛けてくる真鍋義久に、鬼龍院皐月は笑顔で受け答えると、真鍋義久は大口を開けて皐月に問い詰めた。
「なーーんーーでッ! こいつらの遺影が飾られてる!! しかもドレフの遺影まであるしよッ!」
真鍋義久が問い詰めたのは、宴会場の片隅に設置されている長テーブルに、自分達を現政奉還で襲い傷付けた小野崎功や法月仁、そして鬼龍院羅暁やセレディ・クライスラーたちテロリストの新世党の面々の遺影が数多の花に囲まれて置かれてること。しかもその中には、新世党も自分達も欺いてたドレフの遺影も置かれてたのだ。
何ゆえ、新世党と彼らを利用したドレフの遺影を宴会場の片隅に、まるで供養するかのように置かれているのかを皐月に問い詰める真鍋義久。すると皐月は神妙な面持ちで答えた。
「……真鍋、確かにお前たち皆が思うところはあるだろう。同じ新世代型二次元人だというのに、世界に反抗し、数多の命を奪った我が母上を始めとする新世党の面々に加え……その母上たちですらも、駒として利用してたドレフの遺影に花を供えているのを不服に思うだろう」
「当ったり前だろッ! アイツら新世党の連中のせいで、俺たち存命してる罪もない新世代型二次元人は未だに不評被害が酷いんだぞ! そして、新世党以上に下種な野郎だったドレフまでも供養するなんて。どうかしてるぞ!」
鬼龍院皐月に怒鳴り散らす真鍋義久に、鬼龍院皐月は少し思い詰めたような悲しげな顔で受け答えた。
「ふぅ……確かに。母上や、その他の新世代型二次元人の悪行は、到底許されるものではない。それは私だって重々理解してる。だがな真鍋、母上たちとも少しでも我々と理解を深めて距離が縮んでいれば……もしかしたら我々と共生できた未来があったかもしれない」
「……! ドレフみたいな下種な二次元人とも、理解し合えたと思ってるのか……!?」
「ああ……もしかしたら、二次元人に対する偏見や差別などが少しでも無ければ新世党なんてテロ組織も生まれず、今でも我々と共生できたかもしれない。そう思い、考えることも罪か?」
「い、いや……! ま、まあ、確かに争い合う事はなかったかもしれないけどよ……でもな」
鬼龍院皐月からの説明に、真鍋義久は複雑な心境に至る。
と、そんな重苦しい空気を断ち切るように、ギュービッドが笑顔で喋り出す。
「まあまあ! もうそんな堅苦しい話はやめて、真鍋も皐月も今は今を楽しもうぜ!」
「フッ、そうだな。せっかくの宴会が台無しになってしまうな。新世党やドレフの供養も大事だが、今は皆で生きている時間に感謝するべきだな」
「はぁ、まあ、そうだな。俺も久々のご馳走に腹いっぱいになるまで食べるか!」
ギュービッドの笑顔での会話に、鬼龍院皐月も真鍋義久もパーティーを楽しもうと意気込んだ。
「ハハハ……そういえば、皐月様。ちょっと小耳に入れたんですが、僕たち新世代型二次元人の遺伝子を勝手に使って研究してた遺伝子学者を追い出したと聞きましたが……」
「ああ、あの学者の事か。いやな、その者には膝に先天性の障害があって、その障害を含めた治療の研究を主に行っていた訳なんだが……事もあろうに、勝手に私たち新世代型二次元人の遺伝子を研究に使っててな。申し訳ないが、危険なのと不謹慎という名目で研究機関から追放した」
今では聖龍隊のコスチューム部門に属している伊織糸郎が訊ねると、鬼龍院皐月は険しい顔付きで返答する。
身体障害を持つが故に、探求心が勝って新世代型二次元人の遺伝子を研究してしまった遺伝子学者。
しかし鬼龍院皐月が彼を研究機関から追放した事で、これから悲劇が始まってしまう事を、誰も予測できてなかった。
[障害者の気持ち]
「ふぅ~~……トイレトイレ」
パーティーの最中、急に尿意を覚えた新世代型二次元人の纏流子は慌てて女子トイレに駆け込む。
「ふぅ、さっぱりさっぱり」
心身ともにスッキリした纏流子は、洗面台で綺麗に手を洗い流す。
そして洗い終わると、そのままパーティー会場へと戻ろうとする。が、そんなトイレから出たばかりの纏流子を、後ろから忍び足で迫る存在が。
謎の存在が流子の背後に忍び寄り、彼女を捕えようとした、その時。
「うおりゃッ!」「!?」
背後からの気配を、聖龍隊で鍛え上げた流子は敏感に察知し、逆に忍び寄ってきた者を一本背負いで投げ飛ばす。それ以前に、男の左足は何故か床を引きずっていた為に、動作が鈍くて気付かれやすかった。
「なんだテメェ! ストーカーか? それとも痴漢野郎の変態かッ!?」
流子はドスの利いた怒声で投げ飛ばした存在の腕を、背中に回して尋問する。
すると流子に忍び寄って来たのは、初老の男性であった。
男性は何とか流子の拘束を解こうと暴れるが、流子の尋問の手は緩まず、彼女は右手で男の片腕を背中に回して押さえ付けながら、左手を男の首に回して喉を圧迫させる。
男は流子の左手に喉を圧迫させられ、息苦しく感じていた。が、ここで男はある行動を取った。
「もぐもぐ……遅いね、流子ちゃん。ひょっとして、オシッコだけでなく、ウンチもしてるのかな?」
「こら、満艦飾。みんな食事中な上に、お前は女の子だろ。そんな、はしたない言葉、使うんじゃない」
一方パーティー会場では。纏流子の大の親友である満艦飾マコの言動に、流子の実姉の鬼龍院皐月が注意してた。
と、皆が和気藹々と食事や談笑を楽しんでいたパーティー会場に突然、纏流子が勢いよく両開きの扉を押し開けて飛び込んできた。
「りゅ、流子!?」「流子ちゃん!」
尋常でない様子でパーティー会場に戻ってきた流子に、皐月もマコも急いで彼女に駆け寄る。
「流子、どうした?」
流子に駆け寄る皐月が問い掛けると、流子は左手を翳しながら説いた。
「ひ、左手が……」「っ!? これは……!」
流子の左手を直視した皐月は目を見開いて愕然とした。何故なら流子の左手が人差し指を中心に、?み千切られて痛々しく出血していたからだ。
「ひ、酷い……!」
「くッ……! 流子! 誰がこんな真似を!」
蒼然とするマコに対して、皐月は大事な妹を傷付けられた怒りに駆られながら流子に問い質す。すると流子は冷や汗を流しながら答えた。
「そ、それが……見た事ない、初老のおっさんで」
「初老の男だと?」
と、皐月は物音で、流子が飛び込んできた両開きの扉に顔を向けると、扉を弱々しく開ける男の手が隙間から覗く。
「きゃあっ」「だ、誰!?」
騒然とする彩瀬なるや一条蛍たちが混乱する中、扉を押し開けてパーティー会場へと入って来たのは。
「お、お前は……! ……博士……?」
会場へと入ってきた、流子を襲った男の顔を見て、皐月は唖然としてしまう。
「ね、姉さん。コイツ、知ってるのか?」
傷口を押さえながら流子が問い掛けると、皐月は唖然とした顔で返答した。
「さ、さっき伊織にも話してたんだが……私たち新世代型二次元人の遺伝子を、勝手に研究して、私がクビにした学者だ。でも、なんで……」
茫然としながら皐月が説明してると、流子を襲った博士は、口元に付いた流子の血を袖口で拭きながら話し出した。
「はぁ、はぁ……さ、皐月様、お久しぶりです。はは、まさか……大勢の人々の為に研究してきた、善良な私を追い出した貴女と、ここで会えるとは……」
「博士! 何ゆえ、此処に居る!? いや、それ以前に我が妹、流子を傷付けるとは……貴様、気でも触れたか!!」
「妹……? ああ、そうなんですね。彼女が、貴女が昔、生き別れたという妹の纏流子……どんな致命的な傷を負っても忽ち再生できる、ほぼ不死の肉体を持つ……」
「っ!」
皐月に睨まれた博士が流子を見詰めると、流子は博士の不気味に微笑んだ顔からの視線に思わず背筋が寒くなる。
「博士、答えろ! 貴様、一体どんな考えで流子を……! まさか、私にクビにされたのを恨んで流子を……!!」
完全に頭に血が上っている皐月に詰め寄られた博士は、不敵に微笑みながら説明し出す。
「フフフ、これも研究の為ですよ、皐月様。あなた方、身勝手で傲慢な新世代型二次元人が見限った、全人類の希望の為の研究を、私は貴女に追い出された後も続けてたのです」
「なに!?」
「所詮、あなた方、新世代型二次元人も始祖である小田原修司と同じで傲慢だからこそ、障害者の……私の様な先天性の障害を持つ人間の苦しみが理解できないんだ。私は、私と同じ障害を持つ人々を救済する為に、あなた方の様な身勝手な新世代型二次元人の遺伝子を研究して、障害を完治できる治療法を確立させるのです!」
「それと、流子を襲った理由は関係ないだろッ!」
博士の言い分に怒りが頂点に上がった皐月は、博士を床へと投げ付ける。
すると博士は痛みに耐えながら、自力で立ち上がって見せた。
「ふふ、フフフ……私の研究が成功してるなら、今頃私の肉体の中で新世代型二次元人の遺伝子が作用して、私の膝は治ってる筈だ……!」
「!? まさか博士……! お前、自分自身を実験体にした上で、流子の血から新世代型二次元人の遺伝子を自分の体に入れたのか……!?」
愕然とする皐月に、博士は啖呵を切る様に言い放つ。
「鬼龍院皐月! そして周りの私利私欲に溺れた新世代型二次元人共! お前達の様な、身勝手で傲慢な連中には分かるまい……! 私の様な身体はもちろん、知的に障害を持つ人間の息苦しさは……! 何処に行っても邪魔者扱いされ、不遇にされ……ただ生きているだけで差別される、私たち障害者の辛さ……お前達には理解できないだろう!!」
『………………………………』
博士の怒り猛った言動に、周囲の新世代型二次元人達は唖然。そんな中でも博士は訴え続けた。
「そんな……そんな、私の苦境を……障害者の苦境も知らない、貴様ら新世代型二次元人の遺伝子を研究に使ってやっただけでも、ありがたいと思え! これで、これで、私は……ッ!」
すると博士は力を込めて、障害のある左足で立ち上がろうとする。
そして新世代型二次元人達が見る中で、博士は杖なしで立ち上がり、見事に直立する事ができた。
「な、なんと! 今までは杖を使って立っているのが、やっとだったと言うのに……!」
博士が杖なしで立ち上がったのを目の当たりにした鬼龍院皐月は驚愕した。
「や、やった……! 立てた……杖なしで、立てた……! ううっ、これで……これで、私の……障害者たちの宿願は、達成できる!」
と、思わず泣き出すほど感涙してしまう博士。
だが、博士が涙を流して喜んでた、その時だった。
「きゃあっ!」
なんと博士が着ていたトレンチコートが背中から破け、内側から覗いたのは赤褐色の爬虫類の様な鱗に覆われた肌だった。
新世代型二次元人達が驚愕する中、博士も自分自身の体に起きた異変に気付く。
「な、なんだコレは……!? 体が……私の体が、私ではなくなっていく……!! ッ、制御できない……!!」
そして見る見るうちに博士の着てた衣服は、内側から破けていき、その都度皆の目に飛び込んできたのは、異質な皮膚や毛皮だった。
やがて博士の衣服は、全て破けて床へと落ちると、最後にその場に残った博士の容姿は完全に一変してた。
足は三本爪の恐竜の様な足、しかし脚部は赤に近い茶色の毛に覆われており、胴体は黒褐色な筋肉質な体格に、背中は赤褐色の鱗で覆われていた。
両腕はゴリラの様に発達した赤毛の羽毛に覆われた、鋭い爪が生えた四本爪の奇怪な形状。
そして顔は緑色の鱗に覆われ、目はトカゲの様で赤く充血してる鋭い目付きで、頭部はスキンヘッドの様に毛はなく、まるで骨がむき出しになっている様な風貌。
そんなキメラの様な容姿に一変した博士は、突然雄叫びを上げた。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
『きゃあっ!!』
奇怪な鳴き声を発する、突然容姿が変異した博士を前に、女子達が悲鳴を上げる。
そんな混乱する状況下で、鬼龍院皐月が帯刀してる聖龍隊から配布された日本刀を抜刀して構えた。
「博士! 最初は障害者の為に、我々新世代型二次元人の遺伝子を研究していたというのに……! やはり、我々新世代型二次元人の遺伝子を無意味に別種の二次元人に投与するのは危険なのか!」
キメラへと変異した博士を止めようと動く鬼龍院皐月。すると彼女に続いて、先ほどまでの怪我を再生能力で自力で回復した纏流子も、帯刀してた片太刀バサミに形状が似た刀を抜刀して皐月の隣に立つ。
「流子!?」「へへっ、売られた喧嘩は買うのがアタイの流儀さ!」
笑顔で顔を向き合わせる皐月と流子。するとハサミ姉妹に続いて、パーティーに参加してた栗山未来も参戦する。
「私もいる事、忘れないで!」
更に同じくパーティーに参加してたガッチャマンクラウズの一ノ瀬はじめ達も、各々が変身して戦闘に参戦。
「ボク達もいるっすよ!」
心強い新世代型二次元人の仲間達の参戦に、鬼龍院皐月は内心静かに喜ぶのだった。
こうして新世代型二次元人の遺伝子を服用した事でキメラ化した博士と、鬼龍院皐月たち戦闘タイプの新世代型二次元人達の交戦は始まってしまった。
[キメラ化した二次元人]
新世代型二次元人の遺伝子を、身体障害の治療のために無断で研究してた為に、鬼龍院皐月に研究機関を追放された博士。
博士はパーティーが開かれているREVOCS本社で、纏流子を襲い、彼女の血を摂取する事で新世代型二次元人の遺伝子を体内に取り込むことで、持病だった膝の障害が完治した。
しかし同時に博士の肉体は、複数の動物の身体が混同したようなキメラに近い肉体へと突然変異してしまい、更には理性をも失ってしまう。
この非常事態に、常日頃から聖龍隊のニュージェネレーションズで鍛えている鬼龍院皐月を筆頭に、妹の纏流子や親友の栗山未来、そしてガッチャマンクラウズのメンバーと共に暴れ回る突然変異した博士を止めるのだった。
だが、いざ突然変異した博士を止めようと躍起になる皐月達であったが。
「うおッ!」「うわあっ!」
刀で斬りかかる纏流子は、頑丈な鱗に刃が弾かれて吹き飛ばされて、栗山未来は剛腕で投げ飛ばされてパーティー会場のテーブルに叩き付けられてしまう。
「これ以上の横暴は許さんッ!」
すかさず鬼龍院皐月が日本刀で斬りかかるが、博士は鋭い爪が生えた片手で軽々と皐月の剣戟を受け止めると、容易く彼女を押し出して転倒させる。
「ッ!」
鬼龍院皐月が転倒すると、博士は無数の鋭利な歯が生えた口で、皐月に?みつこうと顔を近付けた。
と、博士が皐月を食い千切ろうとする直前、博士に無数の文房具状の武器が投擲される。
「やめるんだ!」
ガッチャマンクラウズの一ノ瀬はじめが、武器を飛ばして博士を止めるが、博士には武器は効力がなかった。
すると一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズの面々は、一斉に博士に飛び掛かり、変異した博士にしがみ付いて、強引に博士を押さえ込んで止めようと画策。
しかし筋力が異常発達した博士を止める事は叶わず、全員引き剥がされて床へと叩き付けられてしまう。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
雄叫びを上げた博士は、そのまま会場の片隅で戦闘を見守ってた普通の新世代型二次元人たちに迫る。
「い、いやあ! 食べられちゃう!」
キャサリン・ルースたち女子は食い殺されるのかと、恐怖で悲鳴を上げた。
「そうはさせない!」
だが其処に栗山未来が自身の血で生成した刃で無数の斬撃を浴びせて、変異した博士を押し退けた。
「や、やったか……?」
起き上がりながら、皐月は未来によって斬り付けられた博士を凝視する。
すると、無数の切り傷を負った博士の肉体は、瞬く間に傷口が塞がり、再生してしまう。
「なッ!?」
栗山未来によって付けられた刀傷が瞬く間に塞がって再生するのを目撃して、鬼龍院皐月は目を見開いて驚いた。
「っ……!」
そんな戦況の中でも、未来は諦めず懸命に変異した博士に斬りかかっていく。が、博士の傷口は瞬時に再生してしまう。
すると此処で、未来が懸命に博士に斬りかかっていく戦況を見てた鬼龍院皐月がある事に気付いた。
「も、もしや……! 未来! それ以上、攻撃するな!!」「えっ?」
突然の鬼龍院皐月からの制止に、栗山未来は戸惑ってしまう。
戸惑って動きを止めた栗山未来の、彼女の血で作り出された武器に向かって、変異した博士は噛み付いてきた。
「きゃっ!」驚く未来は、思わず武器を手放してしまう。
すると未来から、彼女の血で生成された刀を、変異した博士は事もあろうに噛み砕いて粉砕すると、そのまま血の刃物を食してしまった。
「た、食べてる……!?」
栗山未来を始め、戦闘を見守ってた多くの新世代型二次元人たちが驚愕してると、その血の刃物を食した博士に再び変化が。
なんとキメラに変異した博士の体が、更に巨大化した上に、全身を強固な鱗が覆って防御力も上がってしまった。
「え……っ!?」
栗山未来が愕然としてると、鬼龍院皐月が大声で説明し出した。
「博士の体は、我々新世代型二次元人の遺伝子を取り込めば取り込むほど、肉体が進化して強化される! 未来、お前の血で武器を作って戦う戦術は、かえって博士の肉体を強化させるだけだ!」
『!!』
鬼龍院皐月の自論に、未来はもちろん他の皆々も愕然とした。
一方で、刀傷からも、直接口からも新世代型二次元人である栗山未来の遺伝子を摂取した博士は、更に強靭なキメラへと進化して、新世代型二次元人達に強襲していくのだった。
[駆け付ける裁きの鬼]
一方その頃、聖龍隊本部では。
「はッ、やッ」
今や聖龍隊特別最高顧問にして、特別教官にも就任してる小田原修司が、聖龍隊の新人達と鍛錬を行ってた。
「このヤロッ」
両目に布を巻き付けて、あえて視覚のない状態から、全身を超感覚のセンサーにしてる修司に、聖龍隊の新人である爆豪勝己が殴り掛かる。
しかし視覚を封じた修司は、勝己の攻撃を難なく回避しながら、右へ左へと体を反らす。
そんな修司に、今度はサイタマが強烈で強力な拳を打ち込もうとするのだが、全身を超感覚にしてる修司は、サイタマのパンチを両腕でしっかりと掴むと、そのままの勢いでサイタマを一本背負いで投げ飛ばしてしまう。
其処に少し離れたところから、轟焦凍が氷の能力で修司の足元を凍り付かせて、修司の動きを封じ込める作戦に出る。が、修司は自分の足元が凍り付く前に、軽く跳躍して轟焦凍の凍て付く技を回避する。
そして修司は、周辺に新人達が取り囲む状況の中で、ようやく自分自身に課してた特訓を終わらせ、自ら視覚を遮ってた布を取り外して周辺の新人達に言う。
「よし、俺の特訓は此処までだ………………フンッ」
すると修司は鼻息を荒くしながら、床に自身の手を押し当てて、空間全域に闇の能力を展開。
「相変わらず、気分悪いぜ……!」
「うん、この重苦しい空気は流石に慣れないや……」
闇の能力から発せられる重苦しい空気を全身で感じ取り、爆豪勝己と緑谷出久は表情が険しくなる。
「よし! 此処からは能力なしだ! 全員で、かかってこい!!」
そう修司は周辺の新人達に意気込むと、新人達は一斉に修司へと群がる様に、修司へと襲い掛かった。
だが爆豪勝己の拳を難なくかわし、続いてサイタマのパンチを避けると、修司は爆豪勝己の腕を掴んでサイタマへと投げ飛ばす。
すると勝己とサイタマに反撃した修司を轟焦凍が、カポエラの要領で回し蹴りを喰らわそうとするが、修司は一歩二歩と後ろに退いて蹴りを避けると、焦凍の足を掴んで、軽く足首を痛め付けて反撃。
「さッ! 出久! 最後はお前だ! 早く来い!」
最後に残った緑谷出久に、修司は挑んでくるよう呼びかける。
出久は修司からの誘いで、修司に肉弾戦で攻めていくと、修司は出久が繰り出す拳や攻撃を全て受け止めつつ、流していく。
そして最後は出久を転倒させて、鍛錬を終了させる。
「よし、今日はこれぐらいで良いだろ」
修司がそう言うと、修司と鍛錬してた新人達も休息する。
「しっかしよォ……能力使わず鍛えるなんて、なんか癪だぜ」
「能力はあくまでオマケだ。万が一、能力が使えなくなった有事には肉弾戦で戦えるよう、鍛錬はしておいた方がいいぞ」
個性という能力を使えない状態で鍛錬する事に不満を感じる爆豪勝己に、修司は忠告する。
「ところで……今日、新世代型二次元人達を中心に鬼龍院皐月がパーティーを開いていると聞いているが、お前達は行かないのか?」
徐に修司が訊ねると、緑谷出久が返答した。
「ああ、それですか。新世代型と言っても、現政奉還を乗り越えた新世代型と一部のプロト世代が招かれているみたいで、僕たちは良いかなって……」
すると、この出久の返答を聞いて、爆豪勝己が怪訝な顔で修司に吐き捨てた。
「へっ、そうそう。アンタに殺されそうになった新世代型と俺らは別だからな……元、殺人鬼様よ」
「………………」「か、かっちゃん……」
爆豪勝己の台詞に、修司は無表情で聞き入れ、緑谷出久は困惑してしまう。
爆豪勝己の様に一部の新人達は、現政奉還で自分たち新世代型二次元人達を殺めようとした小田原修司に対して不満を抱く者も少なくなかった。しかも修司が元連続殺人鬼のジャッジ・ザ・デーモンである事実も重なって、不満が積もってる状況だった。
と、修司が爆豪勝己からの嫌味を聞き流してる所に、修司の携帯電話が鳴ったので出てみると。
「もしもし」
「しゅ、修司さん!」
「キャシーか、どうかしたか? 確か今は、皐月主催のパーティーに出てる筈じゃ……」
「そ、それが! 私たち新世代型二次元人の遺伝子を取り込んだ二次元人の学者さんが、キメラみたいなモンスターに変異して会場で暴れてるの! 今、皐月さん達が戦っているんだけど、なんか戦況が悪くて……」
「なに……! 新世代型二次元人の遺伝子を取り込んだ……!? それで、その学者は今でも暴れてる訳か?」
「う、うん! 戦闘タイプの新世代型二次元人で何とか食い止めているんだけど、変異した学者さん、私たちを食い殺そうと暴れ回ってるの!」
「……! (新世代型二次元人の遺伝子、すなわち俺の遺伝子を取り込んで……!)それでキャシー、その変異した学者とお前達は、まだREVOCSの本社にいるんだな」
「は、はい! わっ、こっちに来た!」
そうキャサリン・ルースの声を最後に、通話が終わった。
自分の呪われた遺伝子を取り込んだ二次元人が怪物に変異したと知った修司は、即座に行動に移った。
「悪い、急用ができた」「修司さん?」
不思議そうにする出久たちをその場に残し、修司は急いで走り出した。
そして急ぎ、聖龍隊の本部その地下施設でも、最深部にして最もセキュリティの高い区域に駆け込む修司。
其処は通称デーモン・ハビタットと呼ばれる、ジャッジ・ザ・デーモンの秘密基地であり、様々なガジェットが並ぶ中、修司はデーモンスーツの前に駆け寄る。
そして修司は急ぎデーモンスーツを着用すると、制裁の象徴であるジャッジ・ザ・デーモンへと姿を変えて、小型ステルス戦闘機であるジャッジウィングへと搭乗した。
(俺の遺伝子で変異した奴の戦闘力は未知数だ。ジャッジ・ザ・デーモンで何とか抗えるかどうか……)
そう内心で疑念が募るジャッジ・ザ・デーモンだが、彼はその疑念を心の片隅に置いて、ジャッジウィングで出動するのだった。
力に渇望した為に、混沌と災いを齎す肉体へと変化してしまった自身の遺伝子。
その遺伝子という呪われた血を引き継いだ血族たる新世代型二次元人。
今では、その新世代型二次元人を友として、同じ呪われた血を持つ存在として受け入れた小田原修司。
小田原修司は、呪われし血族たる新世代型二次元人を助けるため、ジャッジ・ザ・デーモンへと姿を変えて、新世代型二次元人の元へと駆け付けるのであった。
[対決! デーモンVSビースト]
その頃、事件現場であるREVOCS本社では。
「い、急いで逃げろ! あのバケモノは強すぎる!」
戦闘で負傷した新世代型二次元人と共に、退避するプロト世代の海道ジンが皆を誘導する。
一方、鬼龍院皐月は重傷を負い、妹の流子と親友の栗山未来に肩を担がれて逃避してた。三人以外で戦闘に加わったガッチャマンクラウズの面々も、攻撃が効かず苦戦の末に敗北していた。
しかし逃走する新世代型二次元人たちは、自分たち以外には不在のREVOCS本社内を駆け抜ける。何故ならパーティーの催しを担当してたスタッフやパーティーに出してた料理を作ってたコック達は、突然の怪物騒ぎに混乱して、新世代型二次元人よりも先に逃げ出していたからだ。
「チッ、どいつもこいつも冷てえ奴らだ」
「そういうな、流子。人間、恐怖を感じれば我が身可愛さに逃げ出してしまう生き物さ」
自分達だけを置いて先に逃げ出すスタッフ達に流子は苛立つが、姉の皐月はそれを宥めるのだった。
「だ、誰か助けを……助け、呼んで!」
「大丈夫! さっき修司さんに電話したから、きっとスグに対策を講じてくれるわ!」
恐怖で泣きじゃくる森谷ヒヨリに、先ほど修司に電話で現況を伝えたキャサリン・ルースが言い伝える。
その頃、ジャッジ・ザ・デーモンに姿を変えた小田原修司は、ジャッジウィングに搭乗して、現場であるREVOCS本社の屋上へと降り立った。
ジャッジ・ザ・デーモンは急ぎ、屋内へと続く非常階段で下の階へと降りていく。
その一方で変異した博士に追われて、逃げていく新世代型二次元人たち。
だが、ここで彼らはある失敗をしてしまってた。それは急な事態だった為に、負傷した鬼龍院皐月の傷口からの出血を止血しなかった事で、廊下に点々と血痕が残っていた事だ。
しかし変異した博士は、その血痕からだけでなく、空気中に漂う血の匂いも嗅ぎ分けて、新世代型二次元人たちを追走する。
と、新世代型二次元人たちが逃げている道中、なんと社内に配備されている警報システムが鳴り響き、発動してしまったのだ。
「! いかん! きっと先に逃げ出したスタッフが、警報装置を作動させたのだろう……マズいぞ」
負傷してる鬼龍院皐月は顔を険しく一変させて激しく動揺する。
すると作動した警報装置によって、廊下と廊下を隔離壁が閉ざして塞いでしまう。
「! おいおい、嘘だろ! 逃げ道がなくなるぞ、こりゃあ……!」
隔離壁で逃げ道が限られてしまう現状に、真鍋義久たち新世代型二次元人は激しく困惑する。
一方、ジャッジ・ザ・デーモンの方も、非常階段から一般の社屋フロアへと進入するのだが、そこの階でも発動した警報装置によって隔離壁が作動してしまい進行するのが困難になっていた。
ジャッジ・ザ・デーモンは顔全体を覆うかのような、大きくて赤い目から視える探知システムで、社屋全域を見渡して、現在社屋に残っている人間を探し出す。
するとジャッジ・ザ・デーモンの紅い目が、懸命に隔離壁を押し上げて逃走してる集団を発見する。
(みんなは、あそこか)
新世代型二次元人達の現状と居場所を把握したジャッジ・ザ・デーモンは、更に彼らを追い回すかのように社屋内を徘徊する異形の影を視認する。
(……アレが新世代型二次元人の遺伝子を体内に投与して変異した学者か……)
ジャッジ・ザ・デーモンはすぐに行動に移し、再び非常階段から新世代型二次元人達がいる階層まで下りていく。先ほどの警報装置によってエレベーターも使用不能に至ってるからだ。
その頃の新世代型二次元人達は、天井から降りた格子状のシャッターを強引に押し上げて、逃げ道を確保しながら社内を逃げ惑っていた。
「さ、皐月! 次は何処をどう、逃げれば良いんだ!?」
時おり真鍋義久たちは、負傷して額から汗を流す鬼龍院皐月に、社内のどの通路を進んで逃げれば良いかを尋ねる。
しかし必死に逃げる新世代型二次元人達の背後を、変異した博士は発達した脚力で追走し、次第に距離を縮めていた。
そして遂に変異した博士は、集団で逃げる新世代型二次元人達のすぐ後方へと姿を見せる。
「き、来たぞ!」
後方まで追い付こうとする博士の姿を目視し、ガッチャマンクラウズの枇々木丈が皆に警告するが、新世代型二次元人達を目視した博士は速度を速めて急接近。
そして次の瞬間、屋内の十字路通路の中央で、変異した博士は、何とか皆を救いたい一心で立ち止まり、遠距離攻撃を続けてた一ノ瀬はじめに飛び掛かった。
「うわっ!」「は、はじめ!」
一ノ瀬はじめに飛び掛かった博士は、その強靭な顎と鋭い歯で彼女の頭部に噛みつこうとする。
それを観たギュービッドは、チョコと共に黒魔法で一ノ瀬はじめを助け出そうとするが、それより先に博士は一ノ瀬はじめをかみ千切ろうと歯を立てた。
誰もが最悪の事態を想像した、その時だった。
「ギャアアゥッ!」
一ノ瀬はじめに喰らい付こうとした博士を、真横から強烈な飛び蹴りが襲った。
突然蹴り飛ばされる博士を前に、唖然とする一ノ瀬はじめ達の前に現れたのは。
「ジャッジメント」
そう、他でもない新世代型二次元人達を救出しに来たジャッジ・ザ・デーモンであった。
「しゅ、修司……!」「待って、真鍋くん! 今はジャッジ・ザ・デーモンよ」
思わず本名で呼びそうになる真鍋義久に、注意をする琴浦春香。
「みんな、無事か!」
ジャッジ・ザ・デーモンからの質問に、負傷してる鬼龍院皐月が答える。
「え、ええ、別に……みんな、命には別条はありません」
「皐月、お前……」
無理をして強がる鬼龍院皐月に、ジャッジ・ザ・デーモンは茫然とする。
一方で、ジャッジ・ザ・デーモンに蹴り飛ばされた博士は立ち上がり、自分を攻撃したジャッジ・ザ・デーモンを睨みつける。
「あれが、俺たちの呪われた遺伝子を摂取して変異した学者とやらか?」
ジャッジ・ザ・デーモンが質問すると、キャサリン・ルースが返答した。
「そ、そうなの! 私たちの目の前で、流子さんの血を摂取してスグあんな怪物に変異したの!」
「なるほどな……獣人、というよりは完全にキメラ化した獣……ビーストと補足するか」
ジャッジ・ザ・デーモンは冷静に思考を巡らせ、格闘技の様に構えると同時に新世代型二次元人達に言った。
「ここは俺が食い止める。お前たちは安全な場所まで避難していろ」
すると、このジャッジ・ザ・デーモンの忠告に鬼龍院皐月が反論した。
「な、何を言うんですか! 私は多少、怪我を負ってしまいましたが、助力くらいはできます……!」
が、これにジャッジ・ザ・デーモンは強く言い返す。
「ダメだ! お前達には傷ついてほしくない」
ジャッジ・ザ・デーモンの強い嘆願を聞き入れ、新世代型二次元人達はせめて遠くからジャッジ・ザ・デーモンとビーストの闘いを見守るのだった。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
ビーストは奇声を上げながら、ジャッジ・ザ・デーモンへと突進。しかしジャッジ・ザ・デーモンはビーストの突進を跳躍してかわし、そのままビーストを跳び越すと同時に、ビーストの首にグラップネルガンのロープを巻き付ける。
「ギュオオオッ!」
首を締め上げられて苦しむビーストだが、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストを気絶させようと更に力を強める。
しかしビーストは暴れ続け、何とか自身の体に乗るジャッジ・ザ・デーモンを振り払おうと、その巨体を壁や床に叩き付け出す。
「ッ!」
だがジャッジ・ザ・デーモンも必死にしがみ付き、ビーストの首を絞め続けた。
するとビーストは苦し紛れなのか、突然ジャッジ・ザ・デーモンを背負った状態のまま走り出し、前方の格子状のシャッターをも突き破って走り続ける。
そして猪突猛進の勢いのまま、ジャッジ・ザ・デーモンとビーストはガラスの塀を突き破って、吹き抜け構造になっているフロアに落下。
「じゃ、ジャッジ・ザ・デーモン!」
纏流子ら新世代型二次元人達が叫ぶ中、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストの首を締め上げるのに使ってたグラップネルガンを素早く回収し、改めてグラップネルガンで自分達が突き破ったガラス塀に引っかけて落下を免れようと試みる。
が、ジャッジ・ザ・デーモンが撃ったグラップネルガンの先端は当たり所が悪く、引っかからなかった。
「!(アン、ラッキー……!)」
グラップネルガンが上手く引っかからなかった現状に、己の不運さを痛感するジャッジ・ザ・デーモン。
だがジャッジ・ザ・デーモンは、今度はスーツに収納している翼を広げて滑空する事で落下速度を落として地上に緩く舞い降りようと試みる。
が、ジャッジ・ザ・デーモンが翼を広げようとした矢先、事もあろうにビーストが空中でジャッジ・ザ・デーモンに襲いかかった。
「あ!」
ジャッジ・ザ・デーモンがビーストに襲われるのを、二人が落ちた階層から見下ろしてた新世代型二次元人達は騒然とする。
そしてジャッジ・ザ・デーモンとビーストの二人は、そのまま真っ逆さまに地上に落下して、床へと激突してしまう。
ジャッジ・ザ・デーモンとビースト、双方ともに激しく床に叩き付けられて動かなくなった。
「じゃ……ジャッジ・ザ・デーモン?」
真鍋義久たち新世代型二次元人は、一階まで落下して動かなくなったジャッジ・ザ・デーモンを見下ろして静まり返る。
と、高度の超能力者である斉木楠雄が、自身の能力を駆使してジャッジ・ザ・デーモンの容態を念視してみると、斉木楠雄は顔色を一変させた。
「………………!」
「さ、斉木? どうしたんだ? ジャッジ・ザ・デーモンは、どうなったんだよ?」
蒼褪める斉木楠雄に親友の燃堂力が訊ねると、斉木楠雄は震える口で答えた。
「……心臓が、止まってる……!」
「え……?」
「ジャッジ・ザ・デーモンの、心臓が……止まってる」
この斉木楠雄の返答に、新世代型二次元人達は愕然と言葉を失った。
だがこの時、ジャッジ・ザ・デーモンの心肺は確かに完全に停止していたのだ。
誰もがジャッジ・ザ・デーモンの心肺停止に衝撃を受ける中、キャサリン・ルースら新世代型二次元人の女子たちは、ガラスの塀から身を乗り出して一階の床で動かなくなったジャッジ・ザ・デーモンに声をかけ続ける。
「ジャッジ・ザ・デーモン! 修司さんっ!」
「ジャッジ・ザ・デーモン、目を覚まして!」
「修司さーーん!」
だがジャッジ・ザ・デーモンが動くことはなかった。
新世代型二次元人の誰もがジャッジ・ザ・デーモンの死に衝撃を受けていた、その時。
なんとジャッジ・ザ・デーモンに代わり、その傍らで気を失ってたビーストが目を覚まし、再び活動し出したのだ。
「う、嘘だろ! アイツの方が目を覚ますのかよッ!」
真鍋義久たち新世代型二次元人は目を丸くして驚愕する。
そしてビーストの方は、上を見上げて新世代型二次元人たちの姿を視認すると、ビーストは鳴き声を発した。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
すると上階の新世代型二次元人達を視認したビーストは、なんと両腕を大きく広げた。するとビーストの腕の下から薄い膜が伸びて、腕下の膜はそのまま胴部と接着して翼の様に変化した。
「ま、まさか……飛ぶ気か!?」
翼を生やしたビーストを見て、鬼龍院皐月は驚愕する。
そして進化したビーストは、そのまま滑空する様に、各階のフロアを飛び越えながら、徐々に新世代型二次元人達がいる階へと上昇して接近してきた。
「く、来るぞ! 全員、また逃げるんだ!」
「で、でも姉さん! ジャッジ・ザ・デーモンは……!」
「今の我々には何もできない……! だが、このまま奴の餌食になるのをジャッジ・ザ・デーモンが許さないのは事実! 今は逃げ延びて、生きることが最優先だ」
「ッ……! ジャッジ・ザ・デーモン、すまねえ……!」
こうして鬼龍院皐月の指示に従い、妹の纏流子を始めとする一団は、再びビーストから逃走する行動へと戻るのであった。
[死と蘇生 命を散らす皇と蘇る鬼]
戦闘中、誤ってビーストと共に高所から一階まで落下して、床に叩きつけられたジャッジ・ザ・デーモン。しかも床に叩きつけられた衝撃で、ジャッジ・ザ・デーモンの心肺は停止してしまう。
一方、ジャッジ・ザ・デーモンと共に落下して床に激突したビーストは目覚めて活動し、なんと上層階にいる新世代型二次元人達の方へと向かうために、肉体が急激に進化して両腕と胴体にかけて薄い膜状の翼を生やした。
ビーストはビルの吹き抜け構造の各階を飛び越えて、上層階にいる新世代型二次元人たちの許へと飛行する。新世代型二次元人たちは、心肺停止したジャッジ・ザ・デーモンを気に掛けつつも、ビーストの追撃から逃れるために、その場を逃走するのだった。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
奇怪な鳴き声を発しながら新世代型二次元人たちを追走するビースト。一方で新世代型二次元人たちは再び必死になって逃走する。
「どうすんだよぉ! シャッターは下りて逃げ道は限られているし、肝心のジャッジ・ザ・デーモンは死んじゃったし!」
「真鍋! ジャッジ・ザ・デーモンがまだ死んだとは限らないだろ! 口が過ぎるぞ!!」
「で、でも、心肺が停止したって、死んだみたいなもんじゃんか……!」
逃走中、ジャッジ・ザ・デーモンの心肺が停止した現状に混乱する真鍋義久に、周りが更に不安がらないようにと口止めする鬼龍院皐月の二人が言い争っていると。
「ダメ! ここの扉も鍵が、かかってて開かない!」
先頭を走ってた新世代型二次元人の猪熊陽子たちが、行く手を阻む扉に悪戦苦闘してた。
すると其処に「退いてくれッ!」と、新世代型の枇々木丈が閉ざされた扉を強引に飛び蹴りで突破して開閉させる。
こうして新世代型二次元人達は、再び逃走するのだが。
「ギュオオオオオオオオオ……ッ!!」
後方からビーストの不気味な鳴き声が迫っていた。
「ッ、どうする!? もう俺たちは極制服もないから戦えないし……!」
「かといって、迂闊に戦って私たちの血を摂取させてしまえば、余計に進化してしまいますし……」
迫るビーストに、新世代型の猿投山渦に栗山未来は困惑する。
と、皆が現状に困惑してると、一人の男性が口を開いた。
「……私が……私が、アイツの囮になろう。その間に君たちは安全な所に!」
「なッ!? 何を急に言い出すんだ、皇!」
突然自分が囮役になると言い出す新世代型の法月皇に黒川冷が反論すると、皇は更に続けて申した。
「私にやらせてくれ。息子である仁がジャッジ・ザ・シティでやらかした大量殺戮の贖罪になるかは分からんが、君たち善良な二次元人が生き残れる選択を選ばせてくれ」
「法月、皇……!」
過去に大罪を犯して死んだ息子の法月仁に代わって償いをさせてほしいと嘆願する法月皇に、プロト世代の海道ジン達も唖然とするばかり。
しかし、そうして談義している間にも後方からビーストが迫って来ていた。
「ギュオオオ……ッ!」「く、来る!」
奇怪な唸り声を発しながら徐々に距離を縮めてくるビーストに、新世代型の室戸大智は恐怖する。
「さあ! ここは私が時間を稼ぐから、君らは早く!」
「皇さん……」
法月皇の決意に、宮うつつも力なく頷くしかできなかった。
そして全員、先ほど枇々木丈が蹴破った扉を潜って、その場から逃げ去っていくが。
「法月皇!」「!」
逃走前に、黒川冷が法月皇に一言。
「死ぬなよ」
黒川冷からの一言に、法月皇は力強く頷いて応える。
そうして全員が扉を潜って逃げると、残った法月皇は蹴破られた扉に鉄の棒を差し込んで、簡易的に扉を閉じると、火災時に使用する為に常備されている消火器を手に取って構えた。
法月皇が消火器を武器に構えていると、彼の目の前にビーストが現れ、少しずつ距離を縮める。
「………………!」
恐れおののく法月皇だが、先に逃げた同胞の新世代型二次元人の為に、そして何より生前大罪の数々を犯した息子に代わって贖罪する為に、消火器一本で迫るビーストに立ち向かう。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
一方のビーストは、前方で仁王立ちしている法月皇に狙いを定めて一気に速度を速めて、駆け足で一直線に法月皇へと猛進。それを前に法月皇は抱えてた消火器のホースを右手に持つ。
そしてビーストが法月皇の目前まで迫った瞬間、法月皇はビーストの顔面目掛けて消火器の粉を噴射して応戦。大量の粉にビーストは視界を奪われ、立ち往生する。そこに法月皇が空になった消火器を振り上げて、何度も何度もビーストに消火器で殴り掛かる。が、ビーストの強靭な鱗で覆われた体には、打撃は効果がなく、次第に法月皇の体力の方が底を着いてしまった。
「はぁ、はぁ……」
息を切らす法月皇。すると、ちょうど舞い上がる消火器の粉が落ち着いて、視界を取り戻したビーストが、息を切らしている法月皇を睨み付ける。
「はぁ、はぁ……!」
ビーストに睨まれるものの、息が切れて体力が消耗した法月皇には逃げる力が残ってなかった。
そしてビーストは体力が落ちている法月皇に容赦なく襲い掛かった。
「うわあああああああああッ!!」
法月皇の絶叫、いや、断末魔が響き渡る中、ビーストは遠慮なく獲物である法月皇の肉体を貪り食うのだった。
「! 法月皇……!」
一方その頃、法月皇に逃がしてもらった黒川冷たち新世代型二次元人は、法月皇の断末魔を聞いて彼の生存が絶望的であると知って愕然とする。
しかし今は安全圏に逃げるしかない新世代型二次元人たちは、懸命に足を進めるのだった。
その頃、REVOCS本社の一階まで落下して心肺停止したジャッジ・ザ・デーモンはというと。
「……ピーー、心肺停止してから時間が経過、蘇生装置を起動します。3,2,1……」
「ウッ……!!」
予めデーモンスーツに搭載されていた心肺蘇生装置によって、蘇生用の電撃が心臓に流れた事で無事に蘇生されたジャッジ・ザ・デーモンが息を吹き返した。
「うぅ……や、やはり……心肺蘇生装置は体に負荷がかかる。生き返るのも楽じゃないな、ハハ……ドラゴンボールで生き返るのとは訳が違う。ウッ……ど、どちらにしろ、もうデーモンスーツに蘇生装置は取り付けない方がいいかもな」
目覚めたジャッジ・ザ・デーモンは、冗談交じりに愚痴を呟きながらも、ビーストの討伐とビーストに追走されてる新世代型二次元人たちの保護に向かう為、グラップネルガンを射出して高層階へと移動する。
最後に新世代型二次元人たちを目視した階層まで上がったジャッジ・ザ・デーモンは、大きくて紅い目からなるレーダー視界を駆使して、ビーストの足跡を発見する。
(この先か……!)
ジャッジ・ザ・デーモンは、ビーストの足跡を発見すると、それを辿ってビーストの追跡を開始するのだった。
そしてビーストの足跡を追走するジャッジ・ザ・デーモンは、酷く血生臭い現場へと辿り着いた。
その現場こそ、先ほど法月皇がビーストと対峙した現場だった。
現場には、大量の血と肉片が飛散しており、凄惨な状景であった。
「………………!」
無残にも食い散らかされた法月皇の死体を目の当たりにして、ジャッジ・ザ・デーモンは言葉を失う。
「……! 許せ、法月皇」
そうジャッジ・ザ・デーモンは現場に残された法月皇の惨殺死体に言い残すと、ビーストの追跡を再開する。
が、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストの足跡に残された変化に気付く。
「! 足跡が肥大化してる……しかも、爪などが発達しているようだ」
この状況からジャッジ・ザ・デーモンが導いた答え、それはビーストが法月皇の肉体を摂取した事で新たに、そして攻撃的に進化してしまった状態なのだと推理した。
「いかん……!」
ジャッジ・ザ・デーモンは急ぎ足を速めた。進化したビーストは新世代型二次元人たちへの追撃を更に強めている可能性があるからだ。
[進化し続ける獣]
一方その頃、新世代型二次元人たちは。
いくつか班を作り、何回かに分かれてエレベーターに搭乗し、屋上へと向かってた。
「お、屋上に出て、どうすんだよ!?」
「今さっき、聖龍隊総長バーンズに連絡を入れた! 避難用のヘリポートから、全員救出してくれる手筈だ!」
半ば混乱する新世代型の真鍋義久に、鬼龍院皐月が冷静に伝える。
と、新世代型二次元人たちがエレベーターで上がれる階層まで辿り着き、あとは階段でヘリポートのある屋上まで駆け抜けていた、その時。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
なんとエレベーターの空洞を滑空しながら駆け上り、最上階の鉄の扉を強引に破壊して追跡してきたビーストの鳴き声が響き渡る。
「き、来たぞ!」
プロト世代のギュービッドが叫ぶ中、全員息を切らしながらも階段を駆け上っていく。
するとヘリポートまでの非常階段への出入り口へと駆け込んできた、最後尾の黒川冷が急いで鉄製の扉を閉めて、ビーストが進入できないようにした。
「こ、これで何とか……!」
そう呟いて黒川冷が階段を駆け上った、その時。
激しい轟音と共に階段への出入り口を塞ぐ鉄製の扉が湾曲した。
「ひっ!」「だ、大丈夫だ。大きくなりすぎて、扉も潜れないだろう……」
小さく悲鳴を上げて怯える棗鈴に、扉を閉めた黒川冷が宥める。
が、次の瞬間。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
なんと鉄製の扉の周りのコンクリの壁ごと、ビーストは頑丈な頭蓋から繰り出した頭突きで破壊して、非常階段へと進入してきた。
「うわあッ!」
コンクリの壁ごと頭突きで突破したビーストを目の当たりにして、朝比奈コウタたちは絶叫し大混乱。
そんな巨大化し過ぎて階段への扉を通過できないが、コンクリートの壁を頭突きで破壊して追跡を続けるビーストを視認して真鍋義久が愕然とする。
「アレはもう、ケダモノなんかじゃない………………恐竜だ!!」
まるでパキケファロサウルスの様な頑丈な頭蓋に、ティラノサウルス並みの巨大な体躯の体つきを見て、新世代型二次元人たちは恐怖で階段を駆け上る。
そして恐竜と動物と人を足して割った様な体つきに変異したビーストは、咆哮を上げながら新世代型二次元人たちを追走するのだった。
そうこうしている内に、新世代型二次元人たちは何とか屋上のヘリポートへと辿り着く事ができた。
「はぁ、はぁ………………! ね、ねえ、あれ見てよ……!」
息を切らして屋上の手すりに寄りかかる森谷ヒヨリが見下ろす先を、皆も見下ろしてみると、地上には人だかりが出来ていた。
「先ほどREVOCS本社の警備員から、警察及び聖龍隊に通報が入りました! このREVOCS本社内で突如、見た事もない怪物が現れ、屋内を暴れ回っているとの事です。警備員の話によれば、現在社屋にいるのは、あの有名な新世代型二次元人達だという事ですが、やはり今回の怪物騒動も新世代型二次元人が関与しているのでしょうか……」
地上でカメラに向かってリポートする女性アナウンサーを始めとした群衆を見下ろして、新世代型二次元人達が驚いていると鬼龍院皐月が鬱憤を呟いた。
「くッ、本社の警備員め。怪物が出たからと、無駄に大騒ぎしたみたいだな……!」
この騒ぎでまた新世代型二次元人への風評被害が増すと懸念する皐月。
と、皆が地上の群衆に目を向けていると、そこにコンクリートの床を突き破ってビーストが姿を現した。
「き、来たッ!!」
来襲するビーストに、イオリ・セイが怯え切った様子で叫ぶ。すると顔を覗かせたビーストは、その爬虫類の様な鋭い眼光で睨み付け、獲物を見定める。
『ッ………………!!』
徐々に間近へと接近する巨大なビーストを前に、新世代型二次元人達は怯えて身動きできずにいた。
すると其処に。
「おーーい、お前らーーッ!」「ばっ、バーンズ!」
聖龍隊総長であるバーンズことメタルバードが上空から駆け付け、メタルバードを視認した真鍋義久達は歓喜した。
だが、間の悪い事に、メタルバードよりも先に報道関係のヘリがREVOCS本社屋上へと接近してしまう。
「あ、やはり新世代型二次元人です! 今回の騒動の影にも、例の小田原修司のクローンである新世代型二次元人が関与していました!」
「あ、危ないぞ! 早くここから離れるんだ!!」
ヘリの中からリポートする男性アナウンサーたちに、屋上の鬼龍院皐月は危ないから早く離れる様に檄を飛ばすのだが。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
報道用のヘリが鬱陶しく感じたのか、ビーストはなんと身体を覆う硬い鱗をヘリ向けて飛ばしてきた。
「う、鱗を飛ばした!?」
自身の鱗を武器の様に飛ばすという技を目の当たりにし、騒然とする真鍋義久ら新世代型二次元人。
そして硬い鱗は、くないの様にヘリへと突き刺さり、更には混迷する新世代型二次元人やビーストの映像を激写しようと身を乗り出したカメラマンや、操縦士にも無数に突き刺さって重傷を負わせてしまう。
「ぎゃあっ!」
「い、いけない! 腕に突き刺さって、上手く操縦できない……!」
負傷したカメラマンと操縦士、そして男性アナウンサーが搭乗するヘリはバランスを崩し、思わずREVOCS本社へと激突する寸前だった。
誰もがヘリの激突と墜落を連想した、その時。それを目の当たりにしたメタルバードが急いで、バランスを崩すヘリと社屋の間に入り込み、激突を防ぐ。更に伸縮自在の両腕で、一方はヘリを、一方は社屋の手すりを掴んで、ヘリの墜落を辛うじて阻止した。
「お、重い……!」
しかしメタルバードは怪力という訳ではないので、そう長時間はヘリを掴んだまま放さないというのは困難だった。
しかもメタルバードがヘリの墜落を防いでいる間、ビーストは新世代型二次元人へと迫ってた。
「も、もうダメなのか……!」
涙目で自分達はビーストに食い殺されるのかと、恐怖心で胸が締め付けられる真鍋義久たち。
誰もが、自分たち新世代型二次元人はビーストに食い殺されるのかと思った。
その時であった。
[屋上での死闘]
「ギュガアッ!」
新世代型二次元人へと襲い掛かろうとしたビーストの顔面に、強烈な飛び蹴りが直撃してビーストを怯ませる。
そしてビーストの顔面に蹴り込んだ存在は、新世代型二次元人達の前へと着地してビーストと対峙する。
「じゃ……ジャッジ・ザ・デーモン!!」
「生きてた……生きてたんですね!」
新世代型二次元人の真鍋義久や瀬名アラタ達が感激する中、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストと向き合ったまま背後の新世代型二次元人達に詫びた。
「すまない、お前達……」
「も、もう良いですって! 良かった、生きてて……」
「いや、違う」
「?」
「……すまない。法月皇は……間に合わなかった」
そうジャッジ・ザ・デーモンは、背後の琴浦春香たち新世代型二次元人に謝罪した。
するとこれを聞いた鬼龍院皐月が唐突にジャッジ・ザ・デーモンに怒鳴った。
「気落ちしてる場合ではないぞ、ジャッジ・ザ・デーモン! 貴殿が闘わずして、誰がこの状況を打破する! 過去の失敗ばかりを悔いるのではなく、現状を打開するべきだ!!」
「皐月……!」
鬼龍院皐月からの激励に、ジャッジ・ザ・デーモンは頷くと、迫ってくるビーストに闘いを挑む。
まずジャッジ・ザ・デーモンは、ティラノサウルスの様な顔付きに変貌したビーストの顔面に何発も拳を叩き込み、殴り続ける。
しかしビーストは、ジャッジ・ザ・デーモンの拳を顔面で受け止めつつ、怯みながらもジャッジ・ザ・デーモンの左足をゴリラの様な剛腕で捕まえると、そのままコンクリートのヘリポートに何度もジャッジ・ザ・デーモンを叩き付ける。
「ぐはッ!」
何度もコンクリートの床に体を叩き付けられ、流石のジャッジ・ザ・デーモンも悶絶してしまう。
「ジャッジ・ザ・デーモン!」
琴浦春香たち新世代型二次元人が叫ぶ最中も、ビーストはジャッジ・ザ・デーモンをオモチャの様に振り回して、遂には屋上の外へと投げ飛ばしてしまう。
だがジャッジ・ザ・デーモンは、先ほどメタルバードが掴んで墜落しそうになった報道用のヘリの上に着地した。
「メタルバードか!」
「じゃ、ジャッジ・ザ・デーモン……! 頼む、早くヘリから降りてくれ。オレの腕力じゃもたない……!!」
メタルバードからの返答に、ジャッジ・ザ・デーモンは即行でグラップネルガンを用いてヘリポートへと舞い戻った。
一方その頃、ジャッジ・ザ・デーモンという邪魔者が居なくなった事で、ビーストは今まさに新世代型二次元人達に喰らい付こうと口を開けていた。
が、そんなビーストに、グラップネルガンで曲線を描く様に舞い戻ってきたジャッジ・ザ・デーモンが、鋭い蹴りを入れると、ビーストは激しく蹴り飛ばされて横転する。
横転したビーストに、ジャッジ・ザ・デーモンはすかさずグラップネルガンのロープを巻き付けて拘束。ビーストの動きを封じた。
「これで、終わりか……」
ビーストを縛り上げて終わりかとジャッジ・ザ・デーモンが思った次の瞬間、なんとビーストは全身の鱗を逆立てて、その鋭利な鱗で500キロの重さを吊り上げられる強度を持つロープを切ってしまう。
「あ、あれは……!」
ビーストが鱗を逆立てた様子を見て、真鍋義久たちはビーストが鱗を飛ばしてくる前兆だと察する。
「避けて、ジャッジ・ザ・デーモン!」「!?」
キャサリン・ルースの一声に、ジャッジ・ザ・デーモンも気付くが。ビーストは鋭利な鱗をくないの様に飛ばしてきた。
思わず両腕で人体の弱点である顔を防ぐジャッジ・ザ・デーモンだったが、ビーストが飛ばしてきた鱗は防弾性のあるデーモンをも容易く貫通し、更にはジャッジ・ザ・デーモンの右足に鱗が突き刺さってしまった。
「ッ!」
全身を、特に右足に鱗が突き刺さった激痛に悶絶するジャッジ・ザ・デーモン。
と、そこにビーストはコンクリの壁をも突き破れるほどの威力を誇る頭突きでジャッジ・ザ・デーモンに突進。そのままジャッジ・ザ・デーモンに頭突きを喰らわす。
『きゃあっ!』
ジャッジ・ザ・デーモンごと頭突きで突進してくるビーストの猛進に、新世代型二次元人達は驚いて右に左へと逃げ惑う。
そしてジャッジ・ザ・デーモンに頭突きを喰らわしたビーストは、そのままの勢いでジャッジ・ザ・デーモンを貯蔵タンクに押し潰した。
「スーツ破損、47%を切りました」
ビーストの頭蓋と貯蔵タンクに挟まれたジャッジ・ザ・デーモンに、デーモンスーツの内臓コンピューターが破損の割合を告げる。
と、その時だった。ジャッジ・ザ・デーモンで押し潰された貯蔵タンクから液体が漏れて、それがビーストの身体に降りかかると。
「ギュアッ」
なんとビーストは怯んでは、ジャッジ・ザ・デーモンから後退してしまう。
鬼龍院皐月が目を凝らして貯蔵タンクを注視してみると、貯蔵タンクに詰め込まれていたのは、研究用に使用する液体窒素だった。
「もしや……! あの怪物は冷気に弱いのか?」
ビーストの弱点に気付いた鬼龍院皐月は、身を乗り出してジャッジ・ザ・デーモンに伝える。
「ジャッジ・ザ・デーモン! その怪物は冷気に弱い! 後ろの貯蔵タンクに積まれてる液体窒素を使えば倒せるかもしれない!」
が、鬼龍院皐月がジャッジ・ザ・デーモンに大声で伝えると、ビーストも鬼龍院皐月に気付いて彼女に顔を振り向かせる。
「!」
爬虫類の様な鋭い目で睨まれて、一瞬ばかし動揺してしまう鬼龍院皐月。
が、そんな鬼龍院皐月に歩もうとするビーストに、ジャッジ・ザ・デーモンは死に物狂いでしがみ付いて、標的の対象を自分に向けさせる。
「お前の相手は俺だ……!!」
新世代型二次元人達を傷付けさせたくない一心で、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストにしがみ付く。が、ビーストは満身創痍のジャッジ・ザ・デーモンを軽々と振り解いては放り投げてしまう。
「ぐッ!」
放り投げられて、コンクリの壁に叩き付けられるジャッジ・ザ・デーモン。
その頃、先ほどビーストの攻撃を受けて操縦不能になって墜落寸前になったヘリを伸ばした腕で捕まえて、辛うじて落下を防いでいたメタルバードは。
「ぐぎぎ……! あ、明日は筋肉痛になりそうだぜ……!!」
腕が引き千切られそうな思いで手を放さずに頑張るメタルバード。
すると其処にメタルバードと同じ聖龍HEADの木之元桜がフライ(翔)のカードで上空から飛来して駆け付けてきてくれた。
「バーンズっ!」
「さ、さくら……! 頼む、パワー(力)のカードで、オレに怪力を与えてくれ……!!」
「そんなんじゃダメだよ。もっと考えてカードを使わないと……」
そうメタルバードと会話するさくらは、ここでメタルバードが掴んで放さないでいるヘリにカードを使用した。
「フロート(浮)!」
さくらが此処で発動させたフロート(浮)のカードの効力で、ヘリはふわふわと軽くなり、バーンズの腕力だけでも軽々と持てるようになった。
「な、なるほど。重さを軽減させりゃ楽だもんな……」
「それじゃバーンズ、一緒にヘリを地上に下ろすわよ」
「あ、ああ……」
こうしてメタルバードは木之元桜と共に、ヘリを静かに少しずつ地上へと下ろすのだった。
所は戻って屋上のヘリポート。
いくらビーストの弱点が冷気だと解っても、そのビーストにオモチャの様に扱われ、屋上内の建造物やコンクリの床に何度も叩き付けられるジャッジ・ザ・デーモンは苦戦していた。
「こ、このままじゃ……!」
朦朧とする意識の中、ジャッジ・ザ・デーモンはこのままでは新世代型二次元人達の命が危ういと認知するが、体が思うように動かない。
「スーツ破損、70%を越えました。危険です、危険です……」
ビーストにデーモンスーツを破壊され尽くされ、危険な状態だと内臓コンピューターも報せる。
すると今までジャッジ・ザ・デーモンとビーストの戦闘を見守ってたプロト世代のチョコとギュービッドが覚悟を決めた。
「ギュービッド様、いいですね……!」「ああ、いくよチョコ!」
二人は琴浦春香などの新世代型二次元人達の呼び止めも聞かずに、ジャッジ・ザ・デーモンを苦しめ続けるビーストへと接近する。
「今だチョコ!」「はい!」
二人はビーストを挟み込むような立ち位置に立つと、そこで黒魔法を発動させてビーストの動きを完全に抑制した。
「す、スゲェ……! 怪物の動きを止めたぞ」
真鍋義久たち新世代型二次元人が驚く最中、当のチョコとギュービッドは汗を流しながら苦しそうに訴えた。
「で、でも……私たち二人の魔力じゃ、押さえ込むだけで精一杯……!」
「じゃ、ジャッジ・ザ・デーモン……! 此処までお膳立てしてやったんだ、さっさとこの怪物を何とかしてくれ……!!」
チョコとギュービッドからの訴えを聞いて、ジャッジ・ザ・デーモンは朦朧とする意識の中で、二人が押さえ込むビーストに駆け寄る。
「障害とは文字通り……生涯を共に付き合っていかねばならないんだ!!」
障害を持つゆえに怪物へと変異した博士に訴える様に、ジャッジ・ザ・デーモンはビーストに二脚からの飛び蹴りを喰らわして、ビーストを先ほど自分が激突させられた液体窒素入りの貯蔵タンクへと蹴り飛ばす。
ジャッジ・ザ・デーモンに蹴り飛ばされて貯蔵タンクに激突するビースト。だが此処でジャッジ・ザ・デーモンは度重なる痛手と激痛で、思わず体がよろめいてしまう。
「ああっ!」
よろめくジャッジ・ザ・デーモンを目の当たりにして、琴浦春香たち新世代型二次元人は絶叫する。
その一方で蹴り飛ばされたビーストが今にも起き上がり、再び新世代型二次元人たちに襲い掛かろうとする。
この戦況に、ジャッジ・ザ・デーモンだけに闘わせて無理させているのを心苦しく感じてた纏流子が走り出した。
「ジャッジ・ザ・デーモンだけに闘わせられねえ!!」
そう叫びながら、纏流子は聖龍隊から配布されている日本刀を構えて跳躍する。
そして跳躍した纏流子は、跳び上がった先に在る貯蔵タンクに日本刀を突き刺して、貯蔵タンクを切り裂いた。
「うおりゃあああッ!!」
雄叫びと共に貯蔵タンクを切り裂く纏流子。すると流子が切り裂いた貯蔵タンクの切れ目から、大量の液体窒素が零れ出し、それが大波の様な勢いでビーストに降り注ぎ、浴びせられた。
「ギュオオオオオオオオオ……ッ!!」
大量の液体窒素に押し流され、そして浴びたビーストは屋上の端まで押し出されて動かなくなった。
よく見てみると、ビーストは完全に液体窒素で凍り付いて、屋上の端で不安定に揺れていた。
「ジャッジ・ザ・デーモン!」
ビーストを凍らせて安心したチョコや琴浦春香たちは、急いで重体のジャッジ・ザ・デーモンへと駆け寄る。
と、その時。屋上の端に引っかかってた凍り付いたビーストが、その重量で屋上の端から真っ逆さまに地上へと落下していった。
一方、地上では。
「ふぅ~~……やっと下ろせた」
「安全にヘリを下ろせて良かったわ」
ビーストに攻撃されて墜落しそうになったヘリを、メタルバードと木之元桜が安全にヘリを地上に下ろし終わってた。
と、そこにREVOCS本社の屋上を見上げてた野次馬の一人が声を上げる。
「ん? なんだアレ?」
皆が一斉に真上を見上げてみると、彼らの視界には屋上から真っ逆さまに落下してくる凍て付いたビーストが映った。
「な、なんだアレ!」「落ちてくるぞ!」
混乱する野次馬達。
「落ちてくるぞーーッ! 離れろ、離れろ!」
メタルバードも真っ逆さまに落下してくる凍て付いたビーストに驚き、周辺の人々に避難を呼びかける。
そして地上の人々が避難した直後、凍て付いたビーストは地面へと墜落し、激突。その瞬間に粉々に砕け散った。
[後悔だけが残る]
苦戦の末にビーストを倒したジャッジ・ザ・デーモンと新世代型二次元人たち。
「ジャッジ・ザ・デーモン! ジャッジ・ザ・デーモン!」
「いかん! 傷口からの出血が酷い!」
琴浦春香や鬼龍院皐月達に囲まれるジャッジ・ザ・デーモンは、出血多量で意識が朦朧としていた。
猿田学と磯貝ゲンドウがジャッジ・ザ・デーモンの肩を担ぎ、その先頭を真鍋義久が掛け声を発して道を切り開く。
「急げ! 急がないと、出血多量で死んじまう!」
皆揃って、ジャッジ・ザ・デーモンの生命を気に掛ける。
その頃、地上では。
「はーーい、近寄らないでね。離れて離れて」
マスコミや野次馬を遠ざけつつ、地上に落下して粉々になったビーストの粉砕した肉体を回収する聖龍隊の特殊処理班。
マスコミがそんな聖龍隊にカメラを向けていると、負傷したジャッジ・ザ・デーモンを担いで運ぶ新世代型二次元人たちがREVOCS本社から出てきた。
「退いてくれ! ジャッジ・ザ・デーモンが怪我をしてるんだ! 退いてくれ!」
真鍋義久が必死に呼びかけるも、好奇の眼差しでマスコミや野次馬が群がり、思うように前には進ませてくれない現状に新世代型二次元人は苛立つ。
そして辛うじて、この緊急事態に聖龍隊が招集した救急車にジャッジ・ザ・デーモンを搭乗させると、そこに同じく現場に駆け付けた聖龍HEADのナースエンジェルも乗り込む。
「私も行くわ」
そう言ってジャッジ・ザ・デーモンが寝かせられる救急車に乗り込むナースエンジェルに、新世代型二次元人の琴浦春香は言った。
「な、ナースエンジェル、あとはお願い……」
「ええ、あとは任せて」
そう励ましながら琴浦春香に返事するナースエンジェルは、ジャッジ・ザ・デーモンが乗せられた救急車に同乗して走り去るのだった。
その一方で、聖龍隊は変異体が出現したREVOCS本社内を徹底的に探索し、異常がないか入念に調べてた。その傍らで、彼らは無残にも食い殺されてしまった法月皇の死体を発見する。
「ひ、ヒデェ……!」「ほとんど食い千切られてる……」
その惨状は目を覆いたくなるほどだったという。
この事件は、後に「ビースト事件」と呼ばれ、聖龍隊でも国内外問わずトップシークレットとした。
「……何ゆえ、トップシークレットにしたのですか?」
聖龍隊本部で、新世代型委員会の代表を務める鬼龍院皐月が問うと、バーンズが神妙な顔で答えた。
「旧世代やプロト世代といった、一般の二次元人に新世代型二次元人の遺伝子を投与すれば怪物に変異してしまう事実を公表すれば、お前たち新世代型二次元人への風評がますます悪化する。今後はオレたち聖龍隊でも徹底的に新世代型二次元人の遺伝子研究は禁止にし、同じ被害が出ない様に取り決めるしか手立てがないんだ」
「………………」
バーンズの説明を聞いて、鬼龍院皐月は黙って受け入れるしかなかった。
三次元人の、それも小田原修司の遺伝子と近い遺伝子を持つ新世代型二次元人の遺伝子を、一般の二次元人に投与すれば怪物になるという事実は、確かに多くの新世代型二次元人の為にも機密にする必要があるのは明白だからだ。
そして事件から数日後。
ようやく少しではあるが、ビースト事件の騒動が落ち着いてきた頃。
「ケッ、胸糞悪いぜ。マスゴミの連中、書きたい放題じゃないか」
「こら、流子。今日はやっと開かれる葬式なんだ。そんな毒舌吐いてはいけない」
新聞や報道を見て腹を立てる纏流子に、姉の鬼龍院皐月が注意する。
纏流子がテーブルに投げ付けた新聞には大きく以下の文字が刻まれていた。
【小田原修司のクローン、新世代型二次元人がまたしても問題を!】
【奇怪な怪物、発生の陰にはクローンである新世代型が!?】
【怪物に襲われ、新世代型二次元人の一人が死亡!】
【ジャッジ・ザ・デーモン、罪なき一般の新世代型二次元人を救えず!】
そして鬼龍院皐月や纏流子たち新世代型二次元人を始め、海道ジンやチョコにギュービッド等のプロト世代に加わり、ジャッジ・ザ・デーモンでもある小田原修司も葬式に参列する。
誰もが一人一人、事件の最中、ビーストに食い殺された法月皇の墓前に花を供える。
そんな誰もが悲しみに暮れる中、鬼龍院皐月と黒川冷が話し合う。
「法月皇が死んだ今、エーデルローズを管理する人間はいない訳だ」
「ああ、仁も既に死んでいる今、エーデルローズを管理する人間は不在だ」
「それで何だが……もし其方たちが良ければ、エーデルローズは今後、私が代表を務める新世代型委員会の管理下に置いても大丈夫か?」
「なに!? 良いのか、鬼龍院皐月」
「ああ、万が一の事を考えて私がエーデルローズを管理下に置いておく。もう死んだとはいえ、法月仁の様な外道な輩にエーデルローズを任せる訳にはいかないからな」
「ありがとう、恩に着るよ。鬼龍院皐月」
鬼龍院皐月と黒川冷が話し合っている最中も葬式は続けられ、そして終わった。
だが、葬式が終わった直後、新世代型二次元人たちは一人、先に花を供え終わった故に、ベンチに腰を下ろす小田原修司に注目した。
修司は一人、後悔の念に蔑まれてた。ジャッジ・ザ・デーモンとして罪なき命を救う覚悟を決めていたにも関わらず、法月皇を救えなかった自分の無力さを痛感してた。
「……修司さん……」
そんな一人で落ち込修司に、琴浦春香が声をかける。顔を上げて振り向く修司に、琴浦春香は優しく話し掛けた。
「修司さんは頑張ったよ、頑張ったんだよ……それは私たち全員が解ってるから」
琴浦春香の言葉に、修司は視線を彼女の後方の新世代型二次元人達に向けると、彼らも一同に修司に優しい眼差しを向けてくれてた。
「……ありがとう。お前達のその言葉だけでも、十分救いだ」
そう琴浦春香に言う修司だが、彼は続けて言った
「だが……結局、世の中は結果が全てだ。俺が法月皇を救えなかったのは紛れもない事実。この事実は変えられない」
「そんな……!」
悲観する琴浦春香に、修司は思いの丈を吐き出すように語る。
「俺がやる事なす事、全部が中途半端に終わってしまう。今回もそうだ、法月皇を救えず、死なせてしまった。俺がやろうとしている善行は、何もかも半端に終わる」
そんな落胆する小田原修司に、琴浦春香は自身の顔を修司の顔に近づかせ、額を合わせて言葉をかけた。
「もう、一人で何もかも背負い込まないで。私たちは貴方の分身、その苦しみを私達に……家族である私たちにも分けてください」
「………………!」
心の底から慈愛の精神で修司に訴える琴浦春香の台詞に、修司は感激する。
失敗したとき、一緒に泣いてくれる家族として、修司を受け入れてくれてる新世代型二次元人たち。そんな彼らの為に自分は何ができるか、何を続けられるか。小田原修司の疑念や迷いは吹っ切れた。
と、その時だった。鬼龍院皐月が携帯している聖龍隊の無線機が鳴った。それに皐月が出ると、無線の向こうから大勢の人々の阿鼻叫喚と共に聖龍隊の隊士の声が聞こえてきた。
「本部へ、本部へ! 街中に突如、スレンダーマンが二体同時に出現! 背中から生えた鋭利な触手で一般市民を襲っています! 現場の隊士だけでは歯が立ちません! 至急応援を!」
街中に突如、
「修司さん!」
そんな急ぎ足の修司を、琴浦春香が呼び止めて一言。
「ご武運を」「………………」
琴浦春香からの一言に、小田原修司は無言で頷くと駆け足でその場を立ち去った。
そして墓場の駐車場に停めてあるバイクに跨ると、それを走らせて現場へと急いだ。
一方の現場では、既に二体のスレンダーマンによって現場は混乱してた。
其処に聖龍隊の一般隊士が被るヘルメットを装着した修司が、一般隊士に装備されている日本刀を抜刀して、一人暴れ回る二体のスレンダーマンに斬りかかっていく。
小田原修司の、ジャッジ・ザ・デーモンの活躍は、まだ終わらない。
同じ日の夕方ごろ。REVOCS本社ビル脇の道路、そう、ビーストが落下して粉々に砕け散った道路で、一人の白衣を着た中年の男性が、道路のアスファルトにこびり付いた肉片を採取して、小さいケースに収納してた。
「これが………………ビーストの肉片か」
ビーストの変異にまつわる事件、いや悲劇は、まだ続く。