聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回の話は、ジャッジ・ザ・デーモンと聖龍隊の英雄達に依頼をする、ヒーロー嫌いの刑事の物語。
 主にジャッジ・ザ・デーモンと、ヒーローアカデミアの面々が活躍します。



大岩刑事、危機一髪!

[ヒーロー嫌いの刑事]

 

 夢と希望に満ち溢れる一方、その反面では欲望と犯罪が渦巻く国アニメタウン。

 そのアニメタウンは、今や凶悪化している犯罪に対応するべく、聖龍隊が軍隊と警察の二つの組織を兼任している。

 無論、聖龍隊が警察の職務を全うする中でも、それ以前から警察の職務に就いている人物もいる。

 今回は、そんな昔から警察職に就いている人物から物語は始まる。

 

 アニメタウン警察本部。

 アニメタウンの全警察機関の中心である本部。その屋内では警察官がポスターを貼るなどの雑務を行ってた。

「ふんふんふん~♪ おや、大岩刑事、今日もご苦労様です」

「おうっ」

 ポスターを壁に貼る警察官に返答するのは、刑事である大岩要。大岩刑事は警察官が貼ってるポスターが気になって問い掛けた。

「何を貼ってるんだ?」

「ああ、聖龍隊が新たに発行した犯罪抑制用のポスターですよ。今回は期待の新人、ヒーローアカデミアの若者達がメインのポスターなんです」

「ふんっ、ガキのヒーローがねえ……」

「前のポスターも気に入ってたんですけどね。ジャッジ・ザ・デーモンの【犯罪は、必ず裁きが待っている】ってやつ。僕、ジャッジ・ザ・デーモン意外と気に入ってるんですよ。ダークヒーローって、ゴッサムシティのバットマンみたいでカッコいいじゃないですか」

 すると、この警察官の話を聞いた大岩刑事は、口に咥えてた煙草を摘まむと、そのまま火のついた煙草をポスターに大々的に写されている緑谷出久の顔に押し付けて焼いてしまう。

「あ、ちょっと! 何するんですか、刑事!」

 慌てる警察官に、大岩刑事は傲慢な態度で強く言った。

「いいか? ヒーロー、それもただのガキが事件解決するなんて、俺たち警察官の職務を妨害しているだけなんだよ。ハッキリ言や、ヒーローも異常者(ヒール)も似た者同士で、どっちも危険な連中には違いないんだよ」

 そう吐き捨てると、大岩刑事は男性用ロッカー室へと足を運んで行ってしまう。

 唖然とする警察官に、同じ管轄内の、大岩刑事の同僚の刑事が説明した。

「あんまり気にするな。大岩は、ヒーローとかジャッジ・ザ・デーモンみたいなのは警察の職務の障害になると思ってるんだ。特に子供や元連続殺人鬼に警察の真似事なんてされたくないんだろう」

「そ、そんな……」

「まあ、俺も正直、子供なんかがヒーローなんてやるもんじゃないと思ってるけどな。子供に犯罪の解決なんて危なすぎる」

 大岩刑事だけでなく、多くの警察官があまりヒーローという存在に難色を示しているのが現状だった。

 

 それから大岩刑事は本部から家へと帰宅する。

 大岩刑事が自宅として賃貸しているのは、見た目は豪華な外見のマンション「山邊コープ」だ。

 土砂降りの中を帰宅した大岩刑事は、玄関先のマットで靴裏の汚れや雨だれを落とさずに、そのままマンション内へと進む。

 そして玄関に在る投函ポストに入っている投函物をいくつか視認しながらエレベーターに乗り込み、自分の部屋の階へと上がる。

「チッ、またか」

 投函物を読んで、大岩刑事は舌打ちした。投函物である手紙には、このような内容が記されていた。

【街から出てけ!】【命が惜しければ、姿を消せ!】

 という、脅迫めいた内容の手紙だった。

 しかし警察官である以上、この様な脅迫文は珍しくないと思考したのか、大岩刑事はあまり深く考えてなかった。

 そんな雨粒をポタポタと床や廊下に垂れ流し、泥まみれの靴で足跡ばかり残す大岩刑事が自室の前まで歩んだ、その時。

「大岩さん!」

 と、大岩刑事を呼びつける声が。大岩刑事が振り返ると、其処にはマンションの管理人にして大家の山邊という男性が立っていた。

「大岩さん! 毎回毎回言ってるでしょうがッ! 帰ってきたら靴は玄関先のマットで泥を落として、雨でずぶ濡れなら少しでも拭いたりして、濡れた服でマンション内を歩かないって! また苦情が来てるんですよ! あなたの部屋から異臭がするだの、廊下が毎日汚いだの!」

 大家からの文句に、大岩刑事は無表情で言い返した。

「うっせえな、誰かが死ぬ訳じゃねえんだし……何より、それ以上喧しく口を開いていると、ハゲちまうぜ」

 そう大家に言い返した大岩刑事は、大家が着ているバスローブの胸元で濡れた自分の手を拭くと、そのまま小憎らしい笑顔で自室へと入っていってしまう。

「ッ! ッッッ……!!」

 この大岩刑事の傲慢な態度に、大家は爆発寸前だった。

 

 そして自分の部屋に帰ってきた大岩刑事は、部屋の灯りを点けようとした。が、その瞬間、部屋に立て掛けていたコートの影に人影が蠢いているのが目に留まった。

「!」

 驚く大岩刑事が電灯を点けてみると、コートの影で蠢いていたのは、人影に見えたゴキブリの群れだった。

 ホッと胸を撫で下ろした大岩刑事は冷蔵庫から食べかけのピザを取り出して、それ電子レンジで温めると、それを夕飯に頂いた。

 そして右手にホットコーヒー、左手にピザをもってベランダに出て街の灯りを見ながら大岩刑事は愚痴を零す。

「うるさい大家だぜ、まったく」

 

 

 

[命の危機を感じて]

 

 しかしそれからも、大岩刑事を狙う何者かが、大岩刑事の暗殺を謀った。

 最初、大岩刑事は気にしてはいなかったが、若干不安に陥ったからか、大岩刑事は上司である本部長に就任したばかりのウェルズに相談する。

「……まあ、そういう訳で。いや、俺の事を恨んでいる悪党共の誰かってのは分かってるんで、気にしてはいないんすけどね」

「でも、命を狙われているのは確かなんだろ?」

「え、ええ、まあ……」

「このままじゃ、仕事にも影響が出るだろう。と、いっても手の空いている警官もいないしな」

「い、いやいや! 本部長、この一件は俺だけでも大丈夫です! 他の警官に報せる必要はありません」

 そう強がる大岩刑事に、ウェルズ本部長は提案を持ち掛ける。

「うーーむ、そうだな……こういう個人的な案件もまた、ジャッジ・ザ・デーモンなど聖龍隊に任せるのもいいかもしれない」

「ちょ、ちょっと待ってください! つまりなんですか? 俺が頭を下げて、あんな、その……バケモノ共に、自分の命を狙ってる奴を探してくれって頼むんですかい!?」

「そういうな。ヒーロー、特にジャッジ・ザ・デーモンなら裏社会にも精通しているから、スグに犯人を特定してくれるよ」

「ッ…………!!」

 大岩刑事は苛立ちながらも、ウェルズの提案に縋るしか選択肢はなかった。

 

 そしてアニメタウン警察本部の屋上。此処には聖龍隊への要請信号として、聖龍隊の軍旗になっている魔鳥のシグナルが夜空に照射される。

 普通なら本部長であるウェルズからの要請でシグナルが発信されるのだが、今夜は大岩刑事自らがシグナルを発信して聖龍隊の加盟者達を要請した。

 大岩刑事は、屋上で夜空に魔鳥のシグナルを照射して待っていると、彼の背後から声がした。

「あんたが俺たちを呼ぶとは、珍しいな」「!」

 一驚した大岩刑事が振り返ると、そこには緑谷出久や爆轟勝己、轟焦凍に麗日お茶子たちを引き連れたジャッジ・ザ・デーモンが立っていた。

 目の前に姿を現したジャッジ・ザ・デーモン達を前に、大岩刑事は不満げに歩み寄りながら吐き捨てる。

「……言っとくが、俺はお前たちの様な奇人変人の類を認めちゃいない。特にテメエはな……!」

 そう大岩刑事はジャッジ・ザ・デーモンに睨み付けて眼を飛ばす。

 これにジャッジ・ザ・デーモンは内心呆れながらも、大岩刑事に問いかける。

「それで? 俺たちになんか用か? 大岩刑事」

「……ッ、ふん! 癪だが、お前らに用件がある。最近、俺の命を狙ってる輩がいるみたいでな。そいつを探し出してほしい」

「なるほど。正確に、どんな被害が出てる?」

「最初は脅迫文だけだった。【街から出てけ】とか【姿を消さなきゃ命はない】とかな。だが、最近になってから本当に命が狙われるようになってきやがった。昨晩なんか、夜道を歩いていたら危うく車に轢き殺されそうになった」

「ふむふむ、それで……あんたは犯人について心当たりや目星は?」

「それなんだが……」

「まさか、ないのか?」

「いや、その逆だ。俺はお前達みたいな奇人変人が蔓延る前から、この街の悪党共をブタ箱にぶち込んできた。だから俺を殺したいほど憎んでる悪党も星の数だ……だから癪だが、お前達に犯人捜しを依頼するんだ。俺は本来の刑事職で忙しいからな」

「うむ、そうだな……分かった、探してみよう」

「へっ、本当はテメエらの手なんか借りたくないんだが……非常事態だ。この際、変人の手も借りないとな。それじゃ、後は頼んだぜ。変人ヒーローさん達よ」

 そうジャッジ・ザ・デーモン達に言い残すと、大岩刑事はさっさと屋上から立ち去ろうとするが、そんな大岩刑事の視界にあの緑谷出久が映った。

「おっ、お前さんは確か無個性っていう普通の子供の……」

「は、はい……緑谷出久といいます」

 出久は自分が無個性である事を気にしつつも、大岩刑事に名乗ると、大岩刑事は無粋な顔で出久に言った。

「ボウズ、お前さんは無個性っていうか、能力がなくて良かったな。せいぜい、今後も能力者っていうバケモノにだけはなるなよ」

 そう言い残すと、大岩刑事は屋上から去って行ってしまう。

 

 この最後までヒーローを奇人変人の危険人物と見做す大岩刑事の言動に、爆轟勝己が思わず零してしまった。

「あの刑事、マジぶっ殺してえ……!」

「やめろ。迂闊にそんな事を口にすれば、お前自身が異常者(ヒール)と見做される可能性があるぞ」

 思わず鬱憤を吐き出す勝己に、ジャッジ・ザ・デーモンが注意した。

「確かに不満を覚え、抱くのは仕方ないだろう。しかし能力者が常に危険視されるという現実を忘れてはならない。それ以上に、俺たちの活動はあくまで世間的には自警団にあたる。自警団の活動は、時には警察の職務を妨害しかねない行動であるがゆえに、警察の中には俺たちを嫌っている者が大岩刑事以外にもいる事を忘れるな」

 ジャッジ・ザ・デーモンからの説明に、爆轟勝己や緑谷出久たちは黙然としてしまう。

「まあ、大岩刑事からの要件は聞き終わった。一旦、デーモンハビタットに帰還するぞ」

 そう皆に言うと、ジャッジ・ザ・デーモンはグラップネルガンで高層ビルを滑空して、一足先に秘密基地デーモンハビタットに帰還するのだった。

 

 そしてデーモンハビタットにて。

 ジャッジ・ザ・デーモンが基地のコンピューターで、大岩刑事が過去に関わった事件を調べ、大岩刑事の命を狙いそうな人物の特定に懸かる。

「大岩刑事って、あの言っては何ですが、少し身なりがだらしない刑事さんの事ですよね……?」

 コンピューターに向き合うジャッジ・ザ・デーモンの傍らで、お茶を持ってきたウッズが呟く。

「ああ、だが大岩刑事は俺たち聖龍隊の事を毛嫌いしてるだけでなく、過去にいくつもの事件や犯罪を解決してきたやり手の警察官。多くの賞も受賞しているが、立身出世を嫌い、現場一筋で叩き上げてきた実力派の警察官……実に興味深い」

 現場一筋で務め上げてきた大岩刑事の経歴は、ジャッジ・ザ・デーモンすらも認める程だった。

 ジャッジ・ザ・デーモンがそうやってコンピューターで調べている傍ら、緑谷出久たちが密談しているのをジャッジ・ザ・デーモンは見逃さなかった。そして大岩刑事に対して不満を愚痴ってる彼らにジャッジ・ザ・デーモンは言った。

「まあ、お前達が思うところは色々あるが、一応は俺たちを頼って依頼してきてくれたんだ。最後まで守ってやらなければ……!」

 そうジャッジ・ザ・デーモンは、自分達を毛嫌いしている大岩刑事を護衛するのを渋ってる緑谷出久や爆轟勝己たちに述べるのだった。

 

 そしてジャッジ・ザ・デーモンがコンピューターで大岩刑事の身辺調査を行いつつ、緑谷出久たちは大岩刑事の護衛を務めることに。

 

 そんなある日、雪が深々と降る夜。

 この日、大岩刑事は相棒の刑事と共に強盗団のアジトへと二人がかりで踏み込もうとしていた。

「気をつけろ、奴らは相当のワルだ。クリスマスに銀行で五人も殺してやがる……!」

 大岩刑事は相棒の刑事に、これから対峙する犯罪者達の残虐性を告げながら先頭を歩く。

 そして最初は忍び足でアジト内を探索していくと、大岩刑事はある部屋から犯人達の話し声を聞き取る。

「動くな! 警察だ!」

 前触れもなくドアを蹴破り、突入する大岩刑事。犯人達は怖気づいて身を床に伏せる者もいれば、抵抗しようと銃を構える者まで様々。

 そんな拳銃を構える犯人達に、大岩刑事は迷う事無く銃を発砲。犯人達の拳銃を撃ち落としてみせる。

 そして相棒の刑事と共に、その場を制圧しようとした矢先、犯人グループの一人が一瞬の隙を衝いて逃走を図った。

「あ! おい、ここはお前に任せた! 俺は奴を追う」

 そう相棒の刑事にその場の制圧を任せると、大岩刑事は逃げ出した犯人を追ってアジトであるビルの屋上へと出る。

「野郎、どこだ」

 懸命に辺りを見渡して犯人の姿を追う大岩刑事だったが、犯人はそんな大岩刑事の後方へと回り込んでいるのに本人は気付いていない。

 そして犯人は、寒さの中、白い息を吐きながら大岩刑事へと銃口を向けて発砲しようとした。

 が、犯人が銃を構えた、その時。

「ッ!」「!?」

 犯人の頭部に投擲武器が直撃し、犯人は気絶。その音声に大岩刑事が振り返ると、そこには気絶した犯人と、犯人に向かって投擲武器を投げた緑谷出久の姿が目視できた。

「おい! なんの真似だ!」

「え?」

「俺は命を狙ってる野郎を見付けてくれとは言ったが、ボディーガードまでは頼んでねえぞ!」

 大岩刑事は勝手に自分の警護をした緑谷出久に怒鳴り、それに対して出久は戸惑ってしまう。

「ご、ごめんなさい! でも、いつあなたの命を狙ってる人が現れるかと、目を光らせる必要があるって、ジャッジ・ザ・デーモンが……」

「ふんっ、あんな元連続殺人鬼の言いなりになってるとは……聖龍隊の新人ってのも、哀れなもんだぜ」

 そう出久に対して不満が愚痴を零しながら、気絶した犯人に手錠をかける大岩刑事。

「ふん、いいかボウズ。本来、子供ってのは安全で平和な毎日を送らなきゃならない。それこそ大人である俺たちを安心させる為にな。俺たち大人が危険な目に遭うのはいい、けれどまだ子供のお前がわざわざ危険な真似をする必要はねえんだよ」

「………………」

「まあ、どっちにしろ……護衛ばかりはご免だぜ。自分の身ぐらい自分で守れる。ただお前たち聖龍隊は、俺の命を狙ってる不届き者が誰なのか探ってくれればいい……、!」

 と、大岩刑事が顔を上げてみると、いつの間にか緑谷出久の姿は消えていた。

「フンっ、姿の消し方もジャッジ・ザ・デーモン流か」

 そう愚痴を呟きながらも、大岩刑事は手錠で拘束した犯人を連行していくのだった。

 

 そんな大岩刑事の様子を、高所から観察する爆轟勝己と轟焦凍に、合流する緑谷出久。

「相変わらずムカつくぜ、あの刑事……!」

「そういうなよ。確かに少々、鼻につくが、あの刑事の言ってる事は筋が通ってる」

 相も変わらず自分達を見下している大岩刑事の言動に苛立つ爆轟勝己に、轟焦凍が宥める。

「あの人、本当は僕らの様な子供に危ない目に遭ってほしくないんだよ。だから僕らみたいな子供に、あえてキツイ事を言ってるんじゃないのかな」

 一方の緑谷出久は、大岩刑事の言動の裏には、子供に危ない目に遭ってほしくはないという優しさがあるのではと考えていた。

 

 そして若かりしヒーロー達は、その晩は大人しく去っていくのだった。

 

 

 

[見つけ出した人物]

 

 聖龍隊に自分の命を狙う人物の特定調査を渋々依頼した、ヒーロー嫌いの刑事、大岩要。

 しかし彼は聖龍隊に自分を狙う人物の特定は依頼しても、身辺警護は頑なに拒んだ。

 そんな大岩刑事には、相変わらず命を狙う人物からの執拗な攻撃が。

 ある日は、人ごみの中で公共の階段を降りようとすると、後ろから押されて突き落とされて、危うく死んでしまうところだったという。

 また、別の日では。同じく人ごみの中で、電車に乗ろうと駅のホームで待っていると、電車が見えてきた直後に後ろから何者かに押し出されて線路に投げ出されてしまう。が、大岩刑事は間一髪で駅のホーム下に潜り込んで、危険を回避した。

 この様に幾度となく、そして執拗なまでに命を狙われ、屈強な心身を持つ大岩刑事でさえも精神的に参ってしまう。

 

 安全と思われる警察本部内で、大岩刑事は毛布に包まって暖を取ってた。だが、大岩刑事は寒さだけで震えている訳ではなかった。

「刑事、大丈夫ですか? かなり寒そうですけど……」

 心配になって、温かいコーヒーを持ってきてくれた婦警に、大岩刑事は震える体でコーヒーを受け取ると言った。

「あ、ああ……あんたの笑顔が眩しいぐらいだ」

「あらら、あなたがそんなお世辞を言えるなんて……今年は更に寒さが厳しいみたいね」

 婦警はそう笑顔で言うと、退室していった。

「っっっ……!(クソっ、聖龍隊の連中め。いつまで犯人探しをしてやがるんだ!)」

 大岩刑事は内心で、未だに犯人探しをしている聖龍隊に不満を覚えてた。

 

 そしてその晩、待ち切れなくなった大岩刑事は、本部の屋上に上がって、魔鳥のシグナルを照射した。

(早く来い、早く来い……!)

 大岩刑事は内心、焦りながらジャッジ・ザ・デーモンの到来を待っていた。

 すると、その時。何の前触れもなく大岩刑事の背後から声がした。

「大岩刑事、話がある」「おうッ、なにか分かったか!」

 背後からの声に、大岩刑事は迷う事無く振り返り、ジャッジ・ザ・デーモンと対面する。

 そしてジャッジ・ザ・デーモンは調査の結果、判明した一人の人物について大岩刑事に伝えた。

「大岩刑事、あんたは飯島一利という男を覚えてるか?」

「飯島? ああ、あいつか。確かヤクザの若頭で、麻薬売買に売春斡旋、そして警官への暴行・障害などの罪で俺がしょっ引いた奴だろ。確か五年前に捕まえて、それから二十年はシャバに出られない筈だ」

「ところが奴は組の顧問弁護士と結託して刑期を短縮、刑務所内では模範囚として過ごしてきた為に更に刑期が短縮され、わずか二年で出所している……今では、もう自由の身だ」

「……そうか、あいつか。俺のことを恨んでるだろうに……」

 ジャッジ・ザ・デーモンから自分の命を狙ってる可能性がある人物として、過去に自分が逮捕した飯島というヤクザの若頭だったと知って考え込む大岩刑事。

 そして一しきり考え込んだ大岩刑事は、ジャッジ・ザ・デーモンに訊ねた。

「おい、それで飯島の居場所は分かってるのか?」

「ああ、特定してる」

「よし、そうと決まればスグに乗り込むぞ! 案内しろ!」

「だが、大岩刑事。俺はどうにも、飯島一利が脅迫の犯人とは思えないのだが……」

「へっ、なに言ってやがる! そもそも飯島以外で目星が付かないから、俺に報告してきたんじゃないのか?」

「あ、ああ、確かに、その通りだ」

「それなら案内しろ! さっさと片を付けてやるんだ……!」

 こうして大岩刑事は、焦るように飯島の許へとジャッジ・ザ・デーモンと共に急ぐのだった。

 

 そうして大岩刑事は、ジャッジ・ザ・デーモンに連れられて、飯島とその子分達が根城にしている自動車のスクラップ工場まで赴いた。

「よし……! 奴らの寝首をかいてやる」

「だが、本当に飯島があんたを脅迫した相手だろうか。飯島ほどの悪党なら、そんなコケ脅しみたいな真似はしないような……」

「へっ、どうせ、この俺がビビるかどうかを見たかったんだろうよっ! さっ、早々に飯島をしょっ引くぞ!」

 大岩刑事は、ジャッジ・ザ・デーモンの疑念を真っ向から否定しつつ、ジャッジ・ザ・デーモンと共にスクラップ工場に忍び寄り、内部に進入するのだった。

 

 工場内部へと進入する大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモン。二人は工場内で子分達と会議している飯島の姿を確認すると、気付かれない様に忍び足で彼らに近付いていく。

「? はい、もしもし…………なにっ? ホントか!? ……ああ、分かった。上手くやれよ」

 忍び寄る道中、自身の携帯に出て会話する飯島に悟られない様、物陰に身を潜めながら接近する大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモン。

「いいか? あのベルトコンベアに飛び乗ったら、一気に飯島達と距離を詰めて勝負をかける」

「やむを得ないな」

 自分達と飯島達を分断する工場内のベルトコンベアに飛び乗れば、すぐに気づかれてしまう。すなわちベルトコンベアに飛び乗った瞬間に、一気に飯島達を取り押さえる必要があると説く大岩刑事に、ジャッジ・ザ・デーモンは渋々同意する。

 そして大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンの二人が、ベルトコンベアに飛び乗って、その直後に飯島達を取り押さえようとした、その時だった。

 なんと大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンがベルトコンベアに飛び乗った瞬間、二人の頭上から廃車になった車体が降って来たのだ。

「危ないッ!」

 慌ててジャッジ・ザ・デーモンは、大岩刑事を伏せさせ、彼を護った。だが、同時に二人は廃車の車内に閉じ込められてしまった。

 

 

 

[大混戦]

 

「う、う~~ん……」「………………」

 大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンは、下敷きにならなかったとはいえ、廃車が落下してきた衝撃で軽く朦朧としてしまう。

 すると其処に、子分達と会議していた飯島が、子分たち共々、拳銃を構えながら二人に歩み寄ってきた。

「フフフ、大岩、久しぶりだな。お前に投獄されてから、この日が来るとは夢にも思わなかったよ」

「い、飯島……!」

 飯島の言動に大岩刑事が睨み付けるが、飯島は続けて語り出す。

「お前達は気付かなかっただろうが、ここの工場の監視カメラは生きてんだよ。それでさっき、監視カメラで見張ってた子分から電話があって、お前ら二人が工場に進入したって報告を受けてたから、黙って二人とも廃車の檻ン中に閉じ込めたって寸法よ」

 なんとさっきの電話は、部下からの電話で、そこで飯島は大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンが進入してきた事を知り、それで二人の頭上に廃車を落として閉じ込めたというのだ。

「しかし、まあ……恨んでたアンタだけでなく、今じゃ聖龍隊に媚びを撃って不殺の自警団になり上がったジャッジ・ザ・デーモンまでも始末できるとは……これが本当の、鴨が葱を背負って来るって奴かね? ハハッ」

 軽く嘲笑する飯島は、ベルトコンベアの電源を入れて、コンベアを稼働させた。

「それじゃ二人仲良く、ペッシャンコになりな……!」

 そう言う飯島が見詰める先には、稼働したベルトコンベアの先に廃車の圧縮機も同時に稼働しており、このままベルトコンベアが進行すれば大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンは廃車ごと真四角に圧縮されて絶命してしまう。

「く、くそっ! このままじゃ、俺たち二人ともお陀仏だ!」

「焦るな。迂闊に廃車から出れば、飯島達の銃口が火を噴く」

 焦る大岩刑事に、ジャッジ・ザ・デーモンは迂闊に廃車から出れば銃撃に遭うと警告する。

 その間も、大岩刑事とジャッジ・ザ・デーモンを閉じ込めた廃車は刻一刻と圧縮機に近付いていく。

 

と、あともう少しでジャッジ・ザ・デーモンと大岩刑事が圧縮機で潰される、その時。

「うわッ!」「な、なんだ!?」

 突然、飯島たちの足元に投げ込まれた煙幕と閃光弾に、飯島たちが混乱してしまう。

「な、なんだ?」「増援が駆け付けたようだ」

 突然の事態に驚く大岩刑事に対して、ジャッジ・ザ・デーモンは待機していたように冷静だった。

 そん白煙と閃光で、飯島たちが混乱する中で、飯島の子分たちを次々に殴り飛ばして気絶させていく人影が。

「よっしゃッ! 久々に鬱憤、晴らしてやるぜ!」

 常日頃から色々とストレスが積み重なっている爆轟勝己は、能力を巧みに使いこなして手当たり次第にギャング達を叩きのめしていた。

「こ、こいつらは……!?」

「この工場に忍び込む前に要請しておいた増援だ。敵が何人ほど潜んでいるかも検討が付かなかったもんでね」

 周囲で暴れ回る聖龍隊の新人達を前に驚く大岩刑事に、ジャッジ・ザ・デーモンが説明する。

 が、二人が押し込められた廃車は、未だに稼働しているベルトコンベアに乗ったまま圧縮機へと運ばれる最中だった。

「おい! このままじゃ俺たち結局、ペッシャンコに潰れるのは変わりないじゃねえか!」

 大岩刑事が怒鳴りながら、同時に廃車のドアを内側から蹴破って脱出を図るが、ドアは変形していて簡単には開けれない状態だった。

 すると其処に【僕のヒーローアカデミア】の面々と共に駆け付けた、同じく聖龍隊の新人であるサイタマが着地して圧縮機の前へと降り立つ。

「ふーーむ……わざわざ止めるのも面倒だな」

 と、思うとサイタマは一撃必殺の拳を突き出し、物凄い突風と共に衝撃波を繰り出し、ベルトコンベアごと圧縮機を破壊してしまう。

「うおっ!」

 突然のサイタマの攻撃で廃車ごと転倒する大岩刑事は、またも一驚。しかしサイタマの一撃でベルトコンベアごと二人が閉じ込められてた廃車も大破し、解放された。

「っ……! おい、もう少し普通に出してくれよな」

「すまん、俺が後で言っておく。それよりも、此処からが正念場だ」

 サイタマの行動に文句を言う大岩刑事に、ジャッジ・ザ・デーモンは返答しながらも乱戦に参戦していく。

 

「ぐほっ」

 乱戦に参戦したジャッジ・ザ・デーモンは、ここぞとばかりに飯島の配下であるギャング達を殴り飛ばし、蹴散らしていく。

 そんな乱戦を目の当たりにして、大岩刑事も拳銃を構えて乱戦に突入する。

「おい、ギャング共! 本職の警官が此処に居る事を忘れるなよ!」

 そう言いながら、大岩刑事が放った銃弾はギャングたちが連射している銃器に直撃し、銃器を落とさせる。そんな無防備になったギャング達に聖龍隊の新人達は容赦なく攻撃し、制圧する。

 すると超能力でギャング達を圧倒している戦慄のタツマキの背後から、彼女に襲い掛かろうとする子分の姿が大岩刑事の目に飛び込んだ。

「危ねえ!」

 すかさず大岩刑事が銃を発砲して、タツマキの背後にいた子分を銃撃。銃弾は子分の肩に直撃して、子分は負傷して倒れ込む。

「大丈夫か、嬢ちゃん」

 大岩刑事はタツマキを心配して駆け寄るが、彼女は子ども扱いされた事に不満を覚えてた。

「ちょっと、勘違いしているみたいだけど、私28なんだけど?」

 と、不満げに大岩刑事に言う。

「えっ? あ、いや、その……すまん」

 このタツマキの不満気な返答に、大岩刑事も素直に謝罪した。

 と、そんな乱戦中、ボスである飯島が一人その場から逃げ出そうと走り出す。

「あ! 飯島ッ!」

 そんな一人逃げ出そうとする飯島を、大岩刑事が追う。

 すると大岩刑事が後ろから追ってくるのに気付いた飯島は振り返り、大岩刑事に銃口を向ける。

 飯島の銃口が大岩刑事の額に向けられた、その時。

 ジャッジ・ザ・デーモンが投げた投擲武器ジャッジラングが、飯島の銃に直撃。飯島は拳銃を落としてしまう。

「とりゃーーッ!」

 そんな飯島に大岩刑事は飛び掛かり、飯島と取っ組み合いになりながらも、飯島の顔面に拳を叩き込んで気絶させる。

 

 そしてスクラップ工場での大混戦は、どうにか聖龍隊や大岩刑事によって制圧できた。

 満身創痍になりながらも、大岩刑事は飯島の両手を背中に回して手錠をかける。

「やったな、大岩刑事」

「ふんっ、増援が無くても、こんな連中すぐに殴り飛ばして終わってたさ」

 ジャッジ・ザ・デーモンが労いの言葉をかけるも、大岩刑事は無粋に答える。

「まっ、これで俺も安心できるってもんよ」

 そう聖龍隊の新人達やジャッジ・ザ・デーモンを前に語る大岩刑事は、ジャッジ・ザ・デーモンの前でこう述べた。

「まあ、でもなんだ、その………………ありがとよ」

 と、大岩刑事がジャッジ・ザ・デーモンに礼を述べたが、既にジャッジ・ザ・デーモンは大岩刑事の前から姿を消してた。

「ご苦労様です! 大岩刑事」「ふんっ」

 緑谷出久たちの敬礼に対しても、大岩刑事は照れ隠ししながら、聖龍隊が前もって呼んだパトカーに飯島を乗せて連行するのだった。

 

 

 

[真相]

 

 そして工場での大混戦の後、警察署に連行した飯島を大岩刑事は尋問した。

「いい加減、吐けッ、飯島! ここ一カ月、俺に脅迫文を寄こしたり、駅のホームに突き飛ばすなどして、俺の命を狙っただろッ!」

「何のことだが理解し切れない。俺がお前を脅迫? 確かに恨んではいるが、そんなコソコソとチンケな真似で脅したりするような小心者じゃないぞ、俺は」

「ッ……! 留置所にぶち込んどけ!」

 思った通りの自供をしない飯島に苛立つ大岩刑事。そんな飯島を留置所に放り込ませると、同僚の刑事が大岩刑事に問うた。

「本当に、飯島が脅迫してたんだろうか」

「ああ、その筈だ! そうでなきゃ、困る……!」

 大岩刑事は早く安心したいという気持ちで心中いっぱいだった。

 

 その晩、飯島達の聴取を終えて自宅であるマンションに帰宅した大岩刑事。

 そして大岩刑事が、マンションの玄関口から屋内に入ろうとした、その時。

「お、大岩!」「! お、お前は……!?」

 玄関口から入ろうとする大岩刑事の背後に、顔全体を覆面で隠した男が拳銃を向けて立っていたのだ。

「何度も何度も忠告した筈だ、街から出てけと! それなのにお前は忠告を聞かなかった、だからこうするしかないんだ!」

「………………」

「う、恨むなら……忠告を聞かなかった自分を恨め!」

「………………!」

 そしてまさに今、男の銃口が火を噴き、大岩刑事に凶弾が放たれようとされた。

 が、その時。男が構えてた拳銃が弾き落され、それと同時に緑谷出久やサイタマたち聖龍隊の新人達が覆面男を取り押さえる。

「大丈夫か、大岩刑事」

「お、お前さんたち……!」

「どうも飯島が脅迫犯とは思えなくてな……念のために見張っていたんだ」

 大岩刑事の許に舞い降りたジャッジ・ザ・デーモンの台詞に驚く大岩刑事。

 一方で取り押さえられた男は、緑谷出久達によって覆面を外される。

「や、やめろ! 近付くな! 私に何もするな!」

 怯える男の素顔が視認できると、大岩刑事が声を上げた。

「あ! 山邊! まさか、お前だったのか!?」

「知ってるのか?」

「知ってるも何も……うちのマンションの管理人で、大家だ」

「なに!?」

 驚く大岩刑事の返答に、ジャッジ・ザ・デーモンも驚いた。前科もないマンションの管理人が真犯人とは、ジャッジ・ザ・デーモンですら予想してなかったからだ。

 そんな中、山邊は大岩刑事に嘆願する。

「出てってくれ、大岩! あんたがウチのマンションを荒らしてばかりで、私の生活は困窮してるんだ! あんたはいくら言っても部屋の掃除はしないし、ゴミの分別もしない。私や他の住民が注意しても聞かないで、それであんた以外の住民は次々に出ていく始末……もう今じゃ、家賃を引き下げても居住者はいない始末。だから、あんたを脅してマンションから出て行かせるしか手が無かった……」

「なにッ!? つまり何か? 家賃を元に戻したいがためだけに俺を殺そうとしたのか、エエこら!」

 大岩刑事が怒鳴り返すと、山邊は首を横に振って否定する。

「違う違う違う! ただ出てって欲しかっただけだ、もう、うんざりなんだよ! あんたほど、不衛生で、不潔で、しかも傲慢で! あんたみたいなのと付き合っているだけで頭がおかしくなる! 私だけじゃない、今までアンタを嫌ってマンションから出て行った他の住居者だって同じだ! あんたの様な身勝手な人間と付き合うだけで、こっちがおかしくなりそうなんだ……!」

 そして終いには、山邊は気がふれたのか笑い出してしまう。

「は、ははは……そうさ、誰も私を責められない……ふふ、ふはは……」

 この山邊の言動を前に、唖然とする大岩刑事は重い口を開いた。

「……ま、まさか……飯島みたいな悪党だけでなく、こういう奴からも俺は恨まれていたとは……」

 そして自分の身を振り返った大岩刑事は、追い詰められて自分を銃撃しようとした山邊に手錠をかけると公言した。

「……まぁ、ちょうどいい時期だったかもな。この辺も物騒になって来たし、これを機に引っ越ししても……」

 そう言って膝から崩れ落ちた山邊を立ち上がらせる大岩刑事の改心を見届けたジャッジ・ザ・デーモンたちはその場から立ち去っていく。

「人は無意識のうちに誰かを追い詰めてしまう時がある。それを忘れなければいい。だが大岩刑事、これは鬼である俺が言うのもアレだが一応言っておく………………せめて掃除くらいはしとけよ」

 そう大岩刑事に言い残したジャッジ・ザ・デーモンは、聖龍隊の新人達と共に闇夜へと消えていった。

「ほら、行くぞ」「はは、ははは……」

 その一方、大岩刑事は精神的に追い詰められた山邊を連行していくのだった。

 

 

 

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