聖龍伝説 ジャッジ・ザ・デーモン ネオ・ダーク・レジェンド   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回もオリジナルの悪役にジャッジ・ザ・デーモン達が立ち向かいます。
 サングリエントはスペイン語で、「血塗れ」を意味します。



サングリエントの脅威

[悪人達の密会]

 

 とある真夜中のアニメタウン、その裏路地にて二人の人物が密会していた。

 

「聖龍隊が正式にジャッジ・ザ・デーモンを仲間として認定してからというもの、ジャッジ・ザ・デーモンの暴挙が増加の一途だ」

「そうネ。ワタシの組織もジャッジ・ザ・デーモンに潰されたアル」

 夜中に裏通りで会話する、今では統率してた組織をジャッジ・ザ・デーモンに壊滅させられた首領格の犯罪者二人。

 すると、そんな二人の許に一人の老人が声をかけてきた。

「ジャッジ・ザ・デーモンに関する鬱憤なら、私も混ぜてくれないか? ……安心してくれ、私もジャッジ・ザ・デーモンの被害者だ」

 老人は、自分もジャッジ・ザ・デーモンに組織を潰された被害者だと二人に伝える。

「実はジャッジ・ザ・デーモンを潰せる絶大な力を持った輩、いや傭兵と呼ぼうか。その傭兵を手に入れる事が叶ってね。かつてアメリカの極秘実験に参加して強大な力を得た兵士だ……!」

 そう老人が後ろを振り返ると、闇夜の中から一人、レスラーの様なマスクを被った小柄な体型の男が現れた。

「……あの、ただマスクを被ってるだけにしか見えないんだが……」

「マスクを被っただけで超人になれたら楽ネ」

 小柄な体型の男を前に、元犯罪組織の首領二人は呆然としてしまう。

 すると老人が紹介したマスクの男は二人に言った。

「確かに、今の俺はただの貧弱な一人の男でしかないだろう。だが、本気になれば、あの小田原修司をも凌駕する……!」

 次の瞬間、男の影が見る見る膨張し出し、目の前の男たちは思わず見上げてしまう。

「す、凄い……! これなら、ひょっとしてイケるかもしれん……!」

「フム! これならジャッジ・ザ・デーモンを……」

「「あの忌々しい鬼を、始末できる!」」

 二人の男からの称賛に、マスク男を紹介した老人も不敵に微笑み、マスクを被った男も笑顔を浮かべた。

 

 今宵もまた、アニメタウンに戦慄が走る。

 

 

 

[血まみれの大男]

 

 アニメタウンに在る聖龍隊本部。

 本部内では、突然の異常者(ヒール)発生に対して緊急出動がいつでも可能なように聖龍隊の隊士達が待機していた。

 それは聖龍隊に新たに加わった新世代型二次元人による特別部隊ニュージェネレーションズも例外ではない。

「ふぅ~~……最近は、やたらと事件が多いな」

「確かに。収容施設から脱走したイーグルやザ・ハングリーはもちろん、以前から悪事を行っているブラックホワイトなんかも活動するもんだから忙しいぜ」

 ニュージェネレーションズの隊士である新世代型二次元人の纏流子と井ノ原真人は多忙な中、僅かな休息の時に一息入れていた。

「ほら、二人とも。いつ何時、事件が発生するか分からないんだ。いつでも出動できるよう、コンディションは整えておくように」

「はいはい、分かってるよ姉さん」

 ニュージェネレーションズの隊長を務める姉の鬼龍院皐月に、妹の纏流子は返事する。

 そしてニュージェネレーションズの面々が、各々水分補給などで休息してた、その時。

「緊急事態 緊急事態 突如、街中で大男が暴れまわっているとのこと 繰り返す……」

 と、アナウンスが鳴り響く。

「総員、直ちに出撃準備! 市民の安全と生活を護るべく、我々ニュージェネレーションズが動く!」

『はいッ!』

 鬼龍院皐月からの指令に、流子を始めとするニュージェネレーションズの面々は力強く返答する。

「念のため、ジャッジ・ザ・デーモンに連絡を入れたいが……キャシー、ジャッジ・ザ・デーモンは今どうしてる?」

 皐月は通信士であるキャサリン・ルースに通信を入れると、キャサリンは報告した

「ジャッジ・ザ・デーモンは現在、イーグルとザ・ハングリーの闇取引の現場を押さえに活動中とのこと……」

「了解! 街中で暴れ回っているという大男の討伐は、我々ニュージェネレーションズが引き受ける!」

 そうキャサリンとの通信を終えると、皐月はニュージェネレーションズを従えて出動するのだった。

 

 そして現場に到着したニュージェネレーションズ。

 現場は既に、何者かが暴れ回ったのか派手に電灯はへし折られ、道路脇に駐車してた車は引っ繰り返されていた。

「ひ、ヒデェなこれ……」

「うー-む、ここまで荒らし回れるとは……犯人は相当、怪力な奴と見て間違いないだろう」

 現場の酷い惨状に流子が唖然とする中、皐月は冷静に現状を分析する。

 すると現場に到着したニュージェネレーションズの前に、一人の小柄な体型をしたマスクの男が姿を現した。

「お、お前!」「何者だ!? 手を挙げろ!」

 ニュージェネレーションズの面々が咄嗟に手を挙げるよう指示を飛ばすと、男は不敵に話し出した。

「ジャッジ・ザ・デーモンはいないようだが……」

 すると、この男の疑問に鬼龍院皐月が答えた。

「ジャッジ・ザ・デーモンは別件でいない! 我々ニュージェネレーションズだけで十分だ!」

 威風堂々した物言いの鬼龍院皐月に、男はニュージェネレーションズを見渡して言った。

「ほう、あの小田原修司のクローンである新世代型二次元人だけの部隊、ニュージェネレーションズか……本当ならジャッジ・ザ・デーモンを誘いたかったんだが、まあいい」

「お、お前……! まさか、街中で暴れ回った大男に関係しているのか!?」

「テメエは誰だ!」

 男の発言に、皐月と流子が訊き返すと、男はニュージェネレーションズを前に言い返す。

「悪いが俺は……小娘共に構ってる暇はないんだ。俺の狙いはジャッジ・ザ・デーモンのみ」

「へっ、アタイ達だけも、お前みたいな奴あっという間にとっ捕まえてやるさ!」

 流子が言い返すと、続いて鬼龍院皐月が男に問い詰める。

「そもそも、お前は誰だ!? 名を名乗れ!」

 問い詰められた男は、皐月たちニュージェネレーションズ達に素直に名乗った。

「俺か? 俺の名は………………サングリエント」

 と、男が名乗った次の瞬間、男の体色が瞬く間に赤く変化し、同時に肉体が膨張するかのように巨大化していく。

『!!』

 男の体が巨大化していくのを目の当たりにし、ニュージェネレーションズは全員驚愕した。

 

 自らをサングリエントと名乗る男が、目の前で瞬く間に赤く変色して巨大化するのを見届けたニュージェネレーションズの面々。

 すると巨大化したサングリエントは近くにあった電柱を怪力で引き抜くと、その電柱を武器にニュージェネレーションズに襲いかかってきた。

「か、各自展開しろ! 応戦だ!」

 一瞬ばかし動揺した皐月だったが、瞬時に気を立て直してニュージェネレーションズの面々に指示を飛ばす。

 ニュージェネレーションズは各自、武器を構えてサングリエントの攻撃に備える。が、サングリエントはその剛腕で電柱を振り回してニュージェネレーションズを意図も容易く退かせてしまう。

「うわあっ!」

 ニュージェネレーションズの面々は電柱を振り回すサングリエントの猛攻に怖気付き、散り散りになってしまう。

「コイツめッ!」

 そんなサングリエントに、纏流子は聖龍隊から装備を許された日本刀を振り翳してサングリエントに斬りかかる。

 しかし強固な皮膚と筋肉で全身が覆われたサングリエントに切り傷はあまり深く付かず、それどころかサングリエントは接近して斬りかかってきた流子を片手で軽々と捕まえては投げ飛ばした。

「うわっ!」「流子ッ!」投げ飛ばされる流子を見て、皐月は叫ぶ。

 そして投げ飛ばされた流子は、レンガの壁に激突してめり込んでしまう。クレーターができるほどの衝撃で壁に激突した流子は動けなくなってしまう。

「コイツ、良くも妹を……!」

 流子を傷付けられて、皐月は怒り心頭で自らも日本刀を武器にサングリエントに挑んだ。

 だが、そんな皐月の剣戟をサングリエントは容易く電柱で防いでは、皐月の手から日本刀を弾かせて落とさせると、無防備になった皐月を殴り飛ばして壁へと激突させる。

 壁に激突した皐月を、サングリエントは更に執拗に猛追して徹底的に皐月を痛め付けた。

「ね、姉さん……!」

 此処で、先ほどサングリエントに壁に投げ付けられた流子が何とか立ち上がり、姉の安否を気にする。

 一方でサングリエントは、鬼龍院皐月を徹底的に痛め付けると、周りで戦闘で気絶したり、戦闘から逃れたニュージェネレーションズの面々に向かって言い放つ。

「いいか、お前ら! 俺の狙いはお前らの様な雑魚ではない、ジャッジ・ザ・デーモンだ! ジャッジ・ザ・デーモンに伝えておけ、俺はお前の命を奪うまでは何度でもアニメタウンを荒らし続けると……! 今日は手始めに、小娘共を痛め付けるだけにしておくが、俺はまた戻ってくる!」

 そう言い残すと、サングリエントはそのまま闇夜の中へと消えて行ってしまった。

 

 そして現場には、傷付いて満身創痍の纏流子と徹底的に痛め付けられた鬼龍院皐月を始めとするニュージェネレーションズの面々だけが残された。

 

 

 

[D-ワクチンの改造薬]

 

 サングリエントとの戦闘で傷付いたニュージェネレーションズの隊士は、全員病院へと緊急搬送された。

 特に、サングリエントによって徹底的に痛め付けられた鬼龍院皐月の容態は深刻だった。

 皐月は、全身が複雑骨折しており、脳にも深いダメージが負わされていた。

 病院に搬送され、集中治療室で酸素マスクを付けられ、包帯塗れの皐月の姿をガラス越しに見て、妹の纏流子は悲痛な思いだった。

「姉さん……!」皐月の容態を心配し、心苦しくなる流子。

 すると其処に、バーンズが修司を引き連れてやってきた。

「流子、大丈夫か?」

「ば、バーンズ! 姉さんが、姉さんが……!」

 駆け付けたバーンズと修司を見た途端、流子は堪え切れずバーンズの胸で泣き出してしまう。

 そしてバーンズと共に病衣へと駆け付けた修司は、自分のクローンで今では我が子と認識している鬼龍院皐月の痛々しい姿を目の当たりにして愕然とする。

「……流子、すまない。俺がいなかったばかりに……!」

「! 修司さんが悪い訳じゃない! 悪いのは、あの大男サングリエントっていう奴だ!」

「そのサングリエントってのは、俺を……いや、ジャッジ・ザ・デーモンを狙って、街中を暴れ回っていたんだな?」

「あ、ああ……自分はジャッジ・ザ・デーモンの首を狙ってるって、豪語してた」

「………………!」

 流子から、サングリエントの真の狙いはジャッジ・ザ・デーモンであると聞かされ、修司の顔は険しく一変した。

 すると其処に、運よく軽傷で済んだニュージェネレーションズの面々がやって来て、修司やバーンズに謝罪する。

「修司さん、バーンズ総長……申し訳ありません。俺達が就いていながら、隊長である皐月をこんな目に遭わせてしまって……」

「仕方ないさ。相手は超人級の怪力を持つ野郎、勝てない方が普通だよ」

 隊士である井ノ原真人に、バーンズが仕方ないと気を止める。

 しかし一方で、修司はサングリエントがジャッジ・ザ・デーモンを狙ったが故に、皐月達ニュージェネレーションズに被害が及んだ事態に懸念を募らせるばかり。

 そして修司は、その場から急ぎ立ち去ろうとする。

「修司、どこに?」

「デーモンハビタットだ。サングリエントをとめる」

 バーンズからの問い掛けに、修司は不愛想な顔で答えると、そのままジャッジ・ザ・デーモンの前線基地であるデーモンハビタットへと足を進ませるのだった。

 

 自分のクローンである新世代型二次元人、特に鬼龍院皐月に深手を負わせたサングリエントを追跡するジャッジ・ザ・デーモンへと姿を変えた修司。

 ジャッジ・ザ・デーモンが黙々とコンピューターで、ニュージェネレーションズの隊士達の装備であるカメラに収められたサングリエントの映像を解析していると、ミラーガールが話し掛けてきた。

「ジャッジ・ザ・デーモン、彼が何者なのか心当たりあるの?」

「俺を恨んでいる奴は相当な数がいるが……もしかしたら、そういう俺を恨んでいる輩から雇われただけの奴かもしれない」

「なるほど、傭兵みたいな奴なのね。……ところで、サングリエントってどういう意味なのかしら?」

「サングリエントとは、スペイン語で………………血塗れを意味する名だ」

「確かに……巨大化して、全身が血に染まったみたいに真っ赤に変色してるわね」

「この筋肉の膨張の仕方は……俺が過去、アメリカ軍の極秘実験に志願して投与された筋肉増強剤のD-ワクチンと似ている」

「え? で、でも……その時の極秘実験で生き残った兵士は、修司を含めて一部しかいないし、しかも上手く筋肉が増強されて戦闘で使える様になっているのは修司だけじゃないの?」

「ああ、だからこそ不思議なんだ……サングリエント、一体奴は何処で、この筋肉増強の術を手に入れたのか」

 そう、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが話していると、ジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を陰ながら支援しているアニメタウン市長のウッズが声をかけてきた。

「修司様、そのサングリエントなる人物の件で、日本のアメリカ外交官の方がジャッジ・ザ・デーモンと面会したいと申されているみたいですが……」

「!?」

 突然の面会希望を望むアメリカ外交官の存在に、ジャッジ・ザ・デーモンは衝撃を受ける。

 

 そして、アニメタウン警察本部の屋上。

 闇夜にジャッジ・ザ・デーモンのシンボルマークが照射され、ジャッジ・ザ・デーモン本人を呼び出す二人の姿も屋上にはあった。

「まだジャッジ・ザ・デーモンは現れないのか……!」

「そう落ち着いてくれよ。今じゃ、ジャッジ・ザ・デーモンは俺たちアニメタウン警察とは協力関係にあるんだからよ」

 そうアニメタウン警察本部長のウェルズは、一緒に待機しているスーツ姿の人物を宥める。

 すると其処に、何の前触れもなくジャッジ・ザ・デーモンが姿を現した。

「サングリエントという犯罪者の件で、話があるようだな」

「「!」」

 突如として現れ、目の前に姿を見せるジャッジ・ザ・デーモンに、ウェルズとスーツ姿の男性は一驚する。

「君がジャッジ・ザ・デーモンか。私はアメリカ外交官の……」

「前置きはいい。それよりもサングリエントなる男の情報を持っているんだろ?」

「あ、ああ、そうだ。あの男は非常に危険だ。なので君を始めとする聖龍隊のメンバーに捕縛してほしい」

「それで? サングリエントとは何者だ?」

 ジャッジ・ザ・デーモンに急かされて、外交官は語り始めた。

「サングリエント、彼は………………あの小田原修司が投与したというD-ワクチン、それを改造した筋肉増強剤での投与実験を施した兵士なのだ」

「なんだと……!」「あのD-ワクチンの改造薬をだと!?」

 外交官から語られた話に、ジャッジ・ザ・デーモンもウェルズも愕然とした。

 

 D-ワクチン

 小田原修司が若干13歳のとき、海外の軍隊に入隊している際に軍より打ち込まれた特殊ワクチン。

 基は筋肉強化剤に近い薬剤であり、打たれた軍人の多くが投与されてすぐ筋肉の膨張や体内構造の変化に肉体が耐えられず死亡していく中、小田原修司のみがこのワクチンを投与されても死亡しなかった。小田原修司はそれ以降、興奮すると体内のドーパミンやアドレナリンとD-ワクチンが過剰反応し全身の筋肉が異常膨張し、瞬時に巨体な筋骨隆々の大男へと変貌する。容姿は筋力が異常に発達し、更に血流が激しく成る事から過剰な熱反応を起こし、血流と相まって全身が赤黒く変異する。

 それから数年間、大男に変貌した小田原修司は体が巨大化すると同時に理性が一時的に失われては自我を保てなくなり暴走する傾向に陥り、これには当時の聖龍HEADや聖龍隊の隊士たち全員でも中々取り押さえることが困難であったという。

 だが後に小田原修司はその自我を保ちつつDにて己の体を強化した状態を保持する事を成し遂げ、更に彼の体内のD-ワクチンが独自に変異していき、最終的に小田原修司は更なる肉体強化を成し得た。

 後に小田原修司の遺伝子から取り出されるようになったD-ワクチンは劇的な変化を遂げて、一種の改質酵素にも近い物質としても用いられるようになった。これにより国際連合や世界保健機構は小田原修司の遺伝子を保管し、それを元に様々な病気の対抗薬が開発される。結果、世界中で不死の病とされた病気の3分の1が地球上から治療可能となった。

 だが、修司の体内から取り出されたD-ワクチンは改良などの人の手が加えられてない素の状態で投与すると人体を劇的に変化させ、最悪の場合異形の怪物へと変異してしまうケースがある。これにより不当に入手したD-ワクチンでの生物兵器開発や人体改造などの問題が山積みの現状なのである。

 

 そんなD-ワクチンをアメリカ軍は改造し、新薬として開発したというのだ。

 小田原修司がアメリカの極秘実験に志願して筋肉増強剤D-ワクチンを投与した後の話。

 アメリカ軍は、志願兵が次々に死亡してしまうD-ワクチンでの実験を中断し、そのD-ワクチンを改造して全く新しい筋肉増強剤を作り出した。

 その筋肉増強剤は、確かにD-ワクチンよりは死亡するリスクが軽減されたが、やはり筋肉の膨張に耐えられず、死亡してしまう兵士が続出した。

 そんな中、メキシコからの移民である男は、その筋肉増強剤を投与した後も、精神統一をする事で無事に生き延び、最強の肉体を得た改造兵士へと生まれ変わる。

 だが、そんな男が突如としてアメリカ軍を抜け出し、そのまま姿を晦ましたという。

 後に男は自らをサングリエント「血塗れの男」と名乗り、傭兵として生活していた。

 その容姿は、覆面レスラーの様なマスクと筋肉の塊のような外見をしているが、腕力任せの性分ではなく、数多の言語を扱え、瞬間記憶能力も持ち合わせているというのだ。

 

 これらの話をアメリカ外交官から聞いたジャッジ・ザ・デーモンは、過去に自分が志願して投薬されたD-ワクチンの改造薬を投与されたサングリエントが、今では傭兵としてジャッジ・ザ・デーモンを狙い、それによって鬼龍院皐月を痛め付けた事実に葛藤する。

「……なるほど、事情は分かった。サングリエントは俺たちで捕まえる」

「つ、捕まえた後は、我々アメリカ政府に身柄を譲渡してほしい! サングリエントに投与した筋肉増強剤は我々アメリカ政府のものだ!」

 此処まで来ても、あくまでサングリエントという力を私物化するアメリカ政府の方針に、ジャッジ・ザ・デーモンは呆れてしまう。

「はぁ……悪いが、それはできない。サングリエントは拘束後、身柄はアニメタウン政府が取り押さえる。もしアメリカに身柄を渡す場合は、完全に体内の筋肉増強剤が抜け切り、常人へと回復した健康体で譲渡するだろう」

「そ、それでは何の意味もない! サングリエントの戦闘能力は、我々アメリカ政府が所有するべきもので……!」

 最後まで私物化する魂胆を曝け出す外交官の態度に、ジャッジ・ザ・デーモンは顔を近づかせて反論した。

「……! もう遅い。既にサングリエントは聖龍隊の若い隊士に深手を負わせたんだぞ。しかも、その隊士は今なお意識不明の重体だ。聖龍隊の者を傷付けたサングリエントは、決して許されない……!」

 と、このジャッジ・ザ・デーモンの発言を聞いて、外交官は思わず失言を発してしまう。

「そ、その隊士だって! あの危険性の高い新世代型二次元人なんだから、問題ないだろ!」

「!」「!」

 この外交官の失言に、ジャッジ・ザ・デーモンもウェルズも目付きを一変させた。

「おい」「っ!」

 ジャッジ・ザ・デーモンの威圧に怯む外交官、彼にジャッジ・ザ・デーモンは言い切った。

「次に俺の前で、そんな発言を口にしてみろ。二度と、その減らず口が言えないように舌を切り取ってやるからな」

「っ!!」

 ジャッジ・ザ・デーモンに睨まれ、外交官は思わず涙目になってしまう。

 そして外交官からサングリエントの情報を聞いたジャッジ・ザ・デーモンは、すぐに闇夜へと飛び去っていった。

 屋上に残された外交官は思わず失禁してしまい、みっともない姿でアニメタウン警察本部からトボトボと去っていったという。

 

 

 

[対決サングリエント]

 

 一方その頃、サングリエントはというと。

 自分を雇った老人と行動を共にしていた。

 老人の話に乗った二人の元犯罪組織の首領の姿もそこにあった。

「聖龍隊、それも今、絶賛活躍中のニュージェネレーションズを病院送りにしたのは見事だが……」

「肝心のジャッジ・ザ・デーモンを倒さない限り、ワタシ達に安息の時は訪れないネ」

 そう話し合う元首領の二人に、通常体型のサングリエントが言った。

「大丈夫だ。ニュージェネレーションズには、ちゃんと俺がジャッジ・ザ・デーモンを狙って暴れていると伝えている。ニュージェネレーションズも馬鹿じゃない。ちゃんとジャッジ・ザ・デーモンに伝言している事だろうよ」

 すると、この発言に元首領達がこぞって反論する。

「もしジャッジ・ザ・デーモンが恐れをなしてアンタの前に現れなかったら、それはそれで困る!」

「ソウネ! あくまでジャッジ・ザ・デーモンの息の根を止めるために、ワタシ達も金を払ったのヨ!」

「ふふ、安心しろ。ジャッジ・ザ・デーモンだって、おめおめと逃げ出す弱虫ではない。必ず俺がジャッジ・ザ・デーモンの息の根を止めてやる……!」

 そう二人の元首領の言葉に興奮したのか、サングリエントの筋肉が少し膨張した。

「「……!」」

 サングリエントの体が若干巨大化したのを目前にし、元首領の二人は怯えてしまう。

 すると其処に、最初にサングリエントを雇った老人がやってきて声をかける。

「どちらの言い分も理解できる。ジャッジ・ザ・デーモンそのものを倒さない限り、我々裏社会の者たちに平穏は訪れない」

 そう言うと老人は、サングリエントに言伝する。

「じゃからサングリエント、次は此処を狙うのじゃ」

「ジャッジ・ザ・デーモンを誘き出すために街中で暴れ回ったんだが……今度は何処だ?」

 老人から一枚のプリントされた画像用紙を渡されたサングリエントが凝視してみると、それは病院の写真だった。

「この病院は?」

 サングリエントが訊ねると、老人は静かに答えた。

「この病院は、大病院ゼネラルホスピタルクワノ。聖龍HEADの一人、ナースエンジェルと共に負傷した聖龍隊士の治療を行っている。お前さんが負傷させたニュージェネレーションズの隊士も此処に搬送されている」

「なるほど、今度は此処の病院を襲撃する事でジャッジ・ザ・デーモンを誘き出す作戦か」

「いけるか?」

「無論! 今度こそジャッジ・ザ・デーモンの息の根を止めてみせる!!」

 こうしてサングリエントは、老人の勧めで大病院ゼネラルホスピタルクワノを襲撃してジャッジ・ザ・デーモンを誘き出す作戦に打って出る。

 

 

 そして深夜帯。大病院ゼネラルホスピタルクワノの前で。

 サングリエントは早速、ジャッジ・ザ・デーモンを誘き出す為に自らの筋肉を膨張させ、巨大化すると病院前で暴れ始めた。

 病院のスタッフは院内に立てこもり、警備員が応戦するが巨大化したサングリエントには歯が立たず苦戦を強いられる。

「ジャッジ・ザ・デーモン! 何処にいる!? 出てこなければ、病院をそのまま瓦礫の山にしてやるぞ!!」

 サングリエントはジャッジ・ザ・デーモンを誘き出そうと、あえて大声で叫び回る。

 そしてサングリエントは有言実行と言わんばかりに、病院へと歩み寄ると建物を破壊しようと手を伸ばす。

 が、その時。病院に手を伸ばしたサングリエントの顔面に火薬入りのジャッジラングが直撃し、爆発。

「ッ!」

 爆発で思わず怯むサングリエントの前にジャッジ・ザ・デーモンが現れ、二人は対峙する。

「グフフ、やっと現れたな。ジャッジ・ザ・デーモン……!」

「サングリエント、もうお前の好き勝手にはさせない」

「へッ、俺様の怪力に勝てるかな!? おりゃッ」

 するとサングリエントは傍らに駐車されてた救急車を軽々と投げ飛ばしてジャッジ・ザ・デーモンに攻撃。

 ジャッジ・ザ・デーモンは即時に飛んでくる救急車を回避し、サングリエントに接近。サングリエントの横っ腹に強烈な蹴りをお見舞いする。

 しかしサングリエントは怯むことなく、ジャッジ・ザ・デーモンの足を掴むと、そのまま振り回して投げ飛ばした。

 だがジャッジ・ザ・デーモンは壁に激突する手前で体を回転させて態勢を立て直して、激突を免れる。

「サングリエント、投降の意思はないんだな」

「ハッ、何をぬかしやがる! 俺の狙いは、あくまでお前の命だけだ!」

 改めてサングリエントに投降の意思はないかと訊ねるジャッジ・ザ・デーモン。だがサングリエントはそれを拒否。

 このサングリエントの言動を前に、ジャッジ・ザ・デーモンはやむを得ないといった様子で言う。

「ふう、そうか……ならば仕方がない。俺も俺流の闘い方で、お前とやり合うしかないか」

 するとジャッジ・ザ・デーモンは遠隔操作でその場に高性能車両ジャッジ・モービルを呼び寄せ、車内に搭乗する。

「フッ、おいおい、まさか車で逃げるつもりじゃないだろうな?」

 サングリエントが不敵に笑むと、ジャッジ・ザ・デーモンは車内からサングリエントに言った。

「デカいパワー系の奴と闘うには……この形態が最も適している」

 そうジャッジ・ザ・デーモンが言うと、彼は車内のボタンを押して、ジャッジモービルに搭載されている機能を発動する。

 するとジャッジモービルは瞬く間に変形して、見る見るうちに人型へと変わっていく。

「な、な……ッ!」

 瞬く間に人型へと変形していくジャッジモービルを目の当たりにして、サングリエントは口を開けてしまう。そしてそれは病院内に立て篭もる多くの医師や看護師、そして病室の一室で寝たきりの鬼龍院皐月を看病してる纏流子も衝撃を受ける光景だった。するとこの時、ベッドに寝ていた皐月の目が僅かばかりに動いたのを、流子は気付いてやれなかった。

 そうこうしている内に、ジャッジモービルは人型へと変形し、完全にロボットへと姿を変えた。

「お、おいおい……トランスフォーマーかよ」

 呆然とするサングリエントに、ロボットに変形したジャッジモービルの車内からジャッジ・ザ・デーモンは主張した。

「これが対戦闘用特化型のジャッジモービルの形態……デーモン・ボットだ」

「デーモン・ボットだぁ?」

 ジャッジ・ザ・デーモンの発言に、サングリエントは首を傾げる。

 そしてデーモン・ボットに変形したジャッジモービルを操作して、ジャッジ・ザ・デーモンはサングリエントへと直進する。

「く、クソッ!」

 サングリエントはデーモン・ボットからのパンチをかわすと、すかさずデーモン・ボットの腹部に強烈な反撃の拳を叩き込むが、これに内部に搭乗しているジャッジ・ザ・デーモンは衝撃を受けて苦悶する。

「ッ! あまり操作慣れしてないからな……」

 本来は肉弾戦で犯罪者と闘うのに慣れているジャッジ・ザ・デーモンだが、今回の様にジャッジモービルをロボットに変形させて活動するというケースは稀である為に操作が不慣れだった。

だがジャッジ・ザ・デーモンは諦めず、懸命にサングリエントとデーモン・ボットを駆使して対等に殴り合う。

 

 攻防一体の猛攻を繰り広げるジャッジ・ザ・デーモンとサングリエント。

 

 二人の攻防の行く末は?

 

 

 

[一時の決着]

 

 自らが搭乗したジャッジモービルを変形させて、高性能ロボ:デーモン・ボットでサングリエントと死闘を展開するジャッジ・ザ・デーモン。

 拳と拳がぶつかり合う正に接戦が続く中、サングリエントは乱闘の最中、デーモン・ボットの左腕を引きちぎり、もぎ取る。

「ッ!」

 左腕をもぎ取られ、戸惑うジャッジ・ザ・デーモン。

「ガハハッ、そんなオモチャで俺に勝てると思う方がおかしいんだ!」

 左腕をもぎ取ったサングリエントは高らかに笑い飛ばす。

 戦況は明らかにジャッジ・ザ・デーモンが不利になった状況で、ジャッジ・ザ・デーモンは次の一手を必死に考える。

 と、其処に。院内から妹の纏流子に抱えられながら、姉である鬼龍院皐月が駆け寄ってきた。

「ね、姉さん、大丈夫なのかよ?」

「問題ない、これしきのこと……!」

 流子に肩を担がれながら院内から外へと出てきた皐月は、此処で携帯してた日本刀を抜刀する。

「ジャッジ・ザ・デーモン!!」

 病院から飛び出してきた目覚めたばかりの鬼龍院皐月がベッドの傍らに置かれてた愛用の日本刀を、ジャッジ・ザ・デーモンが搭乗するデーモン・ボットを破壊しているサングリエントに向けて投げ飛ばした。

「ぐあッ!」

 皐月が投げ飛ばした日本刀は、サングリエントの左足へと突き刺さる。

「ぐッ……この小娘……!」

 サングリエントは痛みで顔を歪ませつつも、足に刺さった日本刀を引き抜く。

 すると此処で、突然の皐月からの助太刀によって助けられたジャッジ・ザ・デーモンが言った。

「こうなったら……だいぶ、病院には迷惑をかけちまうが……!」

 ジャッジ・ザ・デーモンはある決断を下す。

「サングリエント! お前を完膚なきまでに叩きのめす方法が、まだある!」

「へっ、右腕をもぎ取られても、まだそんなオモチャで俺を倒せると思ってるのか!」

 するとデーモン・ボットを操作するジャッジ・ザ・デーモンは、突然サングリエントにデーモン・ボットで病院の壁へと押し当て、挟み込んだ。

「お、おい、なんだ突然!?」

 がっしりとデーモン・ボットと壁に挟まれたサングリエントは困惑する。

 するとデーモン・ボットの中からジャッジ・ザ・デーモンがサングリエントに言った。

「ちょいと病院も破壊しちまうかもしれないが、お前を倒す為だ。やむを得ない」

 と、次の瞬間。ジャッジ・ザ・デーモンはデーモン・ボットの頭部を開口してそこからグラップネルガンで病院の屋上へと上昇すると、デーモン・ボットの内部から不吉な音声が。

「爆発まで、3,2…………」「え? ちょ、ちょっと待て……!」

 サングリエントが激しく困惑する中、カウントダウンは終わりを迎える。

「……1,0、爆発します」

 カウントダウンが終わった次の瞬間、デーモン・ボットは大爆発。その衝撃で病院の1階から5階までの窓ガラスは砕け散り、そしてサングリエントはデーモン・ボットの爆発に巻き込まれて吹き飛んでしまう。

「ぐあああッ!!」

 デーモン・ボットの爆発に巻き込まれたサングリエントは後頭部を壁へと寄りかからせる。

 すると、そんな腹部ががら空きのサングリエントの真上から、病院屋根へと避難したジャッジ・ザ・デーモンが急降下し、サングリエントの腹部に両脚を突っ込ませ、蹴り込んだ。

「ぐは……ッ!!」

 強烈な激痛が腹部を襲い、悶絶するサングリエント。

 そしてそのまま、サングリエントは完全に気を失ったのか元の通常体型へと戻って気絶する。

「うひょーーーーっ! やったぜ、ジャッジ・ザ・デーモン!」

 病院内からは、ジャッジ・ザ・デーモンの活躍と勝利を称えて多くの医師や看護師が称賛の叫び声を上げる。

 それと同時に、ジャッジ・ザ・デーモンの危機を救おうと躍起になってた皐月も安堵し、妹の流子と共にジャッジ・ザ・デーモンの勝利を拍手で祝った。

 

 それからの進展は早かった。

 デーモン・ボットの爆発に巻き込まれ、ジャッジ・ザ・デーモンにトドメの追撃を受けたサングリエントはアニメタウンの収容所へと押し込められた。

 そしてサングリエントを雇った老人、そして共謀したとして元犯罪組織の首領だった二人も逮捕された。

 

 そしてデーモンハビタットでは。

「……やれやれ。SRM(聖龍ロボットメンバーズ)の技術で、ジャッジモービルをロボットに変形できるようにしてたと思いきや、その機体を一晩であっけなくスクラップにしちまうとは……修繕費とか、かなり懸かるぞ」

「サングリエントを止める為だ、やむを得なかった」

 聖龍隊総長バーンズから、SRMの技術でジャッジモービルを造ってた事、そしてその機体を一晩で廃材にした経緯に呆れられつつも、修司は全てはサングリエントを止める為だったと弁論する。

 デーモンハビタットに、スクラップになったジャッジモービルを運び入れる一方、修司に現場復帰したばかりの鬼龍院皐月が話し掛けてきた。

「修司殿!」

「おお、皐月か。もう大丈夫か?」

「はい! お陰様で。今回も大活躍でしたね」

「皐月、お前は重体だったんだし、少しは休んでおけよな」

「その言葉、そのままブーメランですよ。……ところで修司殿、お訊ねしたいのですが?」

「なんだ?」

「あの怪力無双のサングリエント相手には、ジャッジ・ザ・デーモンとしてではなく、修司殿が直接D-ワクチンの力を解放して巨大化し、対等に闘った方が早かったのではないですか?」

「ああ、それね。あくまでジャッジ・ザ・デーモンの時は冷静沈着で、かつ理性を保たなければならない。D-ワクチンで巨大化して解決しても、それは単に武力同士での醜い抗争になってしまう」

「はあ……」

「それ以前に……俺は表向きは聖龍隊の顧問で、現場での活躍は原則禁止されてるからな。D-ワクチンの力を解放して堂々と戦うなんて真似はできないよ」

「な、なるほど……」

 修司の説明に納得する皐月。すると修司は、そんな皐月の頭を撫でて言った。

「それよりも……ありがとよ、あの時は助けてくれて」

「……!」

 サングリエントとの闘いの際、日本刀を投げ付けて助太刀してくれた感謝を述べる修司の言葉に、皐月は感銘を受けるのだった。

 

 

 これからも鬼龍院皐月率いるニュージェネレーションズと、ジャッジ・ザ・デーモンの活躍は続くのであった。

 

 

 

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