こちら葛飾区亀有公園前派出所 サメの勢いはサメないの巻   作:青色好き

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こち亀は40年間休む事無く連載をしていたって、普通に凄いです。


第1話:始まり

 海のように青い空。

 その空には雲が所々に浮いている。

 晴れと言って差し支えない天気だ。

 

 太陽の日差しが降り注ぐ東京都葛飾区は何時ものように賑やかだ。下町の人々は長閑に暮らし、商店街では様々な人々が活気と共に品を売っている。少し足を延ばして浅草では浅草寺と東京スカイツリーに多くの人が訪れており、非常に賑わっている。

 

 そんな葛飾区の通りで、ある人物が歩いていた。

 

「うぅむ…… 今月は大分使っちまった……」

 

 その人物は警察服を着ている。即ち警官だ。

 だが、その服装は一般的な警官とは少し服装が異なる。下駄を履いていて、警察帽を着ていない。そのような警官は殆ど聞いた事無いだろう。だが、この服装が彼の正装なのだ。

 

 その人物の見た目の中で特に目立つのは、繋がり眉毛であるという事。

 

「うぅむ…… しばらくカップ麺で生活するかもしれん。いっそパチンコと競馬…… いや、競輪もやって一攫千金を狙うべきか…………」

 

 彼の名は「両津勘吉」。

 

 葛飾区公園前派出に勤務している、警察官だ。

 

 だが普段の素行や言動は警察官らしくない所が多い。金儲けが好きで、たまに悪徳商法をしてしまったりと、普通なら逮捕されてもおかしくないのだが、知識や技術面では非常に天才的で、警官としての能力も高い事から今でも警察官として配属されている。一応、一般人になったら何をしでかすか分からない為警察の監視下に置くという目的もあるが。

 

 その彼は先程買いたい品があったため購入したのだが、それで今月の給料を使い切ってしまったのだ。昔から金遣いが荒い方なのだがそれは今も変わらない。今月はどう乗り切るか考えている最中だ。

 

「超神田寿司で働く時間でも増やすか……?」

 

 金を使い切った事から、何とか金を稼ごうと考えている間に、彼の勤務先である「葛飾区亀有公園前派出所」に着いた。

 

「これ予算を使ってるのね?」

 

「僕もこの分野に注目しているから、僕の会社の研究所が積極的に……」

 

「ん? お前ら、何を読んでるんだ?」

 

 両津が派出所に入って声をかけた相手はこの派出所で勤務する警察官、中川圭一と秋本・カトリーヌ・麗子だ。前者は黄色い制服を、後者は桃色の服と言う、両津と同じく警察官が着そうにない服を着用している。

 

「今、僕達はサメの話をしているんです」

 

「サメ? 魚のか?」

 

「えぇ。僕達の会社でもサメの研究をしてるんですよ」

 

 サメ。

 海のギャングとも呼ばれる魚。とある映画の影響により鋭い歯で人を襲うイメージが強い生物だ。だが、サメ全体の中でも人を襲う種はさほど多くなく、人を襲う理由は餌と誤認しているという説がある。

 

「何でサメの研究をするんだ?」

 

「最近フカヒレが人気でしてね、中川グループでサメを養殖してフカヒレを販売する事を計画しているんです」

 

「私の企業もサメの軟骨からコンドロイチンを採取して健康食品として売る計画があるのよ。養殖なら効率良く採れるから研究しようと思ってるのよ」

 

「ほーう。サメねぇ…… フカヒレとかサメ肉は美味しいよな」

 

 両津は二人の発言を聞いて両津はそこまで興味を持っていない…… ように見えて薄っすら“ある事”を考えていた。

 

「なぁ、中川。その研究ってどれ位儲かるんだ?」

 

「えぇ……」

 

 両津の質問に、中川はほぼ察した。これは両津が金儲けを考えている筈だと。

 

「まぁまぁ、教えてあげても良いじゃないか! わしとお前の仲だろう?」

 

「両ちゃんとお財布の関係、と言いたいのかしら?」

 

「違う!! 決してそのような事は無いぞ!」

 

「だったら借金を返して欲しいんですけどねぇ…………」

 

「ギクッ!! ま、まぁ…… 研究に協力して儲けたら、で良い……?」

 

 図星を突かれたのか、両津は若干ギクシャクした様子を見せるが、直ぐにいつもの調子に戻った。まぁ、これが何時もの両津と言うべきか。

 中川は答えるべきか迷ったが、両津の高い技術なら研究が進むだろうと考え、答える事にした。

 

「およそですけど…… 5000億円と推測していますが……」

 

「何っ!? そんなにか!?」

 

「日本だけでなく、世界規模で行っているので……」

 

 あまりの金額の多さに両津は目を丸くして驚愕してしまった。億単位の金額は大会社の儲けに匹敵するような金額だ。金が好きな両津であればその金額に注目する。

 

「よしっ! ワシが中川と麗子のサメの研究を手伝ってやる!」

 

「やっぱりこうなるかぁ……」

 

「そんな気がしたわ……」

 

 研究に参加する事にノリノリな両津を見て二人は予想通りと言わんばかりの、冷や汗を含む笑みを浮かべた。こうなっては何が何でも参加しようとするだろう両津の要望通り研究を手伝わせた方が良い…… という訳にはいかない。両津は金に目がくらんで暴走しがちだ。私利私欲の為に何か不味い事をやりかねない。ここは何とか断った方が良い。そう考えた。

 

「研究員は十分足りてますし、先輩まで入れると人件費が…………」

 

「何言ってんだ! タダで雇っても良いぞ! 儲ければそこに給料以上の儲けが……」

 

「何だ? 何か話しているようだが?」

 

「あっ、部長。おはようございます」

 

 三人が話していると派出所に一人の男性がやって来た。彼は大原大次郎。この派出所の部長であり、両津が最も苦手とする人物だ。

 

「少しだけ聞こえたが、サメの話をしているようだな」

 

「えぇ、僕と麗子さんのグループでサメの研究の話をしてるんですけど、先輩が研究に加わりたいと……」

 

「ふん、ゴキブリ並みの生命力を持つ両津ならサメに食べられても問題無いだろうが、不味くて直ぐに吐き出すだろうな」

 

「ぶ、部長…… その言い方は無いですよ…………」

 

 部長の棘のあるような言い方に両津はやや不満があるような表情を見せるが、部長の言う事も嘘ではない。

 両津の生命力は人間よりも遥かに上だ。以前賞味期限をとっくに過ぎた食品を食べても平気だったり、溶岩に落ちても「アチチ!」と言うだけで済んでいたりしている。度々その生命力から「ゴキブリ並みの生命力」と言われる事があるが、寧ろ「ゴキブリ以上の生命力」と言った方が正しいだろう。

 

「まぁ、色々あって研究に先輩を入れるのは出来ませんよ」

 

「えぇー!!」

 

「今回は諦めなさい」

 

「さっ、両津。さっさとパトロールに行ってこい。良いな?」

 

「うぐぐ…………」

 

 両津は諦めたくない様子だったが、中川も麗子も両津を研究に加える気は無い。部長もこの話を遮るどころか強制的に中止しようと言わんばかりにパトロールに行くよう指示をした。苦手な部長が近くにいるため迂闊に中川達を押し切る事は出来ない。

 

「分かりましたよ。行けば良いんでしょ、行けば……」

 

「分かればよろしい」

 

 さっきも行ったばかりなのに…… そう心の中で愚痴を言いながら両津は渋々パトロールに出かけて行った。

 その様子を見終わった中川達はホッと一息をついた。

 

「あのままだったら押し切られそうでしたよ」

 

「助かりましたわ、部長さん」

 

「両津とは良くも悪くも長い付き合いだからな。何をしようとしているのか大体分かるんだ」

 

 両津とは長い付き合いなので、大原部長は両津の考えを察して中川達の状況を察して助け舟を渡したのだ。おかげで中川達は両津の押しから逃れられた。

 

「先輩は金儲けが好きですからね……」

 

「案外お金の神様だったりして」

 

「お金の邪神と言った方が良いかもしれんな」

 

 両津が去って行った派出所で3人は両津の事を金という言葉を使って評している。両津とお金は切り離せない存在だ。正直お金という存在そのものが両津を動かしているのでは? と思う時すらある。

 あのまま両津が諦めてくれれば…… そう心の中に思いながら3人は派出所の外を眺め続けるのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「う~む、部長がいるんじゃあまりベラベラ話せん……」

 

 両津は少し離れた公園のベンチに座りながら缶コーヒーを飲みながらぼやいていた。

 研究関連の仕事となれば収入も良い筈。そうなれば買いたいプラモデルや玩具を買えるのだが…… 部長がいなければ上手く研究員としては入れていただろう。実に惜しかった。自身の運の悪さが憎いもんである。

 

「だったら…… 自分から立ち上げるべきか…… いや、金が無いか……」

 

 いっその自ら事業を立ち上げようとしたが今の自身は金欠だ。借金をしようにも金を貸してくれる機関があるだろうか……? 自身の名は悪い意味で知られているから多分貸してくれない…… 気がする。

 

「あぁ~…… どうしたものか…… んっ?」

 

 悩んでいると、近くのベンチで自分と同じく悩んでいる人物がいる。何やら頭が良さそうな見た目で、溜め息をついている。何事なのか。

 

「なんか悩んでいるようだが、どうしたんだ?」

 

「あっ、すいません。情けないような所を見せてしまいました……」

 

「職を失ったのか?」

 

「いえ、実は私、此処の近くの会社の研究職なんですけど…… 最近ある事の研究が上手くいってないんです……」

 

 近くの会社。

 両津が公園の側の建物を見ると、如何にも立派そうな建物がある。恐らく5階建ての白く美しい建物で、建物上部には「さし水産」と書かれた看板が掛けられている。この会社の者だろう。

 

「何の研究をやってるんだ?」

 

「最近サメの研究をしてまして……」

 

「何、サメ……?」

 

 サメ。

 この言葉に両津の耳が反応する。

 

「サメの細胞で人の健康を促進させる研究をしているんです。でも、あまり上手くいかなくて…………」

 

 サメの細胞の研究。

 健康分野も十分儲かるであろう分野だ。上手くいけばこれは大金を稼げるのでは? ましてはあの建物の規模からすると相応の企業のように見える。これで大きな成果を上げれば儲けも……

 両津の脳内ではお金を計算する思考を働かせる。その結果、手伝った方が良いと結論付ける。

 

「よしっ! 分かりました!! 是非とも、私が手伝いましょう!!」

 

「えぇっ!? それは嬉しいですけど、しかし……」

 

「なぁに! わしは研究が得意だ! お前たちの力になれるぞ!!」

 

「うぅん…… しかし…………」

 

「まぁまぁ、こういうのは上司と話をしてだな……」

 

「は、はぁ…………」

 

 両津は研究員に少し無理を言ってサメの研究を手伝わせる交渉をするためにその会社に向かった。

 

 今の両津からすれば、大金を儲かる大チャンスだ。これに乗らない理由は無い。研究に成功すれば大儲けは確実だ。そう思っていた。

 

 だが、後に両津はこの事を後悔する事になる。

 

 この時、中川の研究グループ辺りに研究を手伝わせれば良かったと。




両津は「ゴキブリ並みの生命力」って例えられますけど、漫画やアニメの場面を見ると「ゴキブリの生命力を遥かに超えてるだろ……」て思います。

次回は2025年5月31日21時00分に投稿予定です。
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