こちら葛飾区亀有公園前派出所 サメの勢いはサメないの巻   作:青色好き

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原作での丸井ヤング館って出番が少ない気が……
寺井だった頃はそれなりに出番があった筈……


第2話:研究のサメ

「何っ? 両津がさし水産のサメの研究に加わっただと?」

 

「はい。最近成果が上がっているだとか……」

 

 翌日、亀有公園前派出所では部長と中川が両津の事を話している。話題は当然、両津がサメの研究をしている事だ。

 

「両ちゃんったら…… 今度は大丈夫かしら?」

 

「両さんが育てる生き物って、何かと凶暴化しやすい…… ような…………?」

 

 その話題に入って来たのは麗子と、同じく派出所勤務の丸井だ。丸井はかつて「寺井洋一」という名前だったが、現在は改名して「丸井ヤング館」という名前だ。ついでに、改名した一件は自主的に、ではなく両津に無理矢理改名されたという経緯なのだが。

 

「まぁ、確かにそうですね……」

 

「あいつから超人的パワーを受け取っていたりしてな」

 

 丸井の発言に部長達は過去に両津が育てた事のある生き物を思い起こしてみる。錦鯉、ハーブ、クワガタ…… 遂には電子手帳の電子ペットすら元よりも強力な力を付けて成長した。もしかしたら今回も似たような事をしてしまうのでは……?

 

「何だか心配ですね……」

 

「何やら残念さんと本田さんも駆り出されているらしいわ」

 

「うぅむ…… 嫌な予感がするな……」

 

「僕、駆り出されなくて良かった……」

 

 部長達は両津が今サメの研究で良からぬ事が起きるんじゃないのかと不安だった。

 後に部長達は、「あの時無理矢理止めに行けば良かった」と後悔する事になるのだった……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「どうだ? その水槽のサメは?」

 

「順調に育っています。先週より大きくなっています」

 

「こちらもです」

 

 さし水産の研究所。

 サメを育てるための水槽が多数設置されており、それらのガラスは非常に分厚く硬い。サメの攻撃に耐えられるようにしてあるのだ。購入しようとすればかなりの金額になるであろう。それに加えて研究機材や水道代もかなりのものになる筈。それを払える程此処の資金は多いのだ。

 両津はこの資金を存分に利用して、サメの研究を続けている。

 

「本田、残念。そっちのサメの様子は?」

 

「えぇ。前より大きくなってます……」

 

「こっちもです。ドチザメ・ホシザメ・ネコザメ・イヌザメ…… 皆順調に育っています」

 

「サメ達の細胞も調べた結果、病気の治療薬として使えます! これなら医療機関から応募が殺到しますよ!」

 

「まさか停滞気味だった我が社の研究がこんなに進むなんて……」

 

「ワシにかかればこんなもんよ!!」

 

 研究は以前と比べればかなり順調である事を聞いて両津はガハハと大口を開けて笑う。此処の研究所は規模こそかなりあるが研究成果は乏しかった。そんな状況が長く続いた事で研究員の士気がやや下がり気味だった。

 そこに両津が来てからは一変した。

 研究成果が続々出ている。サメの研究は上手くいった。この調子なら研究成果が世界中から注目を浴びるだろう。治療薬として使える。改良すれば難病の治療も可能になるだろう。

 

「このまま食用の研究を始められるかもしれん! 極上のフカヒレやサメ肉は需要が出る筈だ!」

 

「少し前にサメ革も作るって言ってましたけど、今度は食用も!?」

 

「そうだ! この研究をメディアに発表すれば多くの人が食いつく! サメの話題を途切れさせないよう次々とサメの画期的な研究を発表すれば世間はサメブーム到来だ!」

 

 メディアで発表された話題と言うのは流行になる事がある。だが、それは一時的である事が多い。だからこそ、定期的にその話題に関連した新たな話題を出す事で注目を途切れさせないようにする。それが、両津の考えた戦略だ。

 

「ふふふ……! これで大金を儲ける事が出来るぞ! いやぁ~! サメが泳ぐお札に見えてきたよ!」

 

「「「「うわぁ…………」」」」

 

 両津は大口を開けて笑っているが、その様子を見て連れて来られた本田と残念・研究員達はややドン引きしている。まるで金儲けを企む悪党のような表情・仕草だからだ。金儲けに関しては事実なのだが。

 

「よし! 記者会見の準備だな! 早速取り掛かるぞ!」

 

「えぇ! 今から準備したら残業確定ですよ!?」

 

「残業代はきっちり出すから安心しろ!」

 

「でもなぁ…………」

 

 両津の言う事にしぶしぶ文句を言いたいものの、残業代を出す事を約束した事ため皆は記者会見の準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 誰もいなくなった研究室。

 そこには研究の為の機材、装置、そしてサメを収納している水槽だ。一見すると水族館のようにも見える部屋だ。暗い部屋の中では、水槽の水の揺らめきによる光の光陰が常に変わり続けている。

 

 静寂な空間。

 

 だが、水槽内のサメ達は賑やかだった。

 

(なぁなぁ。人間達の話している事、聞いたか?)

 

(あぁ、俺達の細胞を取ろうって言ってやがる)

 

(麻のおかげで痛くないとはいえ、何か嫌だな~)

 

 水槽内のサメ達が互いを見ながら会話している。ホホジロザメ、イタチザメ・アオザメ・シュモクザメ・ノコギリザメ・シロワニ・ジンベエザメ・ネコザメ・イヌザメ・ドチザメ…… 種に関係無く会話している。一部の種は飼育が非常に難しい種もいるが、両津の天才的な閃きなどにより問題無く飼育出来ている。

 

(繋がり眉毛の人間が言ってたな。革とかフカヒレにしようとかも……)

 

(うげぇ! それは嫌だぞ!!)

 

(そこらの人間よりもおっかないわー!)

 

 多くのサメ達が繋がり眉毛の人間、つまり両津勘吉の事を話しているが、サメからの評判は低い。革など産業の道具として扱われているので当然である。

 

(この水槽はそこそこ広いけどさぁ、海の方がもっと広いよなぁ……)

 

(確かにそうだな。どうせなら海で泳ぎたいよ)

 

 サメ達はこの水槽内よりも海に行きたがっている。当然だろう。水槽と海。比較したら海の方が圧倒的に広い。泳ぐ身としては広い方が良いだろう。

 ところで、このサメ達はそのようにしてコミュニケーションをとっているのか分かるだろうか。それは、口の動きで喋っている言葉を理解しているのだ。所謂読唇術という方法だ。話している言語は不明だが、恐らくサメの世界で使われている言語だろう。多分。

 

(そうだ、此処から脱走しない? 海に出られるかもよ?)

 

(それもそうだなぁ……)

 

(此処にいても将来への展望が無いよ……)

 

(同感だ)

 

 あるサメの提案が出された。それは、この研究施設からの脱出。此処を出て広い海原に出ようと言うのだ。この提案に全てのサメが賛成を示した。

 

(でもさ、どうやって出るんだ?)

 

(あっ、そうか。水槽の中にいるからなぁ……)

 

 最初に考えられた関門は、水槽からどうやって出るかだ。

 サメが入れられている水槽だけあって非常に頑丈だ。体当たり程度では壊す事など出来ない。そもそも割る事が出来たとしても此処は研究所内だ。扉を開けたり通路を通ると警報が鳴る可能性が高いだろう。この状況で水槽を割って脱出するのは現実的では無い。

 

(よし、それなら俺に良い考えがあるぜ)

 

(え? そうなの?)

 

 すると、ノコギリザメが自慢のノコギリを光らせながら脱出案を提案した。ノコギリザメの表情を見るとどうやら自信満々のようだ。よっぽど此処から脱出出来ると確信しているようだ。

 

(どうやって脱出するの?)

 

(あぁ。先ずは……)

 

 ノコギリザメは床の排水管をチラチラと見ながら他のサメ達に脱出計画を教えるのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「何ぃ!? サメがいないだと!?」

 

 翌日、研究所で両津達が大慌てしながら室内を調べていた。その理由は、水槽内のサメ達が突然いなくなったからである。両津は他の研究員の案内を受けて水槽のある研究室に到着した。

 そこには、水槽が無傷でありながらも、水槽内に飼育していたサメ達が1匹もいないという、衝撃的な光景だった。

 

「ぬおおぉぉぉ!? サメが本当にいない!? 何処にもいないぞ!?」

 

「今朝研究所に出社した人がこれを見て……」

 

 研究員が指を指す方向には、水槽内の下部にある排水機だ。

 水槽内に水生生物を飼育する以上、水を定期的に入れ替える必要がある。その水を供給する機械と排出する機械があるのだ。これで常に綺麗な水を給水・水槽内の古くなった水の排水を行っているのだ。

 本来多くの水槽があるので水の費用・機械を動かすための電力代だけでもかなりの金額になるのだが、これらの機械は両津の発明品という事もあって水の費用も電気代も結構低く済んでいるのだ。研究する上で費用が安く済むのは非常にありがたい話だ。何せ研究の予算は有限であって無限ではない。限られた予算でやりくりするのだ。節約出来た分を別のところに費やせるので、この機械は研究員にとって非常にありがたい物だ。ついでに、両津は彼自身の知識と技術でこの機械をかなり安く造っている。

 

 そのありがたい排水機が破壊されていて、大きな穴が空いているのだ。

 

 つまり、排水機が破壊されているという事。

 

「まさか、排水機を壊して脱走したのか!?」

 

「恐らくは……」

 

「ひええぇぇぇ!!」

 

 排水機の無残な姿を見て両津は目を大きく開いて驚愕している。大きな穴から水が流れ落ちたため水槽内の水は空っぽだ。そんな水槽は一つだけではない。全ての水槽が同様の状態だ。

 

「先輩、この穴に付いている傷跡からして、恐らくノコギリザメの吻で破壊したのかと……」

 

 残念が傷跡を見ながら推理をしている。実際、破壊痕からして何かノコギリのような物で破壊したような痕跡が残っている。

 

「な、あ、な………… この排水機はかなり頑丈な筈…………?」

 

「もしかして、急速に成長しているのでしょうか……? 両津さんの育て方は短期間で急激に成長するやり方でしたし……」

 

「そういえば先輩が育てて来た生き物って皆物凄く強く成長してましたよね……」

 

「排水機を壊せる程頑丈に育っていたのか……?」

 

 あまりの恐ろしい予測に両津は冷や汗をかきながらワナワナと震えている。確かに結構頑丈なサメ達であるが、まさかここまで強くなっているとは……

 

「ま、まさかノコギリザメが他のサメ達を逃がしたのか?」

 

「恐らくは……」

 

 ノコギリザメが他のサメを逃がす? 何のために? 一種だけでなく他種まで助けるとは…… もしかしたら自身の知らない所で協力関係を築いていたのだろうか? もしそうだとしたら何時やってたのだろうか?

 

 いや、そんな事よりサメの行方を追跡しなければ!

 

「サメの行方を追うぞ! 直ぐに調べるんだ!!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 両津は他の本田・残念・研究員に直ぐさま指示を出す。

 他のサメを助けている事から普通のサメではないので、万が一自然界に逃れてしまったら生態系に与える影響は計り知れない。そうなれば世間から猛烈な批判が来るのは容易に想像出来る。

 

 何せ養殖していたのはサメだけではない。

 両津によって手を加えられた特殊なサメも含まれているのだ。

 

 それ以上に恐ろしいのは、サメ達が人を襲ってしまったら……

 

「排水機の下である大きな排水管に穴が……」

 

「何処まで続いてるんでしょうか……?」

 

「そういえば今日のニュースで東京湾沿いの壁に穴が空いていたって聞きましたけど、まさか……」

 

 この場にいる皆が最悪の可能性を頭によぎる。最早サメ達はこの周辺にいない。人類がまだ完全に調べ切れていない広大な、生命誕生の地に逃げて行った可能性を……




ホシザメは可愛いと思う。

次回は2025年6月7日21時00分に投稿予定です。
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