こちら葛飾区亀有公園前派出所 サメの勢いはサメないの巻   作:青色好き

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サメと聞いたら最近「おでかけ子ザメ」を思い出します。
夏に公開される映画を見てみたい……


第3話:不思議なサメ達

「どうですか?」

 

「おう! 大量だな!」

 

「この辺りはよく捕れますね!」

 

 東京湾からやや離れた海域。

 広い海が白波を立てている中、一艇の漁船が漁をしている。この穴場は魚がよく捕れる漁場で多くの漁師が此処を訪れている。東京湾付近の海域は黒潮の通りで、カツオなどの魚が泳いで来るのだ。そういった魚達を捕っているのである。

 

「捕獲網は全部回収しました」

 

「これだけ捕れれば良いだろう。港に変えるぞ」

 

 漁を終えて漁師達は港に変える準備をし始める。船のエンジンを付けてこの場を離れようとした。

 

 その時だった。

 

「ん? 魚群探知機に反応があります」

 

「何だ? 群れか?」

 

「えぇと…… 2m前後の大きさの魚が3匹…… こっちに向かってる!」

 

「2m? 何だ?」

 

 漁師の一人が魚群探知機の反応を見て声を上げた。探知機には大き目の反応が映っており、しかもそれがこの船に向かっているのだ。一体何の魚なのだろうか。

 

「もうすぐ水面に出ます!」

 

 漁師が船の水面に注目する。一体何の魚なのだろうか。危険な魚である可能性を考えて漁師は銛を構えた。万が一の備えである。

 

 そして、水面に何かが浮かんできた。少しずつ輪郭が見えてくる。

 

 

 

 

 

 その姿は、紛れも無く“サメ”だった。

 

 

 

 

 

「さ、サメ……!?」

 

 サメが現れた事に漁師達は驚いた。

 

 だが、何のために現れたのだろうか?

 サメは人を襲うというイメージが強いため、人を襲いに来たと考えるかもしれない。しかし、実際に人を襲う可能性があるサメはあまり多くない。それ故にこの船を襲おうとしている可能性は低い。魚を専門とする職業の「漁師」であるためその辺りは知っている。

 だとしたら、一体何故?

 

 …………――。

 

 …………――――、…………。

 

「……、んっ? 何だ?」

 

 漁師達が現れたサメが何かおかしい事に気付いた。サメ達は互いに向き合い、口を動かしている。まるで会話をしているような。もしかしてこのサメ達は会話している? いや、まさか、そんな。漁師達はそう思いながらサメ達の様子を見続ける。

 

 そうして、サメ達がとった行動は……

 

 

 

 

 

 鰭に高級魚を載せて、手渡そうとすること。

 

 

 

 

 

「……、へっ?」

 

「えぇと………… これをあげるって事か?」

 

 漁師達の言葉にサメ達はウンウン、と頷く。発言のタイミング・会話の内容が通じている。それはつまり、

 

 言葉が通じている!

 

 これには漁師達も驚くしかない。人語が通じる魚に会うなんて映画かアニメ位しか思いつかない。その有り得ないような事象が目の前にいるのだから。漁師達は目をパチクリするしかない。

 

 だが、サメ達は高級魚を持つ鰭とはもう片方の鰭で、ある方向を指差している。漁師達がその方向を向いてみると、先程自分達が捕獲した魚達が入っている籠だ。

 

「もしかして、欲しいのか?」

 

「えっ? あれ全部か?」

 

 まさか全部欲しいと言っているのだろうか?

 だが、それを聞いたサメ達は顔をブンブンと横に振っている。どうやら否定しているようだ。次に鰭で山のような輪郭線を描いた後、かなり小さい山の輪郭線を描いた。

 

「もしかして、少しだけ欲しいのか?」

 

 漁師の問いにサメ達はうん、と頷いた。サメの言う通り、漁師達は収穫した魚を十匹程サメ達に分け与えた。大きさはそこまで大きいとは言えないが、サメの体格からすれば十匹程で空腹を満たせるだろう。

 

 …………!

 

 …………~~!

 

 ――!

 

 魚を分け与えると、サメ達は鰭に乗せている魚を漁師達の漁船に乗せ、海の中へと潜っていき姿を消した。その場には漁師達と船に上げられた魚が残された。

 

「今のサメ達、一体何だったんだ……?」

 

「会話が通じてたし、普通のサメじゃねぇ……」

 

「あと、サメから頂いた魚は…… ありがたく頂く、か……」

 

 漁師達は先程の信じられないようなやり取りを思い出しながら、港に帰る事にした。もう直ぐ陽が落ちる時間帯だ。これ以上漁をする訳にはいかない。

 だが、帰った時皆にどう言えば良いのだろうか。サメのお願いを聞いて魚を交換した、と言っても皆が信じてくれるとは思えない。兎に角、どうするか考えながら港に帰ろうと思い船を動かしたのであった。

 

 そして、港に漁師達が帰ると交渉しようとしてくるサメと出会ったという漁師や釣り人が複数人いる事に驚くのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「どうやら日本どころか世界中で話題ですよ」

 

「うぅむ、サメが高度な知能を持っているとしか思えん」

 

 葛飾区亀有公園前派出所では、中川が新聞を持ちながら麗子・部長・丸井と話をしていた。その内容は、最近巷を騒がせている“奇妙なサメ”の事である。

 

 ある記事曰く「漁をしていたらサメが高級魚や貝と交換して欲しいと頼まれた」。

 

 ある記事曰く「海で釣りをしていたらサメが絡まった釣り糸を解いた」。

 

 ある記事曰く「海で溺れた子供を救出した」。

 

 ある記事曰く「川でサメが目撃。網を咥えながら魚を捕る」。

 

 様々な新聞やネット・テレビのニュースでは奇妙なサメを取り上げている。仮にメディアを見ていなくても道行く人々の話題もこういったサメ達の事で持ち切りだ。少し道を歩けばサメの話。学校でもサメの話。仕事場でもサメの話。お店に行ってもサメの話。町の何処に行ってもサメの話だ。

 最早今の世間はサメの話題で一杯。昨今の事件・事故のニュースを過去のものにした。

 

「この一件で、サメは新たな人類なのでは? という意見もあるのよね」

 

「魚だけど人ですか……」

 

「地球の次の支配者はサメかもしれんな」

 

「取り敢えず人を襲うサメじゃなくて良かった……」

 

 派出所の面々はサメの事を話している。町の人々を守る立場である警察官である以上人々の命に関わる可能性がある事を無視する訳にはいかない。今のところ人が不思議なサメに傷付けられた人が一人もいないのは幸運だ。だがサメを警戒し続けるべきだろう。

 だが、この面々の中に入っていないメンバーがいる。

 

 両津勘吉だ。

 

「そういえば先輩はどうしたんでしょうか?」

 

「今日両ちゃんは休みじゃないわよね?」

 

「う~ん…… もしかして…………」

 

「あいつの事だ。サメ絡みで金儲けでも考えているに違い無い。だが、世間を騒がしかねないからワシらも探した方が良いだろう。パトロールのついでにな」

 

「そうですね。先輩なら十分過ぎる程有り得ます」

 

「そういう事態を何度も引き起こしてるからね…………」

 

 部長達はパトロールの時に両津を探そうと考えた。サメの話題が出るようになったのは両津がさし水産のサメの研究に協力するようになってからだ。恐らくそれが関係しているのでは? その疑問を脳内に留めておきながらパトロールに出かける事になった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「どうですか? せんぱ~い…………」

 

「駄目だ。全然見つからん……」

 

「もうこの辺りにはいないのでは……?」

 

 江戸川の河川敷には両津・本田・残念の3人が疲れたような表情でぐったりと体を横たわっていた。近くには小型のボートや大型の捕獲網が置いてあり、少し前に川に出ていた事が分かる。

 

「少し前に、江戸川にサメが現れたからって直ぐに来たんですけど、1匹もいません……」

 

「くそっ! もう何回目だ! わしらが来た頃にはもう既にいない! 流石のワシも疲れてきた…… だが、サメが研究所から逃げたなんてまずすぎる!」

 

「でも、流石にもう動けません…………」

 

 両津達はサメを探しにこの江戸川に来ていたのだ。研究所から全てのサメが脱走してから兎に角サメを探し始めた。脱走直後に奇妙なサメの目撃例が相次ぐようになったため各地を奔走するようになった。だが、未だに捕まえていない。サメの脱走から何日も経っているのに1匹も捕獲出来ていない有様だ。

 今のところ会社から脱走したサメである事は世間にバレていない。だが、バレたら責任追及や生態系の攪乱などの批判が来るのは目に見えている。兎に角早く見つけなければ。

 

 だが、ニュースを見てみると海だけでなく川や湖にもサメが現れている。汽水湖なら分かるが淡水の川や湖にも出現している。オオメジロザメは淡水域でも生息が可能であるが、それ以外のサメも出現している。その事に心当たりが大有りなのだ。

 何せこれらのサメは両津が……

 

「えぇい! 何が何でもサメを捕まえるんだ! 良いな!」

 

「あのぉ…… 先輩……」

 

「その、部長が…………」

 

「      えっ      」

 

 両津が最も苦手とする人物の名前が出された事でゆっくりと、ぎこちないような動きで首を後ろに向けると、そこには……

 

「ほぅ。両津君。随分と漁業に精を出しているじゃないか」

 

「ぶ、ぶ、部長…………」

 

 両津が部長の姿を見た瞬間、両津の顔が次々と青ざめていく。太陽を背にしている事もあり大原部長の姿は影がかかっている事から威圧感が凄まじいように見えているその姿は魔王を彷彿とさせる。

 

「先程サメが逃げたと言っていたが、どういう事かな?」

 

「ぇ、ぁ………… ぃや………… その………………」

 

「両津、最近サメの研究をしていたが…… まさかそのサメが脱走をしたのではないのかね?」

 

「いぇ…… そのような事は…………」

 

「本田君、残念君。どうなのかね?」

 

「「ギクッ!!」」

 

 部長の鋭い視線が本田と残念に向けられた。部長の瞳は二人をきっちりと捉えており、不良どころか猛獣すらもビビらせる程の威圧感を放っている。そもそもそこまで強気な性格ではない二人(本田の場合バイクに乗れば話は別だが)からすればたまったものではない。

 厳かかつ強烈な威圧感により、二人は……

 

「は、はい…… 部長さんの言う通りです…………」

 

「さし水産の研究所から全部脱走したんです…………」

 

「あっ! コラ! お前ら!!」

 

 二人が遂に暴露した事で両津はもう駄目だと内心思い始めた。嘘をつくような性格ではない二人がハッキリと認めた。となればもうおしまいだ。もう隠しきれない。

 

「ほぅ…… 両津君。ちょっと派出所に来てくれないかな…………」

 

「ぁ………… ぁ………………」

 

 両津の顔がどんどん青ざめていく。何時もなら拒否するのだが、大原部長の前ではその気が起きない。逆らえない。もう駄目だ。

 

「あぁ、先輩……」

 

「まぁ、仕方無いわね……」

 

 中川と麗子はやや離れた場所で部長にパトカーに押し込まれる両津を静かに見ている。この後どうなるかはもう分かりきっている。本田と残念は連れて行かれる両津を憐れむと同時に疲れる仕事から解放される安堵により複数の表情を見せている。

 

 こうして、その後…………

 

 

 

 

 

「バッカモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!」

 

 

 

 

 

 葛飾区亀有公園前派出所では窓ガラスどころか建物を破壊しかねない程の怒号が葛飾区に響き渡った。




サメと言ったら動物パニックの定番ですけど、珍しく人との友情を描いた「チコと鮫」みたいな映画も増えて欲しいです。

次回は2025年6月14日21時00分に投稿予定です。
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