こちら葛飾区亀有公園前派出所 サメの勢いはサメないの巻   作:青色好き

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サブタイトルは「船上」と「戦場」をかけたギャグです。

だから何だという話だけど……


第7話:船上の戦場

「うぉっ!?」

 

「何だっ!?」

 

 大きな貨物船を揺るがす程の揺れに両津達は立っていられなくなり、本田などは転んでしまう。麻酔弾により眠っているイカシャークとタコシャークは特に異変は見られない。まだ眠っている。

 つまり、この船の揺れを引き起こしている元凶はこの2体ではない。また別の存在である事。

 

「あぁっ! あれを見て下さい!」

 

 残念が船の下を見ている。その声を聞いて両津達が皆一斉に船の縁に来て下を覗き込んだ。

 

 その下には本来青い海が見える筈なのだが、両津達が見たのは……

 

 

 

 

 

 キュオオォォォォ!!

 

 グウウウゥゥゥゥ!!

 

 ウゥオオアアァァァ!!

 

 

 

 

 

 多数の頭を生やしたサメだった。

 

 

 

 

 

 

「何ですか!? あれっ!」

 

「頭が8つありますよ!?」

 

「両ちゃん! あんなものを」

 

「ワシは知らん!」

 

 8つも頭を生やすサメが船に体当たりしている光景に皆一堂に驚く。そもそも多頭の生物なんてヤマタノオロチやヒュドラのような、架空の生物のようだった。そのサメが船に強力な体当たりを何度も行っているのだ。

 

「8つの頭って事はヤマタノオロチならぬヤマタノシャークですよ~!」

 

「名前を言っている場合かぁ~!」

 

 本田の命名に突っ込む両津だが、この現状で突っ込んでいる暇は無い。

 多頭のサメ…… ヤマタノシャークは両津達のいる船上の方向を見た。サメの視線は両津達の方を向いている。標的を両津達に決めたようだ。ヤマタノシャークは長い首を腕のように使って船を登ってくる。鋭い牙を生やす口を船の外壁に食い込ませて登っているのだ。凄まじい力である事が窺える。

 

「ひええぇぇ!! 登ってきます!」

 

「まずい!」

 

 ヤマタノシャークは猛スピードで上がってくる。両津達は麻酔銃を直ぐに構えて撃った。イカシャークとタコシャークと違って長い足は無い事から受け止められない筈。そう考えたのだ。

 

 しかし、

 

 長い首をバットのように振る事で麻酔弾を弾いたのだ。

 

「えぇ!?」

 

「そんなっ! なんてサメだ!」

 

 タコシャークとイカシャークの時は足で受け止めていたが、ヤマタノシャークは首で弾いた。このサメ達は見た目だけでも怪獣染みているのだが、身体能力も常識外れだ。両津が創り出したり育てた生物はとんでもない能力を持ったりしたが、今回のサメはいくら何でも滅茶苦茶だと痛感した。

 

 何発撃ってもヤマタノシャークは簡単に弾いてしまい、遂に船に上陸してしまった。

 

 グウウゥゥゥ…………!

 

 ヤマタノシャークは両津達をギロリと睨みつけている。その睨みの圧だけでも相当なものだ。あまりの圧に本田は腰が抜けてしまい座り込んでしまう。

 

「あわわわ……」

 

「部長、事前に呼んでいた応援は……」

 

「そろそろ来る筈だ…… それまでに持ちこたえねば……」

 

「えっ!? 応援を呼んでいるんですか? それを早く言って下さいよ!」

 

「船でサメが暴れているからそれに対処せねばならなかったからお前に言う時間が無かったんだ!」

 

「あっ! あれは…………」

 

 残念は上空に指を指した。両津達一同が上空を見ると、そこには多数のヘリが此方に向かってきているのだ。ヘリの外観からしてあれは間違い無く機動隊のヘリだろう。部長が手配していたヘリが丁度到着したのだ。

 

「これならあのサメもどうにか出来るわ!」

 

「あぁ、先ずはあの多頭のサメをどうにかするまで安心出来んぞ! 皆、踏ん張るんだ!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 大原部長の掛け声に両津達一同が返事をすると同時に、気を引き締める。機動隊のヘリには麻酔銃とは別の銃を構えた機動隊員が乗っている。そのヘリの数は8機。これだけの数で攻撃を撃てばいくらヤマタノシャークでも堪えられないだろう。両津達の麻酔銃も加えると更に効果があるだろう。

 

「こちらは機動隊です。合図と同時に火器をあの多頭のサメに撃ちます。大原さん達は攻撃で怯んだところに麻酔を撃って下さい」

 

「分かりました!」

 

「おぉ! 頼りあるな!」

 

 機動隊のヘリからの援護でヤマタノシャークを攻撃するようだ。両津達からすれば目の前の敵を無力化出来るのだ。ありがたい事この上ない。先程のイカシャークとタコシャークだけでも厄介だったので、援護してくれるだけでも今の事態を収束しやすくなる。

 

 グルルルル…………

 

 ヤマタノシャークは飛行しているヘリコプターを忌々しく見つめている。上空に位置している事から攻撃するのは難しい。イカシャークとタコシャークは足でコンテナを投げて攻撃していたが、ヤマタノシャークは足が生えていない。多頭の口でコンテナを噛みつけば、コンテナを持てるかもしれないが…… 顎が大きく開かなければ噛みつくのは難しいだろう。コンテナの角であれば噛みつけるかもしれないが直ぐに堕ちてしまうかもしれない。それを分かっているのか、ヤマタノシャークは飛び道具を持っていない事に苛立ちを募っているようだ。

 

「間も無く攻撃が始まります 構えて下さい!」

 

「分かりました!」

 

 機動隊から連絡が来た。そろそろ麻酔を撃つようだ。両津達は麻酔銃をヤマタノシャークに向ける。何時でも撃てる状態だ。

 

 両津達と機動隊が武器をヤマタノシャークに向けて撃とうとした。

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

 近くの海面から大きな波しぶきが上がった。

 

 

 

 

 

「な、何だ!?」

 

 突然の音に両津達は海面に視線を移す。もしかしたら新しいサメが現れたのか? その不安が脳内をよぎった。

 

 その考えは的中した。

 

 

 

 

 

 大きな鰭を生やすサメが、海から現れた。

 

 

 

 

 

「な、何だあのサメ!?」

 

「トビウオみたいです~!」

 

 そのサメは大きな鰭、もう少し正確に言うと胸鰭と腹鰭が大きく、まるで航空機のような形で飛行している。いや、むしろトビウオに近い。人類に協力的なサメが言った、トビウオの鰭を生やしたサメとは、あのサメの事で間違い無いだろう。

 

「と、トビウオシャークですぅ!」

 

「名前を付けてる場合かぁ!」

 

「まずいですよ! あのトビウオシャーク達、機動隊のヘリに向かっています!」

 

 中川の指摘通り、海面から現れたトビウオシャークは8匹。8匹共ヤマタノシャークに狙撃しようとする機動隊のヘリに向かっている。

 

「止むを得ん! 撃て!」

 

 機動隊員は止むを得ずトビウオシャークを攻撃し始める。持っている銃から轟音と共に火花が散った。銃から弾薬が放たれ、それがトビウオシャークに向かって進んでいく。本来であればこの火器が当たって小規模の爆発が起き、トビウオシャークにダメージを与えられるだろう。

 

 だが、それは叶わなかった。

 

 グォォン!

 

「よ、避けた!?」

 

 トビウオシャークはあっさりと火器の攻撃を回避した。秒速100メートルを超える速度で向かって来る攻撃を避けた。凄まじい動体視力だ。トビウオシャークはそのままヘリに向かって飛行していく。

 

「まずい! 回避!」

 

 ヘリは即座に回避行動をとる。ヘリコプターは横に移動して回避しようとする。しかし、トビウオシャークは鰭を動かす事でヘリと同じように横方向に体が向いて、ヘリコプターを追いかけようとする。ヘリコプターは更に回避しようとして移動を行うが、トビウオシャークもヘリコプターを追いかけるように移動する。

 

「これじゃあヤマタノシャークを狙撃する余裕が無いです!」

 

「まずいなぁ……」

 

「でも、何であのトビウオシャーク達は空を飛び続けられるんだ?」

 

 皆がトビウオシャークの襲撃に不安を感じる中、大原が疑問を投げかける。確かにトビウオは飛行、と言うより滑空する生物だ。あのトビウオシャークは上下左右に上昇・下降を行っている。滑空するトビウオも多少上昇・下降を行えるだろうが、あのトビウオシャーク達はかなり自由自在に飛行している。最早その飛行能力はドローンのようだ。

 

 トビウオシャークを見ている残念はある事に気付いた。

 

「あの、鰓から風を出しているように見えるんですが……」

 

「風……? まさか、あそこから風を出して飛行しているのか?」

 

「鰓にそのような機構があるんですか!?」

 

「本当に飛行機みたいな機構になっているなんて……!」

 

 残念が見つけた、鰓から風を出す機構。どうやらトビウオシャークはそれを利用する事で飛行しているようだ。まさかトビウオシャークにそのような機構が付いているとは…… あまりの驚きにより、最早開口するしかない。

 

「先輩、本当になんて生物を創ったんですか……」

 

「た、確かに創ったがああなるなんて思わなかった…………」

 

「しかし、どうすれば…………」

 

 だが、どうやってトビウオシャークを無力化するか、両津達は頭を悩ませる。高い機動力で飛行出来るため、隙を狙うのは難しい。実際機動隊のヘリも回避を続けるしかない状況だ。

 

 それに、懸念事項はもう一つある。

 

 グルルルル……!

 

 船にいるヤマタノシャークだ。さっきまで大人しくしていたようだが、トビウオシャーク援護により再び勢いが現れ始めたようだ。視線が両津達に向いている。言うまでも無く両津達を襲うつもりのようだ。

 

「ど、どうする!? 両津!?」

 

「そんなの私に聞いても知りません!」

 

 流石の両津もこれ程面倒なサメを相手にするのは非常に面倒だ。頭が8つあるのだ。一つの頭を攻撃しても、攻撃している最中に他の頭に襲われるだろう。機動隊のヘリもトビウオシャークの回避に精一杯の状況。両津達を援護する余裕は無い。

 

(もしも万が一眠らせたタコシャークとイカシャークを起こさせたらもっとヤバい事になっちまう……!)

 

 それに、先程眠らせたタコシャークとイカシャークがこのサメ達を無力化する過程で再び起きる可能性もあるのだ。強力な麻酔なので簡単に起きる事は無いものの、万が一の事を考えると、直ぐにサメ達を無力化しなければならないのだ。

 非常に解決が難しい状況。どうすれば……

 

 グオオオォォォォォ!!

 

「やべぇ!」

 

 ヤマタノシャークが8つの頭を両津達に向けて突進してきた。両津達はギリギリ回避するが柔軟に動く首が両津達一人一人を逃さないように追尾する。麻酔弾を撃とうにもヤマタノシャークの頭に追いかけられている状況なので、中々撃てない。

 

「僕達が散らばるように逃げれば……」

 

「成程、それなら8方向の内どちらかに絞られる。そして背後から……」

 

 中川の提案は悪くない。ヤマタノシャークは8つの頭を動かせるため攻撃範囲が広いが、後方ばかりは無理だ。後ろばかりは防御出来ない。つまり、誰かが気を引いてその隙に後ろから麻酔銃を撃つという作戦だ。

 問題は、誰が囮になるかと言う事だが……

 

「両津! お前が囮になるんだ!」

 

「げぇ…… やっぱりこうなるのかよ…………」

 

「大丈夫! 両ちゃんの馬鹿力なら何とか囮が務まるわよ!」

 

「褒められているのかもしれんが嬉しくないぞ……」

 

 やはり両津だ。超人的な力を持つ両津でないと囮にならないだろう。相手が超常的な力を持つのであれば、こちらも超常的な力を持つ両津が最適だろう。それに、トビウオシャークもどうにかしなければならないため何とかしてでもヤマタノシャークを無力化する必要がある。

 

「急げ! 両津!」

 

「あぁもう! 分かりましたよ!」

 

 部長に急かされて両津は直ぐにヤマタノシャークの目の前に出る。ヤマタノシャークは両津を見て視線を両津に定める。

 

「や~い! アカンベロベロべ~! 悔しかったらこっちにおいで~!」

 

 グ、オオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!

 

 どうやらヤマタノシャークは両津の挑発に乗っているようだ。咆哮で何となく分かる。というか頭部に血管が浮き出ているので結構分かりやすい。サメも怒ったら血管が浮き出るものなのだろうか……?

 

「よしっ! 今の内に後ろから麻酔銃を!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 ヤマタノシャークが両津に気を取られている今が好機だ。大原部長達が麻酔銃を構えようとする。これでヤマタノシャークを無力化し、続いて機動隊のヘリを追いかけるトビウオシャークを無力化する。それが大原達の脳内で考える計画だった。

 

 だが、

 

 トビウオシャークが両津に向かって来たのだ。

 

「んっ? ぬおおぉぉぉ!?」

 

 ヤマタノシャークの囮になっている両津は追いつかないように走っている事に夢中だったのため、トビウオシャークの接近に気付かなかった。両津を掴むために下降して来たトビウオシャークは鋭い歯で両津の服を正確に掴み、上昇していく。

 

「何っ!?」

 

「先輩っ!?」

 

 まさかトビウオシャークが乱入するとは思わなかったため大原達は驚きの声を上げた。近くでは機動隊のヘリが飛んでいる。どうやら両津を捕まえるためにこの近くまでヘリを誘導するよう追いかけたのだろう。

 

 それはつまり、大原達の思惑に気付いていたという事。

 囮の両津を捕まえる事でヤマタノシャークの無力化を阻止したという事だ。

 

 囮役の両津がいなくなった事は……

 

 グルルルル……!

 

「ぼ、僕達に!」

 

 そう、中川達に標的を変えたという事。

 

 ヤマタノシャークの全ての頭の視線が中川達に向けられる。口からは涎と思しき液体も垂れている事から、捕食しようとする気がある事が分かる。麻酔銃を撃とうとするが少し前のようにバットの要領で跳ね返されてしまうだろう。

 

「まずいな…………!」

 

 部長の一言は正に今の状況を的確に表している。

 囮役の両津はトビウオシャークに連れられてしまい、機動隊のヘリはトビウオシャークに追跡されて狙撃どころではない。最早完全に一貫の終わりだ。

 

「くっ…… どうすれば…………」

 

「もう駄目だ~!」

 

 大原達は絶望的状況に立たされた。




空飛ぶサメ…… うっ! ウルトラマンZのゲネガーグが……!

次回は2025年7月12日21時00分に投稿予定です。
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