使い魔のフリーレン ~ゼロからの旅路~   作:お団子

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第43話『帰省』

 

 フリーレン召喚から3ヶ月後。

 7番目(アンスール)の月、第1(フレイヤ)の週、ヴォイド(1)の曜日にて。

 トリステイン魔法学院、ルイズの部屋。

 

 

「ふぁ……」

 その日も優しい陽光を浴びて、ルイズは目を覚ます。

 

「おはようルイズ。御寝坊さんだね」

 フリーレンの声が聞こえてくる。ルイズは寝ぼけた眼をこすった。

 

「んぁ……起きてたのフリーレン……??」

 背伸びして、ベッドから出て、少し思考が働きかけた時になって気づく。

 

「え、フリーレン……?」

「なに、ルイズ」

「うそ、まだ七時よ、え、もう起きて……」

「当然だよ。私だってたまには早起きするよ」

 

 

「むふー」と自慢げに胸を反らす使い魔エルフを見て、ルイズは仰天した。

 髪もちゃんと整えてる! 服も着替え終わってる! 周りもちゃんと片付いてる!

 

 

「まさか朝食もすでに……!」

「それはまだ」

 

 食べさせて。主人に対してあけすけに言うフリーレン。

 早起きするフリーレンはなんか新鮮だ。思わずルイズは口をポカンと開けていた。

 あれ、そういえば……。とルイズは、夢の中で別世界の人間と邂逅した時の記憶を掘り起こす。

 

(いいですか、もしフリーレン様が早起きしたら褒めてあげてください。本当に、本当に滅多に無いことなので)

 

 フェルンがそんなことを言ってたのを思い出したのだ。

 まあ、これも姉カトレアを治す気合の表れだと思えば。そう考えたルイズは満面の笑みで、

「やるじゃないのフリーレン! 主人としてわたしも鼻が高いわ!」

 

 そうフリーレンを褒める。「むふー」と、フリーレンも表情を上機嫌に染めた。

 そんな一幕から始まった朝。

 

 

 

 夏季休暇が始まったことで、アルヴィーズの食堂もかなり閑散としていた。

 大半の生徒が帰省していなくなったことで、食事は定時通りには行われず、給仕に頼むなり外食なりしてやりくりする、という形となっている。

 とはいえ、食堂自体は開放しているので、ここで食事をとること自体は問題ない。学院の通例でもあった。

 

「そう、じゃああんたらはお姉さんを治しに行くのね」

「ええ、そういうこと」

 

 そのアルヴィーズの食堂にて。

 いつもの席でルイズ、キュルケ、タバサ、そして使用人にシエスタ。使い魔のフリーレン。

 この五人がわいわいと食事しながら会話していた。そして先ほど、ルイズが姉の様子を看るために帰省すること、そして薬草探しの旅に出る計画を聞いたのだ。

 

「この学院で、薬草についての知識はそれなりに収めたと思っているわ。あとはわたしが〝花畑を出す魔法〟で、一瞬だけでもその花を咲かせることができれば」

「理論上、今まで匙を投げてきた難病も治せるかもしれないと。よくよく考えるとすごいことやれるようになったのね、あんた」

 

 キュルケもこれには素直に褒める。ルイズは使い魔よろしく「むふー」と自慢顔。

 魔法花の自生が多いハルケギニアでは、薬の作成に多くの薬草を使う。

 だが病気を治せる力を持つ花の多くは、地域や季節の影響を受けるものが多く、長期保存や別の場所で咲かせる技術がまだ未発達。できたとしても効能のレベルがガタ落ちしてきちんとした素材足りえない。

 

 ちゃんと条件を整えなければ、今の『系統魔法』では咲かせることもできない花も多くあった。

 

 そのせいで解決できない難病が多くあったのだが、フリーレンから教わった〝花畑を出す魔法〟なら、一瞬とはいえその問題をクリアできる。

 その最たる例が、マルトー事件の『風雲花』であるからだ。あれは本来、アルビオンでしか咲かない花なのであるからして。

 

「系統魔法で花を咲かせるのは『錬金』の副次作用による応用だからね。ちゃんと『咲かせる』ことに特化したルイズの魔法なら、問題はないはずだよ」

 

 フリーレンが分析を交えながらそう答える。

 つまり、ルイズが薬草の花を直に触れていけば、難病とされたものも大半を解決できるかもしれない可能性があるのだ。

 それを、次女カトレアの病気を治すことで証明する。ルイズの意気は高い。

 

「将来は医者にでもなるつもり?」

「それもいいわね。薬師になることもちょっと考えてるわ」

「『花畑』改め『薬師(くすし)』のルイズね。いいじゃない。ゼロから沢山二つ名が増えて」

 

 キュルケの言葉に、ルイズは益々上機嫌になる。将来は病院を開くのもいいかもしれない。色んな将来が見え始めて、ルイズは今がすごく楽しく思えていた。

 

 

「それで、あんたたちはどうするの? キュルケ、タバサ」

 なんとなく気になったルイズは、話題を変えて尋ねる。聞かれたキュルケは背伸びして、

「う~ん、別にウチに帰る予定ないしね。あんたの旅に付き合ってあげようかとも思ったけど、ヴァリエールの領地にツェルプストーが入るのも余計な問題になりそうだし」

 と、特に予定自体はないことを明かす。

「ま、ここでジャンと魔法のレッスンを続けるわ。まだ〝地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)〟を制御できているわけじゃないし」

「……本当にレッスンだけなの?」

「あら、あなたにしては鋭いじゃないの」

 案の定、それ(レッスン)だけが目的じゃないとばかりにキュルケは笑う。

 

「ふふ、ああして話してみると、結構お堅い人なのよね、生徒と教師の間できちんと境界線を設けているっていうか。でもそこがますます燃えるのよ! この夏休み中に絶対落としてみせるわ!」

 

『微熱』の火を燃やし始めるキュルケを見て、「まあ、頑張って」と答えるしかないルイズ。

 

「…………」

「どうしたのタバサ?」

 ここでキュルケがタバサの方を見て尋ねる。よくよく見れば、タバサはずっとルイズを見つめていた。

 それは、ルイズが「薬師になることも考えている」と発言した時からであった。

 

「なに、どうしたの?」

「ちょっと、いい?」

 

 タバサはそう言うと、かたりと椅子から立ち上がってバルコニーの方へと向かう。

 

「わたし一人……に用があるってことでいいの?」

「あの態度は多分そうね。行ってあげて」

「じゃあルイズ、私は部屋でいつでも出られるように準備しておくから」

「ええ、お願いねフリーレン」

「じゃあわたし、フリーレンさんのお手伝いしますね!」

 ここで朝食会もお開きとなる。

 ルイズはタバサと一緒に向かい、フリーレンとシエスタはキュルケと別れて部屋へと向かう。

 

 

「で、どうしたのよタバサ」

 食堂の窓際にあるバルコニーに向かったルイズは、そこで寄りかかるタバサに話しかける。

 いつも携帯している杖を持っていないため、手すりに上半身を寄りかからせ、ちょっと物憂げな顔をしていた。

 

 そんな、ちょっと珍しい表情を浮かべているタバサはやがて、その目をルイズに向けて言った。

 

「あなたに一つ、お願いがある」

「なに?」

「……壊れた精神を治す薬。そんなものがもしできるなら、作ってほしい」

「……壊れた精神? どういうこと?」

 

 いきなりの懇願にも驚いたが、その会話の内容を復唱して、ちょっと怪訝な表情でルイズは問う。

 タバサは手すりに寄りかかるのをやめ、姿勢を正してルイズと向き合う。

 

「家庭の事情があって、詳しく話せないけど」

 そう前置きして、タバサは語る。

 

 なんでもタバサの母はその昔、悪い人に騙されて『精神を壊す薬』を、誤飲してしまったらしい。

 そのせいで今の母は寝たきり、その症状は思いのほか酷く、娘である自分すら認識できないほどの、錯乱状態にあるのだとか。

 

「なによそれ、酷い話じゃない……!」

 

 これにはルイズも思わず閉口する。

 まさかの無表情を貫くこの少女に、そんな悲惨な現在があるだなんて。

 

「お父さまや他の親族はどうしているの?」

「今はいない。昔、色々あって……」

「そうなの……」

 

 目を伏せて答えるタバサを不憫に思ったのか、それ以上はルイズも尋ねなかった。

 慎みが貴ばれるトリステインでは、相手の過去を根掘り葉掘り聞きまわるのは恥ずべきことと教えられる。だから、「なにかあったのね」とだけ察するところで留めた。

 

「だから、母さまの壊れた精神を治す薬を探している。もし、もしあなたが……」

「分かったわタバサ。もう言わなくても大丈夫」

 

 ルイズは微笑みを浮かべて、タバサの手を取る。

 タバサだって、自分のことを影で支えてきてくれた。その恩はきっちりと返したい。

 それが貴族としての筋であると、強く思っているからだ。

 

 それになにより、こうして頼られるなんてこと、今までなかった。

 だからこそ、その頼みに応えたいという気持ちもまた、人一倍強かった。

 

「今度、あなたのお母さまに会わせて頂戴。何とかしてみせるから。大丈夫よ。フリーレンだっているんだし」

「……ありがとう!」

 

 タバサはそう言うと、ルイズと軽く抱擁を交わす。

 いつも氷のような顔つきなのに、今の自分の言葉で若干それが解けたかのような、朗らかな笑みを浮かべて。

(こうなったら何が何でも、ちいねえさまも完治させないとね)

 

 さて、静かに闘志を燃やすルイズの一方で、当のフリーレンの方はというと。

 

 

 

「ごめんなさいぃぃ、あわあわああわててたものですからぁ……!」

「いいよ、ローラ、気にしてないから……」

 

 紅茶を頭からぶっかけられ、しおしお顔を晒していた。

 

 事の発端はこうである。

 とりあえずルイズの部屋へ戻ろうとした道中。

 

「それでね、ルイズはあの時こう言ったんだよね」とか、「まあ、それはミスらしいですね」とか、隣にいるシエスタと、楽しく会話していた最中、それは起こった。

 上へ向かう階段を上っていた時、丁度上から降りてきたローラと出くわした。

 

「ふ、フリーレンさん! 危ない!」

 

 すると急にシエスタがそう叫んだ。

 だが、その時はもう時すでに遅し。

 

 急いで頼まれた紅茶を届けねばと焦っていたローラは、あろうことか階段先で足を捻って体勢を崩し、そのまま階下へと、よりによってフリーレンのいる位置へと急降下し始めたのだ。

 

 一応シエスタが叫んでくれたことで、避けようと思えば避けられたフリーレンだったが、そうするとローラの顔が十段以上下の地面と激突する羽目になる。

 そのため、咄嗟で杖を出しローラを浮かせることで危機をやり過ごしたのだが、遅れて落ちてくる紅茶へのカバーまではできず。

 自慢の白い基調の服と髪が、紅茶で茶色に染まってしまう羽目となってしまった。

 

「と、とにかく落ち着いてローラ。怪我はない?」

「は、はい。わ、わたしは、だ大丈夫ですぅ……」

 

 大事こそなかったが、貴族の使い魔でエルフ、それも料理長(マルトー)の命の恩人である。

 そんな大人物にこんな粗相、無礼討ちにされるんじゃないかと震えていたローラを、シエスタとフリーレンは数分かけて何とか宥める。

 

「とにかく、あなたはお仕事の途中なんでしょう? 早く行きなさいな。フリーレンさんの方はわたしに任せて」

「ごめんシエスタぁ……!」

「いいから、ほら、早く」

 

 そう言って気を持ち直させたシエスタは、ローラと分かれる。

「あの、本当にごめんなさいフリーレンさん。どうかローラの事、許してあげてください」

 そして改めて頭を下げた。フリーレンは軽く首を振るに留める。

「いや、大丈夫だよ。むしろローラに怪我が無くてよかった」

 シエスタが前もって言ってくれなかったら、もっと酷い結末となっただろう。

 

 

(やっぱり、この子は数秒先とはいえ、『見えて』いるんだろうね)

 

 

「とにかく、その汚れてしまった服を何とかしないと」

 ハンカチで拭きながら、シエスタは言った。

 既に臭いとシミがついてしまったのか、世界地図のような紋様が広がっている。真っ白い服なだけに、遠くからでもこれは大層目立ってしまう。

 フェルンがいれば〝服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法〟で、すぐ修復できたのだが……。

 

「すみませんフリーレンさん、わたしの部屋に来ていただけますか? 代わりの服を用意しますので」

 用意しますと言っても予備の給仕(メイド)服しかないのだが。

 だが、この格好のまま歩かせる方が問題だと思ったシエスタはお詫びにと、そう提案した。

「まあ、仕方ないか」と、フリーレンもシエスタの好意に甘んじることにした。

 

 

 

 さて、そんな事件が裏で起こっていた一方、ルイズの方はというと。

 

「精神を安定させる薬……。となると候補は『微睡み睡蓮』、いや『目覚まし芍薬』をベースにした『気付け薬』の方が良いのかしら」

 

 メモ帳片手にぺらぺらめくりながら、タバサの願いを叶える薬、その材料をどう集めようか考えていた。

 やることがいっぱいになったが、元々カトレアを治すために色んな地方の魔法花を探すのである。目的とするところは同じなのだから、そこまで荷が重いとは思っていなかった。

 

(まあどっちにしろ、ちいねえさまと同じで実際に会ってみないと分からないからね……って、あら?)

 

 ここでルイズは、廊下の窓際から、ふと外を見る。

 よく目を凝らせば、馬車が一台、学院の門の前で止まっているのが見えた。

「……誰か来たのかしら?」

 馬車の様相を見る限り、かなり豪華そうだけど、相当格式高い人が来たのかもしれない。

 でもなんのために……、そう考えているルイズは数分後、答えを知ることとなる。

 

 

 さて、女子寮までやってきたルイズは思わず、顔をしかめた。自分の部屋の扉が開いている。

 またキュルケ? せめて扉くらいは閉めなさいよ。

 そう思いながら部屋を覗くが、そこにいたのは……。

 

 

「久しぶりね、ルイズ」

「え、エレオノール姉さま……?」

 

 

 そう、勝手に部屋にあがっていたのは、ルイズにとって二番目に苦手な存在。長女エレオノールだった。

 

「あ、あの……姉さま、なぜ、学院へ……?」

 震え声で、思わず尋ねるルイズ。

 公爵家の令嬢たるルイズといえど、絶対頭が上がらない存在が四人いる。

 自分の両親、父ピエールと母にして英雄、『烈風』カリーヌ。

 トリステインの姫にして幼少の頃からの幼馴染。アンリエッタ。

 そして目の前にいる長女、王立魔法研究所の優秀な研究員、エレオノールなのであった。

 

「き、い、た、わ、よ! ち、び、ル、イ、ズ!」

 

 ルイズとは違う、一切桃色のない完全な金髪(ブロンド)を揺らしながら、まずはルイズの頬をつねる。

「いびゃっ! ひゃ、ひゃにひゅるのれひゅか!」

 涙目になってルイズは尋ねる。こういうことをしてくるから、ルイズはこの長女がとにかく苦手なのだった。

 しかし、エレオノールはそんな末の妹の事情などお構いなしに、ぐいっと詰め寄る。

 

 

「あなた、エルフを召喚したんですって?」

 

 

「ふぇっ!?」

 その言葉でルイズはもう、心臓が飛び出しそうな悪寒に陥る。

 え、もうバレているの!? いつの間に……!

 

「まったく、魔法が使えない『ゼロ』のあんたが、なにをどうしたらそんなことになるのかしら、ほんっとうに教えてほしいくらいよ! こんな不祥事がバレたらどうなるのか、分かってるのかしらぁ!」

 

 エレオノールは嘆息しながら、ルイズをつねるのを止める。

 ルイズは涙目で頬を摩って尋ねる。

 

「あ、あの……姉さま、どうして、なんでそのことを……?」

「そんなことはどうでもいいの。とにかく、帰るわよルイズ」

 

 そう言うと、今度はルイズの手を取って強引に引っ張っていく。

 

「ちょ、ちょっと待って! 姉さま待って!」

「いいえ待ちません。あんたは単純だから、どうせそのエルフに騙されているのよ。あんたはとっとと婿を取って家で大人しくなさい。ジャン……ワルド子爵とかいいんじゃないかしら? 確か昔、父さまがそんな約束を交わしてたわよね――――」

「本当に待って姉さま!」

 

 ルイズは強引に手を振って、姉から逃れる。

 ルイズは手をさすりながら、叫んだ。

 

「わたしにはわたしの計画があるの! 勝手に来てそんなことばかり言わないで! それにフリーレンは悪いエルフなんかじゃないわ!」

 

 顔をゆがめて、ルイズは叫ぶ。ここだけは譲れないとばかりに。

 一方、姉はそんなルイズを見据えた後、ゆっくりとルイズに近づき、こう言った。

 

 

 

「……カトレアの病気が悪化したの。医者の話だともう、五日持たないかもって」

 

 

 

「……え?」

 これを聞いたルイズは、先ほどよりも強い緊迫感で、心臓を高鳴らせた。

 ちいねえさまが、後五日の命? うそ……。

 そんな時間じゃもう、旅で花を集めるなんて余裕ないじゃないの!

 

 

「うそ、うそよ……。だって、あと三年は持つって……」

「……あんた、わたしがこんな冗談や嘘を言う人間だって思ってるの?」

 

 

 エレオノールは真剣な表情で、ルイズと顔を近づけた。

 どくん、どくんと、心臓が高鳴る。目尻が熱くなって、視界がゆがむ。

 あのやさしい、ちいねえさまが……。後五日くらいで、死ぬ?

 幼少期から寄り添ってくれた、慈母のような笑顔を絶やさぬ次女。その光景に、ひびが入るような衝撃を受け、放心状態に陥っていた。

 

「あんただって、最期はちゃんと看取りたいでしょ? あんなに仲が良かったんだもの。今から家に帰れば、ギリギリ間に合うわ」

 

 そう言うと、今まで厳しかった目線を、若干やさしさで緩ませながら、ルイズにこう続ける。

 

「だから、これ以上わたしを困らせないで。帰りましょ、ルイズ」

 

 今度はエレオノールもやさしくルイズの手をつかむ。

 抗う力はもう、ルイズにはなかった。

 

 

 

 一方その頃。

 

「わあっ! すごく似合ってますよフリーレンさん!」

 

 シエスタは思わず手でたたく。

 彼女の目の前には、給仕(メイド)服に身を包んだフリーレンがいた。

 ツインテールの髪は今はおろし、シエスタの手によって三つ編みに変えられている。所謂『お詫びの三つ編み』というやつである。

 ちゃんとカチューシャもつけており、外見上は他のメイドそっくりとなった。

 

「ごめんなさいね、わざわざ耳まで縮めてもらっちゃいまして」

「いいよ、皆怯えちゃってるしね」

 

 しおしお顔で、フリーレンは言った。

 フリーレンの功績自体は給仕たち全員に共有されているものの、貴族すらも恐れるエルフということで怯えてしまう人はまだまだ多い。

 気を使って、フリーレンはわざわざ耳を縮めたのだ。これにより、フリーレンの姿はどこにでもいそうな平民メイドになっていた。

 

「とりあえず、汚れた服を洗わせてください」

 

 シエスタはそう言うと、フリーレンがさっきまで着ていた服を洗濯籠に入れる。

「そこまでしてもらわなくてもいいよシエスタ。これからルイズと旅しなきゃいけないから」

「ですが、放置すると取れなくなるかもしれません、せめて、洗えるところまでご一緒させてくださいな」

 

 シエスタも譲らなかったので、フリーレンも渋々と言った体で折れる。

 まあ、ルイズが来るまでの時間ならいいだろう。魔法である程度はどうとでもなるし。

 

 そうして二人は、庭の水汲み場へと向かう。

 遠目から見れば、二人のメイドが服を洗っているという、この学院であれば何でもないような光景だ。

 さて、水汲み場で洗濯をしていたシエスタと、それを見ていたフリーレンだったが……、

 

 

「ちょっと、そこのあなたたち二人」

「はい?」「え?」

「道中の侍女が欲しかったの、ついてきなさい。二人ともよ」

「「え??」」

 

 

 ルイズを連れて突如やってきたエレオノールの指名により、引きずられる様にシエスタとフリーレンもまた、連れ去られていった。

 




メイドのフリーレンを書きたかった。後悔はしていない。
勇者ヒンメルもGJと言ってくれるはず。

次回より、カトレア救出編です(アン姫の出番はまだ先になります……)。
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