◆ ◇ ◆ ◇ ◆
在りし日の頃。ヴァリエール家のとある村にて。
「じいよ、ぼくは必ず、父を止めてみせるぞ。この杖に懸けてでも」
ルイズの曽祖父……サフランは、疲れた目をして村のベッドに腰かける。
先ほどまで、散々にあの剣士……ヒンメルとかいったか、に怒鳴り散らして、疲れたから村一番の宿に泊まり、その日は身体を休めようとしていた。
それでもその瞳は、決意ある光を宿していた。
「心中お察しいたします。坊ちゃま」
そんな彼が、唯一弱い本音をさらけ出せるほど信頼しているのが、常に背後にいる老執事にして後の『烈風』カリーヌの先祖、ボシュエ・マイヤールだった。
執事だが、彼はメイジでもある。そしてサフランに魔法の才があり、及びマンチーニ公爵の唯一の子であると、見抜いた人物だった。
「ですが、無理はしないでくださいませ。私があなたにその杖を渡したのは、苦んでいたあなたを救うためであり、戦に巻き込むためではないのですから……」
老執事は、鷹のように鋭い目をきらりと光らせながらサフランに告げる。
彼はずっと、高貴でいて……それでも危うい使命感を持つサフランの身を案じていたのだ。
「それでもこれは、ぼくの戦いだ」
一歩も譲らない姿勢で、サフランは言った。
マンチーニ公爵は、後継ぎに恵まれなかった。必死に育てたと思っている、自分の功績を継いでくれる人材がいなかったのである。
最初に娶った妻と息子は、自分の起こした戦と疫病で亡くした。
次いで娶った妻と娘は、当時の政治闘争で毒殺された。
老いてから娶った妻は、あろうことか憎っくきツェルプストーに寝取られた。
まるで呪われたかのように、自分の血に繋がる子供や家族、後継者候補は、様々な暗き要因で命を落としたのだ。
もしも正式な後継ぎが一人でも健在だったならば、まだ自領を破壊するほどに発狂などしなかっただろう。
だが、後継ぎがおらず、ヴァリエール家の未来に暗雲が差し掛かっていると気づいた時、公爵は狂った。
当時の公爵は、あろうことか『不老不死の魔法』を求め始めたのである。
それにつながる情報を探そうと躍起になり、その過程で生じた様々な不祥事は闇でもみ消し。
もし彼の破れかぶれな野望が成就していたとしたら、今のヴァリエール家の様相は、百八十度様変わりしたことだろう。
そんな彼が、最後の妻を寝取られたショックで脳が壊れ、ただ茫然と街を放浪していた時期。
何かの間違いで一夜を平民の娼婦と共にした。その時の息子が何を隠そうサフランだった。
そう、彼は『平民と貴族』の間に生まれた子供なのであった。
「貴族の在り方は血筋や魔法にあらず、民を守る心構えにこそ高潔な精神が宿る……」
精神的に疲れた時、決まってサフランは独り言を呟く癖があった。
自分には平民の血が混じっている。だから魔法もうまく使えない。
事実、どれだけ努力しても自分のランクは『ドット』から上がらない。己のコンプレックスがぐるぐる巡る時は、先の言葉を言って自分を保つことにしていた。
子供の時のサフランは、貧しい生活をしていた。
大貴族の血筋なのにも関わらず、杖が無かったがために、周囲も自身も『平民』だと思って過ごしていたのだ。
母は体が弱いにも関わらず、自分を産んでくれた。そのことに感謝していたので、子供の頃から彼女の助けになりたいと、大人たちに交じって働いていた。
その甲斐も虚しく、母は病死した。
母を殺したのは、劣悪な環境。
母は最期まで、自分を作った男が、この地を治める公爵当人だと気づかなかったようだった。
もし当時、今のじいや……ボシュエが来なかったら、ずっと自分はメイジだと、公爵の息子であることなど、気づかなかったであろう。
「ずっと、探して回っておりました。サフランお坊ちゃま」
ボシュエはそう言って、杖を渡してくれた。彼が来なくば、自分もいつしか最悪な環境で、命を失っていただろう。
サフランにとって、ボシュエは道と共に命を拾ってくれた恩人だった。
その杖で魔法を振った時、自分の『本当の生まれ』というものを、彼から聞いた。
自分はこの広大な領地を治める、ヴァリエール家の血を継いでいるという事。
父……マンチーニは壊れてしまった事。彼の横暴な運営の所為で、民たちの生活が滅茶苦茶になってしまっていたという事。
それを止めようとする派閥が動いているが、公爵の介入が激しく、誰も止めることが叶わず。
当時の王室もまた、混乱していた。何せ時のトリステイン王は当時、病で急死。急ぎ王冠を被ったフィリップ二世は御年八歳。
何も分からぬ幼君を意のままにしようと暗躍する貴族たちの跳梁跋扈が当然始まり、その基盤づくりに躍起となって、誰も公爵の影の暴走を止めようとする者などいなかった。
そんな状況であったがゆえに、このヴァリエール家を本気で改革するのであればもう、庶子とはいえ父の血を受け継いでいる、サフランしかいなかったのである。
「こんな暴虐は間違っている……! 誰も止められないというのなら、ぼくが父を止めてやる!」
母を殺した劣悪な環境。ともすれば、自分も死んでいたかもしれない困窮な状況。それを生み出すのは、顔すら知らぬ父という。
ならば、その父を止めるのが自分の役目。
そんなリベンジ精神も、当時は持ち合わせていた。だからサフランなりに、何とかこの地を変えたいと必死になって足掻き始めた。
だが……『平民の血筋』、『魔法はドット』という、大きな壁が、当時の彼を苦しめた。
次世代のヴァリエール家の旗印とするには、サフランはあまりにも弱すぎたのだ。
そんな自分を変えたくて、どうにかならないかと調べる内に、『ワイバーンによる竜害』を耳にした。
「そうだ! ワイバーンを討伐できれば、もっと他のみんなからも、強い信頼を得られるに違いない!」
「ぼ、ぼっちゃま。それはあまりにも無謀で……」
「うるさい! そうと決まったらさっさと行くぞじいや!」
本音を言えば怖かったけど、こんなところで足踏みしていたら一生自分は父の顔を見ることは叶わない。なにより、民が苦しんでいるのだ。救わずして、何が次期当主か。
そう、そう意気込んでやってきたというのに……。
「なんなんだよあの平民は……ぼくが、どれだけ苦心してここへ来たか、知らない癖に……」
ここへ来た時はもう、ワイバーンは討伐されたという。
しかも討伐したのは、メイジですらない、平民の剣士だった。
自分の計画がめちゃくちゃにされたようで、先ほどまでサフランはあの平民剣士に突っかかっていたのであった。
「ぼくは強くなって、父に……立ち向かわなければならない。こんなところで、躓いてられないってのに……!」
「ったく、なんだよアイツは」
「あーあ、せっかくのお祭りムードが台無しになっちまったなぁ、相棒」
村一番の大きな家を見ながら、外で酒瓶片手に黄昏ているのはオスマンだ。
せっかくこれから酒瓶片手に女漁りとしゃれこみたかったのに、そんな空気ではなくなってしまった。
みんな、急にやってきたお貴族様の対応で大忙し、誰もヒンメルたちのことなど、見向きもしなかった。
「はぁ、ったく、貴族はどこまで行っても貴族ってやつか」
「ずいぶん荒れているね、オスマン」
「逆にお前はムカつかねえのかよヒンメル! 折角てめえの領地を苦しめていたワイバーンを、おれ達が二束三文の金で追い払ってやったのにあんな対応されてよ!」
「おれ
デルフが突っ込むと「おれはいいんだよおれは!」と、手にした酒瓶を豪快に一口。
「確かに、思うところがないかと言えば嘘にはなる。だがそれ以上に心配だよ。彼は自分で自分を追い詰めているように見えたんだ。あまりにも必死過ぎるというか……」
ヒンメルは憂うような声で、サフランとかいう貴族の少年が一泊する屋敷を見つめる。竜害によるものか、屋根の一部が焼け焦げている、悲惨な家だ。あれが貴族が一泊するには一番豪華な屋敷らしいのだから、周囲の悲惨さはそれはもう、目を覆うほど。
中には家もない、野宿を強いられている家族もいた。
「……やめとけよヒンメル。ここいらの連中の暮らしぶりに心を痛めて変な仏心を出すのは。ここら一帯の村はみんなこんなもんさ」
「確か、ヴァリエールというのはこの国、トリステインの中でも屈指の大貴族だと聞いていたけど、どうしてこんなにも荒れているんだい?」
「さあな。お偉方の考えるこたぁおれにもわからん。わかりたくもねえな」
酒瓶を逆さまに振って、もう中身が無いと知るや、オスマンはつまらなさそうに『錬金』で空瓶を水晶玉へと変える。
それをおもむろに放り投げると、水晶は空中ではじけて、水色の花火を夜空に映し出した。
それを見た子供たちは大はしゃぎ。しばし空で広がる光の芸術に、村人たちは胸を躍らせた。
「おお、凄いじゃないかオスマン! きみはこんなこともできるんだな!」
「あーあ、こんな宴会用マジックをあと十個以上は用意していたってのに、あの坊ちゃんのせいでこれぐらいしか披露できねえよ」
かーっ! と大口開けながら、長杖を枕代わりに横になるオスマン。
ヒンメルも夜空の草原に腰掛け、派手な花火の色合いを、村人たちと共に楽しんでいた。
その花火の光に紛れて、一つの巨影がこちらに向かって飛来する。
「――――ん?」
見間違いかと、一瞬オスマンは目をこすった。
「オスマン! 何か来るぞ!」
次いで隣で叫ぶヒンメルの声で、ようやく見間違いじゃないと悟ったオスマン。
「チィ!」
オスマンは素早く杖を手に取り『
ヒンメルもデルフを抜刀しながら跳躍した。
やがて巨大な影は、衝撃音と豪風を以てその姿を現す。
「こいつぁ!」
「ワイバーン! まだいやがったのか!」
オスマンとデルフが、敵の正体をすぐに看破する。
十メイルはあろうかという巨大な赤燐を持ったワイバーンが、ヒンメルたちの前に現れたのである。
「なるほどな、どうやら
「あの時対峙したワイバーンより、さらに大きいぞ」
「雌個体だったんだろうよ。嫁さん殺されてご立腹ってわけだ」
その言葉に「正解」とでもいうかのように、咆哮をその口から放ち始める。
竜の口から、熱量と共に巨大な焔の塊が発現していく。
「う、うあああああああ!!」
「助けてぇえええええ!」
村人は慌てふためいた。竜による被害は何度も受けてきた彼らでさえ、こんなにも怒り狂ったワイバーンを見たのは初めてだったのだ。
戦うこともできず、ただ慌てるしかない周囲。その合間にもワイバーンは口内に、火の力を極限まで溜めこんでいく。
それを見て、瞬時に動いたのはヒンメルだった。
彼は残影を残すような瞬発力で、泥沼のような様相の池まで移動すると、そこにデルフの切っ先を突っ込む。
「オスマン!」
次の瞬間、ヒンメルは剣を思いっきり上空に切り上げ、大量の水しぶきをワイバーンのブレス圏内へと撒き散らかす。
水しぶきといっても、ヒンメルの膂力から繰り出すそれはもはや泥水の塊と、形容してもいいだろう。
逆にそれを見たオスマンも、ヒンメルが何を言いたいのか瞬時に察した。
「応よ!」
オスマンはすかさずルーンを詠唱。
ヒンメルが巻き上げた泥水の塊を、魔法で一か所に集め、泥の大壁を村人たちの間に作り出す。
次の瞬間、ワイバーンのブレスが着弾。泥の大壁は一瞬にして弾け飛んでいく。
だが、多量の水分を含んだ泥の壁だ。破壊こそされたが、逆に言えば被害はそれだけ。業火球は水と土の質量に阻まれ、村人たちや家はみんな無事だった。
「た、助かったぁ……!」
「ありがとうございます! ありがとう……!」
命からがら助かった村人たちは、涙を流してヒンメルたちに礼を述べる。
「ったく、いきなり何するかと思えば滅茶苦茶しやがって。おれがただ、巻き上げた泥水を見上げるだけの阿呆だったらどうする気だよ」
オスマンは冷や汗交じりに、こちらへ来るヒンメルに問いかける。
なにせ彼とは会ってまだ一週間経つか否か。阿吽の呼吸なんて、分かるはずもない。
だがヒンメルは、『泥水を巻き上げれば泥の防壁を作ってくれる』と、信じて疑わない動きをしていた。
「なに、オスマンならこうしてくれたら動いてくれるだろうって、思っただけさ」
「……ったく、変な野郎だよお前は本当に」
「冒険者に過度なチームプレーはいらない。きみならこうするだろうって声に、僕は従っただけだ」
オスマンはニヤッと笑うだけに留める。
変な奴だが、悪くはない。むしろ彼とともに戦うのが少し楽しいと、無意識に思っていたのだろう。
「それよりも、村人たちの避難が最優先だ。この距離で僕らが暴れると、死傷者が出かねない」
「それもそうだな」
「よし、僕が時間を稼ぐ。その間に住民たちの避難を頼むぞオスマン――――」
その時だ。
「待て! 今度こそ、そのワイバーンはぼくが仕留める! 邪魔をするな!」
なんと、あろうことか騒ぎを聞きつけ、サフランがこの場にやってきたのだった。
震える手で、杖をワイバーンに突き付けながら……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……んあ?」
デルフは、鍔をかちりと鳴らした。
「あ、おはようございます。デルフさん」
「あれ……いつの間にか俺、眠ってたのか?」
「急に何も語らなくなったかと思ったら、鍔から鼻提灯噴き出したときはびっくりしたよ」
フリーレンの呆れた声が聞こえる。
どうやら、語っている内に眠ってしまったようだ。
「あぁ……やっぱガタ来てんのかなあ俺、いつの間にか寝ちまったよ……」
「もう昼前だよ」
「そうかい……ふぁあ……っと」
デルフはあくびをかました。急に眠くなるのはもう、どうにもならない。
それだけ、古代竜戦で魔力を多量に消耗したということなのだろうから。どうやら後遺症のようになっているようだ。
「で、俺はどこまで語ったっけ?」
「ミス・ヴァリエールのご先祖様が、無謀にもワイバーンと対峙したところまでです」
「ルイズ、すっごい悶々としてたよ。『あれからどうなったのよ!』って、すごい剣幕で怒鳴ってたんだから」
シエスタは苦笑交じりに「まあそれもそうですよね……」と頷く。
話だけ聞くと、ヒンメルと若き学院長の活躍に水を差しただけにしか聞こえないのだから。
「実際あん時のサフランはぐうの音も出ないくらいの横やり野郎だったよ。村人も『ヒンメル殿たちの邪魔をしないでくれ』って目線をぶつけてたくらいだったからな」
デルフはそう言うと、「で、その娘っ子はどこ行った?」と尋ねる。
「外の空気を吸ってくるって、さっき出ていったよ」
フリーレンはあっけらかんと答えた。
「はぁ……」
ルイズは牧歌的な村の周囲を、あてもなくふらふらとしていた。
ちょっとした高台に上ると、とうもろこし畑が見えた。農民たちがせっせこと今年の収穫を籠に入れていく。
柵を越えた先には馬が元気に走り回る光景、通り過ぎた家の下には、餌を追いかける鶏がうろついている。
「のどかね……」
ふと、ルイズは呟いて、村が一望できる高台で腰を掛ける。
奇しくも、そこはヒンメルとオスマンが黄昏ていた場所でもあった。
こんなのどかな村なのに、数十年前は畑も作れず食うにも困るほどの荒れ地だったとは、とても信じられなかった。
しかもそれは、翻れば自分の先祖のせい。マンチーニが狂って領地の運営を蔑ろにし、結果この地に住む民たちを苦しめたのだ。
そう思うと、なんともいえない申し訳なさがルイズの中でこみあげてきた。
勿論、当時生まれてすらいないルイズには何の罪もない。これは過去のことで、もっといえばもう終わったこと。それで済ませるのが正解だろう。
だが、ルイズは変な生真面目さがあった。それに加えて、デルフがまた絶妙なタイミングで寝やがったせいで、自分でも良く分からないほどに悶々としていたのである。
(どうしてわたしのご先祖様って、そろいもそろってこう……うまくやりくりできない、不器用な人達ばかりなんだろうな)
はぁ……。とため息をこぼすルイズ。まあ自分もそんな先祖の血を引いているのだから、ある意味似た者同士なのかもしれないが。
『いや、お前ら本当に変わらねえなって思ってよ』
あの時、デルフがいってた言葉を、ルイズはようやく理解した。
変なところばかり気を張って、その結果思いがから回って。
純粋な義憤で動いているのに周囲からは「余計なお世話」と言われまくって。
わたしたちの一族って、ほんと、そういうところあるわよね……。とつぶやいた時だった。
「……ん?」
ルイズの足元に、白いリスが屯していた。
リスは歯をげしげしと上下させると、ルイズの方をじっと見つめ始める。
「なによ……?」
ルイズは疑問符を浮かべた。
このリスから、微弱ながら魔力を感じる。
魔法生物だろうか? と思ったが、この魔力の波長に覚えがある。
(この魔力、ちいねえさまの……)
やがて、リスは首をかしげると、そのままルイズを置いて、奥の草むらに引っ込んでいった。
「……ついてこいってこと?」
何となく気になったルイズは、思わずリスを追って森の中へと進んでいく。
真夏日なだけあって、蒸したような草木の匂いが、強くルイズの鼻孔を刺激する。
ちょっと歩くだけで汗があふれ出ていく。それに構わず、ルイズはリスを追いかけた。
リスの姿は見えなくなったが、魔力の痕跡を読み取ることで、どこへ向かったかがルイズには手に取るように分かった。
(この先に、何があるのかしら……?)
ルイズはそのまま、先に進んでいく。
やがて、開けた広場にルイズはやってきた。
その先にあったのは……銅像だった。剣を肩に担いだ、男性の銅像。かなり整った顔立ちの男だ。
男性の顔に見覚えはない。だが……彼の担いでいる剣の形状を見て、ルイズは唖然とした。
「で、デルフ……?」
そう、男性が担いだ剣はデルフリンガーだったのだ。
「ま、まさか……」
ルイズは心音を高鳴らせながら、銅像の台座に注目する。
台座の上では、自分をここまで案内してくれたリスが、種を美味しく頬張っている。
その下には、ハルケギニア語でこう刻まれていた。
『我が友にしてヴァリエール家の影の英霊。その雄姿を静かに、だが確かにここへ刻む』
『――――サフラン・ド・ラ・ヴァリエール』
「……っ!」
ルイズは心音を高鳴らせた。
じゃあ、これは、この銅像の男性は……!
「ヒンメル……?」
ルイズははっとして、後ろを振り返った。
自分の使い魔、フリーレンが、銅像を見て確かにそう言ったのだ。
「え、これが……ヒンメルさん、なのですか?」
隣にいたシエスタも、まじまじと見つめた後、驚きの声を上げる。
「これ、わたしの家で祀っている銅像の一人と、同じ方じゃないですか!?」
「じゃあ、やっぱりヒンメルは、シエスタの祖先とも交流があったわけだ」
フリーレンはふーん、と頷いて、久々に会った戦友の、新たな格好をした銅像を、興味深そうに見つめていた。
「デルフ、この銅像に見覚えは?」
「いんや、ねえな」とデルフは答える。
「古代竜戦後にでも建てられたのかね? こんなところにひっそりと建てられているたあ俺も知らなんだ」
「ねえ、デルフ……」
「なんだ、娘っ子?」
ルイズの震える声に、静かに聞き返すデルフ。
「聞かせて。結局、あの後どうなったの? ご先祖様は、ヒンメルとどんな関係だったの……?」
「……わあったよ、今度は寝ずにきちんと最後まで、話してやらあ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「そいつはぼくが討つ! 誰も手を出すな!」
サフランはそう言うと、杖を高々と掲げたまま突貫した。
「うおおおおおおおお!」
「ば、ばっかじゃねえのかあいつ! そんなに竜の餌がご希望様かよ!」
これにはオスマンも、呆れを含めた声で絶叫する。
『スクウェアメイジ』の自分ですら、雌個体のワイバーンすらどうにもならなかった。今回は雄個体、しかもサフランは『ドットメイジ』。勝負になるはずもない。
事実、ワイバーンはサフランのことを蟻くらいにしかみてなかった。
火を吐くまでもない。木々すら切り裂く己の爪を適当に振り回すだけで、勝手に倒れるだろうと。なめてかかっていた。
そして何より悲しいことに、なめられて当然の実力差が、両者にはあった。
「う、うわあっ!!」
ワイバーンが適当に振り回すだけでも、それでも鋼鉄を切り裂く爪である。
くらったらたまったものではない。サフランは己の勇気がどんどん萎んでいくのを感じた。
で、でもぼくは! これから父の野望を止めるという大役が……!
こ、こんなところで躓くわけには……!
「ああもういいから引っ込んでろお前は! おれとヒンメルがやるっつんだろ!」
「坊っちゃま! ここはお退きください! 撤退は臆病とは違います!」
「うるさい! ここで退いたらこの村はどうなるというのだ! 名誉も欲しいが、それ以上に民を守るためにここへ来たのだぞ!」
サフランはそう言って、震えながらも杖の切っ先を、暴れ狂う竜へと向ける。
「貴族は……、魔法が卓越している者を指すのではない! 敵に後ろを向けぬ者が、真の貴族なのだ!!」
精一杯の虚勢だ。だがそれでも、サフランなりに築いた矜持をもって、彼は竜に立ち向かうのを諦めなかった。それがどんなに無謀だろうと、ここで死ぬのならそれまでの人間だったと。
そう思う間にも、竜の巨爪が、サフランの真上から殺到する。当然、ドットクラスのサフランには到底回避などできるはずもない。
サフランは思わず目を瞑る。死という恐怖を必死になって押さえつけて。
しかし、竜の爪は一瞬にして切り裂かれ、その一部が宙を舞った。
「え……?」
サフランが呟いた時にはもう、自分は危機を脱したのだと知った。
かの剣士……、ヒンメルが、一瞬で自分を助けながら、竜の攻撃に反撃を加えたのだ。
「少し落ち着いたかい?」
ヒンメルは穏やかな声で、サフランに言った。
勝手に突っ込んだことに対する侮蔑や嘲笑はない。ただ、彼の身を案じての声だった。
「あ、あ……」
「大義を成すためにワイバーンという強敵を討伐する。その思いは分かったし、君がそのことに命を懸けていることも、十分に伝わったよ」
けど……、と、ヒンメルは続ける。
「だからこそ、前のめりにならずによく周りを見てほしい。周囲を冷静に観察し、状況を適宜見極めてこそ一人前の魔法使い。……友人の受け売りだけれどもね」
きみも『魔法使い』ならね。と、ヒンメルはサフランの持つ、古風の杖を見て言った。
魔法に自信のないサフランに向かって、あえてヒンメルは『魔法使い』と、彼を例えたのだった。
その合間にも、ワイバーンは周囲で荒れ狂う。
再び火力を口内に溜め始める。その目玉に、正確に『魔法の矢』が着弾する。
「時間を稼ぎます! 剣士殿! サフラン坊ちゃまを頼みます!」
「ま、まてじいや!」
竜の気を引いたのはサフランを守るように動いていた、ボシュエだった。
銀と桃が混じった髪と顎髭を湛えた老人は、鳶のような切れ目の瞳をきらりと光らせ、身軽な動きで杖から魔法を放ち、竜の攻撃を己に集めていた。
「ほう、坊ちゃまと違ってあんたは場数踏んでるみたいだな」
オスマンも援護をしながら、冷静にこの老執事を評価する。
魔法のランクこそ『ライン』相当らしいが、実践経験はこの時点でのオスマン以上はあることだろう。
「いえいえ。負け戦ばかりを生き伸びてきただけの出涸らしで御座います」
「謙遜すんな、おれは城壁を展開するから、あんたはそのままワイバーンのヘイトを頼む」
ボシュエは無言で頷き、すぐにオスマンのフォローに回る。
そのおかげで、ヒンメルが参加しなくてもワイバーンへの避難が滞りなく進む。
「ってもここままじゃキチィな……。おいヒンメル! そんな坊主なんかにいつまでも関わんな!」
オスマンはヒンメルに怒鳴る。「もう少し待ってくれ!」とヒンメル。
彼はここが大事とばかりに、サフランと同じ目線に屈んで言う。
「村長から聞いたよ、あなたはこの領地の息子なんだってね」
「そ、そうだ……だからなんだ!」
「確かに君一人じゃ、奴は到底討伐はできない。でも、大きくなれば君は、この村の……いや、この領地に住む人々の窮地を救うことが出来る」
サフランは「はっ……!」となった。
反乱の印としてではなく、善意で自分を地獄から連れ出してくれたボシュエを除き、誰も自分を、本当の意味で貴族だと認めてはくれなかった。
時は現代よりも苛烈な『純血主義』な世界。平民の血を引く自分など、本当なら次期当主にすらあり得ないと考えるのが当たり前の時代。
ただ、今の暴君ことマンチーニよりマシ。
むしろ、自分を使ってどのような未来絵図を描くか。父を止める派閥の面々ですら、そんな目で見る者しかいなかった。
所詮は庶子。始祖から賜った魔法の事なんて、真の意味で分かるはずもないと。
誰も、自分を貴族なんて見てなかった。
「お互いできることをしよう、サフラン殿。僕は今、困っているこの村の運命を変える。その代わり、あなたはこの領地の運命を変えるんだ。あなたなら、それができるんだから」
そんな中において、唯一ヒンメルだけが、自分を『貴族』として見てくれていたのだ。
そう話しながら自分を見る目は、どこまでも『自分の可能性を信じてくれる顔』。
「互いにできると思ったことをやる。そうすれば不可能と思ったことでも必ず達成できる。そうやって僕たちは、『みんなから達成不可能と呼ばれた偉業』を成し遂げたこともあるんだよ。まあ、オスマン達は信じちゃくれないけどね」
「……っ!」
サフランは思わず、目を背けた。
なんだこいつは。なんでこんな、自分を心底信じてくれる目をしてくれるんだ?
自分自身すら信じ切れていないのに、それでもこの剣士は、当たり前のように信じてくれている。
こんなこと、初めての経験だった。
ずっと抱え込んでいた『コンプレックス』という靄が、ちょっとだけ掻き消えたような……。
するとここで、ヒンメルはすっ……と、サフランの前で膝をついた。
「サフラン殿、どうか命じていただきたい。『奴を討て』と」
「……え?」
「その一言で、僕達はこの村を助けられる。さあ、命じてくれ」
サフランは喉の奥が熱くなるような感覚を覚えた。
この上、更に彼は、自分を『貴族』として尊重してくれているのだ。そんな風に対応してくれる人など、当然ながら初めてだった。
凍り付いていた心が、温かく溶けていくような感覚。
やがてサフランは、涙を必死にこらえながら、震える声で言った。
「……頼む、ぼく一人じゃアイツを倒せない……だから……」
彼は自分を信じてくれる。なら、自分も彼を信じてみよう。
それこそが、本来正しくあるべき『貴族の姿』だと、思って突き進んでいるのだから。
「未来の、未来のヴァリエール領主として依頼する。民を苦しめるあいつを、討伐してくれ!」
「―――仰せのままに」
サフランの悲痛な叫びに、異世界の勇者は凛と応えた。
「やるぞ、オスマン、デルフ!!」
「あいよ、相棒!」
「へっ、おっせえよバカ!」
デルフを引き抜き、竜が見上げるほどの跳躍をしたヒンメル。
オスマンはにやりとしながら軽口を叩くと、城塞にしていた壁に手をつき詠唱。『土弾』という名の質量弾を撃ち放つ。
五メイルはある巨岩は悉くワイバーンに直撃。重傷……とまではいかないまでも、怯ませることには成功。
ワイバーンは翼を広げる。一旦空に飛んで距離を取ろうと考えたのだろう。
「ボシュエ殿! 一瞬だけでいい、気を引いてくれ!」
ヒンメルは錆びたデルフの切っ先を、空中で静かに構えながら叫んだ。
ボシュエは目をきらりと光らせながら、彼の言葉に応える。実戦経験豊富な彼は、メイジたる自分より彼の方が強いと、既に分かっている。故にヒンメルの指示に、一切の嫌悪感を見せない。
「―――承知」
彼は仕事人のような所作で杖を振り、『
彼が放った光の矢は、竜の片目に着弾。気を引くには十分な時間だった。
「流石だボシュエ殿、助かったぞオスマン!」
ヒンメルは静かに、デルフの切っ先を向ける。それは『突き』の構え。
刹那、ヒンメルは重力に身を任せて一挙に竜の頭上へと到来。
狙いは竜の頭上。
次の瞬間、青色の閃光は錆びた切っ先をものともせず、ワイバーンの脳天へと迫る。
そしてそのまま、衝撃音と共に、ワイバーンを地面へと叩きつけた。
その破壊的な一撃は、ワイバーンを一瞬で絶命たらしめるには、十分な威力であった。
「よし、勝った!」
絶命したワイバーンからデルフを引き抜き、それを掲げるヒンメル。しばし彼は、勝利の余韻に浸っていた。
「自分で言うのもなんだがよ、錆びた俺なんかで竜討伐とかようやるぜ……」
「なに、確かに錆びているけど、君自身はすごく頑丈じゃないか。それに助けられた面もあるよ」
そう言ってフォローしてくれるヒンメル。彼はちゃんと、こうして戦いに臨んだ面々をねぎらってくれる。だからデルフ自身、悪い気はしない。
まあ、そんな自分の握り手は今も、格好つけながら髪を撫でつけているのだが。
「今更ながらに、やっぱすげえなおめえ。見直したぜ」
オスマンはそんな彼を見て、呆れと賞賛が混じったような声で言った。
「なに、僕一人の実力じゃないさ」
髪を撫でつけ、まだ勝利の余韻に浸るヒンメル。
「謙遜なのか傲慢なのかどっちなんだお前」とオスマン。
「あ、あの……」
ここで、サフランがおずおずとやってくる。
「サフラン殿、依頼通り、ワイバーンは退治した」
「あ、ああ……」
サフランはどうしようかという顔を浮かべる。
本当にワイバーンを退治してしまった、この青年をどう扱ったものか……と、すごく悩んでいる様子だった。
とはいえ、彼のおかげでワイバーンの脅威から村が救われたのは事実。
是非とも、彼にお礼をせねば。謹直なサフランはそう思っていたのだが……。
「で、でもぼく……報いるものが何もない」
礼になるような物が何一つなかったのだ。ここへは戦いに来たつもりだったのだから。
どうしよう……。どうやってお礼をしよう? 悩む彼に向かって、ヒンメルはデルフを納めながらこう言った。
「報酬は……、そうだね。この村を豊かにしてあげてほしい。それだけかな。……こればかりはあなたにしか託せない問題だ。サフラン殿」
サフランははっ、として、ヒンメルを見上げた。
本当にヒンメルは、自分が未来の領主となると、信じて疑ってなかったようだった。
そんな彼の笑顔が、とても眩しく、サフランにとって新鮮な風を送られてくるような感じだった。
「……分かった。ぼくは貴族だ。平民とはいえ、約束は違えない。それをここで誓おう」
サフランは杖を取りだしてまで誓った。
必ずや、乱心している父を止めると。そして苦しんでいる民たちに、手を差し伸べて回ると。
それこそが、自分に課せられた使命なのだと。そして、今も自分を信じてくれているこの恩人に、報いる唯一の手段だと。
「あ、それでついでなんだけどさ、もしよかったらどこかでいいから、僕の銅像を飾ってほしいんだよね」
「……は?」
「なに言ってんだお前」
「なに、フリーレンがもしこの地に来ることがあったら、是非とも見せてあげたくてね」
髪を靡かせ、茶目っ気のある顔つきで臆面もなくそう言うヒンメルを見て、周囲は呆れの反応を示したのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……そんなことがあったのですねえ」
一通り、話を聞き終わった後。
シエスタはお腹いっぱいとばかりに、一息ついてヒンメル像を見上げる。
「銘が刻まれているところを見るに、この銅像はサフランが直々に建てたって感じだろうな」
デルフは補足する。聞くに、当時のサフランは『土』のメイジだったようだ。
彼は、ヒンメルの要望にもきちんと応えてくれたらしい。
これほどまでに立派な銅像を建てたとなると、ランクは最終的には『トライアングルクラス』までいったのだろう。
「それにしても、ヒンメルも成長したよね。貴族にそんな礼節を示せるようになってたなんて」
「どういう意味だ、相棒」
ここでフリーレンは、ヒンメルは冒険前、王様にタメ口を利いたがために処刑されかけた事を話す。
「だはははは! 俺からすりゃあヒンメルにもそんなしくじりがあったんだなって、笑っちまったぜ! ちっくしょー、アイツ最後まで黙ってやがったな!」
亡き相棒の失態を聞いて、ひとしきり大笑いする
そうして笑った後、声色を真剣なものに変えてこう続ける。
「……エンシェント・ドラゴン戦でも、サフランは義勇軍を編成して助太刀に参じてくれたぜ。相変わらず生意気な坊ちゃんだったが、その時は指揮官をやってたこともあって、かなり勇ましい顔つきにはなってたな」
当時、エンシェント・ドラゴンが復活した際、トリステインは軍を出さなかった。
地理的にも、厄災から離れていたこともあったのだが、それ以上に王室が混迷していたため、参戦できなかったのだ。
当時の文献では『参戦するか否か、ずっと揉めている内に事態が解決したため、誰も気に留めなくなった』とまで記されているとか。
ヒンメルの武勇が、現代のトリステインであまり浸透していなかったのも、ここら辺に起因している。
そんな薄情な対応をしていた当時のトリステイン軍の中で、サフランはグラモン、ワルドと共に数少ない戦線参加組だった。
それほどまでに、ヒンメルに対する恩義と世界の危機を覚えての行動だったのだ。
「ボシュエの爺さんも、エンシェント・ドラゴン戦で死んじまったのは覚えている。『老いてなお盛ん』という言葉が似合う御仁で、最後まで果敢だったよ」
「…………」
デルフの語りを、背後で聞きながら、ルイズはヒンメルの銅像を眺めていた。
「ねえ、デルフ」
「なんだ?」
「その戦線後、どうなったの? その……サフランおじいさまは……」
「さあね、俺の知っているサフランはそれぐらいだ。エンシェント・ドラゴン戦後は知っての通り、長い眠りについて今に至るって感じだからな」
ルイズのこの様子を見る限り、ヒンメルの武勇はあまり伝わってはいないようだ。それほどまでに当時のヴァリエール家には混乱があったのかもしれない。
まあ……、彼女自身、魔法が使えない落ちこぼれの幼少期を過ごしていたのだから、それに引っ張られて家の歴史のことなど、さわりしか知らない可能性もあるかもしれない。
デルフも、サフランがどうなったのか、ヒンメル去りし後のヴァリエール家がどんな変遷を辿ったか、知る由もなかった。
ただ……、とデルフは続ける。
「この豊かでのどかな村が、答えなんじゃないか?」
「……!」
「あいつは、サフランはきちんとヒンメルとの約束を果たした。おそらくその思いは、今も確かに、静かに受け継がれている。俺はそう思うぜ」
日々食べるものにも困らず、家畜を育て、畑を耕し、味を向上させる暇まである牧歌的な村。
それを聞いたルイズは、無意識にふっと、笑みを零した。
「そうね。きっとそうなのね」
「ルイズ、さっきカトレアの魔力が付着したリスがいたんだけど」
「うん……多分、ちいねえさまはここを知ってたんでしょうね」
聡明な次女なら、間違いなく気づいている。そういう確信があった。
だからわざわざ、動物を使ってまで自分をここに導いたんだろうし。
そんなヒンメルの銅像だが、流石に長き時が経っているだけあって、所々が錆びついている。
おそらく……カトレアも気付いていたのだろうが、当時は身体が弱く、魔法で直すことができなかったのだろう。
なので、カトレアに代わり、フリーレンが身を乗り出す。せっかくなので銅像をぴかぴかにしてやろうと、〝銅像の錆を綺麗に取る魔法〟を使おうとした。
「ねえ、フリーレン」
「なに?」
「……わたしにやらせて頂戴」
ルイズはヒンメルの銅像と向き直った。
その顔は、穏やかな笑みを浮かべている。
「ヴァリエール家の一員として、わたしもちゃんと報いることをしなくちゃ」
先祖の
ルイズの言葉に、フリーレンは頷いた。
数分後、ヒンメルの銅像は綺麗になった。
さらに、周囲は『蒼月草』で綺麗に彩られていた。
全て、ルイズの魔法によるものだった。
そして再び、ルイズ達は旅を始める。村人たちの暖かな見送りを受けて。
手を振って別れを惜しむ彼らに手を振り返しながら、ふと、ルイズは言った。
「ねえ、フリーレン」
「なに? ルイズ」
「わたしも、勇者ヒンメルについて、もっと知りたくなったわ」
それを聞いたフリーレンは、ふふっと笑った。
「私もだよルイズ。だから、今度はシエスタの家に行こう」
「そうだな、あそこでも色々あった。タルブに着いたら、色々話してやるよ」
「わたしも、今の話で興味を引かれました。改めて、すっごい勇者様だったんですね」
シエスタも足取りを軽くさせながら、二人の先へ進む。
天気は快晴、風は微風。草原を歩む馬の嘶きが、何処からか響いていた。