使い魔のフリーレン ~ゼロからの旅路~   作:お団子

76 / 90
第71話『タルブの記憶 その続き①』

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

「そんなに凄かったのか? そのフリーレンってやつは」

「ああ、勿論オスマンも凄い魔法使いだと思うけどね。彼女は何ていうか……自分が吐いた言葉に嘘はつかないタイプでね」

 

 未踏破の洞窟から出た後。

 奇しくもダングルデールの酒場にて。

 オスマンはヒンメルのおごりで酒を飲んでいた。

 

「魔法も凄いけど、〝魔王を必ず倒す〟って彼女は言い切った。その言葉を素直に信じられるような。薄情でもあるけど、心の底から信頼を置ける不思議な奴なんだ。だから僕も、その言葉を信じて最後まで突っ切れたんだ」

「おまけにエルフとはいえ、綺麗なかわいこちゃんなんだろ? そうだなあ、おれも一度是非会ってみたいもんだな」

「おい、彼女にもセクハラとか、流石の僕もマジギレするぞ。魔法の話で花を咲かせるのは良いけど、そういうのは本当にやめてくれよ」

「冗談だよ、流石にお前の彼女にそんな真似は……うん! 多分、多分しないから……! だからその振り上げている拳を、ほら、ね。暴力反対……」

 

 先ほどまで、近場の洞窟に潜む複雑怪奇なダンジョンを冒険していたのだが、結果的には何の成果も得られず、めぼしい宝も手に入らなかった。

 その憂さを、酒で晴らすことにしたオスマンは、ヒンメルから「フリーレン」という旅仲間について、色々語っていた最中だった。

 

「普段キレないヒンメルをキレさせるとか、ほんと、その癖だけは早く治した方がいいぞオスマンよ……」

「しゃーねーだろデルフ! これが人の(さが)ってやつだ!」

「大声で宣言するものじゃない気がするけどね……やれやれ」

 

 その話も粗方終わった所、それは起こった。

 

「た、大変です!」

「ん、どうしたんだ?」

「旅人らしき人が、コボルトの集団に襲われていて……!」

 

 村の住人が、慌てた様子で酒場にやってきたのだ。

 話を聞くに、村の近くにある林の中で、銃の発砲音が聞こえたらい。

 様子を見てみたら、()()()()()()()()が、この辺りを根城にしているコボルトたちに襲われているとのことだ。

 

「どうするよ、ヒンメル」デルフは問い掛ける。

「無論、行くさ。見間違いだとしても放っておく理由が無い」

 

 真偽はともかくとして、正義感から身を乗り出すヒンメル。オスマンは気怠そうに机に突っ伏していたが、食後の運動と割り切って同じく身を乗り出した。

 

 がうぅわう! ぎゅるわぁっ!

 

 果たして、この話は本当の事だった。

 村人の案内で駆けつけてみれば、既にボロボロの傷だらけの青年が、今まさに犬型の亜人……コボルトの振り被った槍の犠牲になるところだった。

 

 それを見たヒンメルは、一瞬にしてデルフを抜刀。突き刺しにかかるコボルトを浜辺の彼方まで吹き飛ばした。

 

 きゃゅいん! きゃん、きゃん!

 

「大丈夫か!? 助けに来たぞ!」

 ヒンメルは走り疲れて倒れた金髪の青年を、介抱しながら油断なくデルフを構えている。

 一方、コボルトどもは一気に恐縮した。

 その辺をうろついていた人間を楽々と狩る仕事だった筈なのに、やってきた青年が、同朋の一人を呆気なく吹き飛ばしたのだ。

 その計り知れぬ力に、思わず後ずさりするコボルト達。すると彼らの背後から、流暢な言葉を発する声が聞こえた。

 

「何をしておる……かのような魔法すら使えぬ毛なし猿に怯えるでない……」

 

 怪物が人語を話しているかのようなおどろおどろしさで、神官の服を着た犬の化け物が、こちらへとやってくる。

 

「ありゃあ、コボルト・シャーマンだな」

神官(シャーマン)?」

 青年をやさしく横たわらせながら、ヒンメルはデルフの言葉に耳を傾ける。

「人語を介するほどの知性を持ったコボルトさ。きぃつけな。大概この手の連中は『先住魔法』を使ってくるぜ」

「フン……貴様ら如きに高尚なる『精霊の御力』を借りる必要は無し。これで十分」

 神官と名乗る犬の怪物は、その手にある、土色の魔石を光らせる。

 

 すると、コボルトの背後から巨大なゴーレムが出現した。犬の頭をした巨人が、その手に大剣を持ち、ヒンメル達に立ちふさがった。

 

「『土精魂(どせいこん)』……、お前たちが『土石』と呼ぶものだ。どうだこの力、凄まじいことだろう?」

「きみたちは一体、何がしたいんだ? なぜ彼を襲う」

「理由などない。貴様等が我が物顔でこの地を闊歩するのと同じように、我らもまた、己の住む土地を広げるだけの事。そして侵攻の準備が整ったまでの事だ」

 

 シャーマンはフゴフゴと笑う。人が襲うのに理由などない。心底人を見下した発言と目線。

 その光景に、ヒンメルは一瞬、自分の世界に住む化け物……『魔族』と重ね合わせてしまう。

 

「僕等は彼を助けに来ただけだ。大人しく引き下がってくれるのなら、これ以上君らに何もするつもりは無い」

「先ほど同胞の一人を吹き飛ばしておきながらよく言う。どの道この地一帯に住む人間どもは全員、我らの神にささげる供物とするつもりだ。貴様らもその後を追うがよい」

 

 ハルケギニアの先住民である亜人の中には、『大いなる意思』とは別に、独自の神を持つ種族もいる。コボルトはその一種だ。

 その中でも、彼らの種族が崇める神は、供物として生きた人間の肝を好むとされている。人間を捕え、生きたまま肝をくりぬき祭壇に捧げる風習が、コボルト達にはあるのだ。

 

 どうやら、この神官率いるコボルト軍はかなりの過激派のようだ。『土石』という強靭な武器を手にして増長し、同胞からの人心を集めたことで、人間の居住区に打って出られると思い上がり始めたのだろう。

 

「さあ! 我が大いなる力によってもたらされた巨人よ! 我に代わり人間どもを撃ち滅ぼせ!」

 神官は『土石』を高々を掲げ、そう叫ぶ。

 すると、背後で控えていた土色の巨兵は、ゆっくりと動き出す。

 

 それだけで神官は高笑いした。誰もが恐れをなして絶望の表情を浮かべると思っていたのだろう。

 ……目の前で大剣を構える青年は、この土巨人よりも遥かに高性能かつ高機動、精巧な武装を備えた、大魔法使い(フランメ)作兵器ゴーレムを一撃で仕留めたことがあるなど、露知らずに。

 

 とはいえ、自分の背後には弱っている青年もいる。彼を庇いながら戦うと彼の傷にも響くだろう。

 ここはオスマンに任せるとしよう。

 

「オスマン!」

「わりぃ……っぷ、飲んだ上に走り過ぎて……吐きそう……」

「ハイターかな?」

 一週間に一度は二日酔いでダメになる親友の名を出して、思わずツッコむヒンメル。

 仕方が無い、僕一人で対処するか……と、剣を構える。

 その時だ。

 

Getdown(伏せろ)!」

 

 その時、「しゅぽっ」という気の抜けた音と共に、何かが飛んでいった。

 それは動き出そうとする土巨人に着弾すると、一瞬で木っ端みじんとなって吹き飛ばしていく。

 

「――――は?」

 

 それを見た神官は唖然とした表情を作る。ヒンメルやオスマンも同様だった。

 先の質量弾を放ったのは、どうやら倒れた金髪の青年だったらしい。

 まさか弱り切った毛なし猿に、このような攻撃手段があったとは……! コボルト・シャーマンは怒りで唸り声を上げる。

 

「な、き、貴様……!」

「どうする? まだやるか」

 

 ヒンメルの声に、コボルトはぎりっと歯を食いしばり『土石』を光らせる。

 すると辺り一帯に土煙が発生。ヒンメルが剣圧で煙を吹き飛ばしたころには、コボルト達はあっという間に消えていた。

 

「まあいい……すでに準備は整っている……。最初はタルブだ。そこを新たな拠点にし、ゆくゆくは猿共の王国まで攻め入ってやるわ……」

 

 そんな、不穏な言葉を残して。

 

 

「大丈夫か!?」

 脅威が去ったと思ったヒンメルは、そのまま倒れこむ青年に声をかける。

 彼には大きな傷があった。治せるかどうか自信はなかったが……。

 

「まだ、この程度なら大丈夫だ。多分……。『治癒(ヒーリング)』を使えば……」

「まずその前に、魔法でお前の酔いを醒ましたらどうだ?」

 

 体の動きすら覚束ないオスマンを見て、思わずツッコむデルフ。

 だが、そんなんでも彼の治癒魔法で、大体の傷は塞がり始める。

 

 しかし……改めて見ると不思議な服をした青年だとヒンメルは思った。

 ハルケギニアでも自分の住む世界でも見たことが無いタイプの服。彼は一体、何者なのだろうか?

 

「さっきは助かったよ。ありがとう。僕はヒンメル。彼はオスマンだ。きみは?」

「……ジョン。ここは、どこだい? 故郷に……故郷に帰りたい……」

 

 涙ながらにそう呟きながら、ジョンと名乗った青年は気絶した。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 そこから時を経て。

 

「とまあ、そんな感じの事件がここであったわけよ」

 シエスタの肩に今は担がれているデルフリンガーが、丁度騒動が起こった場所にみんなを案内しながら、そう説明していた。

 

「そんなことがあったんですか……」

 シエスタは茫然として呟く。

 まさか、コボルトの群れが当時はそこまで隆盛していたとは。しかも、連中はまさかのタルブ侵攻まで考えていたらしいなんて。

 

「実際、ジョンを介抱した後は、コボルトの言を気にしたヒンメルが、タルブへ向かうことにしたんだ。そしたら連中、丁度二百匹くらい軍勢を引き連れててよ。余りの数に当時の領主様でさえ、二の足踏んでたんだ。まっ、ヒンメルとオスマンと俺とジョンで、全てぶっ倒したからなんの問題もなかったけどな!」

 

 愉快そうに当時の事を振り返り、からからと笑うデルフ。

 そこまで聞いて、ほっと胸をなでおろすシエスタ。

 

「っていうか、そうなるとシエスタの御先祖様も、ヒンメルや学院長にお世話になってたってことじゃないの」

 ルイズの言葉に、「そういうことになりますね」と、はにかんだ声でシエスタは言った。

 

「わたしも、ミス・ヴァリエールと同じで勇者様に助けられていたんですね……」

「……しかし、結局、そのジョンという人は何者だったんだ?」

 

 そう尋ねるのは、新たに旅仲間となったアニエス。

 まさか件の勇者が故郷に来ていたこと、その上でコボルトの軍勢という厄介そうな案件を少数で片付けたという武勇伝を聞いて、かなり驚きの表情を浮かべていた。

 

「さあね。ただ……フランメの洞窟とかを見る限り、サイトの世界の住民であることは間違いなさそうだね」

 フリーレンの推理に、デルフも「そうだろうな」と返す。

「で、そのジョンという人と、シエスタの御先祖様、そしてヒンメルを飾った像が、タルブのシエスタの家にあると」

「そういうこった。結局銅像ができる前にヒンメルたちは旅立ったから、どんな風にできてんのか俺もよく知らねえんだよな。そういう意味じゃ楽しみだぜ」

「そっか、じゃあ早速、タルブに行ってみようか」

 フリーレンの言葉に、周囲は頷いた。

 

 

 

 そこからしばらくして。

 

 フリーレンと旅立って28日後。

 トリステイン国、タルブ村。

 

「ただいまー!」

「おおシエスタ! お帰り!」

「おねえちゃんお帰りー!」

 

 タルブへやってきた一行は、早速シエスタの家を訪ねた。

 彼女は八人兄弟の長女らしく、帰ってくなり下の子供たちに笑顔でもって囲まれる。

 

「どうしたんだい? 学院へのお勤めはどうしたのさ?」

「ちょっと休暇を貰って、今は貴族様と旅している最中なんです」

「お貴族様と! それはまあ、どうしてまたそんなことになったんだい!?」

 

 急な訪問ということもあり、どうして貴族と旅をすることになったのか、驚く家族たちに、ここまでの経緯を簡潔に説明するシエスタ。

 

「はあ、それはまた、壮大な話になってきたものだね……」

「ええ、でも楽しさは感じているから、心配しなくて大丈夫よ」

「お前がそう言うのであれば、わしは何も言わんが……くれぐれも気を付けてくれよ?」

 

 時間をかけて両親を説得したシエスタは、引き続き旅する許可を、きちんともらうことができた。

 

「どうか、うちの娘をよろしくお願いいたします」

「ええ、わたしとしても悪いようにはしないから、心配しないで頂戴な」

 

 ついこの間までこんなことあったなぁ、と思いながら、頭を下げるシエスタの父を宥めるルイズ。

 

「実はね、帰ってきたのには理由があるの。今って山奥に丁度『タルブの星』が実っているわよね?」

「ああ、丁度収穫時期だ。近くの山林でも咲いているから、案内してあげなさい」

 

 ここに来る目的の一つが、『タルブの星』という山ブドウの花を覚えることだ。

 というより、ルイズがここに来た目的がそれである。勿論、後でヒンメル像も見に行くつもりだけど。

 

「そう言えば、あなたたちは何をやっているの?」

 

 ここでルイズが、家の中にあるものを見て、疑問符を浮かべる。

 シエスタの下の弟たちが、たくさん四角い、白い箱を折っているのである。

 

「ああ、これは『灯篭流し』を作るのに使う紙ですよ」

「あーそっか! もうそんな時期だっけ」

「シエスタ?」

 ルイズは、納得したような表情を浮かべるシエスタの方を向いて尋ねる。

 

「ええ、実は毎年、タルブの夏でやっている恒例行事なんです。この紙の中に、蝋燭をつけて、小舟に乗せて近くの川に流すというお祭り」

「へー? なんか、聞いたことない風習ね」

「でしょうね。多分やっているのはここだけだと思います。なんでも、わたしの御先祖様……ササキおじいちゃんが始めた行事で、気づけば根付いた。そんな感じなんです」

「ってことは、これはサイトの世界の風習ということか」

 

 耳を再び縮めたフリーレンが、興味深そうな目で子供たちが折っている用紙を見つめていた。

 

「世界? シエスタ、彼女は一体……?」

「ああ、お父さん、実はね……」

 

 ここでシエスタは、旅の中で起こったこと。主に別世界のこと、自分の先祖のルーツに関わることを、かいつまんで説明した。

 その中でも彼女、フリーレンは別世界にかなり詳しい旅人の一人で、今はルイズの使い魔をしているということも、併せて解説(エルフであることを除き)する。

 

「そうなのですか、曽祖父がきた『世界』というのに、大層詳しい方なのですね」

「その中の一人は、私の知る人も混じっているかもしれない。だから後で、この家の奥に飾っているという銅像を見せてもらいたいんだよね」

 

 祖先がどちらも『異世界から来た』という逸話は聞いているためか、疑問符は浮かべながらも強く否定することなく、シエスタの父は頷いた。

 

「了解です。後でご案内いたします。……そう言えばついこの間ですかな? オールド・オスマン学院長が、秘書と大層なお貴族様を連れて、あの像を見に来られたことがありましたな」

「え? 学院長が?」

 ルイズが疑問符を浮かべて問うと、後ろから声が。

 

「そうよー、やっぱりあの像って、知る人ぞ知る有名な像みたいね」

 

 その声と共に、風を切る轟音と共に拳が、アニエスに向かって飛んできた。

 

「――――ッ!」

 

 攻撃に素早く反応したアニエスは、後頭部目がけて飛んでくる正拳突きを、手の甲でいなしつつ、攻撃が飛んできた背後を振り向く。

 すると先の攻撃者とは別の者が、足払いをかましてきた。それも反応したアニエスは、膝の甲でそれを受け止める。まともに喰らったら横転間違いなしの一撃だった。

 

 それを難なくいなしたアニエスだったが、しかし最初に腕を突き出した最初の攻撃者は、握り拳を広げて彼女の襟と左手首を掴んで大外刈り。アニエスの身体は宙に浮き、叩きつけられるかと思いきや、両足の膝で衝撃をいなすことで素早く立ち上がる。

 逆にアニエスが勢いを殺さず、投げ飛ばしてきた者を逆に投げ返す。

 投げられた相手は宙に浮くも、回転しながら綺麗な受け身を取って、アニエスと距離を置いた。

 

「ふぅむ、腕は鈍ってないようだな」

 最初の攻撃者が、渋い男声で静かに言った。

「……相変わらずですな、師匠、ジェシカ殿」

「いやっほー、アニエスさん、おひさー!」

「ほんっと、久しぶりねえアニエスちゃん! 精進しているようで何よりだわぁ!」

 渋い男声だった男性は、いきなりくねくねしながら女風の声で、話し始める。

 

 何が何だか分からなかったルイズは、改めてアニエスを攻撃してきた二人を見て呆気に取られた。

 そう、今さっきアニエスに攻撃してきたこの二人、見覚えがあったからだ。

 トリスタニアに初めてフリーレンを連れて行った時に。

 

「あ、あんたたちは……!」

「おや、あなたはこの前、シエちゃんロングビルちゃんと一緒にいた御貴族さま!」

「ルイズとフリーレンだっけ、まさかあなた達ともこんなところで会うなんてねー!」

 さっきの重苦しい雰囲気はどこへやら、陽気な声でスカロン、ジェシカ親子が現れたのだった。

 

「なんだ、既に彼らとも知り合いだったのか」

 埃を振り払いながら、アニエスはフリーレンに向き直る。

「トリスタニアの『魅惑の妖精』亭で一度ね。確かアニエスは……」

「ああ、彼……、スカロン殿から武術や剣術、色々教わってな」

「そうよそうよ! アニエスちゃんは私の特訓を乗り越えた貴重な逸材なの! ずーっと付きっきりで鍛えてきた、いわば一番弟子なのよ!」

「……まあ、悪い人ではないからな。彼のおかげで武道の楽しさを教えてもらった」

 内心、スカロンの雰囲気に辟易しているようだが、なんだかんだで感謝の意を示すアニエス。

「で、あなたたちはなんでわたし達の家に?」

「ああ、実はね……」

 

 ここで、やってきたスカロンやジェシカにも、これまでの経緯を話すルイズとフリーレン。

 

「ええ! シエちゃん、あなたお貴族様と旅してるの!?」

「しかも向こうから誘われただなんて、なによそれめっちゃくちゃ面白そうじゃないの!」

 

 やっぱりというか、「シエスタが貴族と旅している」という話に、大きく食いついたジェシカたち。

「しかもフリーレンちゃんは、あの銅像について何か知っていると」

「そういうことだったらわたしが案内してあげる! ついでに『タルブの星』の採れる場所も教えてあげるわ!」

 そういうこともあって、フリーレン一行はジェシカの案内で、『銅像』のある社まで、早速向かうこととなった。

 

 

 

「ここよ」

『神社』の鳥居をくぐり、その中にある一際大きな屋敷の扉を、ジェシカは開ける。

 果たして、そこにあるのはヒンメルの銅像であった。彼の左隣がシエスタの祖先の佐々木氏、そして右隣が背後の『ゼロ戦』を使ってこの地を去った、ジョンという青年の物らしい。

 

「本当に、こんな大きな物体が飛んだの? トンボみたいだけど……」

 

 既にこの地にまつわる話云々について。ジョンがこの『ゼロ戦』に乗ってこの地を去ったことはデルフから聞いていたが……。

 さすがに実物を見ると、こんなのがどうやって飛ぶのか、疑問符ばかりが浮かんできて仕方が無いルイズだった。

 

「わたしも、実際そう思ってます」

 こそっと、ルイズの耳元でシエスタも同意する。

 フリーレンは『ゼロ戦』の銅像を、激しく興味がある目で色々触っていた。

 流石に銅像であって兵器じゃないためか、『ガンダールヴ』による解析能力は発揮できなかったようだが。

 

「でもこれを飛ぶのを、デルフは実際に見たんでしょ? ヒンメルと一緒に」

「ああ、間違いねえ。そこの風車のような三枚羽がグルグルグル! って回り出してな。今思い返してみても奇妙なもんだが、そこいらの『宙船』よりも速く、そして真っすぐに飛んでいったよ」

 

 シエスタの肩に担がれたインテリジェンスソードが、カタカタと揺れて答える。

 

「わっ、剣がしゃべった!」

 ジェシカも流石に、剣がひとりでに喋ったことに対して驚きを見せる。

「そっか、私も見てみたかったな。どんな風に飛ぶんだろ、これ……」

 フリーレンはここで、『ゼロ戦』の前に立つ、この世界に来て二回目となるヒンメルの銅像を見つめ続ける。

 その様子を見たジェシカは、ふと疑問に思ったのかシエスタに耳打ちした。

 

「ねえ、さっきから聞いているとフリーレンって、まるでヒンメルって人と知り合いみたいな感じでしゃべっているけど、ヒンメルってもうかなり昔の人よね?」

「あ、うん……実はね……」

 どもるシエスタ。「話しても良いです?」と、フリーレンに了承を取る。

 

「えー、なによなによ、何を隠してるの?」

 好奇心の塊であるジェシカは、この対応にすごく惹かれたらしい。俄然食いついてくる。

 ルイズはもう、仕方が無いかという風情で、ジェシカを睨んだ。

 

「……誰にも言わないって約束しなさいよ。フリーレン」

 

 フリーレンはそれを聞くと、人間大の耳の片方を、軽く手で握りこむ。

 そして開いた瞬間、ジェシカは思わず声を上げそうになったのを自分の手で抑えた。

 

 ……明らかに人とは思えない横長い耳が、そこに現れていたのだ。

 

「え? エルフ……なの?」

「勘違いしないでねジェシカ。フリーレンさんは『別世界』から来たエルフで、砂漠に住むエルフたちとは無関係の人だから」

 すかさず、シエスタがフォローに入る。ジェシカは何度か、ルイズ、シエスタ、アニエス、そしてフリーレンという順番で顔を見渡していく。

 

「はぇ……、その耳、本物なの?」

「そうだよ。村に入る時はいつも縮めているけどね」

「触っても良い?」

 

 ジェシカは興味津々で、フリーレンの長耳をつまんでふにふにしはじめた。

 

「へぇー、本物なんだ。そっか、エルフなのね、あなた……へぇー」

「いつまで触るのさ……」

 

 いつまでもふにふにしているジェシカに対し、しおしお顔で抗議するフリーレンだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。