一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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転生前〜誕生編
一般的な神様転生プロローグ


 

 さて、端的にさっくりと現状を説明すると。

 

 あなたは気付けば、謎の空間に漂っていた。

 

「…………?」

 

 あなたは困惑する。

 

 そこは全くわけのわからない場所だった。少なくともあなたが生きている間に似たような空間に踏み入った経験はない。

 

 まず、周囲の風景を上手く知覚できない。視覚的には真っ白な光で隙間なく埋め尽くされたようにも、全くの逆に完全な無を象徴するような黒とも感じられる。そのような矛盾した空間が実在すると考えるよりも、自分の目玉が狂ったと考える方がまだしも自然だとあなたは思っただろう。

 

 そんな仮説を確かめようとしたあなたは、更なる混乱に襲われた。

 

 他の感覚器も視覚同様、真っ当な反応を返さない。騒音と静寂が同時に聞こえ、芳香と無臭が同時に嗅ぎ取れる。全身の皮膚という皮膚には何かがまとわりついてきている感触が確かにあるというのに、どれほど手足を振り回そうと何物にも触れる事が出来ない。

 

 外界からの刺激の一切が理解の及ばない事象に埋め尽くされ、あなたの思考は秒ごとに乱されていく。そしてそれはその「秒」自体が、つまりは時間さえここには有って無いと何故かわかってしまった瞬間にピークに達した。

 

 

 

「……ヒトにはここは適さぬか。悪い事をしたな。君に馴染む形に作り替えよう」

 

 と、しかしそれは唐突に終わった。

 

 切り替わりは瞬間的なものだった。発狂寸前だったあなたは気付けば、何の異常も感じられない部屋の中に座っている自分を発見した。

 

 実にありふれた平凡な部屋だ。広さは10畳ほどだろう。クリーム色の壁紙、有孔ボードの天井に白い蛍光灯、汚れのないリノリウムの床、アナログの壁掛け時計、部屋の隅には背の高い観葉植物。あなたの眼前には茶色いローテーブルがあり、それを挟むように革張りのソファが対面状態で置かれ、あなたはそのソファの片方に腰掛けていた。

 

 いささか飾り気は少ないが、どこぞの企業か何かの応接室といった雰囲気だった。全く意味のわからない空間から地に足のついた部屋への突然の移動という急展開に、あなたの思考は急ブレーキを踏んだように停止する。

 

 

 

「よろしい、落ち着いたようだな。話をしたいのだが、構わないかね?」

 

 そこに言葉が投げかけられる。切り替わりの瞬間に聞こえた声と同じものだった。

 

 あなたは視線を前へ、つまりは対面のソファへと向ける。そこにはひとりの人物が落ち着いた様子で座っていた。

 

 それは男とも女とも容易に判別できない、中性的な顔立ちの何者かだった。身に纏うのは現実でもテレビでもあるいはネットの中でも飽きるほどに見た現代的なスーツと革靴で、取り立てて言うべきところもない。

 

 ただ、古代の彫刻めいて整った顔には表情らしい表情がなく、黒い瞳があなたをじっと見つめている。その目をよくよく見れば無限の奥行きが感じられ、蛍光灯の反射かと思われた瞳の光は真実瞳の遥か彼方から放たれたものであり、さらに言えばそれは星々の光であり、彼もしくは彼女の眼窩には宇宙が収まっているのだと何の根拠もなく理解が及ぶ。

 

 

 

「まずはじめに、君はここに顕れる直前、自分がどうなっていたかを覚えているか?」

 

 どう考えても尋常の存在ではないとわかってしまう何かの言葉は、容姿と同様に中性的な響きであなたの耳に届く。決して大きくはないにも拘らず体の芯にまで染み込んでくるような異質な声色に、あなたの思考は自動的に従った。

 

 

ランダム分岐/前世の享年
1に近いほど若年

10に近いほど高齢

 

1d10=4

 

ランダム分岐/前世の生涯
1に近いほど虚無

10に近いほど波瀾万丈

 

1d10=5

 

ランダム分岐/前世の性別
1なら男性

2なら女性

 

1d2=1

 

 

 あなたの脳裏に描かれたのは、ごくごくありふれた男の、人生の記憶だ。

 

 あなたは平凡な生涯を平凡に生きた。何か大きな物事を成し遂げたわけでもなく、さりとて何もしなかったわけでもなく。地球の日本という国に生まれた人間としてのほぼ平均値、探せば似たような人生を送った者はいくらでも見つかるような者としてあなたは生きた。

 

 生き様が平凡なら、死に様も平凡そのもの。高校を卒業しこれから花の大学生活、というタイミングでの死には思うところもあろうが、それ以外には大きな感情もない。

 

 あわや地縛霊まっしぐらなどというような怨念や悔恨とも、与えられた命を十分に全うしたという穏やかな満足とも、どちらとも無縁な……人並み程度のそこそこの未練と避けえぬ終わりへの諦観とを引き換えにした死を迎えた記憶があなたにはあった。

 

 

 

 そう、あなたは死んだ。そのはずである。少なくともあなたの自認においては間違いなく、18年少々の生涯を終えたはずだ。

 

 なのに何故、こうして意識を残したままなのか。

 

 また、死後に対面しているこの相手は何者なのか。

 

 そんな疑問への答えは、現代の日本社会をごく普通に生き、人並みにフィクションにも触れていたあなたには思い当たるものがあった。

 

 

 

「理解が早い。手間が少ないのは良い事だ」

 

 あなたの思考がそこに行き着いたのをどうやってか理解したらしく(もっともあなたの想像が正解ならさして不思議でもないが)対面の誰かは口の端だけを吊り上げ、小さな笑みを作った。

 

「端的に……君は死んだ。その後、魂を私に掬い上げられた。そして私は君の想像通り、神である。もっとも、君らの神ではない。君とは縁もゆかりもない、異界の神だ」

 

 神、自称ではあるがあなたとしても納得できる存在は、作った笑みをまた無表情に戻して話を続ける。本人……本神いわく全く無関係の存在が何故自分に、というあなたの疑問は当然のように読み取られているようだ。

 

「疑問には答えよう。君にはこれより、君の世界を離れ、私の世界に移り、新たに赤子として生まれてもらいたいのだ。この面会はそのための勧誘の場である」

 

 

 

 神からもたらされた返答に、当然あなたにはまた、自分に何をさせたいのかと新たな疑問が生まれる。そちらにもまた、秒と待たずに声が返る。

 

「移り住んだ後は何も求めぬ。自由に生き、自由に死すると良い」

 

 続けてあなたは思考する。ならば何故転生を。

 

「君の移動そのものが目的だ。私の世界はこれより拡張を予定している。必然ヒトの数も増やしたいのだがヒトの増殖は物理的な面ではともかく、魂の部分ではいささか面倒があってな。自然に増やすよりも他所から流した方が手間がない」

 

 一人一人こうして勧誘するのは手間ではないのか。

 

「勧誘は初めの一人だけだ。以降は自動化されるよう仕組みを作る。そのためには、そうだな、君に理解しやすく言えば世界と世界の間に水路のような物を作る必要がある。ただし、ヒト以外を流さぬよう、ぴったりとヒトの魂の輪郭に沿った形の水路をだ。それには実際に一度、ヒトの魂を通しながら穴を掘るのが結局最も効率的だ。つまり、君の魂を掘削用のドリルとして利用したい。保証しておくがこの工程で君の魂が傷付く事はなく、君の移動が成った時点で私の目的は達成される。他に要求は無い」

 

 なぜ自分が。

 

「ただの偶然だ。増えすぎたヒトを減らしたい君らの神とヒトを増やしたい私の利害が一致し、約定が成立した後、最も近い日時に死んだのが君というだけだ」

 

 断ればどうなるのか。

 

「どうもならん。私が求める魂はまた別に見繕う事になる。君は元の世界に戻り、これまで通り輪廻を歩むと良い。世界を繋げる以上、輪廻の中でこちらに流れてくる事もあるかも知れないがね」

 

 神ならば強制もできるだろうに、勧誘しているのは何故か。

 

「君らヒトも犬や猫を愛でる事はあろう。そして犬猫の去就を定めるにあたり、自らの都合のみを優先するか、彼らの都合も鑑みるかは個々によろう。私は後者だ、というだけの話だ」

 

 そちらの世界にも犬や猫が?

 

「世界が生まれた順はそちらが先、こちらが後だ。優れたもの、愛らしいものは創世の折に真似た。犬や猫はその筆頭だな。あれらは良い。とてもな」

 

 異世界から地球に戻る事はできるのか。

 

「生きている間は出来ぬ。先程言った水路は魂の通り道だ。肉の体を通すには適していない。死した後は運による。道が通じている以上、君の世界に再び生まれる事も、私の世界に続けて生まれる事もあろう。ただ、私の要求に応じるならば次の生はどちらで生まれるか、死後に選ばせてやっても良い。その程度はさしたる手間でもない」

 

 そちらの世界はどんな世界なのか。

 

「君にわかりやすく言えば、剣と魔法のファンタジー、といったところだ。風景や文化は君らの世界における中世に近いが、魔法や祈祷が現実に存在する分、それよりは発展していよう。残念ながら君が生前に享受していた科学による利便性には全く及ばないがね」

 

 ファンタジーということは魔物もいるのか。

 

「居るとも居ないとも言える」

 

 つまり?

 

「魔物という言葉から連想されるような邪悪な生き物、つまりは結果として他者や世界を滅ぼしてしまうのではなく、滅ぼす事自体を目的とする、といったような破綻した命は置いていない。が、ヒトの視点からすれば理外の怪物としか捉えられぬものはいる」

 

 魔物は多いのか。

 

「虫の数には遥か劣る。魚にも遠く届かぬ。鳥とも比べ物にならぬ。およそ、ヒトと同数かやや少ない程度だろう。村々に住まう者にとっては日常だが、都市の護りの中では生涯見ない者も多い。……改めて数えるのは手間だ、曖昧だがこのくらいで良かろう」

 

 

 

 あなたの疑問は途切れ、部屋の中に少しの間沈黙がわだかまる。他に聞くべき事はあるだろうかと思考するあなたへ、異界の神は再び語りかけた。

 

「こちらの望みを押し付ける以上、君の新たなる生には幾らかの優遇を与える用意がある。まず第一に、記憶の継続だ。本来ならばある死と生の狭間における記憶の漂白を免除する。つまり君は今の君のまま、今生の続きを生きる事が出来る」

 

 それはあなたにとっては良い話だろう。あなたはまだ若く、やり残した事、やりたかった事は人並みにある。それらに挑戦、あるいは楽しむ機会が与えられた事は望外の幸運だ。何しろ、本来ならば死んでしまって終わりだったわけであるのだから。

 

「第二に、ふむ、君らの文化ではチートと呼ぶらしいものだ。新たな生が実り豊かなものになるように、只人ならば持ち得ぬ優れた肉体や特異な技能、そういったものを君に植え付けよう。私が事前に用意したものから選ぶでも、君がこの場で考えたものでも良い。世界を砕き得るようなものは許可しないが、ある程度は融通を利かせよう」

 

 こちらもまた美味しい。あなたも生前読んだ物語の中では実に定番なものだったが、実際に自分が受け取れる立場になれば高揚もひとしおである。

 

 

 

 あなたは考えをまとめた。

 

 この異界の神の言葉を信じるなら、素晴らしく美味しい話だ。メリットは大きく、デメリットは小さい。未知の世界、初見の土地でひとり生きる事に対する不安はあれど、それも神から受け取るもの次第では苦労は小さくできるはずだ。

 

「前向きになってくれたようだな。ありがたい事だ。では、これが私が用意したものの一覧になる。好きなものをひとつ選ぶと良い。……先に言った通り、君がこの場で考えてくれても良い」

 

 やはりあなたの思考は筒抜けらしい。神はまた口の端だけを上げる笑みを見せると、あなたへと一枚の紙を差し出した。

 

 生前に触り慣れた、A4サイズのコピー用紙。そこにどう見てもボールペンで書かれたような字が並ぶ。部屋の様子と良い、身にまとったスーツと良い、この紙と良い、随分と律儀にあなたの生活様式に合わせてくれているようだ。

 

 

 

 さて、紙には数種類の転生特典が書かれていた。あなたはそれらをじっくりと吟味し始める。

 

 はたして、新たな人生を歩むにあたって、あなたが最も必要とするものは何だろうか?

 

 

 

無双の剛力
筋力を超強化(人類の上限を大幅に突破)

持久力と生命力を強化(中)

戦闘技能の成長促進(大)

 

不朽の肉体
常時リジェネレート状態

物理/魔法ダメージ軽減(大)

毒物無効

病気無効

持久力と生命力を強化(大)

 

不滅の魔力
魔力切れが起こらない

魔法と祈祷の修得速度上昇(大)

魔法に関する知識を初期獲得

数種類の魔法を初期修得

 

疾風の脚
行動速度を強化(特大)

落下ダメージ完全無効

足場がある限り跳躍に失敗せず、高度上限を無視

完全な無音行動が可能になる

 

手練の指先
器用さを強化(特大)

物品加工/作成に失敗しない

物品加工/作成時に完成品の品質向上(大)

 

無限の成長
全技能の成長促進(中)

全技能の成長上限撤廃

 

読心の魔眼
他者の思考を読み取る

他者の思考が自動的に文章として描写される

他者の害意による危険を自動的に回避

 

鑑定の魔眼
物品の情報を読み取る

名称、用途、使用法、価値、来歴を完全看破

 

魔法のレシピ帳
現代日本の料理や物品を再現可能なレシピ帳を獲得

レシピの材料は全て異世界で入手可能

レシピ帳は窃盗、紛失、焼失、破損、汚損無効

 

魅惑の美貌(♂)
来世の性別が男性に確定する

来世の容姿レベルが10固定(最大値)

異性からの好感度上昇促進(大)

初期所持品が良質化(小)

初期所持金が増加(小)

 

魅惑の美貌(♀)
来世の性別が女性に確定する

来世の容姿レベルが10固定(最大値)

異性からの好感度上昇促進(大)

初期所持品が良質化(小)

初期所持金が増加(小)

 

高貴な生まれ
来世の家庭環境が上流階級に固定

最低でも裕福な商家以上が保証される

王族に生まれる可能性が発生する

初期所持品が良質化(特大)

初期所持金が増加(特大)

生まれに応じた各種技能を初期修得

一般現地人の従者を獲得

 

異形の生命
来世の種族が魔物に変更される

どのような魔物になるかはランダム

魔物は経験によって自己進化や自己改変が可能

魔物から人類への種族変更は不可能

人化が可能な魔法やアイテムは存在しない

種族によってはある程度の擬態は可能

 

忠実な従者
あなたに忠実な従者を獲得

従者は年齢、性別、性格、技能がランダム

初期状態は忠誠/友情/愛情/盲信からランダム

戦闘能力は最低でも都市最強クラスが保証される

従者はどれほど関係が悪化しても裏切らない

 

家族の幸福
前世と来世の家族や友人が幸運に恵まれる

初期性格変更(中立/善)

※性格が善だと選択肢が他者重視になる

初期所持品が良質化(小)

初期所持金が増加(小)

 

怨敵の凋落
前世の嫌いな相手が不運に苛まれる

初期性格変更(中立/悪)

※性格が悪だと選択肢が自分勝手になる

他者に不運を招く呪いを初期修得

呪いに分類される祈祷の修得速度上昇(大)

 

波乱の運命
様々な事件を呼び寄せる体質

行く先々で常に何事かに巻き込まれる

初期所持品が良質化(中)

初期所持金が増加(中)

 

権利の放棄
チートを受け取らず、一般人として生きる

チート選択

  • 無双の剛力
  • 不朽の肉体
  • 不滅の魔力
  • 疾風の脚
  • 手練の指先
  • 無限の成長
  • 読心の魔眼
  • 鑑定の魔眼
  • 魔法のレシピ帳
  • 魅惑の美貌(♂)
  • 魅惑の美貌(♀)
  • 高貴な生まれ
  • 異形の生命
  • 忠実な従者
  • 家族の幸福
  • 怨敵の凋落
  • 波乱の運命
  • 権利の放棄
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