一般通過異世界転生者:あなた 作:ID:Am88n712
基礎としての魔法修練を終えてしばらくの後、あなたは海岸を訪れていた。
といっても、砂浜ではない。崖から海へと繋がる道程をそのまま街に変えたルワ・ザンガラには、いわゆる日本の海水浴場のような環境はほとんど存在しなかった。正確には、あるにはあるがひどく狭い。
今回あなたが用があったのはそちらではなく、岩礁帯の方である。
あなたは海岸から、サッと近くの岩礁に飛び移った。その姿を、やや遠くの背の高い岩に腰掛けていた監視の者がめざとく見つける。対し、特に後ろめたい事もないあなたは大きく手を振り、何度かその場で飛び跳ねてみせ、足を保護する魔法が働いている事をアピールした。
屋敷の、そして街のルールとして、自力で魔法を扱える者は岩礁の上を自由に歩いて良い事となっている。流石に街から大きく離れるようなら連れ戻されるが、今日そうする予定はない。
監視の男はゆるく片手を上げて「好きにして良い」とハンドサインを送り、また視線を南、沖合の方向へ戻す。彼の役割にはヤンチャな子供を咎める事も含まれているが、主要な任は岩礁帯に異変が無いかの監視である。要は衛兵のようなものだと、あなたは認識していた。
許可が出た岩場をピョンピョンと、あなたは身軽に渡っていく。
新しい人生で新しく得た足は実に器用で、規則性などまるで無いゴツゴツとして不安定な岩を掴んで走るに全く不足はない。そこに魔法の皮膜によってゴム長靴めいた耐久性まで付与されており、ところどころに顔を覗かせている剣の切先のような岩の先端を踏み抜いても足ツボマッサージ程度の痛みで済む。
ルワ・ザンガラの住民は己を誇りをもって
あなたもその一員である以上、この程度の事は朝飯前というものである。
さて、あなたが岩礁にやってきた目的は遊びや観光ではない。先ほど話に出た、尖っている岩が目当てだ。
探せば探すだけいくらでも見つかるそれを、あなたはじっくりと吟味していく。鋭さ、大きさ、形状。あとは色も重要だと聞いている。薄く緑色の混じったものが硬度の面で良質とされるらしい。
数分と探さぬうちに程よい物を見つけたあなたは、岩場に屈んでその石の先端に指先を当てた。そして唱える。
発生点を定める起点の言葉に良く似た(似過ぎて発音がおそろしく混じりやすい。あなたも修得には苦労した)影響の原点を定める基点の魔法。
それに続くのは3音節。
詠唱の完了と共に、パキンと音を立てて岩の一部、鋭い先端が割れて落ちた。同時にガタガタとした部分が崩れて落ち、黒曜石のように滑らかな刃として成形される。大きさは手のひらと同等だ。
前世の教科書で読み、社会科見学などで訪れた歴史資料館では実物を見たこともある、磨製石器の槍の先端、そのままの姿があなたの手の中にあった。研磨の過程は経ず、魔法でまかなっているのだから、魔製石器とでも呼ぶべきだろうか。
最後に、刃を持参した長い棒の先端にあてがい、深く息を吸ってから。
持ち前の大声で、長く叫ぶ。引き寄せる力を意味する言葉を、長期間、強力に作用させるための発音だ。
魔法は無事に成功し、今や刃は棒に固定されている。まるでニカワか何かでガチガチに固めたような具合で、あなたが手で先端を掴み力をこめてみてもビクともしなかった。
| 武器/石英の槍 |
| 幼少期編&青年期編初期装備。 原始的な槍。
形を整えた棒の先に、鋭い石英の刃をくくりつけたもの。 植物資源に乏しいルワ・ザンガラでは柄の部分も石製である事が多く、重量はそれなり。 金属製の槍には及ばないが、生物を殺傷するに十分な威力を持つ。
魔法によって簡単に作成出来る。
取るに足りない数打ちの武器。 しかしだからこそ投擲に適し、空から降り注ぐ槍ぶすまという悪夢は、浅慮な外敵への容赦などカケラも持たない。
「あの街を襲う? そりゃ面白え、是非やってみるといい。戦場でもないのにあんな派手な死に方できる機会は、他にそうそうねぇだろうからな」
〜かつて大盗賊団を率いた、「三つ目」のバウム〜 |
工程は実にスムーズに、滞りなく行われた。
魔法の名手だという母親の血だろうか。この技術はあなたの手に良く馴染み、生活の様々な場面で便利に扱えている。基礎的な力ある言葉は、もうほとんど無意識に正しい発音を操れるほとだ。
……その負の側面。魔法を使えば使うほどに生まれるものについては、あなたは目をつむる事とした。
あなたひとりにどうこう出来るものではない。
実際のところ、ルワ・ザンガラの土地柄や、魔法の持つ圧倒的な利便性を考えれば、使わずにいる選択肢はありえなかった。今作ったばかりの槍とて、手作業ならば品質もかかる時間も比べ物にならないだろう。そもそも素人仕事で完成まで持っていけるかも正直怪しい。
それに幼少期に遭遇したアレにしたところで、ヤレカが言うには人を殺せるほどのものではないという。
ならば必要経費と見るべきだ。少なくとも、温暖化を引き起こすと知っていながらも車や電気の使用をやめられない前世の世界と、さして違いは大きくあるまい。
槍の調達を終えたあなたは、その足で街へ戻った。
途中で屋敷の用事を言い付けられていたヤレカと合流し、並んで歩く。持っている槍は1本だけだ。ヤレカはその戦闘スタイル上、ナイフの方が適している。
彼女は相変わらず幼い頃と同じ、暗い灰色に染めた骨製ナイフを愛用していた。今も服、というか胸を覆う海獣皮製の帯の中に隠しているらしい。外から見た限りでは不自然な凹凸もないのに、とは普段から時折あなたの脳裏をよぎる疑問だった。
「ふふ。触って確かめてみる?」
というヤレカのからかいも、大体はセットで。
それに、女同士だからセーフ、などと答えるには、ヤレカはちょっとあなたの男部分を維持しすぎていた。
さて、あなた達が訪れたのは、街の中腹よりもやや上あたりに存在する、とある施設だった。
ルワ・ザンガラでは当たり前の四角く白い石造りの建物。ドアのない開口部(この街では建物の開口部を塞ぐ文化があんまり無い。ドアも窓も同様)の上には、長剣と単眼鏡が並び、その間に革のブーツが置かれるという意匠の看板が取り付けられている。
武力をもって道なき道を行き、その果ての未知を目指す。そんな発足当時の関係者の夢や想いを形にしたものであるらしい。
組織の名は、冒険者組合。
あなたも数々のフィクションで慣れ親しんだ、いわゆる冒険者ギルドだ。
街の人々から寄せられた依頼を受け、武器と技能を頼りに解決し、金銭と名声を報酬として得る。実にロマン溢れる概念だ。
……と、思っていられたのは幼少期だけ。
あなたはヤレカの前を歩き、冒険者組合に踏み入った。
「……おん? おー! イシャバんとこの嬢ちゃんじゃねーか! ひひひ、最近まーた別嬪になったなぁ。男どもが放っておかんだろ」
出迎えたのは赤ら顔の中年男だ。
あなたの父、イシャバの古い友人であるらしく、昔から時々屋敷に訪れては酒盛りを楽しんでいる姿を見かけている。名前はガディンガ。呼びにくい、とは本人もイシャバも口を揃えて言うところで、普段はガドとの愛称で呼ばれている。
あなたからすれば、呑兵衛のガドおじさん、といったくらいの距離感だ。
「そろそろ魔法覚えてヤる事ヤったか? まだならオジサンが教えてやってもいいぞ。なんせこっちの剣は生涯現役だ! ……なーんつってな、ワハハハ!」
なお、割と地獄のようなセクハラ親父でもある。男尊女卑社会であるルワ・ザンガラにおいては、これが模範的なフレンドリー中年男として扱われているというのが、平成後期から令和の日本を生きたあなたにとっては未だにあまり信じたくはないところである。
あなたは細くため息を吐きつつ、体を隠すように槍を抱いた。
セクハラ親父に肌を見られる事に対する抵抗がひとつと、他にもうひとつ。ガドはルワ・ザンガラでは珍しく肌を隠す服を着ているという点がある。
ゆったりした麻のチュニックに、同じく余裕のある麻のズボン。それらをまとめて腰のベルトで押さえた装いだ。足も木靴を履いているため、露出しているのは顔と首元、それと手首から先ぐらいのもの。
文明の香りを感じる姿の前に立つと、胸帯と腰巻だけの自分が露出狂にでもなったような気分になってしまうあなただった。
……このガドという男は、冒険者組合ルワ・ザンガラ支部の最高責任者である。いわゆるギルドマスターだ。そして同時に事務員であり、受付であり、営業マンでもある。
実のところ、従業員は彼ひとりしか居ない。たまに臨時雇いで増える事もあるが、せいぜい1〜2週間ほどの話だ。
端的に、この街において冒険者組合は零細なのだ。建物の規模自体、小さめのコンビニほどでしかない。
冒険者の地位というのは一般的に、その土地の環境による。
公の武力が整備され問題が少ない街では居なくとも構わないために冷遇され、領主が頼りなく問題が解決されずに滞りがちな街では厚遇される。需要と供給による自然な流れだ。
そこへ行ってルワ・ザンガラではどうかと言うと、この街は歴史上、魔物の侵攻を防ぐ砦であり、戦士の街であった。
住人の大半は幼少の頃から遊びに混ぜた戦闘訓練で鍛え上げられ、銃撃めいた投射魔法を扱えなければ半人前とも見なされない。ほとんど皆兵制も同然の有様だ。
少々鍛えた程度の冒険者では太刀打ち出来るはずもなく、この街での専業冒険者の地位というのは、前世で言えばフリーターとほぼ等しい。
唯一の例外は、近隣の都市にあるこの辺り一帯の冒険者組合を束ねる本部から派遣されているという、ガドひとりのみ。彼は本部からそれなりに良い給金を与えられてルワ・ザンガラ支部を任されているらしい。
寂れるのはもはや必然で、この施設が近隣住民から通称「雑用組合」と呼ばれている辺りからも色々と察せられる。
とはいえ、それでもシステムは生きている。
ここに来れば何かしら日雇いの仕事にはありつけるのだ。街の若者にとっては稼ぎたい時に気楽に稼げるのが楽で良いと評判で、あなたの屋敷でもルワンジなどは頻繁に利用しているらしい。
そういうわけで、あなたはガドの座るカウンターに近付いた。
ぷんと立ち上る酒の匂いに耐えながら、何か仕事はないかと尋ねる。
「ほう? 嬢ちゃんがか?」
それに、ガドは姿勢を正した。
だらしなくカウンターに投げ出していた脚を下ろし、椅子の上から落ちかけていた尻を置き直す。それから、あなたの頭からつま先までを眺めた。
当然セクハラ親父としての目ではなく、仕事人としての目でだ。
イシャバは仕事に厳しい男だ。こういった切り替えも出来ないような者を友人とするわけもない。娘として育てられてきた経験から、あなたもその辺りは全く信用している。
実際のところ、あなたはガドをそう悪く思っていなかった。セクハラには辟易とするものがあるが、彼のこういった冒険者としての芯には感じ入るものがある。
かつて若い頃は他の街で剣を振るい活躍したというガドの体験談は屋敷に訪問してきた際に何度か聞かされた。
多少の誇張は入っていそうだと感じはしたものの、全くの嘘を差し挟んでいる様子もない、そんな過去の冒険を語る態度は、土地の歴史を誇るルワ・ザンガラの民と同じように誇らしげなもの。
だからこそあなたは素直に、本当の幼児のように彼の語りを聞き、この世界の遠い土地に思いを馳せたものであった。
| あなたの性格変動 |
好奇心が少し上がった
以降、未知のものに目を向けやすくなる |
回想もほどほどに。
真剣な目にあなたも向き合って背筋を伸ばし、評価を待つ。
「……大抵の事はやれそうだな。年を考えりゃ良く鍛えられてる。魔法の方はどうだ?」
聞かれて、あなたは持っていた槍を手渡した。依頼で振るう必要がある可能性を考え、柄も刃も、自分の魔法で用意した自作の品だと伝えると、ガドは無精髭の生えたアゴを撫でながらニヤリと頬を吊り上げる。
「上出来だ。いいぜ、なんでも回してやる。どんなのが良い?」
使えそうな新人の登場に、ガドは上機嫌に酒瓶を揺らしている。
その問いに返事をする前に、あなたはひとつ質問した。同行しているヤレカの評価は良いのかと。
対する答えは。
「なんだ、要ると思ってるのか? もしそうなら嬢ちゃんは
そんなものだった。
……あなたは深く突っ込まず、話を流した。ヤレカが隠している能力の全てを見抜かれているとは思わないが、只者ではないとは知られているようだ。ここを下手につつくのは得策ではないだろう。
さて、ともかくこれで話はついた。後はどんな依頼を受けるかを吟味するのみである。
依頼はどんなものがあるのか。内容の詳細と報酬は。あなたはヤレカを交えてガドと話し合い、やがて適当なものを選び取った。
| ランダム分岐/成長技能 |
1から順に 家事、加工、運動、鑑定、社交、 信仰、諜報、探索、戦闘、魔法
1d10=4
鑑定技能 |
「まあまあ、組合の人? わざわざありがとうねぇ。早速お願いできる? こっちに物置があるのよ」
崖の街のだいぶ上側。もう少し登れば領主の館も見えてくるあたりのとある家が今日のあなたの仕事場だった。
家主である老婆に案内され、あなたは家の物置に到着する。
奥まった場所にあったそこは広さでいえばさほどでもない。せいぜい6畳程度。だが、物の量は相当だった。所狭しとあらゆるスペースに物が詰め込まれ、縦にも積み重ねられているために中々迫力がある。
「わー。すごい量」
「長年溜め込んできちゃったからねぇ。流石にそろそろ整理しようと思ったんだけど、この年だと無理があったのよ。……手をつけ始めてからようやくわかったんだから私もバカよねぇ」
老婆はパタパタと手を振りながら苦笑し、申し訳なさそうにあなた達へ依頼する。
「そういうわけだから悪いけど、整理と処分をお願いできる? もう老い先短いし、どうせずっと仕舞いっぱなしだったんだから、細かい文句なんか言わないわ」
地味な作業にはなるだろうが、報酬の払いは悪くない。あなたに断る理由はなく、しっかりと頷いて作業に取り掛かった。
「まずはこれ、分類からやった方が良さそうだね」
あなたの作業はまずそこから始まった。
狭い物置の中では何も出来る事はない。ひとつひとつ廊下へと運び出し、大まかな種類別に分けていく。
置物類、家具や食器、道具類。物の量が量だけに廊下にもすぐに小山が出来たが、幸いにも廊下は狭くない。あなたの作業は余裕をもって進められた。
そうして運び出しきれば、次は捨てる物と残す物の選定だ。
「うーーーん……これはゴミだね。元は良さそうなのになー」
上質な木材で作られたかつて杖だったらしい物をヤレカが処分に回し、何故か放り置かれていたいつの物かもわからない魚の干物をあなたがゴミと判断する。
圧倒的に多いのは捨てるものだった。今のところ、10のうち9は廃棄が決定している。
やはり長く物置で放置されていただけあり、状態の悪い物が大半である。問題ない物なら普段から使っているだろうから当然かも知れない。
だが家主から判断を任せると言われているにしろ、ここまで処分ばかりで本当に問題ないのかと気後れするのも確かだ。なのであなたは作業が始まってからこちら、慎重に慎重を重ねてじっくりと物品に目を凝らしている。
| ランダム分岐/技能成長 |
| 鑑定技能 1から順に 微妙に、少し、少し、普通に、普通に、普通に、中々、中々、かなり成長する
1d9=7
中々成長する |
その甲斐あってか。
あなたは何気に手に取った置物を見て、おや、と目を見開いた。
それは羽を広げた鳥を模したのだろう置物だった。材質は石。長く大きく、そして牙の生えたクチバシが特徴的なシルエットは、時期になると群れでこの辺りにやってくるエトという種類の海鳥で間違いなさそうだ。
ただし、それはひどく損傷していた。
翼の片方は半ばからもげて失われており、左目の周囲も大きく欠けている。家の装飾として置いておけばむしろ品位を下げかねない代物と化していて、無価値と断じて処分に回しても文句は言われないだろう。
そんな中で、しかしあなたはひとつの特徴を見逃さなかった。
鳥の胸元に文字らしきものが刻まれているのだ。
丸く膨らんだ胸の曲線に沿って横一直線に並ぶ文字は、残念ながらあなたには読む事が出来ない。ルワ・ザンガラの識字率は著しく低く、文字の読み書きは立派な教養に分類され、高等技能にあたる。あなたもその辺りの教育は受けていない。
| ランダム分岐/物品鑑定 |
| あなたの鑑定技能 レベル4 情報セキュリティ レベル0 成功率90%
1で失敗 2〜10で成功
1d10=9 |
ただし、類推は出来る。
あなたは幼少の折、子育てをするエトを間近で見た経験がある。その際、夫婦の鳥は揃って仲良く雛を育んでいたものだ。
エトは回遊する魚を追って時期ごとに住処を移すが、ここルワ・ザンガラには少し違う理由で立ち寄る事が知られている。岩礁に営巣して卵を産み、雛を育てるためにやってくるのだ。もしかしたら海獣を積極的に狩り魔物を追い払う人間を利用して繁殖しているのかも知れないと、物を知る者は言う。
彼らの名を取って「エトの季」と、時節の名として使われるほどには親しまれた風物詩で、そしてエトは仲の良い夫婦の象徴として扱われる事が多い。
ならばそこに刻まれる文字の候補は、おのずと絞られる。
「あら、まぁ、これは……」
もしやと思い置物を老婆に見せると、彼女はポカンと口を開けて目を見開いた。
それから少しの間呆然とした後、一度懐かしむように目を閉じ、それから自身の首飾りを外す。
三角錐の形に削られた、緑の棒。その長い物が1本と、挟むように短い物が2本。それらに開けられた穴に金属の小さな輪が通され、まとめられている。
ルワ・ザンガラでは装着者の身分を表すそれは、老婆が「鉱石職人の妻」である事を示していた。
老婆の手によって、首飾りは鳥の置物の首にかけられた。
「懐かしい。あの人ったらね、本当に格好ばかりつけたがる人だったから。わざわざこんな物を用意して首飾りかけてもってきてねぇ。俺とこういう関係になってくれないか、なんて」
そうして、どうにもたまらないといった風にクスクスと笑いをこぼし、内緒話のように語る。
「私の父は本当にせっかちで、さっさと私を嫁に出そうとしてたのよ。それなのに時間かけてこんな置物作って……もう少し遅れてたら他の人のものになるところだったんだから」
ひとしきり笑った後、目尻に浮いた雫を指先で拭った老婆は、あなたにひとつ依頼を追加した。
「……これ、寝室の枕元に置いておいて貰える? 石の置物なんて、おばあちゃんが運ぶには重すぎるわ」
あなたは快諾し、これ以上損傷が広がらないよう慎重にエトの置物を運んだ。
片側の端しか使われている形跡のない、2人用の寝台の上にしっかりと設置し、作業に戻る。
その後は何事もなく仕事は進んだ。
さらに慎重さを増したあなたの目でも、他に大きく留まる物はなかった。やはりほとんどはガラクタばかりで、ゴミとして処分する他ない。
老婆はそんなあなた達の働きを高く評価した。
おかげでスッキリしたと礼を言い、その場で報酬を手渡してくれる。
| ランダム分岐/賃金獲得 |
1から順に 少ない、普通の、中々の、かなりの金額 高評価のため、1は1回だけ振り直し
1d4=3
振り直し不要、中々の金額 |
| あなたの財布の中身 |
所持金レベル 2 → 5 |
報酬の袋はずっしりと重かった。
物理的にも精神的にも満足を得たあなたは、ヤレカと共に街の坂を下っていく。
「ね。初任給だよ初任給。市場に寄って何か食べてく?」
ヤレカの弾んだ声色に、日雇いの報酬も初任給と言うのだろうかと疑問を抱きつつ、あなたは賛成した。まだ日暮れは遠く、何か食べて帰っても夕飯が入らなくなる事もないだろう。
前世での高校時代、初めてアルバイトの給料が出た時も、あなたはこうして友人と共に街に繰り出したものである。10年少々ぶりにあの感慨を味わうのも良いだろう。
「私はごった煮にしようかな。あのおばさん、色んな話知ってて面白いし」
なら自分はその隣で売っているアレにしようか。両方買ってちょっとずつ分けて食べよう。
そんなありきたりな会話を交わし……今を大事な相手と2人、共に過ごせる幸せを噛み締めつつ、それからもう少しばかり今日という日を楽しんだのだった。
| 少年期前半育成結果 |
面倒見+1 知識欲+1 戦闘意欲+1 好奇心+1 |
運動技能レベル3 社交技能レベル2 戦闘技能レベル4 魔法技能レベル5 鑑定技能レベル4 |
| 以上の結果より少年期中間イベントを生成中…… |