一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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一般的な異世界転生 誕生編

 

 特典一覧の紙としばしにらめっこしたあなたは、うん、とひとつ頷いて顔を上げた。熟考の末、あなたは自身の来世において必要とするものを見つけたのだ。

 

 それは。

 

 

選択肢分岐
忠実な従者 4票

 

 

 自分に忠実に仕えてくれる従者だと、あなたは考えた。

 

 あなたは現代日本でごく普通に生まれ育った、なんら特別なところのない人間だ。その自覚もしっかりとある。そんな人間が、おそらく前世よりもずいぶん過酷だろう異世界で独力で生きていけるものだろうかと。

 

 必要なのは、異世界の環境に完全に適応し、また自身の境遇を完全に理解してくれている協力者だ。それが神の力によって高い能力と決してあなたを裏切らない心を持つと定められているならば申し分ない。

 

 

 

「よろしい。では君の望むようにしよう。君のための忠実な従者は、不自然のない形で君の元へ送り出す事とする」

 

 あなたの要望を受け入れた神はそう言ってひとつ頷くと、ゆっくりと目を閉じた。それと同時に、あなたの意識は急速に薄らいでいく。

 

「約定は成った。これより君を私の世界へと招く。しばし眠ると良い。次の目覚めは生誕の時だ」

 

 ぼやけていく視界の隅で、部屋を構成していたものが揺らぎ溶け消えていくのをあなたは知覚する。あなた自身の体もまた同じく。だがそれは不快なものではなく、春の日なたの中でまどろむような心地よさを伴っていた。

 

 あなたは抵抗なく、異界の神に身を任せる。

 

「最後に、君の協力に感謝する。願わくば、新たなる生に幸いの多からんことを」

 

 眠りに溶ける間際に聞こえた別れの言葉は、律儀で誠実な振る舞いを見せていた者に似合いの、優しげな響きをもっていたようにあなたには思えた。

 

 

 

 

 


 

暗転

 


 

 

 

 

 

 気付けば、あなたは遥か天に空いた穴から零れ落ちていた。手も足も、どころか頭も胴もない非実体の魂となったあなたは重力に引かれ大地へと向かう。ただし、その速度はひどくゆっくりとしたものだった。あなたは肉を持たない身にふさわしく、羽よりもなお軽く、時に風に吹かれては戻り、ふわふわと漂う。

 

 とはいえ、確かに地に向けて落ちてはいる。曖昧な意識のまま来た道を振り仰ぎ、天の穴が「開いたまま塞がる」という矛盾した様を見せるのを観察し終えた頃には、もう地上は随分と近くなっていた。

 

 

ランダム分岐/今世の故郷
1に近いほど田舎

10に近いほど都会

 

1d10=2

 

 

 あなたの眼下に広がっていたのは……なんというか、ひどく寂れた土地だった。

 

 どうやら大陸の端にあたるらしい海沿いの一帯たるそこは、起伏こそなだらかであるものの赤茶けた土とゴツゴツした岩ばかりが目立ち、豊かな実りなどという言葉からは中々縁遠く感じられる。実際、空から見下ろしているあなたにすら森や山の緑は見つけられない。

 

 そんな土地のまた片隅には小さな街がある。こちらもまた、あなたの目にはみすぼらしく映ってならない。

 

 並ぶ家屋は石を積んだものか岩を削り出したもののようで、頑丈には見えるが彩りに欠ける。陸から海辺にかけての傾斜の中にギチギチと密集する家々の姿は街並みというよりも、どことなく何かの碑のようにさえ思えた。

 

 また、印象ではなく現実として、街から内陸部へと一本だけのびる街道は土が剥き出しで、細く、荒れてもいる。手入れが行き届いているとは言い難く、使う者が少ないだろうという想像は容易についた。

 

 そこは紛れもなく、田舎であった。

 

 

ランダム分岐/今世の生家
1に近いほど貧しい

20に近いほど裕福

高貴な生まれではないため、最大15に制限

田舎のため、さらに最大10に制限

 

1d10=8

 

 

 落下を続けるあなたは、どうやらその街へと向かっているようだ。

 

 具体的にはどこに、と無い目をこらすあなたはやがて気付く。街の内、傾斜の下端、すなわち海にほど近い一角を目的地としているらしい。さらにもう少し時間が経てば、その中でも一際大きな家に吸い込まれつつあると分かる。

 

 街の中では目立つほどには立派な家のようだ。屋敷と呼んでも良いだろう規模である。格上のものを探すなら坂の中程に立つ煙突から煙を吐き出し続けている建物と、坂の上にそびえる砦めいた建造物ぐらいしか見当たらない。

 

 田舎ではあるが、生家には恵まれるらしい。

 

 そう理解してわずかに安堵を得たあなたは、やがて屋根をすり抜け、石造りの部屋の中で家事に勤しむ女性に近付き、そしてするりと胎の中へと吸い込まれた。

 

 そうしてそこにあった命、まだ魂が芽生える前の受精卵に宿ったあなたは、もうひとつ安堵を得た。あの優しげな神のする事であるためにさほどの心配はしていなかったが、他の命を押し潰したり乗っ取ったりといったフィクションにありがちな展開を踏むことなく生まれる事が叶うようだ。

 

 

 

 さて、そもそもがおぼろげな意識の中、安堵がふたつも生まれれば力も抜ける。あなたの意識はまた、柔らかな眠りの中に落ちていった。

 

 

 

 

 


 

暗転

 


 

 

 

 

 

 そんな出来事から十月十日後。その街ルワ・ザンガラの名士たる男、イシャバは自身の屋敷の中を落ち着きなく歩き回っていた。

 

 のしのしと、丸太のように太い脚が石の床を踏み締めて部屋の隅から隅を往復する。足と石の間に挟まれた枯れ草編みのサンダルは、丈夫さが売りのはずのその身を刻一刻とすり減らし、イシャバの足運びの乱雑さを、つまりは彼の心の乱れぶりを表していた。

 

 足ひとつとってもその様である。ならば当然、腰から上もひどいものだ。

 

 普段の胸を反らして肩で風を切る威勢はどこへやら。内心の不安を示すように丸められた背はどこかみすぼらしく、良く鍛えられた分厚い胸板も泣いている。隣室から漏れ聞こえる苦しげな声が届く度にかき回されたゴワゴワした黒髪も、髪と同じ目にあっている長いヒゲも、情けなく乱れ切っていた。ザンガラの海を歩く荒くれ者にふさわしいと常日頃自慢していたそれらは、今この時はさながら浮浪者めいた様相ですらある。

 

 

 

「……親方、ちょっと落ち着きましょうや。こればっかしは俺ら男衆にゃどうにもなりやせんって」

 

 そんなイシャバに若い男が声をかける。部屋の中、居心地悪そうに佇む何人かの男たちのうちのひとりだ。

 

 イシャバは今親方と呼ばれた通り、多くの部下達を束ねる立場の人間だ。より詳しく言うと、ルワ・ザンガラの主産業である漁業の元締めにあたる。海から丘へ続く急坂にへばりつくような街並みのうちの坂の下半分、海沿いにズラリと居並ぶ家々の者達は皆まとめてイシャバを頭と仰いでいる。

 

 今声を発したのも、そうした漁師のひとりだ。普段は高波に打たれてもびくともしない巌のようなイシャバがおどおどとしているのをこれ以上見ていられない、と顔に書いてある。

 

「ああ!? お前、これが落ち着いて……!」

 

 対してイシャバはくわっと目を剥き、大口を開けて叫びかけたものの。

 

「……いられるかってんだよボケがよぉ……」

 

 それはすぐさま飲み込まれ、ボソボソと漏れるにとどまる。部下の男を気づかい当たるのを避けた、などというわけではない。イシャバは実に海の男らしく気が荒く、普段から部下に対して罵倒もすれば手を出す事も当たり前にある。イシャバにたてつき怒りを買った者などは尻を蹴り飛ばされて海に落とされる事もしょっちゅうだ。

 

 ならば何故彼が罵声を飲み込んだかというと、答えは隣の部屋にあった。

 

 

 

 石造りの屋敷の奥、ドアなどはなく、小石と紐で作られたすだれが遮るのみの開口部の先からイシャバの元へと、ずっと声が聞こえている。若い女の苦しげな悲鳴と、それを励まそうとする何人もの女達の声と、女達へと鋭く指示を発する老婆の声だ。

 

「くそっ……メナ、頑張れ、頑張ってくれ……!」

 

 イシャバは声の源へと数歩近付き、すだれを睨んだ。この先では彼の妻であるメナという女が、いままさに新たな命を産み落とそうとしていた。自身の命をかけて、である。

 

 この世界でも地球同様、出産は命がけの行いだ。優れた医術の担い手が揃う都会ならばまだしも、産婆ぐらいしか頼る事のできないここルワ・ザンガラのような辺境の田舎ではなおさらそうだ。

 

 さらに言えば妊婦の死亡率は初産の際が最も高く、メナはまさにその初産であった。イシャバもこの街でこれまで生きた中で、知人や友人の妻がそうして命を落とした例を何度も見てきている。朝日がのぼる前から陣痛が始まり、昼をもうとっくに過ぎた今の今まで延々と聞こえ続けている苦鳴に対して、悪い想像ばかりが沸き立って心が乱れるのも当然と言えた。軽い食事どころか飲み物さえ喉を通らないような始末で、わずか半日でやつれてきているような有様だった。

 

 

 

 イシャバは不安に叫び出したくなる己の喉を必死に抑え、振り向いてまた部屋の隅までを歩き、ガシガシと頭をかき回す。

 

 海の上ならばなんだって出来ると自負し、また周囲にもそう認められてきたイシャバだったが、医師でも産婆でもない彼に今できる事は何もなかった。ならばせめて邪魔だけはするまいと大きな体を縮こまらせ、良く通る声を無駄に張り上げてしまわないようにと気を張っている。

 

 それもまた出産に伴う戦いのひとつではあるのだろうが、やはり彼の部下達にとっては見ていられないものだったのだろう。イシャバの屋敷に集まった男達は顔を見合わせては視線を交わし合う。つまり今自分達はどうすれば良いかという無言の相談だが……結局のところ、できる事が何もないのは彼らもイシャバと同じだった。

 

 

 

 そんな、ジリジリと熾火で炙られるような時間がどれほど過ぎただろうか。赤子が生まれるよりも先にイシャバが心労の余りに倒れるのではないか、という男衆の懸念は、幸いにも外れる事となった。

 

 おぎゃあ、おぎゃあ、と屋敷の奥から産声が届く。

 

 次いでそれを覆い隠さんばかりの女達の歓声。そしてさらに単独でそれらに勝る声量のよく頑張ったぁとの老婆の叫び。

 

「ッメナァ!!」

 

 となればもう、イシャバをその場にとどめるものは何も無かった。ドスドスと床を蹴り、ガシャアとすだれを弾き飛ばすようにかき分けて、あっという間に隣室に飛び込んでいく。

 

 イシャバが目にしたのはまず、寝台に横たわった彼の妻メナだった。半日以上の奮闘のために全身を汗にまみれさせ、あらゆる力を使い果たした満身創痍の様相で、それでも気丈に顔を上げてイシャバへと微笑んでみせていた。

 

 思わず、といった風にイシャバの口から声にならない声が漏れ、巨大な安堵に膝が崩れかかる。が、命をかけてくれた愛する妻の、そして今まさに生を受けた愛すべき我が子の前で情けない姿は見せられないと持ち直し、今度は視線を産婆へと向ける。

 

「おめでとさん。元気な子だよぉ。嫁さんの方もどうやら心配はいらんさ」

 

 産婆は取り上げた赤子を産湯で手早く洗い、清潔な布で包んで抱き上げながら保証した。産婆の言葉は正しそうだとはイシャバにも良くわかる。何しろ赤子はずっと大声で泣いている。これだけ良く響く産声を上げられるならきっとこの上なく健康に生まれたに違いないと部屋の中の全員が思うところだった。

 

 

 

「ああ、元気な声……ふふ、こりゃ、あんたに似たのかも知れないね」

 

 寝台のメナが喉のかれた掠れ声で言う。ルワ・ザンガラの漁師の頭、イシャバといえばその声の大きさだ。街の誰もが知るその特徴にそっくりな子だと、実に嬉しそうに破顔する。

 

「はは、何言ってんだ、似てるのはお前にだよ。見てみろ、この綺麗な赤毛……メナにそっくりだ。俺の大好きなザンガラの赤じゃねぇか」

 

 対するイシャバも似た表情で笑い、赤子の頭にわずかばかり生えた赤い産毛を指差してみせる。

 

「もう……赤んぼの髪の色なんて変わるもんでしょ。しばらくしたらあんたみたいな黒髪になるかもよ?」

 

「いーや俺にはわかるね。ずーっとこのまんま、メナの赤だ。賭けてもいいぞ」

 

「なら黒に変わった時はお楽しみだ。何をねだるか今からたっぷり考えといてやんなきゃ。覚悟しときなよ」

 

 夫婦は共に目尻に涙を浮かべながら冗談を交わし、幸福と幸運を噛み締めあっている。手伝いに駆けつけていた女達はそれを遠巻きに眺めて微笑ましげな様子だ。

 

 

 

「はいはい、どっちゃでもいいさね髪の毛なんてねぇ。それよりか、ほれ、抱いてやんな」

 

 とはいえ、こういった場面に慣れきった者にとっては、そっとしておくほどのものでもなかったのだろう。よっこらせ、と体を起こした産婆は、腕の中の赤子を母親であるメナへと差し出した。

 

「お疲れさん、よく頑張ったね。アタシが見た限りじゃ、なーんにも悪いとこのない、珠のような……」

 

 

ランダム分岐/今世の性別
1なら男

2なら女

 

1d2=2

 

 

「女の子だよぉ」

 

 メナは産婆から赤子を受け取ると、その胸に抱いた。出産直後で疲れきって腕にも上手く力の入らない様子を見たイシャバがすかさずメナの細腕に自身の太い腕を重ね、妻と子をまとめて抱きしめるように支える。

 

 未だ響く赤子の泣き声に満たされた部屋の中、絵に描いたような新たな家族の幸せがそこにはあった。

 

 

 

 

 

 さて、そろそろ視点を戻そう。

 

 つまりは、今まさにイシャバとメナに抱かれて泣き叫ぶ赤子である、あなたの視点へとだ。

 

 

 

 残念ながら、あなたには現状がよくわからない。何しろあなたはたった今誕生したのだ。各種感覚器はまだまだ未熟そのもので外界の様子をろくに感じられず、そもそも今さっき始めたばかりの肺呼吸の苦しさから抜け出せてもいない。せいぜいが母と父の温もりが肌に伝わってくる程度だ。

 

 そしてまた、感覚以外にも思考もろくに働かない。生まれる前の神との対話を思い出し、今自分は生まれたのだろうと理解するまでが限度いっぱい。未発達な脳では思考を回すだけの力がないのか、それ以上の事はまるで考えられなかった。

 

 よって、今のあなたは実際のところ、本当の赤子と何も変わらない状態だった。あなたはこのまま、ある程度成長するまではただの赤子同様に育つだろう。

 

 これは考えようによってはむしろ良かったかも知れない。下手に前世と同等の意識を保ったままの赤子生活は、真っ当な精神を持つ者にとっては中々に苦痛でもあろうから。

 

 

 

 ……ただ、はて、これはなんのイタズラか。そんな朦朧とした頭とろくに聞こえない耳でも、産婆のその声だけは妙にハッキリとあなたへ届いていた。

 

「珠のような女の子」

 

 と、つまりはあなたの今世は、男だった前世とうってかわり、女の子として過ごす事になるのだと、嫌でも理解させてしまう言葉が。

 

 

 

 あなたはそんな現実に、何を思っただろうか。

 

 

 

①冗談じゃない……!
自身の性別を強く否定

少女らしい装いを徹底的に避けて男っぽく振る舞う

 

②その可能性は覚悟していたがやっぱり少し嫌
自身の性別をやや否定

少女らしい装いや振る舞いにためらいを感じる

 

③まぁしゃーない、切り替えていこう
否定も肯定もしない

新たな性別に適応できるよう消極的に努力する

 

④心機一転、前との違いがわかりやすくて良い
自身の性別をやや肯定

少女らしくなれるよう進んで努める

 

⑤内心、無言のガッツポーズ
自身の性別を強く肯定

徹底的に可愛い女の子を志す

 




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  • その可能性は覚悟していたがやっぱり少し嫌
  • まぁしゃーない、切り替えていこう
  • 心機一転、前との違いがわかりやすくて良い
  • 内心、無言のガッツポーズ
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