一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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一般的な異世界転生 少年期編 10

 

 儀礼が終わり、街に戻った後の事だ。

 

 出発の際に集合した海を臨む広場にて、小さな宴が開かれた。

 

 高々と燃え上がる火を囲み、人々が地べたに座る。儀礼を終えた子供達が中心となった参加者に振る舞われるのはブージェの肉だ。

 

 オスのブージェはあの後、大岩場の上ですぐに解体された。重量がトンを超える巨体をまさか背負って帰るわけにもいかず、またそのまま乗せられるような船は岩礁だらけのルワ・ザンガラには存在しない。

 

 おかげで大岩場は凄惨な血まみれ状態となったが、それはそれで狙いのひとつだという。濃厚な同族の死の臭いは、別のブージェの群れが新たに住み着くのを防いでくれる、との事だ。

 

 もっとも、似たような岩場は探せばいくらでも見つかるので、あくまで候補地を絞る程度でしかないようだが。この時期の餌が豊富な岩礁帯はブージェにとって格好の住処であり、外敵の縄張りを広げさせたくない人間とは、結局のところ大昔からイタチごっこを繰り返しているらしい。

 

 ともかく、解体されたブージェの素材のうち、肉は参加者の腹に収められる事になった。

 

 広場中央に焚かれた火の周りには様々な部位の肉塊が串に刺して並べられ、食欲を刺激する香りを放っている。この時期のブージェはザザ()を目当てに集まったイカやタコ、肉食の大型魚をたらふく食い、よく肥えている。炙られれば炙られるだけポタポタと脂を滴らせる様からもそれは良くわかった。

 

 

 

 その肉を真っ先に手に取る権利を有するのは、頭領たるイシャバである。

 

 彼はわかりやすく最も大きな肉塊、肋骨がついたままのアバラの部位を持ち上げると、豪快にかぶりつきながら、周囲より一段高くして用意された上座にどっかりと座った。

 

 その次に続くのは、イシャバと共にオスのブージェに立ち向かった副頭領たちだ。彼らはめいめい好みの部位を手にしたが、おおよそ脂身の少ないものが人気であるらしい。ベテラン揃いでそれなりに歳のいった者が多いためだろうか。

 

 さらに次は、子供達を守って戦った男衆。まだ若手の彼らはこぞって脂身を真剣に狙っている。ルワンジなどがわかりやすく、彼はアバラの肉を巡って他の者との取り合いに飛び込んでいた。あまり人気のないウデ肉(強靭に締まりすぎて食感が悪いらしい)をさっさと確保して席に帰ったランバとは対照的である。

 

 

 

 そうして、それからようやく子供達の番となる。

 

 彼らはそれはもう元気に肉に集まった。

 

 普段はほとんど大人の男しか食べられない海獣の肉である。儀礼を通過し、この肉を口にする事は、半歩分ほどではあるが大人の仲間入りを意味する。興奮が伴わないわけがなかった。

 

 また、単純に食べ慣れないものへの好奇心もあるのだろう。ルワ・ザンガラの民の日常の糧は、魚と貝類、甲殻類に海藻だ。選択肢は海鮮一択である。あなたの屋敷のように一定以上裕福ならばそこに穀物も加わるが。獣の肉はこの街では珍味に分類され、高い価値があるのだ。

 

 

 

 子供達というのは、大人のやる事を真似るものである。

 

 彼らはここまで、大人のやり方を見せられてきた。つまり、序列の付け方と、それによって生まれる待遇の差をだ。

 

 ルワ・ザンガラのそれはひどく単純でわかりやすい。より腕っぷしが強く、より街に貢献する者が偉い。そんな原始的な理がこの街には敷かれている。

 

 中には異を唱える者もいるかも知れないが、儀礼として誰もがブージェとの戦いを目にしているのだ。強弁を押し通せる道理はない。

 

「俺は2頭仕留めたぞ! 他に並ぶやつはいるか!?」

 

 よって、この場でもそのルールが適用された。

 

 あなたの義弟、マランが肉の前で胸を張り叫ぶ。彼は積極的に戦いに参加していた。男衆に守られながらではあるが果敢に槍を投擲し、2頭のメスを射抜き殺したらしい。

 

 どうやらそれ以上の、あるいは並ぶ戦果を挙げられた子は居ないらしく、彼が子供達の序列一位となったようだ。鼻の穴を広げて鼻息を荒くし、上座のイシャバに振り向いて渾身のドヤ顔を決めている。

 

 イシャバは自慢のヒゲを脂で汚しながら、マランの様に嬉しそうに笑った。養子とはいえ自身の子のひとりが期待通りに漁師の才を見せている上に……マランの背を悔しそうに睨む子供達の多さもあるだろう。敗北の屈辱をバネにする者は良く伸びると、イシャバは長年の経験からよくよく知っているようだ。

 

 

 

 さて、そして、あなたであるが、この子供達の肉争奪戦を、イシャバの横にヤレカと共に座って眺めていた。

 

 いや……正確には、座らされて、眺めさせられていた。晒し者状態とも言う。

 

 ジンジンと痛む頭を抱えながらである。ランバとルワンジによってあなたの不正を知ったイシャバは、肉を焼き始めた後、あなたとヤレカを皆の前に引っ張り出し、伝統と言いつけを破った旨を周知し、そしてドデカいゲンコツを頭頂に落としたのだ。

 

 自身の子である事も、女である事も関係ない。そんな言葉が透けて見えるような音を立てた一撃に子供達は顔を青くし、男衆は苦笑したものである。

 

 そんなわけで、あなたとヤレカは少なくともこの宴での序列は最下位に固定された。肉を選ぶ権利は当然のように与えられない。他の皆が取り終わった後の残りを拾い上げる事だけが、あなた達に許された食事だ。

 

 女であり、積極的な貢献もなかったため、元々序列が低かった事。オスの巨体のおかげで全員が取った後でもそれなりに量が残っている事。このふたつがなんとか救いではあるだろうか。

 

 

 

 そんなわけで、あなたに当たったのはコゲ肉である。

 

 少々火の近くに長く置かれすぎたため、表面が黒くなって他の者があまり取りたがらなかった部位だ。

 

 多く残っていたというのもあるが、他がレアっぽすぎたのも選んだ要因である。ブージェの肉は、ルワ・ザンガラの民は生焼けから半焼け程度で楽しむ文化らしい。魚介類の生食はこの街でもそれなりに行われている(特に素潜り漁中の子供達がこっそりエビや貝を剥いてその場でつまみ食いするのは日常茶飯事)ので、その延長だろう。

 

 それで腹を壊す者が居たとは聞かないため問題はないのだろうが、寄生虫や食中毒に関する現代知識を持つあなたが忌避感を覚えたのも無理からぬ事である。

 

 なお、肝心の味だが……さして美味いものでもなかった。

 

「お肉だねえ」

 

 というヤレカの感想がそのままあなたの感想と重なる。肉肉しい食べ応えは今世初のもので珍しくはあるが、それだけだ。

 

 狩られたばかりで肉の熟成が足りないからか、味付けが塩のみというシンプルさのためか。そもそも、いわゆるジビエを、品種改良が徹底的に進んだ前世の食用肉と比べるのが間違いというのもあるかも知れない。

 

 

 

 まぁ、とはいえ不味いわけでもない。

 

 あなたはモソモソと、食感ばかりで味の薄い肉を食む。生前の印象通りに強い肉は、飲み下せる大きさまで咀嚼するのもそこそこに大変だった。

 

「くく、ははは、なんだ、ずいぶん不味そうに食うなぁ」

 

 食事への不満が顔に出ていたのか、隣のイシャバは面白そうに笑った。あなた達の行動に怒りを示し、皆の前で処罰してみせたイシャバだが、個人的な怒りは薄いか、あるいはないようだ。

 

 幸いな事である。もしイシャバが本当に怒っていれば、ただでさえ良くない肉の味が最悪の部類にまで落ちていただろう。

 

 

 

「叱られて食う肉は不味いだろう?」

 

 イシャバは続けて言う。

 

 あなたが抱える肉への不満は前世と比較しての事だが、イシャバも流石にそれはわからない。そのため理由を別の所に見出したようだが……実のところ、外れてもいない。

 

 あなたはチラリとヤレカに視線を向けた。

 

「もご……ひにひにゃふへひーお(気にしなくていいよ)?」

 

 と、ヤレカはのほほんとした顔で肉を齧りながら言うが、彼女はあなたの決定と、その先の失敗に付き合わされた形だ。

 

 あなたを止めようとせず、むしろ乗って一緒に行動した以上同罪だとイシャバは言い、それは間違いなく正論だった。

 

 が、そもそもとしてヤレカはあなたに逆らう選択肢を持てない。これは耳で食事をする事は出来ない、というレベルの根本的な設計であるらしく、つまりヤレカの連座はあなたのみに責任があった。本人が積極的にあなたに従う事を望んでいたとしてもだ。

 

 そんなわけで、キリキリとした罪悪感はあなたの胃を締め付けるようで、それが食事を楽しめない要因のひとつになっていたのも、まぁ確かなところではある。

 

 

 

 

 

「実のところなぁ、ブージェを調べるな、なんて言いつけはそうそう守られるもんじゃない。毎年何人かは破るやつが出るもんだ」

 

 改めて少しばかり沈んでいたあなたに、イシャバは語りかけた。

 

「今日のやつらの中にも軽く調べた程度のはいくらか居るだろうな。多分だがマランもだ。違うか?」

 

 問いかけに、あなたは咄嗟にわからないと誤魔化したものの、イシャバの疑いは事実だ。

 

 マランは市場にブージェの骨があると聞き、あなたに教えてくれた張本人である。あの後本当にあったと伝えた時も、なら俺も見に行こう、とワクワクした様子で言っていた。

 

「まさか領主のとこまで押しかけて剥製まで見たなんてのはお前が初めてかも知れんが……まぁ、それ自体はさっきの一発で終わりだ。あんまり引きずらんでいいぞ」

 

 あなたの誤魔化しをイシャバは軽く流し、続ける。

 

 大きな手のひらをあなたの頭に乗せ、母譲りの赤髪をかき分けて軽く撫でる。どうやらタンコブの具合を確かめているようで、ほどほどの腫れである事がわかるとするりと引っ込めた。

 

 

 

「だが、言いつけを、掟を破ったというそれそのものは、良く考える事だ」

 

 しかし、優しい声色はそこまで。

 

 イシャバは表情をキツく引き締めると、あなたとヤレカを見下ろした。あなたの背筋が思わず伸び、ヤレカも空気を読んだか肉を置く。

 

 

 

「掟というものは、何のためにあると思う?」

 

 岩のように重たく固い声でイシャバは問う。

 

 

 

 その答えを、あなたは宴の中に探した。

 

 宴は大いに盛り上がっていた。

 

 子供達は各々、儀礼の中で成した事を誇らしげに自慢し合っている。筆頭となるのは2頭のメスを仕留めたマランだが、他の子らも負けていない。最初の一投で急所を貫き綺麗に仕留めた者も居れば、危うい動きをした仲間を大人に先んじて助けた者も居る。男子のみならず女子でも、濁る水面に目を凝らしてブージェの発見を助けた貢献を語る者が居た。

 

 それらの張り合いをやんやと囃し立て、時にからかうのは若手の楽しみのようだ。また、自分が面倒を見た者の自慢も時折混ざる。自慢がエスカレートしすぎて険悪になりかけた幾人かは周りに押しやられて広場中央に躍り出て、相撲のような取っ組み合いを始める始末だ。

 

 対してベテランの大人達はどっしりと座り、若者達の成長をしみじみと噛み締める顔である。イシャバの手配で用意された酒をいいだけかっくらいつつ、様々な騒ぎを肴にしてくつろいでいる。

 

 

 

 そこに、あなたは微妙に溶け込めない。

 

 罰の一環としてイシャバの隣に座らされているからではない。もしあなたが子供達の中に居たとして、同じだったろう。

 

 その理由は、あなたはもう知っていた。

 

 

 

 オスのブージェとの戦いの折、観戦していた子供達の中で、あなたはポツリと浮いていたのを自覚している。

 

 理由は、知識の差だ。

 

 子供達はブージェの具体的な姿を知らず、その脅威の度合いを噂程度でしか知らなかった。対し、あなたは剥製の姿すら目にしてハッキリと想像を形作ることが出来るほどに知っていた。

 

 その差は、実際に対峙した際に湧き上がるものの差として、明確に現れてしまった。

 

 あなたよりも大きな恐怖と、あなたよりも深い絶望感。

 

 それがあの時子供達が感じ、そしてその場でイシャバ達の助けを借りつつも克服するにいたったものだ。

 

 

 

 それ自体が精神的な成長として価値あるものではあろうが、今はそこは良い。

 

 問題は……子供達が体験した感情と同じものを、あなたは得られなかったという事だ。

 

 

 

 あなたはイシャバの問いかけに答えた。

 

 つまり、掟とは、皆を束ねるためにあるのだろう、と。

 

 

 

「ん、おう。……なんだ、わかってたか」

 

 イシャバは引き締めていた表情を崩し、優しく微笑んだ。あなたの頭に再度手のひらを乗せ、今度は褒めるように撫でる。

 

 されるがままに任せ、あなたは宴を再び見る。あなたがそこに混じりきれない理由は、浮いてしまったからだ。

 

 同じ感情を抱き、同じ体験をした者たちは、だからこそ互いを誇り合える。あのオスのブージェに睥睨される戦場で2頭を仕留めた胆力を褒め称え、でも俺も負けていないと胸を張れる。将来は男の下につき家を守る女も、今日ばかりは男に負けずに貢献したと割って入れる。

 

 互いを良く頑張ったと認め合い、それこそが結束を生んで固く結びつく。

 

 だが、あなたにはそれが許されない。抱えた知識の分だけ違う体験を経たあなたは、本当の意味であの戦場の恐怖を理解できていない。あの岩場で子供達がどんな不安を抱えて槍を投げていたか、想像するしかない。

 

 仲間の輪に、溶けていくことが出来ない。

 

 

 

「掟だのしきたりだの伝統だの……まぁ、つまらんもんだろう。俺もお前ぐらいのガキの頃はそうだった。だがな。そういったもんはどうしたって必要だから続いているもんなんだ」

 

 イシャバはグリグリと、あなたと、ついでにヤレカの頭を撫で回しながら言う。その手がタンコブを刺激して軽い痛みが走ったが、あなたは我慢して神妙に耳を傾けようとした。

 

「んー、ちょっと痛い」

 

「ははは、すまんすまん」

 

 が、遠慮のないヤレカはそうではなく、おかげで痛みなく話の先を聞ける。

 

 

 

「掟は、お前達を縛りつけるだろう。それは確かに自由を奪う面倒くさいもんだ。だが掟に従えば、仲間と同じ景色を見られる。同じ時間を過ごして、同じ物を見て、同じ物を感じられる。そうして初めて、お前達は繋がり合える」

 

 それは、このルワ・ザンガラで生きるには必要不可欠なものなのだろう。海産物以外の資源に乏しく、築いた砦の街は複雑に入り組んで窮屈で、海から来る獣の脅威もある。確かな結束と相互の理解がなければ、きっとひどく暮らしにくい土地であるはずだ。

 

「俺は強い。この街で一番の戦士だ。メナと、お前と、ガウィルに誓ってな。そんな俺でもひとりではブージェには勝てん。何人もの仲間に背中を任せなきゃ、あれにはとても立ち向かえん。……この街で生きるなら、掟に従い、皆で束にならんといかん」

 

 

 

 わかったな、とイシャバがあなたの目を覗き込む。

 

 あなたはそれに……。

 

 

選択肢分岐

尊敬(85)

恐怖(8)

賞賛(101)

呆れ(23)

嫉妬(54)

安堵(37)

 

 

 素直に頷く事が出来た。

 

 あなたはイシャバと、彼に率いられる戦士達の戦いを見た。平和な前世ではまるで縁のなかった、フィクションでしかなかった命がけの攻防はあなたの心に十分焼きつき、感情を強く波立たせるものだった。

 

 巨大な暴力に対するわずかな恐怖。いくらなんでもここまで突き詰めるかという小さな呆れ。父が無事に勝利した事と、この戦士達に守られているのだという安堵。女の腕では戦いに参加できず、また将来そこに加わる事が許されないだろうという、決して小さくない嫉妬。

 

 そんな、様々入り乱れた中で一際大きく膨らんだものは、純粋な尊敬と賞賛だった。

 

 ヤレカのように神に作られたわけでもない彼らが、あれほどの技巧を身に付けるためにどれほどの努力を重ね、幾つの挫折を乗り越えたのか。想像すればするだけ敬意は湧き立ち、賞賛以外に何が出来ようというのか。

 

 

 

 だからこそ、あなたは頷いた。

 

 その讃えるべき強さの源は、きっとイシャバが言う結束にあるのだろうから。

 

 

 

 あなたの返答に、イシャバは満足そうに歯を見せて笑った。

 

「なら良い。俺は今回の事は許す。ただし次からはしっかりと改めろ」

 

 もしかしたら、とあなたは思った。

 

 ブージェを調べてはならない伝統は、このためにあるのかも知れない。いつか致命的な過ちを子供達が犯してしまう前に、掟に逆らい仲間達の輪から弾かれるという意味を、そういう素養を持つ者に身をもって教えるために。

 

 

 

 話を終えたイシャバは、のっそりと立ち上がると肉のおかわりに向かい、そのまま副頭領達の輪に加わった。俺が用意したんだから俺が一番飲むべきだ、などと嘯き、酒の入った(かめ)を抱えると豪快に腹に流し込み始める。止める者はなく、むしろいいぞいいぞと大道芸でも見るような盛り上がりだ。

 

 それを見ながら、あなたは。

 

 でも、と小さく口にした。

 

「うん。楽しかったんでしょ」

 

 ヤレカへと、頷く。

 

 イシャバは実に正しい。まさに秩序の化身だ。この街で生きるならば彼に従っているのが最も堅実で、そうすればありふれた幸福の中で生き、平穏に生涯を閉じられるだろう。

 

 だが、それはあなたにとってひどく窮屈でもある。

 

 少なくとも建前上は男女の差がなく、職業を選ぶ権利も、住まう場所を選ぶ権利もある。そんな前世の自由を18年過ごしたあなたにとって、その(くびき)は重く感じられてならない。

 

 仲間との結束は素晴らしいものなのだろう。だが同時に、それは不自由を強いる拘束でもある。

 

 

 

 楽しかったと、あなたはヤレカに呟く。

 

「うん、私も。いけない事って楽しいもんね」

 

 あなたは否定しない。

 

 知識欲と好奇心。今回あなたを突き動かした原動力はそれだが、他に、不自由に対する反発がなかったかと言えば嘘になる。

 

 繋がれた首輪を外して駆け回る犬のような……などと考えて、そこまで言うと普段の自分を悲観しすぎかと自嘲し、それでも、本当に楽しかったとまた呟く。

 

 

 

 そうして、それから、あなたは先のことを考える。

 

 今回の事はまだ良いだろう。

 

 掟が禁じていたのは儀礼前にブージェを知る事だけだ。儀礼の後にはいくらでも調べる事が許される。だから、あなたは我慢しようと思えば出来たはずだ。少なくとも、実行に踏み切る前に多少悩みはしたのだ。

 

 だがこれがもし、あなたにとって譲れない一線であれば。

 

 たとえ絶対的な掟に反する事であっても、法と秩序に従っていられる自信は、あなたにはあまり無かった。

 

 

 

 何しろ。

 

「ふふ。いいよ? あなたがしたい事も、行きたい場所も、見たい物も、ぜーんぶ」

 

 他の誰が許さなくても私だけは許してあげると、悪魔めいて囁く従者がついてしまっている。

 

 

 

 ありがとうと囁き返して、あなたはヤレカの肩に頭を預けた。

 

 面倒な思考はそこで一旦取り止め、痛む頭を休めにかかる。あなたはまだ子供である。もう幾らかの猶予期間は与えられてしかるべきだろう。

 

 将来に思い悩むなど、一度過ごした思春期に嫌というほどあなたは経験している。それをもう一回と言われて無邪気に飛び込んでいけるほど、あなたは外れた精神を持っていない。

 

 せめて今ばかりはもう少し、何も考えず、絶対的な味方に甘えていたかった。

 

 

 

 

少年期編 前半 育成結果

面倒見+1

知識欲+1

戦闘意欲+1

好奇心+1

運動技能レベル3

社交技能レベル2

戦闘技能レベル4

魔法技能レベル5

鑑定技能レベル4

 

あなたの性格変動

中立(やや混沌寄り) → 混沌(中立寄り)

中庸 → 中庸

 

ルールよりも感情を優先

他人の都合と自分の利益の優先度はその時次第

良くも悪くも法に縛られない

 





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