一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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一般的な異世界転生 少年期編 12

 

「ええ、あの学校の事でしたら詳しくお話できますよ。何しろお父様に願って私が推し進めたものですから。……はずかしながら、学校と呼んでしまうのははばかられる規模ではあるのですけどね」

 

 ある休日、朝と昼の境目ほどの時間のこと。

 

 あなたは崖に張り付くルワ・ザンガラの上層(階級的な意味ではなく、位置的な意味での)を訪れていた。先日友人となったこの街の領主の娘、マイアに用があったためである。

 

 今年のエトの季が始まる頃、ルワ・ザンガラには学校が建った。

 

 場所は街の中層部。老朽化して使われなくなった古い市場跡を補修して作られたそこでは、様々な物事を教えているのだという。

 

 これに、あなたが食いつかない理由はなかった。

 

 前世におけるあなたの人生は18年。そのほとんどを学び舎の中で過ごしたのだ。学校という、その名前の響きだけで郷愁をかき立てられるのは至極当然の事と言える。

 

 また、心情以外にも実務面でもだ。

 

 例えば文字ひとつとってもルワ・ザンガラの識字率は極めて低く、文書を読める人間はほとんど居ない。あなたもまた、誰からも読み書きについては教えられていなかった。

 

 長い半島の先に孤立した、日々の漁だけで完結して食べていける土地という環境のためだろう。この街に暮らす人々は、自分達だけで、昨日と同じ事を繰り返す今日を生きるだけで十分なのだ。文字によって情報を長く残す、あるいは伝達する必要性にかられていない。

 

 それはそれで良い暮らしだというのはわかりはするが、文字の利便性を知るあなたとしては簡単な読み書きぐらいは身につけたいところである。持ち前の知識欲が、書物の類に遭遇した機会に後悔したくないと囁くのも大きい。

 

 

 

 そんなわけで、あなたはマイアを訪ねたのだった。

 

 学校の建設と運営は、当然ながら領主の管轄だ。ならばその詳細について調べるなら、噂や評判を聞いて回るよりも関係者に聞いてしまうのが早い。幸いにして、こうしてツテもあるのだから。

 

「ですが、規模はともかく質は確保しております。特に教師は領都ロス・アンデルにて伯爵家が運営する学び舎からお招きした、能力は確かで身元もしっかりした方です。元々は貴族で、今は爵位を返上して市井で商家を営むという御実家の事情からあらゆる階級の作法にも精通しておられますし、教養の師として仰ぐには不足の無い方だと私が保証しましょう」

 

 砦中央の庭園、先日も通された四阿(あずまや)にて、歓談の共として供された飲み物を傾けながらマイアが言う。

 

 本日の飲み物は、薄茶色のコールドドリンクだった。軽く舐めてみればしっとりと甘く、同時にほのかな塩味と爽やかな香りがある。どうやら糖蜜と塩を溶かした水に果汁を加えたもののようだ。

 

 糖分も塩分も、そして程よく冷えた温度も、最近の豊漁による労働で溜まった疲労に実に良く効く。下層の海沿いから最上層の砦まで歩いてきた分、よりてきめんに。

 

 大変にありがたい気遣いに、用意した使用人ディア女史にあなたは感謝を伝えた。返ってきたのは腰を折っての丁寧な礼で、彼女はそれ以外に動作も言葉もなく、その場の空気と化して待機している。

 

 

 

 さて、あなたにとって幸運な事に、学校の実質的な運営者は領主ではなくマイアであった。それも資金だけを出して他人任せにするのではなく、実際に指揮を取るタイプのトップである。

 

 この街で学校について最も詳しいのはマイアに違いなく、知りたい事は聞けば聞くだけ答えが返る。

 

 まず、カリキュラムはこうだ。

 

 基礎的な文字の読み書き。実務的な算数の知識。この街がある半島とその周辺の地理と、同地域における基礎的な礼儀作法。将来的に生活で必要とされるだろう技術の初歩的なレクチャー。

 

「それに、この街の歴史に関しても少々。当家からも何点か史料を持ち出して学習のために利用しているのです」

 

 どこか誇らしげにマイアは胸を張った。

 

 あなたは説明に満足し、何度か首を縦に振った。十分な内容だろう。あなたが求めるものは不足なく詰め込まれているようだ。これらを学べるなら、日々の自由時間と休日の余暇を費やす価値はある。

 

 

 

 次に、授業料。

 

「……将来的には無償化できればと思っているのですが。先生を雇用して街に留めおくだけでもそれなりにかかりますから。現状、こればかりはどうにもなりませんね」

 

 申し訳なさそうなマイアであるが、それは仕方ない事だろう。

 

 むしろ、子供であるあなたの小遣いと、暇を使って冒険者組合で何度か仕事を受けた程度でまかなえる値段の授業料は十分にありがたい話だ。前世と今世を通し、教育機関の価値を知るあなたには特に。

 

「授業料は30日あたり、銀貨8枚となっています。もしくは相当量の価値をもつ保存食や物品での支払いでも問題ありません。ブージェの季の儀礼を終えた方であれば、当家が用意する労働への一定期間の従事という形でも」

 

 しかも、支払い方法が各種用意されている。これならば現金の形での財産を持たない者も通いやすいだろう。

 

 ジェウェス城爵家の力の入れようを察する事が出来る。民に教養を与えようという試みは、戯れの思いつきなどではなく、本腰を入れた施策のようだ。この分ならばおそらく、無償化も本気で進めているのだろうなとあなたは感じた。

 

 

選択肢分岐

学校で教養を学ぶ

 

 

 話を聞く限り、学校に通わない手はない。

 

 あなたは入学を決断し、持参した財布(腰巻にくくりつけた小さな袋。ニンバルのツルをほぐした繊維を編んで作られている)から16枚の銀貨を取り出した。

 

 あなたと、そしてもちろんヤレカの分だ。

 

「ええ、確かに受け取りました。些細はお任せください。次期、4日後の授業から30日間、自由に参加できるよう取り計らっておきます」

 

 これで手続きは終わりだ。

 

 まだ読み書きが出来ないのだから当然だが、サインをして書面を交わすような手続きはない。

 

 親の同意も不要だ。臨戦の儀を終えた子供は、自身の行動には自身で責任を持つ事をある程度許され、また要求される。

 

 

 

 あなたは礼を言い、席を立った。

 

 折角の友人宅への訪問であるが、この後はまた昼過ぎから家の仕事が待っている。男衆が山ほどの釣果を持ち帰るマスの季はどうしたって手が足りないのだ。

 

「また今度、時間のある時にもお越し下さい。授業の感想もお聞きしたいですから」

 

 わざわざ砦前の橋まで見送りに出てきたマイアへと手を振り、あなたは帰路についた。

 

 数日後から始まる学校生活への期待からか。気を抜けば跳ねてしまいかねないほどに足取りが軽かったのは、きっと言うまでもないだろう。

 

 

 


 

 

 

 そうして数日後。

 

 あなたはヤレカを伴い、街の中層にある学校へとやってきた。

 

「おー。……あんまり学校感、ないね?」

 

 とは、外観を眺めたヤレカの感想である。

 

 あなたも同感だ。周囲の建物より一回り以上は大きいが、作りそのものは白く四角い石造り、つまりはいつも通りのルワ・ザンガラ様式だ。前世で最も有名なサンドボックス系クラフトゲームに詳しい者なら、容赦なく豆腐建築と呼ぶだろう。

 

 周りとの違いは遠くからでも目立つようにか、屋上から黄色い旗がなびいている点と、入り口の上に本とペンを図式化した看板が掲げられている点ぐらいのものだ。

 

 とはいえ、あなたはそこまで見た目に学校らしさを求めてはいなかった。

 

 話を聞いた限り、学期は30日区切りで、授業料も支払い方からか学費というより月謝と呼んだ方がしっくり来る。

 

 学校と、そう呼称してしまうにはやや違和感がある。寺子屋……だと和風すぎるため、私塾あたりが適切か。そんな考えがあったのだ。

 

 それに何より、学校で重要なのは外側よりも内側、学べる内容だ。

 

「それもそうだね。入ろ入ろ。ふふ、ちょっと楽しみ」

 

 これまた同感に、緩みかける頬を抑えながらあなたはこれから30日を過ごす学び舎に踏み入った。

 

 

 

 入り口を通ると、そこにはまず今世では初めて見るものがあった。

 

 なんと下駄箱である。

 

 ルワ・ザンガラに暮らす者は例外なく足裏が頑丈だ。石造りの街を駆け回っても擦り傷のひとつも負う事はなく、よほど年嵩で肌の弱った者などを除けば裸足が当たり前。

 

 なので当然、靴のための収納なども存在しない。ということは逆説的に、ここでは履き物を履かなければならないという事なのだろう。

 

 

 

「やあ、こんにちは。新学期一番乗りおめでとう。新しい生徒さんだね? 名前を教えてくれるかな?」

 

 それは、学舎の奥からやってきた男性が手に持つ2足の履き物からもわかった。ニンバル編みのサンダルだ。靴のほとんどないルワ・ザンガラでもごくわずかながら流通する、ほぼ唯一の履き物である。

 

 

 

 持ってきた者、おそらく20代前半ほどの男の方は、サンダルよりもさらに希少な、一目でこの街の人間ではないとわかる姿をしていた。

 

 麻製の上下の衣服をまとっている事もそうであるし、サラリとした繊細な質の金髪に、日焼けの薄い色白な肌もそうだ。

 

 何より、筋肉が薄い。そんな体型で生きていけるのかとあなたが思わず心配し、良く考えれば前世で言えば標準ぐらいだなと思い直す程度の男の姿は、この街ではナヨナヨして情けないと後ろ指をさされかねないものだった。

 

 

 

 そんな男性に、あなたとヤレカは姿勢を正して名乗った。もちろん、首元の装飾品を示す正式な形でだ。

 

 対し、男性もアゴを上げて首を見せる。両手に靴を持っているために指は添えられていないが、目上(大人)から目下(子供)への挨拶としては問題なく、礼儀には反さない。

 

 首飾りの形と色は、一人前の大人であり、領主の庇護下にあり、漁師でも職人でも商人でも無い事を示していた。

 

「学校の先生っていう職は首飾りの形にないみたいだからね。今のところはこういう風にしてあるんだ。わかりにくくてごめんね」

 

 男はそう言い、口元を緩めた。

 

 ふわり、あるいは人によってはヘラリとでも表現しそうな気の抜けた笑みもやはり街の者には珍しく、石造りの空気からどこか浮いている。

 

「僕はカスタルド。家名はレコンっていうけど、まぁこっちは覚えなくていいかな。これから30日の間、君達に色んな事を教える先生だよ」

 

 男は予想通り、この学校の教師のようだ。

 

 彼、カスタルドは手に持ったサンダルをあなた達の目線の高さまで持ち上げ、続ける。

 

「さしあたって最初に教えるのは靴について。サンダルの履き方はわかる?」

 

「うん。たまにお父さん(イシャバ)が履いてるから」

 

「おや、珍しい」

 

「友達のおじさんがいつも靴履いてるから時々真似してるんだって。慣れたら悪くないって言ってたよ」

 

 それなりにどうでもいい雑談をかわしながら、あなたは手渡されたサンダルに足を通した。

 

 サンダルと言っても、前世のように足先を引っかけるだけのものではない。足首と、ふくらはぎの下あたりの2箇所で紐を結んで固定するタイプだ。

 

「しっかり履けてるね。最初は面倒かも知れないけど、すぐに慣れるよ。学校で過ごす間はそれを履いて過ごして欲しいんだ。帰る時は脱いで、ここ(下駄箱)に入れておけば良いからね」

 

 脱ぎ履きには多少の手間を伴うが、特に問題になるほどでもない。

 

 むしろあなたには懐かしさからテンションを上げる効果を発揮して、学校生活への期待をわずかに増やすものであった。

 

 

 

 

 

 それから少しして、他の生徒達も学校へと集まった。

 

 人数は10人と少し。男女は半々。年齢はあなたと同年代が中心で、年下が3人ほどと、年上が1人。首飾りを見る限り、商人の子がほとんどだ。

 

 そんな中で互いに自己紹介を終えた後、生徒達は自然とあなたを囲んだ。

 

「ね、ね、漁師の男の人って普段何食べてるの?」

 

 理由は、もちろん親が親であるためだ。

 

 あなたと同年代という事は臨戦の儀を終えた者という事で、それはつまりブージェを打倒する戦士達を見たという事。男の子は誰の目にも明らかな強さに憧れを抱き、女の子はその勇ましい様を間近で見てしまったために性癖を歪めるのが一般的だ。

 

 特にあなたに迫る年上の少女は儀礼の最中に自分を守ってくれた若手の男衆に熱烈に恋心を燃え上がらせているらしく、イシャバの娘という立場のあなたから少しでも情報を搾り取ろうと必死である。

 

 その熱量は段違いだが、他の者とて負けていない。

 

 漁師のような筋肉を身につけるためには何を食べて過ごせば良いのか。どんな鍛錬を積めば良いのか。男も女も関係なしにあなたに詰め寄った。

 

 

 

「はいはい、そこまで。そろそろ授業を始めるよ。みんな席について」

 

 終わりの見えない問い詰めは、幸いにもカスタルドがおさめてくれた。彼がパンパンと手を叩いて諌めれば、子供達は渋々とだが適当な席につく。

 

 カスタルドは柔和な顔立ちで筋肉も乏しく、ハッキリ言って威厳に欠けるが、だからと逆らうような者は居ない。

 

 序列意識というものはルワ・ザンガラの人間には染み付いているのだ。つまらない事で目上に対し無闇に逆らう者は、この街では生きていけない。

 

 

 

 そうして始まった最初の授業では、最初にあるものが全員に配られた。

 

「この学校での授業中は、これを着て過ごしてもらうよ」

 

 衣服である。

 

 女子にはワンピース。男子にはチュニックとズボン。それぞれ中古で生地の質も低いが、それは確かに服であった。年中腰巻と胸帯だけのルワ・ザンガラでは希少な品と言える。

 

 子供達からは困惑の声が上がった。当然だが、必要性を理解できないのだろう。

 

「みんなは、こういう服を着てる人を見た事があるかな?」

 

 そんな彼らにカスタルドは問う。

 

 それに、ほとんど全員が首を縦に振った。

 

 衣服を着た人間はこの街では希少ではあるが、全く居ないわけでもない。例えば冒険者組合の長であるガドなどがそうで、業務の都合上街のあちこちに出没するために衣服自体を目にする機会はそれなりにある。

 

「そういう人を見た時に、最初どう思ったかな?」

 

「なんだこいつ」

 

「そう。その通り」

 

 続く問いに返ってきた男の子の答えに、カスタルドは手を叩いて、まさにそれだと頷いた。

 

「あんまり見慣れない、つまり変な格好の人間は変な目で見られるんだ。なんだこいつは、ってね。そうなると最初から警戒されてしまうから、ただ話をするだけでも大変だ。信用してもらって仲良くなろうとするなら、さらにね」

 

 カスタルドがチュニックを掲げる。

 

 パン、と音を立てて広がったそれに自然と子供達の目が集まった。

 

「でも実は、ルワ・ザンガラ以外の街ではこういう服を着ている人間の方が多いんだ。肌を出している人はほとんどいない。ああ、ついでに言えば今履いてもらってる靴もみんな履いてる。じゃあここで、もう一度質問だ。そんな街に、腰巻だけで入っていったらどう思われると思う?」

 

 

 

 戸惑うように目線を交わして相談した後、子供達を代表して、先ほど返答した男の子が口を開く。

 

「……なんだこいつ?」

 

「正解!」

 

 カスタルドは2度目の正解に満面の笑みを浮かべ、発言した男子を賞賛した。

 

 

 

「服を着ている人間が多い街に入る時は、服を着ておくと何かとお得なんだ。君達が将来そういう街を訪ねる事があるかはわからないけど、いざ必要となった時に備えて、服の着方と手入れの仕方を教えておくよ」

 

 学校というのは、備えを作るための施設なのだ。

 

 そんな言葉で説明を締め、カスタルドは全員に着用を促した。

 

 

ランダム分岐/技能成長
社交技能(少し)

1から順に

微妙に、微妙に、少し、少し、少し、普通に、普通に成長する

 

1d7=3

 

少し成長する

 

 

 他の子供達が初めての衣服に苦戦する中、あなたはささっとワンピースを身にまとった。

 

 あまり質の良くない生地に、飾り気のない簡素な仕立て。それでも懐かしい衣服の感触にあなたは高揚を感じていた。

 

 丈の長さはスネほどまで。袖は半袖。ゆったりとした大きめの作りのため、腰元を紐で縛って着るようになっている。

 

「どう? 可愛い?」

 

 ヤレカはその紐を腰の後ろに回し、結び目が大きく広がるように結んでいた。淡い亜麻色の服に対して、濃い茶色に染められている紐は良く目立ち、さながらリボンがついているようにも見える。

 

 それはあなたの目にも可愛らしいもので、素直に頷きたくなるだけの魅力的な姿だった。文明的な格好はそれだけでも良いものである上、もちろん言うまでもなく、着ているのがヤレカである点が最大の加点材料だ。

 

「ふふ。ありがと。そっちも同じにしてあげるー♪」

 

 あなたの返事に気をよくしたヤレカは、瞬く間にあなたの腰に紐を巻き付けてお揃いにしてしまった。

 

 ほんのりした恥ずかしさを感じないでもないが、満更でもないあなただ。

 

 女の子としてすでに10年以上を生きて感性が随分とそちらに寄った上に、この衣服はつまり学校制服とも言える。良い響きであった。

 

 

ランダム分岐/学友との関係構築

社交技能で判定

 

あなたの社交技能 レベル4

関係の構築難易度 レベル0

成功率90%

 

1で失敗

2〜10で成功

 

1d10=4

 

 

 必然として上がったテンションのまま、あなたは踊るようにクルリと身を翻した。

 

 決して柔らかくはない生地だが、それでもワンピースはワンピース。スカート部分は振り回されるまま、ふわっと広がる。

 

 女の子としての自覚が育ち、前世の感覚で女の子らしい姿に身を包んだ自分を想像する中で、一度はやってみたいと思っていた行動であった。漫画などに日頃接している者ならば誌面の上でいくらでも目にし、誰でも至るごく普通の発想だろう。

 

「わ……!」

 

 だが、それはルワ・ザンガラの人間にとっては異文化そのものだ。

 

 あなたの行動を目にしたひとりの女の子が、広がったスカートに目を奪われる。腰巻では絶対に再現できないそれは、彼女の目には新鮮そのものだったようだ。

 

 少女はスカートの裾を掴み、回転しながらブワッとめくる。

 

 あなたの真似をしようとしたらしいそれはしかし、残念ながら不恰好で、綺麗には広がらない。少女はその事実にムッとした後、あなたへとズンズン近寄って、教えを請うた。

 

 それを断る理由もない。むしろこれからしばらくを共に学んで過ごす学友として、ある程度仲良くなるにはちょうど良い取っ掛かりだろう。

 

 他にも真似たい者が集まり、突発的なスカート捌き教室があなたとヤレカの元で開かれる事となった。

 

 

 

「あー……えぇとね、そういうのははしたないと思われるから、あまりやらない方が……」

 

 というカスタルドの制止によって一旦は解散となったが、そうそう簡単には消えないのが生徒達の流行というものである。強く戒められたわけでもないのだからなおさらに。

 

 女生徒達はこれ以降も、彼の目を盗んでは定期的に綺麗な回転を追求し、スカートの美しい広がり方を研究する事になるのであった。

 

 

 


 

 

 

 そんな一幕の後は、学校としての本懐だ。つまり授業である。

 

 教材として与えられた板に、あなたは細い棒を走らせる。

 

 この板はごく普通の薄い石板の上に大きな四角形の窪みを掘り、色付きの蝋を流し込んで固めたもののようだ。蝋は柔らかいために簡単に棒で削って線を書ける上に、少し温め溶かして(なら)せば線を消して再利用する事も出来る。

 

 まさに文字の練習にはうってつけの道具だった。

 

 

 

 そう、文字である。

 

 あなたが最も知りたかったこの世界の文字に関しては学校でも最重要科目として教えてくれるようで、あなたは初日から書き取りに励む事が叶っていた。

 

 これには流石に筆も軽い。

 

 登校初日ですでに、あなたは授業料の元を完全に取り切ったぐらいの満足感を得ていた。制服と良い、仲良くなれそうな学友と良い、文字と良い、全てがプラスばかりである。

 

 学校に通うと、そう決断した過去の自分の判断に、あなたは全力で感謝を捧げた。

 

 

ランダム分岐/技能成長
教養技能

1から順に

微妙に、少し、少し、普通に、普通に、普通に、

中々、中々、かなり成長する

 

1d9=6

 

普通に成長する

 

 

 さて、そうして学んでいるこの世界の文字だが、そう難しいものではなかった。

 

 言語学習といえば、無数の単語の綴りを覚え、人称や時間による変化を覚え、文法を覚える……そんな大変なものと考えていたのだが、それは杞憂であった。

 

 この世界の文字は、前世に例えていうならば「ひらがなしか存在しない」ようなのだ。

 

 普段からあなたも発している話し言葉をそのまま一音ずつ記し、文章として繋げるだけ。記憶すべきなのは基本となる46の文字のみで良く、覚悟していたほどの苦労はそこにはない。

 

 

ランダム分岐/文字の成り立ち

教養技能で判定

 

あなたの教養技能 レベル3

情報セキュリティ レベル0

成功率80%

 

1〜2で失敗

3〜10で成功

 

1d10=8

 

 

 どうしてか、と考えてあなたは気付く。

 

 魔法の影響だろう。

 

 この世界の魔法は、アクセント、発音、果ては音節ごとの声量比率の正しさまでが厳格に求められる。わずかでもズレがあれば想定した効果とは異なる魔法に変化するか、あるいは発動すらしない。

 

 これを日常的に利用する文化の人間が、発音のズレを生みかねない文字表記のブレを許容するわけもない。

 

 

 

 ひらがなのみの言語という説明を、より実態に即して説明し直すと、発音記号のみで書かれる言語、というものになる。

 

 それは、基礎となる46文字を補佐するための、26の補助記号の存在が証明していた。

 

 例えば「悲しみに声をひそめて」。例えば「最も力強く」。例えば「歌うように伸びやかに」。そんな意味を持つ記号が文章の所々に用いられ、言葉にこめられた意味や意図を修飾し、強調する。さながら音楽記号だ。

 

 文章から意味の取り違いを徹底的に排除しようとする様は、求めた魔法を正しく発現させようとする努力にひどく似ている。

 

 

 

 文化そのものが反映された、異界の文字。

 

 この学習はあなたにとってご褒美も同然だ。基礎46字をよくよく見比べれば形の近いものがほとんどなく、そこからもまた誤読防止の取り組みを感じ取ってしまえば、もうたまらない。

 

 

あなたの性格変動

勤勉さが上がった

 

以降、積極的に学習や訓練に取り組むようになる

 

 

「うん、いいね。良く書けた綺麗な字だ。お手本に取っておきたいぐらいだよ」

 

 あなたの蝋板を確認したカスタルドのお褒めの言葉に、あなたは照れくさく感じながらも胸を張った。

 

 文化の結晶にして、知識の源となる文字である。あなたが敬意を払わないわけもなく、線の一本一本に至るまでできる限りカスタルドの示した手本に忠実に引かれている。それこそ魔法の詠唱のように。

 

 銀貨8枚の支払いで許された30日間、あなたが誰よりも勤勉に学びを積み重ねるのはきっと、誰の目にも明らかだった。

 

 

 

 

 

ランダム分岐/技能成長

家事/加工/鑑定技能(わずか)

 

1から順に

微妙に、微妙に、微妙に、微妙に、微妙に、

少し、少し、普通に成長する

 

家事/1d8=4

加工/1d8=5

鑑定/1d8=2

 

 

 

 

 

少年期 育成回数

残り 1

 

あなたの財布の中身
所持金レベル 2

 

 

 

惰眠を貪る

スヤスヤと昼寝を楽しみ、その後もダラダラ過ごす

 

ストレスが下がる

少し怠け者になる

 

家業を手伝う

家事や漁具の補修を手伝う

 

勤勉さが少し上がる

郷土愛が少し上がる

家事技能が成長する

加工技能が少し成長する

 

ガウィル達と遊ぶ

弟妹の面倒を見る

 

面倒見の良さが上がる

運動技能が成長する

探索技能が少し成長する

 

マイアを訪ねる

友人である領主の娘と過ごす

 

知識欲が上がる

好奇心が少し上がる

社交技能が成長する

教養技能が少し成長する

 

ヤレカとイチャつく

人目のないところでヤレカとひたすらイチャつく

 

ストレスが下がる

健全度が下がる

 

市場を見て歩く

お小遣いで買い物を楽しむ

 

物欲が少し上がる

鑑定技能が成長する

ランダムなアイテムを獲得する

獲得内容は現在の興味と技能の影響を受ける

 

所持金レベルが1下がる

 

教会で奉仕活動

教会で奉仕活動として多少の労働を行う

 

信仰心が少し上がる

信仰技能が成長する

家事技能が少し成長する

 

街の中を探検する

安全な街中で散策を楽しむ

 

好奇心が少し上がる

諜報技能が成長する

探索技能がわずかに成長する

 

街の外を探検する

危険な街の外を散策

 

好奇心がすごく上がる

探索技能が成長する

戦闘技能が成長する場合がある

 

料理の研究をする

より美味しい食事を求めて調理実験

 

食欲が上がる

家事技能が成長する

鑑定技能がわずかに成長する

 

道具の作成に挑戦する

アイテムの強化や作成を試みる

 

加工技能が成長する

装備が強化される場合がある

ランダムなアイテムを獲得する場合がある

獲得内容は現在の興味と技能の影響を受ける

 

ヤレカと戦闘訓練

人目のないところで訓練を行う

 

戦闘意欲が上がる

戦闘技能が成長する

 

素潜り漁を行う

海に潜って貝や甲殻類を集める

 

ストレスが少し下がる

活発になる

運動技能が成長する

 

所持金がわずかに増える

 

市場でアルバイト

街の市場で働く

 

郷土愛が上がる

社交技能が成長する

 

所持金が少し増える

 

冒険者組合で働く

冒険者として仕事を受ける

 

好奇心が上がる

ランダムな技能が成長する

所持金が増える

 

賭場で遊ぶ

街の賭博場でギャンブルを楽しむ

 

勤勉さがすごく下がる

健全度がわずかに下がる

 

所持金がランダムに大きく増減する

 

学校で教養を学ぶ

街の学校で勉学に励む

 

勤勉さが上がる

教養技能が成長する

社交技能が少し成長する

家事/加工/鑑定技能がわずかに成長する

 

所持金レベルが3減る

所持金レベルが3未満だと選択不可

 

魔法を学ぶ

メナから魔法の扱いを学ぶ

 

魔法技能が成長する

 





現在のあなた
性格/混沌・中庸
良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う
所持金/2
面倒見+1
知識欲+1
戦闘意欲+1
好奇心+1
勤勉さ+2
運動技能レベル3
教養技能レベル3
社交技能レベル4
戦闘技能レベル4
魔法技能レベル5
鑑定技能レベル5
家事技能レベル1
加工技能レベル1



やる気ボタン → 評価

コマンド?

  • 惰眠を貪る
  • 家業を手伝う
  • ガウィル達と遊ぶ
  • マイアを訪ねる
  • ヤレカとイチャつく
  • 市場を見て歩く
  • 協会で奉仕活動
  • 街の中を探検する
  • 街の外を探検する
  • 料理の研究をする
  • 道具の作製に挑戦する
  • ヤレカと戦闘訓練
  • 素潜り漁を行う
  • 市場でアルバイト
  • 冒険者組合で働く
  • 賭場で遊ぶ
  • 魔法を学ぶ
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