一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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少年期編 最終イベント
一般的な異世界転生 少年期編 14


 

 

分岐

好奇心が郷土愛よりもかなり高い

 

 

 唐突だが。

 

 ルワ・ザンガラは閉鎖的な街である。

 

 少なくとも、あなたはそう感じていた。物理的な意味、比喩的な意味、その両面で。

 

 

 

 物理的な方はわかりやすい。

 

 単純に街の中は道が細く、入り組んでいて、四方を囲む建物の壁ばかりが迫る。ならばと空を見上げてみても、北側半分は高い崖とそこに張り付く街の続きに埋められている。

 

 どこもかしこも坂と階段ばかりの不便さも大きい。海沿いの下層から崖上の上層まで上がるにはちょっとした決断が必要になる程度には面倒があり、漁で上がった魚を運ぶにも台車で一直線に簡単に、とはいかない。

 

 

 

 屋外に居るはずなのに、ずっと閉じ込められているような。

 

 そんな風に思ってしまった経験は片手の指では足りない。息が詰まるとまで言う気は今のところないが、生活の中で、あなたの心にはいつだって拭いきれない閉塞感がまとわりついていた。

 

 

 

 ルワ・ザンガラの様々な建物の出入り口や窓が塞がれていないのはそのためだろうか、などと考えた事もある。石と石と石に囲まれた中、息継ぎを求めるように誰もが空気穴を欲しているのかも知れない、と。

 

 きっとザンガラっ子が海と岩礁を愛する理由もそうだろう。街の中で唯一、世界に果ては無いと思い込む事の出来る場所。

 

 だからザンガラに登った者は皆、歩くのではなく飛び回るのだ。己を抑えていたものの手を離れて、背に羽が生えたようだと錯覚して。

 

 

 

 ……そこまで思考を進ませて、あなたは自分自身に苦笑した。

 

 前世では一度済ませて落ち着いたはずの思春期が、転生の若返りでぶり返したのだなと、どこか他人事のように分析する。

 

 10代前半特有の詩情に浸りきれない事が脳科学的に悪い事でなければ良いなとふと考えて、もしそんな研究論文があったとしてももう読む機会は無いのだと気付き、それがほんの少しだけ寂しい。

 

 

 

 転生も善し悪しというものだ。もしあなたが前世の記憶を持たずに生まれていれば、こうも無駄に考え込む事もなかっただろう。

 

 比喩的な方の閉鎖性に悩む事も。

 

 

 

 閉じているのは街の景色だけではない。

 

 この街にいる限り、あなたの将来は自動的に決定されるだろう。ルワ・ザンガラという小さな社会は住人ひとりひとりに決まった役割を求めている。男は漁師や職人として。女はその妻として。

 

 他の道は許されていない。

 

 あなたがこのままこの街で暮らすなら、いつかは男と家庭を持ち、女として夫を受け入れ、そして子供を産む事になる。それ以外の道を歩むのは、きっとひどく難しい。

 

 少なくとも、今のままでは。

 

 

 

 ルワ・ザンガラでは珍しい雨の中、さらさらとした水音を聴きながら、あなたは寝台の上で寝返りをうった。

 

 そして、成長にともなって膨らみ続けている胸と、魔法を使えるようになった……つまりは妊娠が可能になった下腹部を撫でる。

 

 男に、そういう目で見られている。

 

 そんな実感を強制される瞬間は幼少期に比べてずっと増えた。お前はもう男ではないのだと、自身の性別を改めて思い知らされる日々に、あなたはほんの少し参っていた。

 

 もし前世と違う性別を無邪気に喜べるような人格だったなら、と考えてその思考の無駄っぷりに思わず吹き出す。何の意味もない、ただの慰めでしかない妄想だ。己をそう簡単に変えられたら苦労はない。

 

 

 

 それに、と、あなたは頭の中で続けた。

 

 あなたは平凡な人間だ。自覚は強い。何しろ前世での18年という揺るがぬ証拠が存在する。

 

 特別な何かを成し遂げるどころか志す事さえせず、周囲の空気に流されるまま、なんとなく平均や中間といったあたりを漂うように生きていた。

 

 ……死を迎える時でさえそうだ。

 

 未練はあった。日本で言えば短すぎる生涯と言って良く、ニュースにでもなればまだ若いのに可哀想になどと言われただろう、そんな年齢での終わりだったのだから当然だ。

 

 だが、強いものではなかった。

 

 両親に申し訳ないな。あの漫画の続きが読みたかった。友人と立てた卒業旅行の予定が無駄になってしまう。大学で学びたい事もあったのに。

 

 今際の際に湧き出たものはそんなもの。どれもこれも最終的にはまぁ仕方ないなと諦め切れる程度でしかなく、物語の主人公のように、こんな所で死ねない、などと足掻く気は全く起こらなかった。

 

 

 

 ならば、今世も流されるのが似合いかも知れない。

 

 父のイシャバと母のメナは厳しいが、同時に優しい両親だ。さして甘えもしないあなたにも確かな愛を注ぎ、慈しんでくれている。悪いようにはされないという確信はあった。

 

 彼らが勧める男と家庭を持って、ルワ・ザンガラの文化に沿って生きていれば、人並みの人間にふさわしい、人並みの幸せは得られるはずだ。

 

 きっと性に関する葛藤もその内に整理がつく。

 

 男として生きた年月よりも、女として生きた年月が長くなれば。いつか当たり前に男を愛せるようになるだろう。あなたはもう、自身が女である事を、諦観と妥協をもって受け入れようと決めているのだから。

 

 

 

 

 

「ふふ」

 

 枕元から声が聞こえる。

 

「私に一言命令したら、全部解決してあげるのに」

 

 声の主が誰かなんて見なくても、あなたにはハッキリとわかった。いつの間にか気配もなく現れた彼女のいつもの緩やかな笑みが簡単に思い浮かぶほどに。

 

「どこにでも連れて行ってあげる。見えない檻なんかすり抜けて、海のずーっと向こうでも、地面の反対側の端っこでも。あなたのためなら、私はなんでもするよ」

 

 そんな重みのない、いつだって羽の生えたような言葉に。

 

 

分岐

アライメントが混沌

 

 

 そうしたいと、無意識に口をついて声が出た。

 

 それでいよいよ自覚する。

 

 閉じた街の中で静かに終わる人生も悪くない、そんな考えはただの誤魔化しだ。ほんの皮一枚、取り繕うように薄っぺらく貼り付けられた出来損ないの嘘。あなたの心はもうとっくに、自由を欲して地平の先を見つめていた。

 

「なら」

 

 石の寝台は軋まない。ギシリなんて音も立たず、あなたの視界の中に逆さまのヤレカが現れる。

 

「そうしちゃう?」

 

 ヤレカの目は、いたずらに細められている。だがその瞳の奥に宿るのはどこまでも優しい光だ。

 

 ここであなたが頷けばきっと、神に与えられた能力の全てを使って、あなたを外の世界へと導いてくれるに違いない。

 

 どんな障害をも跳ね除ける、あなただけの、絶対の味方として。

 

 

分岐

性格が悪ではない

 

 

 ……それに躊躇なく頷けない程度には、あなたは善良な人間だった。

 

 

 

 囁くようなか細さの雨音に混じって、どこからか声が届く。弾むような、楽しさに満ちた子供達の声が。

 

「ほーらこっちこっち! ……ハズレー! どうしたどうした、そんなんじゃ立派なザンガラっ子になれねーぞぉ?」

 

「んぅー! まってぇー! まーにぃー!」

 

 あなたの弟達が遊んでいるのだろう。実弟のガウィルが追い、義弟のマランが逃げるザンガラ飛びの遊びだ。手で体のどこかに触れれば勝ちとなる幼児向けの簡易版は、最近のガウィルのお気に入りである。

 

 あまり本気で逃げすぎるとガウィルが拗ねて泣き出し、逆に手を抜きすぎて簡単に捕まりすぎたり、あるいは手の抜き方が露骨すぎたりしても、それはそれで機嫌を損ねる。

 

 ちょうど良い塩梅を探るのは少々難しいところなのだが、マランはそれが妙に上手かった。

 

 それに輪をかけて上手いのがメナで、マランの下には女衆筆頭のカウラと、男衆若手のルワンジ。そのさらに下にあなたを含む女衆と男衆のほとんど全員が横並び。

 

 最も下手くそなのはイシャバで、海の上ならなんでも出来るような男もワガママ盛りの息子の前ではただの人なのか、しょっちゅう「ちゃんとやって!」と半泣きのガウィルに怒られて大きな体を縮こめていた。

 

 

 

 さして観察に努めているわけでもないのに、遊びの上手さの順位が頭の隅にこびりつくぐらいには誰もが最年少の弟を可愛がり、ガウィルが持ち前の大声で泣き叫んだ時を除けば嫌な顔ひとつせずに積極的に世話をしている。

 

 気持ちよく、優しく、善良な人々だと、あなたは確信と、そして少なくない愛情をもって断言できるはずだ。

 

 そんな彼らから受けた恩を返しもしないうちに、身勝手に家出をして行方をくらます事は、あなたはしたくなかった。

 

 

 

 理論上可能な事と、実際に実行に移せる事の間には、決して小さくない隔たりがある。

 

 もし今本当にこの街から逃げ出してしまえば、あなたの心にはじっとりとした後悔がしがみつくだろう。おそらく、ルワ・ザンガラに戻らない限り生涯解消されない、それが。

 

 例えその後の人生で幸福を得たとして、心臓の隣に暗くねばつく罪悪感を抱えたままで満足と共に最期を迎えられるとは、あなたには到底思えなかった。

 

 

 

 閉塞した現状を打開するには、もうひとつ何かが必要だ。

 

 故郷を離れるに足るきっかけか。

 

 あなたの望みを家族に認めさせようという決意か。

 

 家族を振り払って何も感じない強靭な自我か。

 

 あるいは、外界への憧れを捨て、閉じた生涯を送るための充足(諦め)か。

 

 

 

 そうしたいとは言っても、そうしようとはついぞ口にしなかったあなたの頬を幼な子を愛でるように撫でて、ヤレカは誘いを引っ込めた。

 

 決断を強要せず、あなたの未来をあなたの選択に任せようとするのは、きっとこの忠実なる従者が持つ美徳のうちで最大のものだろう。少なくとも、束縛を嫌うあなたにとってはそう感じられた。

 

 ヤレカは、押し通すべき自己が無い(中立・中庸)。あるべき芯の代わりに彼女の中心に通るのは、あなたの望みに添おうとする心だ。重いと感じる事も時にはあるが、今はただ心地良い。

 

 

 

 

 

 ふう、と短めのため息をひとつ。雨に誘われてか降り積もった憂鬱を吐息と一緒に吐き出して、あなたは寝台から身を起こした。

 

 思い悩む時間は一旦ここまで。

 

 あなたはまだ子供である。ここルワ・ザンガラにおいても、自分の将来を完全に定めるまでは猶予がある。今はもうわずか、モラトリアムの中に揺蕩っていても良いだろう。

 

 そう決めると、あなたは何か気分転換でもしようかと天井を見上げて思案した。

 

 

 

 無難なところ(デフォルト)では海だろうか。

 

 多種多様な生物が泳ぐザンガラでの素潜りは、あなたにとっては日々の糧のための仕事である。だが同時に、綺麗な光景と、重力の(くびき)から解き放たれる「自由の擬似体験」は、小さな悩みや煩いを忘れさせてくれるものだ。

 

 弟妹と遊ぶ(面倒見)のも良い。

 

 先の通り、あなたの家族は善良で仲が良い。彼ら彼女らと時を過ごすのはあなたにとっても心地良いひと時になるはずだ。特に最近は、義妹達がコソコソと怪しい動きを見せている。何か企み事でもあるのかとは気になるところで、ちょっとした気晴らしにはピッタリだ。

 

 マイアの元(知識欲)をまた訪れる手もある。

 

 先日も見せてもらった史料展示室は、あなたにとってまさに宝の山だ。古の覇王エルヴァーの軍がルワ・ザンガラに押し寄せたのが王国歴157年。そして今は王国歴382年だという。この空白を埋める他の歴史も知りたいという声は、あなたの中から確かに沸き起こっている。

 

 単純に、街の外に出てしまう(好奇心&戦闘意欲)という選択も有りかも知れない。

 

 家出という意味ではもちろんなく、ちょっとした外出としてだ。街の最上部を塞ぐ領主の砦を抜けて崖の上へ行き、街の外の空気を吸うのは悪くない時間なのではないだろうか。それはあなたにとって未知の光景でもあろうし、獣でもいればちょっとした狩りも楽しめるだろう。

 

 後は、学校(勤勉さ)

 

 教師による授業こそ日に3時間しか行われないが、それ以外の時間にも別段閉鎖されているわけではない。授業料を払っている者ならば消耗品以外はある程度自由に扱えるため、習った事の復習ぐらいは可能だ。暇を持て余した他の学友と顔を合わせる事もできる。彼らとのおしゃべりにふける時間というのも学生らしくて良さそうだ。

 

 案はこんなところだろう。

 

 その他となると、ダラダラとヤレカと過ごす(アライメント混沌)ぐらいか。生産性のカケラもない時間にはなるだろうが、案外ストレス解消にはそういうのが一番効きそうではある。

 

 

 

 さて、どうしたものか。

 

 気圧のためか。動こうと決めてもしつこく込み上げてくるあくびをこぼしながら、あなたは考えた。

 






現在のあなた
性格/混沌・中庸
良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う
所持金/2
面倒見+1
知識欲+3
戦闘意欲+1
好奇心+2
勤勉さ+2
運動技能レベル3
教養技能レベル5
社交技能レベル8
戦闘技能レベル4
魔法技能レベル5
鑑定技能レベル5
家事技能レベル1
加工技能レベル1



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コマンド?

  • 海に行く
  • 弟妹と遊ぶ
  • マイアを訪ねる
  • 街の外に出る
  • 学校に向かう
  • ヤレカとダラダラする
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