一般通過異世界転生者:あなた 作:ID:Am88n712
一般的な異世界転生 幼少期編 1
ルワ・ザンガラに朝が来る。
ここ異世界においても朝日は東からのぼり、西へと沈む。あなたの暮らす屋敷もまた、今日も今日とて東から白み始めた空に照らされていた。
そんな時分、朝の早くからとっくに屋敷の空気は慌ただしい。何しろあなたの父、イシャバの稼業は漁師である。
魚が活発に動く早朝に合わせて海に出るためにまだ暗いうちからイシャバが動き出し、その妻のメナも夫を送り出すため、そして夫が帰ってくるまでに食事を準備しておくため、必然的に目覚めが早い。
さらに加えて、屋敷にはあなた達親子だけが住んでいるわけではない。イシャバに仕事を教わっている若い徒弟が何人も寝泊まりしている他、漁のさなかの事故で親を亡くした子供などを数人引き取って暮らさせてもいる。それらの世話をする女衆まで含めて、総勢で24人という大所帯だ。
そんなわけで、どうしたって屋敷の朝はひどく騒がしい。女達が厨房を駆け回り、あれはどうなった、こっちを先に、と声を張り上げ合う。余裕のなさから時に喧嘩が起こる事も稀にあるが、やはり同じく余裕のなさが原因で鎮静は早い。何しろ女衆にとって、朝食の準備が間に合わずにイシャバやメナを怒らせてしまうのが最も怖い。それに比べれば同僚との多少の諍いを飲み込む程度はどれほどの事でもないようだ。
とはいえ、流石にこれは大人達だけの騒がしさだ。あなたを筆頭とした幼い子供達は、大人達と違って暗いうちから叩き起こされる事もなく、空が白むまでをスヤスヤ眠る事が許されている。
あなたもまた、遠くからくぐもって聞こえてくる屋敷内の喧騒をちょっとした子守唄にしながら、しっかりと長めの睡眠を貪ってからの起床である。
平らに削った石の上に、ちょっと厚めの毛皮を敷いただけ。そんな簡素な寝台の上で目覚めたあなたは、ぐぐっと猫のように体を伸ばしてほぐし、これまた猫のように大あくびを決めた。
これはあなたの毎朝のルーティーンだった。前世のベッドのような柔らかさなど全く期待できない石の寝台での睡眠はかつてのあなたにとってはそれなり以上のストレスであった。しっかり寝て起きても体がギシギシしているような気がしてならず、目が覚めれば関節という関節をとりあえずほぐさねばならない使命感にかられたものである。
もっともそれから数年を過ごすうちにすっかりと慣れ、今や毛皮なしの石の上だろうと快眠熟睡が可能となっている。もちろん目覚めの不調とも無縁だ。単純に、古い癖が未だ残っているだけ、という話。
伸びを終えて寝台から下りたあなたは次に部屋の隅に向かった。家族や同居人の前に出る前に、身支度を整えるためである。
そのために使うのは鏡だ。金属の表面を滑らかになるまで磨いたもので、映り具合は前世の鏡とそう大差ない。しばらく放っておくと徐々に曇り始めて磨き直しが必要になるという欠点はあるものの、あなたとしても初見時は中々に驚いたものだった。
さて、身支度である。あなたは壁にかけられた鏡の前に立ち、鏡面の中を覗き込む。
そこに映っていたのは……。
| 選択肢分岐 |
| まぁしゃーない、切り替えていこう
性別を否定も肯定もしない 初期容姿レベル±0 |
| ランダム分岐/今世の容姿 |
| 1に近いほど残念 10に近いほど美少女
1d10=8 かなりの美少女 |
それなり、なんて言葉をちょっと飛び越えた程度には整った容姿の少女であった。
歪みのない曲線で引かれた頬の輪郭。目立ちすぎない程度にスゥッと通った鼻筋。そうして整えられた下地の上に、大きな瞳や愛らしい鼻や柔らかそうな唇が、まるで名のある彫刻家がデザインして刻み込んだかのように、適切な位置に適切な形で置かれている。
まだ10歳にも届いていないあなただが、誰がどう見ても将来得られる美貌は約束されたようなものだ。よほど自身を粗末に扱わない限り、見事に花開くだろう事はまず間違いない。
「…………」
毎朝の事ながら自身の容姿の良さに、むむむ、とあなたの口から声が漏れる。同時にきゅっと眉が寄り鏡の中の少女の表情が歪むが、それすら造作の整いぶりを強調していた。
女の子に生まれてしまったからには仕方ない。前世とは逆の性別には多少の抵抗もあるが、どうしようもない事は諦めて受け入れる他ない。
……赤子の時分からそう決めたはずのあなただが、鏡に映る美少女と、自分という存在が、なかなかしっかりとイコールで繋がってくれていない。もう少し平凡な容姿ならばあっさりと認められただろうにと、定期的にため息を吐く日々だ。
ともかく、あなたは身支度を進めた。
まずは初めにクリーム色のクシを手に取る。昨年の誕生日に父から贈られた品だ。彼、イシャバ自身が仕留めた海獣の骨を、やはりイシャバが手ずから加工したもので、今世で初めて与えられたあなた専用の道具である。
そのクシでもって、あなたはまず寝癖と格闘する。母譲りの真っ赤な髪の根元に差し込み、肩まで伸びた先端までを通していく。海辺暮らしの影響か髪質は硬めなものの、癖の強さとは縁がない。さほど時間をかけるまでもなくあなたの髪は整った。
続いては装身具だ。これは全く手間がかからない。首飾りをひとつ手に取り、首に回し、金具をとめる。たったそれだけ。
オレンジ色の石を削り磨いて作った細長い丸棒が3本垂れるだけの首飾りは、ルワ・ザンガラにおいては一般的な装飾品としての役割の他に、身分を示す物でもある。この場合は、魚と海獣を獲る者に庇護される直系の娘、という意味だ。
他には例えば、棒の数が2本ならば養子を示し、丸棒ではなく太い角錐が垂れていれば一人前と認められた者を示し、石の色が青ならば鍛治仕事に従事する者を示す、といった具合だ。
この街では、対面した相手が何者かを知りたければ首元を見れば良い。当然、もう何年もここで生きているあなたもそれだけで相手の身分を見分けられるようになっている。
そして次に、布製のリボンで髪をまとめる。
これまた簡単な作業だ。赤髪をささっと手で掴み、頭の後ろに流して追いやり、キュッとリボンを結ぶ。子供らしい幼く小さい手指はまだまだ不器用ではあるが、流石に毎朝繰り返していれば慣れもする。さしたる時間もかけずに見慣れたポニーテールが完成した。
最後に、服を着替える。
ルワ・ザンガラにおける一般的な衣服とは、腰巻きを指す。素材は海獣の皮をなめしたもの。女性の場合はそれに加えて、帯状に加工された皮をサラシのように胸に巻いて終わり。
肩や腕、腹や脚を隠す文化は、少なくとも普段着としてはこの土地には無い。それで十分な気候なのだ。ルワ・ザンガラには四季はなく、およそ年中暖かい。少なくともあなたはここに生まれてからこちら、肌寒いという感覚を覚えた経験は数えるほどしかない。その少ない日も、家族と集まるか寝台で毛皮にくるまるかしていれば何事もなく過ごせたものだった。
よって、あなたの身支度はこれで完了だ。
改めて鏡を見れば、わずかな毛皮をまとい、よく日に焼けた小麦色の肌を露出させ、いかにも民族工芸品らしい首飾りをさげた女の子が映る。正直に言って、蛮族感の漂う装いではある。実際、ルワ・ザンガラは発展した文明圏からは遠く離れたド辺境のド田舎であるらしいため、否定は少々難しい。
なんとなく、あなたは前世の日本を代表するアニメスタジオのとある作品を思い出した。喋る巨大な狼が出てくる有名な映画である。見た目の良さもあいまって、かの作品の森で暮らす側の立場が実に似合いそうだ。顔か肌に刺青のひとつでもあれば完璧だろう。
なんて、そう前世を懐かしんでいると。
「おはよう、今日もよく眠れた?」
そんな囁き声と共に、あなたの背中に唐突に他者の体温が触れた。音も立てずに部屋に忍び入った者がいきなり背後から抱きついてきたのだ。
思わずあなたの体が跳ねる。あなたは鏡から目を逸らす事なく、つまりは自身の背後もしっかりと見てはいた。だというのに予兆さえ全く気付かず、腕の中に抱きすくめられるまで侵入者の存在を微塵も知覚できていなかった。
この相手が邪な企みをもっていたのなら中々に致命的な出来事である。が、幸いな事に、これはそういった手合いではない。
あなたは自分の腹のあたりに回された手を掴み、剥がしながら侵入者に向き直った。侵入者はあなたの行動に抵抗せず、ニコニコと微笑んでされるがままだ。
あなたは相手の姿を見る。
それは、女の子だった。背の高さや幼い体型はあなたと同程度の成長具合で、ぱっと見て同年代だとわかる。
歳の頃が同じなら、格好も似たようなものだった。同じく毛皮の衣服に、首に巻かれた装飾品。違いといえばあなたが鮮やかな赤髪なのに対して、相手は夜の海を連想させる深い黒髪だという点。それと、首飾りからさがる棒が3本ではなく2本である点だろう。
2本の棒が示すのは養子という身分だ。身寄りがなく屋敷に引き取られ養育されている何人かのうちのひとりという事になる。実子と養子という立場の差こそあるものの、今世では物心つく前から共に育っている、実質的な姉妹関係にある相手だった。
名前はヤレカ。常としてどこかフワフワと波間に漂うような印象のある、掴みどころのない女の子だ。他の義兄弟姉妹などは彼女を指して「クラゲみたい」と称する事もある。
そんなヤレカだが……彼女が普通の人間ではないとあなたは知っている。
| ランダム分岐/従者の性別 |
| 1なら男 2なら女
1d2=2 女 |
| ランダム分岐/従者の年齢 |
| 1に近いほど年下 7に近いほど年上
1d7=4 同年代 |
| ランダム分岐/従者の性格 |
| 1から順に秩序、中立、混沌 1から順に善、中庸、悪
1d3=2 中立 1d3=2 中庸
ルールと感情の優先度はその時次第 他人の都合と自分の利益の優先度はその時次第 何事にも柔軟で臨機応変だが、信念に欠ける |
ヤレカはあなたの従者だ。
ルワ・ザンガラにおける身分の事ではなく、神から贈られた転生特典としての従者である。
こう見えて彼女はヒトではなく、ヒトを模して作られた存在であるらしい。前世のフィクションでいうならオートマタ、あるいはアンドロイドが近いという。感情は普通の人間同様という事を鑑みれば、ホムンクルスあたりの方がより正確かも知れない。
当然、人の胎から生まれてもいない。ヤレカは赤子の時分に海岸に打ち捨てられているところをメナに拾われてきたが、親に捨てられたわけではなく、メナが通りかかる直前にそこに「発生」したのだと、ヤレカ自身がいつだったかあなたに教えてくれていた。
そして、転生特典の従者という事は、相当な戦闘能力をもつという事を意味する。
「ん……どうかした?」
改めてその点を思い、あなたは掴まえたヤレカの手を見る。筋肉がついているとも見えない、ぷにぷにとした子供の手だ。戦える者のそれとは、まじまじ見ても全く思えない。
が、あなたは実際その目で見て知っている。そこらの道端で拾った石を少々削り尖らせた粗末な武器を投擲しただけで、海から上がって休んでいた海獣の頭蓋を貫通せしめて一撃で仕留めてみせた、異世界基準で考えても常識はずれの技量をだ。
何よりあなたの背筋を震わせたのは、それだけの威力をもった投擲を、ヤレカから目を離していなかったのに一切知覚できなかった点だ。事前にこれから石を投げると言われていなければ、目の前で倒れた海獣の死因を全く理解できなかっただろう。海獣の死に気づけたかどうかすらも怪しい。
やろうと思えば、ルワ・ザンガラ中の人間を一晩かからず、かつ誰にも知られずに殺し尽くす程度はいつでもできる。自身の能力のデモンストレーションをそんな言葉で締めくくってみせた姿はあなたの記憶にもしっかりと刻まれていた。
| ランダム分岐/従者の技能 |
| 1から順に 剣士、槍兵、弓兵、騎兵、魔術士、暗殺者、狂戦士
1d7=6 暗殺者
諜報と暗殺を得意とする従者 身軽で、気配を気取られず、行動の痕跡を残さない 主の敵を察知し確実に処分する事を第一義とする 正面からの戦いはやや苦手 |
| ランダム分岐/従者の強さ |
| 1に近いほど控えめ 10に近いほどヤバめ
1d10=10
人類の最高到達点 人間としては疑いようもなく世界最強 |
「ふふ。もしかして、かまってくれるの?」
記憶を辿って畏怖に襲われているあなたへと、ヤレカはまたふんわりと笑った。あなたが掴まえていた側だったはずの拘束はいつの間にか解かれ、逆にヤレカがあなたの掌を捕まえている。
逃げる事は当然のように叶わない。ヤレカの手は蛇めいてするりと動き、指の一本一本をあなたの指と絡め合わせた。
それが彼女にとっては心地良いのだろうか。ヤレカはさらに嬉しそうに笑みを深めて、子供には到底似つかわしくない温度の吐息を、はぁ、とこぼしている。
| ランダム分岐/従者の初期感情 |
| 1から順に 忠誠、友情、愛情、盲信
1d4=3 愛情 |
これは、昔からのヤレカの悪癖だった。
ヤレカはあなたから見て、どう考えても
ほんのわずかな隙を見つける度にこうしてひっついてくるのがヤレカの日常だ。それでいて大人達の目には無邪気な子供のたわむれとしか映らないように上手く偽装しているのだから大したもの。技能の無駄遣いとも言う。
幸いなのは、ヤレカはあなたの指示や命令に逆らわないという事だろう。
「……あ。首飾り、ちょっと曲がってるよ?」
ヤレカは今度はあなたの首飾りの状態を直し、そのついでとばかりにあなたの首筋に指を這わせて恍惚に浸っている。あなたと同等程度に整った容貌は、今や蕩けるようですらあった。
そんな状態でも、あなたが一声発すればヤレカは手を引っ込めるだろう。多少強く言えば、今後はこのようなスキンシップをやめさせる事も出来る。
| ①こちらからもスキンシップを返す |
| ヤレカの感情をとても嬉しく感じている ヤレカを積極的に受け入れる |
| ②身だしなみを整えてくれた礼を伝える |
| まんざらでもない ヤレカを消極的に受け入れる |
| ③何も言わない |
| ヤレカの扱いを決めかねている ヤレカを否定も肯定もしない |
| ④過剰なスキンシップをたしなめる |
| ヤレカの感情をやや重いと感じている ヤレカの感情を恋慕以外に変更しようと試みる |
| ⑤過剰なスキンシップを強く咎める |
| ヤレカの感情に忌避感がある ヤレカの感情変更を強く推し進める |
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対ヤレカの反応
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こちらからもスキンシップを返す
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身だしなみを整えてくれた礼を伝える
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何も言わない
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過剰なスキンシップをたしなめる
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過剰なスキンシップを強く咎める