一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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青年期編 育成方針選択
一般的な異世界転生 青年期編 1


 

 

「いけぇカジカ! お前ならやれるッ!!」

 

「やっちまえクルベッ! これ以上イシャバにデケェ面させんなっ!」

 

 崖に張り付く街ルワ・ザンガラの地理的な最下層。いつかのブージェとの戦いの後に宴が行われたのと同じ海辺の広場に怒号が響いていた。

 

 声をからし喉を潰さんばかりの大音声はひとつふたつではない。広場を円状に囲う群衆の誰もがその口を限界まで開き、それぞれがこの男ならばと見込んだ者の名を叫ぶ。

 

 

 

 そしてその中央では。

 

「そろそろ隠居させてやるよ! 代替わりの時間だオラァ!」

 

 男達が拳を振るいあっていた。

 

 戦う者は皆、ルワ・ザンガラでも指折りの猛者たちだ。全身を実用性一点張りの筋肉で包み、重厚でありながらもネコ科の猛獣めいた俊敏さを両立させた身のこなしで襲いかかる。

 

 標的はただひとり。

 

「ハッ、その程度でかぁ!?」

 

 わずかひとつの口で、挑戦者と群衆の声を塗り潰す咆哮を上げるイシャバである。

 

 

 

 どっしりと中央で構えるイシャバへと、真正面から男が突撃する。

 

 たった1歩で爆発的に加速し、2歩目でさらに速度を倍増しにして、3歩目の足先で掴んだ地面を基点に全身の重量を完璧に乗せ切った拳。並の戦士ならば守りに使った部位を骨ごと砕くようなその一撃は、しかし。

 

「ぬぅんっ!」

 

 腕が伸ばされきって威力が最大化する前に、逆に迎え撃ったイシャバの額により叩き返された。

 

「がっ……!」

 

 男が呻く。

 

 彼の拳は衝撃のあまりに皮膚が裂け、血が飛び散った。おそらくは指の骨にも少なくないダメージがあるだろう。ともすれば折れていてもなんらおかしくはない。

 

 そして、痛みによって生まれた隙をイシャバは当然逃さない。

 

 すかさず伸ばされたイシャバの腕は男の首を容赦なく鷲掴みにした。詰みを察した男はそれでもわずかな希望を求めて腕へと打撃を繰り返すが、丸太のような剛腕に対して苦し紛れの攻撃は何の痛痒も与えられない。

 

 高々と持ち上げられた男の体は、観衆に見せつけるように一瞬の停滞を経た後、豪快に石の地面へと叩きつけられた。

 

 当然、ひとたまりもない。男は声を漏らす事も出来ずに意識を飛ばされ、グッタリと横たわるのみ。その周囲には同じく気絶して倒れた者が並んでいた。これで本日7人目の敗退者である。

 

「ふぅぅ……さあ来いよ、次だ。まさか怖気ちゃおらんだろうな?」

 

 男から手を離し、悠々と立ち上がったイシャバが残る男たちをグルリと見回し挑発する。

 

 その様に群衆は歓声を一際大きくした。頭と仰ぐ者の強大さに歓喜して。あるいはそれに怯まず駆け出した次なる挑戦者の勇猛さに打ち震えて。

 

 

 

 それを、あなたももちろん見ていた。

 

 集った民の最前列。参加者の身内のみが許された立ち位置から見る戦闘は大迫力そのものだ。拳が着弾する衝撃に震える大気すら感じ取れるほどで、一撃が交わされるごとにあなたの心を熱くする。

 

「あんたたち、もっと声出しな! イシャバの背中はアタシらが支えんだよ!」

 

 そうメナ()に言われるまでもなく、あなたとその家族は声を振り絞り自慢の父を応援していた。

 

 

 

 さて、この騒ぎが何かと言えば。

 

 ルワ・ザンガラの8つの時節のうちのひとつ、ニニルの季を彩る数多の祭りの中で最も野蛮かつ、最も人々を熱狂させるとある祭りのメインイベントであった。

 

 漁師の頭領と言えば、ルワ・ザンガラにおいては最強の戦士を意味する。人々の命を繋ぐ魚を最も多く獲り、漁場を脅かす海獣や魔物の侵略に対し最も堅固な壁として立ちはだかる者だ。

 

 必然、その立場は世襲などでは得られない。

 

 単純に漁師たちが集い、こうして殴り合う事で序列を決するのがこの街のならいであった。

 

 勝者は頭領に。敗者のうち、上位の数名は頭領を補佐する副頭領に。そういう決まりとなっている。

 

 正確には人格や他者を率いるカリスマ性、外敵をより効率的に排除するための頭の出来も求められはするが、それらは強さが同格の場合の判断材料でしかない。頭領に必要な第一の要素、最優先のそれは腕っぷしだ。

 

 

 

「次はお前かルアン! ちょっと前まではルエンの陰に隠れてた半人前が随分とデカくなったもんだ!」

 

「アンタに本気で勝つ気がねぇ兄貴なんざに家の頭張らせてらんなくてヨォ……! ブッ潰しダラァ!!」

 

「その意気や良しッ!!」

 

 さらにひとりを沈めたイシャバへと、次なる男が躍り掛かる。

 

 参加する者は、原則的に各漁師の家からひとりずつだ。そのために通常は家の大黒柱たる父親か長男が出場する事になるのだが、この男は例外だったらしい。

 

 その背中を、顔面を酷く腫らした別の男、本来なら戦場に立っていたはずの長男が忌々しげに睨んでいる。前哨戦として家庭内で何が行われたかは、その傷跡が明白に物語っていた。

 

「ルアンてめえ、出たからには簡単に負けたらブッ殺すぞ!」

 

 それでも一応は声援を送っているあたり、兄弟仲はそう悪くはなさそうだ。

 

 おかげかどうかはわからないが、ルアンという男はイシャバに一撃を入れた後に反撃を耐え、さらにもう二発をイシャバの頬に叩き込むことに成功した。オマケに、剛腕から繰り出されたラリアットで地面に倒されてからも脚にしがみつき噛み付いてまで戦おうとする凄まじい執念を見せる。

 

 最終的にはイシャバの巨体の重さを丸々乗せた膝によって潰されはしたものの、ここまでで最大の戦果を見せたその勇姿は観衆の誰もに讃えられるだけの見事さであった。

 

 

 

 そんな戦場を興奮と共に眺めながら、あなたは心の隅で安堵する。

 

 女であるあなたには、ここに参加する義務は当然ない。権利もだ。もし男であったなら、成人を迎える翌年には代替わりのためにイシャバに挑まねばならなかっただろう。

 

 ひとつの家からはひとりの参加者。それが原則ではあるが、例外として現頭領の実子は参加を許される。

 

 ……というより、ほぼ強制される。

 

 正当な理由なく参加を拒否すれば漁師の恥晒し、戦士として認められぬ見下げた臆病者と認定され、後ろ指をさされて爪弾きにされる事となる。

 

 そして、頭領の子でありながら父に勝てず他の家に頭領の座を奪われる事にでもなれば、それもまた情けない男と恥を受ける事となる。恥をすすぐには頭領の座を奪い返すか、副頭領として認められるだけの意地を見せるか、あるいは外敵との戦いで他を見返す活躍をせねばならない。

 

 苛烈な世界である。自分もここに踏み入りたかったとのん気に考えられるほど、あなたは戦いを求めても、また甘く見てもいなかった。

 

「いいぞオヤジィ! 俺が成人するまでぜってぇ負けんなッ!」

 

 実子の男が遅れて生まれたために早期に挑戦権を得られる可能性があるマランはやる気満々なようだが。

 

 

 

「わぁぁあ! 父さんつよーい!!」

 

 あとは、幼さ故に自分の立場を良く理解していない長男ガウィルも気楽に父の強さにはしゃいでいる。

 

 ガウィルがどう育つかはまだまだ未知数だが、彼の立場は相当に大変なものだ。彼が成人するまでは残りおよそ7年。それまでにイシャバが頭領の座を退いていればまだ良いが、そうでなかったのならもう引退すべき年齢のイシャバに対して必勝を強いられるだろう。

 

 衰えた父を超えてみせ安堵を与える事が、漁師の家にとっては最大の親孝行とされる。逆に、いつまでも引退させてやれなければ親不孝者だ。

 

 あなたが生まれる以前より誰にも敗北する事なく君臨する、街の歴史を紐解いても片手の指が余る程度にしか例のない偉業を成し遂げている伝説的な頭領の、その長男に与えられたハードルは遥か見上げるほどに高い。

 

 

 

 そうこう考えているうちに、参加者はイシャバと最後の挑戦者を残して皆倒れた。

 

 広場は死屍累々の様相となっていたが、中央付近で気絶している何人かは各々の家族が隙を見て抱きかかえ回収していく。はじめの方で負けた者は目をさます者もおり、彼らもまた邪魔にならないようにとふらつきながら、あるいは這いながら戦場を生き残った者へと明け渡す。

 

「最後はやっぱりお前かぁ……ゴラン! もう何年目だ、えぇ!?」

 

「15年目だぜイシャバァァァ……! 今年こそは引きずり落とすッ! 負けて飲む酒の不味さをテメェに教えてやんのは俺だ!!」

 

「その毎度の口上も聞き飽きたってんだボケがぁ! いい加減テメェのガキに譲ってやれやァ!!」

 

「テメェが言うなクソァ! 何年頭領やってりゃ気が済むんだアァ!?」

 

 すなわち、長年の因縁のふたりへと。

 

 現頭領イシャバvs副頭領筆頭ゴラン。かつてはあなたの母メナを巡ってのチンケな殴り合いから始まったという彼らの対立は、女の取り合いから頭領の座の奪い合いに形を変えても未だ続き、この祭りを盛り上げる最高のスパイスとして人々を楽しませていた。

 

 ……これで、普段の漁や外敵との戦いでは最も上手く連携する組み合わせだというのだからわからないものである。

 

 

 

 そんなふたりの戦闘は、この日最も長く続いた。

 

 完全に足を止めての、互いに一歩も譲らぬ乱打戦。殴られた数と同じだけを殴り返し、拳の威力で後退させられた分を即座に踏み込み返して反撃する攻防は、極めて野蛮ながらも、どこか戯れるような色さえ見せていた。

 

 

 

 その最終的な勝利は、イシャバのものとなった。

 

 顔面どころか体の前面にびっしりと打撃痕を残されたゴランが、跪くように崩れ落ちる。もはや意識はなく、下手をすれば命すら危ういと見えるその様でなおも繰り出された最後の拳を、同じだけボロボロになりながらも未だ仁王立ちのイシャバが讃えるように掌で受け止め、終わる。

 

 見応え十分な戦士達の激突とその決着に、観衆の大歓声はこの日一番を更新したのだった。

 

 

 


 

 

 

 さて、そんな祭りの日から数日。

 

 あなたは自室で外出の準備をしていた。

 

 とはいえ、やはり衣服が少なく装飾品といえば身分証となる首飾りと、あとは髪留めがせいぜいのルワ・ザンガラではそう時間もかからない。腰巻と胸帯をしっかり結んで留めたなら、母譲りの赤髪を邪魔にならないようポニーテールの形にまとめて終わりだ。

 

 それでも一応、鏡の前で身だしなみを確認する程度は欠かさない。

 

 

分岐
容姿変動要素なし

 

あなたの容姿レベル8 → 8

体型変動要素

運動技能に成長なし

戦闘技能に成長なし

栄養状態良好

怠惰度0

 

筋肉質スレンダー → スレンダー

 

 

 地平線への恋を自覚したあの日から数年。

 

 ルワ・ザンガラにおける成人である16歳を翌年に控えて、あなたは生来の整った容貌を損なう事なく、美しく花開いていた。

 

 自身の夢を理解してからは集中的な戦闘訓練は最低限にしたために筋肉は減って、代わりに得たのは女らしい肉付きだ。それでもまだ細身の部類ではあるが、痩せているのではなく引き締まっているという評価が妥当だろう。

 

 ルワ・ザンガラの男達にとってはちょうど魅力的に映るようで、彼らの間でこっそり行われている女の容姿の順位付けではトップ争いに食い込んでいるようだと、盗み聞きしたヤレカがからかうように教えてくれたことがあった。

 

 これで家事に長けていれば漁師の嫁としては最上位の優良物件となる。引く手数多どころか、かつてのメナのように、男達による声をかける権利を巡っての殴り合いが起こってもおかしくはない。

 

 

 

 と、そこであなたは鏡の前を離れ、部屋を出た。

 

 今の時節、ニニルの季のニニルとは、祭りを意味する言葉だ。ニニルの季はマス()の季に次いで訪れる時節であり、豊漁続きで溜め込まれた保存食で食い繋ぎながら各種の祭事がわずかな期間をあけて繰り返されることとなる。

 

 祭りには漁師たちも率先して参加するため、漁に出る頻度が最も落ちる時期でもある。

 

 先日の殴り合いはだからこそ今の時期に行われているわけだ。各家庭の代表者をケガ人だらけにする行事を、まさか豊漁の季節や、ブージェが跋扈する季節に実行できるはずもない。

 

 そういうわけで、男衆だけでなく女衆も随分と暇が出来る。

 

 あなたに与えられた余暇も1年で最大のもので、これを利用してあなたは今日は誰かとゆっくり過ごす予定である。

 

 

 

 相手は、ここ数年を特に親しく過ごした者だ。

 

 その誰かの顔を、軽い足取りで歩みながらあなたは脳裏に描く。

 

 

 

特殊成長イベント

少年期と青年期の間の数年分の成長獲得

対象との信頼関係や好感度にもプラス

 

 

 

ヤレカ

数年間を主にヤレカとふたりきりで過ごした。

 

諜報技能が成長

運動技能が成長

 

家族

イシャバやメナ、弟妹、女衆と長く過ごした。

 

家事技能が成長

魔法技能が成長

 

男衆

独り立ちしたランバやルワンジと親しく過ごした。

 

加工技能が成長

鑑定技能が成長

 

マイア

領主の娘マイアと親しく過ごした。

 

教養技能が成長

社交技能が成長

 

ガド

冒険者組合の長ガドと親しく過ごした。

 

探索技能が成長

戦闘技能が成長

 






現在のあなた
性格/混沌・中庸
良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う
所持金/2
面倒見+1
知識欲+3
戦闘意欲+1
好奇心+2
勤勉さ+2
運動技能レベル3
教養技能レベル5
社交技能レベル8
戦闘技能レベル4
魔法技能レベル5
鑑定技能レベル5
家事技能レベル1
加工技能レベル1



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