一般通過異世界転生者:あなた 作:ID:Am88n712
あなたは自室を出て、中庭をグルリと囲う回廊を歩く。
| ランダム分岐/技能成長 |
| 諜報技能 1から順に 普通に、中々、中々、かなり、かなり、かなり、 すごく、すごく、ものすごく成長する
1d9=4
かなり成長する(+5) |
| ランダム分岐/技能成長 |
| 運動技能 1から順に 普通に、中々、中々、かなり、かなり、かなり、 すごく、すごく、ものすごく成長する
1d9=9
ものすごく成長する(+7) |
その足音は無い。この数年間、ヤレカと共に過ごした中で鍛えられた技能の賜物であった。
いずれ街を出て道の先を目指そうと決めたあなたは、そのために磨くべきものとして、ヤレカの持つ優れた諜報能力に目をつけた。人の営みの中に滑り込んで溶け込み、己に疑心や敵意を向けさせない力はきっとあなたの旅の助けになるだろう。
この無音無気配の歩法もその一環だ。
人々の間に潜むためにはまず、何より情報が必要となる。ひとつの集団が何を精神的な支柱としているのかを知り同調、もしくは尊重することが潜入の第一歩、というのがあなたの師として振る舞うヤレカの言葉だった。
そして、そういった情報を得るには直接聞き出すよりも盗み聞いてしまった方が効率が良く、効果も高い場面が多いという。もちろん露見しない事を前提としてだが。
師としてはキッチリと甘くない指導を行うヤレカの元、あなたの体には徹底して動作が叩き込まれている。神の恩寵そのものたるヤレカのそれと比べてしまうとお粗末なものに映るが、無警戒の相手に気取られる恐れは無い程度にはあなたは鍛えられていた。
なので。
| ランダム分岐/盗み聞き |
諜報技能で判定
あなたの諜報技能 レベル5 情報セキュリティ レベル0 成功率100% |
「──アンタにもそろそろ相手を見つけてやらなきゃね」
屋敷の広間から漏れ聞こえてきたそんな声には自然と耳を傾け、かつ気配を悟られないようにさらに一段空気に溶け込むのはもはや習性として身についている。
「それとも自分で選ぶかい? 好きな女がいるならちゃんと言っときな」
どうやらそれはあなたの母、メナの声だ。
「好きな相手かー……うーん……」
対する話し相手はあなたの義弟、マランのようだ。
内容はマランの将来の嫁に関するものだろう。あなたの1歳下であるマランは2年後に成年を迎える。この街では成人と同時に婚姻を結ぶというケースは良くあり、その2年前の今はそれに向けて交際を重ねておくには良い時期だ。
その相手を本人が見つけない場合、ちょうど良さそうな相手を見繕うのは大体が母親の役目となる。家と家の間にある女同士の繋がりを通して、彼女らは年頃の男女の情報をたっぷりと共有しているのだ。
「アンタ、結構人気あるんだよ。今こんだけ動けるなら将来有望だってね。変な遊びにも熱上げてないし、いっそよりどりみどりだ」
中でも有力株とされているのは何を隠そうマランである。
仕事には非常に厳しいイシャバの養子であり、ランバやルワンジといった屋敷の若手が独り立ちしていった穴を埋めるだけの働きを見せているために実績もある。その上で見目も悪くなく、おかしな性格もしていない。
漁師の家が娘の婿にと考えるには理想的と言って良い。実際、イシャバやメナに、うちの娘にマランをくれないかという交渉が持ちかけられている場面はあなたも何度か目にしていた。
「サビラなんかどうさ。ちょいと歳は下だけど良い子だよ。家の手伝いに熱心だし、風邪のひとつもひいたことがないくらいに丈夫な子だ。ありゃ良い嫁になるよ」
「あ、うん、良い子だよな。明るくて元気だし、俺もああいう子結構好き」
「なら話通しておいてやろうか?」
「……うーん……」
が、どうにも本人は乗り気でないらしい。
何事にも積極的に乗り込んでいくマランの性格からすると珍しい事だ。あるいは色恋沙汰が絡むと奥手になるタイプなのだろうかと、壁に張り付きながらあなたは思案する。
と、そこへ。
「…………姉さんとか、どうかな?」
何やらあなたを巻き込む一言がマランから発された。
マランにそんな素振りはなかったはずだが、と首をかしげるあなたへと、続いて声が届く。
「…………アンタ、本気かい?」
マランの正気を疑うメナの声だ。
その声色に含まれているのは、義理の姉を嫁に求めることに対する忌避感、ではない。ルワ・ザンガラにおいては、血が繋がっていないならば兄弟での婚姻はそう珍しくもない。それどころか息子の嫁候補として幼い女の子を養子に迎え、自身の手で教育を行う親も居るほどだ。
なので、メナが問い詰めたのはそこではない。
「あの子はその、嫁にするにはあんまり向かないと思うけどねぇ……」
単純に、漁師の嫁としてのあなたの資質を憂いての言葉だ。
漁師の嫁として求められる能力は、まず第一に健康な子供を産む事と、そして家事の技能だ。夫や子のために美味い飯を作り、夫が漁以外の雑事にかかずらう事のないよう家庭内を快適に保つ事こそが妻の役割とされる。
これが、あなたには致命的に欠けていた。全く出来ないわけではないが、口が裂けても得意とは言えない。むしろハッキリと、同じ年頃の同性と比べれば大きく劣っている。
将来の子作りに備えての魔法を使わない家事の練習ともなるとさらに顕著で、メナをはじめとした女衆は頭を悩ませているようだった。
外見は目を見張るほどで、人当たりも良い。が、婚姻の相手としては問題外。かといって遊びで付き合うには親のイシャバが恐ろしすぎる。
街におけるあなたの評価はそんなところで、年頃の男たちからは少々距離を置かれている。親しく付き合っては婚約者から嫉妬されるかも知れないため、遠目から鑑賞するのがちょうどいい、なんてあたりだろう。
一言で言うと……あなたは残念な美少女と見なされていた。
そんな中であなたを嫁にと言ってみせたマランは中々に異端と言えるが、その理由には心当たりがあった。
それはメナも同じであるらしく、嗜めるようにマランへ語りかける。
「イシャバに挑みたいからってそう考えてるならやめときな。そりゃ流石にあの子をバカにしすぎだし、アンタもそのうち後悔するよ」
先日行われた、頭領の代替わりの儀への参加権を求めて。そういう事ならばマランの言も納得がいく。
あの儀式に参加する方法はふたつある。
ひとつは、漁師の家の代表となること。こちらが正攻法だ。マランの場合は成人して独り立ちし、自身で家を興すかどこかの家に婿入りし、漁師として一人前と認められる働きを見せる必要がある。
当然、時間のかかる手だ。自分で新たな家を作るには稼ぎの面で人一倍優れていなければならず、婿入りならば義父となる者を超えてみせねばならない。一夕一朝にとはいかないだろう。
対してもうひとつの手は時間がかからない。
ひとつの家からはひとりの参加者、というのが原則だが、例外として現頭領の子は参加を許される。だが、長男のガウィルはまだ幼いため、この権利は宙に浮いていた。
それを、あなたとの婚姻によって手に入れてしまう、という手段だ。
実子から立場を奪う事になるためにあまり行儀の良い事ではなく、場合によっては白眼視されかねない行いだが、マランとガウィルの年齢差を考えればそこまで後ろ指をさされることでもない。
むしろ、ガウィルが育つまでの間に他の家に頭領の座を奪われないためと受け取る者の方がおそらく多い。挑まねばならないイシャバの強大さも含めて、評価を上げる可能性の方が遥かに高いだろう。
「わかってるよ。言ってみただけ」
が、どうやら本気というわけでもなさそうだ。
少々残念そうではあるがマランは冗談だと発言を撤回し、メナの勧めた相手との交際を前向きに検討し始める。単に偉大な養父と戦いたい気持ちの発露であったようで、あなたもホッと胸を撫で下ろすところだ。
そもそもとしてあなた達の間に家族以上の感情はなく、マランもあなたを参加券扱いして罪悪感を抱かないような人格ではなく、また薄い関係でもない。
「じゃあサビラの親に話しとくよ。いいね?」
「いや、俺が自分でやるよ。嫁のひとりくらい自分で捕まえられないと情けないだろ、男として」
「ハ、ずいぶん言うようになったもんだね。ならいいよ、やってみな。言ったからには他の男にかっさらわれるようなヘマすんじゃないよ」
終わりかけの話を背に、あなたは歩みを再開する。
それはやはり音を立てず、あなたの存在は誰にも気付かれる事はなかった。
家の玄関から外出し、街を歩むあなたに声をかけた者はいくらか居た。
主となるのはあなたと同じく漁師の家の、年頃の娘たちだ。家のため、そして色恋を求める自身の感情のため、彼女らは彼女らで懸命に鞘当てや牽制に励む日々である。家事に劣るとはいえ見目に優れ、その気になれば体と言葉で比較的簡単に男を籠絡できるだろうあなたの動向が気になっている少女は多い。
とはいえ、険悪な関係というわけでもない。
あなたはあまり男に興味がなさそうだ、というのはこれまでのあなたを観察していれば誰にもわかることで、一部の猜疑心が強い者を除けば警戒は強いものではない。あくまであなたに想い人ができていないかの確認程度のものだろう。
むしろ、男を取り合う心配のない安心して付き合える相手として見られていそうな気配もある。
現に、今もあなたの隣に立って雑談を持ちかけてきた少女は何やらもじもじと相談事がありそうな様子だった。上気した顔色から察するに、意中の男との関係が良好に進み、さらにもう一歩踏み入るために背中を押してくれる誰かを求めているというところだろう。
あなたは以前にこの少女から聞かされた惚気話を思い出し、すっかり暗記させられてしまった相手の男のプロフィールを脳裏に並べながら彼女を励ました。
こんなに可愛らしいのだから、相手にもきっと良く思ってもらえる。美しいと感じている相手であるあなたからそう太鼓判を押され自信を湧き立たせたらしい少女は明るい顔であなたに感謝し、手を振って去っていく。
それを見送って、あなたもまた目的地へと足を進めた。
そうして到着したのは、とある廃屋だった。幼い頃にあなたがヤレカと共に鍛錬を行った、あの家である。
鍛錬の中であなたが残した血の滲む足跡を原因とした怪談はすっかり街に染み付いてしまった。何年も経った今では噂に尾ヒレどころか背ビレに腹ビレもつき、あまりの縁起の悪さから新しく住まう者も訪れる者も居ない。
ルワ・ザンガラの家屋が前世のようにキッチリ管理されるものではなく、頭を抱える不動産業者のような者が出なかったのは幸いだ。おかげであなたは罪悪感に苛まれる事もなく、ここを便利に扱えている。
つまり、ヤレカと完全にふたりきりで時間を過ごすためにだ。
「だーれだ♪」
と、突然にあなたの両目が背後から塞がれる。
事前に気配は全くなかった。足音は当然として、諜報の嗜みとして教えられた空気の流れを感じ取る感覚にも一切の違和感がない。
にもかかわらずあなたの背後を取るような相手はそうそう居るものではなく、そもそもとして行動と声で正体は丸わかりだ。どう考えてもヤレカである。
だが、あなたは答える事なくとぼけてみせた。
さて誰だろう。良くわからないからもっとヒントが欲しい。
笑いを含ませた声でそう言えば、ヤレカもまたクスクスと笑みをこぼした。
「えー? じゃあこれならわかる?」
そして、背後からあなたにピッタリと密着する。ルワ・ザンガラの薄着文化のおかげで素肌同士が触れ合い、その柔らかさと滑らかさをあなたに伝える。ヤレカの低い体温もあいまってそれはなんとも心地良く、あなたは自分からも体重を預けて堪能した。
| 分岐 |
互いの好感度が極めて高い |
「ふふ、まだわからない? ならこれはどうかなー」
さらに、ヤレカの手があなたのお腹に回される。キュッと抱きすくめる形の腕に体が引き寄せられ、あなたの首元に小さく柔らかい接触が行われる。
思わず吐息の漏れるような優しいそれは、ヤレカの唇だった。こうして甘やかすように首元や頬、額にキスを落とすのは最近のヤレカのお気に入りで、あなたはヤレカを甘やかすためにそれを受け入れていた。
……というのは建前で、あなた自身もこういった触れ合いに喜びを見出しているところは大きい。
その証拠に、自身を抱き締めるヤレカの手に、あなたは無意識に自身の手を重ねていた。ゆるゆると動いた指がヤレカのそれに近付き、睦み合うように絡む。可能な限りに接触面積を増やそうとする行動は、あなたの心をあからさまに表現していた。
| 分岐 |
あなたの健全度が高い |
ただ、そんなひと時はあなたの小さな悲鳴と共に終わりになる。
優しいキスではなく、どこか欲望を感じさせる、ギリギリ跡が残らないだけの強い啄みのためだ。あなたの体が驚きに跳ね、ヤレカとの間にわずかな距離が生まれる。
そんなあなたの様に、ヤレカはさらに笑いを深めた。
「意地悪な子にはお仕置きー♪」
誰だかわからないととぼけたあなたと、ウブなあなたへと性的な接触をしてみせたヤレカ。どちらが意地悪なのかと抗議したいところではあろうが、高鳴った心臓を落ち着けさせるのに必死なあなたにはそれを実行にうつすだけの余力がない。
その隙をつき、ヤレカはさらにあなたを攻撃する。
脇腹をくすぐり、うなじに息を吹きかけ。
「じゃあ大ヒントね。あなたが一番大好きで、あなたの事を世界で一番愛してる、あなたがずーっと一緒に居たいと思ってる相手は誰でしょう?」
そんな甘い囁きまで耳の中に垂らしてくる。
からかいと本気が1:9の割合で混じったヤレカの求愛に対し、なんとか発声能力を取り戻して正しい答えが返せるまでの数十秒。他者を籠絡する技術においておそらくこの世の誰にも勝るヤレカの手で、あなたは散々にもてあそばれたのだった。
そんな戯れの後、あなたは壁に背中を預けてのんびりと座り込んだ。
対してヤレカはどうしているかと言うと、あなたの脚の間に腰を下ろしてあなたに寄りかかる形である。あなたよりもやや背の低いヤレカは座ってもやはり同様で、あなたの肩口に頭を乗せてマーキングでもするようにスリスリと髪と頬を擦り付けている。
邪魔にならないようにとそれなりの長さで切り揃えているあなたの髪と異なり、ヤレカの髪は子供の頃から長いままだ。必然的にあなたの肌をヤレカの髪が這い、くすぐったさを生む。
だがサラサラとした手触りのそれは、今世においてあなたの最も好きな感触のひとつでもある。間近からフワリと感じられる、ヤレカがまとうほのかに甘い香りもあいまって、あなたにとっては癒しのひと時であった。
さらに、逆にあなたも積極的にヤレカに触れる。
先程後ろから抱きすくめられたのとはちょうど逆だ。あなたの腕はヤレカを離すまいと彼女の腹と腰に回され、程よく引き締まったそこを愛おしげに撫でる。
ヤレカが求めて、あなたが受け入れ、あなたが求めて、ヤレカが受け入れる。互いに互いが必要なのだと無言で語り合う時間は、この上ない幸福に満ちてあなたを蕩けさせた。
それはまるで恋人同士のようであり。
| 分岐 |
あなたの前世が男 or アライメントが混沌 あなたに交際相手がいない ヤレカに対する好感度のみが突出して高い |
そして実際、まるでではなくあなた達は恋人そのものであった。
もちろん、秘密の、と枕言葉はつくが。男女の役割と地位が明確に別れているルワ・ザンガラでは同性愛など許容される余地はない。他の誰かにあなた達の関係が知られれば、いかに優しい両親とてすぐさまふたりを引き離しにかかるだろう。
とはいえ、その心配はそう大きくなかった。
そういった面でのヤレカの偽装はほとんど完璧と言って良い。人の目がある時はあくまで仲の良い姉妹の域を出ない振る舞いに留め、そして周囲に誰かが居るかどうかの見極めはヤレカの専門分野だ。
実際、家族の中であなた達に妙な疑いをかけている者は居ない。
「んー♪」
そうして普段は離れているからこそ、こういったふたりきりの場面ではここぞとばかりにヤレカは甘い。
あなたに熱烈に求められていることが嬉しいのか、ヤレカは目を細めてあなたを見上げた後、そっと目を閉じた。前世で恋愛経験が全くなかったあなたとて、それが何を求める仕草かは当然わかる。
この廃屋にて、あるいは家族が寝静まった自室の寝台にて、もうすでに何度も繰り返しているのに未だ慣れない鼓動の高鳴りに身を任せるまま、あなたはそっとヤレカの唇に自身のそれを重ねた。
ほんの軽く、触れ合うだけのキス。
接触はたった数秒で終わるが、あなた達にはそれで十分だった。あなたもヤレカも、現状では肉体的な欲よりも精神的な充足を求める傾向が強い。掌にちょうど収まるサイズに育っているヤレカの胸や、しなやかな脚の内腿に手を這わせるよりも、手を握って指を絡ませ合う方があなた達にとっては好ましい。
「ふふ。幸せだね」
それは、満足に頬と目元をフニャフニャに緩ませてポワポワ微笑むヤレカの姿を見ても明らかだ。
もちろん、あなたも溺れるような幸福感に浸っている。
依存してしまっているな、と自覚がある程度にはあなたはヤレカを必要としていた。
あなたは普段、自分というものを表に出し切る事が出来ていない。家族から求められる役割と自身の夢の齟齬、街を出たいという願いと家族を悲しませたくない気持ちのギャップがあなたに演技を強制している。
中々上達しない家事の技術もあなたのストレス源だ。
あなたは別に不真面目に家事の指導から逃げているわけではない。単に適性がないのか、それとも女の仕事を覚えて嫁入りに近付く事を無意識に忌避しているのか、真面目に取り組んでいるにもかかわらず身につかないだけだ。
なまじあなたが勤勉に取り組むものだから母も女衆も頭ごなしに叱る事が出来ず、見放す選択肢も取れない。彼女らには申し訳なさがつのるばかりである。
だからこそ、自分の全てを無条件に肯定してくれる、何ひとつ隠す必要のないヤレカからあなたは離れられない。
はじめのうちは「自分を受け入れない選択肢を機能として持てないヤレカとこういう関係になるのは人形遊びのようなものではないのか」と囁くあなた自身が居た事も確かだが、蜜月の日々のうちにやがて溶け消えた。
現実に生きているヤレカを人形呼ばわりする事も失礼なら、あなたの希望によってあなたを愛し守るために生まれ落ちたヤレカを前世から引きずった倫理観で遠ざける事も不義理である。
もっとも、そんな理屈よりもヤレカと囁き合う愛の甘ったるさに中毒に陥ってしまったという面の方が遥かに大きいが。
さて、そんな恋人同士の時間はやがて終わる。
地平線への恋と、ヤレカとの愛。あなたが街にとどまれない理由はふたつになり、少年期よりも重みを増していた。
旅立ちがどうしても無理なら親の言うままに嫁入りする、などという選択肢を数年前のあなたは検討出来たが、今では考える事すら嫌だと思考の外に追いやっている。
ヤレカ以外の相手は(少なくとも今のあなたにとっては)断固お断りであるし、ましてヤレカが他所の男の元に嫁に出されるような事態に至っては想像するだけで胸が張り裂ける思いである。
悲鳴を上げる独占欲を鎮めるため、しばらくの間力いっぱいヤレカを抱き締めておかねばならなくなるほどだ。これと同じ想いをヤレカにさせてしまうかも知れない自身の嫁入りと合わせて、もはや絶対に候補にすら上がらない選択肢となっている。
よって、あなたはより強固に街を離れる準備に力を入れていた。
廃屋での逢瀬はそのための対策を行う、主人と従者の会議の場でもあるのだ。
「やっぱりね、普通に家事で恩返しは向いてないと思うよ?」
そんな会議での最初のヤレカの発言はしごく妥当なものだった。
あなたが街を離れるにあたっての最大の障害は、単純に家出をしてしまえばとんでもない親不孝になるという点だ。あなたと家族の仲はそれなり以上に良好で、ルワ・ザンガラの子供としては何不自由なく育ててもらったという自覚がたっぷりとある。
後ろ足で砂をひっかけて逃げる事は、出来る限りあなたはしたくはなかった。過去にガドから聞かされた叔父、シャディルの最期を思い返せばなおさらに。
なので街に居る間に少しでも恩を返そうとここしばらくは家の手伝いを熱心にやってはみたものの、貢献出来ているとは到底言い難い。
「現代知識もあんまり役に立たなかったしねー」
他には前世の知識を用いた貢献も試してはみたが、こちらも微妙な成果しか上がっていない。
日本にあった生活を楽にする技術や機械の存在と概要は覚えているものの、一般的な学生でしかなかったあなたはその詳細までは深く知らない。
うろ覚えの知識で再現を試みても、物品の加工技術に関してはあなたはど素人だ。その上資源に乏しいこの街では素材の調達も難しく、結局ガラクタをいじり回してガラクタを作ったという無駄な時間を過ごして項垂れたものである。
また、簡単に再現がかなう物に関しては、簡単さ故にそもそもすでに街に存在していたりした。
例としては水の蒸発を利用した気化熱クーラーだ。
水が蒸発する際に周囲の温度を下げる現象を利用したそれは、各所の窓にぶら下がる紐と石で作られたすだれが該当する。素材に使われる石は水を良く吸うもので、少し水に沈めた後に窓に吊るしておけば、数時間ほどは吹き込む風の温度を数度下げてくれるのだ。
これ以上を求めるならそれこそ扇風機レベルの物を作らねばならず、あなたのアイデアと技術では実現性は皆無と言って良い。そもそも過度に暑い日はさほど多くないために、すだれ以上の冷房が必要となる機会自体が無いというのもあった。
戦いを楽にする武器の改良についてはさらに絶望感があふれる。魔法によりライフルめいた威力で槍を放つ者達に、一体これ以上何を渡せば良いというのか。
後の案と言えば、あなたの能力から考えれば人当たりの良さを生かした周囲との交流と、それによる家族の評判の向上だが……これは可能ではあるだろうが、やったところで意味がない。
何しろイシャバの名声はすでに極まっていると言って良い。本人が100点を取った後に、あなたがその働きで105点にしたところで、胸を張って貢献したぞと言えるものでもないだろう。
イシャバの妻として高く評価されているメナも同様であるし、道を踏み外さず育っている弟妹もあなたが何をしなくとも嫁入りや婿入りに困らない子供達である。
この線も薄いと言わざるを得ない。
ということで、あなたは諦めた。
街を出る事を、ではもちろんない。家族に対しての直接的な恩返しを、である。
ではどうすべきかというのは。
| 分岐 |
マイアの好感度が低くない マイアの演技を見抜いている マイアの懐柔策を見抜いている マイアが主導する改革の情報を得ている |
すでにあなたの手の中にあった。
あなたはとうに知っている。街の領主、その娘であなたの友人でもあるマイアはルワ・ザンガラに新たな風を吹き込もうとしているようだ。
それは学校の運営や、農作物増産の取り組みから見ても明らかである。彼女の支援を行う事が叶い、人々の暮らしやすさを向上させる事が出来たなら、街全体に対する貢献として間接的に家族への恩返しを行えるだろう。
改革が逆に街に悪影響を及ぼす可能性についてはおそらく高くない。
マイアが自身の家の歴史、ひいてはルワ・ザンガラ全体に対する深い愛着を持っているのはあなたもすでに知るところだ。それを自ら破壊しようとするとは思えず、変化には衝撃を減らす工夫が凝らされるはずである。
それは、あなたが最近得た新しい情報からも示されていた。
以前からあなたに対して行われていた妙な懐柔策の理由が、砦にこっそり侵入して盗み聞きを繰り返したヤレカによって判明したのである。
いわく、街の上層からはマイアが、下層からはあなたが、それぞれ働きかける事で民衆の反発を避けるという策のようだ。
街の外で会った農婦の言を顧みるまでもなく、急激な変化を良しとする風潮はこの街にはあまり無い。いかに領主の娘とはいえ、マイアひとりではただただ人々の反感を買うばかりだろう。
だがそこに、あなたの口添えがあればどうか。
最強の戦士にして伝説的な頭領として君臨するイシャバ。彼を父に持つあなたがマイアに協力しているならば、新たな風に異を唱える者は幾らか数を減らすだろう。
少なくとも、マイアひとりで戦うよりも有利に事を運べそうではある。理想的な事を言えば、あなたを通してイシャバまで味方につけられたなら盤石だ。
そういった目的でマイアはあなたに接近してきていたらしい。
これはマイアが民との過度の衝突を避け、変化を出来るだけ柔らかな物にしようと考えている証左と取って良いのではないだろうか。
あなたにとっても都合の良い話だ。互いの利害は一致している。
ヤレカが言うには数年間の付き合いを通して向こうもあなたがルールやしきたりに反した行いに抵抗が無いと確信できたらしく、本格的な動きを見せる気配があるようだ。この機に詳しく話を聞きに行くのも良いだろう。
ただ、問題としては時期の悪さがある。
今、街はいくつもの祭りが続くニニルの季を迎えている。祭りを主導する立場にある領主の砦は最繁忙期の真っ只中で、友人といえど時間を割いてもらう事は難しい。
次に会える機会となると、ふたつほどの祭りが終わった少し後、領主ではなく教会が主導するとある祭事の
それまでは他の事に取り組むほかない。
街を出た後に備えるか、それともマイアの支援に向けての準備を整えるか、あるいは単に自分のために時間を使うか。
差し当たってはどうすべきかと、あなたは思案した。
| 青年期 育成回数 |
残り 4(前半2/後半2) |
| あなたの財布の中身 |
| 所持金レベル 2 |
| 惰眠を貪る |
スヤスヤと昼寝を楽しみ、その後もダラダラ過ごす
ストレスが下がる 少し怠け者になる |
| 家業を手伝う |
家事や漁具の補修を手伝う
勤勉さが少し上がる 郷土愛が少し上がる 家事技能が成長する 加工技能が少し成長する |
| ガウィル達と遊ぶ |
弟妹の面倒を見る
面倒見の良さが上がる 運動技能が成長する 探索技能が少し成長する |
| 砦の史料展示室を訪ねる |
街の歴史を学んで過ごす マイアとは接触できない
知識欲が上がる 教養技能が成長する |
| ヤレカとイチャつく |
人目のないところでヤレカとひたすらイチャつく
ストレスが下がる 健全度がすごく下がる |
| 市場を見て歩く |
お小遣いで買い物を楽しむ
物欲が少し上がる 鑑定技能が成長する ランダムなアイテムを獲得する 獲得内容は現在の興味と技能の影響を受ける
所持金レベルが1下がる |
| 教会で奉仕活動 |
教会で奉仕活動として多少の労働を行う
信仰心が少し上がる 信仰技能が成長する 家事技能が少し成長する |
| 街の中を探検する |
安全な街中で散策を楽しむ
好奇心が少し上がる 諜報技能が成長する 探索技能がわずかに成長する |
| 街の外を探検する |
危険な街の外を散策
好奇心がすごく上がる 探索技能が成長する 戦闘技能が成長する場合がある |
| 料理の研究をする |
より美味しい食事を求めて調理実験
食欲が上がる 家事技能が成長する 鑑定技能がわずかに成長する |
| 道具の作成に挑戦する |
アイテムの強化や作成を試みる
加工技能が成長する 装備が強化される場合がある ランダムなアイテムを獲得する場合がある 獲得内容は現在の興味と技能の影響を受ける |
| ヤレカと戦闘訓練 |
人目のないところで訓練を行う
戦闘意欲が上がる 戦闘技能が成長する |
| 素潜り漁を行う |
海に潜って貝や甲殻類を集める
ストレスが少し下がる 活発になる 運動技能が成長する
所持金がわずかに増える |
| 市場でアルバイト |
街の市場で働く
郷土愛が上がる 社交技能が成長する
所持金が少し増える |
| 冒険者組合で働く |
冒険者として仕事を受ける
好奇心が上がる ランダムな技能が成長する 所持金が増える |
| 賭場で遊ぶ |
街の賭博場でギャンブルを楽しむ
勤勉さがすごく下がる 健全度がわずかに下がる
所持金がランダムに大きく増減する |
| 学校で教養を学ぶ |
街の学校で勉学に励む
勤勉さが上がる 教養技能が成長する 社交技能が少し成長する 家事/加工/鑑定技能がわずかに成長する
所持金レベルが3減る 所持金レベルが3未満だと選択不可 |
| 魔法を学ぶ |
メナから魔法の扱いを学ぶ
魔法技能が成長する |
| 現在のあなた |
| 性格/混沌・中庸 良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う |
| 所持金/2 |
| 面倒見+1 知識欲+3 戦闘意欲+1 好奇心+2 勤勉さ+2 |
| 運動技能レベル10 教養技能レベル5 社交技能レベル8 諜報技能レベル5 戦闘技能レベル4 魔法技能レベル5 鑑定技能レベル5 家事技能レベル1 加工技能レベル1 |
やる気ボタン → 評価
コマンド?
-
惰眠を貪る
-
家業を手伝う
-
ガウィル達と遊ぶ
-
史料展示室を訪ねる
-
ヤレカとイチャつく
-
市場を見て歩く
-
教会で奉仕活動
-
街の中を探検する
-
街の外を探検する
-
料理の研究をする
-
道具の作成に挑戦する
-
ヤレカと戦闘訓練
-
素潜り漁を行う
-
市場でアルバイト
-
冒険者組合で働く
-
賭場で遊ぶ
-
魔法を学ぶ