一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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一般的な異世界転生 青年期編 4

 

 

 白い石の道には昨夜の祭りの痕跡が様々残されている。

 

 例えばあなたも昨日足にくくりつけていた飾りのカケラなどだ。地面に打ち付けて音を立てるという性質上、壊れて散らばるものは必ず出る。特に貝殻を素材としたものは割れやすく、少し見渡しただけでもそこかしこでいくらでも発見できた。

 

 それを床用のワイパーに似た掃除用具でかき集める子供達の顔には、一夜明けてもまだ祭りの余韻が残っている。中には形の良い貝殻を見つけてはニヤリと笑って腰巻から下げた袋に溜め込んでいる者も居た。楽しかった夜を象徴するアイテムは、きっと彼の良い思い出として大事に仕舞われる事だろう。

 

 

 

 そんな中を、あなたはヤレカを伴って歩いて行く。

 

 ニニルの季真っ只中の街は、それはもう賑わっている。何しろこの時期は祭りに次ぐ祭りの日々だ。ひとつが終わったところで落ち着きが取り戻されることはない。

 

 かつて存在したと伝承に伝わるキノコ頭の妖精ニニルの魂を慰める鎮魂祭。その翌日の今日でさえ、片付けと同時進行で次の祭りの準備が進められている始末だった。

 

「マイアも頑張るよね。今年で3回目だけど、ちゃんと根付くかな?」

 

 目的地への道中、子供達が片付けた場所に大人が集まって設営が進めている露店を眺めてヤレカが言う。

 

 その言の通り、次の祭りは近年新しく増えたものだった。マイアが取り組んでいる街の改革の一端であるらしい。

 

 内容としては、ルワ・ザンガラで採れた食材を利用した新しい料理の開発と披露が主題となっている。3日間続くこの祭りの期間は商人以外にも露店を開く許可が与えられ、街中の料理自慢たちに味と人気を競わせるのだ。

 

 その試みは、少なくとも他の改革に比べれば好感触であるようだ。

 

 特に人気を博したレシピの考案者には領主からの表彰と褒賞が与えられるためか、それとも普段家族にしか振る舞う機会のない自慢の一品を披露するチャンスに女達が燃えているのか。あるいは単にこの時期の街に蔓延する浮かれ切った空気のおかげかも知れない。

 

 ともかく、シンプルに料理祭と名付けられている新しい祭りは、小さく目くじらを立てる者はいくらか居るものの、全体としてはそう大きな反対もなくルワ・ザンガラに受け入れられている。

 

 折角友人が力を入れている事業なのだ。是非このまま進んで欲しいとあなたは感じていた。

 

 

 

「うん、そうだよね。狙いとは少しズレてそうなのもどうにかなるといいなー」

 

 ただ問題は……今のところ、目新しいレシピがどうにも登場していないという点だろうか。

 

 既存のレシピをより上手く作る者。多少のアレンジを加えて目先を変える者。そういった露店はいくらでも並ぶのだが、肝心の新たな名物と呼べるようなものは出てきていない。

 

 正確には、評価に値する品が無い、というものだが。

 

 突飛な閃きだけに身を任せて突き進んだお調子者の手によるゲテモノの見た目と味を思い出し、あなたは思わず顔を青くして頭を振る。

 

 昨年味わったザザ()料理は最悪な食感とひどいエグ味を調味料の過度な甘酸っぱさで誤魔化そうとして逆に強調してしまったという恐ろしい代物であった。その時ばかりはあなたも自身の好奇心の強さを恨んだものである。

 

 

 

 さて、そんな話をしながら人混みをかき分けて、やがて目的地にたどり着く。

 

 冒険者組合。この街での実態からついた名称では雑用組合と呼ばれるそこには仕事を求める若者たちがたむろしていた。

 

 毎日の豊漁が約束されるマス()の季ほどではないが、祭りの準備に人手が求められるこの時期も日雇い仕事は多い。ちょっとした小遣いで財布を膨らませたい者は今日も今日とてこぞって集まっている。

 

 あなたとヤレカもまたその一員であった。

 

 

 

 そんなあなた達の来訪に気付き、歓迎するように片手をあげて声をかける者がいる。

 

「よう、なんだまた来たのか。相変わらず気は変わらないままか?」

 

 組合の長、ガドである。

 

 短いヒゲの生えた口元をヘラリと緩めて投げかけられたのは、未だにあなたが街の外に目を向けているかの問いかけだ。数年前のあの夜以来、ガドは時折こうしてあなたの意思を確認する事がある。誰かに聞かれても良いようにぼかしながらだが。

 

 問いに返すあなたの答えは常に同じ。

 

 それに対して困ったような、それでいてどこか嬉しがっているような微妙な表情を見せるところまで含めていつもの事だ。

 

 

 

 そんなガドだが、今日は組合のカウンターからは離れている。受付は一時的に雇った別の者に任せているようだ。

 

 小さめのコンビニ程度の施設内の隅、依頼を受けた者が出発前に軽い打ち合わせをするためのスペースに座り込んで、手に工具を持ち何かをいじり回していた。

 

「それ、何してるの?」

 

 あなたの疑問を代弁したのか、ヤレカが覗き込みながら問う。

 

 それはあなたが見る限り、金属製の板のようだ。形は長方形で、大きさも含めてバスや電車の切符に近い。青みがかった灰色で、厚みはなさそうだ。ガドが持つ工具は彫刻刀のような形をしており、どうやらそれで紋章のような印と文字を刻んでいるらしい。

 

 そこであなたはピンと来るものがある。冒険者組合でこの様式といえば。

 

「これか? 冒険者の認識票だよ。どこから聞いてきたんだか、欲しいって奴が出やがってな……」

 

 ゲンナリとしながら答えたガドに、あなたはやはりと目を輝かせた。

 

 そして前のめりになって尋ねる。素材は何なのか。機能や目的は。ライトノベルなどに触れた前世の経験からウズウズとする好奇心はあなたを実に的確に突き動かした。

 

 

あなたの性格変動

好奇心が上がった(+2)

 

 

「お、おう。……全く、ガキってのは好きだねぇこういうのが。俺も人のこたぁ言えんがよ」

 

 そうして聞き出した内容は、おおむねあなたの想像通りだった。

 

 認識票の主目的は、まず第一に所有者の個人識別だ。

 

 衛兵や街壁に守られる街から離れて活動する事の多い冒険者というものは、時に野生動物や魔物の餌食となったり、足を滑らせて高所から転落したりと命を落とす事が少なくない。

 

 そういった死体の身元確認に利用されているようだ。つまりはドッグタグである。食い荒らされて、あるいは腐敗が進んで顔や体が崩れていても、認識票さえあればどこの誰であるかが判別できるようにという事だ。

 

 

 

 そしてもうひとつの役割は、冒険者の能力をおおまかに階級付けするためのものだ。

 

 認識票の素材と、そこに刻まれる紋章の形。この組み合わせが冒険者の得意分野と実力のほどを示している。これを受付で見せるだけで、依頼を任せるに足る者かどうかの判断材料にできるというわけだ。

 

「へー。偽造されたりしないの?」

 

「ま、定期的に出るな。だがせめてなんぼかでも減らせるように、これを作って良いのは組合の長に限られてる。生産者がひとりだけならバラつきが少ないからな。違和感に気付きやすくなるって寸法よ」

 

 なるほどとあなたが頷いたところで、ちょうど加工が完了したようだ。認識票の表面に軽くヤスリがかけられ、ガドがふっと吹いた息で金属の粉が飛ぶ。それを吸わないよう、あなたは覗き込んでいた体勢を引き戻した。

 

「この街じゃ冒険者はただの日雇い雑用だ。使う意味がねぇから作ってなかったんだが……ったく、誰が余計なこと吹き込みやがったんだか」

 

 出来上がった品を、グチグチとしながらガドが眺める。

 

 表には花と草の紋様と男性のものと思われる名前が、裏にはルワ・ザンガラ支部長ガディンガがこの者の能力を保証するとの文言がそれぞれ刻み込まれている。なお、ガディンガとはガドの本名だ。

 

 文句を言いながらも仕事は丁寧にこなしたようで、それはあなたの目にも「公式感」が感じられる確かな品質の身分証として映った。

 

 

 

 となれば、折角組合に登録しているのだからと自分の分も欲しくなるというものである。

 

 少年期からこちら、あなたは定期的にこの組合で仕事を受けて小遣いを稼いできた。認識票を受け取る資格はあるのではなかろうか。

 

「残念、雑用だけの奴は無等級だぜ」

 

 が、ガドの返答はつれない。

 

 ごく簡単な仕事……この支部で請けられる大半の依頼は冒険者としての実績には数えられず、あなたは正式には冒険者として扱われないようだ。レベルで表現するなら綺麗なゼロ。小さなタグとはいえ金属素材を使い、長の時間も食うのだから、そういった者にまで与えるわけにはいかないらしい。

 

「それに、お前は冒険者にはならないんだろう? なぁに、似たようなもんなら個人的に作ってやってもいいぞ。お代はちょいと横に座って酌でもしてくれりゃいいさ。最近はメナに似て美人に育ってきたしな、わはは!」

 

 残念ながら、今のところ入手手段はなさそうだ。

 

 一仕事を終え、普段通りうっとうしい感じのオヤジと化したガドからそっと距離を取る。こうなったガドに付き合い続けるのは中々に精神力がいる。わざわざ自分から疲れにいくこともないだろう。

 

 今日の目的は仕事を請けることであり、ガドと話す事ではない。さっさとこの場を離れ、受付で仕事を紹介してもらった方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 そうして、あなたはカウンターに近付いた。

 

 まだ朝も早いがそこには人だかりがあり、割の良さそうな仕事の取り合いになっている。組合の仕事はピンからキリまで様々あり、いくら依頼が多くとも出遅れた者には大変なくせに払いの少ないものしか当たらない。

 

「次! 食材調達依頼、ガラチ山ほど! 1匹につき小銅貨3枚!」

 

 ガドに代わって受付として一時的に雇われている女性は、背筋をピンと伸ばした威勢で、やや低めの良く通る声を上げている。

 

 冒険者ギルドと聞いて想像しがちな、依頼の貼り出されたボードなどというものはない。ルワ・ザンガラの識字率は極めて低く、そんなものを用意しても何の役にも立たないのだ。

 

 そのため普段はカウンターで個別に仕事を紹介してもらう必要があるのだが……繁忙期にいちいち1組ずつ対応していては効率が悪い。よって、受付が読み上げた依頼に受託希望者が立候補する形となっていた。

 

 読み上げられる内容は最小限。それでもそこから当たり外れを瞬間的に見極めて、ライバル達より素早く挙手する判断力が求められる。

 

「……よしそこの組早かった! はい割符、さっさと行った行った、モタモタしてないで場所あけて! 次は──」

 

 またひとつの依頼が決まり、受付が次を取り出す。

 

 内容を聞き逃すまいと施設内がシンと静まり返り、あなたもまた、それが自分向きかどうかの判別に意識を集中させた。

 

 

 

 

 

ランダム分岐/成長技能

1から順に

家事、加工、運動、鑑定、社交、

信仰、諜報、探索、戦闘、魔法、教養

 

1d11=10

 

魔法技能

 

 

 そうして勝ち取った依頼は、以下のようなものだった。

 

 開催を数日後に控えた料理祭では多くの露店が街に並ぶ。そしてそこでは当然に火を使うのだが……その全てを薪でまかなうには、ルワ・ザンガラの植物資源は乏しすぎる。

 

 乾燥させた流木はそもそもの採取量に限りがあり、ニンバル(岩礁の花)の蔓やイオ(穀物)の副産物である藁は他に優先度の高い用途がある。いかにハレの日のお祭りといえど好き勝手に使うわけにもいかない。

 

 そのため、料理に使う火には魔法を用いなければならないのだ。

 

 この準備、つまりは燃料の調達が今日のあなたに与えられた仕事である。

 

 

 

 街の上層、依頼者であるとある商人の家にて、あなたは地べたに座っていた。目の前にはニンバル編みのカゴが置かれ、中には拳大の石がゴロゴロと詰められている。

 

 それをひとつ手に取ると、あなたは静かに集中し、詠唱した。

 

 Muz(基点) Lo-Flu-Callo(火のない熱) Yana(放散)

 

 高温を生じさせる魔法である。指定の位置から炭火のような熱を全方位に発するもので、街の各家庭の厨房では日常的に使われている。あなたも日々の家事手伝いでは常用しているため、これにいまさら難しさを感じたりはしない。

 

 

 

 集中を要するのはここからだ。

 

 あなたの手の中の石が徐々に熱を帯び始める。正確には石は魔法の基点として利用されているだけなのでそれ自体が熱くなっているわけではないのだが、まぁそれは良い。

 

 問題はこのままではさっさと高温に達してしまい、小1時間もすれば効力が切れてただの石に戻ってしまう事だ。料理祭は数日後であるのに、今そうなってしまっては何の意味もない。

 

 それを、あなたはもうひとつの魔法で解決する。

 

 

 

 Clu(閉塞)

 

 まずは指定範囲を「閉ざす」魔法を。これはYee(斥力)Suu(引力)のように融通が効くタイプの呪文だ。薄紙で包むような弱さから鉄板で覆うような強さまで、消費した吐息の量(声の大きさではないあたりがやや面倒)で調整が出来る。

 

 それを、自然には破れないように、かつ強すぎないように注意を払って張り巡らせる。最も重要なその工程は、魔法を得手とするあなたからしてもそれなりに難度の高いものだ。

 

 そうして魔法の殻に覆われた石を手の中で転がし、品質に問題がない事を確認してから次の詠唱を続ける。

 

 Man(停滞) Sa-Yin(箱の内側) Zan(切り分ける)

 

 パツン、とあなたの魔法的な感覚に手応えが返った。

 

 途端、殻越しに感じられていた熱が途絶える。魔法が切れたわけではない。魔法を破壊しないまま発動を停止させる魔法が働き始めただけだ。

 

 停滞の呪文は効果時間が最大になるよう唱えたため、半日ほどはもつ。魔法が切れる前にかけ直しを繰り返せば、実際に使用する数日後まで熱の魔法を保存しておけるのだ。

 

 後は使用する際に別の魔法で解除するか、あるいは卵を割るように魔法の殻を壊せば連動して停滞が破綻し熱を放出し始めるようになっている。

 

 高熱を生じさせる呪文は魔力消費が激しいため、当日に延々と火を灯し続けていると魔力切れの恐れもある。それを補うための、より省エネな停滞呪文を用いた工夫であった。

 

 

 

「相変わらず見事なもんよねー」

 

 あなたが作成した燃料、少々気取れば火の魔石と呼べなくもないそれを見てひとりの娘が感嘆の息を漏らす。

 

 彼女は依頼者の娘であり、またあなたの学友でもあった。数年前、マイアが運営する学校にて共に机を囲み、文字や計算を、そして制服のスカートの美しい翻し方を学んだ相手である。

 

 最初の30日が終わった後もあなたは授業料が貯まれば学校に通い、彼女とは学び舎で顔を合わせる事があった。学外でも街で出くわせば足を止めて軽く話し込む程度には良好な関係を築いている。

 

「ふふー。そうでしょ。すごいんだから」

 

「はいはい、ヤレカはホントお姉ちゃんっ子よね」

 

 もちろん、いつもあなたとセットのヤレカともだ。

 

「ね、ちょっとコツ教えてよ。止めるのは簡単なんだけどさ、閉じるのが上手くいかなくって……。お父さんにいっつもケチつけられて貰えるお小遣い値切られるの、困ってるんだよね」

 

 なので、拝むように頼まれたそれにも快く応じられる。数年間の交友経験からどう教えれば彼女が飲み込みやすいかをとうに知っているあなたは、手取り足取り(あとは喉も取り)発声のコツを伝授したのだった。

 

 

 

 

 

ランダム分岐/技能成長
魔法技能

1から順に

微妙に、少し、少し、普通に、普通に、普通に、

中々、中々、かなり成長する

 

1d9=8

 

中々成長する(+4)

 

ランダム分岐/魔力の節約

魔法技能で判定

 

あなたの魔法技能 レベル13

魔法の詠唱難易度 レベル3

成功率100%

 

 

 そうして励んだ結果、あなたはたっぷりとカゴいっぱいの魔石を作る事に成功した。

 

 弱すぎず強すぎず、用途に適したちょうど良い均一の強度で魔法をこめる事が量産には重要である。

 

 何しろ魔力には限りがあるのだ。使いすぎてはあなたの胎に宿るもののうち、今使用できる可能性を消費しきってしまう。そうなっても別段体調を崩すなどはしない(むしろ女性の場合は生理が軽くなり体調が安定する)ものの、魔法は当然しばらく使えなくなる。

 

 そうなってしまう前にノルマをしっかり達成したどころか、予備を少々オマケで作っておけるほどのあなたの働きは雇い主を大きく満足させたようだ。

 

 

ランダム分岐/賃金獲得

1から順に

少ない、普通の、中々の、かなりの金額

高評価のため、1は1回だけ振り直し

 

1d4=1(振り直し)

1d4=4

 

かなりの金額

 

あなたの財布の中身

所持金レベル 2 → 6

 

 

 おかげで、報酬の袋はパンパンである。

 

 ずしりと重いそれはあなたが勝ち取った評価のほどをそのまま表している。中身は全て銅貨のようだが、銀貨に両替してもそれなりの枚数になる。何か資金が必要となる事態が起こっても大体の事には対応できるだろう。

 

「お友達様々、だね」

 

 それにはあなたの学友の口添えも大きかったが、ともかく喜ばしい事なのは間違いない。高まったテンションのままスッと手を上げれば、何も言わずとも意図を理解したヤレカがハイタッチをかわしてくれる。

 

 パチンと石造りの街に反響した高い音は、有意義な1日の締めにふさわしいだけの小気味良いものだった。

 

 

 

 

 

青年期編 前半 育成結果

性格/混沌・中庸

良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う

所持金/6

面倒見+1

知識欲+3

戦闘意欲+1

好奇心+4

勤勉さ+2

運動技能レベル10

教養技能レベル5

社交技能レベル8

諜報技能レベル5

戦闘技能レベル4

魔法技能レベル13

鑑定技能レベル5

家事技能レベル1

加工技能レベル1

 

以上の結果より青年期中間イベントを生成中……

 





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